JP2013136863A - 繊維着色剤 - Google Patents

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猛 大江
Yurika Yoshimura
由利香 吉村
Yuji Shimada
裕司 島田
Masashi Uehata
雅司 上畑
Hidehiro Tajima
秀大 田嶋
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Abstract

【課題】安全性が高くかつ高い染色堅牢度をもたらす繊維着色剤を提供する。
【解決手段】繊維着色剤は、キシロース、アラビノース、グルコース、マンノース、ガラクトース、マルトース、セルビオース、ラクトースおよびマルトトリオース等の還元糖を含有する。着色繊維類の製造方法は、繊維着色剤で繊維類を処理する工程を含み、繊維類に含有されるアミノ基が、タンパク質またはポリアミドに由来するものである。
【選択図】なし

Description

本発明は、繊維着色剤、着色繊維類の製造方法、およびその製造方法により得られる着色繊維類に関する。
繊維着色剤としては、従来、芳香族アミンを原料とする合成色素が用いられているが、最近では、芳香族アミンは発がん性物質やアレルギー性疾患の原因物質とされており、使用が制限されつつある。芳香族アミンを用いない着色剤としては、従来の天然色素が挙げられるが、天然色素で着色した繊維は脱色や色移りなど染色堅牢度が低いという問題がある。
特許文献1および2は、トリプトファンを含有する繊維をアルデヒド化合物により着色する方法を開示している。しかしながら、この方法では、トリプトファンを含有しないナイロンなどの繊維を着色できないうえ、アルデヒド化合物の安全性が問題である。
ところで、食品の分野では、ハムや蒲鉾などの表面にキシロースなどの還元糖を塗布して、加熱することにより、食品を着色する方法が汎用されている。これは、食品中のアミノ化合物と還元糖との間でおこる化学反応(メイラード反応、メラノイジン反応またはBrowning反応と呼ばれる)を利用する方法である。しかしながら、食品分野以外において、メイラード反応はほとんど利用されていない。
特開2001−55672号公報 特開2003−328279号公報
本発明は、安全性が高くかつ高い染色堅牢度をもたらす繊維着色剤を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、メイラード反応を利用して繊維類を着色することによって、染色堅牢度が高い着色繊維類が得られることを見出し、本発明を完成させた。
本発明は繊維着色剤を提供し、該繊維着色剤は還元糖を含有する。
1つの実施態様では、上記還元糖は、キシロース、アラビノース、グルコース、マンノース、ガラクトース、マルトース、セロビオース、ラクトースおよびマルトトリオースからなる群より選択される少なくとも1種である。
1つの実施態様では、上記還元糖は、単糖類である。
本発明はまた、着色繊維類の製造方法を提供し、該製造方法は、上記繊維着色剤で繊維類を処理する工程を含む。
1つの実施態様では、上記繊維類に含有されるアミノ基は、タンパク質またはポリアミドに由来する。
本発明はさらに、上記製造方法により得られる着色繊維類を提供する。
本発明によれば、安全性が高くかつ高い染色堅牢度をもたらす繊維着色剤を提供することができる。本発明の繊維着色剤は、安全性が高いため、再利用や廃液処理が容易である。本発明の着色繊維類の製造方法により得られる着色繊維類は、染色堅牢度が高いうえ、高い紫外線遮蔽効果および高い帯電防止効果を示す。さらに、本発明の着色繊維類の製造方法により得られる着色繊維類は、本発明の着色繊維類の製造方法を用いない通常の繊維類と比較して、優れた抗菌活性効果を示す。
各種糖類を反応させて得られた羊毛布のK/S値を示すグラフである。 D−キシロースを反応させて得られた各種繊維類のK/S値を示すグラフである。
本発明の繊維着色剤は、メイラード反応を利用して繊維類に含有されるアミノ基を直接発色させるものであり、芳香族アミンを原料とする合成色素や天然色素を繊維類に固着させることに基づく従来の繊維着色剤とは着色機構が異なる。
本発明でいう繊維類としては、アミノ基を含有する限り、特に限定されず、例えば、繊維、糸、布帛、およびこれらを用いた繊維製品全般が挙げられる。本発明でいう繊維としては、特に限定されず、短繊維(ステープル)または長繊維(フィラメント)のいずれであってもよく、例えば、羊毛などの獣毛、羽毛、絹、皮革、獣骨などの動物タンパク質性材料に由来する繊維、ナイロン、アラミドなどのポリアミド系繊維、外部からアミノ基が導入された繊維、およびこれらの複合繊維が挙げられる。好ましくは、アミノ基を多数含有する羊毛、皮革に由来する繊維である。本発明でいう糸としては、特に限定されず、例えば、紡績糸、撚糸、中空糸、および異形糸のような上記繊維から構成されるものが挙げられる。本発明でいう布帛としては、特に限定されず、例えば、織物、編物、および不織布が挙げられる。本発明でいう繊維製品全般としては、特に限定されず、例えば、肌着、作業服、シャツ、着物、水着、靴下、手袋、ハンカチ、タオル、カーテン、寝具、毛布、および敷布が挙げられる。なお、本発明でいう繊維類には、その表面に化学構造上アミノ基を有するものである限り、皮革などの動物タンパク質性材料などそのもの、フィルム、合成樹脂なども含まれる。
本発明の繊維着色剤は還元糖を含有する。還元糖としては、特に限定されず、例えば、キシロース、アラビノース、グルコース、ガラクトース、マンノース、アロース、アルトロース、グロース、イドース、タロース、リボース、リキソースなどの単糖類、単糖類のウロン酸(グルクロン酸、ガラクツロン酸など)、単糖類のアミノ糖およびそのN−アセチル化物(グルコサミン、N−アセチルグルコサミンなど)、マルトース、セロビオース、ラクトースなどの二糖類、マルトトリオースなどのオリゴ糖、キシラン、澱粉、セルロース、キチン、キトサンなどの多糖類の分解物が挙げられる。D体、L体は問わず、これら2種以上を用いてもよい。好ましくは、キシロース、アラビノース、グルコース、マンノース、ガラクトース、マルトース、セロビオース、ラクトース、マルトトリオースであり、これら2種以上を用いてもよい。より好ましくは、キシロース、アラビノース、グルコース、マンノース、ガラクトースなどの単糖類であり、これら2種以上を用いてもよい。さらに好ましくは、キシロース、アラビノースであり、これらを混合して用いてもよい。
本発明の繊維着色剤は、還元糖のほかに、溶媒、界面活性剤、色素(染料、顔料など)などの他の添加剤を含有してもよい。本発明の繊維着色剤における、このような他の添加剤の含有量は当業者によって適宜設定され得る。
溶媒としては、特に限定されず、例えば、水、エタノール、メタノール、エチレングリコール、グリセリン、DMSO、DMF、これらの混合溶媒が挙げられる。好ましくは、水である。
本発明の繊維着色剤の形態は、特に限定されず、粉末、顆粒などの固体であってもよいし、液体であってもよい。繊維着色剤が液状の場合、繊維着色剤に含有される還元糖の濃度としては、特に限定されないが、好ましくは10mmol/L以上、より好ましくは50mmol/L以上、さらに好ましくは200mmol/L以上である。
本発明の着色繊維類の製造方法は、上記繊維着色剤で繊維類を処理する工程を含む。この工程では、上記繊維着色剤に含有される還元糖と繊維類に含有されるアミノ基とがメイラード反応(またはメラノイジン反応もしくはBrowning反応)を起こし、繊維類が発色する。この工程では、まず上記繊維着色剤に溶媒を添加して、所定の濃度で還元糖を含有する還元糖溶液を調製する。上記繊維着色剤が液状で、所定の濃度の還元糖を含有している場合は、溶媒を添加する必要はない。次いで、還元糖溶液に繊維類を浸漬し、または還元糖溶液を繊維類に塗布する。溶媒としては、特に限定されず、例えば、水、エタノール、メタノール、エチレングリコール、グリセリン、DMSO、DMF、これらの混合溶媒が挙げられる。好ましくは、水である。還元糖溶液が含有する還元糖の濃度としては、好ましくは10mmol/L以上、より好ましくは50mmol/L以上、さらに好ましくは200mmol/L以上である。得られる着色繊維類の色調を濃くする場合は、200mmol/L以上が好ましい。還元糖溶液の量(浴比:繊維類に対する還元糖溶液の質量比)としては、繊維類が十分に着色される限り、特に限定されないが、色むらを防止するため、繊維類1質量部に対して、5質量部以上、好ましくは10質量部以上である。得られる着色繊維類の色調は、反応時間とともに、白色から、黄色、オレンジ色、茶色、茶褐色へ変化する。
上記繊維着色剤で繊維類を処理する工程では、加熱するとメイラード反応が早く進行する。加熱温度としては、特に限定されず、例えば、60℃以上、好ましくは80℃以上である。なお、加熱の際に加圧してもよい。
得られる着色繊維類の所望の色調に応じて、還元糖溶液の還元糖の種類、濃度、還元糖溶液の量(浴比)、反応時間、および反応温度を適宜設定する。
繊維類に含有されるアミノ基に還元糖を反応させた後は、繊維類を水などで洗浄して未反応の還元糖を除去し、次いで常温にて空気乾燥する。加温、減圧下で乾燥してもよい。
本発明の着色繊維類の製造方法では、繊維類に含有されるアミノ基自身が発色するため、使用後の還元糖溶液に着色がほとんどない。このため、使用後の還元糖溶液の再利用や廃液処理が容易である。
本発明の着色繊維類は、酸、アルカリ、摩擦、洗濯、汗、熱湯などに曝された場合においても、染色堅牢度が高い。
本発明の着色繊維類は、高い紫外線遮蔽効果、高い吸水性および高い帯電防止効果を示す。さらに、本発明の着色繊維類は、本発明の着色繊維類の製造方法を用いない通常の繊維類と比較して、優れた抗菌活性効果を示す。
本発明の繊維着色剤はまた、繊維類に抗菌性を付与するための抗菌性付与剤としても機能する。
上記抗菌性付与剤は、還元糖および必要に応じて他の添加剤を含有する。還元糖の種類としては、上記繊維着色剤が含有する還元糖と同じであってもよい。他の添加剤の種類および含有量もまた、上記繊維着色剤の場合と同様である。
本発明はまた、抗菌性が付与された繊維類の製造方法を提供する。この製造方法は、上記着色繊維類の製造方法と同様にして、繊維類を当該抗菌付与剤で処理することにより達成される。処理における条件もまた上記繊維着色剤の場合と同様である。
本発明はさらに、上記製造方法により得られる抗菌性が付与された繊維類を提供する。
本発明によれば、食品工場、調理場等の食品関係の施設、医療、介護関係の施設等における細菌汚染対策、感染防止対策を安価で、多大な労力を用いることなく、簡便に十分な抗菌性能を実現する抗菌製品を提供することができる。
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
以下の実施例で得られた着色繊維類の着色の評価は、肉眼観察および波長450nmの光を繊維類にあてた場合の反射率から計算されるK/S値によって行った。反射率は、株式会社島津製作所製の近赤外可視紫外分光光度計UV−3100を用いて測定した。K/S値は、通常、材料上の色素の量に比例する値で、K/S値が高いほど、着色されていることを示す。
また、酸、アルカリ、摩擦、洗濯、汗および熱湯に対する染色堅牢度、紫外線遮蔽率、吸水性および帯電性を以下のように評価した。
酸、アルカリ、摩擦、洗濯、汗および熱湯に対する染色堅牢度試験を、それぞれJIS L 0851、JIS L 0852、JIS L 0849、JIS L 0844、JIS L 0848およびJIS L 0845に従って行った。変更点を含めて略述すると次のとおりである。なお、試験には、キシロースを反応させて得られた着色羊毛布を試験片として用いた。
酸およびアルカリに対する染色堅牢度試験(JIS L 0851およびJIS L 0852)では、試験片をガラス板に置き、それぞれ50g/Lの酢酸水溶液(酸試験)および100g/Lの炭酸ナトリウム水溶液(アルカリ試験)を試験片にピペットで滴下し、試験片を室温で乾燥した。アルカリ試験では、試験片に白色の固体が析出したので、試験片を蒸留水で軽く洗浄後、再度乾燥した。
摩擦に対する染色堅牢度試験(JIS L 0849)では、学振形摩擦試験機を用いて縦方向の試験片と摩擦用白綿布とを一定速度で100往復摩擦した。摩擦用白綿布として、乾燥状態と湿潤状態の白綿布を用いた。
洗濯に対する染色堅牢度試験(JIS L 0844、C-1号)では、試験片を白羊毛布と白綿布との間に挟んで縫い付けて、これを市販の洗濯用洗剤(花王株式会社製「アタック」(登録商標))から調製した洗濯液に入れ、撹拌できるビーカー内で40℃にて30分間洗濯した。
汗に対する染色堅牢度試験(JIS L 0848)では、試験片を白羊毛布と白綿布との間に挟んで縫い付けて、これを酸またはアルカリの2種類の人工汗液に常温にて30分間浸漬し、次いで硬質プラスチック板に挟み、一定の圧力をかけて37℃の乾燥機の中で4時間保持した。
熱湯に対する染色堅牢度湯試験(JIS L 0845)では、試験片を白羊毛布と白綿布との間に挟んで縫い付けて、これをガラス棒に糸で固定し、pH6、70℃の熱湯に30分間浸漬した。
上記染色堅牢度試験で得られた試験片および白羊毛布について、標準光のもとそれぞれ変退色用グレースケール(JIS L 0804)および汚染用グレースケール(JIS L 0805)にて判定した。変退色用グレースケールは試験片の着色羊毛布に生じた変色の程度を、汚染用グレースケールは白布に生じた汚染の程度を、視感によって判断する基準となるものである。規定の色差で1級から5級まで分かれており、1級、1−2級、2級、2−3級のように9段階で判定し、1級は、変退色用グレースケールでは試験片が最も退色し、汚染用グレースケールでは白布が最も汚染されたことを意味する。
紫外線遮蔽率の測定は、アパレル製品等品質性能対策協議会(アパ対協)のガイドラインに記載の試験方法に従って行った。変更点を含めて測定方法を略述すると次のとおりである。280nmから400nmまでの波長の紫外線の試験片に対する透過率を、株式会社島津製作所製の近赤外可視紫外分光光度計UV−3100(積分球装着)を用いて測定し、ガイドラインに記載の計算方法によって遮蔽率を求めた。遮蔽率の高い繊維類ほど、多くの紫外線をカットすることができる。得られた遮蔽率から、90%以上の試験片にはA級、80%から90%までの試験片にはB級、50%から80%までの試験片にはC級の判定を行った。
吸水性の測定は、JIS L 1907に記載の滴下法に従って行った。変更点を含めて測定方法を略述すると次のとおりである。試験片を、測定前に温度23℃、湿度50%の環境で24時間以上調湿した。固定した試験片にビュレットで水を1滴滴下し、試験片上の水滴の鏡面反射がなくなるまでの時間を測定した。測定時間が短いほど、試験片の吸水性が高いことを示す。
帯電性の測定は、JIS L 1094に記載の半減期法に従って行った。変更点を含めて測定方法を略述すると次のとおりである。試験片を、測定前に温度23℃、湿度30%の環境で24時間以上調湿した。静電気半減期測定装置に試験片を固定し、調湿した同条件で、一定量の電荷をコロナ放電(+10kV)によって試験片上に照射し、同時に試験片上の帯電圧(電荷量)を計測した。時間とともに、試験片上の帯電圧は減衰し、初期帯電圧の半分になったときの時間を半減期として記録した。半減期が短い試験片ほど、短時間で試験片上の静電気を放電することができる。
(実施例1:羊毛布と各種還元糖との反応)
100mL容量のマイヤーフラスコ内で、100mLの蒸留水に糖類を溶解し、100mmol/Lの糖類を含有する糖溶液を調製した。糖類として、還元糖のD−キシロース(Xyl)(ナカライテスク株式会社,特級)1.50g、L−アラビノース(Ara)(ナカライテスク株式会社,特級)1.50g、D−グルコース(Glc)(ナカライテスク株式会社,特級)1.80g、D−マンノース(Man)(ナカライテスク株式会社,特級)1.80g、D−ガラクトース(Gal)(ナカライテスク株式会社,特級)1.80g、D−マルトース一水和物(Mal)(ナカライテスク株式会社,特級)3.60g、D−セロビオース(Cel)(ナカライテスク株式会社,特級)3.42g、D−ラクトース一水和物(Lac)(ナカライテスク株式会社,特級)3.60g、またはD−マルトトリオース(Glc3)(ナカライテスク株式会社,特級)5.04gを用いた。
得られた糖溶液を100℃まで加熱した。次いで、10×10cm(約1.0g)に裁断した羊毛布(モスリン、株式会社色染社製のJIS染色堅牢度試験用添付白布)をフラスコ内の糖溶液に浸漬した。糖溶液をさらに100℃にて4時間加熱後、羊毛布を糖溶液から取り出し、蒸留水で洗浄し、室温にて乾燥した。得られた羊毛布の着色を評価した。結果を図1に示す。
図1から明らかなように、糖類としてキシロースやグルコースなどの還元糖を用いた場合は、K/S値が増加し、黄色からオレンジ色の着色が認められた。また、分子量の小さい還元糖であるD−キシロースおよびL−アラビノースを用いた場合に、高いK/S値が得られた。
(比較例1:羊毛布と各種非還元糖との反応)
糖類として、還元力のないメチルα−D−グルコシド(MGlc)(ナカライテスク株式会社,一級)1.94g、D−スクロース(Suc)(ナカライテスク株式会社,特級)3.42g、またはD−トレハロース二水和物(Tre)(ナカライテスク株式会社,特級)3.78gを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、得られた羊毛布のK/S値を測定した。結果を図1に示す。
図1から明らかなように、糖類としてメチルα−D−グルコシドやD−トレハロースなどの還元力のない糖を用いた場合は、K/S値に変化がなく、着色が認められなかった。
(実施例2:D−キシロースと羊毛布との反応)
糖溶液の糖濃度、量(浴比)、反応時間および反応温度の着色に及ぼす影響を調べるために、糖類としてD−キシロースを用い、以下の表1に記載の糖濃度、量(浴比)、反応時間および反応温度としたこと以外は、実施例1と同様にして、得られた羊毛布のK/S値を測定した。結果を表1に示す。
Figure 2013136863
表1から明らかなように、反応時間が長いほどK/S値は大きく増加した。一方、反応温度を低下させると、K/S値は急激に低下した。このように、反応時間および反応温度が羊毛布の色調に大きく影響することがわかった。反応時間を48時間にすると、茶褐色に着色された羊毛布を得ることができた。すなわち、羊毛布の濃色着色が可能であることがわかった。
また、表1から明らかなように、糖濃度を増加させると、K/S値は大きく増加した。一方、羊毛布の添加量(ここでは枚数)を増加させて、糖溶液の量(浴比)を減少させると、K/S値はわずかに減少した。
D−キシロースで着色した羊毛布の酸、アルカリ、摩擦、洗濯、汗および熱湯に対する染色堅牢度試験を行った。ここでは、オレンジ色に着色した淡色布(D−キシロース濃度:100mmol/L、反応時間:4時間、反応温度:100℃)と茶褐色に着色した濃色布(D−キシロース濃度:400mmol/L、反応時間:48時間、反応温度:100℃)を用いた。結果を表2に示す。
Figure 2013136863
表2から明らかなように、淡色布では4−5級以上、濃色布では3−4級以上の高い染色堅牢度を示した。
さらに、淡色布と濃色布の紫外線遮蔽率、吸水性および帯電性を評価した。結果を表3および4に示す。
Figure 2013136863
Figure 2013136863
表3から明らかなように、淡色布と濃色布のいずれも90%以上の高い紫外線遮蔽率を示した。
表4から明らかなように、濃色布の方が淡色布よりも、高い吸水性および高い帯電防止効果を示した。
(実施例3:D−キシロースで染色した羊毛布の抗菌活性)
抗菌性試験には実施例2に記載した淡色布と濃色布、および未加工布を材料として用いた。試験はJIS L 1902を参考にして以下のように行った。
普通ブイヨン培地は栄研化学株式会社製を用いた。ニュートリエント培地は肉エキスとペプトンをそれぞれ5g/Lと10g/Lになるように加え、初発pHは6.8とした。黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus NBRC12732)を5mLの普通ブイヨン培地に植菌し、27℃で16時間振とう培養した。この黄色ブドウ球菌の培養液を蒸留水で20倍に希釈したニュートリエント培地で10,000倍希釈して菌懸濁液とした。はさみで裁断した羊毛布(未加工布、淡色布、濃色布)0.4gを30mLのガラス容器に入れ、菌懸濁液0.2mLを加えて37℃で放置した。接種直後および18時間放置後に20mLの0.85%NaCl−0.2%ポリソルベート80溶液を加えてよく攪拌し、菌液を回収した。この菌液を0.85%NaClで10倍ずつ希釈し、SCDLP寒天培地(日本製薬株式会社製)を用いて生菌数を測定した。得られた結果を表5に示す。
Figure 2013136863
表5から明らかなように、試験に用いた菌懸濁液の菌数(羊毛布なし、放置時間0h)は2.6×10cfu/mLで、羊毛布を加えずに18時間放置すると菌数は1.7×10cfu/mLまで増加した。未加工布を加えて18時間放置すると菌数は2.3×10cfu/mLまで増加したことより、未加工布は静菌活性、殺菌活性を持っていないことが分かった。一方、淡色布、濃色布を加えると菌数は2.6×10cfu/mLからそれぞれ2.0×10、<3×10cfu/mLまで減少した。これより、淡色布、濃色布とも殺菌活性を有し、濃色の方が強い殺菌活性を示した。濃色布の方が多くのメラノイジン色素を有していることから、殺菌活性はメラノイジンの量に相関するものと思われる。
(実施例4:キシラン分解物と羊毛布との反応)
多糖類であるキシランの分解物(岡村製油株式会社製「キシラップ」)を蒸留水で120g/Lまたは360g/Lの濃度になるように溶解した。なお、キシラップは、D−キシロースに換算した糖含有量が656g/Lであり、主な糖成分としてD−キシロース45.2%、L−アラビノース19.2%、D−グルコース15.3%およびD−ガラクトース11.6%を含む。
得られた120g/Lの糖溶液5mLおよび10×10cm(約1.0g)に裁断した羊毛布(モスリン、株式会社色染社製のJIS染色堅牢度試験用添付白布)をビニール袋(15×20cm)に入れて、ポリシーラーを用いて密閉した(浴比は1:5)。この袋を80℃にて48時間加熱した。
また、100mLのマイヤーフラスコに、得られた120g/Lまたは360g/Lの糖溶液25mLを入れ、100℃まで加熱した。次いで、10×10cm(約1.0g)に裁断した羊毛布(モスリン、株式会社色染社製のJIS染色堅牢度試験用添付白布)をフラスコ内の糖溶液に浸漬した(浴比は1:25)。さらに100℃にて一定時間加熱した。
羊毛布を糖溶液から取り出し、蒸留水で洗浄し、80℃にて乾燥した。得られた羊毛布の着色を評価した。結果を表6に示す。
Figure 2013136863
表6から明らかなように、D−キシロースを用いた場合と同様に、淡色から濃色まで羊毛布を着色することができた。糖溶液の糖濃度、反応時間および反応温度の着色に及ぼす影響ついても、D−キシロースを用いた場合と同様の傾向を示した。
(実施例5:D−キシロースと各種繊維類との反応)
糖としてD−キシロース1.50gを用い、繊維類として、ナイロン6布(タフタ)、羊毛布(モスリン)、絹布(羽二重)、PET布(タフタ)、綿布(金巾)、アクリル布(モスリン)(以上、いずれも株式会社色染社製のJIS染色堅牢度試験用添付白布、10×10cmに裁断して使用)、ナイロン66樹脂(宇部興産株式会社製のUBEナイロン2026Bを株式会社日本製鋼所製の射出成形機N−100BIIを用いて280℃にて3mmの板状に射出成形した後、35×20mmに裁断して使用)、および牛皮(金丸油化工業株式会社製のクロムなめし済みの牛皮を乾燥しない状態で(水分率:約45%))、30×60mmに裁断して使用)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、得られた羊毛布の着色を評価した。結果を図2に示す。
図2から明らかなように、タンパク質性材料に由来する羊毛布、絹布、牛皮、ポリアミド系繊維であるナイロン6布およびナイロン66樹脂は、D−キシロースとの反応により着色が認められた。一方、アミノ基を含有しないPET布、綿布およびアクリル布は、D−キシロースとの反応による着色が認められなかった。特に、羊毛布や牛皮などのアミノ基を多く含有するタンパク質性材料に由来する繊維類で高いK/S値を示した。
D−キシロースで着色したナイロン6布と絹布について、実施例1と同様にして、紫外線遮蔽率を測定した。結果を表3に示す。
表3から明らかなように、D−キシロースで着色したナイロン6布と絹布は、着色した羊毛布と同様に90%以上の高い紫外線遮蔽率を示した。
(実施例6:有機溶媒中でのD−キシロースと羊毛布との反応)
糖としてD−キシロース1.50gを用い、蒸留水に代えて有機溶媒と蒸留水との混合溶媒を用い、反応温度を95℃にしたこと以外は、実施例1と同様にして、得られた羊毛布の着色を評価した。有機溶媒として、ジメチルスルホキシド(DMSO)(ナカライテスク株式会社,特級)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)(ナカライテスク株式会社,特級)、エチレングリコール(EG)(ナカライテスク株式会社,特級)、グリセリン(ナカライテスク株式会社,特級)を用いた。結果を表7に示す。
Figure 2013136863
表7から明らかなように、有機溶媒あるいは有機溶媒を含有する水溶液を用いた場合も、蒸留水を用いた場合と同様に羊毛布を着色できた。特に、DMSOを用いた場合に最も高いK/S値が得られた。さらに、有機溶媒の含有量が高くなるにつれて、羊毛布の色調が濃くなる傾向であった。
本発明によれば、安全性が高くかつ染色堅牢度が高い繊維着色剤を提供することができる。本発明の繊維着色剤は、安全性が高いため、再利用や廃液処理が容易である。本発明の着色繊維類の製造方法により得られる着色繊維類は、染色堅牢度が高いうえ、高い紫外線遮蔽効果および高い帯電防止効果を示す。さらに、本発明の着色繊維類の製造方法により得られる着色繊維類は、本発明の着色繊維類の製造方法を用いない通常の繊維類と比較して、優れた抗菌活性効果を示す。

Claims (6)

  1. 還元糖を含有する繊維着色剤。
  2. 前記還元糖が、キシロース、アラビノース、グルコース、マンノース、ガラクトース、マルトース、セロビオース、ラクトースおよびマルトトリオースからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の繊維着色剤。
  3. 前記還元糖が、単糖類である、請求項1に記載の繊維着色剤。
  4. 請求項1から3のいずれかの項に記載の繊維着色剤で繊維類を処理する工程を含む、着色繊維類の製造方法。
  5. 前記繊維類に含有されるアミノ基が、タンパク質またはポリアミドに由来する、請求項4に記載の製造方法。
  6. 請求項4または5に記載の製造方法により得られる着色繊維類。
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