JP2013136712A - ポリマーアロイの製造方法およびポリマーアロイ - Google Patents

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Abstract

【課題】相構造ムラが少なく、優れた機械特性を有するエポキシ系ポリマーアロイを提供する。
【解決手段】上限臨界溶解温度を有するエポキシ樹脂とそれ以外の成分を硬化反応前に相溶させ、エポキシ樹脂の硬化反応に伴うスピノーダル分解により相分離させる際の見かけの相図の変化速度を20℃/分以上とすることで、凝集物が少なく相構造ムラが少ない、靭性等の機械特性に優れたポリマーアロイを得ることができる。
【選択図】なし

Description

本発明は、相構造ムラが少なく、優れた機械特性を有するエポキシ系ポリマーアロイに関する。
近年、異なった物性を持つポリマー同士を組み合わせることにより、それぞれのポリマーの持つ長所を互いに引き出し、短所を補うことにより、単一のポリマーと比較し優れた物性を発現させる技術、すなわちポリマーアロイ技術を用いた材料開発が活発に行われている。
ポリマーアロイの物性は原料物性が大きく影響することは言うまでもないが、それらポリマーアロイの分散相サイズと均一性、またその粒径分布によっても大きく変化することが知られている。たとえば、分散相サイズを1μm以下に、かつ均一に制御することで靭性向上といった力学特性の向上が期待できる(特許文献1)。また、相構造を微細かつ均一に制御するための技術として、2種のポリマーを一旦相溶状態とした後、相分離させることでスピノーダル分解を誘発し、周期構造が0.01〜1μmの両相連続構造、または粒子間距離が0.01〜1μmの分散構造とする方法が提案されている(特許文献2)。本技術はポリカーボネート/ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート/スチレン−アクリロニトリル共重合体等の組合せで各種物性の改善効果を得ることができ、通常混練により形成されるポリマーアロイと比較し、物性が向上させることが可能な技術である。しかしながら、本公報記載のポリマーアロイは、溶融混練後、特定の温度・時間で熱処理を行うことで、構造を固定しており、これを単純に射出成形等の一般的な成形方法で成形すると、成形を経る間に構造周期が大きくなりすぎ優れた物性が得られず、また安定して上記相構造を得ることができなかった。また、相構造形成の際、過冷却度が十分に大きくない場合、一部分にポリマーの凝集物が形成され、相構造ムラが生じることで、機械特性が損なわれることがあった。
エポキシ樹脂は、電気絶縁性、機械的特性、耐薬品性、接着特性などに優れており、各種分野における成形、接着材料として広く利用されている。特に、その優れた電気絶縁特性から、エポキシ樹脂材料は、電気・電子分野における電気絶縁用材料として不可欠な存在となっている。さらにエポキシ樹脂またはその硬化物の、強化繊維との接着性、寸法安定性、強度・剛性といった力学特性の観点から、スポーツ用途、航空宇宙用途、および一般産業用途向けの繊維強化複合材料のマトリックス樹脂としても広く用いられている。しかし、エポキシ樹脂硬化物は剛性が非常に高い反面、靭性や耐クラック性、耐衝撃性が低いという欠点がある。これら欠点を補うため、熱可塑性エラストマーを改質剤として添加する方法が知られている(特許文献3)。本手法により、両立が難しかった耐衝撃性と耐熱性のバランスに優れた樹脂組成物を得ることができる。しかしながら、一方の成分が熱可塑性樹脂である上、相分離の際のエポキシの反応速度が十分に速くないため、一部で相構造の粗大化が起こりやすく、凝集物が形成され、耐衝撃性が十分に発揮されないことがあった。また、エポキシ樹脂に対して、末端に水酸基を有するポリエーテルスルホンを添加することによって、靭性を付与する検討も行われている(特許文献4)。本手法により、タック・ドレープ性、機械特性に優れた樹脂組成物を得ることができる。しかしながら、ポリエーテルスルホン末端の官能基がエポキシ樹脂と反応するため、硬化反応後は相溶状態となり、エポキシ樹脂とポリエーテルスルホンの中間的な性質となり、ポリエーテルスルホンの靭性付与効果を十分に発現することが困難であった。
また、エポキシ成分以外の成分を用いず、前記欠点を改善する方法が提案されている。例えば、エポキシ成分として、剛直なジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂をアミン型エポキシと組み合わせて使用することで耐熱性を確保しつつ、靭性を向上させるものである(特許文献5)。しかし、この場合両者は相溶しており、各種機械特性は両者の中間的な値となり、大幅な靭性向上につながるものではなかった。
特開平3−20333号公報 特開2003−286414号公報 特開平8−337707号公報 特開2009−167333号公報 特開平9−296024号公報
本発明は相構造ムラが少なく、優れた機械物性を有するエポキシ系ポリマーアロイを提供することを課題とするものである。
上記目的を達成するために、本発明は以下の構成を有するものである。
1.エポキシ樹脂を含む2成分の樹脂を、硬化反応前に相溶させ、エポキシ樹脂の硬化反応に伴うスピノーダル分解により相分離させ、その際の見かけの相図の変化速度が20℃/分以上であることを特徴とするポリマーアロイの製造方法。
2.上限臨界溶解温度を有するエポキシ樹脂を含む2成分の樹脂を、硬化反応前に相溶させ、エポキシ樹脂の硬化反応に伴うスピノーダル分解により相分離させ、その際の相図の変化速度が30℃/分以上であることを特徴とする1に記載のポリマーアロイの製造方法。
3.下限臨界溶解温度を有するエポキシ樹脂を含む2成分の樹脂を、硬化反応前に相溶させ、エポキシ樹脂の硬化反応に伴うスピノーダル分解により相分離させ、その際の相図の変化速度が10℃/分以上であることを特徴とする1に記載のポリマーアロイの製造方法。
4.前記エポキシ樹脂を含む2成分の樹脂のSP値の差の絶対値が2.0(cal/cm1/2以下であることを特徴とする1〜3のいずれかに記載のポリマーアロイの製造方法。
5.散乱測定において、スピノーダル分解開始直後の散乱スペクトルの極大値に対応する散乱ベクトルの値をqmi、得られたポリマーアロイの散乱スペクトルの極大値に対応する散乱ベクトルの値をqmfとしたとき、qmi/qmf<5となることを特徴とする1〜4のいずれかに記載のポリマーアロイの製造方法。
6.エポキシ樹脂を含む2成分の樹脂を硬化させて得られる構造周期0.01〜10μmの相構造を有するポリマーアロイであり、(構造周期×100)μm四方の視野中に存在する、長径が前記構造周期の10倍以上の凝集物の数が1個以下であることを特徴とするポリマーアロイ。
7.前記エポキシ樹脂を含む2成分の樹脂のSP値の差の絶対値が2.0(cal/cm1/2以下であることを特徴とする6に記載のポリマーアロイ。
8.散乱測定においてスピノーダル分解開始直後の散乱スペクトルの極大値に対応する散乱ベクトルの値をqmi、得られたポリマーアロイの散乱スペクトルの極大値に対応する散乱ベクトルの値をqmfとしたとき、qmi/qmf<5となることを特徴とする6〜7のいずれかに記載のポリマーアロイ。
9.散乱測定において散乱スペクトルが極大値を有することを特徴とする6〜8のいずれかに記載のポリマーアロイ。
10.硬化反応前にエポキシ樹脂を含む2成分の樹脂が相溶し、硬化反応後に相分離することを特徴とする6〜9のいずれかに記載のポリマーアロイ。
11.6〜10のいずれかに記載のポリマーアロイからなる成形品。
本発明によれば、上限臨界溶解温度を有するエポキシ樹脂を含む2成分の樹脂を硬化反応前に相溶させ、エポキシ樹脂の硬化反応に伴うスピノーダル分解により相分離させる際の見かけの相図の変化速度を20℃/分以上とすることで、凝集物が少なく相構造ムラが少ない、靭性等の機械特性に優れたポリマーアロイを得ることができる。
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明は、エポキシ樹脂を含む2成分の樹脂を硬化反応前に相溶させ、エポキシ樹脂の硬化反応に伴うスピノーダル分解により相分離させる際の見かけの相図の変化速度を20℃/分以上とすることを特徴とする。なお、エポキシ樹脂という用語は一般にプレポリマーおよびプレポリマーに硬化剤や他の成分を配合した組成物を反応させて得られる硬化物の2つの意味で用いられるが、本明細書中では特に注記の無い限り硬化前のプレポリマーの意味で用いる。
ポリマーアロイは、各々の原料となる樹脂の長所を引き出し、短所を補い合うことで単一の樹脂に比べて優れた特性を発現する。このとき重要となるのが、ポリマーアロイの両相連続構造における構造周期または分散構造における粒子間距離のサイズと均一性である。サイズが大きすぎると、各々の原料の物性が発現するのみで、短所を補い合うことが困難となる。また、サイズが小さすぎると、原料樹脂の特性が失われるため好ましくない。したがって、両相連続構造における構造周期または分散構造における粒子間距離のサイズは0.01μm〜10μmが好ましく、0.03〜5μmがより好ましい。
一般に、2成分の樹脂からなるポリマーアロイには、これらの組成に対して、ガラス転移温度以上、熱分解温度以下の実用的な全領域において相溶する相溶系や、逆に全領域で非相溶となる非相溶系や、ある領域で相溶し、別の領域で相分離状態となる、部分相溶系があり、さらにこの部分相溶系には、その相分離状態
の条件によってスピノーダル分解によって相分離するものと、核生成と成長によって相分離するものがある。
スピノーダル分解による相分離とは、異なる2成分の樹脂組成および温度に対する相図においてスピノーダル曲線の内側の不安定状態で生じる相分離のことを指し、また核生成と成長による相分離とは、該相図においてバイノーダル曲線の内側であり、かつスピノーダル曲線の外側の準安定状態で生じる相分離のことを指す。
かかるスピノーダル曲線とは、組成および温度に対して、異なる2成分の樹脂を混合した場合、相溶した場合の自由エネルギーと相溶しない2相における自由エネルギーの合計との差(ΔGmix)を濃度(φ)で二回偏微分したもの(∂ΔGmix/∂φ)が0となる曲線のことであり、またスピノーダル曲線の内側では、∂ΔGmix/∂φ<0の不安定状態であり、外側では∂ΔGmix/∂φ>0である。
またかかるバイノーダル曲線とは、組成および温度に対して、系が相溶する領域と相分離する領域の境界の曲線のことである。
ここで本発明における相溶する場合とは、分子レベルで均一に混合している状態のことであり、具体的には異なる2成分の樹脂を主成分とする相がいずれも0.001μm以上の相構造を形成していない場合を指し、また、非相溶の場合とは、相溶状態でない場合のことであり、すなわち異なる2成分の樹脂を主成分とする相が互いに0.001μm以上の相構造を形成している状態のことを指す。相溶するか否かは、例えばPolymer Alloys and Blends, Leszek A Utracki, hanser Publishers,Munich Viema New York,P64,に記載の様に、電子顕微鏡、示差走査熱量計(DSC)、その他種々の方法によって判断することができる。
詳細な理論によると、スピノーダル分解では、一旦相溶領域の温度で均一に相溶した混合系の温度を、不安定領域の温度まで急速にした場合、系は共存組成に向けて急速に相分離を開始する。その際濃度は一定の波長に単色化され、構造周期(Λ)で両分離相が共に連続して規則正しく絡み合った両相連続構造を形成する。この両相連続構造形成後、その構造周期を一定に保ったまま、両相の濃度差のみが増大する過程をスピノーダル分解の初期過程と呼ぶ。
さらに上述のスピノーダル分解の初期過程における構造周期(Λ)は熱力学的に下式のような関係がある。
Λ〜[│T−T│/T−1/2(Tはスピノーダル曲線上の温度)
スピノーダル分解では、この様な初期過程を経た後、波長の増大と濃度差の増大が同時に生じる中期過程、濃度差が共存組成に達した後、波長の増大が自己相似的に生じる後期過程を経て、最終的には巨視的な2相に分離するまで進行するが、本発明においては、最終的に巨視的な2相に分離する前の所望の構造周期に到達した段階で構造を固定すればよい。
また本発明における相構造を確認するためには、規則的な周期構造が確認されることが重要である。これは例えば、光学顕微鏡観察や透過型電子顕微鏡観察により、両相連続構造が形成されることの確認に加えて、小角X線散乱装置または光散乱装置を用いて行う散乱測定において、散乱極大が現れることの確認が必要である。この散乱測定における散乱極大の存在は、ある周期を持った規則正しい相分離構造を持つ証明であり、その周期Λは、両相連続構造の場合、構造周期に対応し、分散構造の場合粒子間距離に対応する。またその値は、散乱光の散乱体内での波長λ、散乱極大を与える散乱角θを用いて次式
Λ=(λ/2)/sin(θ/2)
により計算することができる。
また、両相連続構造における構造周期または分散構造における粒子間距離のサイズが上記の範囲にあっても、一部構造的に粗大な部分などがあると、例えば衝撃を受けた際そこを起点として破壊が進行するなど、本来のポリマーアロイの特性が得られないことがある。したがって、ポリマーアロイの両相連続構造における構造周期または分散構造における粒子間距離の均一性及び、凝集物等による相構造ムラが無いことが重要となる。
このうち均一性は、上述のポリマーアロイの小角X線散乱測定または、光散乱測定により評価することが可能である。小角X線散乱測定と光散乱測定では、分析可能な相分離構造サイズが異なるので、分析するポリマーアロイの相分離構造サイズに応じて適宜使い分ける必要がある。一般に、構造周期0.01μm〜0.5μmの場合は小角X線散乱測定、0.5μmより大きい場合は光散乱測定により評価することができる。小角X線散乱測定および光散乱測定は両相連続構造における構造周期または分散構造における粒子間距離のサイズに加え、その分布に関する情報が得られる。具体的には、それら測定で得られるスペクトルにおける散乱極大のピーク位置、すなわち散乱角θが両相連続構造における構造周期または分散構造における粒子間距離のサイズに対応し、そのピークの拡がり方が、構造の均一性に対応する。優れた機械特性等の物理特性を得るためには、構造均一性が高い方が好ましく、本発明におけるポリマーアロイは小角X線散乱測定または光散乱測定により得られた散乱スペクトルが極大値を有することを特徴とする。
また、凝集物等による相構造ムラが無いことは、光学顕微鏡または透過型電子顕微鏡により確認することができる。光学顕微鏡または透過型電子顕微鏡観察において、ランダムに選ばれた視野10カ所を観察した際、構造周期をΛとしたとき、Λ×100四方の視野中に存在する、長径がΛ×10以上の凝集物の数(視野10カ所の平均値)が1.0個以下であることが好ましく、0.5個以下であることがより好ましい。長径がΛ×10以上の凝集物の数が1.0個より多い場合、本来のポリマーアロイの特性を得られない。ここで、凝集物とは、ポリマーアロイを構成する成分のうち、1種類の成分のみからなる粗大な塊のことであり一部分にのみ存在するため、統計学的手法である小角X線散乱測定や光散乱測定による評価では検出することができない。また、凝集物の長径とは凝集物の最も長い直径を示す。
本発明におけるポリマーアロイの硬化反応前にエポキシ樹脂を含む2成分の樹脂を一旦相溶状態とし、エポキシ樹脂の硬化反応に伴うスピノーダル分解により相分離させることにより形成される。反応に伴うスピノーダル分解により相分離させるための2成分の組合せとしては、部分相溶系の組合せが挙げられる。
ここで、本発明ではエポキシ樹脂を含む2成分の樹脂からなり、上限臨界溶解温度(upper critical solution temperature、略してUCST)及び下限臨界溶解温度(lower critical solution temperature、略してLCST)を有する組合せを用いることができる。
UCST及びLCSTを有する組合せは、前記部分相溶系の一種であり、UCSTでは、同一組成において高温側で相溶しやすくなる特徴があり、LCSTでは逆に低温側で相溶しやすくなる特徴がある。UCSTまたはLCSTを有する組合せを用いて相溶状態となった2成分以上の樹脂は、少なくとも1成分のエポキシ樹脂を硬化させることにより、分子量変化に伴いスピノーダル曲線が、UCSTの場合は高温側、LCSTの場合は低温側にシフトし、不安定状態領域が拡大し、スピノーダル分解によって、いわゆる反応誘発型相分離が生じる。
UCSTを有する組合せとしては、エポキシ樹脂同士、またはエポキシ樹脂と熱可塑性樹脂の組合せを挙げることができるが、硬化反応前の相溶性の観点からエポキシ樹脂同士が好ましく用いられる。エポキシ樹脂同士を組み合わせる場合には、2種のエポキシ樹脂の反応が同時に進行し、ある時点でスピノーダル分解が生じ、相分離構造を形成する。
前記UCSTを有するエポキシ樹脂同士の組合せとしては、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂とトリグリシジルアミノフェノール、ビスフェノールA型エポキシ樹脂とテトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、ビスフェノールA型エポキシ樹脂とグリシジルアニリン、ビスフェノールF型エポキシ樹脂とトリグリシジルアミノフェノール、ビスフェノールF型エポキシ樹脂とテトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、ビスフェノールF型エポキシ樹脂とグリシジルアニリン、トリグリシジルアミノフェノールとフェノールノボラック型エポキシ樹脂、トリグリシジルアミノフェノールとクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリグリシジルアミノフェノールとジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタンとフェノールノボラック型エポキシ樹脂、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタンとクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタンとジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂を挙げることができるが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
さらに、前記UCSTを有するエポキシ樹脂と熱可塑性樹脂の組合せとしては、UCSTを有する組合せで有れば、特に限定されることはないが、エポキシ樹脂との相溶性および硬化後の樹脂特性の観点から、非晶性樹脂であることが好ましい。結晶性樹脂の場合、結晶部分がエポキシ樹脂と相溶し難いだけでなく、結晶化による脆化によって硬化後の樹脂靭性が向上し難いといった問題点がある。具体的には、メタクリル酸またはそのエステルの重合体、アクリル酸またはそのエステルからなる重合体、カルボン酸またはスチレンまたはアクリロニトリルからなる重合体等の、ビニル重合体またはこれらの共重合体が好ましく用いられるが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。エポキシ樹脂と熱可塑性樹脂を組み合わせる場合には、基本的にエポキシ樹脂のみの反応が進行し、相分離構造を形成するが、熱可塑性樹脂がエポキシ樹脂と容易に反応する官能基を有する場合、熱可塑性樹脂もエポキシ樹脂と反応することがある。
また、LCSTを有する組合せとしては、エポキシ樹脂とポリエーテルスルホン等の組合せを挙げることができ、本エポキシ樹脂としては、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、トリグリシジルアミノフェノール、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、グリシジルアニリン、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂を挙げることができるが、本発明はこの例によって限定されるものではない。
本発明に用いられるポリエーテルスルホンの数平均分子量は、10000以上50000以下であることが好ましく、150000以上40000以下であることがより好ましい。10000以下の場合、硬化反応後、エポキシ樹脂との間で相分離構造を形成することが困難であり、50000以上の場合、硬化反応前にエポキシ樹脂と相溶させることが困難となる。また、本発明に用いられるポリエーテルスルホンの末端は塩素であることが好ましい。水酸基やその他のエポキシ樹脂と容易に反応し得る官能基を有している場合、硬化反応後、ポリエーテルスルホンがエポキシ樹脂と相溶状態となり、相分離構造を形成することが困難となる。そこで、本発明に用いられるポリエーテルスルホンは、100重合繰り返し単位当たり、0.3以上の末端水酸基を有していないことが好ましい。なお、数平均分子量についてはゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用い、溶媒としてDMF、標準物質としてポリスチレンを用いて算出することができる。また、末端水酸基の濃度についてはH−NMRを用いて測定することができる。
さらに、本ポリエーテルスルホンは本発明の目的を損なわない範囲で他の共重合成分を含有していても良い。
本発明で用いられる成分の組合せとしては、相溶性に優れ、微細で均一な相構造を形成しやすく、相構造ムラが生じにくいという点から、硬化前のエポキシ樹脂を含む2成分の樹脂のSP値の差の絶対値が2.0(cal/cm1/2以下であることが好ましく、1.0(cal/cm1/2以下であることがより好ましく、0.5(cal/cm1/2以下であることがさらに好ましい。ここでいう、SP値とはFedorsの計算式を用いて求められた溶解度パラメータを意味し、エポキシ樹脂の場合は硬化前のSP値を指す。上記Fedorsの計算式によれば、溶解度パラメータは、各原子団のモル凝集エネルギーの和を体積で除したものの平方根であって、単位体積当たりの極性を示すものであり、上記溶解度パラメータが大きいほど極性が高いことになる。また、ブロックコポリマーのSP値はNMRにより組成分析を行うことにより、そのモノマー比率を算出することで、推測することができる。
反応誘発型相分離の場合、スピノーダル曲線が変化しない部分相溶系の温度変化による方法と比較し、その同じ温度変化幅においても実質的な過冷却度(|T−T|)が大きくなり、その結果上述の関係式におけるスピノーダル分解の初期過程における構造周期を小さくすることが容易となる。この際、連続的な硬化反応の進行とともに過冷却度の増大が連続的に起こる。この連続的な過冷却度の増大が、スピノーダル分解初期過程における両相の濃度差の増大を抑制しており、過冷却度の連続的な増大が大きいほど、該抑制効果が大きくなることがわかっている。
過冷却度の連続的な増大が十分に大きい場合、スピノーダル分解初期過程において、均一でムラの無い相構造が形成されやすく、その後の相構造発展によって相構造が粗大化した後も、均一で凝集物の少ないポリマーアロイが形成される。
一方、過冷却度の連続的な増大が小さい場合、スピノーダル分解初期過程における、両相の濃度差増大の抑制効果が小さいため、一部分に粗大な相構造を含むことが多くなる。
ここで、反応誘発型相分離においては、反応に伴い相図の境界が変化するため、実質的な過冷却度の測定が困難であるが、反応誘発型相分離における過冷却度の指標として、見かけの相図の変化速度を挙げることができる。すなわち、見かけの相図の変化速度が大きいほど過冷却度が大きく、見かけの相図の変化速度が小さいほど、過冷却度が小さいと言える。
USCT型及びLCST型相図の変化速度は、以下の方法で測定することができる。硬化反応中、硬化温度が一定の場合においては、時間tにおける相図の境界温度をTとし、そこから硬化反応が進んだ時点tにおける相図の境界温度をTとすると、相図の変化速度ΔTは(T−T)/(t−t)の絶対値で表される。なお、反応速度にもよるが、可能な限り正確な値を得るため経過時間t−tはできるだけ短いことが好ましく、5分以内であることが好ましい。
ここで、エポキシ樹脂を硬化させる際には、反応の熱暴走を抑制するため、反応熱の除熱を目的とし、一定昇温速度で低温から目的温度まで昇温することが多い。
このとき、UCST型相図を有する系について、上記のように相分離時点での硬化温度が一定でない場合、すなわち相分離時点において昇温速度τで昇温中であった場合、相図の変化する方向と昇温の方向が同一であるため、見かけ上、相図の変化速度は減少する。そのため、UCST型相図を有する系の見かけの相図の変化速度はΔT−τとなる。反対にLCST型相図を有する系においては、相図の変化する方向と昇温の方向が逆になるため、見かけ上、相図の変化速度は加速する。そのため、LCST型相図を有する系の見かけの相図変化速度はΔT+τとなる。
本発明において、硬化反応前にエポキシ樹脂を含む2成分の樹脂を相溶させ、エポキシ樹脂の硬化反応に伴うスピノーダル分解により相分離させる際に、硬化後のポリマーアロイ中に凝集物等による相構造ムラが少なく、靭性等の機械特性に優れたポリマーアロイを得ることができる点で、相分離時点での見かけの相図の変化速度が20℃/分以上であることが好ましく、30℃/分以上であることがより好ましく、50℃/分以上であることがさらに好ましい。
また、UCSTを有するエポキシ樹脂を含む2成分の樹脂の場合には硬化温度の昇温によって、見かけの相図の変化速度が低下してしまうため、相図の変化速度は30℃/分以上であることが好ましく、40℃/分以上であることがより好ましく、60℃/分以上であることがさらに好ましい。
一方で、LCSTを有するエポキシ樹脂を含む2成分の樹脂の場合には硬化温度の昇温によって見かけの相図の変化速度が増加するため、相図の変化速度は10℃/分以上であることが好ましく、20℃/分以上であることがより好ましく、40℃/分以上であることがさらに好ましい。
見かけの相図の変化速度を増加する具体的な手法としては、UCSTの場合には相分離時点での昇温速度を低下させることが挙げられる。LCSTの場合には相分離時点での昇温速度を増加させることが挙げられる。また、UCST及びLCSTのいずれの場合においても、反応温度を高くする、反応性の高い硬化剤を使用する、硬化触媒を併用する、等の手法を用いることができる。
また、本発明の方法により得られたポリマーアロイは、相分離初期過程において、2成分の濃度差の増大が抑制され、相構造の経時的な粗大化が抑制される。そのため、スピノーダル分解初期の相構造サイズからの相構造発展が少ない特徴がある。初期構造からの相構造発展が著しいと、凝集物が発生しやすく、相構造ムラが生じやすいため、qmi/qmf<5であることが好ましく、qmi/qmf<3であることがより好ましい。ここで、qmiは前記の散乱測定において得られたスピノーダル分解直後の散乱スペクトルの極大値に対応する散乱ベクトル、qmfは得られたポリマーアロイの散乱スペクトルの極大値に対応する散乱ベクトルを示す。さらに、散乱ベクトルqは構造周期Λを用いて、q=2π/Λのように表すことができる。
本発明でのエポキシ樹脂を含む2成分の樹脂の組成については特に制限はないが、2成分の場合、通常90重量%/10重量%〜10重量%/90重量%の範囲が好ましく用いられ、さらには85重量%/15重量%〜15重量%/85重量%の範囲がより好ましく、特に75重量%/25重量%〜25重量%/75重量%の範囲であれば2成分を相分離させやすいので好ましく用いられる。
前記エポキシ樹脂は具体的には、フェノール類、アミン類、カルボン酸類、分子内不飽和炭素などの化合物を前駆体とするエポキシ樹脂であることが好ましい。
フェノール類を前駆体とするグリシジルエーテル型エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビフェニル骨格を有するエポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、レゾルシノール型エポキシ樹脂、ナフタレン骨格を有するエポキシ樹脂、トリスフェニルメタン型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ジフェニルフルオレン型エポキシ樹脂やそれぞれの各種異性体やアルキル、ハロゲン置換体などが挙げられる。また、フェノール類からなるエポキシ樹脂をウレタンやイソシアネートで変性した化合物なども、このタイプに含まれる。
アミン類を前駆体とするグリシジルアミン型エポキシ樹脂としては、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、キシレンジアミンのグリシジル化合物、トリグリシジルアミノフェノールや、グリシジルアニリンのそれぞれの位置異性体やアルキル基やハロゲンでの置換体が挙げられる。
カルボン酸を前駆体とするエポキシ樹脂としては、フタル酸のグリシジル化合物や、ヘキサヒドロフタル酸、ダイマー酸のグリシジル化合物の各種異性体が挙げられる。
分子内不飽和炭素を前駆体とするエポキシ樹脂としては、例えば脂環式エポキシ樹脂が挙げられる。
本発明におけるエポキシ樹脂のエポキシ当量は、100〜3000であることが好ましい。エポキシ当量が3000より大きいと樹脂の粘度が高くなることがあり、樹脂組成物をプリプレグにした時にタック性やドレープ性が低下することがある。また、100より小さいと樹脂の架橋密度が高くなり、硬化物が脆くなることがある。
本発明におけるエポキシ樹脂の硬化剤としては、エポキシ樹脂を硬化させるものであれば特に限定はない。アミン、無水酸等の付加反応する硬化剤であってもよいし、カチオン重合、アニオン重合等の付加重合を引き起こす硬化触媒であってもよく、2種類以上の硬化剤を併用してもよい。硬化剤としては、好ましくは、アミノ基、酸無水物基、アジド基を有する化合物が適している。例えば、ジシアンジアミド、脂環式アミン、脂肪族アミン、芳香族アミン、アミノ安息香酸エステル類、各種酸無水物、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、イミダゾール誘導体、t−ブチルカテコールなどのフェノール系化合物をはじめ、三フッ化ホウ素錯体や三塩化ホウ素錯体のようなルイス酸錯体などが挙げられる。付加反応する硬化剤の添加量としては、エポキシ基1当量に対して、0.5〜1.5当量であることが好ましい。0.5当量より少ないと樹脂が完全に硬化せず、良好な機械特性を得ることができない。また、1.5当量より多いと硬化剤の未反応物が多く残存し、良好な機械特性を得ることができない。硬化触媒の添加量としては特に限定はしないが、エポキシ樹脂100重量部に対して0.1〜5重量部であることが好ましい。
なお、本発明のポリマーアロイには、本発明の目的を損なわない範囲でさらに他の各種の添加剤を添加することもできる。これら他の添加剤としては、例えば、タルク、カオリン、マイカ、クレー、ベントナイト、セリサイト、塩基性炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、ガラスフレーク、ガラス繊維、炭素繊維、アスベスト繊維、岩綿、炭酸カルシウム、ケイ砂、ワラステナイト、硫酸バリウム、ガラスビーズ、酸化チタンなどの強化材、非板状充填材、あるいは酸化防止剤(リン系、硫黄系など)、紫外線吸収剤、熱安定剤(ヒンダードフェノール系など)、滑剤、離型剤、帯電防止剤、ブロッキング防止剤、染料および顔料を含む着色剤、難燃剤(ハロゲン系、リン系など)、難燃助剤(三酸化アンチモンに代表されるアンチモン化合物、酸化ジルコニウム、酸化モリブデンなど)、発泡剤、カップリング剤(エポキシ基、アミノ基メルカプト基、ビニル基、イソシアネート基を一種以上含むシランカップリング剤やチタンカップリング剤)、抗菌剤等が挙げられる。
本発明から得られるポリマーアロイの成形方法は、任意の方法が可能であり、成形形状は、任意の形状が可能である。成形方法としては、例えば、圧縮成型法、トランスファー成型法などを挙げることができる。本発明では、成形をする際の硬化反応の過程でスピノーダル分解により相分離させ、ポリマーアロイを得ることができる。さらに、本発明のポリマーアロイをエポキシ樹脂の硬化前に強化繊維に含浸することにより、繊維強化複合材料の中間基材としてのプリプレグを作製することができる。強化繊維としては、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、ボロン繊維、アルミナ繊維、炭化ケイ素繊維などが用いられる。また、プリプレグを用いず、本発明のエポキシ樹脂組成物を直接強化繊維に含浸させた後加熱硬化する方法、例えばハンド・レイアップ法、フィラメント・ワインディング法、プルトルージョン法、レジン・インジェクション・モールディング法、レジン・トランスファー・モールディング法などの成形法によっても繊維強化複合材料を作製することができる。
本発明から得られるポリマーアロイ成形時の硬化温度や硬化時間は特に限定されず、配合する硬化剤や触媒に応じて適宜選択できる。例えば、ジアミノジフェニルスルホンを用いた場合には、180℃の温度で2時間、ジアミノジフェニルメタンを用いた場合には150℃以上の温度で2時間硬化させるのが好ましく、またジシアンジアミドとDCMUを用いた場合には135℃の温度で2時間硬化させるのが好ましい。
本発明によるポリマーアロイは、一般にその構成成分の特徴によって様々な利用方法があるが、例えば相手成分として耐衝撃性または柔軟性に優れるエポキシ樹脂及び/または熱可塑性樹脂を用いて、耐衝撃性または靭性を高めた構造材料に好適に用いることができる。
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
用いた試料の詳細は以下の通り。
<エポキシ樹脂>
E−1:三菱化学製「“jER(登録商標)”1007」(ビスフェノールA−ジグリシジルエーテル、エポキシ当量1975、SP値10.4(cal/cm1/2
E−2:三菱化学製「“jER(登録商標)”1009」(ビスフェノールA−ジグリシジルエーテル、エポキシ当量2850、SP値10.4(cal/cm1/2
E−3:三菱化学製「“jER(登録商標)”4007P」(ビスフェノールF−ジグリシジルエーテル、エポキシ当量2270、SP値10.8(cal/cm1/2
E−4:住友化学工業製「“スミエポキシ(登録商標)”ELM120」(トリグリシジル−m−アミノフェノール、エポキシ当量:118、SP値10.7(cal/cm1/2
E−5:ハンツマン・アドバンズド・マテリアルズ製「“アラルダイト(登録商標)”MY0510」(トリグリシジル−p−アミノフェノール、エポキシ当量:101、SP値10.7(cal/cm1/2
E−6:DIC製「“エピクロン(登録商標)”HP7200HHH」(ジシクロペンタジエン型エポキシ、エポキシ当量:286、SP値11.1(cal/cm1/2
E−7:日産化学製「TEPIC−P」(トリグリシジルイソシアヌレート、エポキシ当量:106、SP値15.3(cal/cm1/2)。
<熱可塑性樹脂>
T−1:アルケマ(株)製「“ナノストレングス(Nanostrength)(登録商標)”M22N」アクリル系ブロック共重合体(SP値10.2(cal/cm1/2
T−2:住友化学(株)製「“スミカエクセル(登録商標)”PES 5200P」ポリエーテルスルホン(SP値11.2(cal/cm1/2、数平均分子量:35000、末端基:全て塩素)
T−3:住友化学(株)製「“スミカエクセル(登録商標)”PES 3600P」ポリエーテルスルホン(SP値11.2(cal/cm1/2、数平均分子量:16000、末端基:全て塩素)
T−4:住友化学(株)製「“スミカエクセル(登録商標)”PES 5003P」ポリエーテルスルホン(SP値11.2(cal/cm1/2、数平均分子量:30000、末端基:100重合繰り返し単位当たり、1.1の水酸基末端)。
<硬化剤>
・三井化学ファイン製「MDA−220」(4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−DDM)
・住友化学製「“スミキュア(登録商標)”S」(4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−DDS)
・DIC製「DIC−TBC」(t−ブチルカテコール、TBC)。
<サンプルの準備>
(実施例1)
ホットスターラーを用いて、表1の組成でエポキシ樹脂を100℃に加熱しながら撹拌により混合した。相溶状態とした後、80℃まで降温し、エポキシ樹脂に対し硬化剤を添加し十分に混合し、硬化用サンプルとした。本ポリマーアロイの相図を確認したところ、UCSTを有することがわかった。
(実施例2〜11)
エポキシ樹脂または熱可塑性樹脂の種類・組成、硬化剤の量・種類を表1に記載のとおり変化させた以外は実施例1と同様にして硬化用サンプルを得た。本ポリマーアロイの相図を確認したところ、実施例7〜8を除き、UCSTを有することがわかった。実施例7〜8についてはLCSTを有することがわかった。また、実施例9〜11については、2種類のエポキシ樹脂同士は相溶状態となり、エポキシ樹脂とポリエーテルスルホンの間で相分離構造を形成し、LCSTを有することがわかった。
(比較例1〜12)
エポキシ樹脂の種類、組成を表1に記載のとおり変化させた以外は実施例1と同様にして硬化用サンプルを得た。本ポリマーアロイの相図を確認したところ、比較例6、8及び9を除きUCSTを有することがわかった。比較例6については完全に相溶しなかったため、相図の境界を確認することができなかった。比較例8〜9についてはLCSTを有することがわかった。比較例10〜11については、反応後も2種類のエポキシ樹脂硬化物同士が相溶状態となり、それらエポキシ樹脂とポリエーテルスルホンの間で相分離構造を形成し、LCSTを有することがわかった。また、比較例12については相溶状態となることがわかった。
<溶解度パラメータ(SP値)差の絶対値>
Fedorsの計算式を用いて求めたエポキシ樹脂及び熱可塑性樹脂それぞれの差の絶対値を算出した。
<硬化中の散乱測定>
真空中で脱泡した硬化用サンプルをホットステージ(LINKAM製「TH−600PM」)により加熱し、特に記載の無い場合、硬化温度まで昇温後、2時間以上保持し、硬化過程を光散乱装置(大塚電子製「DYNA−3000」)または小角X線散乱装置(リガク製「RU−200」)により追跡した。実施例6〜11及び比較例7〜12については、50℃から表1に記載の昇温速度(1℃/min及び10℃/min)で表に記載の硬化温度まで昇温し、その後一定温度で2時間以上保持した。なお、硬化中に十分に積算できず、明瞭な散乱スペクトルを得られなかった場合には、クエンチにより硬化途中で構造を固定化し、測定を行った。
得られた散乱スペクトルから、ピークの有無を確認し、ピークが存在する場合には、スピノーダル分解直後の散乱スペクトルの極大値に対応する散乱ベクトルqmi及び、最終的に得られたポリマーアロイの散乱スペクトルの極大値に対応する散乱ベクトルqmfを導き、qmi/qmfを表1に示した。
さらにqmfから、最終的に得られたポリマーアロイの構造周期を算出し、表1に示した。
<相分離時点での相図の変化速度測定>
硬化用サンプルを真空中で脱泡した後、2mm厚の“テフロン(登録商標)”製スペーサーにより厚み2mmになるように設定したモールド中でオーブンを用いて前記同様の方法で、硬化反応を行った。硬化反応中、5分間隔でサンプルを抜き取り、それぞれホットステージを用いて加熱しながら光学顕微鏡および光散乱装置により、相図の境界(相溶、非相溶の境界)温度を測定し、硬化中における相図の境界温度変化のデータを得た。すなわちホットステージの温度をサンプルが溶融するまで昇温させ、一旦1相状態とした後、徐々に降温させ、2相状態となった温度を相図の境界温度とした。この時、相溶状態の判断のためには、系内を平衡状態とするため、一定の温度で30分以上静置することが好ましい。
この様にして得られた相図の境界温度変化のデータを、変化にかかった時間で割ることにより、相図の変化速度を得た。例えば、硬化反応開始からt分後の相図の境界温度がT℃であり、その後t分後の時点で相分離が生じ、t分後の相図の境界温度がTであった場合、(T−T)/(t−t)が相分離時点での相図の変化速度となる(但し、t<t<t)。
このとき、UCST型相図を有する系について、相分離時点での硬化温度が一定でない場合、すなわち相分離時点において昇温速度τで昇温中であった場合、相図の変化する方向と昇温の方向が同一であるため、見かけ上、相図の変化速度は減少する。そのため、UCST型相図を有する系の見かけの相図の変化速度は(T−T)/(t−t)−τとなる。反対にLCST型相図を有する系においては、相図の変化する方向と昇温の方向が逆になるため、見かけ上、相図の変化速度は加速する。そのため、LCST型相図を有する系の見かけの相図の変化速度は(T−T)/(t−t)+τとなる。
<相構造ムラの観察>
硬化用サンプルを真空中で脱泡した後、2mm厚の“テフロン(登録商標)”製スペーサーにより厚み2mmになるように設定したモールド中でオーブンを用いて前記同様の方法で、硬化反応を行い、厚さ2mmの樹脂硬化物を得た。得られた硬化物を任意の大きさに切り出し、光学顕微鏡または透過型電子顕微鏡を用いて相構造を観察した。透過型電子顕微鏡用のサンプルは、モルホロジーに十分なコントラストが付くよう、OsOとRuOを用いて染色後、薄切片化した後に観察を行った。
光学顕微鏡または透過型電子顕微鏡観察において、視野10カ所をランダムに選出し、構造周期をΛとしたとき、Λ×100四方の視野の観察を行った。それぞれの視野中で、長径がΛ×10以上の凝集物の数を数え、得られた数の平均値を表1に示した。
<樹脂靭性(KIC)測定>
硬化前サンプルを真空中で脱泡した後、6mm厚の“テフロン(登録商標)”製スペーサーにより厚み6mmになるように設定したモールド中でオーブンを用いて前記同様の方法で、硬化反応を行い、厚さ6mmの樹脂硬化物を得た。この樹脂硬化物を12. 7×150mmの大きさにカットし、試験片を得た。インストロン万能試験機(インストロン社製)を用い、ASTM D5045に従って試験片を加工・実験をおこなった。試験片への初期の亀裂の導入は、液体窒素温度まで冷やした剃刀の刃を試験片にあてハンマーで剃刀に衝撃を加えることで行った。ここでいう、樹脂硬化物の靱性とは、変形モード1(開口型)の臨界応力強度のことを指している。
<曲げ弾性率>
硬化用サンプルを真空中で脱泡した後、2mm厚の“テフロン(登録商標)”製スペーサーにより厚み2mmになるように設定したモールド中でオーブンを用いて前記同様の方法で、硬化反応を行い、厚さ2mmの樹脂硬化物を得た。
これを幅10mm、長さ60mmの試験片に切り出し、インストロン万能試験機を用い、最大容量5kNのロードセルを使用し、スパン間長さを32mm、クロスヘッドスピードを2.5mm/分とし、JIS K7171(2008)に従って3点曲げを実施し、曲げ弾性率を得た。サンプル数n=5とし、その平均値で比較した。
Figure 2013136712
Figure 2013136712
実施例1〜2は、硬化剤であるDDSがエポキシに対して十分に存在し、硬化速度が速いため、相分離時点での相図変化速度が大きい。その結果、微細で均一かつ、凝集物の少ない相分離構造を得ることができ、比較例1〜2と比較し靭性、曲げ弾性率に優れたポリマーアロイを得ることができた。
実施例3では、硬化剤DDSに加え、硬化触媒としてTBCを1重量部添加した。結果、硬化速度が大きく加速し、それに伴い相図変化速度が大きくなり、実施例1〜2同様、微細で均一かつ凝集物の少ない相構造を得ることができ、比較例3と比較し靭性、曲げ弾性率に優れたポリマーアロイを得ることができた。
実施例4〜5では、硬化剤としてDDMを用いた。硬化剤量はやや少ないが、DDSと比較し硬化速度が速く、相図の変化速度が速いため、微細で均一かつ凝集物の少ない相構造を得ることができ、比較例4〜5と比較し靭性、曲げ弾性率に優れたポリマーアロイを得ることができた。
実施例6及び比較例7では、エポキシ樹脂に対してアクリル系ブロック共重合体を添加し、一旦分子相溶化した後、1℃/min及び10℃/minの昇温速度で硬化反応を実施した。実施例6においては、相図の変化速度は25℃/minであったが、1℃/minで昇温中に相分離したため、見かけの相図の変化速度は24℃/minとなる。一方、比較例7において、相図の変化速度は28℃/minであったが、10℃/minで昇温中に相分離したため、見かけの相図の変化速度は18℃/minとなった。実施例6の場合は、比較例7の場合と比較し、見かけの相図の変化速度が早いため、微細で均一かつ凝集物の少ない相構造を得ることができ、比較例7と比較し靭性に優れたポリマーアロイを得ることができた。
実施例7〜11及び比較例8〜12ではエポキシ樹脂に対してポリエーテルスルホンを添加し、一旦分子相溶化した後、表に記載の昇温速度で硬化反応を実施した。比較例12を除く系において昇温中に相分離し始めることを確認した。実施例7〜11では硬化剤をエポキシ樹脂に対して1.2当量加えてさらにTBCを添加しているため、硬化速度が速く、見かけの相図の変化速度が非常に速くなったため、微細で均一かつ凝集物の少ない相構造を得ることができ、見かけの相図の変化速度の小さい比較例8〜11と比較し樹脂特性に優れたポリマーアロイを得ることができた。
また、比較例6は、両者のSP値差が2.0(cal/cm1/2より大きい組合せの樹脂を用いたため、樹脂同士が互いに完全に相溶せず、そのため散乱測定においても明確な極大値を得ることができなかった。得られた相構造は粗大な分散構造となり、十分な靭性を得ることができなかった。比較例12は末端に水酸基を有するポリエーテルスルホンを用いたため、硬化反応後もエポキシ樹脂硬化物と相溶状態となり、十分な機械特性を得ることができなかった。

Claims (11)

  1. エポキシ樹脂を含む2成分の樹脂を、硬化反応前に相溶させ、エポキシ樹脂の硬化反応に伴うスピノーダル分解により相分離させ、その際の見かけの相図の変化速度が20℃/分以上であることを特徴とするポリマーアロイの製造方法。
  2. 上限臨界溶解温度を有するエポキシ樹脂を含む2成分の樹脂を、硬化反応前に相溶させ、エポキシ樹脂の硬化反応に伴うスピノーダル分解により相分離させ、その際の相図の変化速度が30℃/分以上であることを特徴とする請求項1に記載のポリマーアロイの製造方法。
  3. 下限臨界溶解温度を有するエポキシ樹脂を含む2成分の樹脂を、硬化反応前に相溶させ、エポキシ樹脂の硬化反応に伴うスピノーダル分解により相分離させ、その際の相図の変化速度が10℃/分以上であることを特徴とする請求項1に記載のポリマーアロイの製造方法。
  4. 前記エポキシ樹脂を含む2成分の樹脂のSP値の差の絶対値が2.0(cal/cm1/2以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリマーアロイの製造方法。
  5. 散乱測定において、スピノーダル分解開始直後の散乱スペクトルの極大値に対応する散乱ベクトルの値をqmi、得られたポリマーアロイの散乱スペクトルの極大値に対応する散乱ベクトルの値をqmfとしたとき、qmi/qmf<5となることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のポリマーアロイの製造方法。
  6. エポキシ樹脂を含む2成分の樹脂を硬化させて得られる構造周期0.01〜10μmの相構造を有するポリマーアロイであり、(構造周期×100)μm四方の視野中に存在する、長径が前記構造周期の10倍以上の凝集物の数が1個以下であることを特徴とするポリマーアロイ。
  7. 前記エポキシ樹脂を含む2成分の樹脂のSP値の差の絶対値が2.0(cal/cm1/2以下であることを特徴とする請求項6に記載のポリマーアロイ。
  8. 散乱測定においてスピノーダル分解開始直後の散乱スペクトルの極大値に対応する散乱ベクトルの値をqmi、得られたポリマーアロイの散乱スペクトルの極大値に対応する散乱ベクトルの値をqmfとしたとき、qmi/qmf<5となることを特徴とする請求項6〜7のいずれかに記載のポリマーアロイ。
  9. 散乱測定において散乱スペクトルが極大値を有することを特徴とする請求項6〜8のいずれかに記載のポリマーアロイ。
  10. 硬化反応前にエポキシ樹脂を含む2成分の樹脂が相溶し、硬化反応後に相分離することを特徴とする請求項6〜9のいずれかに記載のポリマーアロイ。
  11. 請求項6〜10のいずれかに記載のポリマーアロイからなる成形品。
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