以下に、添付図面を参照して、本発明にかかる欠陥検出装置およびその退避方法の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、以下では、被検査材の一例として、鉄鋼製品の製造ラインを流れる帯状の鉄鋼材を例示するが、この実施の形態により本発明が限定されるものではない。
(実施の形態)
まず、本発明の実施の形態にかかる欠陥検出装置の構成について説明する。図1は、本発明の実施の形態にかかる欠陥検出装置の一構成例を示す模式図である。図1に示すように、この欠陥検出装置1は、鉄鋼材15の表面に生じる絞り欠陥等の凸欠陥を検出する凸欠陥検出部2,3と、鉄鋼材15の表面に生じる疵および汚れ等の表面欠陥を検出する表面欠陥検出部4と、鉄鋼材15の内部に生じる疵および空隙等の内部欠陥を検出する内部欠陥検出部5とを備える。また、欠陥検出装置1は、鉄鋼材15に対して相対的に内部欠陥検出部5を移動させる移動部6と、鉄鋼材15の搬送距離を測定する測定部7と、各種情報を入力する入力部8と、欠陥検出装置1の退避動作を制御する制御部9とを備える。
なお、図1に示す鉄鋼材15は、鉄鋼製品の製造ライン内を流れる鉄鋼材全体のうちの一部分であり、この製造ラインの図示しない搬送ロール等の搬送機構によって順次搬送される。一方、製造ライン内には、図1に示すように、互いに検出手法の異なる2つの凸欠陥検出部2,3と、表面欠陥検出部4と、内部欠陥検出部5とが、鉄鋼材15の搬送方向(図1に示す太線矢印の方向)に沿って各々配置される。すなわち、鉄鋼材15は、搬送されつつ、凸欠陥検出部2、凸欠陥検出部3、表面欠陥検出部4、および内部欠陥検出部5をこの順に順次通過する。
凸欠陥検出部2は、所定の検出子と凸欠陥の凸部分との物理的な接触を利用して凸欠陥を検出する機械式のものである。具体的には、凸欠陥検出部2は、検出子としてワイヤー2aを有する。ワイヤー2aは、鉄鋼材15の温度に耐え得る金属等の耐熱性ワイヤーであり、鉄鋼材15の幅に比して長く形成される。凸欠陥検出部2は、ワイヤー2aに対して鉄鋼材15の幅方向に適度な張力を加えつつ、図1に示すように、鉄鋼材15の上方にワイヤー2aを支持する。この場合、ワイヤー2aは、鉄鋼材15の幅方向に延伸し、且つ、鉄鋼材15の幅方向に亘って、機械式の凸欠陥検出手法として適度な高さ、例えば鉄鋼材15の正常な表面から1〜2mm程度の高さに張設される。
このように構成された凸欠陥検出部2は、鉄鋼材15の表面に生じた絞り欠陥等の凸欠陥部分のうち、ワイヤー2aと物理的に接触した凸部分を凸欠陥として検出する。凸欠陥検出部2は、このように凸欠陥を検出した場合に、この検出結果を示す欠陥検出情報を制御部9に送信する。これによって、凸欠陥検出部2は、鉄鋼材15表面の凸欠陥を検出した旨を制御部9に知らせる。
凸欠陥検出部3は、投受光するレーザ光と凸欠陥との光学的な接触を利用して凸欠陥を検出するレーザ式のものである。具体的には、凸欠陥検出部3は、レーザ光を発光する発光部3aと、発光部3aからのレーザ光を受光する受光部3bとを有する。発光部3aは、レーザ発光素子等を用いて実現され、所定の幅のレーザ光を発光する。受光部3bは、受光素子等を用いて実現され、この発光部3aが発光したレーザ光を受光する。発光部3aおよび受光部3bは、図1に示すように、鉄鋼材15の両側方から互いに対向し、レーザ光の投受光を行う。すなわち、発光部3aは、鉄鋼材15の幅方向に亘って、レーザ式の凸欠陥検出手法として適度な高さ、例えば鉄鋼材15の正常な表面から1mm以内の高さに、鉄鋼材15の表面に対して略平行なレーザ光を照射する。受光部3bは、絞り欠陥等の凸部分によって遮蔽されない限り、この発光部3aから照射されたレーザ光を受光する。
このように構成された凸欠陥検出部3は、鉄鋼材15の表面に生じた凸部分のうち、発光部3aおよび受光部3bによって投受光されるレーザ光を横切って、受光部3bに入射前のレーザ光を遮蔽した凸部分を凸欠陥として検出する。凸欠陥検出部3は、このように凸欠陥を検出した場合に、この検出結果を示す欠陥検出情報を制御部9に送信する。これによって、凸欠陥検出部3は、鉄鋼材15表面の凸欠陥を検出した旨を制御部9に知らせる。
表面欠陥検出部4は、鉄鋼材15の表面に生じた疵または汚れ等の表面欠陥を主に検出する。具体的には、表面欠陥検出部4は、発光素子および撮像素子等を用いて実現され、鉄鋼材15の表面画像を撮像して鉄鋼材15の表面欠陥等を検出する。すなわち、表面欠陥検出部4は、鉄鋼材15の表面検査範囲を照明し、この表面検査範囲からの反射光を受光して、鉄鋼材15の表面画像を撮像する。なお、この得られた表面画像には、鉄鋼材15の表面検査範囲が捉えられている。つぎに、表面欠陥検出部4は、得られた表面画像の各画素の輝度、色度および受光量等の画素情報をもとに、この表面画像内の特徴部分を見つけ出す。ついで、表面欠陥検出部4は、この特徴部分の面積、幅、長さ、形状、および明暗等の情報に基づいて、この特徴部分の中から鉄鋼材15の疵、汚れ等の表面欠陥を検出する。
さらに、上述したように鉄鋼材15の表面画像を撮像して鉄鋼材15の表面欠陥等を検出する表面欠陥検出部4は、凸欠陥を検出する凸欠陥検出部としても機能する。詳細には、表面欠陥検出部4は、上述した表面画像内の特徴部分の面積、幅、長さ、形状、および明暗等の情報に基づいて、検出した表面欠陥の種類およびレベル等を識別するとともに、この識別した表面欠陥の情報に基づいて、欠陥の高さを検出する。すなわち、表面欠陥検出部4は、識別した欠陥の情報(種類、レベル等)に基づき、欠陥に関する過去の情報から欠陥の高さを推定する。この欠陥高さの検出は、例えば、表面欠陥の種々の検査結果に基づき、表面欠陥の種類またはレベルと欠陥の高さとを対応付けたテーブルをもとに行うことができる。なお、この欠陥の高さは、鉄鋼材15の表面からの突出高さである。すなわち、表面欠陥検出部4は、この検出した欠陥の高さが所定の閾値以上である場合、表面画像内の特徴部分から識別した鉄鋼材15の凸欠陥を検出する。その後、表面欠陥検出部4は、このように凸欠陥を検出した場合に、この検出結果を示す欠陥検出情報を制御部9に送信する。これによって、表面欠陥検出部4は、鉄鋼材15表面の凸欠陥を検出した旨を制御部9に知らせる。あるいは、表面欠陥検出部4は、表面欠陥の種類やレベル等の表面欠陥情報に基づき、欠陥高さの検出を行うことなく、直接凸欠陥であるか否かを判断してもよい。
内部欠陥検出部5は、鉄鋼材15の内部に生じた疵または空隙等の内部欠陥を検出するためのものである。具体的には、内部欠陥検出部5は、漏洩磁束検出センサー等を用いて実現され、内部欠陥を検出するための検出子5aを有する。検出子5aは、図1に示すように、鉄鋼材15の幅(搬送方向に対して垂直な方向の鉄鋼材長さ)と同等の幅を有し、鉄鋼材15の表面から離間距離Hまで近接する。この離間距離Hは、例えば0.4〜1.0mm程度である。内部欠陥検出部5は、このように鉄鋼材15の表面に検出子5aを近接させた状態を維持する態様で移動部6によって支持される。
このような内部欠陥検出部5は、検出子5aによって鉄鋼材15からの漏洩磁束等の物理量を検出し、この検出した物理量をもとに、鉄鋼材15の幅方向の全範囲に亘って内部欠陥を検出する。例えば、内部欠陥検出部5が漏洩磁束式のものである場合、内部欠陥検出部5は、検出子5aによって鉄鋼材15を磁化し、内部欠陥が生じている場合に鉄鋼材15の表面から放出される漏洩磁束を検出子5aによって検出する。内部欠陥検出部5は、この検出した漏洩磁束をもとに、鉄鋼材15の内部欠陥を検出する。
移動部6は、少なくとも鉄鋼材15の表面から離間する方向へ内部欠陥検出部5を移動させるためのものである。具体的には、移動部6は、ガイド部および駆動部等の移送機構を用いて実現され、特に図示しないが、鉄鋼材15の表面から鉄鋼材15の厚み方向(すなわち鉄鋼材15の上方)に向かう移送経路を有する。移動部6は、鉄鋼材15の表面と検出子5aとを離間距離H以上に離した状態を維持しつつ、制御部9の指示に基づいて、鉄鋼材15の表面から離間する方向へ内部欠陥検出部5を移送する。この場合、移動部6は、図1の破線矢印に示すように、鉄鋼材15の上方へ内部欠陥検出部5を移送する。これによって、移動部6は、鉄鋼材15の上方位置等の鉄鋼材15から離間した位置に内部欠陥検出部5を退避させて、内部欠陥検出部5の検出子5aと鉄鋼材15の凸欠陥との衝突を回避する。
一方、移動部6は、退避後の内部欠陥検出部5を鉄鋼材15の表面に近づく方向へ移動させて、元の検出位置に内部欠陥検出部5を復帰させることができる。具体的には、移動部6は、鉄鋼材15の上方位置に内部欠陥検出部5を退避させた後、制御部9の指示に基づいて、鉄鋼材15の表面に近づく方向(図1に示す破線矢印の逆方向)に向けて元の検出位置まで、この退避後の内部欠陥検出部5を移送する。これによって、移動部6は、図1に示すように、離間距離Hまで鉄鋼材15の表面に近接した位置であって鉄鋼材15の内部欠陥を検出する際の定位置、すなわち元の検出位置に内部欠陥検出部5を復帰させる。
測定部7は、搬送される鉄鋼材15の搬送距離を測定する。具体的には、測定部7は、鉄鋼材15の搬送動作に伴って回転する所定の半径のロール等を用いて実現される。所定の半径のロールとしては、例えば製造ライン内に設置されているロールとすればよく、測定部7は、このロールの回転数や周長等をもとに搬送距離を測定する。測定部7は、このように搬送距離を測定する都度、その測定した搬送距離を制御部9に順次送信する。
入力部8は、入力キーまたはマウス等の入力デバイスを用いて実現され、作業者による入力操作に応じて、制御部9に各種情報を入力する。具体的には、入力部8は、欠陥検出装置1の動作開始または動作停止等を指示する指示情報、凸欠陥検出部2,3および表面欠陥検出部4と内部欠陥検出部5との各相対距離を示す距離情報、その他、内部欠陥検出部5の移送速度に例示されるような内部欠陥検出部5の退避動作に有用な情報等を制御部9に入力する。
制御部9は、欠陥検出装置1の機能を実現するためのプログラム等を記憶する記憶部およびこの記憶部内のプログラムを実行するCPU等を用いて実現される。制御部9は、欠陥検出装置1の各構成部、すなわち、凸欠陥検出部2,3、表面欠陥検出部4、内部欠陥検出部5、移動部6、測定部7、および入力部8の各動作を制御し、且つ、これらの各構成部との電気信号の入出力を制御する。
具体的には、制御部9は、入力部8の入力情報をもとに、凸欠陥検出部2,3、表面欠陥検出部4、および内部欠陥検出部5の各動作の開始および停止を制御する。また、制御部9は、測定部7による鉄鋼材15の搬送距離の測定結果をもとに、移動部6の動作タイミングを制御し、この動作タイミングに、凸欠陥検出部2,3、表面欠陥検出部4、および内部欠陥検出部5の各検出結果に基づいて移動部6を制御して、鉄鋼材15から内部欠陥検出部5を退避させる。
この内部欠陥検出部5の退避制御において、制御部9は、凸欠陥検出部2,3および表面欠陥検出部4の各検出結果をもとに、凸欠陥検出部2,3および表面欠陥検出部4のうちの何れが鉄鋼材15の凸欠陥を検出したかを把握し、これをもとに、この凸欠陥の検出位置から内部欠陥検出部5までの距離を把握する。また、制御部9は、測定部7によって測定された搬送距離をもとに、鉄鋼材15の搬送位置を把握する。さらに、制御部9は、凸欠陥検出部2,3および表面欠陥検出部4の各検出結果と測定部7の測定結果とをもとに、この凸欠陥の検出位置からの搬送距離を把握する。このようにして把握した各情報をもとに、制御部9は、検出された凸欠陥が内部欠陥検出部5の検出位置を通過する前のタイミングに移動部6を制御して、鉄鋼材15から内部欠陥検出部5を退避させる。
一方、制御部9は、上述したように凸欠陥から内部欠陥検出部5を退避する制御を行った後、この凸欠陥の検出位置から内部欠陥検出部5までの距離と、この凸欠陥の検出位置からの搬送距離とをもとに、この凸欠陥が内部欠陥検出位置を通過したか否かを判断する。制御部9は、この凸欠陥が内部欠陥検出部5の検出位置を通過するまで、内部欠陥検出部5を退避した状態に維持し、この凸欠陥が内部欠陥検出部5の検出位置を通過した後のタイミングに移動部6を制御して、鉄鋼材15の表面に内部欠陥検出部5を近接させる。
なお、制御部9は、上述したように凸欠陥から内部欠陥検出部5を退避させた場合、鉄鋼材15の内部欠陥検出動作を停止するように内部欠陥検出部5を制御する。一方、制御部9は、上述したように退避後の内部欠陥検出部5を鉄鋼材15の表面に近接させて、内部欠陥検出部5を元の検出位置に復帰させた場合、鉄鋼材15の内部欠陥検出動作を再開するように内部欠陥検出部5を制御する。
ここで、上述した凸欠陥検出部2,3および表面欠陥検出部4は、欠陥検出装置1における複数の凸欠陥検出部を構成する。詳細には、これら複数の凸欠陥検出部は、互いに異なる欠陥検出手法を用い、図1に示すように、内部欠陥検出部5に比して搬送上流側に位置する鉄鋼材15の表面の凸欠陥を各々検出する。これら複数の凸欠陥検出部において、凸欠陥検出部2,3および表面欠陥検出部4のうちの少なくとも1つは、残りの凸欠陥検出部が検出しない凸欠陥を検出する。これによって、凸欠陥検出部2,3および表面欠陥検出部4は、互いに検出能力の不足分と検出時の不利な点とを補い合い、これによって、鉄鋼材15の表面に存在する凸欠陥を内部欠陥検出部5の前段で漏れなく検出する。
なお、上述した凸欠陥検出部2,3の凸欠陥検出結果、表面欠陥検出部4の表面欠陥検出結果、および内部欠陥検出部5の内部欠陥検出結果は、凸欠陥の検出結果とは別に、欠陥管理装置等の外部装置に送信される。この外部装置によって、鉄鋼材15に生じる各種欠陥が管理される。また、制御部9は、上記した実施の形態に限らず、少なくとも凸欠陥の検出結果をもとに移動部6の動作タイミングを制御すればよく、例えば、凸欠陥検出部2,3、表面欠陥検出部4、内部欠陥検出部5の各動作は、別途、独立した各制御部によって各々制御するようにしてもよい。
つぎに、本発明の実施の形態にかかる欠陥検出装置1の退避方法について説明する。図2は、鉄鋼材表面の凸欠陥から内部欠陥検出部を退避させる状態を示す模式図である。図3は、退避後の内部欠陥検出部を元の検出位置に復帰させる状態を示す模式図である。以下、図1〜3を参照して、欠陥検出装置1の退避方法、すなわち、鉄鋼材15の表面に生じた凸欠陥からの内部欠陥検出部5の退避方法を詳細に説明する。
図1に示したように、鉄鋼材15は、搬送ロール等の図示しない搬送機構によって搬送されつつ、凸欠陥検出部2、凸欠陥検出部3、表面欠陥検出部4、および内部欠陥検出部5の各検出位置をこの順に順次通過する。凸欠陥検出部2,3および表面欠陥検出部4は、この搬送中の鉄鋼材15に対して、凸欠陥の検出処理を順次行う。鉄鋼材15の表面に凸欠陥が存在しない限り、内部欠陥検出部5は、凸欠陥の無い正常な鉄鋼材15の表面に検出子5aを離間距離Hまで近接させて、この鉄鋼材15の内部欠陥検出処理を順次行う。
ここで、鉄鋼材15の表面に凸欠陥が存在する場合、この凸欠陥は、鉄鋼材15の搬送に伴って、凸欠陥検出部2、凸欠陥検出部3、表面欠陥検出部4の各検出位置をこの順に順次通過する。この場合、欠陥検出装置1は、まず、凸欠陥検出部2,3および表面欠陥検出部4のうちの少なくとも1つによって、この凸欠陥を検出する。つぎに、欠陥検出装置1は、この凸欠陥が存在する鉄鋼材15の表面から離間する方向へ内部欠陥検出部5を移動させ、これによって、この鉄鋼材15から内部欠陥検出部5を退避させる。
具体的には、凸欠陥検出部2,3および表面欠陥検出部4のうちの少なくとも1つによって検出された鉄鋼材15の表面の凸欠陥15aは、図2に示すように、鉄鋼材15とともに内部欠陥検出部5側に搬送される。これと同時に、制御部9は、凸欠陥検出部2,3および表面欠陥検出部4の各検出結果と、測定部7による搬送距離の測定結果とをもとに演算処理等を行って、図2に示す凸欠陥15aの検出位置P1から内部欠陥検出部5の検出位置P2までの距離L1と、この検出位置P1を起点とした現時点の凸欠陥15aの搬送距離L2とを把握する。
なお、図2に示す検出位置P1は、凸欠陥検出部2,3および表面欠陥検出部4のうちの少なくとも1つによって凸欠陥15aが検出された位置である。すなわち、検出位置P1は、凸欠陥15aを検出した凸欠陥検出部2,3および表面欠陥検出部4のうちの何れかの位置である。
制御部9は、凸欠陥検出部2,3および表面欠陥検出部4の各検出位置のうちの最初に凸欠陥15aが検出された位置を検出位置P1として設定してもよいし、最後に凸欠陥15aが検出された位置を検出位置P1として設定してもよい。または、制御部9は、凸欠陥検出部2,3および表面欠陥検出部4の全てによって検出された場合、凸欠陥15aの3つの検出位置のうちの2番目に凸欠陥15aが検出された位置を検出位置P1として設定してもよい。何れの場合であっても、検出位置P1は、凸欠陥15aが内部欠陥検出部5の検出位置P2に到達する前に決定されれば、何れの凸欠陥15aの検出位置であってもよい。
一方、制御部9は、2つの検出位置P1,P2間の距離L1を算出した後、継続して測定部7による搬送距離の測定結果を取得し、この取得した測定結果をもとに、凸欠陥15aの搬送距離L2を最新のものに順次更新する。これとともに、制御部9は、最新の搬送距離L2と距離L1とを監視し、搬送距離L2<距離L1の状態、すなわち、凸欠陥15aが内部欠陥検出部5の位置に到達する前の状態であるか否かを把握する。
続いて、制御部9は、搬送距離L2<距離L1という大小関係が維持されている期間、すなわち、凸欠陥15aが内部欠陥検出部5の検出位置P2に到達する前のタイミングに、移動部6を制御して、図2に示すように、鉄鋼材15から内部欠陥検出部5aを退避させる。この場合、制御部9は、移動部6による内部欠陥検出部5の移送速度と凸欠陥15aの搬送速度とを考慮し、移動部6が鉄鋼材15の表面から離間する方向へ内部欠陥検出部5を移送する間に内部欠陥検出部5(特に検出子5a)と凸欠陥15aとが接触しないように、移動部6の動作開始タイミングを制御する。
移動部6は、上述したような制御部9のタイミング制御に基づいて、凸欠陥15aが内部欠陥検出部5の検出位置P2に到達する前のタイミングに内部欠陥検出部5の移送を開始する。その後、移動部6は、内部欠陥検出部5と凸欠陥15aとを接触させることなく、鉄鋼材15の表面から離間する方向(例えば図2の破線矢印によって示される鉄鋼材15の上方向)へ内部欠陥検出部5を移送する。この結果、内部欠陥検出部5は、図2に示すように、凸欠陥15aと接触せずに、鉄鋼材15の表面から十分離間した位置に無事退避する。
このように内部欠陥検出部5の退避が完了した後、制御部9は、最新の搬送距離L2と距離L1とを引き続き監視し、搬送距離L2≧距離L1の状態、すなわち、凸欠陥15aが内部欠陥検出部5の位置を通過する状態まで、上述した内部欠陥検出部5の退避状態を維持するよう移動部6を制御する。
一方、上述した最新の搬送距離L2が距離L1を超えた場合、凸欠陥15aは、内部欠陥検出部5の検出位置P2に比して搬送下流側に位置している。このように最新の搬送距離L2>距離L1という大小関係が成立した場合、制御部9は、凸欠陥15aが内部欠陥検出部5の検出位置P2を通過した状態であると判断する。
続いて、制御部9は、図3に示すように、搬送距離L2>距離L1という大小関係が維持されている期間、すなわち、凸欠陥15aが内部欠陥検出部5の検出位置P2を通過した後のタイミングに、移動部6を制御して、鉄鋼材15の表面に退避後の内部欠陥検出部5aを近接させる。この場合、制御部9は、移動部6による内部欠陥検出部5の移送速度と凸欠陥15aの搬送速度とを考慮し、移動部6が鉄鋼材15の表面に近づく方向へ退避後の内部欠陥検出部5を移送する間に内部欠陥検出部5と凸欠陥15aとが接触しないように、移動部6の動作開始タイミングを制御する。
移動部6は、上述したような制御部9のタイミング制御に基づいて、凸欠陥15aが内部欠陥検出部5の検出位置P2を通過した後のタイミングに内部欠陥検出部5の移送を開始する。その後、移動部6は、内部欠陥検出部5と凸欠陥15aとを接触させることなく、鉄鋼材15の表面に近づく方向(図3の破線矢印参照)へ退避後の内部欠陥検出部5を移送する。この結果、内部欠陥検出部5は、図3に示すように、凸欠陥15aと接触せずに、凸欠陥15aが通過した後の検出位置P2に無事復帰する。
以上のようにして、欠陥検出装置1は、必要時に鉄鋼材15の表面から内部欠陥検出部5を退避させ、これによって、凸欠陥15aと内部欠陥検出部5との接触を確実に回避する。さらに、欠陥検出装置1は、適切なタイミングに退避後の内部欠陥検出部5を鉄鋼材15の表面に近接させ、これによって、凸欠陥15aと内部欠陥検出部5とを接触させずに、内部欠陥検出部5による鉄鋼材15の内部欠陥検出処理を続行する。
ここで、上述した欠陥検出装置1の退避方法において、凸欠陥15aは、内部欠陥検出部5の前段に位置する凸欠陥検出部2,3および表面欠陥検出部4のうちの少なくとも1つによって検出される。この場合、凸欠陥検出部2,3および表面欠陥検出部4は、凸欠陥検出時における各自の不利および検出能力の不足分を互いに補い合いつつ、凸欠陥15aを検出している。
具体的には、凸欠陥15aが凸欠陥検出部2にとって検出しやすい欠陥であれば、凸欠陥検出部2は、凸欠陥15aを漏れなく検出する。しかし、凸欠陥15aが凸欠陥検出部2にとって検出し難い欠陥(例えば高さ1mm以下の微小な凸欠陥)であれば、凸欠陥検出部2は、凸欠陥15aを検出し損なう可能性がある。この場合、後段の凸欠陥検出部3および表面欠陥検出部4の少なくとも一方が、凸欠陥15aを検出する。
一方、凸欠陥15aが凸欠陥検出部3にとって検出しやすい欠陥であれば、通常、凸欠陥検出部3は、凸欠陥15aを漏れなく検出する。しかし、凸欠陥15aの検出時の環境に起因して、凸欠陥検出部3は、凸欠陥15aを検出し損なう可能性がある。具体的には、凸欠陥検出部3は、検出時に発生した振動によってレーザ光の光軸がずれた場合に、凸欠陥15aを検出し損なう可能性が高い。この場合、後段の表面欠陥検出部4が、凸欠陥15aを検出する。表面欠陥検出部4は、レーザ式の凸欠陥検出部3に比して振動の影響を受けないため、検出時に振動が発生しても、この欠陥を漏れなく検出する。または、凸欠陥15aは、前段の凸欠陥検出部2によって既に検出されている可能性もある。何れの場合であっても、凸欠陥検出部3が検出し損ねた凸欠陥15aは、凸欠陥検出部2および表面欠陥検出部4の少なくとも一方によって検出される。
他方、凸欠陥15aが表面欠陥検出部4にとって検出しやすい欠陥であれば、表面欠陥検出部4は、凸欠陥15aを漏れなく検出する。しかし、凸欠陥15aが表面欠陥検出部4にとって検出し難い欠陥であれば、表面欠陥検出部4は、凸欠陥15aを検出し損なう可能性がある。
ここで、表面欠陥検出部4は、物理的または光学的に凸欠陥に接触して凸欠陥の高さを直接検出するものではなく、上述したように鉄鋼材15の表面を照明して撮像した表面画像をもとに、凸欠陥を検出する。このため、凸欠陥15aが、実際には検出すべき高さの凸欠陥であっても、上方から見た場合の二次元的な特徴が少ない凸欠陥であれば、表面欠陥検出部4は、凸欠陥15aを検出し損なう。
なお、上述した二次元的な特徴とは、上方から凸欠陥を見た場合の平面上の特徴であり、例えば、凸欠陥の起伏の高低差、凸欠陥とその周囲との明暗差、鉄鋼材15の表面に投影した凸欠陥の二次元的なサイズ等である。例えば、デンツ等の平面上微小な欠陥、または、形状が滑らかな凸欠陥等の周囲との明暗差が画像上鮮明に現れない欠陥等は、二次元的な特徴が少ない凸欠陥である。
これに対し、機械式の凸欠陥検出部2は、ワイヤー2aと凸欠陥とを直に接触させて凸欠陥を検出するため、上述したような二次元的な特徴が少ない凸欠陥であっても、ワイヤー2aに接触可能な高さの凸欠陥を漏れなく検出する。同様に、レーザ式の凸欠陥検出部3は、鉄鋼材15の幅方向に投受光するレーザ光と凸欠陥との接触によって凸欠陥を検出するため、上述したような二次元的な特徴が少ない凸欠陥であっても、レーザ光に接触可能な高さまたは形状の凸欠陥を漏れなく検出する。したがって、凸欠陥検出部2,3の少なくとも一方は、上述したように表面欠陥検出部4によって検出し難い凸欠陥15aを漏れなく検出する。
上述したように、凸欠陥検出部2,3および表面欠陥検出部4は、互いに凸欠陥の検出漏れを補い合い、これによって、結果的に鉄鋼材15の凸欠陥15aを漏れなく検出する。その後、この検出された凸欠陥15aは、鉄鋼材15の搬送に伴って、凸欠陥検出部2,3および表面欠陥検出部4の後段側に搬送される。
以上、説明したように、本発明の実施の形態にかかる欠陥検出装置およびその退避方法では、搬送される鉄鋼材の表面の凸欠陥を互いに異なる欠陥検出手法によって各々検出する複数の凸欠陥検出部のうち、少なくとも1つの凸欠陥検出部によって、この鉄鋼材表面の凸欠陥を検出するようにし、凸欠陥が検出されていない場合、この鉄鋼材の表面に近接する内部欠陥検出部によって、この鉄鋼材に対する内部欠陥検出処理を行い、凸欠陥が検出された場合、この鉄鋼材の表面から離間する方向へ内部欠陥検出部を移動させて、この鉄鋼材から内部欠陥検出部を退避させている。
このため、鉄鋼材の表面に内部欠陥検出部の検出子を所定の離間距離まで近接させた状態で鉄鋼材の内部欠陥を検出しつつ、必要に応じて、この鉄鋼材の表面から離間する方向に内部欠陥検出部を移送することができる。これによって、従来に比して鉄鋼材の内部欠陥を一層高精度に検出できるとともに、鉄鋼材表面の凸欠陥が内部欠陥検出部に接近しつつある非常時に、この鉄鋼材の表面から十分離間した位置に内部欠陥検出部を移送できる。この結果、鉄鋼材の内部欠陥検出能力を下げずに内部欠陥検出部を必要時に凸欠陥から退避して、凸欠陥と内部欠陥検出部との接触を確実に回避でき、これによって、凸欠陥と内部欠陥検出部の検出子との接触による内部欠陥検出部の損傷を的確に防止することができる。
また、鉄鋼材の表面に生じた凸欠陥を互いに異なる欠陥検出手法によって各々検出する複数の凸欠陥検出部を用いて、鉄鋼材表面の凸欠陥を検出しているため、凸欠陥検出時における各欠陥検出部の不利および検出能力の不足分を、これら複数の凸欠陥検出部の間で互いに補い合うことができる。これによって、複数の凸欠陥検出部のうちの1つが検出し損ねた凸欠陥を残りの凸欠陥検出部のうちの少なくとも1つによって検出でき、この結果、これら複数の凸欠陥検出部によって最終的に漏れなく凸欠陥を検出できるとともに、内部欠陥検出部の退避制御に凸欠陥の高精度な検出結果を利用できることから、より的確なタイミングに内部欠陥検出部を退避できる。
さらに、この実施の形態にかかる欠陥検出装置およびその退避方法では、凸欠陥が内部欠陥検出部の検出位置を通過した後のタイミングに、上述した退避後の内部欠陥検出部を鉄鋼材表面に近づく方向に移送している。このため、鉄鋼材表面に凸欠陥が存在しない適切なタイミングに、退避後の内部欠陥検出部を元の検出位置に復帰させることができる。これによって、内部欠陥検出部と凸欠陥とを接触させることなく、退避後の内部欠陥検出部を鉄鋼材表面に容易に近接させることができる。この結果、内部欠陥検出部の退避および復帰を手間なく実行して、上述した内部欠陥検出部の損傷を防止しつつ、内部欠陥検出部による鉄鋼材の内部欠陥検出処理を可能な限り継続して行うことができる。
なお、上述した実施の形態では、機械式の凸欠陥検出部2の後段にレーザ式の凸欠陥検出部3を配置し、この凸欠陥検出部3の後段に表面欠陥検出部4を配置していたが、これに限らず、鉄鋼材15の搬送方向に沿った凸欠陥検出部2,3および表面欠陥検出部4の配置順は、各検出部の設置スペースまたは検出能力等を考慮して、所望の順序にしてもよい。例えば図4に示すように、鉄鋼材15の搬送方向に沿って、レーザ式の凸欠陥検出部3の後段に表面欠陥検出部4を配置し、この表面欠陥検出部4の後段に機械式の凸欠陥検出部2を配置してもよい。あるいは、表面欠陥検出部4を2つの凸欠陥検出部2,3の前段に配置してもよいし、レーザ式の凸欠陥検出部3を機械式の凸欠陥検出部2および表面欠陥検出部4の後段に配置してもよいし、その他の配置順でもよい。
また、上述した実施の形態では、凸欠陥検出部2のワイヤー2aを鉄鋼材15の表面から所定の高さに張設していたが、これに限らず、鉄鋼材15の表面に生じた凸欠陥の高さに応じて、ワイヤー2aの高さを変更可能にしてもよい。例えば図4に示すように、凸欠陥検出部2に上下動機構等(図示せず)を設けて、鉄鋼材15に対して相対的に凸欠陥検出部2を上下動可能にしてもよい。この場合、凸欠陥検出部2は、例えばワイヤー2aに比して過度に高い凸欠陥または溶接部分等の凸部分が近づいてきた際、図4に示すように上方に移動して、鉄鋼材15の表面からのワイヤー2aの高さを適度に高くする。これによって、この過度な凸欠陥または凸部分とワイヤー2aとの接触を回避して、この接触によるワイヤー2aの損傷、更には断線を防止できる。なお、この凸欠陥検出部2は、この過度な凸欠陥または凸部分を回避した後に、下方に移動して、上昇前の元の状態に復帰すればよい。
なお、鉄鋼材15に対して相対的に凸欠陥検出部2を上下動可能に構成した場合、この凸欠陥検出部2をレーザ式の凸欠陥検出部3または表面欠陥検出部4の何れかの後段に配置することが望ましく、さらには、図4に示すように、凸欠陥検出部3および表面欠陥検出部4の後段に配置することが望ましい。このように配置することによって、たとえワイヤー2aの損傷を招来しかねない過度な凸欠陥または凸部分が鉄鋼材15の表面に存在していても、この過度な凸欠陥または凸部分がワイヤー2aと接触する前に、前段の凸欠陥検出部3および表面欠陥検出部4の少なくとも一方によって、この過度な凸欠陥または凸部分を検出できる。これによって、制御部9は適度なタイミングに凸欠陥検出部2を上下動させることができ、この結果、過度な凸欠陥または凸部分がワイヤー2aと接触によるワイヤー2aの損傷および断線を容易且つ確実に防止できる。
また、上述した実施の形態では、鉄鋼材表面の凸欠陥を検出する複数の凸欠陥検出部として、凸欠陥検出部2,3および表面欠陥検出部4を配置していたが、これに限らず、本発明における複数の凸欠陥検出部は、互いに異なる欠陥検出手法によって被検査材表面の凸欠陥を各々検出するものであればよい。例えば、本発明における複数の凸欠陥検出部は、上述した凸欠陥検出部2,3および表面欠陥検出部4の中から選択される何れか2つであってもよい。
具体的には、機械式の凸欠陥検出部2とレーザ式の凸欠陥検出部3とを組み合わせてもよく、この場合、レーザ式の凸欠陥検出部3の後段に機械式の凸欠陥検出部2を配置することが望ましく、これによって、鉄鋼材15の表面に存在する過大な凸欠陥または凸部分を、機械式の凸欠陥検出部2に先んじてレーザ式の凸欠陥検出部3によって検出できる。この検出結果を用いることによって、ワイヤー2aと過大な凸欠陥または凸部分との接触を回避でき、この結果、ワイヤー2aの損傷を防止できる。また、機械式の凸欠陥検出部2は、検出時におけるレーザ光の光軸の微妙な変化によって検出能力が低下するというレーザ式の凸欠陥検出部3の不利な点を補える。一方、レーザ式の凸欠陥検出部3は、ワイヤー2aが自重によって撓むことに起因して検出能力が低下するという機械式の凸欠陥検出部2の不利な点を補える。
なお、機械式の凸欠陥検出部2では、このワイヤー2aの撓みによってワイヤー2aのセンター部分と端部分との間に高低差が生じる。この結果、ワイヤー2aのセンター部分と被検査材とのギャップが過度に小さくなって、ワイヤー2aと被検査材との接触によるワイヤー2aの損傷、検出能力の誤差等の不利な点が生じる。
一方、機械式の凸欠陥検出部2と表面欠陥検出部4とを組み合わせてもよく、この場合、表面欠陥検出部4の後段に凸欠陥検出部2を配置することが望ましい。これによって、上述したレーザ式の凸欠陥検出部3の場合と同様の作用効果を享受できる。また、凸欠陥検出部2は、上述した二次元的な特徴が少ない凸欠陥を検出し難いという表面欠陥検出部4の不利な点を補える。
他方、レーザ式の凸欠陥検出部3と表面欠陥検出部4とを組み合わせてもよく、この場合、被検査材と物理的に接触して凸欠陥を検出するものがないため、被検査材表面の凸欠陥および表面欠陥を検出部の損傷なく検出できる。また、この組み合わせにおいて、表面欠陥検出部4は、上述した機械式の凸欠陥検出部2の場合と同様に、レーザ式の凸欠陥検出部3の検出時の不利等を補え、レーザ式の凸欠陥検出部3は、上述した機械式の凸欠陥検出部2の場合と同様に、表面欠陥検出部4の検出時の不利等を補える。
なお、上述した凸欠陥検出部の組み合わせにおいて、複数の凸欠陥検出部のうちの1つは、表面欠陥検出部4、すなわち、被検査材の表面画像を撮像し、この得られた表面画像をもとに被検査材の凸欠陥を検出するものであることが好ましい。具体的には、表面欠陥検出部4と機械式の凸欠陥検出部2との組み合わせ、あるいは、表面欠陥検出部4とレーザ式の凸欠陥検出部3との組み合わせが好ましい。何故ならば、表面欠陥検出部4は、凸欠陥検出部2,3に比して、被検査材の変動に起因する検出性能への影響を受け難いためである。具体的には、機械式の凸欠陥検出部2またはレーザ式の凸欠陥検出部3は、凸欠陥の高さを直接的に検出するものであるため、被検査材の振動等、被検査材の厚み方向(高さ方向)への被検査材の変動による影響を受けやすい。これに対し、表面欠陥検出部4は、被検査材の表面画像をもとに被検査材の凸欠陥の高さを検出するため、凸欠陥検出部2,3に比して、この被検査材の変動による影響を受け難い。すなわち、表面欠陥検出部4は、上述した被検査材の変動による凸欠陥検出部2,3の不利を補えるため、本発明における複数の凸欠陥検出部のうちの一つとして好適である。
また、上述した実施の形態では、鉄鋼材15の搬送距離を測定し、この測定結果をもとに把握した凸欠陥15aの搬送距離を用いて、退避または復帰のために内部欠陥検出部5を移動させる移動部6の動作タイミングを制御していたが、これに限らず、凸欠陥15aの搬送時間を用いて移動部6の動作タイミングを制御してもよい。
例えば、制御部9は、測定部7によって測定された凸欠陥15aの搬送距離とその搬送時間とをもとに、凸欠陥15aの搬送速度を算出し、凸欠陥15aの搬送速度と検出位置P1,P2間の距離L1とをもとに、凸欠陥15aが内部欠陥検出部5の検出位置P2に到達するまでの時間を算出する。制御部9は、このようにして得られた時間を用いて、移動部6の動作タイミングを制御すればよい。
あるいは、測定部7によって鉄鋼材15の搬送速度(=凸欠陥15aの搬送速度)を測定するように構成してもよい。制御部9は、測定部7によって測定された凸欠陥15aの搬送速度と検出位置P1,P2間の距離L1とをもとに、凸欠陥15aが内部欠陥検出部5の検出位置P2に到達するまでの時間を算出する。制御部9は、このようにして得られた時間を用いて、移動部6の動作タイミングを制御してもよい。
また、上述した実施の形態では、被検査材の一例として帯状の鉄鋼材15を例示していたが、これに限らず、被検査材は、鋼板等の板状の鉄鋼材であってもよいし、これら以外の形状の鉄鋼材であってもよい。あるいは、被検査材は、例えば銅またはアルミニウム等の他の金属材であってもよい。すなわち、欠陥検出装置1は、鉄鋼製品以外の金属製品を製造する製造ラインに設置されてもよい。
さらに、上述した実施の形態では、被検査材表面に近接させる内部欠陥検出部5の一例として、被検査材からの漏洩磁束を検出して被検査材の内部欠陥を検出する漏洩磁束式のものを例示したが、これに限らず、この内部欠陥検出部5は、漏洩磁束式以外のものであってもよく、例えば、被検査材に超音波を発振して、そのエコーをもとに被検査材の内部欠陥を検出する超音波式のものであってもよい。
また、上述した実施の形態では、測定部7は、所定の半径を有するロールを用いて鉄鋼材の搬送距離を求めていたが、これに限らず、測定部7は、搬送物の搬送速度を測定し、得られた搬送速度と計測した時間とをもとに、鉄鋼材等の搬送物の搬送距離を測定してもよい。
さらに、上述した実施の形態では、凸欠陥15aが内部欠陥検出部5の検出位置P2を通過した後のタイミングに、移動部6の駆動制御によって、退避後の内部欠陥検出部5を検出位置P2に自動復帰させていたが、これに限らず、退避後の内部欠陥検出部5は、手動操作によって元の検出位置P2に復帰させてもよい。この場合、作業者は、凸欠陥15aが検出位置P2を通過したことを確認した後、入力部8を操作して、内部欠陥検出部5を検出位置P2に移動させる指示情報を制御部9に入力する。制御部9は、この入力情報をもとに、凸欠陥15aが検出位置P2を通過後のタイミングに内部欠陥検出部5を検出位置P2に移動させるよう移動部6を制御すればよい。
また、上述した実施の形態では、複数の凸欠陥検出部として凸欠陥検出部2,3および表面欠陥検出部4を組み合わせていたが、これに限らず、例えば、上述した組み合わせの他に、凸欠陥検出部2,3および表面欠陥検出部4と、これらとは異なる欠陥検出手法によって被検査材表面の凸欠陥を検出する1つ以上の欠陥検出部とを組み合わせた4つ以上のものであってもよく、また、同種の凸欠陥検出部を2つ以上用いるようにしてもよい。
また、上述した実施の形態により本発明が限定されるものではない。上述した各構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。その他、上述した実施の形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施の形態、実施例および運用技術等は全て本発明に含まれる。