JP2013136467A - 無機酸化物構造体の製造方法 - Google Patents

無機酸化物構造体の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】無機酸化物ナノ粒子以外の成分の添加が少ない状態でも無機酸化物ナノ粒子を配列させることでより簡便で精度の高い密度制御が可能となる無機酸化物構造体の製造方法を提供する。
【解決手段】複数の無機酸化物ナノ粒子が直線状あるいは曲線状に連結したチェーン状の構造体を作製する方法に関する。複数の無機酸化物ナノ粒子が分散した水分散液に緩衝作用を有する水溶性物質を添加する工程と、この工程の後に前記水分散液に水溶性有機溶媒を添加する工程とを具備する。
【選択図】図1

Description

本発明は、無機酸化物のナノ粒子からなる構造体(以下、これを無機酸化物構造体と呼ぶ)の製造方法に関するものである。
一般的に無機酸化物はその材質が持っている性質により顔料や塗料、化粧料、フィルター、触媒、触媒担体、各種のエレクトロニクス材料等、様々な分野に利用されている。そして、近年では、微小な粒子(以下、ナノ粒子と呼ぶ)を溶液中に分散させた無機酸化物ゾル等の製造方法について考えられている(例えば、特許文献1参照)。
また前述の様々な機能を制御するために無機酸化物ナノ粒子を配列制御して構造物の密度を制御する手法も近年考えられてきている(特許文献2〜6参照)。
しかしながら、特許文献2〜4に記載されている方法の場合、無機酸化物ナノ粒子を配列するのに精密なpHの制御や数日間の加熱保持が必要であるため、構造体形成が煩雑で時間がかかるという課題があった。さらに配列形成時にブロックポリマーもしくはテトラエトキシシランなどの構造体形成物質を用いており、ブロックポリマーやテトラエトキシシランの重合物といった高分子成分が配列形成後に残存する。このため、配列形成後の工程で高分子成分を除去する必要が生じるという課題もあった。
また特許文献5は10nm以上かつ10μm以下のミセルやエマルジョンあるいは樹脂といった高分子量の有機粒子を用いることにより金属酸化物微粒子を配列しているが、有機粒子によって形成される間隙に金属酸化物微粒子が集合しやすくなり、配列構造の中に金属酸化物微粒子が一本鎖構造以外にも凝集する部分が生成しやすくなるという課題があり、さらに多量の有機成分が構造物に残存させるか除去しなくてはならないという課題もあった。
また特許文献6では鎖状導電性微粒子の製造方法が開示されているが、導電性金属酸化物の場合、導電性金属酸化物を金属塩や金属アルコキシドの溶液の加水分解物から生じた金属水酸化物を空気中で200〜800℃の高温で焼成し合成した後解膠処理することで鎖状構造を得ているが、焼成によってナノ粒子が強固に結合した集合体(粉末)を解膠処理によりナノ粒子間の結合を切断することで鎖状構造を形成するため、集合体内部においてナノ粒子の結合の切断部位を制御することが難しく、均一な大きさの構造体が形成しにくく、構造体の密度を制御しにくいという問題があった。
特開昭64−3020号公報 PCT/JP/2009/064737公報 特願2010−035194号公報 特開2011−154843号公報 特開2007−211155号公報 特開2010−103109号公報
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、無機酸化物ナノ粒子以外の成分の添加が少ない状態でも無機酸化物ナノ粒子を配列させることでより簡便で精度の高い密度制御が可能となる無機酸化物構造体の製造方法を提供することを目的とするものである。
本発明に係る無機酸化物構造体の製造方法は、複数の無機酸化物ナノ粒子が直線状あるいは曲線状に連結したチェーン状の構造体を作製する方法であって、複数の無機酸化物ナノ粒子が分散した水分散液に緩衝作用を有する水溶性物質を添加する工程と、この工程の後に前記水分散液に水溶性有機溶媒を添加する工程とを具備することを特徴とするものである。
本発明にあっては、前記水分散液に水溶性有機溶媒を添加する工程の後に、前記水分散液を保持する工程を備え、この工程の前に分子量が500より大きい有機化合物を前記水分散液に含まないことが好ましい。
本発明にあっては、前記緩衝作用を有する水溶性物質がアミノ酸であることが好ましい。
本発明にあっては、前記アミノ酸が複数のアミノ基を有することが好ましい。
本発明にあっては、前記水溶性有機溶媒はアルコール類であることが好ましい。
本発明は、無機酸化物ナノ粒子以外の成分の添加が少ない状態でも無機酸化物ナノ粒子を配列させることでより簡便で精度の高い密度制御が可能となるものである。
本発明により得られる無機酸化物構造体の一例を示すSEM写真である。 本発明の実施の形態の一例を示すフローチャートである。 (a)は実施例1を、(b)は実施例2を、(c)は実施例3をそれぞれ示すSEM写真である。 (a)は実施例4を、(b)は実施例5をそれぞれ示すSEM写真である。 (a)は実施例6を、(b)は実施例7を、(c)は実施例8をそれぞれ示すSEM写真である。 (a)は実施例9を、(b)は実施例10をそれぞれ示すSEM写真である。 実施例11を示すSEM写真である。 実施例12を示すSEM写真である。
以下、本発明を実施するための形態を説明する。
図1は本実施の形態により得られる無機酸化物構造体を走査型顕微鏡により撮影したSEM(Scanning Electron Microscope)像である。図1において、無機酸化物構造体を構成する無機酸化物ナノ粒子は、粒径約10nmの酸化スズナノ粒子である。図1に示すように、それぞれ複数の酸化スズナノ粒子が直線状又は曲線状に一列に並んでボールチェーン状に配列(以下、これを一次元配列と呼ぶ)され、かつ隣接する酸化スズナノ粒子が所定の強度で連結されている。
この実施の形態の場合、酸化スズナノ粒子は酸化スズからなり、球状でその粒子径が約10nm程度のナノサイズにまで粒径制御された構成を有する。そして、酸化スズナノ粒子は、数個から数十個を1つの単位として構造体を形成し、例えば、超音波等の外力が加えられても分散し得ない程度の堅さで互いに連結されている。
図2に本実施の形態による無機酸化物構造体の製造方法の一例をフローチャートで示す。この場合、無機酸化物ナノ粒子の水分散液に、緩衝作用を有する水溶性物質と水溶性有機溶媒とを混合し、一定時間保持する。緩衝作用を有する水溶性物質を無機酸化物ナノ粒子の水分散液に添加する工程は、水溶性有機溶媒を添加する工程よりも先に行う。また、水溶性有機溶媒を添加する工程の後に、緩衝作用を有する水溶性物質と水溶性有機溶媒とを混合した無機酸化物ナノ粒子の水分散液を一定時間保持(静置)する。このようにして生成した反応溶液中には、数個から数十個の無機酸化物ナノ粒子が一次元配列した状態で連結した無機酸化物構造体が生成され得る。
特許文献2〜4に記載の、ブロックポリマーを添加後pHを制御し配列した無機ナノ粒子の構造体は、Mを無機酸化物ナノ粒子を構成する無機原子としたときに、pH低下により無機酸化物ナノ粒子表面のM−Oの負電荷を減少させ、その結果、粒子間の反発が減少し粒子間の結合が起こることによって発現する。一方で、本発明は水溶性有機溶媒の添加により溶媒の誘電率が低下することで粒子間の静電反発が減少させ、粒子間の結合が起こることによって発現することができる。そのためブロックポリマーを添加しpH調整した場合は、構造形成が非常にゆっくり進行するのに対し、エタノール添加の場合は、速く構造形成することが可能となる。
ここで、本実施の形態で使用可能な無機酸化物ナノ粒子としては、例えば、酸化スズ、シリカ、アルミナ、アルミノシリケート、ジルコニア、安定ジルコニア、セリア、マグネシア、カルシア、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、酸化スカンジウム、イットリア、ハフニア、酸化バナジウム、ニオビア、酸化タンタル、クロミア、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化マンガン、酸化鉄、酸化コバルト、酸化ニッケル、酸化銅、酸化銀、酸化亜鉛、酸化ガリウム、酸化インジウム、酸化ゲルマニウム、ITO(酸化インジウムスズ)、酸化鉛、酸化アンチモン、酸化ビスマス、酸化ネオジウム、酸化ランタン、酸化サマリウム、酸化ジスプロシウム、酸化イッテルビウム、酸化ユウロピウム等を挙げることができる。
さらに、本実施の形態で使用可能な無機酸化物ナノ粒子として、導電性を有した粒子を用いてもよい。導電性を有した無機酸化物ナノ粒子は、例えば、酸化スズや、酸化インジウム、アルミナ、ジルコニア、セリア、マグネシア、カルシア、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、酸化スカンジウム、イットリア、ハフニア、酸化バナジウム、ニオビア、酸化タンタル、クロミア、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化マンガン、酸化鉄、酸化コバルト、酸化ニッケル、酸化銅、酸化銀、酸化亜鉛、酸化ガリウム、酸化ゲルマニウム、酸化スズ、酸化鉛、酸化アンチモン、酸化ビスマス、酸化ネオジウム、酸化ランタン、酸化サマリウム、酸化ジスプロシウム、酸化イッテルビウム、酸化ユウロピウム、酸化レニウム等からなるもの、又はそれらが複合酸化物になったもの、あるいは無機元素をドープしたもの(例えば、GZO(ガリウムドープ酸化亜鉛)、IZO(インジウムドープ酸化亜鉛)、AZO(アルミニウムドープ酸化亜鉛))、あるいは不定比金属酸化物になったもの等により導電性を発現させたものであってもよい。特に、酸化スズや、ITOやFTO(フッ素ドープ酸化スズ)やATO(アンチモンドープ酸化スズ)等の酸化スズを含んだものが好ましい。
本実施の形態では、上記した無機酸化物ナノ粒子を一種用いたりあるいは二種以上を併用したりすることができる。また、本実施の形態では上記した無機酸化物ナノ粒子と上記以外の他種の無機酸化物ナノ粒子とを用いてもよい。また、本実施の形態では複数の無機酸化物ナノ粒子が1本の鎖状に一次元配列された状態のまま連結した無機酸化物構造体を生成してもよい。
これらの無機酸化物ナノ粒子の形状は特に限定しないが、球状、多角状やさらにはメソポーラス構造やゼオライトのようなミクロ孔を有する多孔体構造であってもよい。無機酸化物ナノ粒子の大きさ(直径)は、好ましくは1nmから10μm、より好ましくは1nmから500nmである。尚、無機酸化物ナノ粒子の大きさは、走査型電子顕微鏡もしくは透過型電子顕微鏡により確認することができる。
無機酸化物ナノ粒子の水分散液における濃度は、質量パーセントの単位で、上限は好ましくは30%以下でより好ましくは10%以下が好ましく、下限は好ましくは0.01%以上で、より好ましくは0.1%以上である。濃度が濃すぎると微粒子の衝突確率が高いために無機酸化物ナノ粒子が凝集しやすくなり構造の制御がしにくくなる。逆に濃度が低すぎると粒子が配列しにくくなる。
本実施の形態で用いる水溶性有機溶媒は、水と混合することで水溶媒の極性を下げる効果があり、分散している無機酸化物ナノ粒子と溶媒との相互関係を変化することで無機酸化物ナノ粒子の分散性を制御することが可能となる。水溶性有機溶媒は、特に限定されないが、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類,エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリンなどの多価アルコール類、メチルエチルケトンなどのケトン系やN−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドンなどのピロリドン系溶媒などが挙げられる。より好適にはアルコール類である。アルコール類は水に対する親和性と緩衝作用を有する水溶性物質との親和性のバランスがよいことと、後工程でコーティング液にするときに各種基板に対してもなじみがよく均質なコーティング膜が得られやすく適している。
本実施の形態で使用可能な緩衝作用を有する水溶性物質は、当該反応溶液中の水素イオン濃度が急激に変化することを防ぎ、無機酸化物ナノ粒子の急激な凝集を防ぐことができるものであれば良い。緩衝作用を有する水溶性物質としては、種類は特に限定しないが、より好ましくはアラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、バリンなどのアミノ酸が好適である。アミノ酸は無機酸化物ナノ粒子への吸着性と水溶性有機溶媒への親和性のバランスがよいため好適である。更に好ましくは、1分子中に複数(例えば、2〜4個)のアミノ基を有したアルギニンなどの塩基性アミノ酸であるが好ましい。複数のアミノ基を有したアミノ酸は、無機酸化物ナノ粒子への吸着が安定しているため好適である。
上記のような無機酸化物構造体を製造するにあたって、各成分の配合割合は、水分散液中の無機酸化物ナノ粒子100質量部に対して、水溶性有機溶媒が0.1〜100000質量部、緩衝作用を有する水溶性物質が0.01〜1000質量部とすることができる。尚、無機酸化物ナノ粒子の水分散液は、無機酸化物ナノ粒子100質量部に対して、水が100〜100000質量部として調製することができる。一つの成分の配合割合が上記の範囲を逸脱すると、他の成分の配合割合が相対的に少なくなってバランスが崩れることになり、無機酸化物ナノ粒子が凝集したり連結しなかったりし、構造体を形成することができないおそれがある。また、無機酸化物構造体を製造するにあたっては、上記成分を配合した後の水分散液を保持(静置)することができる。この場合、保持温度は、上記成分を配合した後の水分散液の融点から沸点までの温度、すなわち、液体の状態で保持できれば、特に限定しない。例えば、水分散液中の水が50質量%、エタノールが50質量%であれば、0℃〜60℃までの温度で保持するのが好ましい。上記成分を配合した後の水分散液を保持する時間(エージングする時間)については、特に限定していないが、本実施の形態では、無機酸化物構造体の連結構造が速やかに形成されることが利点の一つになっていることから1時間以内でも実用上形成可能である。
ここで、複数の無機酸化物ナノ粒子が分散した水分散液に緩衝作用を有する水溶性物質を添加する工程と、水溶性有機溶媒を添加する工程とを行なった後、この水分散液を保持する工程(無機酸化物ナノ粒子が配列する現象が起こる工程)を行う前に、分子量が500より大きい有機化合物が水分散液に含まれていないことが好ましい。分子量500以上を有した有機化合物が水分散液に含まれていると、有機化合物の分子が大きいため、無機酸化物ナノ粒子間に存在することがあり、無機酸化物ナノ粒子が配列しにくくなるおそれがある。
そして、以上の操作によって、水及び水溶性有機溶媒の混合液体中で分散していた無機酸化物ナノ粒子が配列し、かつ隣接する無機酸化物ナノ粒子が外力を加えても分散し得ない程度の堅さで連結した無機酸化物構造体を反応溶液中に生成できる。このような簡易な操作で無機酸化物ナノ粒子の配列状態を制御することにより、無機酸化物構造物の密度を制御することが可能になり、誘電率や屈折率を容易に制御することができる。また、上記の操作では、無機酸化物ナノ粒子以外の成分の添加が少ない状態でも無機酸化物ナノ粒子がより簡便に液体中で配列体を得ることが可能となることから構造体の密度を精度よく制御できるため無機酸化物ナノ粒子の利用分野を従来よりも一段と拡大し得るものである。
以下、本発明を実施例によって具体的に説明する。
(実施例1)
粒径が10nm程度のナノサイズからなる球状の酸化スズナノ粒子が溶液中に分散したコロイド状の酸化スズゾルを用意した。この酸化スズゾルは、多木化学製の酸化スズゾルであり、8.8質量%の酸化スズ(SnO)水分散ゾルに水を添加して酸化スズナノ粒子の濃度を2質量%に希釈して酸化スズ水分散液を得た。
次に、この酸化スズ水分散液から無機酸化物構造体を生成した。具体的には、先ず初めに、緩衝作用を有する塩基性アミノ酸であるアルギニン(和光純薬品工業製)を全量に対して0.05質量%となるように酸化スズ水分散液に添加した。次に、水溶性有機溶媒であるエタノール(和光純薬品工業製)をアルギニンを添加した酸化スズ水分散液と等量になるように添加し攪拌した。この液を60℃で12時間静置した。
そして、蒸留水により各反応溶液を約1/5に希釈した後、スピンコーティング(3000rpm)によって各反応溶液中の構造体をSi基板にそれぞれ付着させた。
(実施例2)
実施例1と同様にして希釈した酸化スズ水分散ゾル(酸化スズ水分散液)に、緩衝作用を有する塩基性アミノ酸であるアルギニンを全量に対して0.10質量%となるように添加した。これ以外は実施例1と同様にした。
(実施例3)
実施例1と同様にして希釈した酸化スズ水分散ゾル(酸化スズ水分散液)に、緩衝作用を有する塩基性アミノ酸であるアルギニンを全量に対して0.15質量%となるように添加した。これ以外は実施例1と同様にした。
(無機酸化物構造体の評価)
実施例1〜3によって反応溶液中の構造体を付着させた各Si基板を、走査型電子顕微鏡により撮影したところ、図3(a)〜(c)に示すようなSEM像が得られた。
図3(a)〜(c)に示すように、一次元配列状態の酸化スズナノ粒子が複数重なることで一部凝集している箇所もあるが、複数個の酸化スズナノ粒子が1本の鎖状に一次元配列された状態のまま連結した無機酸化物構造体を生成できることが確認できた。また、無機酸化物構造体における酸化スズナノ粒子の連結度合いについてを確認するために、無機酸化物構造体に対して超音波照射等による外力を与えても、酸化スズナノ粒子の配列状態が壊れないことが確認できた。
(実施例4)
アルギニンの代わりに、リシンを0.1質量%で添加した以外は、実施例1と同様の工程とした。
(実施例5)
アルギニンの代わりに、ヒスチジンを0.2質量%で添加した以外は、実施例1と同様の工程とした。
実施例4,5について、上記と同様のSEM像を得た。図4(a)(b)に示すように、一次元配列状態の酸化スズナノ粒子が複数重なることで一部凝集している箇所もあるが、複数個の酸化スズナノ粒子が1本の鎖状に一次元配列された状態のまま連結した無機酸化物構造体を生成できることが確認できた。
(実施例6)
アルギニンの添加量を0.1質量%とし、さらにエタノールの代わりに1−プロパノールを用いた以外は、実施例1と同様にした。
(実施例7)
アルギニンの添加量を0.1質量%とし、さらにエタノールの代わりに2−プロパノールを用いた以外は、実施例1と同様にした。
(実施例8)
アルギニンの添加量を0.1質量%とし、さらにエタノールの代わりにt−ブタノールを用いた以外は、実施例1と同様にした。
実施例6〜8について、上記と同様のSEM像を得た。図5(a)〜(c)に示すように、一次元配列状態の酸化スズナノ粒子が複数重なることで一部凝集している箇所もあるが、複数個の酸化スズナノ粒子が1本の鎖状に一次元配列された状態のまま連結した無機酸化物構造体を生成できることが確認できた。
(実施例9)
アルギニンの添加量を0.1質量%とし、さらに保持温度を40℃とした以外は、実施例1と同様にした。
(実施例10)
アルギニンの添加量を0.1質量%とし、さらに保持温度を80℃とした以外は、実施例1と同様にした。
実施例9、10について、上記と同様のSEM像を得た。図6(a)(b)に示すように、一次元配列状態の酸化スズナノ粒子が複数重なることで一部凝集している箇所もあるが、複数個の酸化スズナノ粒子が1本の鎖状に一次元配列された状態のまま連結した無機酸化物構造体を生成できることが確認できた。
(実施例11)
酸化スズ水分散ゾルの代わりに、酸化セリウム水分散ゾル(多木化学製B−10)を用い、これを水で希釈して酸化セリウムナノ粒子の濃度を2質量%とした酸化セリウム水分散液を用い、さらにアルギニンの添加量を0.2質量%とした以外は、実施例1と同様にした。
実施例11について、上記と同様のSEM像を得た。図7に示すように、一次元配列状態の酸化セリウムナノ粒子が複数重なることで一部凝集している箇所もあるが、複数個の酸化セリウムナノ粒子が1本の鎖状に一次元配列された状態のまま連結した無機酸化物構造体を生成できることが確認できた。
(実施例12)
14mlの水に130gの2−プロパノールを溶解させた水溶液を生成した後、この水溶液に12gのチタンイソプロポキシド(Ti(iOPr))を加えて室温で激しく攪拌して溶解させ、加水分解した加水分解溶液を生成した。
次いで、この水溶液を濾過して沈殿物を得、得られた沈殿物を水で何度も洗浄して、当該沈殿物から余分な2−プロパノールを取り除いた洗浄沈殿物を生成した。そして、183mlの水に洗浄沈殿物を再分散させた洗浄沈殿物含有溶液を生成し、この洗浄沈殿物含有溶液のH/Ti4+比が0.5となるように、当該洗浄沈殿物含有溶液に硝酸(HNO)を加え、混合溶液を生成した。次いで、この混合溶液を室温で3日間攪拌してペプチゼーション(解膠)することによりコロイド状のチタニアゾルを生成した。このようにして得られたチタニアゾルは、半透明なライドブルー色からなり、ナノサイズからなる球状のチタニアナノ粒子が溶液中に単分散していた。次に、蒸留水を入れたビーカに、チタニアゾルを封入したセロハンチューブを投入し、マグネチックスターラーによりビーカ内の攪拌子を回転させて、蒸留水を攪拌して透析することにより、当該チタニアゾルから硝酸イオンなどを取り除きpH3.5のチタニアゾルを調整した。
このチタニアゾルを用いて金属酸化物構造体を生成した。具体的にはグルタミン酸を0.1質量%となるよう添加し、その後エタノールを3.5質量%になるように添加し、60℃に24時間保持した。
次に、このようにして生成した反応溶液中の構造体について確認した。蒸留水により反応溶液を約1/10に希釈し、反応溶液中の構造体の密度を減少させ、後述するディップコーティングの際に、チタニアナノ粒子の配列形態を判断し易くした。次いで、ディップコーティングによって反応溶液中の構造体をSi基板に付着させた。このとき得られたSEM像を図8に示す。図8に示すように、数個から数十個のチタニアナノ粒子が一次元配列した状態で連結した結晶性金属酸化物構造体が生成されていることが確認できた。
(比較例)
アルギニンの代わりに0.1N塩酸(0.1質量%)を添加した以外は実施例1と同様にした。この場合、酸化スズナノ粒子は凝集してしまっており、鎖状に一次元配列された状態のまま連結した無機酸化物構造体を確認することはできなかった。

Claims (5)

  1. 複数の無機酸化物ナノ粒子が直線状あるいは曲線状に連結したチェーン状の構造体を作製する方法であって、複数の無機酸化物ナノ粒子が分散した水分散液に緩衝作用を有する水溶性物質を添加する工程と、この工程の後に前記水分散液に水溶性有機溶媒を添加する工程とを具備することを特徴とする無機酸化物構造体の製造方法。
  2. 前記水分散液に水溶性有機溶媒を添加する工程の後に、前記水分散液を保持する工程を備え、この工程の前に分子量が500より大きい有機化合物を前記水分散液に含まないことを特徴とする請求項1に記載の無機酸化物構造体の製造方法。
  3. 前記緩衝作用を有する水溶性物質がアミノ酸であることを特徴とする請求項1又は2に記載の無機酸化物構造体の製造方法。
  4. 前記アミノ酸が複数のアミノ基を有することを特徴とする請求項3に記載の無機酸化物構造体の製造方法。
  5. 前記水溶性有機溶媒はアルコール類であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の無機酸化物構造体の製造方法。
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