JP2013127220A - 燃料供給装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】システム燃圧の切替応答性を向上する
【解決手段】燃料供給装置10は、燃料タンク18内の燃料を燃料供給通路20を介してエンジン22に供給する燃料ポンプ12と、燃料ポンプ12の吐出流量を可変制御する流量可変装置14と、燃料供給通路20の燃圧を調圧するプレッシャレギュレータ16とを備える。プレッシャレギュレータ16は、燃料を導入するメイン室50、燃料を段階的に排出するパイロット室52及びリターン室54を有するハウジング36と、スプリング40により閉方向に付勢されかつメイン室50とパイロット室52及びリターン室54との間を開閉する調圧部材38と、メイン室50からの燃料の排出を制限する絞り部65とを備え、導入する流量に応じて調圧値が切替わる。
【選択図】図1

Description

本発明は、主として自動車等の車両の内燃機関(「エンジン」ともいう)に燃料を供給する燃料供給装置に関する。
この種の燃料供給装置の従来例としては、例えば特許文献1に記載されたものがある。従来例のものは、内燃機関に燃料を燃料供給通路を介して送出する燃料ポンプと、燃料ポンプが吸い込む燃料を保持しておく燃料保持チャンバと、燃料供給通路から分岐し、余剰の燃料を燃料保持チャンバへ戻す分岐通路と、分岐通路に導入された余剰の燃料をスロート部に向けて噴射ノズルから噴射することにより生じる負圧を利用して燃料保持チャンバ外の燃料を燃料保持チャンバ内に吐出するジェットポンプとを有する。そして、燃料ポンプの吐出流量を可変制御する流量可変手段を具備し、ジェットポンプの噴射ノズルを絞り手段として利用することで、流量可変手段による燃料ポンプの吐出流量の制御によって、燃料供給通路の燃圧すなわちシステム燃圧を制御している。
特開2010−216433号公報
前記従来例によると、流量可変手段による燃料ポンプの吐出流量の可変(増加又は減少)によって、システム燃圧が比例的に上昇又は低下される。しかしながら、例えば、エンジンの始動時には、燃料ポンプの回転数が低く、吐出流量が増加するのに時間がかかるため、システム燃圧を即座に上昇させることができない。また、例えば、スロットル全開時(WOT(Wide Open Throttle)時)から通常運転時に切替わるときには、流量可変手段により燃料ポンプの吐出流量を可変しても、エンジンへの燃料噴射、ジェットポンプの噴射ノズルからの燃料噴射に時間がかかるため、システム燃圧を即座に低下させることができない。すなわち、流量可変手段による燃料ポンプの吐出流量の可変制御時(エンジンの始動時の吐出流量の増加時を含む)において、システム燃圧が切替わるまでに長い時間がかかるため、システム燃圧の切替応答性が悪いという問題があった。
本発明は、システム燃圧の切替応答性を向上することのできる燃料供給装置を提供することにある。
前記課題は、特許請求の範囲に記載された構成を要旨とする燃料供給装置により解決することができる。
請求項1に記載された燃料供給装置によると、燃料タンク内の燃料を燃料供給通路を介して内燃機関に供給する燃料ポンプと、燃料ポンプの吐出流量を可変制御する流量可変手段と、燃料供給通路から分岐された分岐通路に設けられかつ該燃料供給通路の燃圧を調圧する圧力調整装置とを備える燃料供給装置であって、圧力調整装置は、燃料を導入する燃料導入通路、及び、燃料を段階的に排出する第1、第2の両燃料排出通路を有するハウジングと、付勢手段により閉方向に付勢されかつ燃料導入通路と両燃料排出通路との間を開閉する調圧部材と、第1燃料排出通路からの燃料の排出を制限する排出流量制限手段とを備え、圧力調整装置に導入する流量が所定量以上のときに、排出流量制限手段により第1燃料排出通路の燃圧が上昇され、圧力調整装置の調圧値が低下される構成としている。
この構成によると、流量可変手段により燃料ポンプの吐出流量が可変制御される。そして、圧力調整装置に導入する流量が所定量以上のときには、排出流量制限手段により第1燃料排出通路の燃圧が上昇され、圧力調整装置の調圧値が低下される。このため、燃料供給通路の燃圧であるシステム燃圧が低圧に切替えられる。また、圧力調整装置に導入する流量が所定量未満のときには、第1燃料排出通路の燃圧が上昇されないので、圧力調整装置の調圧値が上昇する。このため、システム燃圧が高圧に切替えられる。したがって、圧力調整装置に導入する流量に応じて、排出流量制限手段により第1燃料排出通路の燃圧が上昇されるか否かによって、プレッシャレギュレータの調圧値が即座に切替わるものであるから、システム燃圧の切替応答性を向上することができる。なお、排出流量制限手段としては、例えば、排出流量を制限する絞り手段、制御手段により制御される電磁式の開閉弁、切替弁、流量制御弁等を用いることができる。また、排出流量制限手段として絞り手段を用いることにより、例えば電磁式の開閉弁等を用いる場合と比べて、構成を簡素化するとともに制御手段による制御を省略することができる。
請求項2に記載された燃料供給装置によると、第2燃料排出通路からの燃料の排出を制限する補助排出流量制限手段を設け、圧力調整装置に導入する流量が所定量より多い第2所定量以上のときに、補助排出流量制限手段により第2燃料排出通路の燃圧が上昇され、圧力調整装置の調圧値が上昇する構成としている。この構成によると、圧力調整装置に導入する流量が第2所定量以上のときには、補助排出流量制限手段により第2燃料排出通路の燃圧を上昇させることができる。なお、補助排出流量制限手段としては、例えば、排出流量を制限する絞り手段、制御手段により制御される電磁式の開閉弁、切替弁、流量制御弁等を用いることができる。また、補助排出流量制限手段として絞り手段を用いることにより、例えば電磁式の開閉弁等を用いる場合と比べて、構成を簡素化するとともに制御手段による制御を省略することができる。
請求項3に記載された燃料供給装置によると、第1燃料排出通路の燃圧を所定の設定値に制御する圧力制御手段を設けている。この構成によると、第1燃料排出通路の燃圧が、圧力制御手段の設定値より過大になることを防止することができる。
請求項4に記載された燃料供給装置によると、燃料供給通路における分岐通路の分岐部よりも上流側の通路部には、逆止弁を設けるとともに、該逆止弁よりも上流側における通路部の燃圧を所定の設定値に制御する圧力制御手段を設けている。この構成によると、燃料供給通路の燃圧が、圧力制御手段の設定値より過大になることを防止することができる。また、燃料供給通路における逆止弁よりも上流側における通路部に圧力制御手段を設けることにより、燃料供給通路における逆止弁より下流側における通路部に圧力制御手段を設ける場合と比べ、圧力制御手段に残圧保持性能の確保のための高いシール性(油密性)が不要になる。このため、シール性の確保のための構成の煩雑化及びコストアップを回避し、圧力制御手段の構成の簡素化及びコストの低減を図ることができる。
請求項5に記載された燃料供給装置によると、燃料供給通路の燃圧を検出する圧力検出手段を設け、流量可変手段は、圧力検出手段の検出値に基づいて燃料ポンプの吐出流量をフィードバック制御する。この構成によると、流量可変手段が圧力検出手段の検出値に基づいて燃料ポンプの吐出流量をフィードバック制御することにより、燃料供給通路の燃圧の制御精度を向上することができる。
実施形態1にかかる燃料供給装置を示す構成図である。 プレッシャレギュレータを示す断面図である。 図2のIII−III線矢視断面図である。 プレッシャレギュレータの通過流量と各室の燃圧との関係を示す特性図である。 プレッシャレギュレータの第1通過流量域における燃料の流れを示す図である。 プレッシャレギュレータの第2通過流量域における燃料の流れを示す図である。 プレッシャレギュレータの第3通過流量域における燃料の流れを示す図である。 実施形態2にかかる燃料供給装置を示す構成図である。 プレッシャレギュレータの通過流量と各室の燃圧との関係を示す特性図である。 プレッシャレギュレータの第1通過流量域における燃料の流れを示す図である。 プレッシャレギュレータの第2通過流量域における燃料の流れを示す図である。 プレッシャレギュレータの第3通過流量域における燃料の流れを示す図である。 プレッシャレギュレータの第4通過流量域における燃料の流れを示す図である。 プレッシャレギュレータの第5通過流量域における燃料の流れを示す図である。 実施形態3にかかる燃料供給装置を示す構成図である。 プレッシャレギュレータの通過流量と各室の燃圧との関係を示す特性図である。 プレッシャレギュレータの第1通過流量域における燃料の流れを示す図である。 プレッシャレギュレータの第2通過流量域における燃料の流れを示す図である。 プレッシャレギュレータの第3通過流量域における燃料の流れを示す図である。 プレッシャレギュレータの第4通過流量域における燃料の流れを示す図である。 プレッシャレギュレータの第5通過流量域における燃料の流れを示す図である。 実施形態4にかかる燃料供給装置を示す構成図である。 実施形態5にかかる燃料供給装置を示す構成図である。
以下、本発明を実施するための実施形態について図面を用いて説明する。
[実施形態1]
実施形態1を説明する。実施形態1は、車両の内燃機関に燃料を供給する燃料供給装置である。図1は燃料供給装置を示す構成図である。
図1に示すように、燃料供給装置10は、燃料ポンプ12と流量可変装置14とプレッシャレギュレータ16とを備える。燃料ポンプ12は、燃料タンク18内に貯留された燃料をタンク外のエンジン22に燃料供給通路20を介して供給する。また、流量可変装置14は、燃料ポンプ12の吐出流量を可変制御する。また、プレッシャレギュレータ16は、燃料供給通路20の途中の分岐部23から分岐された分岐通路24に設けられかつ燃料供給通路20の燃圧であるシステム燃圧を調整する。本実施形態の流量可変装置14は、電子制御装置(以下、「ECU」という)30とポンプコントローラ(以下、「FPC」という)とを備えている。
前記エンジン22は、例えば、3気筒の4サイクルガソリンエンジンである。エンジン22の気筒毎にインジェクタ(燃料噴射弁)26が設けられている。前記燃料供給通路20の下流側の端部にはデリバリパイプ28が設けられている。デリバリパイプ28にはインジェクタ26が接続されている。燃料供給通路20を介して供給された燃料は、デリバリパイプ28を介して各インジェクタ26に分配され、インジェクタ26により各気筒の吸気ポート内に噴射される。各インジェクタ26は、前記ECU30によって駆動制御すなわち燃料噴射制御される。なお、エンジン22は本明細書でいう「内燃機関」に相当する。また、ECU30は本明細書でいう「制御手段」に相当する。
前記燃料ポンプ12は、前記燃料タンク18内に配置されたインタンク式燃料ポンプである。また、燃料ポンプ12は、例えば、インペラを有するポンプ部と、ポンプ部を駆動するモータ部とを一体的に有し、モータ部の駆動によってポンプ部のインペラを回転させることにより、燃料タンク18内から燃料を吸入しかつ加圧して前記燃料供給通路20へ吐出する。燃料ポンプ12の吸入口側にはサクションフィルタ13が設けられている。また、燃料ポンプ12は、前記FPC32により駆動制御される。FPC32は、エンジン22の運転状況に対応するように、前記ECU30からの制御信号に基づいて、燃料ポンプ12のモータ部の回転速度(単位時間当りの回転数)を制御することにより、ポンプ部の単位時間当たりの吐出流量を可変させる。なお、流量可変装置14は本明細書でいう「流量可変手段」に相当する。また、ECU30にFPC32の機能が備えられる場合もある。
前記燃料供給通路20における分岐通路24の分岐部23よりも上流側の通路部には、逆止弁34が設けられている。逆止弁34は、燃料ポンプ12(詳しくは吐出口)と燃料供給通路20の分岐部23との間に配置されている。また、逆止弁34は、燃料ポンプ12により吐出された燃料の燃料供給方向の流れにより開弁し、その逆方向の流れ(逆流)により閉弁する。また、エンジン22の運転後の停止時において閉弁するプレッシャレギュレータ16、インジェクタ26及び逆止弁34によって、分岐通路24を含む燃料供給通路20の残圧保持区間に残圧が保持されるようになっている。なお、逆止弁34は、燃料ポンプ12と燃料供給通路20の分岐部23との間に配置する他、燃料ポンプ12の吐出口内に配置してもよい。
前記プレッシャレギュレータ16について説明する。プレッシャレギュレータ16には、燃料供給通路20の燃圧を導入する流量に応じて高圧と低圧の2段階で調圧するものが用いられている。図2プレッシャレギュレータを示す断面図、図3は図2のIII−III線矢視断面図である。説明の都合上、図2を基準としてプレッシャレギュレータ16の上下を定める。
図2に示すように、プレッシャレギュレータ16は、ハウジング36と、ハウジング36内を上下2室に区画する可動隔壁である調圧部材38と、調圧部材38を付勢するスプリング40とを備えている。
前記ハウジング36は、カップ状に形成された下側のハウジング部材42と、逆カップ状に形成された上側のハウジング部材44を結合することによって、上下両端面を閉鎖する中空円筒状に形成されている。下側のハウジング部材42内には、内外二重筒状をなす内外の両筒状部46,48が同心状に一体形成されている(図3参照)。下側のハウジング部材42と外側の筒状部48との間には、有底円筒状のメイン室50が形成されている。また、下側のハウジング部材42には、メイン室50の下端部に連通する導入ポート51が開口されている。また、内側の筒状部46と外側の筒状部48との間には、有底円筒状のパイロット室52が形成されている。下側のハウジング部材42には、パイロット室52の下端部に連通する第1排出ポート53が開口されている。また、内側の筒状部46内はリターン室54となっている。内側の筒状部46の下端部は、第2排出ポート55として開口されている。なお、メイン室50は本明細書でいう「燃料導入通路」に相当する。また、パイロット室52は本明細書でいう「第1燃料排出通路」に相当する。また、リターン室54は本明細書でいう「第2燃料排出通路」に相当する。
前記調圧部材38は、例えば可撓性を有するダイアフラム57と、ダイアフラム57の中央部に同心状に配置された円板状の弁体59とを有する。ダイアフラム57は、例えば、基布材料層(例えば、ポリアミド合成繊維等)に燃料に対し劣化し難いゴム層(例えば、水素添加ニトリルゴムやフッ素ゴム等)を一体的に接着した可撓性を有する部材で形成されている。また、弁体59は、例えば工具鋼、ステンレス鋼等の金属材料で形成されている。また、調圧部材38は、ダイアフラム57の外周部が前記両ハウジング部材42,44の間に挟着されることによって、ハウジング36内を上下2室に区画している。下側の室は、前記したメイン室50、パイロット室52及びリターン室54を備える調圧室(符号省略)とされている。また、上側の室は、背圧室61とされている。上側のハウジング部材44には、背圧室61の上面部に連通する大気ポート62が開口されている。大気ポート62により背圧室61が大気に開放されている。
前記弁体59は、前記ダイアフラム57の可撓性を利用して上下方向に変位し、前記下側のハウジング部材44の両筒状部46,48の上端面を弁座として離座及び着座する。すなわち、弁体59は、両筒状部46,48の上端面に着座することにより、メイン室50とパイロット室52及びリターン室54との間を遮断するすなわち閉じる。また、弁体59は、両筒状部46,48の上端面から離れるすなわち離座することにより、メイン室50とパイロット室52及びリターン室54との間を連通するすなわち開く。
前記スプリング40は、圧縮コイルスプリングからなり、前記背圧室61において上側のハウジング部材44と弁体59との対向面間に介装されている。スプリング40は、常に弁体59を下方すなわち閉弁方向に付勢している。なお、スプリング40は本明細書でいう「付勢手段」に相当する。
図1に示すように、前記プレッシャレギュレータ16は、前記燃料タンク18内に配置されている。プレッシャレギュレータ16の導入ポート51には、前記分岐通路24の下流側の端部が接続されている。このため、前記燃料ポンプ12から前記燃料供給通路20に吐出されかつエンジン22に供給される燃料の一部が、分岐通路24及び導入ポート51を介してメイン室50に導入される。なお、メイン室50には、燃料ポンプ12の運転中、燃料供給通路20の燃圧が常時印加される。
前記第1排出ポート53には、通路断面積が縮小された絞り部65を有する出口通路64が接続されている。出口通路64の下流側の端部は、燃料タンク18内に開放されている。絞り部65は、パイロット室52からの燃料の排出流量を所定量に制限する。また、前記第2排出ポート55は、燃料タンク18内に開放されている。なお、プレッシャレギュレータ16は本明細書でいう「圧力調整装置」に相当する。また、絞り部65は本明細書でいう「排出流量制限手段」に相当する。また、出口通路64自体を絞り部に設定してもよい。また、第1排出ポート53を絞り部に設定してもよい。
前記プレッシャレギュレータ16において、背圧室61のスプリング40による閉弁方向の付勢力に対して、調圧室の燃圧すなわち開弁方向の付勢力が打ち勝ったときに、前記調圧部材38が開かれることにより、調圧室側の燃料が余剰燃料として燃料タンク18内に排出される。プレッシャレギュレータ16の調圧値は、導入する流量に応じて、後述するように高圧と低圧の2段階に切替わるようになっている。なお、プレッシャレギュレータ16に導入する流量とは、燃料ポンプ12の吐出流量からインジェクタ26の噴射量(消費量)を引いた流量に相当する。
前記調圧部材38は、調圧室内の燃圧に基づく開弁方向の付勢力と、スプリング40による閉弁方向の付勢力とに応じて、メイン室50とパイロット室52及びリターン室54との間を連通及び遮断すなわち開閉する。調圧部材38の閉弁時において、プレッシャレギュレータ16に導入する流量の大小に関わらず、メイン室50には燃料が溜まる。このとき、調圧部材38は、メイン室50の燃圧を、該メイン室50に面する受圧面積(A1)で受圧する。
前記プレッシャレギュレータ16に導入する流量が所定量未満のときは、メイン室50に溜まった燃料は、調圧部材38の開弁時において、パイロット室52に流出され、第1排出ポート53から出口通路64を介して燃料タンク18内へ排出される。このときの排出流量(プレッシャレギュレータ16の通過流量)は、絞り部65の排出制限を受けない流量である。
前記プレッシャレギュレータ16に導入する流量が所定量以上のときは、メイン室50の燃料は、調圧部材38の開弁時において、パイロット室52に流出され、第1排出ポート53から出口通路64を介して燃料タンク18内へ排出される。このときの排出流量は、絞り部65の排出制限を受ける流量となる。このため、絞り部65の排出制限により排出しきれない燃料がパイロット室52に溜まり、パイロット室52の燃圧が上昇される。すなわち、パイロット室52に燃圧が蓄圧される。このとき、調圧部材38は、パイロット室52に燃料が溜まったときの燃圧を、該パイロット室52に面する受圧面積(A2)で受圧する。したがって、プレッシャレギュレータ16に導入する流量が所定量以上のとき、調圧部材38は、メイン室50の燃圧とパイロット室52の燃圧を、メイン室50の受圧面積(A1)とパイロット室52の受圧面積(A2)との合計の受圧面積(A1+A2)で受圧する。また、パイロット室52に溜まった燃料は、調圧部材38の開弁時において、リターン室54に流出され、第2排出ポート55から燃料タンク18内へ排出される。なお、本実施形態では、リターン室54には燃料が溜まらず、調圧部材38はリターン室54の燃圧を受圧しないものとする。
前記調圧部材38の調圧室側の受圧面積が受圧面積(A1)から受圧面積(A1+A2)に切替わることで、メイン室50の燃圧すなわちプレッシャレギュレータ16の調圧値がA1/(A1+A2)の比で低圧になる。すなわち、調圧部材38の調圧室側の受圧面積が受圧面積(A1)のときの調圧値を高圧(H)とし、その受圧面積(A1+A2)のときの調圧値を低圧(L)とするとき、両調圧値の比L/Hが、受圧面積の可変比である受圧面積比A1/(A1+A2)に設定されている。
前記したように、前記プレッシャレギュレータ16の調圧値は、低圧(L)及び高圧(H)の2段階に切替わる。低圧(L)の調圧値は、例えば、エンジン22の通常運転時のシステム燃圧に相当する。また、高圧(H)の調圧値は、エンジン22の停止中、例えばアイドリングストップ時に前記燃料供給通路20の残圧保持区間に保持される燃圧、あるいは、スロットル全開時(高負荷運転時)に必要なシステム燃圧に相当する。また、高圧(H)の調圧値は、例えば500[kPa](ゲージ圧;以下、同様)であり、エンジン22の停止直後等にデリバリパイプ28内の燃料温度が高温になっても、燃料ベーパが生じ難い燃圧(通常、324kPa以上)となっている。また、低圧(L)の調圧値は、例えば250[kPa]であり、走行中にデリバリパイプ28内の燃料温度が比較的低温になっても、燃料ベーパが生じ難い燃圧となっている。
前記流量可変装置14は、エンジン22の始動時、運転後の停止時等、エンジン22の運転中のスロットル全開時(高負荷運転時)において、プレッシャレギュレータ16に導入する流量が所定量未満となるように燃料ポンプ12を制御するように設定されている。このため、プレッシャレギュレータ16の調圧値は高圧(H)に切替えられる。
また、流量可変装置14は、エンジン22の運転中にその負荷状態を繰返し判定し、始動後の運転状態の大半を占める部分負荷の運転、すなわち始動後であってスロットル全開時でない通常運転時においては、プレッシャレギュレータ16に導入する流量が所定量以上となるように燃料ポンプ12を制御するように設定されている。このため、プレッシャレギュレータ16の調圧値は低圧(L)に切替えられる。
なお、本明細書でいう「エンジンの始動時」とは、具体的には、例えば、イグニッションキーがスタート位置に操作されてイグニッションONの要求が発生するとき、公知のアイドリングストップを実行する車両でエンジン22を一時停止させた後に再始動させるとき、あるいは、ハイブリッド方式のパワーユニットを搭載する車両でそのパワーユニットの効率を高めるためにエンジン22を一時停止させた後に再始動するとき等、エンジン22の始動のためのイグニッションON要求が発生したときである。
次に、前記燃料供給装置10におけるシステム燃圧の制御方法について説明する。燃料供給装置10において、エンジン22が長時間停止している停止中においては、燃料ポンプ12は停止状態にある。このとき、プレッシャレギュレータ16の調圧部材38が開弁方向に燃圧を受ける実質的な受圧面積は、メイン室50の燃圧を受ける受圧面積(A1)のみとなっている。このため、燃料供給通路20の残圧保持区間の燃圧(P1)はメイン室50の燃圧に等しい。また、プレッシャレギュレータ16の調圧部材38は、スプリング40の付勢力により閉弁されているから、メイン室50の燃圧は、メイン室50側から調圧部材38に作用する開弁方向の付勢力(=残圧保持区間の燃圧(P1))×受圧面積A1に相当する開弁方向の付勢力が、スプリング40の付勢力と釣り合うか、それより小さい付勢力となっている(P1≦H)。ただし、エンジン22の運転が停止される直前の燃圧(P1)は、後述するようにエンジン22の停止直前に一旦ON状態になった後であるから、低圧(L)の調圧値より高く、高圧(H)の調圧値以下の値となる(L≦P1≦H)。なお、エンジン22を停止させるとき及びその停止直後の動作については後述する。
エンジン22の始動時において、流量可変装置14により燃料ポンプ12が始動されると、燃料ポンプ12からの燃料が燃料供給通路20の残圧保持区間に供給され、プレッシャレギュレータ16のメイン室50の燃圧が即座に高圧(H)の調圧値に達する。すなわち、メイン室50から調圧部材38に作用する開弁方向の付勢力が、調圧値(H)×受圧面積(A1)に相当する付勢力に達するまで、メイン室50の燃圧が即座に上昇され、余剰の燃料はメイン室50からパイロット室52に流出された後、燃料タンク18内へ排出される。また、エンジンの始動時には、燃料ポンプ12の吐出流量が増加するのに時間がかかるが、プレッシャレギュレータ16に導入する流量が所定量未満のときにはプレッシャレギュレータ16の調圧値が高圧に切替えられることによって、システム燃圧を即座に上昇させることができる。このため、燃料ポンプ12の吐出流量が少ない低温始動時にシステム燃圧を高圧(H)とすることができる。このとき、インジェクタ26には、高圧(H)の燃料が供給されることから、インジェクタ26からエンジン22の燃焼室内に噴射される燃料の霧化が助長される。なお、エンジン22の再始動においても、前記と同様、始動時の制御が実施可能である。また、本明細書では、説明の都合上、プレッシャレギュレータ16の調圧値の切替えには、切替え前の状態が切替え後の状態と同じ状態の場合も含まれるものとする。
エンジン22の始動後の運転状態は、高圧が要求される特定の運転状態、例えばスロットル全開時(高負荷運転時)の要求時を除いて、通常は、部分負荷運転状態(通常運転状態)となる。このため、通常運転時には、エンジン22の燃費や燃料ポンプ12の信頼性の面から、低圧(L)の調圧値が要求される。したがって、通常運転時においては、流量可変装置14により燃料ポンプ12が制御され、プレッシャレギュレータ16に導入する流量が所定量以上に増加される。また、エンジン22の運転中、流量可変装置14は、各種センサ情報から得られるエンジン22の回転速度や車両の車速等の運転状態、運転者のアクセルペダル操作量等に基づいて、エンジン22に要求される運転状態が予めマップ情報として保持している運転領域のどれに該当するかを判定し、要求される運転状態に適した吐出流量になるように、燃料ポンプ12を制御する。
エンジン22の通常運転時には、プレッシャレギュレータ16に導入する流量が所定量以上になるから、プレッシャレギュレータ16のメイン室50に導入されかつ余剰となった燃料がパイロット室52に流出され、出口通路64の絞り部65の排出制限により排出しきれない燃料がパイロット室52に溜まり、パイロット室52及びメイン室50の燃圧が上昇される。パイロット室52で余剰となった燃料は、リターン室54に流出された後、燃料タンク18内へ排出される。このとき、調圧部材38はスプリング40の付勢力を受ける一方、メイン室50の燃圧が作用する受圧面積(A1)における開弁方向の付勢力と、パイロット室52の燃圧が作用する受圧面積(A2)における開弁方向の付勢力とを受け、これらの付勢力が釣り合うように調圧がなされる。よって、このときの調圧値は、低圧(L)となる。したがって、高圧(H)の調圧値が500[kPa]で、受圧面積の比A1/A2=1とすると、このときの調圧値は、250[kPa]の低圧(L)となる。このように、エンジン22の始動時から通常運転時に切替わるときには、流量可変装置14により燃料ポンプ12の吐出流量を増加するにともない、プレッシャレギュレータ16の調圧値が低圧(L)に即座に切替えられることによって、システム燃圧を即座に低下させることができる。
車両を運転するドライバからの操作入力や車両の走行状況の変化によって、エンジン22がスロットル全開時(高負荷運転時)に入るときには、流量可変装置14により燃料ポンプ12が制御され、プレッシャレギュレータ16に導入する流量が所定量未満に減少される。これにより、パイロット室52の燃圧が解放されるため、エンジン22の始動時と同様、プレッシャレギュレータ16の調圧値は即座に高圧(H)に切替えられる。したがって、スロットル全開時の要求に応え得る十分なシステム燃圧を確保することができる。また、パイロット室52の燃圧の解放時には、パイロット室52の燃料が出口通路64から排出されるため、そのパイロット室52の燃圧が即座に解放される。
次に、エンジン22の運転後の停止時における残圧保持方法1,2について説明する。
[残圧保持方法1]
エンジン22の停止直前に、システム燃圧を、一旦、高圧(H)にしてから、燃料ポンプ12を停止することにより、残圧保持区間の燃圧を高圧(H)に保持する。すなわち、流量可変装置14により燃料ポンプ12が制御され、プレッシャレギュレータ16に導入する流量が所定量未満に減少されることによって、パイロット室52の燃圧が解放されるため、プレッシャレギュレータ16の調圧値は即座に高圧(H)に切替えられる。例えば、ドライバによりイグニッションキーがイグニッションOFF側に操作され、エンジン22を停止させるイグニッションOFFの要求が発生すると、まず、流量可変装置14により燃料ポンプ12が制御され、プレッシャレギュレータ16に導入する流量が所定量未満に減少され、プレッシャレギュレータ16の調圧値が高圧(H)に切替えられた後で、エンジン22を停止させるのに必要な処理が実行される。これにより、高温状態時における残圧保持区間のデリバリパイプ28内の燃料ベーパの発生を抑制することができるとともに、エンジン22の始動時等に要求される高い燃圧を保持することができる。したがって、高温再始動性、アイドル時の安定性等を改善することができる。
[残圧保持方法2]
エンジン22の停止直前に、システム燃圧を、一旦、低圧(L)にしてから、燃料ポンプ12を停止することにより、残圧保持区間の燃圧を低圧(L)に保持する。すなわち、流量可変装置14により燃料ポンプ12が制御され、プレッシャレギュレータ16に導入する流量が所定量以上に増加されることによって、パイロット室52の燃圧が上昇されるため、プレッシャレギュレータ16の調圧値は即座に低圧(L)に切替えられる。これにより、高温状態でない時におけるインジェクタ26からの油洩れを防止し、排ガス性能を改善することができる。
次に、前記した燃料供給装置10におけるプレッシャレギュレータ16の通過流量と各室の燃圧との関係について説明する。図4はプレッシャレギュレータの通過流量と各室の燃圧との関係を示す特性図である。
図4において、横軸はプレッシャレギュレータ16の通過流量(Q)を示し、縦軸は燃圧(P)を示している。特性線L1はメイン室50の燃圧の変化を示し、特性線L2はパイロット室52の燃圧の変化を示している。また、通過流量(Q1)未満の流量域を第1通過流量域F1といい、通過流量(Q1〜Q2)の流量域を第2通過流量域F2といい、通過流量(Q2)以上の流量域を第3通過流量域F3という。また、図5〜図7は、プレッシャレギュレータの各通過流量域F1〜F3における燃料の流れをそれぞれ示す図である。なお、メイン室50及びパイロット室52において、燃料が充満する室には網掛けが付されている。また、通過流量が0(ゼロ)のときは、エンジン22の停止時で、メイン室50の燃圧すなわち調圧値は、ここでは高圧(H)(500[kPa])とする。
第1通過流量域F1(通過流量Q1未満)(図4参照)においては、メイン室50の燃圧は500[kPa]の高圧(H)となる。すなわち、図5に示すように、燃料供給通路20の分岐通路24からメイン室50に導入され(図5中、矢印Y1参照)、メイン室50の燃圧が高圧(H)に調圧される(図4中、特性線L1参照)。また、調圧部材38の開弁にともない、メイン室50の余剰燃料は、パイロット室52へ流出し、パイロット室52から出口通路64を介して排出される(図5中、矢印Y2参照)。このとき、通過流量が少ないため、出口通路64の絞り部65により燃料の排出制限を受けない。したがって、パイロット室52の燃圧は0[kPa]である(図4中、特性線L2参照)。
次に、第2通過流量域F2(通過流量Q1〜Q2)(図4参照)においては、通過流量(Q)が増加するにしたがって、出口通路64の絞り部65によりパイロット室52からの燃料の排出が制限される。このため、パイロット室52の燃料の一部は、出口通路64を介して排出される(図6中、矢印Y2参照)が、絞り部65により排出が制限された燃料がパイロット室52に次第に溜められていく。これにより、パイロット室52の燃圧が次第に上昇していく(図4中、特性線L2参照)。これにしたがって、メイン室50の燃圧が次第に低下していく(図4中、特性線L1参照)。なお、第2通過流量域F2は、圧力変動域いわゆる急峻域に相当する。
次に、第3通過流量域F3(通過流量Q2以上)(図4参照)においては、メイン室50及びパイロット室52の燃圧が250[kPa]の低圧(L)となる。すなわち、図7に示すように、メイン室50及びパイロット室52に燃料が溜まることで、メイン室50及びパイロット室52の燃圧が低圧(L)に調圧される(図4中、特性線L1、L2参照)。また、調圧部材38の開弁にともない、パイロット室52の余剰燃料は、リターン室54へ流出し、リターン室54から排出される(図7中、矢印Y3参照)。なお、リターン室54の燃圧は、各通過流量域F1〜F3において0[kPa]である。
したがって、エンジン22の運転中において、プレッシャレギュレータ16の通過流量が第1通過流量域F1から第3通過流量域F3に切替わることにより、調圧値を高圧(H)から低圧(L)に即座に切替えることができる。このことは、エンジン22のスロットル全開時(高負荷運転時)あるいは始動時から減速運転等の通常運転への切替えに適する。
また、プレッシャレギュレータ16の通過流量が第2通過流量域F3から第1通過流量域F1に切替わることにより、調圧値を低圧(L)から高圧(H)に即座に切替えることができる。このことは、エンジン22の通常運転からスロットル全開時(高負荷運転時)への切替えに適する。
前記した燃料供給装置10によると、流量可変装置14により燃料ポンプ12の吐出流量が可変制御される。そして、プレッシャレギュレータ16に導入する流量が所定量以上(通過流量Q2以上)のときには、出口通路64の絞り部65によりパイロット室52の燃圧が上昇され、プレッシャレギュレータ16の調圧値が低下される。このため、燃料供給通路20のシステム燃圧が低圧に切替えられる。また、プレッシャレギュレータ16に導入する流量が所定量未満(通過流量Q1未満)のときには、パイロット室52の燃圧が上昇されないので、プレッシャレギュレータ16の調圧値が上昇する。このため、システム燃圧が高圧に切替えられる。したがって、プレッシャレギュレータ16に導入する流量に応じて、出口通路64の絞り部65によりパイロット室52の燃圧が上昇されるか否かによって、プレッシャレギュレータの調圧値が即座に切替わるものであるから、システム燃圧の切替応答性を向上することができる。
また、パイロット室52の排出流量制限手段として絞り部65を用いることにより、例えば電磁式の開閉弁等を用いる場合と比べて、構成を簡素化するとともに制御手段による制御を省略することができる。すなわち、パイロット室52からの燃料の排出を絞り部65により制限するだけで、プレッシャレギュレータの16の調圧値の切替えが可能になる。したがって、調圧部材38の背圧室61側に燃料を導入することなく、調圧室側のみに燃料を導入するだけで、調圧値を高圧及び低圧に切替え可能であるため、配管やシール箇所を少なくできる。その結果、調圧値の切替えに適したコンパクトで配管が簡素な低コストのプレッシャレギュレータ16といえる。
また、プレッシャレギュレータ16において、燃料の流れが調圧室側への一方向のみで構成されている。このため、例えば、燃料の流れが調圧室側と背圧室61側との二方向で構成される場合と異なり、調圧値を切替える際の燃料通路を切替えるための電磁弁等を不要とすることにより、構成を簡素化することができる。また、燃料供給通路20の燃圧を検出する圧力検出手段を不要とすることにより、構成を簡素化することができる。
[実施形態2]
実施形態2を説明する。本実施形態及び実施形態3〜5は、前記実施形態1に変更を加えたものであるから、その変更部分について説明し、重複する説明は省略する。図8は燃料供給装置を示す構成図である。
図8に示すように、本実施形態は、実施形態1(図1参照)におけるプレッシャレギュレータ16のハウジング36におけるリターン室54の第2排出ポート55に、通路断面積が縮小された補助絞り部68を有する補助出口通路67が接続されている。補助出口通路67の下流側の端部は、燃料タンク18内に開放されている。補助絞り部68は、リターン室54からの燃料の排出流量を所定量に制限する。なお、補助絞り部68は本明細書でいう「補助排出流量制限手段」に相当する。また、補助出口通路67自体を補助絞り部に設定してもよい。また、第2排出ポート55を補助絞り部に設定してもよい。
前記パイロット室52に接続された出口通路64における絞り部65よりも上流側の通路部にはリリーフ弁70が設けられている。リリーフ弁70は、通常、閉弁しており、パイロット室52の燃圧が予め設定された設定値H1(例えば、400[kPa])を超えると、開弁し、パイロット室52の燃料を燃料タンク18内に逃がすことにより、パイロット室52の燃圧を設定値H1に制御する。設定値H1は、プレッシャレギュレータの16の調圧値の低圧(L)以上で高圧(H)以下の範囲内に設定される。なお、リリーフ弁70は本明細書でいう「圧力制御手段」に相当する。
また、燃料ポンプ12としては、リターン室54から補助絞り部68を有する補助出口通路67を介して排出される燃料(通過流量)が、その補助絞り部68による排出制限を受ける流量(本明細書でいう「第2所定量」に相当する)以上の吐出流量を吐出可能な容量を有するものが用いられるものとする。
次に、前記した燃料供給装置10におけるプレッシャレギュレータ16の通過流量と各室の燃圧との関係について説明する。図9はプレッシャレギュレータの通過流量と各室の燃圧との関係を示す特性図である。
図9において、横軸はプレッシャレギュレータ16の通過流量(Q)を示し、縦軸は燃圧を示している。特性線L1はメイン室50の燃圧の変化を示し、特性線L2はパイロット室52の燃圧の変化を示し、特性線L3はリターン室54の燃圧の変化を示している。また、通過流量(Q1)未満の流量域を第1通過流量域F1といい、通過流量(Q1〜Q2)の流量域を第2通過流量域F2といい、通過流量(Q2〜Q3)の流量域を第3通過流量域F3といい、通過流量(Q3〜Q4)の流量域を第4通過流量域F4といい、通過流量(Q4)以上の流量域を第5通過流量域F5という。また、図10〜図14は、プレッシャレギュレータの各通過流量域F1〜F5における燃料の流れをそれぞれ示す図である。なお、メイン室50、パイロット室52及びリターン室54において、燃料が充満する室には網掛けが付されている。また、通過流量域F1〜F3における通過流量と各室の燃圧との関係については、前記実施形態1における通過流量域F1〜F3と同様であるから、図10〜図12に同一符号を付すことにより重複する説明を省略する。また、通過流量域F3において、リターン室54から排出される燃料は、補助出口通路67から排出される(図12中、矢印Y4参照)。
第4通過流量域F4(通過流量Q3〜Q4)(図9参照)においては、通過流量(Q)が増加するにしたがって、補助出口通路67の補助絞り部68によりリターン室54からの燃料の排出が制限される。このため、リターン室54の燃料の一部は、補助出口通路67を介して排出される(図13中、矢印Y4参照)が、補助絞り部68により排出が制限された燃料がリターン室54に次第に溜められていく。これにより、リターン室54の燃圧が次第に上昇していく(図9中、特性線L3参照)。そして、リターン室54の燃圧が、メイン室50及びパイロット室52の低圧(L)の調圧値(250[kPa])を越えるにともない、メイン室50及びパイロット室52の燃圧が次第に上昇していく(図9中、特性線L1,L2参照)。これは、補助絞り部68による排出制限により、調圧部材38の開口面積が増加してもリターン室54の排出流量が増加しないため、リターン室54、メイン室50及びパイロット室52の燃圧が同時に上昇するものと考えられる。また、第4通過流量域F4で、リターン室54、メイン室50及びパイロット室52の燃圧が同時に上昇するため、その燃圧の傾きから、リターン室54の燃圧は、第3通過流量域F3の途中から上昇し始めるものと考えられる。なお、第4通過流量域F4は、圧力変動域いわゆる急峻域である。
次に、第5通過流量域F5(通過流量Q4以上)(図9参照)においては、リターン室54、メイン室50及びパイロット室52の燃圧が400[kPa]となる。すなわち、図14に示すように、パイロット室52の燃圧がリリーフ弁70の設定値H1(400[kPa])を超えると、リリーフ弁70が開弁する。これにより、パイロット室52の燃料が排出される(図14中、矢印Y5参照)。したがって、メイン室50、パイロット室52及びリターン室54の燃圧(システム燃圧)は、リリーフ弁70の設定値H1と同等になる(図9中、特性線L1,L2,L3参照)。このときのシステム燃圧は、例えば、燃料ポンプ12を流量可変装置14による可変制御をしない状態で最大吐出流量をもって運転したときで、エンジン22のスロットル全開時(高負荷運転時)、始動時等に用いることができる。
本実施形態によると、プレッシャレギュレータ16に導入する流量が第2所定量以上のときには、補助絞り部68によりリターン室(54)の燃圧を上昇させることができる。また、リターン室54の補助排出流量制限手段として補助絞り部68を用いることにより、例えば電磁式の開閉弁等を用いる場合と比べて、構成を簡素化するとともに制御手段による制御を省略することができる。
また、パイロット室52の燃圧を所定の設定値H1に制御するリリーフ弁70を設けている。したがって、パイロット室52の燃圧が、リリーフ弁70の設定値H1より過大になることを防止することができる。また、流量可変装置14の故障時等で燃料ポンプ12が制御不能になった際にも燃料供給通路20の燃圧がリリーフ弁70の設定値H1より過大になることを防止することができる。
[実施形態3]
実施形態3を説明する。本実施形態は、前記実施形態2に変更を加えたものである。図15は燃料供給装置を示す構成図である。
図15に示すように、本実施形態は、実施形態2(図8参照)におけるリリーフ弁70を省略し、その代わりに、燃料供給通路20における逆止弁34よりも上流側における通路部にリリーフ弁75が設けられている。リリーフ弁75は、燃料ポンプ12(詳しくは吐出口)と燃料供給通路20の逆止弁34との間に配置されている。また、リリーフ弁75は、燃料供給通路20(詳しくは、逆止弁34よりも上流側における通路部)の燃圧を予め設定された設定値H2(例えば、600[kPa])に制御する。また、設定値H2は、プレッシャレギュレータの16の調圧値の高圧(H)以上に設定される。なお、リリーフ弁75は本明細書でいう「圧力制御手段」に相当する。
次に、前記した燃料供給装置10におけるプレッシャレギュレータ16の通過流量と各室の燃圧との関係について説明する。図16はプレッシャレギュレータの通過流量と各室の燃圧との関係を示す特性図である。
図16には、各特性線L1〜L3が図9に準じて表されている。また、図17〜図21は、プレッシャレギュレータの各通過流量域F1〜F5における燃料の流れをそれぞれ示す図である。なお、図17〜図21は図10〜図14に準じて表されている。また、通過流量域F1〜F4における通過流量と各室の燃圧との関係については、前記実施形態2における通過流量域F1〜F4と同様であるから、図17〜図20に同一符号を付すことにより重複する説明を省略する。但し、第4通過流量域F4(通過流量Q3〜Q4)において、リターン室54、メイン室50及びパイロット室52の燃圧は、高圧(H)の調圧値(500[kPa])を越えて上昇する(図16中、特性線L1,L2,L3参照)。
次に、第5通過流量域F5(通過流量Q4以上)においては、リターン室54、メイン室50及びパイロット室52の燃圧が600[kPa]となる。すなわち、図21に示すように、燃料供給通路20(詳しくは、逆止弁34よりも上流側における通路部)の燃圧が設定値H2(600[kPa])を超えると、リリーフ弁75が開弁する。これにより、燃料供給通路20の燃料が排出される(図21中、矢印Y6参照)。したがって、メイン室50、パイロット室52及びリターン室54の燃圧(システム燃圧)は、リリーフ弁75の設定値H2と同等になる(図16中、特性線L1,L2,L3参照)。このときのシステム燃圧は、例えば、燃料ポンプ12を流量可変装置14による可変制御をしない状態で最大吐出流量をもって運転したときで、エンジン22のスロットル全開時(高負荷運転時)、始動時等に用いることができる。
本実施形態によると、燃料供給通路20(詳しくは、逆止弁34よりも上流側における通路部)の燃圧を所定の設定値H2に制御するリリーフ弁75を設けている。したがって、燃料供給通路20の燃圧が、リリーフ弁75の設定値H2より過大になることを防止することができる。また、流量可変装置14の故障時等で燃料ポンプ12が制御不能になった際にも燃料供給通路20の燃圧がリリーフ弁75の設定値H2より過大になることを防止することができる。
また、燃料供給通路20における逆止弁34よりも上流側における通路部(すなわち残圧保持区間外の通路部)にリリーフ弁75を設けることにより、燃料供給通路20における逆止弁34より下流側における通路部(すなわち残圧保持区間)にリリーフ弁75を設ける場合と比べ、リリーフ弁75に残圧保持性能の確保のための高いシール性(油密性)が不要になる。このため、シール性の確保のための構成の煩雑化及びコストアップを回避し、リリーフ弁75の構成の簡素化及びコストの低減を図ることができる。
[実施形態4]
実施形態4を説明する。本実施形態は、前記実施形態1に変更を加えたものである。図22は燃料供給装置を示す構成図である。
図22に示すように、本実施形態は、実施形態1(図1参照)における絞り部65を有する出口通路64を、流量可変装置14のECU30により制御される電磁式の開閉弁78を有する出口通路77に代えたものである。開閉弁78は、例えば、通電時に閉弁し、非通電時に開弁する常開型電磁式の開閉弁からなり、ECU30によって駆動制御すなわち開閉制御されることにより、出口通路77を開閉する。また、開閉弁78は、閉弁時にパイロット室52からの燃料の排出流量を所定量(0(ゼロ)を含む)に制限する。なお、開閉弁78は本明細書でいう「排出流量制限手段」に相当する。
前記デリバリパイプ28には、デリバリパイプ28内すなわち燃料供給通路20の燃圧(システム燃圧)を検出する圧力センサ80が設けられている。圧力センサ80の検出信号は、流量可変装置14のECU30に入力される。流量可変装置14は、圧力センサ80(圧力検出手段)の検出値に基づいて燃料供給通路20の燃圧を設定値に維持するように、燃料ポンプ12の吐出流量をフィードバック制御する。なお、圧力センサ80は本明細書でいう「圧力検出手段」に相当する。また、圧力センサ80は、デリバリパイプ28に限らず、燃料供給通路20の燃圧を検出可能な位置に配置されていればよい。
本実施形態によると、流量可変装置14により燃料ポンプ12の吐出流量が可変制御される。そして、開閉弁78の閉弁によりパイロット室52の燃圧が上昇され、プレッシャレギュレータ16の調圧値が低下される。このため、燃料供給通路20のシステム燃圧が低圧に切替えられる。また、開閉弁78の開弁によりパイロット室52の燃圧が上昇されないので、プレッシャレギュレータ16の調圧値が上昇する。このため、システム燃圧が高圧に切替えられる。したがって、開閉弁78の開閉によりパイロット室52の燃圧が上昇されるか否かによって、プレッシャレギュレータの調圧値が即座に切替わるものであるから、システム燃圧の切替応答性を向上することができる。
また、流量可変装置14が圧力センサ80の検出値に基づいて燃料ポンプ12の吐出流量をフィードバック制御することにより、燃料供給通路20の燃圧の制御精度を向上することができる。なお、本実施形態にも前記実施形態2、3と同様の変更を加えることができる。
[実施形態5]
実施形態5を説明する。本実施形態は、前記実施形態4に変更を加えたものである。図23は燃料供給装置を示す構成図である。
図23に示すように、本実施形態は、実施形態4(図22参照)における開閉弁78を有する出口通路77を、電磁式の三方切替弁82を有する出口通路83に代えたものである。すなわち、三方切替弁82の3つのポートのうちの1つのポート(第1ポート)82aは、出口通路83を介してパイロット室52の第1排出ポート53に接続されている。また、三方切替弁82のもう1つのポート(第2ポート)82bは、補助出口通路85を介してリターン室54の第2排出ポート55に接続されている。また、三方切替弁82の残りのポート(第3ポート)82cは、燃料タンク18内に開放されている。
前記三方切替弁82は、例えば、通電時に第1ポート82aを遮断して第2ポート82bと第3ポート82cとを連通し、非通電時に第2ポート82bを遮断して第1ポート82aと第3ポート82cとを連通する電磁式切替弁であって、前記ECU30により駆動制御すなわち切替制御される。また、ECU30は、三方切替弁82を非通電状態として、第1ポート82aと第3ポート82cとを連通させ、三方切替弁82を通電状態として、第2ポート82bと第3ポート82cとを連通させる。なお、三方切替弁82は本明細書でいう「排出流量制限手段」に相当する。
本実施形態によると、三方切替弁82の第1ポート82aが遮断されることによりパイロット室52の燃圧が上昇され、プレッシャレギュレータ16の調圧値が低下される。このため、燃料供給通路20のシステム燃圧が低圧に切替えられる。このとき、三方切替弁82の第2ポート82aと第3ポート82cとが連通されることにより、リターン室54の燃料は、補助出口通路85、第2ポート82a及び第3ポート82cを介して燃料タンク18内へ排出される。
また、三方切替弁82の第1ポート82aと第3ポート82cとが連通されることによりパイロット室52の燃圧が上昇されないので、プレッシャレギュレータ16の調圧値が上昇する。このため、システム燃圧が高圧に切替えられる。
したがって、三方切替弁82の切替えによりパイロット室52の燃圧が上昇されるか否かによって、プレッシャレギュレータの調圧値が即座に切替わるものであるから、システム燃圧の切替応答性を向上することができる。なお、本実施形態にも前記実施形態2、3と同様の変更を加えることができる。
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更が可能である。
10…燃料供給装置
12…燃料ポンプ
14…流量可変装置(流量可変手段)
16…プレッシャレギュレータ(圧力調整装置)
18…燃料タンク
20…燃料供給通路
22…エンジン(内燃機関)
24…分岐通路
34…逆止弁
36…ハウジング
38…調圧部材
40…スプリング(付勢手段)
50…メイン室(燃料導入通路)
52…パイロット室(第1燃料排出通路)
54…リターン室(第2燃料排出通路)
65…絞り部(排出流量制限手段)
68…補助絞り部(補助排出流量制限手段)
70…リリーフ弁(圧力制御手段)
75…リリーフ弁(圧力制御手段)
78…開閉弁(排出流量制限手段)
80…圧力センサ(圧力検出手段)

Claims (5)

  1. 燃料タンク内の燃料を燃料供給通路を介して内燃機関に供給する燃料ポンプと、
    前記燃料ポンプの吐出流量を可変制御する流量可変手段と、
    前記燃料供給通路から分岐された分岐通路に設けられかつ該燃料供給通路の燃圧を調圧する圧力調整装置と
    を備える燃料供給装置であって、
    前記圧力調整装置は、燃料を導入する燃料導入通路、及び、燃料を段階的に排出する第1、第2の両燃料排出通路を有するハウジングと、付勢手段により閉方向に付勢されかつ前記燃料導入通路と前記両燃料排出通路との間を開閉する調圧部材と、前記第1燃料排出通路からの燃料の排出を制限する排出流量制限手段とを備え、
    前記圧力調整装置に導入する流量が所定量以上のときに、前記排出流量制限手段により前記第1燃料排出通路の燃圧が上昇され、前記圧力調整装置の調圧値が低下される構成とした
    ことを特徴とする燃料供給装置。
  2. 請求項1に記載の燃料供給装置であって、
    前記第2燃料排出通路からの燃料の排出を制限する補助排出流量制限手段を設け、
    前記圧力調整装置に導入する流量が前記所定量より多い第2所定量以上のときに、前記補助排出流量制限手段により前記第2燃料排出通路の燃圧が上昇され、前記圧力調整装置の調圧値が上昇される構成とした
    ことを特徴とする燃料供給装置。
  3. 請求項1又は2に記載の燃料供給装置であって、
    前記第1燃料排出通路の燃圧を所定の設定値に制御する圧力制御手段を設けたことを特徴とする燃料供給装置。
  4. 請求項1〜3のいずれか1つに記載の燃料供給装置であって、
    前記燃料供給通路における前記分岐通路の分岐部よりも上流側の通路部には、逆止弁を設けるとともに、該逆止弁よりも上流側における通路部の燃圧を所定の設定値に制御する圧力制御手段を設けたことを特徴とする燃料供給装置。
  5. 請求項1〜4のいずれか1つに記載の燃料供給装置であって、
    前記燃料供給通路の燃圧を検出する圧力検出手段を設け、
    前記流量可変手段は、前記圧力検出手段の検出値に基づいて前記燃料ポンプの吐出流量をフィードバック制御すること
    ことを特徴とする燃料供給装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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KR102248353B1 (ko) * 2020-04-07 2021-05-07 (주)모토닉 Lpdi 차량의 연료압력 제어장치
KR102312727B1 (ko) * 2020-04-07 2021-10-14 (주)모토닉 Lpdi 차량의 연료압력 조절장치

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