JP2013127648A - 構造体、構造体の形成方法及び構造体形成装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 基材11の表面の一部又は全部に光回折を起こす周期構造15を有しており、その周期構造15が光の照射により形成された。
【選択図】 図3a
Description
ホログラムシールの作製には高度な光学設計技術が必要とされるうえ、複雑な材料構成と高価な原版などが必要とされるため、偽造を困難とさせている。その困難性による偽造防止効果と、独特な色調により一瞥で識別できることや貼るだけで良いという取扱いの良さから広く利用されている。
また、空隙部の界面や基材の表面に周期構造を形成した構造とするため、材料構成が簡易となり、コストアップを回避できる。
構造体をこのような構成とすれば、空隙部界面周期構造や基材面周期構造が規則的配列にもとづき構造色を発現できる。
構造体をこのような構成とすると、保護層により、基材面周期構造の損傷を防止でき、ひいては、対象物の真贋判定機能の低下を阻止できる。また、反射層により、発色性を向上できる。
構造体をこのような構成とすれば、基材面周期構造にもとづく構造色の発現を抑制することで、それまで隠蔽されていた構造色(空隙部界面周期構造により発現した構造色)を読み取ることができる。
構造体をこのような構成とすると、空隙部界面周期構造や基材面周期構造を、比較的簡易な製造技術により形成でき、コストアップを抑えることができる。
このようにすれば、周期的強度分布が発生することで、空隙部界面周期構造や基材面周期構造を形成できる。
構造体をこのような構成とすると、基材(例えば、ポリエステル(PET、PEN)材)の表面に、虹色加飾を施すことができ、これにより、ホログラム加飾に代わる新規の加飾技術を提供できる。
また、構造体そのものに周期構造が形成されているため、これを剥離して他に再利用するという行為が不可能となる。このため、ホログラムシールのように既存の対象品から剥がし偽造品に貼付し真正品として流通させるといった行為を阻止できる。
さらに、基材表面に直接にホログラムを作製できるので、ホログラム転写層など他の材料を必要としない。これにより、コストアップを回避できる。
構造体をこのような構成とすれば、構造色の発現により、基材表面への虹色加飾が可能となる。
構造体をこのような構成とすると、保護層により、基材面周期構造又は反対面の損傷を防止して、発色性を維持できる。また、反射層により、微細周期構造体からの回折光を増大させるなどして、発色性を向上できる。
構造体をこのような構成とすると、周期的強度分布が発生することで、基材面周期構造を形成できる。
構造体をこのような構成とすれば、基材の表面に周期構造を形成できる。
構造体の形成方法をこのような方法とすると、空隙部界面周期構造や基材面周期構造を、簡易な方法で形成できる。
構造体の形成方法をこのような方法とすれば、基材が透明性を示す波長領域に含まれる波長の光を照射することで空隙部界面周期構造を形成でき、不透明性を示す波長領域に含まれる波長の光を照射することで基材面周期構造を形成できる。そして、それら光を同時に照射することで、別々に照射した場合に比べて構造体の製造時間を短縮できる。
構造体の形成方法をこのような方法とすると、空隙部界面周期構造を確実に形成し、その後に、基材面周期構造を形成することができる。
構造体の形成方法をこのような方法とすると、空隙部の界面や基材の表面に周期構造を形成できる。
構造体の形成方法をこのような方法とすれば、光を照射するという簡易な方法で、基材面周期構造を形成できる。
また、その方法が光の照射であるため、非接触での形成が可能となる。これにより、既に形成された対象物に後加工でホログラムを作製することができる。例としてPETボトルでは、ブロー成形後や充填後に、そのPETボトルへの後加飾が可能となる。
さらに、対象物が曲面形状であっても基材面周期構造の形成が可能である(多少の凹凸があってもよい)。しかも、版型が不要であり、デザインの自由度を高めることができる。また、リアルタイム加工が可能である。
構造体の形成方法をこのような方法とすると、基材の表面に周期構造を形成できる。
構造体の形成方法をこのような方法とすれば、構造色の発現により、基材表面への虹色加飾が可能となる。
構造体の形成方法をこのような方法とすると、低廉で照射光学系の調整が簡易であるレーザ装置を用いてホログラムを作製できる。
構造体の形成方法をこのような方法とすれば、不透明性を示す波長領域に含まれる波長の光を照射することで基材面周期構造を形成できる。
構造体の形成方法をこのような方法とすると、レーザフルエンスの変化により構造色発色の視認性が変化するため、従来のホログラムと比べて発色の視認性を高めることができる。
発色の視認性が異なるのは、照射するフルエンスが小さいときは周期構造がきれいに形成されるため透明性のある発色となり、フルエンスが大きいときは周期構造が乱れて形成されるため半透明で白濁した発色となるからである。半透明な白濁が背景光を遮ることにより、従来のホログラムと比べて構造色発色を視認しやすくしている。
なお、フルエンスとは、1レーザパルスの単位照射面積あたりのエネルギーを示す値をいう。
構造体形成装置をこのような構成とすると、レーザ発振器において照射パルス数やレーザ出力を調整することにより、光回折を起こす周期構造を基材の表面に形成できる。
読み取り方法をこのような方法とすると、機能材を接触させるという簡単な方法で、それまで隠蔽されていた、空隙部界面周期構造による構造色や回折光を読み取ることができる。
例えば、読み取られた構造色で描かれた形状が星型であって、被照合用の構造色で描かれた形状が同じ星型であった場合は、その構造体を有する物が真正品であると判定できる。一方、読み取られた構造色で描かれた形状と被照合用の構造色で描かれた形状とが異なる場合は、その構造体を有する物が偽造品であると判定できる。また、空隙部がもともと形成されていないために、機能材を接触させても構造色が読み取れない場合も偽造品であると判定できる。
また、基材の内部には空隙部界面周期構造が形成され、その基材の表面には基材面周期構造が形成されて、各周期構造が構造色を発現するため、基材面周期構造による構造色により、空隙部界面周期構造による構造色を隠蔽することができる。
まず、本発明の構造体の実施形態について、図1〜図3cを参照して説明する。
図1は、本実施形態の構造体の構造を模式的に表した断面図である。
図2a〜図2eは、構造体のベースとなる基材の内部に形成された空隙部を示す図であって、図2aは、空隙部が形成された構造体の断面を示す模式図、図2bは、空隙部が形成された構造体の外観を示す斜視画像、図2cは、図2bを模式的に示した外観斜視図、図2dは、構造体を上方(図2cのA方向)から見たときの空隙部の拡大顕微鏡像、図2eは、構造体を側方(図2cのB方向)から見たときの空隙部の拡大顕微鏡像である。
図3a〜図3cは、構造体の表面(基材面)に形成された周期構造(基材面周期構造)を示す図であって、図3aは、基材面周期構造が形成された構造体の断面を示す模式図、図3bは、基材面周期構造が形成された構造体の外観を示す斜視画像、図3cは、基材面周期構造を拡大して示したAFM像である。
図1及び図2a〜図2eに示すように、構造体10の基材11の内部には、空隙部12が形成してある。
図2aに示すように、一つの空隙部12は、ほぼ銅鑼形の形状をなし、直径は長いもので40μm程度となっている。
この空隙部12は、銅鑼形の径方向が構造体10の面方向とほぼ平行し、銅鑼形の厚み方向が構造体10の厚み方向とほぼ平行して形成される。
ここで、周期構造とは、所定の形状がほぼ一定の周期(間隔)で複数形成された構造をいう。本実施形態の空隙部界面周期構造13においては、図2a,図2dに示すように、一つの空隙部12の界面に凹部と凸部がほぼ等間隔で縦横に複数形成されている。この周期構造13は、空隙部12の界面全体にわたって形成されている。このため、空隙部12の界面の断面(凸部の頂点を通る断面)は、図2aに示すように波型となる。このように、空隙部12の界面の凹部と凸部の間隔が可視光波長に近いことから構造色を発現する。
なお、周期構造13の波型の1周期(隣り合う凸部の各頂点間の距離)は、1.5μm〜2.0μm程度となっている。
本発明でいう「構造色を発現する規則的配列」とは、格子周期が可視光波長(約400nm〜700nm)に近いときのことであり、およそ2.0μm以下のことである。このとき、可視光が強く回折するので、構造色が観察される。
その照射範囲内(同一の面内)では、空隙部12が複数形成される。
それら複数の空隙部12は、光の照射範囲内で、横方向にランダムな位置にそれぞれ形成され、しかも、光の照射面からそれぞれ異なる深さのところに形成される。
異なる深さ、つまり多層に回折面が存在すると、それぞれの回折面で回折が起こる。このとき、各面からの回折光の位相が揃わないと発色は弱くなるが、位相が揃うと発色は強くなる。具体的には、以下のブラッグ反射式(式1)に則った波長の光で発色が強くなる。
回折面が式1に従った間隔で存在する構造体10の形成が可能となれば、式1を満たす特定の波長の光のみで発色する構造体10となる。さらに、回折面が増加すると、回折光強度が増すことになるので、発色はより強くなる。
このように、ブラッグの法則に従って発色を起こすものとして、3次元的に周期構造が形成されたフォトニック結晶が知られている。
また、図1及び図3a〜図3cに示すように、構造体10の基材11の表面(基材面14)には、光回折を起こす周期構造(基材面周期構造15)が形成してある。そして、その周期構造15が、構造色を発現する規則的配列を有している。なお、ここでいう「構造色を発現する規則的配列」とは、格子周期が可視光波長(約400nm〜700nm)に近いときのことをいう。
ここで、周期構造の定義は、上述の通りであるが、本実施形態の基材面周期構造15においては、図3a及び図3cに示すように、凹部や凸部が基材面14に沿ってほぼ等間隔に複数形成されている。この周期構造15は、基材面14の全体にわたって形成されている。このため、基材面14の断面(凸部の頂点を通る断面)は、図3aに示すように波型となる。そして、基材面14の凸部の間隔が、可視光波長に近いことから構造色を発現する。
なお、基材面周期構造15の波型の1周期(隣り合う凸部の各頂点間の距離)は、約1.0μm程度となっている。
ここで、マーキングとは、構造色及び/又は回折光を発現する部位が一様に形成された領域、又は、構造色及び/又は回折光を発現する部位を適切に配置することにより描かれた図形もしくは文字などを指す。
これら空隙部界面周期構造13及び基材面周期構造15を基材自体に形成することで、これらを剥離して他の対象物に貼付するなどの再利用ができなくなるとともに、それら周期構造13,15の消去や改ざんが不可能となる。
この構造体10においても、基材面14に微細周期構造を有しているため、この周期構造15から回折・干渉等の光学現象による構造色を発現させることで、マーキングをなす。
しかも、基材面周期構造15を基材自体に形成することで、これを剥離して他の対象物に貼付するなどの再利用ができなくなるとともに、基材面周期構造15の消去や改ざんが不可能となる。
基材11とは、構造体10のベースとなる部材をいう。
基材11には、例えば、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ナイロン樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、フェノール樹脂などの高分子化合物、BK7、石英などの光学ガラスやソーダガラスなどを材料として用いることができる。また、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)などのポリエステル化合物等を材料として用いることもできる。
なお、基材11は、上述の材料に限るものではなく、従来公知の任意好適な材料を用いることができる。ただし、光の照射により空隙部12,空隙部界面周期構造13,基材面周期構造15が形成されることを要する。
構造体10には、図5に示すように、周期構造15の形成面に保護層16aを設けることができる。
保護層16aは、基材面周期構造15が外傷を受けるなどして構造色が発現しなくなるのを防止して、発色性を維持するための保護膜である。
この保護層16aは、例えば、アクリルアミノ、ポリエステルアミノ、ポリエステルアクリルアミノなどにより形成できる。
保護層16bは、反対面が外傷を受けるのを防止する。反対面が傷つき粗くなると、光の散乱が起きるため、この反対面から周期構造13及び周期構造15に入射する光が減少し、それぞれの発色性が低下する。また、反対面側から観察した場合、周期構造13及び周期構造15からの光が反射面の外傷により遮られてしまうので、それぞれの発色性を損なうことになる。そこで、保護層16bを形成することにより、外傷を防止して、発色性を維持できる。
なお、保護層16a,16bは、図6に示すように、基材面周期構造15は形成されているものの空隙部界面周期構造13が形成されていない構造体10に形成することもできる。
また、保護層16aと保護層16bは、両方とも形成することができ、また、一方のみ形成することもできる。
反射層17aは、周期構造15からの反射光を増大し、形成面側から観察する場合は周期構造15からの発色を、反対面から観察する場合は周期構造13、15からの発色を、より目立ち易く(発色性を向上)するための薄膜である。
この反射層17aは、例えば、反射型ホログラムであればアルミ蒸着層により、透明型ホログラムであればTiO2、Al2O3などの透明薄膜により形成できる。
反射層17bは、周期構造15の形成面及び周期構造13を通過して基材11と反射層17bとの界面で反射し再び周期構造13及び周期構造15に入射し外部へ通過する光を増やすことができる。これにより、反射層17bは、発色性を増大できる。
なお、反射層17a,17bは、図8に示すように、基材面周期構造15は形成されているものの空隙部界面周期構造13が形成されていない構造体10に形成することもできる。
また、反射層17aと反射層17bは、両方とも形成することができ、また、一方のみ形成することもできる。
例えば、図9(a)に示すように、基材面周期構造15が形成された面に反射層17aを形成し、さらに、この反射層17aの表面に保護層16aを形成することができる。
また、図9(b)に示すように、基材面周期構造15が形成された面に反射層17aを形成し、さらに、この反射層17aの表面に保護層16aを形成し、基材面周期構造15が形成された面とは反対の面に保護層16bを形成することができる。
また、図9(d)に示すように、基材面周期構造15が形成された面に保護層16aを形成し、基材面周期構造15が形成された面とは反対の面に反射層17bを形成し、さらに、この反射層17bの表面に保護層16bを形成することができる。
なお、図9(a)〜(d)においては、基材面周期構造15と空隙部界面周期構造13の両方が形成された構造体10について示したが、これに限るものではなく、基材面周期構造15は形成されているものの空隙部界面周期構造13が形成されていない構造体10においても、保護層16及び反射層17の両方を形成することができる。
次に、構造体形成装置について説明する。構造体形成装置には、透過型回折光学素子を用いたものと、マイクロレンズアレイを用いたものとがある。
まず、透過型回折光学素子を用いた構造体形成装置について、図10〜図12を参照して説明する。
図10は、該構造体形成装置の構成を示す概略図、図11は、該構造体形成装置のうち干渉光学系の構成を示す模式的斜視図、図12は、基材(構造体)周辺で光束が交差し干渉して高強度域を形成する様子を示す図である。
なお、エネルギー密度のコントロールは、レーザ発振器21におけるレーザ出力の調整の他、例えば、レーザ出力が同じで照射ビーム径を変化させることによっても実現できる。
また、被照射材内部への周期構造の形成のためには、照射する光が材料内部へ進入する必要がある。照射光が極表面で吸収されないよう、被照射材において適度な透過率を有する波長の光を用いることが望ましい。
透過型回折光学素子23は、表面に微細な凹部又は凸部が周期的に刻まれているために回折を起こす、透過型の光学素子であって、レーザ光を複数の光束に分割する。
凸レンズ24は、例えば、焦点距離が200mmの合成石英平凸レンズを用いることができ、この場合は透過型回折光学素子23から200mmの位置に置かれる。そして、凸レンズ24は、透過型回折光学素子23で分割された複数の光束を通す。
凸レンズ26は、例えば、焦点距離が100mmの合成石英平凸レンズを用いることができ、マスク25を通過した光束を集光し、光束を交差させ干渉させる。この干渉した領域は、図12に示すように高強度域の分布となり、この領域で基材11に照射する。
d=λ/(2sin(θ/2)) ・・・(式2)
λ:光波長、θ:光束の交差角度
次に、マイクロレンズアレイを用いた構造体形成装置について、図13、図14を参照して説明する。
図13は、該構造体形成装置の構成を示す概略図、図14は、該構造体形成装置のうち干渉光学系の構成を示す模式的斜視図である。
ここで、レーザ発振器31は、図10に示した構造体形成装置20におけるレーザ発振器21と同様の機能を有している。
ミラー32は、レーザ発振器31から出力されたレーザ光を反射する。なお、図13において、ミラー32は、2つ備えられているが、2つに限るものではなく、任意の数備えることができる。
マイクロレンズアレイ35は、微小な凸レンズが碁盤目状に並んだ構造の光学素子であって、レーザを多数の光束に分割する。
マスク36は、分割された光束のうちのいくつかを選択する。凸レンズ37は、マスク36で選択された光束を集める。
なお、マイクロレンズアレイ35によるレーザの分割とマスク36による光束の選択との関係については、後記の「周期構造パターンの形成方法」における「(マイクロレンズアレイを用いた周期構造パターンの形成方法)」において説明する。
次に、本実施形態の構造体の形成方法について、図15,図16を参照して説明する。
図15は、周期的強度分布を有した光を基材に照射することを示す図、図16は、照射される光の波長とその照射により形成される周期構造との関係を示す図である。
図15に示すように、周期的強度分布を有した光1を基材11に照射することで、周期構造13を界面に有する空隙部12を基材11の内部に形成する。このとき、微細周期構造13は、周期的強度分布と同じ周期で形成される。
一方、周期的強度分布を有した光2を基材11に照射することで、基材面14に周期構造15を形成する。このとき、微細周期構造15は、周期的強度分布と同じ周期で形成される。
基材11は特定の波長に対して、透過率が70%以上の透明性、透過率が10%以上70%未満の半透明性、透過率が10%未満の不透明性のいずれかの性質を示す。ある波長に対して基材11が透明性を示す場合、光は基材内部まで進入する。一方、不透明性を示す場合、光は基材の表面近傍にしか進入しない。
具体的には、図16に示すように、基材11が透明性を示す波長領域に含まれる波長としておよそ330nm以上(例えば355nm)の光を照射して空隙部12及び空隙部界面周期構造13を形成し、基材11が不透明性を示す波長領域に含まれる波長としておよそ310nm以下(例えば266nm)の光を照射して基材面周期構造15を形成する。
レーザアブレーションとは、レーザ光を物質に照射したとき、その物質が分子クラスターとなって表面から飛散する現象をいう。
このレーザアブレーションが発生することで、基材面周期構造15が形成される。
これは、基材面周期構造15が形成されていると、空隙部界面周期構造13を形成する際に周期的光強度分布が乱れてしまい、整った周期構造が形成されず、ゆえに構造色発色が低減するのを避けるためである。
また、透明性を示す波長の光と不透明性を示す波長の光との同時照射でもよい。このとき、構造体の形成時間の短縮が図れる。
これは、レーザ照射により物質表面に自発的に周期的強度分布を発生し、自己組織的に形成される微細周期構造である。また、周期構造を有する型を、加熱して基材に押し付けるか加熱した基材に押し付けることで型形状を転写するホットスタンプがある。
非特許文献:Sylvain Lazare著「Large scale excimer laser production of submicron periodic structures on polymer surface.」Applied Surface Science 69(1993)31−37 North Holland
第一の方法として、図17(a)に示すように、入射光と界面反射光との干渉によって、周期的光強度分布を発生させる方法がある。
第二の方法として、同図(b)に示すように、周期的な光強度分布を有する単光束の光を照射する方法がある。
第三の方法として、同図(c)に示すように、多光束干渉により周期的な光強度分布を発生させる方法がある。
これら周期的強度分布を有した光照射は、周期的に開口を有するマスクを用いた平行光線による照射、または、複数の光束を交差させた干渉領域で照射することで実現できる。
次に、光制御素子として機能させたときの周期構造パターンの形成方法について、図18、図19を参照して説明する。
周期構造に光を入射すると、周期性がある方向に回折光があらわれる。
光制御素子とは、回折光のパターン(方向、角度、波長)を制御する素子のことである。この制御は、周期構造のパターン(周期軸数、周期方向、格子周期)によって行なう。これにより、回折を利用した一種のバーコードとして、光情報(回折パターン)を記録することができる。
構造体の周期構造のパターンは、光照射する周期的強度分布と同じパターンになる。つまり、周期的強度分布のパターンを異ならすことで、多様なパターンの周期構造を形成することができる。
周期的強度分布パターンの変化は、開口を有するマスクを用いて平行光線を照射する場合は開口の位置により、複数の光束を公差させた干渉領域で照射する場合は光束の数、交差方向、公差角度、波長により制御できる。
なお、前者の場合、マスクに入射した平行光線は、開口部分の光のみがマスクを通過し、その後直進して対象物に入射する。よって、マスクの開口の位置と同一の周期的強度分布パターンになる。
以下、それぞれについて説明する。
透過型回折光学素子を用いる方法は、レーザ光束を透過型回折光学素子に入射し、回折により、直進する光束と回折する光束に分割する。なお、回折する光束は周期がある方向にあらわれる。
透過型回折光学素子による光束の分割と、マスクの開口との関係から、形成される周期構造パターンは、図18(a),(b)のようになる。
ここで、同図(a)に示すように、透過型回折光学素子によりレーザが3×3の光束に分割され、それらのうち対角に位置する1対の光束がマスクの開口に対応して通過したとき、斜め縞の周期構造パターンが形成される。
また、同図(b)に示すように、対角に位置する2対の光束がマスクの開口に対応して通過したとき、ドット状の周期構造パターンが形成される。
このように、透過型回折光学素子の分割パターンとマスクの開口パターンとの組み合わせにより、周期構造パターンが異なる。これにより、回折を利用した一種のバーコードとして、光情報を記録することができる。
マイクロレンズアレイを用いる方法は、例えるなら、ところてん突きでところてんを押し出すように、レーザ光束をマイクロレンズアレイに入射することで、碁盤目状に複数の光束に分割する方法である。
例えば、マイクロレンズアレイによる光束の分割と、マスクの開口との関係から、空隙部界面周期構造13や基材面周期構造15として記録される周期構造パターンは、図19(a)〜(c)のようになる。
ここで、同図(a)に示すように、マイクロレンズアレイによりレーザが36(6×6)の光束に分割され、それらのうち縦2−横2に位置する光束と、縦5−横5に位置する光束がマスクの開口に対応して通過したとき、斜め縞の周期構造パターンが記録される。このときの周期軸数は1、周期方向は縞の1本が伸びる方向に対して垂直方向となる。
次に、マーキングの読み取り方法について、説明する。
ここでは、まず、「構造色又は回折光の読み取り方法」について説明し、次いで、「構造体を用いた真贋判定方法」について説明する。
図20に示すように、1次元的周期構造(例:すだれ状)または2次元的周期構造(例:格子状)をもつ面に光が入射すると異なる波長毎に異なる角度に分かれる(分散する)現象を、回折という。「回折光」とは、これら回折した全ての波長の光のことである。なお、0次光とは、回折せずに残った光のことである。
光源に自然光(例えば、太陽光)を用いた場合、紫外域、可視域、赤外域の光が異なる角度に回折する。このときさらに、(他の波長域でも同様だが)可視域の回折光は波長(色)毎に異なる角度に回折する(つまり、分光される)ので、可視域の回折光を視認する位置により異なる色彩が見える。本発明の「構造色」とは、可視域の回折光のこと、また可視域の回折光により認識する色彩のことをいう。
なお、可視域とは、ヒトが視認可能な光の波長域であり、波長約400〜700nmである。それ以下の波長域を紫外域、それ以上を赤外域といい、ヒトは視認できない。
d(sinα±sinβ)=mλ ・・・(式3)
ここで、mは回折次数をあらわす。
なお、マーキングとは、回折を起こす部位が一様に形成された領域、又は、回折を起こす部位を適切に配置することにより描かれた図形もしくは文字などを指す。
i.既知の単波長の光を特定の角度で入射したとき、既知の格子周期を用いて式3から求められる回折角度において回折光を検知すること
ii.既知の単波長の光を特定の角度で入射したとき、回折光を検知する角度を測定すること
iii.既知の格子周期を用いて式3から求められる回折角度において回折光を検知しうる、既知の単波長の光を入射する角度を測定すること
iv.複数の波長を含む光を特定の角度で入射したとき、既知の格子周期を用いて式3から求められる回折角度において特定波長の回折光を検知すること
v.複数の波長を含む光を特定の角度で入射したとき、特定波長の回折光を検知する角度を測定すること
vi.既知の格子周期を用いて式3から求められる回折角度において特定波長の回折光を検知しうる、複数の波長を含む光を入射する角度を測定すること
上記における回折光は、スポット光を入射した場合は、スポット状、マーキングを含む面に一様な光を入射した場合はマーキングと同じ形状である。
「回折光を読み取る」こととは、紫外域、可視域、赤外域のいずれかの回折光を対象にしたときの上記方法をいう。一方、「構造色を読み取る」こととは、可視域の回折光を対象にしたときの上記方法をいう。
また、「回折光を読み取る」場合、可視域の回折光は受光器(検出器)の他、ヒトの目で検知するが、紫外域または赤外域の回折光は受光器で検知する。一方、「構造色を読み取る」場合は、受光器でもヒトの目でも検知できる。
なお、マーキングを含む面に自然光を入射し、視認する角度で異なる色彩となるマーキングの形状を観察することは、上記方法のiv.に相当する。
図21(a1),(a2)に示すように、構造体10の基材面14の全体に基材面周期構造15が形成されている場合には、その基材面14の全体に、基材面周期構造15による構造色が発現する。
一方、同図(b1),(b2)に示すように、構造体10の基材面14の一部である星型の範囲内で基材内部に空隙部界面周期構造13が複数形成されている場合には、その星型の範囲で空隙部界面周期構造13による構造色が発現する。
このように、機能材を接触させたときに、マーキングが現れるか否かによって、または、現れたマーキングの図形や文字等が所望の図形や文字等と一致するか否かを判定することによって、容易に対象物の真贋を検証できる。
機能材には、例えば、水、グリセリン等の油やベンゼン、アセトン、イソプロピルアルコール、キシレン、トルエン、エチルアルコール、メチルアルコール等の有機溶剤などの液体と、シール体などが有する接着体または粘着体などの固体がある。ただし、これらに限るものではない。
また、図21(a1),(a2)においては、基材面14の全体に周期構造を形成しているが、全体に限るものではなく、例えば、空隙部界面周期構造13が形成された範囲を覆う程度の範囲で形成するようにしてもよい。つまり、基材面周期構造15による構造色が発現することで、空隙部界面周期構造13により発現した構造色による図形や文字などが判別不可能になればよい。
さらに、空隙部界面周期構造13によるマーキングは、図21(b1)に示した星型に限るものではなく、例えば、図形、記号、文字など任意の形状で形成できる。
保護層16が設けられていると、上述のマーキング読み取り方法は実施できない。そこで、内部のマーキングを隠蔽しないように、基材面14と基材内部に異なるマーキングを施す。このとき、見る向きや角度により異なるマーキングが現出する。異なるマーキングが現れるか否か、または、現れる図形や文字によって、真贋の検証を行なう。
または、保護層16を必要に応じて取り除くことで、上述のマーキング読み取り方法を実施する。例えば、保護層16が、最外面に貼付された剥離可能なシール状のもの、摩擦により剥離する膜などがある。
次に、構造体形成の実施例について説明する。
(実施例1)
Q−スイッチパルスYAGレーザの光束を、透過型回折光学素子を通過させることで複数の光束に分割する。各々の光束を、回折光学素子から200mmの距離に置かれた焦点距離200mmの合成石英平凸レンズに通過させる。通過した光束が焦点を結ぶ位置において、マスクにより干渉に不必要な光束を遮り、必要な光束のみを通過させる。通過した光束を焦点距離100mmの合成石英平凸レンズを用いて集光し、光束を交差させ干渉させる。干渉した領域で2軸延伸したPETシートに照射した。先にレーザ波長355nm(PETシート透過率83%)において照射した。
このとき25発照射した結果、延伸PETシート内部に空隙部が生じ、その界面に1.5μm周期の2次元周期構造が形成された。この構造による構造色が観察された。
このとき1発照射した結果、延伸PETシート外面に、1μm周期の2次元周期構造が形成された。この構造による構造色が観察された。
実施例1と同様にして、レーザ波長266nmのみ2軸延伸したPETシートに照射した。形成された2次元周期構造により構造色が観察された。
この周期構造に、延伸PETシートの屈折率1.64と近似な屈折率1.518であるエステル油(CAS−Nr:195371−10−9)を塗布すると、構造色は観察されなくなり、もとの透明な延伸PETシートのように観察されるようになった。
真贋の検証機能を有する偽造防止マーキングとして、特許第2797944号「透明ホログラムシール」(以下、「比較例1」という。)と、特表2004−538586「オブジェクトの偽造防止マーキングおよびそのマーキングの識別方法」(以下、「比較例2」という。)がある。
ここで、各比較例と本実施形態の構造体とを比較し、相違点を明確にする。
比較例1は、ホログラム層面に低屈折率と高屈折率のセラミック材料からなる多層構造を有している。比較例2は、ホログラフィー効果を生じさせる構造を有する層と100nm以下の金属クラスターが分散している層とを有している。
一方、本発明では、基材(層)の内部と外部に構造色(ホログラフィー効果)を生じさせる微細周期構造を有する単層構造である。
各比較例では、両者とも、偽造防止の対象に貼付するための構造体であるので、接着層を有するシール形式である。
一方、本発明では、偽造防止の対象自体に形成する構造体であるので、そのような接着層を有していない。
比較例1は、セラミック材料からなる多層構造から生じるユニークな色調により真贋を判別することが可能であるとしている。
比較例2は、偽造防止マーキングに反射した光のスペクトルを規定のスペクトルと比較することで真贋を判別するとしている。
一方、本発明は、基材面からの構造色及び/又は回折光を抑制することで内部からの構造色及び/又は回折光が視認又は検知されうることで真贋を判別する。また、視認又は検知された情報を被照合用の情報と検証することで真贋を判別する。
延伸PETシートに、パルスYAGレーザ第4高調波(波長266nm)のパルス1発を照射した。この照射したフルエンスは、6、11、22mJ/cm2であった。また、パルスYAGレーザの仕様は、パルス幅が5nsであった。
その結果、6mJ/cm2のときは、透明性のある構造色発色が観察された。
また、11mJ/cm2、そして22mJ/cm2と増大するにつれて、半透明で白濁した発色が観察された。
その結果、加飾したPETシートが得られた。この加飾PETシートの観察像を図22(a1),(a2),(b1),(b2),(c1),(c2)に示す。同図(a1)〜(b2)は、白色の型枠に収めた加飾PETシートに、上記条件のレーザ光を照射し、黒地台紙(一部、絵柄付き)を背景に撮影したものである。そして、同図(a1)及び(a2)は、未発色角度における目視観察像、同図(b1)及び(b2)は、発色角度における目視観察像である。さらに、同図(a1)及び(b1)は、レーザ光のフルエンスが5mJ/cm2(低フルエンス)の場合、同図(a2)及び(b2)は、レーザ光のフルエンスが20mJ/cm2(高フルエンス)の場合である。また、同図(c1)及び(c2)は、SEM観察像である。
このように、フルエンスを変化させることにより周期構造発色の視認性が異なるのは、同図(c1),(c2)に示すように、形成される周期構造がフルエンスにより異なるからである。
例えば、低フルエンスのときは、同図(c1)に示すように、周期構造の凹部(ドット)が縦横に整然と形成されている。これに対し、高フルエンスのとき、同図(c2)に示すように、各ドットの形状が乱れている。この乱れが、ホワイトノイズとなって背景光を遮ることから、構造色発色の視認性が高まるものと考えられる。
また、一種類の基材に周期構造が形成されるため、複数種類の材料を組み合わせて複雑な構造を形成する必要がない。このため、材料構成を簡易にでき、材料コストの上昇を回避できる。
さらに、周期構造は光の照射により形成可能なため、高価な形成装置を導入しなくてもよく、低コストで形成できる。
さらに、保護層を形成することにより、基材面周期構造又は反対面の損傷を防止して、発色性を維持できる。また、反射層を形成することにより、微細周期構造体からの回折光を増大させるなどして、発色性を向上できる。
加えて、レーザフルエンスを変化させることにより、構造色発色の視認性が変化するため、従来のホログラムと比べて発色の視認性を高めることができる。
また、上述の実施形態では、本発明の用途として偽造防止マーキングを挙げたが、これに限るものではなく、例えば、上記読み取り方法を利用して内部マーキングが現出する効果を活かした装飾などをその用途することができる。
11 基材
12 空隙部
13 空隙部界面周期構造
14 基材面
15 基材面周期構造
16 保護層
20 透過型回折光学素子を用いた構造体形成装置
21 レーザ発振器
23 透過型回折光学素子
25 マスク
30 マイクロレンズアレイを用いた構造体形成装置
35 マイクロレンズアレイ
36 マスク
Claims (12)
- 基材の表面の一部又は全部に光回折を起こす周期構造を有しており、その周期構造が光の照射により形成された
ことを特徴とする構造体。 - 前記周期構造が、構造色を発現する規則的配列を有する
ことを特徴とする請求項1記載の構造体。 - 前記周期構造が形成された基材の上面及び/又は下面に、保護層及び/又は反射層を有した
ことを特徴とする請求項1又は2記載の構造体。 - 前記周期構造が、周期的強度分布を発生させた前記光の照射により形成された
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の構造体。 - 前記周期構造が、前記基材が不透明性を示す波長領域に含まれる波長の光を照射することにより形成された
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の構造体。 - 光を照射することで、基材の表面の一部又は全部に周期構造を形成する
ことを特徴とする構造体の形成方法。 - 周期的強度分布を有する光を照射することで、前記基材の表面に光回折を起こす周期構造を形成する
ことを特徴とする請求項6記載の構造体の形成方法。 - 構造色を発現する規則的配列を有する周期構造を、前記基材の表面に形成する
ことを特徴とする請求項6又は7記載の構造体の形成方法。 - 前記光が、ナノ秒レーザ光又はピコ秒レーザ光である
ことを特徴とする請求項6〜8のいずれかに記載の構造体の形成方法。 - 前記基材に対して、当該基材が不透明性を示す波長領域に含まれる波長の光を照射する
ことを特徴とする請求項6〜9のいずれかに記載の構造体の形成方法。 - 照射するレーザフルエンスを変化させることで、構造色発色の視認性を変化させる
ことを特徴とする請求項8〜10のいずれかに記載の構造体の形成方法。 - 基材に光照射する構造体形成装置であって、
前記基材の表面に、光回折を起こす周期構造を形成するように、照射パルス数及び/又はレーザ出力を調整するレーザ発振器を備えた
ことを特徴とする構造体形成装置。
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