JP2013127483A - 磁気センサー - Google Patents

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Abstract

【課題】精度よく微小磁場を測定することが可能な、構造の簡素化を図った磁気センサーを提供する。
【解決手段】価電子が奇数個の原子又はイオンからなる第1ガスと、第1ガスに対して第1の円偏光を入射させるプローブ光源11と、第1ガスを透過した第2の円偏光の光路上に配置された第2ガスと、第1ガス及び第2ガスに対して第1の円偏光及び第2の円偏光の光軸と交差する方向に交流磁場Brfを発生させ、磁気共鳴を生じさせる交流磁場発生器22と、第1ガス及び第2ガスに対して第1の円偏光及び第2の円偏光の光軸と平行な方向にそれぞれ異なる強さのバイアス磁場Bb1,Bb2を発生させ、第1ガスにおける第1の円偏光の光透過率と第2ガスにおける第2の円偏光の光透過率とを異ならせるバイアス磁場発生器21と、第1の円偏光及び第2ガスを透過した第2の円偏光である第3の円偏光の光量を検出する検出器14と、を有する。
【選択図】図1

Description

本発明は、磁気センサー等に関するものである。
従来、心磁(心臓からの磁気)や脳磁(脳からの磁気)などの生体から発生する微小な磁場を測定する生体磁気検出装置が知られている。このような生体磁気検出装置としては、例えば、超伝導量子干渉素子(SQUID:Superconducting QUantum Interference Device)がある。なお、SQUIDとは、例えば、超伝導リングなどの超伝導素子に一部細い部分(ジョセフソン接合)が設けられた素子(ジョセフソン素子)を用いることで、低温度環境下においてわずかな磁場の変化を電圧として取り出すことが可能な素子(磁気センサー)である。
図6は、従来のSQUIDの一例を示す磁束検出コイルの模式図である。図6(a)は、1回巻きの磁束検出コイル(マグネトメーター)を示す図である。図6(b)は、互いに逆方向に巻いた平行な2つのコイルを直列につないだ磁束検出コイル(1次勾配型のグラディオメーター)を示す図である。
図6(a)に示すように、マグネトメーター101では、コイルの中に入ってくる磁場110を全て検出してしまう。そこで、コイルの近くから発生する磁場(例えば心磁や脳磁)のみを検出するためには、コイルから遠くに発生源を持つ磁界(例えば外部磁場雑音)によるノイズを完全に除去する方式が別途必要になる。
図6(b)に示すように、1次勾配型のグラディオメーター102では、互いに逆方向に巻いた2つのコイルで検出される検出信号の差として磁場110が検出される。このため、コイルから遠くに発生源を持つ磁界の影響は2つのコイル間で打ち消しあってゼロとなり、コイルの近くから発生する磁場のみが検出される。しかしながら、SQUIDは超伝導素子やジョセフソン素子を用いるため高コストとなる。また、低温度環境を維持するためには液体ヘリウムや液体窒素を冷却装置に頻繁に供給する必要があり手間がかかる。
一方、SQUIDを用いないで微小磁場を測定する方法として光ポンピング原子磁力計がある。光ポンピング原子磁力計とは、光ポンピング法(偏光を用いて原子の電子スピンを偏極し、偏極した原子を高感度で検出する方法)を用いて原子と磁場とを相互作用させて原子の磁化状態を検出することで磁場を測定する装置である。例えば、非特許文献1及び2では、セシウムなどのアルカリ金属原子が封入されたガスセルに対して互いに異なる偏光方向を有する2つのレーザー光を入射し、ガスセルを透過した2つのレーザー光をそれぞれ2つのフォトディテクターで受光して光強度を検出している。その後、2つのフォトディテクターで検出された光信号を電気信号に変換することにより、レーザー光の強度変化の差分を演算し、これにより外部磁場の影響を除いた微小磁場の測定を行っている。
Appl.Phys.B75,605−612(2002) Appl.Phys.B76,325−328(2003)
しかしながら、非特許文献1及び2では、2つのフォトディテクターで検出された光信号を電気信号に変換する際にノイズが発生してしまい、微小磁場を精度よく測定することが困難な場合がある。また、検出器として2つのフォトディテクターを用いているため、磁気センサーの構造が複雑であり演算も複雑となる。
本発明の一態様においては、精度よく微小磁場を測定することが可能な、構造の簡素化を図った磁気センサーを提供することを目的とする。
本発明の一態様の磁気センサーは、光ポンピング法を用いて磁場を測定する磁気センサーであって、価電子が奇数個の原子又はイオンからなる第1ガスと、前記第1ガスに対して第1の円偏光を入射させるプローブ光源と、前記第1ガスを透過した前記第1の円偏光である第2の円偏光の光路上に配置された価電子が奇数個の原子又はイオンからなる第2ガスと、前記第1ガス及び前記第2ガスに対して前記第1の円偏光及び前記第2の円偏光の光軸と交差する方向に交流磁場を発生させ、磁気共鳴を生じさせる交流磁場発生器と、前記第1ガス及び前記第2ガスに対して前記第1の円偏光及び前記第2の円偏光の光軸と平行な方向にそれぞれ異なる強さのバイアス磁場を発生させ、前記第1ガスにおける前記第1の円偏光の光透過率と前記第2ガスにおける前記第2の円偏光の光透過率とを異ならせるバイアス磁場発生器と、前記第1の円偏光及び前記第2ガスを透過した前記第2の円偏光である第3の円偏光の光量を検出する検出器と、を有することを特徴とする。
この構成によれば、第1ガス及び第2ガスに対して磁気共鳴を生じさせるとともに傾斜磁場を生じさせることで、第1ガス及び第2ガスにおける円偏光の光透過率が異なるようになる。そして、第1ガス及び第2ガスを透過する前後における円偏光の光量が検出される。これにより、第1ガスにおける円偏光の光透過率と第2ガスにおける円偏光の光透過率との差分が求められる。すると、第1ガスにかかる磁場と第2ガスにかかる磁場との差分が算出される。その結果、第1ガスにおける外部磁場の影響と第2ガスにおける外部磁場の影響とが相殺され、第1ガスにかかる測定対象磁場のみが測定される。つまり、非特許文献1及び2のように光信号を電気信号に変換することなく、光信号の差分演算が行われる。また、検出器として2つのフォトディテクターを用いていないので、磁気センサーの構造が簡素であり演算もスムーズとなる。したがって、精度よく微小磁場を測定することが可能な、構造の簡素化を図った磁気センサーが提供できる。
また、上記磁気センサーにおいては、前記バイアス磁場発生器は、前記第1ガスにおけるバイアス磁場が前記第2ガスにおけるバイアス磁場よりも磁場の強さが大きくなるようにバイアス磁場を発生させていてもよい。
この構成によれば、第1ガス及び第2ガスにおける光透過率が確実に異なるようになる。したがって、精度よく微小磁場を確実に測定することが可能な、構造の簡素化を図った磁気センサーが提供できる。
また、上記磁気センサーにおいては、前記バイアス磁場発生器は、前記第2ガスにおけるバイアス磁場が前記第1ガスにおけるバイアス磁場よりも磁場の強さが大きくなるようにバイアス磁場を発生させていてもよい。
この構成によれば、第1ガス及び第2ガスにおける光透過率が確実に異なるようになる。したがって、精度よく微小磁場を確実に測定することが可能な、構造の簡素化を図った磁気センサーが提供できる。
また、上記磁気センサーにおいては、前記第1ガスと前記第2ガスとが同一セル内に封入されていてもよい。
この構成によれば、第1ガスと第2ガスとが同一セル内に封入されているので、第1ガスと第2ガスとが別々のセルに封入される場合に比べて装置構成が簡単になる。また、第1ガスと第2ガスを別々のセルに封入した場合には、プローブ光の光軸と各セルとのアライメントを別々に行わなければならないが、第1ガスと第2ガスとを同一セルに封入した場合には、このようなアライメント作業が1回で済むため、セッティングが容易になる。
本発明の磁気センサーを示す模式図である。 円偏光による光ポンピングの原理を示す図である。 セルに印加される磁場の強さとセルの光透過率との関係を示す図である。 コモン外部磁場の場合の磁場の強さとセルの光透過率との関係図である。 非コモン外部磁場の場合の磁場の強さとセルの光透過率との関係図である。 従来のSQUIDの一例を示す磁束検出コイルの模式図である。
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。かかる実施の形態は、本発明の一態様を示すものであり、この発明を限定するものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。また、以下の図面においては、各構成をわかりやすくするために、実際の構造と各構造における縮尺や数等が異なっている。
図1は本発明の磁気センサー1の概略構成を示す模式図である。図1に示すように、磁気センサー1は、光ポンピング法(偏光を用いて原子の電子スピンを偏極し、偏極した原子を高感度で検出する方法)を用いて測定対象磁場(磁場発生源10から発生する微小磁場、例えば心磁や脳磁)を測定するものである。なお、以下の説明では、測定対象磁場の方向をY軸とし、Y軸と直交する平面内の2方向をX軸及びZ軸とするXYZ直交座標系を用いて、各部材の構成や配置を説明する。
磁気センサー1は、第1のセル12と、第2のセル13と、プローブ光源11と、交流磁場発生器22と、バイアス磁場発生器21と、検出器14と、を具備して構成されている。
第1のセル12、第2のセル13は、Y軸方向に互いに直列に配置されている。第2のセル13は、第1のセル12を透過した円偏光(第2の円偏光)の光路上に配置されている。第1のセル12は磁場発生源10に相対的に近い位置に配置され、第2のセル13は磁場発生源10に相対的に遠い位置に配置されている。第1のセル12には、Y軸方向において外部磁場と測定対象磁場との合成磁場となる磁場Be1がかかっている。第2のセル13には、Y軸方向において外部磁場と測定対象磁場との合成磁場となる磁場Be2がかかっている。ここで、第2のセル13は磁場発生源10に対して遠い位置に配置されているため、第2のセル13にかかる測定対象磁場は無視できるほど小さい。つまり、第2のセル13には、Z軸方向において外部磁場のみがかかっているとみなすことができる。
第1のセル12、第2のセル13の内部には、それぞれ価電子が奇数個の原子またはイオンからなる第1ガス、第2ガスが封入されている。本実施形態では、第1ガス及び第2ガスが、カリウム、ルビジウム、セシウムなどのアルカリ金属原子からなっている。なお、第1のセル12、第2のセル13の内部におけるアルカリ金属原子の密度を大きくするために、必要に応じて第1のセル12、第2のセル13に対して加熱を行ってもよい。
また、第1のセル12及び第2のセル13の内部には、ネオン、ヘリウム、アルゴン、キセノンなどの希ガスと、水素や窒素などの非磁性のガスとの少なくとも一方のガスが封入されていてもよい。これにより、第1のセル12及び第2のセル13に封入されたアルカリ金属原子が互いに衝突したりセル部内壁に衝突したりすることが緩和される。
プローブ光源11は、円偏光を射出する光源である。プローブ光源11は、第1のセル12及び第2のセル13に対してσ+偏光(右円偏光、Y軸に沿う光の進行方向に対して右回りの円偏光)を磁場Be1,Be2と平行な方向(Y軸方向)に入射させ、第1ガス及び第2ガスにスピン偏極を生じさせる機能を有する。
なお、本実施形態では、σ+偏光が、それぞれ第1ガスが封入された第1のセル12、第2ガスが封入された第2のセル13に入射するようになっているが、これに限らない。
例えば、σ−偏光(左円偏光、Y軸に沿う光の進行方向に対して左回りの円偏光)が、それぞれ第2ガスが封入された第2のセル13、第1ガスが封入された第1のセル12に入射する構成でも構わない。
本実施形態の磁気センサー1は、第1のセル12、第2のセル13にそれぞれ入射するσ+偏光の入射方向(Y軸方向)が磁場Be1,Be2のかかる方向(Y軸方向)に対して平行な縦方向光ポンピングを採用している。
交流磁場発生器22は、第1のセル12及び第2のセル13に対してZ軸方向に交流磁場Brfを発生させ、磁気共鳴を生じさせる機能を有する。
バイアス磁場発生器21は、コイル21aと電源21bとを具備して構成されている。
コイル21aはY軸を中心軸とし、反射ミラー15と第1のセル12との間の第1のセル12近傍に配置されている。そして、コイル21aに電流が流れることによりY軸方向に傾斜磁場を発生させて、第1のセル12、第2のセル13に対してY軸方向にそれぞれ異なる強さのバイアス磁場Bb1,Bb2を印加させる構造となっている。本実施形態では、第1のセル12におけるバイアス磁場Bb1が第2のセル13におけるバイアス磁場Bb2よりも磁場の強さが大きくなっている(Bb1>Bb2)。
なお、本実施形態では、バイアス磁場発生器21は、第1のセル12におけるバイアス磁場Bb1が第2のセル13におけるバイアス磁場Bb2よりも磁場の強さが大きくなるようにバイアス磁場を発生させているが、これに限らない。例えば、バイアス磁場発生器21は、第2のセル13におけるバイアス磁場Bb2が第1のセル12におけるバイアス磁場Bb1よりも磁場の強さが大きくなるようにバイアス磁場を発生させていてもよい。
検出器14は、例えば、フォトディテクターなどの受光素子を具備して構成されている。検出器14は、第1のセル12に入射する第1の円偏光及び第2のセル13を透過した第2の円偏光である第3の円偏光の光量(第1のセル12及び第2のセルを透過する前後における光量)を検出する機能を有する。そして、フォトディテクターにより光量の差分を電気的に演算することで、磁場発生源10から発生する微小磁場のみを測定することができる。本実施形態では、非特許文献1及び2のように、検出器として2つのフォトディテクターを用いていない。
第1のセル12にY軸方向のσ+偏光が入射すると、アルカリ金属原子の最外殻電子がスピン偏極する。具体的には、Y軸方向のσ+偏光が角運動量+h/2π(hはプランク定数)を有していることから、σ+偏光を吸収したアルカリ金属原子が一時的に角運動量+h/2πを保存してY軸の正の方向に磁気モーメントが向く。ここで、第1のセル12内の磁化ベクトルは、多数のアルカリ金属原子の磁気モーメントの総和で表される。第1のセル12内では、各アルカリ金属原子の磁気モーメントの方向がほぼY軸の正の方向に揃うため、これに倣って磁化ベクトルの方向がY軸の正の方向を向き、Y軸の正の方向に強い磁化が形成される。
図2は、第1のセル12に入射するσ+偏光による光ポンピングの原理を示す図である。図2(a)は、基底状態及び励起状態におけるエネルギー準位図である。図2(b)は、基底状態の原子数(ポピュレーション)を示す図である。なお、図2(a)のΔEはゼーマン分裂エネルギーである。
以下、アルカリ金属原子としてルビジウムを用いた場合について説明する。ルビジウムは常温においては固体原子数が多いが、高温になるにつれて気体原子数が多くなる性質を有する。例えば、第1のセル12の内部が120℃程度になるように加熱し、ルビジウムの気体原子数を多くしておく。ここでは、ルビジウムの吸収スペクトル線の波長Dを基底状態から励起状態への吸収線に同調させ、原子を励起させた場合について説明する(D=797.7nm)。
図2(a)に示すように、ルビジウムに磁場Bが印加されると基底状態及び励起状態におけるエネルギー準位に差が生じ、いわゆるゼーマン分裂が発生する。基底状態及び励起状態はそれぞれ3つのゼーマン準位からなっている。これら3つのゼーマン準位を特徴づけるのは磁気量子数Mであり、それぞれM=−1,0,+1となっている。
1つのルビジウム原子は、波長Dのσ+偏光を吸収すると、遷移の選択性により、基底状態から磁気量子数Mが1つ増えた励起状態へ励起される。例えば、基底状態のM=−1にある原子はσ+偏光の吸収により励起状態のM=0へ励起される。また、基底状態のM=0にある原子はσ+偏光の吸収により励起状態のM=+1へ励起される。一方、基底状態のM=+1にある原子は励起状態にM=+2の準位がないため励起されない。なお、原子にσ−偏光を与えた場合にはこの逆になる。
励起された原子は自然放出過程により光を放出して基底状態に戻る。励起された原子は、磁気量子数M=−1,0,+1のいずれの遷移も可能であり、全て同じ確率となると仮定する。この原子の励起と自然放出との間の一巡の過程は光ポンピングサイクルと呼ばれている。
図2(b)に示すように、1回の光ポンピングサイクルにおける基底状態のポピュレーション収支の期待値は、基底状態のM=−1において−2/3、基底状態のM=0において−1/6、基底状態のM=+1において+5/6となっている。なお、基底状態のポピュレーション収支の期待値とは、原子が基底状態から出ていく確率と原子が基底状態に戻ってくる確率とを足し合わせた値である。
具体的には、基底状態のM=−1におけるポピュレーション収支の期待値は、原子が基底状態から出ていく確率(原子の励起により励起状態のM=0へ励起される確率)−1と原子が基底状態に戻ってくる確率(原子の自然放出により励起状態のM=0から戻ってくる確率)+1/3とを足し合わせた値−2/3となる。基底状態のM=0におけるポピュレーション収支の期待値は、原子が基底状態から出ていく確率(原子の励起により励起状態のM=+1へ励起される確率)−1と原子が基底状態に戻ってくる確率(原子の自然放出により励起状態のM=0から戻ってくる確率+1/3と原子の自然放出により励起状態のM=+1から戻ってくる確率+1/2との和)+5/6とを足し合わせた値−1/6となる。基底状態のM=+1におけるポピュレーション収支の期待値は、原子が基底状態から出ていく確率0と原子が基底状態に戻ってくる確率(原子の自然放出により励起状態のM=0から戻ってくる確率+1/3と原子の自然放出により励起状態のM=+1から戻ってくる確率+1/2との和)+5/6とを足し合わせた値+5/6となる。このように、基底状態のポピュレーション収支の期待値は、基底状態の磁気量子数Mが多い準位になるにつれて増加する傾向となっている。
ところで、実際には全ての原子が励起状態のM=+1に励起されることはない。基底状態の各ゼーマン準位のポピュレーションは、原子の衝突などの影響により磁気量子数Mが多い準位から少ない準位に原子が遷移するいわゆる緩和過程である。このため、基底状態の各ゼーマン準位のポピュレーションは、光ポンピングによる原子の励起と自然放出との間の平衡状態により決定される。基底状態における光ポンピングされた気体原子のポピュレーションは、各ゼーマン準位間において差が生じている。基底状態の3つのゼーマン準位のうち磁気量子数Mが少ない準位(基底状態のM=−1)では、セル内部における円偏光の吸収に寄与できる原子が減少するため、セルの光透過率が大きくなる。一方、セルに対してゼーマン分裂エネルギーΔEに相当する周波数を有する交流磁場Brfを発生させると、原子が磁気量子数Mの少ない準位に遷移する(磁気共鳴が生じる)。すると、磁気量子数Mが少ない準位(基底状態のM=−1)では、セル内部における円偏光の吸収に寄与できる原子が増加するため、セルの光透過率が小さくなる。
図3は、セルに印加される磁場の強さとセルの光透過率との関係を示す図である。図3において、横軸はセルに印加される磁場の強さを示し、縦軸はセルの光透過率を示している。以下、一例として第1のセル12に印加する交流磁場Brfの角周波数を固定した場合について説明する。
図3に示すように、第1のセル12に印加する交流磁場Brfの角周波数を固定した状態で磁場Be1の強さを変化させると、第1のセル12の光透過率Te1が変化する。第1のセル12の光透過率Te1は、磁場の強さがB0のときに極小となっている(Be1=B0)。交流磁場Brfの角周波数をW0、磁気回転比(定数)をVとすると、W0=V×Be1のとき、第1のセル12の光透過率Te1が極小となる。
ここで、第1のセル12及び第2のセル13を用いてグラディオメーターを構成することを考える。第1のセル12にかかる磁場Be1と第2のセル13にかかる磁場Be2とが同じである場合は、磁場Be1の強さに対応する光透過率Te1と磁場Be2の強さに対応する光透過率Te2との変化は同じとなる。このため、第1のセル12及び第2のセル13を円偏光の光軸と平行な方向に重ねたときの光透過率Te1×Te2から、第1のセルにかかる磁場Be1と第2のセルにかかる磁場Be2との差分を検出することができない。そこで、本実施形態の磁気センサー1は、第1のセル12及び第2のセル13に対して、それぞれ異なる強さのバイアス磁場Bb1,Bb2を発生させ、異なる磁気共鳴周波数にシフトさせている。これにより、第1のセル12における円偏光の光透過率Te1と第2のセル13における円偏光の光透過率Te2を異ならせている。
具体的には、コイル21a(図1参照)に電流を流すことによりY軸方向に傾斜磁場を発生させて、第1のセル12、第2のセル13に対してY軸方向にそれぞれ異なる強さのバイアス磁場Bb1,Bb2を印加させる。本実施形態では、第1のセル12におけるバイアス磁場Bb1を第2のセル13におけるバイアス磁場Bb2よりも磁場の強さを大きくする(Bb1>Bb2)。
図4は、コモン外部磁場の場合のセルに印加される磁場の強さとセルの光透過率との関係を示す図である。図4において、横軸はセルに印加される磁場の強さを示し、縦軸はセルの光透過率を示している。なお、コモン外部磁場の場合とは、第1のセル12及び第2のセル13に対して共通の外部磁場(磁場の強さが同じ外部磁場)が印加される場合である(Be1=Be2)。ただし、0<Be1<<Bb1、0<Be2<<Bb2の関係であるとする。
図4に示すように、第1のセル12におけるバイアス磁場Bb1を第2のセル13におけるバイアス磁場Bb2よりも磁場の強さを大きくすると(Bb1>Bb2)、第1のセル12における光透過率の極小値と第2のセル13における光透過率の極小値とが離れる。交流磁場Brfの角周波数W0は、第1のセル12における光透過率の曲線(細い実線)と第2のセル13における光透過率の曲線(太い実線)との交点となる磁場B0に対応させている。第1のセル12及び第2のセル13に対して外部磁場が印加されない場合(Be1=Be2=0)の第1のセル12における光透過率Te10と第2のセル13における光透過率Te20とは同じ値となる(Te10=Te20)。このとき、第1のセル12及び第2のセル13を円偏光の光軸と平行な方向に重ねたときの光透過率はTe10×Te20となる。
第1のセル12に印加されるトータルの磁場はBb1+Be1となり、磁気共鳴周波数はV(Bb1+Be1)にシフトする。このとき、交流磁場Brfの角周波数W0に対応する磁場B0における光透過率Te1は、外部磁場が印加されない場合における光透過率Te10よりも小さくなっている。一方、第2のセル13に印加されるトータルの磁場はBb2+Be2となり、磁気共鳴周波数はV(Bb2+Be2)にシフトする。このとき、交流磁場Brfの角周波数W0に対応する磁場B0における光透過率Te2は、第1のセル12とは反対に、外部磁場が印加されない場合における光透過率Te20よりも大きくなっている。
このような、第1のセル12の磁場B0における光透過率Te1と第2のセル13の磁場B0における光透過率Te2との反対の光透過率特性から、2つのセルの光透過率Te1×Te2は、近似的にTe10×Te20となる。つまり、2つのセルに印加される共通の外部磁場は相殺されることになる。
図5は、図4に対応した、非コモン外部磁場の場合のセルに印加される磁場の強さとセルの光透過率との関係を示す図である。図5は非コモン外部磁場の場合の関係図である点で、前述した図4のコモン外部磁場の場合の関係図と異なっている。その他の点は図4と同様であるので、図4と同様の要素には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。なお、非コモン外部磁場の場合とは、第1のセル12及び第2のセル13に対して磁場の強さが異なる外部磁場(磁場発生源10からの測定対象磁場)が印加される場合である(Be1≠Be2)。ただし、Be1>Be2、0<Be1<<Bb1、0<Be2<<Bb2の関係であるとする。
図4に示すように、第1のセル12におけるバイアス磁場Bb1を第2のセル13におけるバイアス磁場Bb2よりも磁場の強さを大きくし(Bb1>Bb2)、加えて磁場発生源10からの測定対象磁場を印加すると、前述のコモン外部磁場の場合に比べて第1のセル12における光透過率の極小値と第2のセル13における光透過率の極小値とが格段に離れる。
第1のセル12について、交流磁場Brfの角周波数W0に対応する磁場B0における光透過率Te1は、外部磁場が印加されない場合における光透過率Te10よりも小さくなっているが、前述のコモン外部磁場の場合と比較して変化量は小さい。一方、第2のセル13について、交流磁場Brfの角周波数W0に対応する磁場B0における光透過率Te2は、外部磁場が印加されない場合における光透過率Te20よりも大きくなっているが、前述のコモン外部磁場の場合と比較して変化量は大きい。
このような前述のコモン外部磁場の場合と比較して変化量の異なる、第1のセル12の磁場B0における光透過率Te1と第2のセル13の磁場B0における光透過率Te2との光透過率特性から、2つのセルの光透過率Te1×Te2はTe10×Te20よりも大きくなる(Te1×Te2>Te10×Te20)。
このため、検出器14によって第2のセル13を透過した後の円偏光の光量を検出することにより、第1のセル12における光透過率と第2のセル13における光透過率との差分を求めることができる。第1のセル12にかかる磁場Be1と第2のセル13にかかる磁場Be2との差分(Be1−Be2)を求めることができる。本実施形態では、非特許文献1及び2のように光信号を電気信号に変換することなく、光信号の差分演算が行われる。したがって、第1のセル12にかかる外部磁場と第2のセル13にかかる外部磁場とが相殺され、その結果、第1のセル12にかかる測定対象磁場が求められる。
本実施形態の磁気センサー1によれば、第1のセル12及び第2のセル13に対して磁気共鳴を生じさせるとともに傾斜磁場を生じさせることで、第1のセル12及び第2のセル13における円偏光の光透過率が異なるようになる。そして、第1のセル12及び第2のセル13を透過する前後における円偏光の光量が検出される。これにより、第1のセル12における円偏光の光透過率と第2のセル13における円偏光の光透過率との差分が求められる。すると、第1のセル12にかかる磁場Be1と第2のセル13にかかる磁場Be2との差分(Be1−Be2)が算出される。その結果、第1のセル12における外部磁場の影響と第2のセル13における外部磁場の影響とが相殺され、第1のセル12にかかる測定対象磁場のみが測定される。つまり、非特許文献1及び2のように光信号を電気信号に変換することなく、光信号の差分演算が行われる。また、検出器として2つのフォトディテクターを用いていないので、磁気センサー1の構造が簡素であり演算もスムーズとなる。したがって、精度よく微小磁場を測定することが可能な、構造の簡素化を図った磁気センサー1が提供できる。
なお、本実施形態の磁気センサー1は、第1ガスが第1のセル12に封入され、第2ガスが第2のセル13に封入され、2つのセルで構成されているが、これに限らない。例えば、第1ガスと第2ガスとが同一セル内に封入されていてもよい。
この構成によれば、第1ガスと第2ガスとが同一セル内に封入されているので、精度よく微小磁場を測定することが可能な、格段に構造の簡素化を図った磁気センサー1が提供できる。
また、本実施形態の磁気センサー1では、プローブ光源11が第1のセル12に対してY軸方向にσ+偏光を入射しているが、これに限らない。例えば、プローブ光源11が第1のセル12に対してY軸方向にσ−偏光を入射していてもよい。すなわち、プローブ光源11は、第1のセル12及び第2のセル13に対して円偏光を入射させ、第1のセル12内の第1ガスに付与される円偏光の光軸と平行な方向の磁化と、第2のセル13内の第2ガスに付与される円偏光の光軸と平行な方向の磁化と、が互いに同じ向きとなるように第1ガス及び第2ガスにスピン偏極を生じさせていればよい。
1…磁気センサー、11…プローブ光源、14…検出器、21…バイアス磁場発生器、22…交流磁場発生器、Be1,Be2…磁場、Bb1,Bb2…バイアス磁場、Brf…交流磁場
本発明の一態様の磁気センサーは、光ポンピング法を用いて磁場を測定する磁気センサーであって原子又はイオンからなる第1ガスと、前記第1ガスに対して第1の円偏光を入射させるプローブ光源と、前記第1の円偏光の光路上に配置された原子又はイオンからなる第2ガスと前記第1の円偏光及び前記第2の円偏光の光軸と交差する方向に交流磁場を発生させ交流磁場発生器と前記第1の円偏光及び前記第2の円偏光の光軸と平行な方向にそれぞれ異なる強さのバイアス磁場を発生させバイアス磁場発生器と、前記第1のセル及び前記第2ガスを透過した後における光量を検出する検出器と、を有することを特徴とする。

Claims (4)

  1. 光ポンピング法を用いて磁場を測定する磁気センサーであって、
    価電子が奇数個の原子又はイオンからなる第1ガスと、
    前記第1ガスに対して第1の円偏光を入射させるプローブ光源と、
    前記第1ガスを透過した前記第1の円偏光である第2の円偏光の光路上に配置された価電子が奇数個の原子又はイオンからなる第2ガスと、
    前記第1ガス及び前記第2ガスに対して前記第1の円偏光及び前記第2の円偏光の光軸と交差する方向に交流磁場を発生させ、磁気共鳴を生じさせる交流磁場発生器と、
    前記第1ガス及び前記第2ガスに対して前記第1の円偏光及び前記第2の円偏光の光軸と平行な方向にそれぞれ異なる強さのバイアス磁場を発生させ、前記第1ガスにおける前記第1の円偏光の光透過率と前記第2ガスにおける前記第2の円偏光の光透過率とを異ならせるバイアス磁場発生器と、
    前記第1の円偏光及び前記第2ガスを透過した前記第2の円偏光である第3の円偏光の光量を検出する検出器と、を有することを特徴とする磁気センサー。
  2. 前記バイアス磁場発生器は、前記第1ガスにおけるバイアス磁場が前記第2ガスにおけるバイアス磁場よりも磁場の強さが大きくなるようにバイアス磁場を発生させることを特徴とする請求項1に記載の磁気センサー。
  3. 前記バイアス磁場発生器は、前記第2ガスにおけるバイアス磁場が前記第1ガスにおけるバイアス磁場よりも磁場の強さが大きくなるようにバイアス磁場を発生させることを特徴とする請求項1に記載の磁気センサー。
  4. 前記第1ガスと前記第2ガスとが同一セル内に封入されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の磁気センサー。
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