以下、本発明の各実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
(実施の形態1)
[実施例1]
図2(a)は、本発明の実施の形態1の実施例1における接触式マイクロホンの側断面図である。ここではまず図2(a)を用いて、SUS製(200μ厚)の収音当接部材12aを有する接触式マイクロホンについて説明する。従来の接触式マイクロホン(図1参照)と共通又は同様の部材については、同じ符号を用いて説明する。ちなみに収音当接部材12aは、従来の接触式マイクロホン(図1参照)には無い部材である。また、後に述べる振動伝達部材7a及び制振部材8aに関しても、従来の接触式マイクロホン(図1参照)が有する振動伝達部材107(図1参照)及び制振部材108(図1参照)とは若干異なる構成を有している。そしてこれらが、本発明の特徴的な部分となっている。
図2(a)における本実施例1の接触式マイクロホン1aのマイクロホン素子2は、皮膚などの収音対象物3より収音した話者の音声などの体内伝導音4が、収音当接部材12aと振動伝達部材7aとを介して振動膜5に伝わると、振動膜5の振動を電気信号に変換し、導線6を介して外部へと伝達する。
カバー部材9は、従来の接触式マイクロホン(図1参照)と同様に、アルミなどの金属やアクリル、ABSなどのプラスチックからなり、接触式マイクロホン1a全体の機械的強度を保持するとともに、製造時には樹脂注入鋳型の役目を果たしている。
振動伝達部材7aは、体内伝導音4の振動をマイクロホン素子2まで損失なく伝達するもので、例えばウレタンエラストマーにより構成され、その一方がマイクロホン素子2の振動膜5と接触している点では、従来の接触式マイクロホン(図1参照)と同様である。
しかしながら、振動伝達部材7aのもう一方は、従来の接触式マイクロホン(図1参照)のように、それ自体が収音対象物3と広く接しているわけではない。本実施例1の振動伝達部材7aは、従来の接触式マイクロホン(図1参照)にはなかった、収音当接部材12aのほぼ中央部付近と接している。収音当接部材12aは、例えば200μm厚のSUS304により構成されている。そして、本実施例1の接触式マイクロホン1aにおいて、振動伝達部材7aと収音当接部材12aとの接触部は、収音当接部材12aの略中心に設けられている。また、振動伝達部材7aと収音当接部材12aとの接触部が有する接触面積のうち、収音当接部材12aが収音対象物3と接触する面と平行な方向の接触面積は、振動伝達部材7aの他の部分における平行方向の断面積以下となっている。さらにまた、収音当接部材12aが収音対象物3と接触する面と平行な方向において、マイクロホン素子2、振動伝達部材7a及び収音当接部材12aのそれぞれの中心は、収音当接部材12aが収音対象物3と接触する面と垂直な方向において略同一の軸上にある、とも言える。
以上の構成により、本実施例1の接触式マイクロホン1aは、騒音環境下による周囲の背景雑音の混入を反射・抑制し、目的とする収音対象物の振動のみを効率よく収音することができる。その結果、耐騒音性がさらに改善され、通常音声のみならず話者のつぶやき音などのような非可聴な音声や物音のみを明瞭に皮膚などの収音対象物から収音し易くすることができる。その特徴と効果については、後ほどさらに詳細に説明する。
制振部材8aは、従来の接触式マイクロホン(図1参照)と同様に、背景雑音である気導音10が接触式マイクロホン1aの背面から侵入するのを防止するもので、例えば弾性エポキシ樹脂により、マイクロホン素子2の収音開口部11を除く全体を覆うよう構成されている。それに加えて本実施例1の制振部材8aは、従来の接触式マイクロホン(図1参照)とは異なり、収音当接部材12aとも接しており、振動伝達部材7aの周囲を取り囲むように配置されている。そして、マイクロホン素子2の本体と振動伝達部材7a及び制振部材8aは、カバー部材9と収音当接部材12aとにより、内部に密閉されている。なお、振動伝達部材7aは、収音当接部材12aの略中央部とマイクロホン素子2の収音開口部11の略中央部とを結んで配置されている。本実施例1の場合、マイクロホン素子2の収音開口部11の略中央部は、収音当接部材12aの略中央部の直下に配置されおり、その最短距離を結ぶよう、振動伝達部材7aが設けられている。なお、マイクロホン素子2の振動膜5も、基本的には振動伝達部材107(図1参照)と同様のプラスチック材料により形成されている。
なお、収音当接部材12aとカバー部材9の材料については、実施例7により後述する。
以上に述べた構成を有する本実施例1の接触式マイクロホン1aの特徴について、これより述べる。
先ほども述べたように、本実施例1の接触式マイクロホン1aが有する収音当接部材12aは、例えば200μ厚のSUS304、すなわち金属部材により構成されている。先の(表1)に示すとおり、金属部材の音響インピーダンスは4160×104kg/m2・sで、収音対象物3として想定している皮膚などの軟質組織はもちろん、外部からの気導音10を伝達する空気や、振動伝達部材7aを構成するプラスチック部材と大きく異なる。
すなわち、本実施例1の接触式マイクロホン1aは、このような音響インピーダンスが著しく異なる部材を、収音対象物3からマイクロホン素子2の振動膜5へと至る体内伝導音4の伝達経路に配置していることになる。この場合、従来の常識では、収音当接部材12aと収音対象物3又は振動伝達部材7aとの境界面において、体内伝導音4の反射が大きくなり、マイクロホン素子2の振動膜5へは伝達しにくくなるはずである。
しかしながら、このようなデメリットがあったとしても、できるだけ収音したくない外部からの気導音10の減衰率が、収音したい体内伝導音4の減衰よりも大きい。つまり、従来の接触式マイクロホン(図1参照)よりも、本実施例1の接触式マイクロホン1aのほうが、S/N比としては高いので、体内伝導音4をより効率的に収音することができる。
その理由については次のように考えられる。図2(a)に示す本実施例1の収音当接部材12aに体内伝導音4が与えられた場合、その物理的な振動による振幅は、収音当接部材12aの中心部において最も大きくなる。そして、その体内伝導音4による物理的な振動が最も大きくなる収音当接部材12aの中心部からマイクロホン素子2の振動膜5へと至る経路には、マイクロホン素子2の振動膜5と同様、プラスチック材料により構成された振動伝達部材7aが配置されている。これにより、体内伝導音4による物理的な振動を効率的にマイクロホン素子2の振動膜5へと伝えることができる。
なおかつ、振動伝達部材7aの周囲には、制振部材8aが配置されている。このことは、収音当接部材12aの中心部以外の部分から侵入しようとする外部からの気導音10が制振部材8aによってくい止められ、マイクロホン素子2の振動膜5にまで達しにくいことを意味する。そして、マイクロホン素子2の本体と振動伝達部材7a及び制振部材8aは、カバー部材9と収音当接部材12aとにより、それらの内部に密閉されているため、従来の接触式マイクロホン(図1参照)とは異なり、外部からの気導音10が侵入する余地は無い。よって、外部からの気導音10がマイクロホン素子2の振動膜5に到達するためには、収音当接部材12aの周辺部から、結果的に距離が遠く、音の伝達効率に優れた振動伝達部材7aが接触している収音当接部材12aの中央部まで廻り込まなければならない。この廻り込みの間に、外部からの気導音10の減衰は、より大きくなるのである。
以上のように、図2(a)に示す本実施例1の接触式マイクロホン1aは、本来収音したい体内伝導音4にとっては、より収音されやすく、できるだけ収音したくない外部の気導音10にとっては、より収音されにくい構造を有している。そのため、外部の気導音10に対する体内伝導音4のS/N比が改善され、体内伝導音4をより効率的に収音することができる。
このような本実施例1の接触式マイクロホン1aが、従来の接触式マイクロホン(図1参照)に対して、実際にどれくらい性能が上がったかについて、これより示す。性能の良し悪しを判断するために、騒音環境下における接触式マイクロホンのS/N比と明瞭度の評価を行った。
最初に、本実施例1を含む本発明の接触式マイクロホンのS/N比を評価する方法を、以下に示す。
図3は、接触式マイクロホンのS/N比を評価する方法を示す図である。なお、このS/N比の評価方法は、全ての接触式マイクロホンに対して共通に用いられる。まず、半無音響室の中で、展示会場の雑踏を録音した音声ファイル(日本音響学会配布)を背景雑音、すなわち外部の気導音10として再生装置13aにより再生し、アンプ13bを介してスピーカ13cより流す。その状態で、騒音計により100dBと計測される位置において、接触式マイクロホン(本実施例1においては図2(a)に示す接触式マイクロホン1a)を咽喉あたりに装着する。そして、日本聴覚医学会にて推奨されている単音節20語音表の文字を、通常発話(約90dB)で各2秒おきに発音して録音を行う。その録音波形を基に、接触式マイクロホン1aで収音された外部の気導音10と、話者の発声すなわち体内伝導音4との音圧比を、下記に記す(式2)を用いてdB換算してS/N比とし、評価を行う。
S/N比(dB)=20log(S/N) (式2)
さらに、先のS/N比測定時に得られた単音節20語音表の録音音声ファイルを、任意被験者4名に聴かせ、聞き取った文字を記録してもらう。そして、それぞれの正答率を計算して単音節明瞭度とし、その単音節明瞭度を0.85で除して文章了解度として評価を行う。ちなみに、文章了解度を算出する際に単音節明瞭度を0.85で除するのは、一般に「単音節明瞭度の正答率が85%あれば文章了解度は100%となる」と言われているためである。
なお、このような評価方法の詳細については、「公害防止管理者等など資格認定講習用 新・公害防止の技術と法規2009 騒音・振動編」のp117にも記載されている。 以上の方法により評価を行った結果、図2(a)に示す本実施例1における接触式マイクロホン1aのS/N比は20dBであり、100dB騒音下における文章了解度は75%であることがわかった。これに対し、従来の接触式マイクロホン(図1参照)のS/N比は7dBであった。以上のことから、図2(a)に示す本実施例1における接触式マイクロホン1aのS/N比がかなり向上していることが明らかとなった。
このように、性能が改善された本実施例1の接触式マイクロホン1aは、例えば以下のようなプロセスにより作成できる。まず図2(a)において、制振部材8aがカバー部材9に充填される。この時、マイクロホン素子2や振動伝達部材7aを格納するための格納部(図示せず)が、例えば2液系弾性エポキシ樹脂のキャスティング法などにより制振部材8a内に形成される。次に、制振部材8a及びカバー部材9を貫通する貫通孔(図示せず)が形成され、その貫通孔にマイクロホン素子2の導線6が通された後、制振部材8a内の格納部の底面にマイクロホン素子2が設置される。その後、マイクロホン素子2の収音開口部11にウレタンエラストマーが注入・ポッティングされ、80℃で1時間の加熱により振動伝達部材7aが形成される。このとき、振動伝達部材7aは自らの表面張力により先端部が半球状になっている。そして、収音当接部材12a、すなわち厚み200μのSUS製の蓋が、同じく制振部材8aを形成する際に用いた2液系弾性エポキシ樹脂を接着剤として、80℃で1時間の加熱硬化により接着固定されると、先の図2(a)に示す接触式マイクロホン1aが完成する。
なお、本実施例1において制振部材8aとして用いた弾性エポキシ樹脂としては、例えばセメダイン社製EP001(業務用エポキシ樹脂系弾性接着剤)を変性ポリアミン硬化剤にて等量混合し、80℃にて硬化させたものが好ましく用いられる。また、本実施例1において振動伝達部材7aとして用いたウレタンエラストマーとしては、例えば(株)エクシールコーポレーション社製ポリウレタン人肌のゲル原液(C−15の主剤と硬化剤を3:1にて混合し、80℃にて硬化させたもの)が好ましく用いられる。さらに、収音当接部材12a及びカバー部材9については、体内気導音4を伝達する空気(415kg/m2・s)と音響インピーダンスの値がかけ離れた材質を有する鉄、ステンレス、アルミニウムなどの金属(4160×104kg/m2・s)の他に、ガラスなどのセラミックス(1122×104kg/m2・s)であっても構わない。さらに、収音当接部材12aの露出面、すなわち人肌などの収音対象物との接触面やその側面などが、樹脂などのコーティング部材によりコーティングされてもよい。これは特に、収音当接部材12aが金属である場合に効果がある。金属が人肌に直接触れると、気温によっては冷たさを感じたり、汗などが付着し、収音当接部材に錆が発生したりすることがある。コーティング部材は、このような不具合を回避する効果がある。
以上のように、本実施例1の接触式マイクロホンを用いれば、耐騒音性がさらに改善され、騒音環境下で通常音声や非可聴つぶやき音声などが明瞭に収音し易くなる。
以下、本実施例1の接触式マイクロホンと従来の接触式マイクロホンとを対比して説明する。
従来の接触式マイクロホンは、できるだけ静かな雑音のない環境で使用することを前提としている。例えば、患者の体内伝導音である脈拍や心臓音を常時モニタリングする振動ピックアップ検出器などへの適用である。従来の接触式マイクロホンは、S/N比のN(ノイズ)ができるだけ少ない環境下において、S(信号成分)の増大を図ろうとする。従来の接触式マイクロホンは、騒音環境下で使用すること、それ自体が想定されていない。騒音環境下は、例えばヘッドホンのようスピーカ部に近接した接触式マイクロホン、狭小な筐体内にスピーカ部に近接して配置される接触式マイクロホンが挙げられる。本発明者によれば、従来の接触式マイクロホンは、上記騒音環境下では、N(ノイズ)があまりに大きく、実用化レベルにはないことが判明した。
これに対して、本実施例1の接触式マイクロホン1aは、収音当接部材12aが、カバー部材の収音開口部11を覆うように配置されている。このため、検知しようとする信号成分の減少が懸念された。しかしながら、本発明者の実験等によれば、収音当接部材12aが、開口部11を覆う形でありながら、信号成分減少は実装上問題にならないレベルであることが判明した。収音当接部材12aを、振動膜5に対向するその中心に配置したこと、及び収音当接部材12aの材質に音響インピーダンスZが大きく異なる材料を用いたことが奏功したと考えられる。なお、収音当接部材12aの厚さも最適化している。
以上の構成により、本実施例1の接触式マイクロホン1aは、騒音環境下による周囲の背景雑音の混入を反射・抑制し、目的とする収音対象物の振動のみを効率よく収音することができる。その結果、耐騒音性がさらに改善され、通常音声のみならず話者のつぶやき音などのような非可聴な音声や物音のみを明瞭に皮膚などの収音対象物から収音し易くすることができる。ヘッドホンのようなスピーカ部に近接してマイクロホンを配置可能な送受信装置に搭載することが可能である。
[実施例2]
図2(b)は、本発明の実施例2における接触式マイクロホンの側断面図を示す図である。本実施例2の接触式マイクロホン1bの構成は、先に述べた実施例1における接触式マイクロホン1aと共通している部分が多いので、それらについては説明を省略する。先の実施例1と異なるのは、収音当接部材12b及び制振部材8bである。これらを中心に、本実施例2の接触式マイクロホン1bについてこれより説明する。
図2(b)における本実施例2の接触式マイクロホン1bのマイクロホン素子2は、皮膚などの収音対象物3より収音した話者の音声などの体内伝導音4が、収音当接部材12bと振動伝達部材7aとを介して振動膜5に伝わると、振動膜5の振動を電気信号に変換し、導線6を介して外部へと伝達する。本実施例2の接触式マイクロホン1bにおいても、先の実施例1と同様、振動伝達部材7aと収音当接部材12bとの接触部は、収音当接部材12bの略中心に設けられている。また、振動伝達部材7aと収音当接部材12bとの接触部が有する接触面積のうち、収音当接部材12bが収音対象物3と接触する面と平行な方向の接触面積は、振動伝達部材7aの他の部分における平行方向の断面積以下となっている。さらにまた、収音当接部材12bが収音対象物3と接触する面と平行な方向において、マイクロホン素子2、振動伝達部材7a及び収音当接部材12bのそれぞれの中心は、収音当接部材12bが収音対象物3と接触する面と垂直な方向において略同一の軸上にある、とも言える。
以上の構成により、本実施例2の接触式マイクロホン1bは、騒音環境下による周囲の背景雑音の混入を反射・抑制し、目的とする収音対象物の振動のみを効率よく収音することができる。その結果、耐騒音性がさらに改善され、通常音声のみならず話者のつぶやき音などのような非可聴な音声や物音のみを明瞭に皮膚などの収音対象物から収音し易くすることができる。
本実施例2の収音当接部材12bは、アルミニウム金属製のキャップ形状1.5mm厚の当接部材を有しており、カバー部材9との入れ子構造により、嵌合・接着されている。また、制振部材8bは、フェニルアミノシランにより表面改質したシリカ粉(アドマテックス社製SC6202−SXC)を重量比で50%分散させた弾性エポキシ樹脂系複合材を用いている。このように、シリカのような無機材料系フィラーを含むことで弾性率が増大し、カバー部材9やマイクロホン素子2の金属部分との密着性が増加する。また、内包したマイクロホン素子2がしっかり固定されるので、マイクロホン素子2の振動膜5のみではなくマイクロホン素子2全体が動くことによる伝達振動の損失を防いでいる。
それに加えて、制振部材8bの音響インピーダンスが、カバー部材9やマイクロホン素子2の金属部分の音響インピーダンスにより近い値となるので、これらの金属部分と制振部材8bとの界面での反射が抑制され、制振部材8b中の弾性エポキシ樹脂成分による振動の吸収損失に効果がある。この点については、後に述べる実施例4と比較例5との対比において、詳細に述べる。
なお、収音当接部材12bとカバー部材9の材料については、実施例7により後述する。
また、制振部材8bに分散される無機材料系フィラーとしては、サブミクロンから100ミクロンの粒子サイズのものが好ましく用いられる。これは、サブミクロン以下のものは一般的に分散性が悪く、凝集し分布制御の妨げとなり、100ミクロン以上のものは、分散性が悪いために沈降・偏析しやすく、接触式マイクロホン1bの機械的強度を下げてしまうためである。
また、制振部材8bに分散される無機材料系フィラーとしては、先に述べたシリカの他に、アルミナ、ジルコニア、シリカ、炭酸カルシウム、カオリン、クレー、コロイダルシリカ、チタニアなどを用いることができる。そしてこれらは単独であってもよく、上記の中から2種類以上選択され混合されたものが用いられても構わない。
次に、制振部材8bに分散される無機材料系フィラーの含有率についてであるが、75%以上だと粘度の上昇により製造プロセスによるハンドリングが困難となると同時に、2液エポキシ樹脂でたびたび問題となる可使時間の短縮につながり、含有率が5%以下だと制振効果が認められないことがわかっている。これらのことから、制振部材8bに分散される無機材料系フィラーの含有率は5〜75%の範囲が好ましい。
さらに、本実施例1、2の接触式マイクロホン1a及び1bにおける収音当接部材12a及び12bとして採用している金属材料はSUSやアルミ二ウムであるが、これは以下の理由による。
一般に、音響インピーダンスは(式3)に示すように密度ρと材料中の音速cによって決定され、材料中の音速cは(式4)に示すように密度ρと体積弾性率kによって決定される。
Z=ρ・c (式3)
c=√(k/ρ) (式4)
したがって、(式3)、(式4)より、音響インピーダンスZと密度ρと体積弾性率kとの関係は以下のように導かれる。
Z=√(ρ・k) (式5)
ここで(表2)に示す、各種金属の音速cを参照すると、鉄系やアルミ系、チタン系金属の音速cが、他の金属よりも比較的大きいことがわかる。(式3)より明らかなように、音響インピーダンスZは音速cに比例する。鉄系やアルミ系、チタン系金属などの音響インピーダンスは、他の金属よりも相対的に大きな値となるため、好んで用いられる。
以上のように、本実施例2の接触式マイクロホンを用いれば、耐騒音性がさらに改善され、騒音環境下で通常音声や非可聴つぶやき音声などが明瞭に収音し易くなる。
[実施例3]
図4は、本発明の実施例3における接触式マイクロホンの側断面図である。図4(a)は、本実施例3における接触式マイクロホン1cの全体側断面図であり、図4(b)は、振動伝達部材7aの先端部の拡大図である。本実施例3の接触式マイクロホン1cの構成は、先に述べた実施例1又は実施例2と共通している部分が多いため、それらについてはその説明をできるだけ省略し、主に、先に述べた実施例1と異なる部分について、これより説明する。
まず、本実施例3の接触式マイクロホン1cにおいても、先の実施例1及び2と同様、振動伝達部材7aと収音当接部材12bとの接触部は、収音当接部材12bの略中心に設けられている。また、振動伝達部材7aと収音当接部材12bとの接触部が有する接触面積のうち、収音当接部材12bが収音対象物3と接触する面と平行な方向の接触面積は、振動伝達部材7aの他の部分における平行方向の断面積以下となっている。さらにまた、収音当接部材12bが収音対象物3と接触する面と平行な方向において、マイクロホン素子2、振動伝達部材7a及び収音当接部材12bのそれぞれの中心は、収音当接部材12bが収音対象物3と接触する面と垂直な方向において略同一の軸上にある、とも言える。
以上の構成により、本実施例3の接触式マイクロホン1cは、騒音環境下による周囲の背景雑音の混入を反射・抑制し、目的とする収音対象物の振動のみを効率よく収音することができる。その結果、耐騒音性がさらに改善され、通常音声のみならず話者のつぶやき音などのような非可聴な音声や物音のみを明瞭に皮膚などの収音対象物から収音し易くすることができる。
<キャップ状の収音当接部材12b>
制振部材8bは、弾性エポキシ樹脂とシリカとの複合材であり、収音当接部材12bはアルミニウム製1.5mm厚のキャップ状を有する。これらの点においては、先に述べた実施例2と同様である。しかしながら、先の実施例2における収音当接部材12bが、カバー部材9との入れ子構造により、直接的に嵌合・接着されていたのに対し、本実施例3における接触式マイクロホン1cでは次のような構造を有している。
すなわちまず、制振部材8bの内部には、金属製のワッシャ22が、マイクロホン素子2の周囲を取り囲むように配置されている。次に、収音当接部材12b及びカバー部材9は、それぞれ、プラスチック又は金属製の上下連結用チューブ23との入れ子構造により、嵌合・接着されている。そのため、収音当接部材12bとカバー部材9とは、上下連結用チューブ23を介して、間接的に接合されていることになる。
<音響ファイバ19>
さらに、制振部材8b内部にあるマイクロホン素子2と収音当接部材12bとの間には、いわゆる音響ファイバ19が配置されている。音響ファイバ19は、実施例1及び実施例2においても用いられている振動伝達部材7aを、アルミニウム製の円筒19aの内部に配置した。すなわち、振動伝達部材7aが円筒19aに格納されることにより音響ファイバ19が構成され、円筒19aの断面は収音当接部材12bの収音対象物3との接触面の裏面及びマイクロホン素子2の収音開口部11と対向し、円筒19aの側面は制振部材8bと当接している。この音響ファイバ19は、収音当接部材12bから振動伝達部材7aへと伝達される体内伝導音4の振動が、マイクロホン素子2の振動膜5以外の部分へと拡散するのを防いでいる。これにより、収音当接部材12bからの体内伝導音4は、損失がより少なく効率よく、マイクロホン素子2の振動膜へと伝達される。また、音響ファイバ19は、周囲の空気からいわゆる雑音として制振部材8bに伝達される気導音10の振動が、マイクロホン素子2の振動膜5へと伝達するのを防ぐ役割も有している。
さらに、音響ファイバ19は、上記、体内伝導音4の振動の拡散防止効果及び、気導音10の振動の伝達防止効果に加えて、図6(b)及び図7で後述するように、マイクロホン素子2の配置の自由度を向上させることができる効果を有する。
このような、マイクロホン素子2の周囲に配置されたワッシャ22や、上下連結用チューブ23による間接的な接合構造を有しているのは、カバー部材9及び収音当接部材12bの略中心にマイクロホン素子2及び音響ファイバ19を配置するためである。それは、後に述べる本実施例3の接触式マイクロホン1cの作成プロセスにおいて、特に効果を有する。
次に、図4(b)に示す振動伝達部材と収音当接部材との接触部位の拡大図について説明する。振動伝達部材7aは、その硬化前のウレタンエラストマー前駆体の表面張力により、一般的には半球面状の形状を有していて、任意の接触面積により収音当接部材12bと接している。一般に、伝達される振動エネルギー(音圧力)は接触面積に比例する。この接触面積が大きすぎると、収音対象物3(皮膚)との接触面に僅かに存在する隙間18や、周囲の空気を介して接触式マイクロホンの周辺の空気からその加振力により伝わってきた気導音10の一部が、本来収音したい体内伝導音4とともに収音される。その結果、気導音10に対する体内伝導音4のS/N比は低い値となってしまう。そのため、音響ファイバ19の内径は、少なくともマイクロホン素子2の収音開口部11の直径に対して0.5〜5倍の範囲が好ましい。
このような、本実施例3における接触式マイクロホン1cは、例えば以下のようなプロセスにより作製することができる。
先に示した図4において、まず、マイクロホン素子2の収音開口部11より、ウレタンエラストマー(例えば(株)エクシールコーポレーション社製ポリウレタン人肌のゲル原液(C−15)の主剤と硬化剤を3:1にて混合したもの)を注入し、80℃で1時間の加熱により振動伝達部材7aの一部を形成する。
次に、カバー部材9の内側に上下連結用チューブ23を配置し、マイクロホン素子2の導線6をカバー部材9に貫通させ、カバー部材9の略中心部にマイクロホン素子2を設置する。その状態で、制振部材8bの硬化前の前駆体である、例えばシリカを50wt%含む2液系弾性エポキシ樹脂を、マイクロホン素子2の高さ近くまで充填する。そして、その制振部材8bの硬化前の前駆体であるエポキシ樹脂の上に、マイクロホン素子2の径に合わせて穴が設けてあるアルミニウム(金属)製のワッシャ22を載せる。このとき、マイクロホン素子2がワッシャ22の貫通孔の内部の略中心に配置されるよう、ワッシャ22を設置する。このとき、ワッシャ22の外径を上下連結用チューブ23の内径よりもやや小さく設定すると、マイクロホン素子2をカバー部材9の略中心に設置しやすい。その状態で80℃で1時間の加熱により硬化し、制振部材8bの一部が形成される。
さらに、マイクロホン素子2の収音開口部11の上に円筒19aを配置する。このとき、円筒19aの中心が収音開口部11の中心にほぼ合うようにしておく。その円筒19aの空洞内部に前述のウレタンエラストマーを注入し、80℃で1時間の加熱を行う。このようにして、先にマイクロホン素子2の収音開口部11より注入しておいたウレタンエラストマーと、円筒19aに注入したウレタンエラストマーとが一体となって、振動伝達部材7aが形成される。そして、この振動伝達部材7aと円筒19aとにより、音響ファイバ19が形成される。なお、音響ファイバ19の先端部分には、振動伝達部材7aが、自らの表面張力により凸の半球面又は半楕円球面形状のメニスカスを形成している。
その後さらに、カバー部材9及び上下連結用チューブ23の残りの空間部分に、制振部材8bの硬化前の前駆体であるエポキシ樹脂を適量、追加充填し、厚み1.5mmのアルミ二ウム製のカップ形状の収音当接部材12bを覆い被せ、80℃にて1時間硬化させると、本実施例3の接触式マイクロホン1cが完成する。
このようにして完成した接触式マイクロホン1cの収音当接部材12bとカバー部材9とはほぼ同心円筒形状であるので、それらの中心はほぼ一致している。そしてマイクロホン素子2は、先に述べたワッシャ22によりカバー部材9の略中心に配置されている。したがって、マイクロホン素子2の中心と収音当接部材12bのそれとはほぼ一致していると言える。
このようにワッシャ22は、マイクロホン素子2を収音当接部材12bの略中心に配置する手助けとなっており、その効果は、先の実施例1に述べたのと同様である。すなわち、収音当接部材12bに体内伝導音4が与えられた場合、その物理的な振動による振幅は、収音当接部材12bの中心部において最も大きくなる。そして、その体内伝導音4による物理的な振動が最も大きくなる収音当接部材12bの中心部からマイクロホン素子2の振動膜5へと至る経路には、マイクロホン素子2の振動膜5と同様、プラスチック材料により構成された振動伝達部材7aが配置されている。これにより、体内伝導音4による物理的な振動を効率的にマイクロホン素子2の振動膜5へと伝えることができる。
なおかつ、振動伝達部材7aの周囲には、制振部材8bが配置されている。これは、収音当接部材12bの中心部以外の部分から侵入しようとする外部からの気導音10が制振部材8bによってくい止められ、マイクロホン素子2の振動膜5にまで達しにくいことを意味する。
さらに本実施例3の場合、音響ファイバ19の周囲にある円筒19aは、収音当接部材12bから振動伝達部材7aへと伝達される体内伝導音4の振動が、マイクロホン素子2の振動膜5以外の部分へと拡散するのを防いでいる。これにより、収音当接部材12bからの体内伝導音4は、損失が少なく効率よく、マイクロホン素子2の振動膜へと伝達される。また、音響ファイバ19は、周囲の空気からいわゆる雑音として制振部材8bに伝達される気導音10の振動が、マイクロホン素子2の振動膜5へと伝達するのを防ぐ役割も有している。
ちなみに上下連結用チューブ23は、制振部材8bの追加充填時に、音響ファイバ19が倒れないよう補助するとともに、制振部材8bが外にこぼれないよう、また、収音当接部材12bとの間に空間が生じないよう、制振部材8bを適量格納する役割を担っている。
このように作製された接触式マイクロホン1cを、先の実施例1においても用いた単音節20語音表により評価した結果は以下の通りである。すなわち、本実施例3における接触式マイクロホン1cのS/N比は17dBであり、従来の接触式マイクロホン(図1参照)のS/N比7dBと比較して、騒音環境下のS/N比が向上していることが明らかになった。以下の点については、後に示す比較例により、その重要さについて詳しく述べる。まず第1点は、振動伝達部材7aと収音当接部材12bとの接触部が、収音当接部材12bの略中心にあることである。第2点は、音響ファイバ19の内部にある振動伝達部材7aすなわち音響ファイバ19の内径が、少なくともマイクロホン素子2の収音開口部11の直径に対して0.5〜5倍の範囲に収められることが好ましい。そして第3点は、制振部材8bと収音当接部材12bとの間には空間を設けず、制振部材8bが収音当接部材12b、上下連結用チューブ23及びカバー部材9と接してフルに充填されていることである。
以上のように、本実施例3の接触式マイクロホンを用いれば、耐騒音性がさらに改善され、騒音環境下で通常音声や非可聴つぶやき音声などが明瞭に収音し易くなる。
[比較例1]
図5(a)は、本発明の実施例3と対比関係にある比較例1における接触式マイクロホンの側断面図である。
本比較例1における接触式マイクロホン1dの構成及び作成方法は、先に述べた実施例3における接触式マイクロホン1cと共通している部分が多いものの、次の点において異なっている。1つは、振動伝達部材7aが収音当接部材12bの裏側全体にも塗布・硬化されており、その結果、振動伝達部材7aと収音当接部材12bとの接触面積が、マイクロホン素子2の収音開口部11の直径に対して0.5〜5倍の範囲外にあることである。もう一つは、収音当接部材12bの裏側全体に塗布・硬化されている収音当接部材12bと制振部材8bとの間に空洞21が生じていることである。
この比較例1における接触式マイクロホン1dのS/N比は10dBであり、従来の接触式マイクロホン(図1参照)のS/N比7dBと比較して、騒音環境下のS/N比がそれほど向上していないことが明らかとなった。これは、振動伝達部材7aが収音当接部材12bの裏側全体に塗布・硬化されたことにより、外部周囲の雑音である気導音10が、収音当接部材12bの周辺部から振動伝達部材7aを介してマイクロホン素子2へと伝達されやすくなったためであると考えられる。
この比較例1からわかるように、振動伝達部材7aは、音響ファイバ19の内径に収まるようにし、収音当接部材12bとの接触を大きくし過ぎないよう、かつその略中心部において接触させることが必要である。そして、その接触面積は、少なくともマイクロホン素子2の収音開口部11の直径に対して0.5〜5倍の範囲に収めることが好ましい。
[比較例2]
図5(b)は、本発明の実施例3と対比関係にある比較例2における接触式マイクロホンの側断面図である。
本比較例2における接触式マイクロホン1eの構成及び作成方法は、先に述べた実施例3における接触式マイクロホン1cと共通している部分が多いものの、次の点において異なっている。1つは、制振部材8bが、収音当接部材12bの裏側全体に塗布・硬化されており、なおかつ振動伝達部材7aが収音当接部材12bに接していないことである。もう一つは、制振部材8b内部の収音当接部材12b近傍に空洞21が生じていることである。
この比較例2における接触式マイクロホン1eのS/N比は5dBであり、従来の接触式マイクロホン(図1参照)のS/N比7dBと比較して、騒音環境下のS/N比がさらに悪化していることが明らかとなった。これは、振動伝達部材7aが収音当接部材12bの略中心部と接触していないため、外部周囲の雑音である気導音10のみならず、本来収音したい体内伝導音4まで、その手前にある制振部材8bにより吸収損失されてしまったためと考えられる。
この比較例2からわかるように、振動伝達部材7aは、収音当接部材12bと接触させることが必要である。そしてその接触は、収音当接部材12bの略中心であることが好ましい。
[比較例3]
図6(a)は、本発明の実施例3と対比関係にある比較例3における接触式マイクロホンの側断面図である。
本比較例3における接触式マイクロホン1fの構成及び作成方法は、先に述べた実施例3における接触式マイクロホン1cと共通している部分が多いものの、次の点において異なっている。すなわち、振動伝達部材7aは、収音当接部材12bと接しているものの、制振部材8bと収音当接部材12bとの間に空洞21が生じていることである。
この比較例3における接触式マイクロホン1fのS/N比は12dBであり、従来の接触式マイクロホン(図1参照)のS/N比7dBと比較して、騒音環境下のS/N比は若干良くなるが、実施例3ほどではないことが明らかとなった。これは、外部周囲の雑音である気導音10が制振部材8bの内部に侵入した後、制振部材8bとその内部に生じた空洞21内にある空気との界面において反射を繰り返したため、結果的に音響ファイバ19よりマイクロホン素子2へと伝達したためと考えられる。すなわち、制振部材8bの内部に生じた空洞21により、制振部材8bによる気導音10の吸収損失が阻害されている。
この比較例3からわかるように、制振部材8bと収音当接部材12bとの間には空洞21を設けず、制振部材8bが収音当接部材12b、上下連結用チューブ23及びカバー部材9と接してフルに充填されていることが必要である。
[比較例4]
図6(b)は、本発明の実施例3と対比関係にある比較例4における接触式マイクロホンの側断面図である。
本比較例4における接触式マイクロホン1gの構成及び作成方法は、先に述べた実施例3における接触式マイクロホン1cと共通している部分が多いものの、次の点において異なっている。すなわち、音響ファイバ19内部にある振動伝達部材7aと収音当接部材12bとの接触部が、カバー部材9及び収音当接部材12bの略中心と一致していないということである。本比較例4においては、マイクロホン素子2及び音響ファイバ19の各中心が収音当接部材12bの中心と円周とを結ぶ直線(半径)の略中間地点となるよう配置されている。
この比較例3における接触式マイクロホン1fのS/N比は9dBであり、従来の接触式マイクロホン(図1参照)のS/N比7dBと比較して、騒音環境下のS/N比は若干良くなるが、実施例3ほどではないことが明らかとなった。1つは、振動伝達部材7aの収音当接部材12bとの接触部から、収音当接部材12bの一方の周辺部までの距離が短く、外部周囲の雑音である気導音10がマイクロホン素子2へ伝達されやすいためである。もう1つは、音響ファイバ19内部の収音当接部材12bの略中心において、収音当接部材12bに与えられる体内伝導音4の物理的な振動は最も大きくなるのに、本比較例4における振動伝達部材7aと収音当接部材12bとの接触部がそこに配置されていないためである。
この比較例4からわかるように、マイクロホン素子2及び音響ファイバ19(すなわち振動伝達部材7aの中心は、収音当接部材12bの略中心に配置されることが必要である。
以上の比較例により明確となったように、振動伝達部材7aと収音当接部材12bとの接触部は、収音当接部材12bの略中心にあることが必要である。また、音響ファイバ19の内部にある振動伝達部材7aすなわち音響ファイバ19の内径は、少なくともマイクロホン素子2の収音開口部11の直径に対して0.5〜5倍の範囲に収められることが好ましい。そして、制振部材8bと収音当接部材12bとの間には空間を設けず、制振部材8bが収音当接部材12b、上下連結用チューブ23及びカバー部材9と接してフルに充填されていることが必要である。
[実施例3の変形例]
先の実施例3及び比較例4より明らかとなったように、音響ファイバ19の内部にある振動伝達部材7aと収音当接部材12bとの接触部は、収音当接部材12bの略中心にあることが必要である。しかしながら、音響ファイバ19の中心とマイクロホン素子2の中心とを、収音当接部材12bの中心に略一致させて配置する必要は無い。その例について、これより述べる。
図7は、本発明の実施例3の音響ファイバを用いた接触式マイクロホンの応用例における側断面図である。
図7に示す接触式マイクロホン1kの音響ファイバ19bは、収音当接部材12cに伝達した振動を、その内部空間に閉じ込め、折り曲げ自在な円筒19cの内壁による反射の繰り返しにより、マイクロホン素子2へと伝達する機能を有する。そのため、図7に示すように、曲線自由形状の円筒19cを用いると、マイクロホン素子2の中心を収音当接部材12cの中心の直下以外に配置することが可能となる。このとき、音響ファイバ19bの内部に配置された振動伝達部材7aが収音当接部材12cと接している部分の中心が、収音当接部材12cの中心と略一致するようになっていればよい。なぜならば、収音当接部材12cの中心は、そこに与えられる体内伝導音4の物理的な振動が最も大きくなるからである。このように、接触式マイクロホン1kの形状に関しては、設計の自由度を増すことができる。
同様の理由により、比較例4で説明した図6(b)のように、振動伝達部材7aと収音当接部材12bとの接触部が、収音当接部材12bの略中心にない場合(構成上の制約で配置ができない場合など)であっても、図6(b)に示す音響ファイバ19aを、図6(a)に示すマイクロホン素子2の中心位置まで折り曲げる構成を採ることで、構成上の制約を回避することができる。
上述したように、音響ファイバ19bは、収音当接部材12cに伝達した振動を、その内部空間に閉じ込めてマイクロホン素子2まで伝達する機能により、体内伝導音4の振動が、マイクロホン素子2の振動膜5以外の部分へと拡散するのを防ぐとともに、雑音として制振部材8bに伝達される気導音10の振動が、マイクロホン素子2の振動膜5へと伝達するのを防ぐことができる。これらの効果に加えて、マイクロホン素子2の収音開口部11に音響ファイバ19b(導管)を利用することで、マイクロホン素子2の配置の自由度を向上させることができる。
[実施例4]
図8は、本発明の実施例4における接触式マイクロホンの側断面図である。図8(a)は、接触式マイクロホン1jの全体側断面図であり、図8(b)は、振動伝達部材7aの先端部の拡大図である。本実施例4の接触式マイクロホン1jの構成は、先に述べた実施例3と共通している部分が多いため、それらについてはその説明をできるだけ省略し、主に、先に述べた実施例3と異なる部分について、これより説明する。なお、実施例3に配置されているワッシャ22が本実施例4においては省略されているが、このワッシャ22はもちろん、実施例3と同様に配置されていてもよい。
まず、本実施例4の接触式マイクロホン1jにおいても、先の実施例1〜3と同様、振動伝達部材7aと収音当接部材12bとの接触部は、収音当接部材12bの略中心に設けられている。また、振動伝達部材7aと収音当接部材12bとの接触部が有する接触面積のうち、収音当接部材12bが収音対象物3と接触する面と平行な方向の接触面積は、振動伝達部材7aの他の部分における平行方向の断面積以下となっている。さらにまた、収音当接部材12bが収音対象物3と接触する面と平行な方向において、マイクロホン素子2、振動伝達部材7a及び収音当接部材12bのそれぞれの中心は、収音当接部材12bが収音対象物3と接触する面と垂直な方向において略同一の軸上にある、とも言える。それに加えて、振動伝達部材7aが円筒19aに格納されることにより音響ファイバ19が構成され、円筒19aの断面は収音当接部材12bの収音対象物3との接触面の裏面及びマイクロホン素子2の収音開口部11と対向し、円筒19aの側面は制振部材8bと当接している。
以上の構成により、本実施例4の接触式マイクロホン1jは、騒音環境下による周囲の背景雑音の混入を反射・抑制し、目的とする収音対象物の振動のみを効率よく収音することができる。その結果、耐騒音性がさらに改善され、通常音声のみならず話者のつぶやき音などのような非可聴な音声や物音のみを明瞭に皮膚などの収音対象物から収音し易くすることができる。
本実施例4の接触式マイクロホン1jにおいて、先の実施例3は無い特徴的な部分は、音響ファイバ19が収音当接部材12bと接触する先端部分において、振動伝達部材7aの内部に内包・接着されたプラスチック球20である。すなわち、振動伝達部材7aの収音当接部材12bとの接触面側に、振動伝達部材7aよりも硬度の高い部材が設けられている。このプラスチック球20としては、例えば佐藤鉄工所製のものが用いられる。この他に、ウレタンゴム、ポリアセタール、ポリアミド66、テフロン(登録商標)、ABS、スチレン、アクリル、シリコン樹脂などであれば、いずれであっても構わない。なお、本実施例4においては、振動伝達部材7aとして採用しているウレタンエラストマーと密着力がよく、繰り返し振動して用いられるという(潤滑性と)信頼性の観点から、ウレタンゴム(硬度80°及び硬度95°)をプラスチック球20として用いることが好ましい。このウレタンゴムは、振動伝達部材7aよりもその硬度が高い。
また、このようなプラスチック球20としては、マイクロホン素子2の振動膜5の開口部の直径に相当する2mmφや3/32inch、1/8inch、5/32inchなどの直径を有するものが一般的に用いられる。
このような、振動伝達部材7aよりも硬度の高いプラスチック球20を、音響ファイバ19が収音当接部材12bと接触する先端部分にある振動伝達部材7aに内包・接着させることで、収音当接部材12bの略中心部と点接触が可能となる。そしてこれにより、収音対象物3(皮膚など)から収音当接部材12b全体に伝達される振動が一点に集中される。それとともに、周囲の空気あるいは接触式マイクロホン1jの装着時に発生する収音対象物3との隙間18の空気を介して収音当接部材12bの周辺部から伝達される気導音(騒音)10が、カットされやすくなる。すなわち、気導音10にとっては、それが固体振動として伝達される収音当接部材12bの(点接触している)中心部までの距離が、本来収音したい体内伝導音4よりも遠くなる。そして、収音当接部材12bの(点接触している)中心部に至る途中で、収音当接部材12bの下層に位置する制振部材8bが気導音10の一部を吸収損失するため、S/N比向上の効果が大きくなる。
このように作製された接触式マイクロホン1jを、先の実施例1と同様に単音節20語音表を用いて評価した結果は以下の通りである。すなわち、本実施例4における接触式マイクロホンのS/N比は28dBであり、従来の接触式マイクロホン(図1参照)のS/N比7dBと比較して、騒音環境下のS/N比が大幅に向上していることが明らかになった。そして、先の実施例3と比較しても、そのS/N比はさらに向上している。
なお、本実施例4における接触式マイクロホン1jを用いた100dB騒音下における文章了解度は85%であった。
以上のように、本実施例4の接触式マイクロホンを用いれば、耐騒音性がさらに改善され、騒音環境下で通常音声や非可聴つぶやき音声などが明瞭に収音し易くなる。
[比較例5]
図9は、本発明の実施例4と対比関係にある比較例5における接触式マイクロホンの側断面図である。
本比較例5における接触式マイクロホン1hの構成及び作成方法は、先に述べた実施例4における接触式マイクロホン1jと共通している部分が多いものの、次の点において異なっている。すなわち、先の実施例4における制振部材8b(シリカを50wt%含む2液系弾性エポキシ樹脂)に代えて、先の実施例1においても用いられた弾性エポキシ樹脂単独で構成された制振部材8aとしている。
この比較例5における接触式マイクロホン1dのS/N比は20dBであり、先の実施例1や2と比較しても遜色無いが、実施例4と比較した場合は、その性能差が倍以上あることがわかった。これは採用している制振部材の材質の違いによる。この材質相違は損失係数の大小となり、先の(式5)に示すS/N比の式において、雑音を示す分母の項に反映される。
また、弾性エポキシ樹脂がシリカとの複合化によって弾性率と重量がより大きくなり、共振周波数がマイクロホン素子2の振動膜5と大きくずれる方向に変化する。これにより、収音対象物3からの固体振動によってマイクロホン素子2そのものの振動が少なくなり、収音対象物3からの固体振動が振動膜5の振動へと変換される割合が相対的に増える。これは、先の(式5)に示すS/N比の式において、収音したい信号を示す分子の項を大きくする役割を果たす。
以上のことから、採用する制振部材としては、実施例4において採用した弾性エポキシ樹脂とシリカとの複合材による制振部材8bのほうが、比較例5において採用した弾性エポキシ樹脂よりも高い収音性能を得られることがわかった。
[実施例5]
図10は、実施例5における接触式マイクロホンの分解斜視図、図11は、実施例5における接触式マイクロホンの側断面図を示す図である。図11(a)は、本実施例5における接触式マイクロホン1kの全体側断面図であり、図11(b)は、振動伝達部材7bの先端部の拡大図である。本実施例5の接触式マイクロホン1kの構成は、先に述べた実施例2と共通している部分が多いため、それらについてはその説明をできるだけ省略し、主に、先に述べた実施例2と異なる部分について、これより説明する。
まず、本実施例5の接触式マイクロホン1kにおいても、先の実施例1〜4と同様、振動伝達部材7bと収音当接部材12dとの接触部は、収音当接部材12dの略中心に設けられている。また、振動伝達部材7bと収音当接部材12dとの接触部が有する接触面積のうち、収音当接部材12dが収音対象物3と接触する面と平行な方向の接触面積は、振動伝達部材7bの他の部分における平行方向の断面積以下となっている。さらにまた、収音当接部材12dが収音対象物3と接触する面と平行な方向において、マイクロホン素子2、振動伝達部材7b及び収音当接部材12dのそれぞれの中心は、収音当接部材12dが収音対象物3と接触する面と垂直な方向において略同一の軸上にある、とも言える。それに加えて、振動伝達部材7bが円筒19eに格納されることにより音響ファイバ19dが構成され、円筒19eの断面は収音当接部材12dの収音対象物3との接触面の裏面及びマイクロホン素子2の収音開口部11と対向し、円筒19eの側面は制振部材8bと当接している。
以上の構成により、本実施例5の接触式マイクロホン1kは、騒音環境下による周囲の背景雑音の混入を反射・抑制し、目的とする収音対象物の振動のみを効率よく収音することができる。その結果、耐騒音性がさらに改善され、通常音声のみならず話者のつぶやき音などのような非可聴な音声や物音のみを明瞭に皮膚などの収音対象物から収音し易くすることができる。
本実施例5に配置されているワッシャ22が、先の本実施例2においては配置されていないが、これは先にも示したように、マイクロホン素子2を収音当接部材12dの略中心に配置するためのものであり、大きな相違点ではない。このワッシャ22はもちろん、本実施例5にも同様に配置されていてよい。
また、本実施例5の音響ファイバ19dも、先の実施例2においては配置されておらず、先の実施例3や実施例4に登場したものと似ている。本実施例5における音響ファイバ19dは、円筒19eの空洞内部に振動伝達部材7b(後述)が充填されたものであり、その長さや内部の振動伝達部材7bの組成が、先の実施例3や実施例4のそれとは異なる。しかしながら、収音当接部材12dから振動伝達部材7bへと伝達される体内伝導音4の振動が、マイクロホン素子2の振動膜5以外の部分へと拡散するのを防ぐ働きを有しているという機能は、先の実施例3や実施例4と同様である。さらに、周囲の空気からいわゆる雑音として制振部材8bに伝達される気導音10の振動が、マイクロホン素子2の振動膜5へと伝達するのを防ぐ役割も有している。その点では、本実施例5の音響ファイバ19dは、先の実施例3や実施例4に示したものと同じ機能を有している。
本実施例5の制振部材8bは、弾性エポキシ樹脂(図示せず)とシリカ27との複合材であり、収音当接部材12dはアルミニウム製1.5mm厚のキャップ状を有する。これらの点においては、実施例2と同様である。しかしながら、本実施例5の収音当接部材12dの制振部材8b及び振動伝達部材7bと接する裏面の略中心には、逆テーパ状の穿孔24(凹部)が、収音当接部材12dを貫通しない程度に形成されている(本実施例5の場合、6.6mmφのドリルを用いて、孔径が5mmになるよう穿孔24を形成した)。すなわち、収音当接部材12dが収音対象物3との接触面を有する部分のうち、その中心部における厚さは周辺部よりも薄く構成されている。そして、その逆テーパ状の穿孔24には、振動伝達部材7bが注入されている。
この穿孔24の径は、気導音10が伝達してくると考えられる接触式マイクロホン1kの外周部からの距離を制御するとともに、体内伝導音4による垂直方向の振動を受ける面積を制御する。また、穿孔24の深さは、当然のことながら収音当接部材12dの残りの厚み(例えば0.5mm)を決定し、収音対象物3の固体振動に対する追随性を左右する。このような構造をとることにより、収音対象物3(皮膚など)からの固体振動は、穿孔24の孔径に相当する面積だけ厚みが薄くなった、収音当接部材12dの略中央部において感度の良い収音を可能とする。それとともに、周囲の空気あるいは接触式マイクロホン1kの装着時に発生する収音対象物3との隙間18の空気を介して、気導音10(騒音)が収音当接部材12dの周辺部から伝達されたとしても、それが固体振動として伝達される収音当接部材12dの略中央部までの距離は遠いので、S/N比向上にも効果がある。
なお、本実施例5において採用した振動伝達部材7bとしては、先の実施例1〜実施例3において用いたウレタンエラストマーに無機フィラー(本実施例5においてはシリカ27)を複合化させ、体積弾性率を傾斜させたものを用いた。この体積弾性率の傾斜は例えば、硬化前にそれらの成分の比重差による自然沈降法を用いることで、収音当接部材12d側では無機フィラー(シリカ27)を多く存在させ、マイクロホン素子2の振動膜5側では少なく存在させるようにすれば可能である。このようにすれば、収音当接部材12dとの接触面と、マイクロホン素子2の振動膜5との接触面のそれぞれにおいて、振動伝達部材7bの体積弾性率を収音当接部材12d又は振動膜5に近いものとすることができる。こうして、それぞれの接触面において音響インピーダンスのマッチングが図られ、体内伝導音4による振動の反射減衰が低減される。
次に、収音当接部材12dについて説明する。
図17は、収音当接部材12dの構造を説明する斜視図である。
<ディンプル>
図17に示すように、収音当接部材12dは、円筒形のカバー部材9(図11参照)と入れ子構造となる、有底円筒形状のキャップ形状を有する。収音当接部材12dは、当接部の内側中央、すなわち該有底円筒形状の裏面の略中心に、凹部であるディンプルを備える。このディンプルは、上述したようにドリルにより形成された逆テーパ状の穿孔24(凹部)である。このディンプルは、カバー部材9の開口部側に向かって拡がり、かつ収音対象物3に接する側の中央の肉厚が薄い形状である。すなわち、このディンプルは、収音対象物3に接する側(上側)の中央が、点状に薄く、カバー部材9の開口部側(下側)が、広く開口している。本実施例5では、このディンプルは、逆テーパ状の穿孔24であるが、収音対象物3に接する側の中央(振動膜5の直上)が薄く、カバー部材9の開口部側が広い形状であれば、ディンプルの形状はどのようなものでもよく、例えば曲線状の凹部であってもよい。なお、ディンプルの形状を、曲線状の凹部に形成すると、収音当接部材12dと開口部の間の面積が僅かではあるが広くなり、ここに注入される振動伝達部材7bの体積も増やすことができる。
上述したように、収音当接部材12dは、収音当接部材12dの当接部の内側中央にディンプルを設けることで、気導音10(騒音)が固体振動として接触式マイクロホン1kの外周部から収音当接部材12dの中央部まで伝達される距離を大きくする(すなわち、音が通過するエリアまでの距離をかせぐ)一方、体内伝導音4による垂直方向の振動を受ける面積は小さくして収音対象物3からの収音は良好に確保する。その結果、収音当接部材12dの当接部の中心部以外は厚いので、接触式マイクロホン1kを装着した話者の周辺より混入する雑音を小さくする効果がある。このように、上記ディンプルを設けることで、S/N比が向上し、接触式マイクロホン1kを装着した話者の会話音声の収音性が高まる効果がある。
<アース線の取付>
図18は、本実施例5における接触式マイクロホン1kのアース線を取り付けた場合の全体側断面図である。図11(a)と同一構成部分には、同一番号を付して重複箇所の説明を省略する。
図17及び図18に示すように、接触式マイクロホン1kは、収音当接部材12dのキャップ形状の内壁の隅に貫通孔31が設けられ、貫通孔31にはアース線32が通される。
アース線32の一方の端部は、収音当接部材12dの外部より貫通孔31を介して内部へと連通し、その端部は、収音当接部材12dの内壁の隅に沿ってリング状に配置され(図17参照)、図示しない導電性接着剤を塗布して固定される。アース線32の他方の端部は、マイクロホン素子2の導線6のマイナス側の線と接続される。
このように、収音対象物3(皮膚など)に接触する収音当接部材12d(ここでは収音当接部材12dの内側)にアース線32を取り付けることで、皮膚装着時に発生するハム音を低減することができる。また、周辺に存在するディジタル機器より発生される高周波ノイズの混入を低減することができる。
アース線32は、収音当接部材12dではなく、マイクロホン素子2を格納するカバー部材(図示略)に取り付けられてもある程度の効果はある。しかし、話者の皮膚と直に接する収音当接部材12dに取り付けられた方が効果は高い。
また、アース線32の一方の端部を、リング状に一周以上配置し固定することで、アース線32が引っ張られることがあっても、その引っ張り力に抗しうる強度を確保することができる。接触式マイクロホン1k組立時には、その上からさらに制振部材が充填されるので、その強度はさらに高まる。
このような本実施例5における接触式マイクロホン1kは、例えば、以下のようなプロセスにより作製することができる。
図12〜図16は、本発明の実施例5における接触式マイクロホン1kの作製方法の例を示す図である。
まず、図12(a)に示すように、旋盤ドリル26などにより、収音当接部材12dの裏側中央部に穿孔24(貫通しない孔)を開ける。次に、図12(b)に示すように、制振部材8bを用いて金属製の円筒19eを収音当接部材12dの裏側中央部に接着し、80℃で1時間硬化させる。その際、金属製の円筒19eの端部断面が穿孔24の輪郭を囲むように、金属製の円筒19eを配置する。そして、図12(c)に示すように、ウレタンエラストマーに無機フィラーを複合化させた振動伝達部材7bを、その円筒19eの空洞内部に注入する。この、ウレタンエラストマーに無機フィラーを複合化させた振動伝達部材7bは、例えばウレタンエラストマー(例えば(株)エクシールコーポレーション社製ポリウレタン人肌のゲル原液(C−15)の主剤と硬化剤)に、あらかじめγ―アミノプロピルトリアルコキシシラン、又はグリシドキシプロピルトリアルコキシシランなどで表面処理したシリカフィラー(粒子径:数十μから数百μ)を20wt%分散させた。
さらに、図13(a)に示すように、振動伝達部材7bを室温下で5時間、放置した後、80℃にて1時間硬化させる。このような放置処理により、図13(b)に示すように、振動伝達部材7bに含有されるフィラー(シリカ27)が、ウレタンエラストマーとの比重の差により自然沈降する。そして、収音当接部材12d側ではシリカフィラーが多く存在し、マイクロホン素子2の振動膜5側では少なく存在する状態となった音響ファイバ19dが形成される。すなわち、振動伝達部材7bは体積弾性率が傾斜し、収音当接部材12dとの接触面と、マイクロホン素子2の振動膜5との接触面のそれぞれにおいて、振動伝達部材7bの体積弾性率を収音当接部材12d又は振動膜5に近いものとすることができる。こうして、それぞれの接触面において音響インピーダンスのマッチングが図られ、体内伝導音4による振動の反射減衰が低減される。その後、図13(c)に示すように、硬化前の制振部材8bを音響ファイバ19dの周辺部分に充填する。
一方、図14(a)に示すように、カバー部材9の略中心部には、導線6と接続されたマイクロホン素子2を配置する。このとき、マイクロホン素子2の導線6は、カバー部材9に設けられた貫通孔(符号は図示せず)に通し、カバー部材9の外部に出しておく。
次に、その状態で、制振部材8bの硬化前の前駆体である、例えばシリカを50wt%含む2液系弾性エポキシ樹脂を、マイクロホン素子2の高さ近くまで充填する。そして、図14(b)に示すように、その制振部材8bの硬化前の前駆体であるエポキシ樹脂の上に、マイクロホン素子2の径に合わせて穴が設けてあるワッシャ22を載せる。このとき、マイクロホン素子2がワッシャ22の貫通孔の内部の略中心に配置されるよう、ワッシャ22を設置する。その状態で80℃で1時間の加熱により硬化し、制振部材8bの一部が形成される。
さらに、図14(c)に示すように、マイクロホン素子2の収音開口部11より、ウレタンエラストマー(例えば(株)エクシールコーポレーション社製ポリウレタン人肌のゲル原液(C−15)の主剤と硬化剤を3:1にて混合したもの)7cを注入し、80℃で1時間加熱・硬化させる。このウレタンエラストマー7cは、先の振動伝達部材7bを作製する過程で無機フィラーを複合化させていないものと同等である。
以上のようにそれぞれ作業を終えた収音当接部材12d(図12、図13参照)とカバー部材9(図14参照)とを、図15に示すように、互いに嵌合させる。このとき、図16(a)に示すように、あらかじめ収音当接部材12dに設けられた排出孔25より、制振部材8bの硬化前の前駆体であるエポキシ樹脂の余剰分が排出される。そうすれば、制振部材8bの内部などに空洞が生ずることもなく、必要十分な制振部材8bが充填される。その後、図16(b)に示すように、約400gの錘31を載せた状態にて80℃で1時間加熱・硬化させれば、本実施例5における接触式マイクロホン1kが完成する。
このとき、マイクロホン素子2の内部にある振動膜5側に充填されたウレタンエラストマー7cは、もともと、先の振動伝達部材7bを作製する過程で無機フィラーを複合化させていないものと同様である。したがって、ウレタンエラストマー7cは、音響ファイバ19dの円筒19e内に充填された振動伝達部材7bと一体化し、結果的にはその一体化したものも振動伝達部材7bということになる。そして、収音当接部材12d側ではシリカフィラーが多く存在し、マイクロホン素子2の振動膜5側ではほとんど存在しない状態となった音響ファイバ19dが形成される。すなわち、振動伝達部材7bは体積弾性率が傾斜し、収音当接部材12dとの接触面と、マイクロホン素子2の振動膜5との接触面のそれぞれにおいて、振動伝達部材7bの体積弾性率を収音当接部材12d又は振動膜5に近いものとすることができる。こうして、それぞれの接触面において音響インピーダンスのマッチングが図られ、体内伝導音4による振動の反射減衰が低減される。
このように作製された接触式マイクロホン1kを、先の実施例1と同様に単音節20語音表を用いて評価した結果は以下の通りである。すなわち、本実施例3における接触式マイクロホン1cのS/N比は28.5dBであり、従来の接触式マイクロホン(図1参照)のS/N比7dBと比較して、騒音環境下のS/N比が大幅に向上していることが明らかになった。また、振動伝達部材7bの一部が収音当接部材12dの略中央部に入り込んだ構造となっており、接触式マイクロホン1k自体の低背化・小型化にも寄与している。
以上のように、本実施例5の接触式マイクロホンを用いれば、耐騒音性がさらに改善され、騒音環境下で通常音声や非可聴つぶやき音声などが明瞭に収音し易くなる。
[実施例6]
図19は、本発明の実施例6における接触式マイクロホンの側断面図である。図19(a)は、本実施例6における接触式マイクロホン1mの全体側断面図であり、図19(b)は、本実施例6における接触式マイクロホン1mを上から見た透視図である。本実施例3の接触式マイクロホン1cの構成は、先に述べた実施例1又は実施例2と共通している部分が多いため、それらについてはその説明をできるだけ省略し、主に、先に述べた実施例1と異なる部分について、これより説明する。
まず、本実施例6の接触式マイクロホン1mにおいても、先の実施例1〜4と同様、振動伝達部材7aと収音当接部材12bとの接触部が有する接触面積のうち、収音当接部材12bが収音対象物3と接触する面と平行な方向の接触面積は、振動伝達部材7aの他の部分における平行方向の断面積以下となっている。それに加えて、振動伝達部材7aが円筒19aに格納されることにより音響ファイバ19が構成され、円筒19aの断面は収音当接部材12bの収音対象物3との接触面の裏面及びマイクロホン素子2の収音開口部11と対向し、円筒19eの側面は制振部材8bと当接している。
以上の構成により、本実施例6の接触式マイクロホン1mは、騒音環境下による周囲の背景雑音の混入を反射・抑制し、目的とする収音対象物の振動のみを効率よく収音することができる。その結果、耐騒音性がさらに改善され、通常音声のみならず話者のつぶやき音などのような非可聴な音声や物音のみを明瞭に皮膚などの収音対象物から収音し易くすることができる。
本実施例6に示す接触式マイクロホン1mは、先に述べた振動伝達部材7a(7b又は7eでもよい)を有する音響ファイバ19(19b又は19dでもよい)とマイクロホン素子2との対を、複数有している。これらの対を増やすことにより、S/N比が改善される。すなわち、先の(式5)の分子項を大きくすることにつながる。
なお、マイクロホン素子2及び振動伝達部材7aのそれぞれの中心軸は、収音当接部材12bが収音対象物3と接触する面と垂直な方向において略同一の軸上にあり、先に述べた複数の組み合わせの各中心より得られる仮想重心点は、収音当接部材12bの中心と略一致していることが望ましい。ちなみに、マイクロホン素子2の数が増えると、それらが有する導線6の配線に支障をきたすため、例えば少なくとも2個以上のマイクロホン素子2を電気的に直列に接続させても良い。
このように作製された接触式マイクロホン1mを、先の実施例1と同様に単音節20語音表を用いて評価した結果は以下の通りである。本実施例3における接触式マイクロホン1cのS/N比は25dBであり、従来の接触式マイクロホン(図1参照)のS/N比7dBと比較して、騒音環境下のS/N比がやはり向上していることが明らかとなった。すなわち、マイクロホン素子2の数を増やすことは、接触式マイクロホンのS/N比の改善に寄与することにつながる。
以上のように、本実施例6の接触式マイクロホンを用いれば、耐騒音性がさらに改善され、騒音環境下で通常音声や非可聴つぶやき音声などが明瞭に収音し易くなる。
なお、本発明の実施例は上記の実施例1〜実施例6に限らず、これらそれぞれの各部分を組み合わせたものも考えられる。
[実施例7]
次に、収音当接部材12a、12b、12c、12dとカバー部材9の材料について説明する。
<収音当接部材とカバー部材とが同一材料>
本実施例1で述べたように、収音当接部材12aは、音響インピーダンスが空気とかけ離れた材料であり、例えば200μm厚のSUS304である。一方、カバー部材9は、接触式マイクロホン全体の機械的強度保持及び、製造時の樹脂注入鋳型に適した材料であり、例えばアルミやダイカスト用亜鉛合金などの金属やアクリル、ABSなどのプラスチックである。
したがって、収音当接部材12a、12b、12c、12dとカバー部材9との材料に、金属材料を選択すれば、両者の材料を同一にすることができる。金属材料の一例としては、上記SUS304などの鉄系やアルミ系、チタン系金属やダイカスト用亜鉛合金などが挙げられる。
収音当接部材12a、12b、12c、12dとカバー部材9の材料とを同一材料とすることで、材料系における特性(熱膨張率、共振特性など)が揃い、設計上有利であること、部品コスト削減及び組立て工程の簡略化が期待できる。
<収音当接部材とカバー部材とが異種材料>
収音当接部材12a、12b、12c、12dとカバー部材9とを、それぞれの機能に合わせ最適な材料を用いることも可能である。
上述したように、収音当接部材12a、12b、12c、12dは、金属材料が適しているが、そのなかでも音響インピーダンスがかけ離れた金属として、鉄系やアルミ系、チタン系金属、ダイカスト用亜鉛合金などが好適である。これに対して、カバー部材9は、かかる制約はなく、接触式マイクロホン全体の機械的強度等が保持できればよい。したがって、収音当接部材12a、12b、12c、12dとカバー部材9とを異ならせることができ、このように異なる材料を用いれば、それぞれの機能をより高める効果がある。但し、異なる材料間では、密着性が問題となる。例えば、収音当接部材12a、12b、12c、12dに金属材料を、カバー部材9にアクリル、ABSなどのプラスチックを用いた場合、そのままでは密着せず、接着剤が必要となる。本発明者は、接着剤について検討し、以下のような弾性接着剤が適していることを確認した。
図20乃至図23は、収音当接部材とカバー部材とを接着する接着剤を説明する図である。
図20は、捩れ自由減衰型粘弾性測定データを示す図である。
図20に示すように、弾性接着剤のガラス転移温度(Tg)は、−60℃である。また、弾性接着剤の硬化皮膜は、接着剤接合の一般的使用温度範囲より厳しい温度範囲の−60〜100℃で柔軟なゴム状弾性体を示し、各種接着特性に良好な結果をもたらす。
上記から、接着剤の硬化物は、ゴム状弾性体が好適である。具体的には下記の理由による。
・外的な振動、衝撃などの応力を吸収する。
・膨張、収縮などの熱歪を吸収するので、ヒートサイクルに強い。
・接着界面に応力が集中しにくい。
・線膨張率の差の大きい異種材料の接着に適している。
・表面強度の弱い基材(石膏ボード、珪酸カルシウム板、ALC(autoclaved lightweight aerated concrete:軽量気泡コンクリートなど)との接着に適している。
・高い剥離接着強さを示す。
図21は、弾性接着剤、二液混合形エポキシ系接着剤及びゴム系溶剤形接着剤の試験条件を円形特性チャートにして示す図である。
図21に示すように、弾性接着剤は、幅広い環境下で安定した接着性を示す。弾性接着剤は、強靱かつ柔軟な弾性皮膜を持つため、内部応力を分散・吸収する効果がある。安定した接着性を示す弾性接着剤を用いることが好ましい。
図22は、プラスチック材料への接着性を示す図である。図22(a)は、その汎用プラスチックの引張りせん断接着強さを、図22(b)は、そのエンジニアリングプラスチックの引張りせん断接着強さを、それぞれ示す。
エポキシ・変成シリコン樹脂系弾性接着剤、PM165、PM200、二液形弾性接着剤であるPM210、EP001は、プラスチック材料に良好な接着性を示す。特に、図22(b)に示すように、EP001は、これまで接着が難しかったエンジニアリングプラスチック材料の接着が可能である。
図23は、二液形弾性接着剤PM210、EP001の各特性を対比して示す図である。
図23に示すように、EP001は、エンジニアリングプラスチック材料に良好な接着性を示す。具体的には、EP001は、下記の利点を有する。
・衝撃及び振動、その他の外力で割れやすい材料の接着
大形タイル、壁装ガラス、鏡、薄い石材など
・表面強度の弱い材料の接着
石膏ボード、珪酸カルシウム板、ALCなど
・熱膨張率の異なる材料の接着
プラスチックや金属と窯業系ボード類の組み合わせなど
・内外装、大形パネルの製造
・凹凸のある下地や表面材への充填接着
・温度変化の著しい箇所の接着
外壁(支持金具併用)、キッチン(トップ、壁面)、浴室など
特に、二液形弾性接着剤EP001は、上記熱膨張率の異なる材料の接着、及び凹凸のある下地や表面材への充填接着に優れている。
以上のことから、収音当接部材12a、12b、12c、12dとカバー部材9の材料とに異種材料を用いる場合、接着性を高めるために弾性接着剤を使用することが好ましく、特に二液形弾性接着剤EP001が適している。
以上詳細に説明したように、本実施の形態によれば、本実施例5の接触式マイクロホン1kは、振動膜5を有するマイクロホン素子2と、マイクロホン素子2を格納する振動伝達部材7bと、振動伝達部材7bを格納する制振部材8bと、収音開口部11を有しマイクロホン素子2、振動伝達部材7b及び制振部材8bを格納するカバー部材9と、カバー部材9の収音開口部11を覆って配置されるキャップ状の収音当接部材12dと、を備える。収音当接部材12dは、振動膜5に対向する位置に、振動膜5の直上の肉厚が薄く、カバー部材9の収音開口部11側が広い形状の穿孔(凹部)24が形成されている。
この構成により、気導音10(騒音)が固体振動として接触式マイクロホン1kの外周部から収音当接部材12dの中央部まで伝達される距離を大きくするとともに、体内伝導音4による垂直方向の振動を受ける面積は小さくして収音対象物3からの収音は良好に確保することができる。また、収音当接部材12dの当接部の中心部以外は厚いので、接触式マイクロホン1kを装着した話者の周辺より混入する雑音を小さくする効果がある。その結果、音が通過するエリアの距離をかせぐことで、S/N比を向上させることができ、接触式マイクロホン1kを装着した話者の会話音声の収音性を高めることができる。
(実施の形態2)
実施の形態1では、接触式マイクロホン1a〜1h、1j〜1mについて説明した。
実施の形態2は、接触式マイクロホン1a〜1h、1j〜1mを備えた送受信装置について説明する。
図24は、本発明の実施の形態2の接触式マイクロホンを搭載する送受信装置を示す斜視図である。図25は、上記送受信装置を頭部へ装着した場合の側面図である。図26は、上記送受信装置における上記接触式マイクロホンの配置を説明する図である。
本実施の形態は、本発明の送受信装置を、スピーカ部とマイクロホンとが近接配置されたヘッドホンに適用した例である。
図24及び図25に示すように、ヘッドホン100は、ヘッドバンドを介して耳殻を覆うように頭部に装着される密閉型ヘッドホンである。
ヘッドホン100は、左耳覆いヘッドホン110と、右耳覆いヘッドホン120と、左耳覆いヘッドホン110と右耳覆いヘッドホン120とを左右連結するカーブ状ヘッドバンド130と、を主に備える。
ヘッドバンド130は、使用者の頭頂部を介して両側頭部と当接する。
左耳覆いヘッドホン110と右耳覆いヘッドホン120とは、各部材が頭部において左右対称に配置される。
左耳覆いヘッドホン110は、全体の支持基板としての円形のバッフル板111と、バッフル板111の表面側外周部に取り付けられ、耳殻を覆うイヤパッド112と、バッフル板111の裏面側外周部に支持リング113を介して固定されたハウジング114と、を備える。また、図示は省略するが、バッフル板111の裏面側中央部には、スピーカユニットが固定されている。バッフル板111は、中央部に音孔としての多数の孔が開孔している。
イヤパッド112は、耳殻を囲むのに十分な大きさのリング状に形成される。
支持リング113及びハウジング114は、バッフル板111の背面側及びスピーカユニット(図示略)を覆う。
ハウジング114は、耳殻より大きく、イヤパッド112が耳殻周囲の側頭部に密着し、イヤパッド112とスピーカユニットとによって耳殻を完全に覆う。この密閉型は、装着感が良く、外部への音漏れも防ぐことができる。また、低音を豊かに再現することができる。
本実施の形態では、ヘッドホン100は、スピーカ部に近接してマイクロホンを配置可能にすることを特徴とする。
図24及び図25では、左耳覆いヘッドホン110は、上記一般的な密閉型ヘッドホンの構成に加えて、スピーカユニットに近接して、接触式マイクロホン1aを配置したことを特徴とする。また、本発明の送受信装置は、実施例1における接触式マイクロホン1aを、以下の通りに配置したことが特徴的な部分となっている。
本実施の形態では、接触式マイクロホン1aを左耳覆いヘッドホン110に装着した例であるが、右耳覆いヘッドホン120に装着してもよい。接触式マイクロホン1aは、ヘッドホン100の、いずれかの片側に配置されれば十分である。但し両方に装着しても構わない。
図24及び図25に示すように、ヘッドホン100は、密閉型ヘッドホン中央部すなわち円形のバッフル板111の中央部を中心として、バッフル板111を、ヘッドバンド130の長手方向の第1基準軸と第1基準軸と直交する第2基準軸とにより4分割し、4分割した部位のうち、ヘッドバンド130とは離れた側でかつ前記受話手段よりも使用者の前頭部側に当接する部位に、接触式マイクロホン1aを配置する。すなわち、図24及び図25に示すように、接触式マイクロホン1aは、4分割した部位をそれぞれ領域I〜IVで表した場合、前記4分割した領域I〜IVのうち、使用者の前頭部下側の領域IIIに、接触式マイクロホン1aを配置する。また、接触式マイクロホン1aは、4分割した前記前頭部側に当接する部位(図24及び図25の領域III)内において、使用者が頭部に装着した場合、使用者の顎の付け根又は頬骨(以下、頬骨近傍という)(図26○印参照)に最も良く当接する位置に配置される。本発明者の実験等によれば、接触式マイクロホン1aを、ヘッドホン100に搭載する場合、頬骨近傍に配置すると検出精度が良くなることが確かめられた。但し、接触式マイクロホン1aは、頬骨近傍に限らず、4分割した前記前頭部側に当接する部位(図24及び図25の領域III)に配置されていればよい。また、接触式マイクロホン1aは、優れたS/N比を有することから、上記部位(図24及び図25の領域III)から外れた、例えば部位(図1及び図2の領域IV)に配置することも可能である。
このように、接触式マイクロホン1aは、一般的な使用者が、ヘッドホン100を通常使用した場合に、使用者の頬骨近傍に最も良く当接する位置に配置される。換言すれば、使用者の頬骨近傍に当接する配置位置は、使用者の前頭部下側の領域IIIである。
なお、上記送受信装置は、接触式マイクロホン1aを備える例で説明したが、接触式マイクロホン1b〜1h、1j〜1mを適用してもよい。
以上詳細に説明したように、本実施の形態によれば、接触式マイクロホン1a〜1h、1j〜1mを搭載する送受信装置として、ヘッドホン100(図24及び図25参照)に適用した。ヘッドホン100は、スピーカユニットに近接した接触式マイクロホン1a〜1h、1j〜1mを備える。詳細には、接触式マイクロホン1a〜1h、1j〜1mは、ヘッドバンド130の長手方向の第1基準軸と第1基準軸と直交する第2基準軸とにより4分割し、4分割した部位のうち、ヘッドバンド130とは離れた側でかつ受話手段よりも使用者の前頭部側に当接する部位に配置する。
これにより、受話手段からの音波は側頭当接部と同じ側に出力される。受話手段からの音波が直接耳に入るので通常と変わらず聞こえるとともに、上記構成の送話手段であれば受話手段から拾う音波が使用者の発話よりも小さくなるので、ハウリングを起こすことなく、相手との明瞭でストレスの無い会話を実現することができる。
このように、本実施の形態では、極めて優れた耐騒音性を有する接触式マイクロホン1a〜1h、1j〜1mを、送受信装置に用いることで、スピーカ部とマイクロホンとが近接配置されたヘッドホンを実現することができる。
なお、本実施の形態では、送受信装置をヘッドホンに用いた例について説明したが、へヘッドホンは、片耳式ヘッドホン及びネックバンドタイプ等どのようなヘッドホンであってもよい。
また、接触式マイクロホン1a〜1h、1j〜1mを備える送受信装置であれば、ヘッドホン以外の携帯端末装置に搭載してもよい。すなわち、送受信機能を備える機器であれば、どのような装置でもよく、例えば携帯電話機等の携帯端末装置に適用してもよい。
一般に、このような携帯端末装置の筐体は、狭小であり、スピーカと接触式マイクロホン1a〜1h、1j〜1mとは、近接して配置せざるを得ない。また、携帯端末装置は、騒音環境下で使用されることを想定せざるを得ない。このため、従来では、携帯電話機などの携帯端末装置に接触式マイクロホンを搭載する例は無かった。
本実施の形態によれば、耐騒音性を有しかつ通常音声や非可聴つぶやき音声などのみを明瞭に収音することができる接触式マイクロホン1a〜1h、1j〜1mを、携帯端末装置に搭載することができるので、ハウリングを起こすことなく、従来では、実現困難であった、相手との明瞭でストレスの無い会話を実現することができる。
以上の説明は本発明の好適な実施の形態の例証であり、本発明の範囲はこれに限定されることはない。
また、上記各実施の形態では、接触式マイクロホン及び送受信装置という名称を用いたが、これは説明の便宜上であり、接触式マイクロホンはマイクロホン装置、送受信装置は通信装置等であってもよい。
さらに、上記接触式マイクロホンを構成する各部、例えば収音当接部材等の種類・形状、取付方法などは前述した実施の形態に限られない。