まず、本発明のフロースイッチについて説明し、その後に、このフロースイッチを有する液量推定システムとしての車両燃料システムについて説明する。
本発明のフロースイッチの一実施形態を、図1〜図3を参照して説明する。本発明のフロースイッチは、例えば、車両の燃料として用いられる液化石油ガス(LPG)などの流体の流動有無状態の検出に用いられる。このLPGは、周囲温度などの環境条件により圧力が0.1MPa〜3MPa程度まで変化することが知られている。
各図に示すように、フロースイッチ70は、管路としての筐体71と、シリンダ75と、ピストン81と、付勢部材としてのスプリング85と、基板87と、巻線コイル91と、を有している。
筐体71は、例えば、LPGの圧力に耐えうる剛性を備えたアルミニウム合金などの非磁性金属を用いて略円筒形状に形成されている。筐体71の一端71a寄りの部分には、断面円形の第1流路72が設けられ、他端71b寄りの部分には、第1流路72と同軸に連通された、当該第1流路より細い断面円形の第2流路73が設けられている。筐体71は、互いに連通されたこれら第1流路72及び第2流路73によって一端71aから他端71bにわたって貫通されている。通常時、流体は、一端71aから筐体71内に流入されて筐体71内を流動したのち他端71bから流出される。
筐体71内の第1流路72と第2流路73との連接部分には段部71cが形成されている。この段部71cには、第1流路72側に突き出すように形成された、円筒突起71dが設けられている。円筒突起71dは、その内径が第2流路73と同一であり且つ第2流路73と同軸に配置されている。
第1流路72の周面72a(即ち、筐体71の内周面)には、筐体71の一端71a近傍の箇所に雌ねじを構成するネジ山が切られており、図示しない他の管路の一端が螺合されて互いに固定される。また、筐体71の外周面71eには、他端71b近傍の箇所に雄ねじを構成するネジ山が切られており、図示しないさらに他の管路の一端が螺合されて互いに固定される。また、筐体71の外周面71eには、後述する基板87を収容する基板収容室71fが設けられている。
シリンダ75は、例えば、POM(ポリアセタール)などのプラスチック摺動材料を用いて構成されており、円筒形状の胴部76と、胴部76の入口端76aを塞ぐように設けられた弁座部77と、を有する有底筒状(コップ型)に形成されている。胴部76は、その外径が上記第1流路72の径(即ち、筐体71の内径)と同一に形成されている。弁座部77は、円板状の本体部77aと、本体部77aの内側面77dの中心から胴部76と同軸に突出した略円錐状の突起部77bと、突起部77bの周囲に設けられた本体部77aを貫通する複数の連通孔77cと、を有している。
シリンダ75は、筐体71に一端71a側から挿入されて、このシリンダ75に続いて挿入された圧縮状態の脱落防止スプリング78及び第1流路72内に固定される押さえ板79によって、弁座部77が筐体71の他端71b側に向けて付勢されて、第1流路72内に固定して収容される。押さえ板79は、円板状に形成されており中央に連通孔79aが設けられている。シリンダ75は、第1流路72内に収容されたとき、胴部76の出口端76bが筐体71の段部71cに当接するとともに、胴部76の外周面76c(即ち、シリンダ75の外周面)が第1流路72の周面72aのネジ山が切られていない箇所に当接する。つまり、シリンダ75は、第1流路72の周面72aとシリンダ75の胴部76の外周面76cとが密に重なるように、筐体71内に固定して収容されている。また、第1流路72と同径のOリング96が、筐体71の段部71cに配置されており、このOリング96は、段部71cとシリンダ75の胴部76の出口端76bとの間に挟まれて、第1流路72の周面72aとシリンダ75の胴部76の外周面76cとの間を流体が通過することを防止している。
ピストン81は、例えば、POM(ポリアセタール)などのプラスチック摺動材料を用いて構成されており、円筒形状の周壁部82と、周壁部82の一端82aの内側を塞ぐように設けられた底壁部83と、を有する有底筒状に形成されている。周壁部82は、その外径が上記シリンダ75の胴部76の内径と同一に形成されており、その長さが上記シリンダ75の胴部76の長さより短く形成されている。底壁部83は、円板状の本体部83aと、本体部83aの中心を貫通する流通孔83bと、を有している。流通孔83bは、その本体部83aの外側面83c寄りの端部が上記突起部77bと嵌合可能なように当該突起部77bの外形に沿うすり鉢状に形成されている。底壁部83は、本体部83aと流通孔83bとでオリフィス板を構成している。
また、ピストン81の内側には、周壁部82の内径と同径の円板状のマグネット84が収容されている。このマグネット84は、周壁部82の他端82bから挿入され、マグネット84の一端面が底壁部83の本体部83aの内側面83dと当接されるとともに、他端面の縁部が周壁部82の内周面82cに設けられた係止爪82dに係止されて、ピストン81から脱落しないように固定されている。マグネット84には、その中心を貫通する流通孔84bが設けられており、この流通孔84bは、上記底壁部83の流通孔83bと同軸に配置される。
ピストン81は、底壁部83の本体部83aの外側面83cと上記弁座部77の本体部77aの内側面77dとが相対するようにして、シリンダ75の胴部76内に同軸に収容されている。ピストン81は、シリンダ75内に収容されると、周壁部82の外周面82e(即ち、ピストン81の外周面)が、シリンダ75の胴部76の内周面76d(即ち、シリンダ75の内周面)と当接して互いに密に重なる。
ピストン81とシリンダ75とは互いにプラスチック摺動材料で構成されているので、ピストン81の周壁部82の外周面82eとシリンダ75の胴部76の内周面76dとの間の摩擦力は非常に小さくなる。つまり、ピストン81は、図2に示すシリンダ75の入口端76a寄りの流動無し位置Qaと、図3に示すシリンダ75の出口端76b寄りの流動有り位置Qbと、の間を、シリンダ75の軸P方向に沿って摺動移動自在に収容されている。ピストン81が流動無し位置Qaにあるとき、ピストン81の底壁部83の本体部83aの外側面83cとシリンダ75の弁座部77の本体部77aの内側面77dとの間には、若干の隙間が設けられている。
また、ピストン81は、一端が上記円筒突起71dに取り付けられ且つ他端がマグネット84の他端面に取り付けられた付勢部材としてのスプリング85によって、底壁部83の本体部83aの外側面83cと上記弁座部77の本体部77aの内側面77dとが互いに近づく方向に付勢されている。つまり、スプリング85は、ピストン81を流動無し位置Qaに向けて付勢している。このスプリング85の付勢力は、流体が流動していない流動無し状態のときにピストン81が流動無し位置Qaに移動し、流体が流動している流動有り状態のときにピストン81が上記流動有り位置Qbに移動するように、設定されている。
ピストン81は、流動無し位置Qaにあるとき、底壁部83の流通孔83bにシリンダ75の突起部77bが嵌合して、当該流通孔83bが塞がれる。また、シリンダ75の胴部76の内径と同径のOリング97が、弁座部77の本体部77aの内側面77d上に配置されており、このOリング97は、ピストン81が流動無し位置Qaにあるときに、底壁部83と弁座部77との間に挟まれて、ピストン81の周壁部82の外周面82eとシリンダ75の胴部76の内周面76dとの間を流体が通過することを防止している。
基板87は、配線パターンが設けられた周知のプリント基板上に、各種電子部品が実装されて構成されている。基板87は、筐体71の外周面71eの長手方向中央付近に設けられた基板収容室71f内に収容されている。基板87には、磁気感応型センサ素子としてのリードスイッチ88が実装されている。
リードスイッチ88は、磁力に感応して接点を開閉する周知の磁力感応型センサ素子であって、ピストン81が流動無し位置Qaにあるときに、ピストン81に設けられたマグネット84の磁力を検知(感応)して接点を閉じ(閉作動)、ピストン81が流動有り位置Qbにあるときに、上記マグネット84の磁力を検知しなくなり接点を開く(開作動)ように設けられている。本実施形態では、リードスイッチ88は、その一端がプルアップされた出力信号線に接続され、その他端が接地(グランド接続)されており、磁力を検知して閉作動するとLレベルの信号を出力し、磁力を検知せず開作動するとHレベルの信号を出力する。リードスイッチ88は、請求項中の位置検知手段に相当し、これらLレベルの信号及びHレベルの信号は、請求項中の位置信号に相当する。
また、リードスイッチ88は、上記に限らず、ピストン81が流動有り位置Qbにあるときに、マグネット84の磁力を検知して接点を閉じ、ピストン81が流動無し位置Qaにあるときに、上記マグネット84の磁力を検知しなくなり接点を開くように、例えば、筐体71の外周面71eの他端71b寄りの箇所に設けられていても良く、リードスイッチ88は、閉作動と開作動とが上記の逆となるものであってもよく、このようなリードスイッチ88に代えて、例えば、ホール素子などの他の種類の磁気感応型センサ素子を用いてもよく、本発明の目的に反しない限り、ピストンのマグネットの磁力に感応して、ピストンが流動有り位置Qbにあるときと流動無し位置Qaにあるときとで感応状態が変化するように設けられた磁気感応型センサ素子であれば良い。
巻線コイル91は、例えば、エナメル線などの電線が複数回巻回されて構成されており、電流を通電されることにより磁力を生じる電磁石として機能するものである。巻線コイル91は、筐体71の外周面71eのシリンダ75の出口端76b付近に周方向に平行に巻き付けられて設けられている。巻線コイル91は、一方向(正方向)に電流が流れたときにピストン81を流動無し位置Qaに移動させ、この一方向とは反対の他方向(負方向)に電流が流れたときにピストン81を流動有り位置Qbに移動させるように、ピストン81のマグネット84に磁力を及ぼすように設けられている。巻線コイル91は、上記基板87に接続されており、基板87から上記電流が供給される。
上述したフロースイッチ70の各動作(フロースイッチ動作、逆止弁動作、及び、電磁弁動作)について説明する。以下、筐体71の一端71a側における流体の圧力を上流側圧力、他端71b側における流体の圧力を下流側圧力という。
(1)フロースイッチ及び逆止弁としての動作
フロースイッチ及び逆止弁として動作させる場合には、巻線コイル91に通電を行うとリードスイッチ88がピストン81の位置に応じた動作をせずにその検知結果が無効になるので、フロースイッチ及び逆止弁として動作させるときには巻線コイル91への通電は行わない。
(1−1)上流側圧力と下流側圧力とが同一の場合
上流側圧力と下流側圧力とが同一の場合、流体を流動させようとする力が生じず、ピストン81は、スプリング85の付勢力によって流動無し位置Qaに位置づけられる。そして、リードスイッチ88は、流動無し位置Qaにあるピストン81のマグネット84の磁力を検知して接点を閉じ、これに応じた流動無し状態信号(Lレベル信号)が出力される。
(1−2)上流側圧力が下流側圧力より高い場合
上流側圧力が下流側圧力より高い場合、筐体71の一端71a側から他端71b側に向かって流体を流動させようとする力が働く。この力は、筐体71内に充填された流体を伝わって、ピストン81の底壁部83の外側面83cに加わる。すると、ピストン81は、スプリング85の付勢力に抗して弁座部77から離れ、流動無し位置Qaから流動有り位置Qbに向けて移動する。これにより、流通孔83bと弁座部77の突起部77bとの嵌合が外れて、流通孔83bが開放され、流体は、一端71a側から第1流路72に流入し、押さえ板79の連通孔79a及び弁座部77の複数の連通孔77cを順次通過して、さらに流通孔83bを通り、第2流路73から筐体71の他端71bへ流出する。また、この流体が流通孔83bを通過して流動することで圧損が生じ、この圧損による力がピストン81に生じて、ピストン81が流動有り位置Qbまで移動する。ピストン81が、流動無し位置Qaから離れて流動有り位置Qbまで移動することにより、リードスイッチ88が、ピストン81のマグネット84の磁力を検知しなくなり、その接点を開いて、これに応じた流動有り状態信号(Hレベル信号)が出力される。このように、フロースイッチ70により、筐体71の一端71a側から他端71b側に向かう流体の流動を検知する。
(1−3)上流側圧力が下流側圧力より低い場合
上流側圧力が下流側圧力より低い場合、筐体71の他端71b側から一端71a側に向かって流体を流動させようとする力が働く。この力は、筐体71内に充填された流体を伝わって、マグネット84を介してピストン81の底壁部83の内側面83dに加わる。すると、この力により、ピストン81は、弁座部77に近づき流動無し位置Qaに移動して当該弁座部77に押しつけられる。これにより、弁座部77の突起部77bとピストン81の流通孔83bとが嵌合して流通孔83bが塞がり、流体の流動が阻止される。このように、フロースイッチ70は、ピストン81を弁体として筐体71の他端71b側から一端71a側に向かう流体の流動を阻止する逆止弁として動作する。また、この場合、リードスイッチ88は、流動無し位置Qaにあるピストン81のマグネット84の磁力を検知して接点を閉じ、これに応じた流動無し信号(Lレベル信号)が出力される。
(2)電磁弁としての動作
巻線コイル91に通電を行うことにより、上流側圧力及び下流側圧力に関わらず、ピストン81を流動無し位置Qa及び流動有り位置Qbに移動させることができる。具体的には、巻線コイル91に上記一方向の電流を流すと、ピストン81のマグネット84と反発する磁力を発生して、ピストン81を巻線コイル91から離す力が生じて、ピストン81が流動無し位置Qaに移動して固定される。これにより、弁座部77の突起部77bとピストン81の流通孔83bとが嵌合して流通孔83bが塞がり、流体の流動が規制される。また、巻線コイル91に上記他方向の電流を流すと、ピストン81のマグネット84を引き寄せる磁力を発生して、ピストン81を巻線コイル91に近づける力が生じて、ピストン81が流動有り位置Qbに移動して固定される。これにより、弁座部77の突起部77bとピストン81の流通孔83bとの嵌合が外れて、流通孔83bが開き、流体の流動が許可される。このように、フロースイッチ70は、ピストン81を弁体とする電磁弁として動作する。
上述したフロースイッチ70の本発明に係る動作(作用)について説明する。
例えば、シリンダ75及びピストン81を、金属材料などを用いて構成した場合、それらの間の摩擦力が大きくなってしまい、この摩擦力が流体の圧力によるピストン81の移動の妨げとなって、流体としての気体などの微少な流動を検知できないことがある。しかし、上述したフロースイッチ70は、シリンダ75及びピストン81が共にプラスチック摺動材料で構成されているので、それら間の摩擦力を、金属材料などに比べて非常に小さくすることができる。
また、プラスチック摺動材料は、金属材料などに比べて剛性が低い。そのため、プラスチック摺動材料を用いて、シリンダ75やピストン81を形成してその内側に高圧のLPGなど流体を流動させると、内側から外側に向けて膨張する方向に圧力が生じて、シリンダ75やピストン81が圧力によって破損してしまう恐れがある。しかし、剛性の高い金属からなる筐体71によってシリンダ75を周囲から支え、さらにシリンダ75によってピストン81を周囲から支えて、上記圧力に耐えることができる。
以上より、本発明によれば、シリンダ75及びピストンが共にプラスチック摺動材料で構成されているので、プラスチック摺動材料は金属材料に比べて摩擦力が非常に小さく、そのため、互いに摺動し合うシリンダ75の内周面76d及びピストン81の外周面82eの間の摩擦力を非常に小さくできる。また、シリンダ75が、筐体71の第1流路72内に固定して収容されたときに第1流路72の周面72aとシリンダ75の胴部76の外周面76cとが密に重なるように形成されているので、プラスチック摺動材料は金属材料に比べて剛性が低く、シリンダ75やピストン81内に高圧の流体が流れ込むと、内側から膨張して破損する恐れがあるが、本発明では、シリンダ75がその周囲を筐体71によって支えられ、また、ピストンがその周囲をシリンダ75によって支えられて、膨張する方向の力を受け止めることができ、そのため、高圧の流体に対する耐圧性を確保できる。したがって、流体の圧力が高い場合においても、流体の微少な流動の検出ができる。
また、ピストン81が、筒形状の周壁部82と、周壁部82の一端82aを塞ぐ本体部83a及び本体部83aを貫通する流通孔83bからなる底壁部83と、を有して構成されているので、ピストン81の底壁部83がオリフィス板として機能し、そのため、流体が流動したときに当該流体の流通孔83bの通過により確実に圧損が生じ、底壁部83の外側面83c側と内側面83d側との間に安定して圧力差が生じて、チャタリング等が生じることなく、流体によってピストン81を安定して移動させることができる。また、シリンダ75内がピストン81で塞がれており、流体が流動する経路が流通孔83bのみとなるので、流体の流動を確実に捕捉できる。
また、ピストン81が流動無し位置Qaにあるときに流通孔83bを塞ぐように当該流通孔83bに嵌合する突起部77bが設けられた弁座部77を有しているので、筐体71の他端71b側(即ち、シリンダ75の出口端76b側)から流体が流れ込んだとき、この流体によってピストン81が流動無し位置Qaに移動されるが、このとき、弁座部77の突起部77bが底壁部83に設けられた流通孔83bに嵌合して当該流通孔83bが塞がり、そのため、流体の流動が阻止される。つまり、フロースイッチ70を構成する部材を共用して、ピストン81を弁体とした逆止弁を構成でき、フロースイッチと逆止弁とが必要な装置などにおいて、それぞれを別個に設けることなく当該装置を小型化できる。
また、ピストン81には、マグネット84が設けられ、筐体71が非磁性体で構成されているとともにその外周面71eには、一方向に電流が流れたときにピストン81を流動無し位置Qaに移動させ、反対の他方向に電流が流れたときにピストン81を流動有り位置Qbに移動させるように、ピストン81のマグネット84に磁力を及ぼす巻線コイル91が設けられているので、巻線コイル91に電流を流すことにより、ピストン81を流動無し位置Qaに移動させて流通孔83bを突起部77bで塞いで流体の流動を規制したり、ピストン81を流動有り位置Qbに移動させて流通孔83bを開いて流体の流動を許可したりでき、つまり、フロースイッチ70を構成する部材を共用して、ピストン81を弁体として電磁弁を構成でき、フロースイッチと逆止弁と電磁弁とが必要な装置などにおいて、それぞれを別個に設けることなく当該装置を小型化できる。
また、リードスイッチ88が、ピストン81が流動無し位置Qaにあるときにピストン81のマグネット84の磁力を検知して閉作動し、ピストン81が流動無し位置Qbにあるときにピストン81のマグネット84の磁力を検知しなくなり開作動するように設けられているので、ピストン81の位置を検知するためのマグネットを別途設ける必要なくマグネット84を共用でき、さらに小型化できる。
本実施形態において、シリンダ75とピストン81とをプラスチック摺動材料としてのPOM(ポリアセタール)で構成するものであったが、これに限定されるものではない。このプラスチック摺動材料とは、例えば、すべり軸受などの摺動部分などに用いられる材料であり、上述したPOM(ポリアセタール)や、PA(ポリアミド)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)など、摺動時の摩擦力がアルミニウム合金などの金属材料に比べて非常に小さい性質を有し、摺動部分に用いるのに適したプラスチック(合成樹脂)材料のことをいう。そして、このようなプラスチック摺動材料であれば、本発明の目的に反しない限り、シリンダ75とピストン81とに用いる当該プラスチック摺動材料の種類は任意である。また、上記摺動時の摩擦力が小さくなるのであれば、シリンダ75とピストン81とを異なる種類のプラスチック摺動材料を用いて構成してもよい。
また、本実施形態では、弁座部77にピストン81の流通孔83bを塞ぐ突起部77bを設けて、逆止弁としても機能させるものであったが、突起部77bを設けずにフロースイッチとしてのみ機能させるものであってもよい。また、フロースイッチ70は、巻線コイル91を設けて電磁弁としても機能させるものであったが、巻き線コイル91を設けずにフロースイッチ及び逆止弁のみとして機能させるものであってもよい。
また、本実施形態では、位置検知手段としての磁気感応型センサ素子であるリードスイッチ88を設けて、ピストン81のマグネット84が生じる磁力を検知することにより、ピストン81の位置を検知するものであったが、これに限定されるものではない。例えば、発光素子と受光素子とを備え、ピストン81が流動無し位置Qaにあるときに発光素子の光が遮られて受光素子に到達せず、ピストン81が流動有り位置にあるときに発光素子の光が受光素子に到達するように、これら両素子がシリンダ75の内側をまたいで対向して配置された、位置検知手段としての光センサユニットを用いて、ピストン81の位置を検知してもよい。または、ピストン81が流動無し位置Qaにあるときに押下され、ピストン81が流動有り位置にあるときに押下されないように設けられた押しボタンスイッチなどのメカニカルスイッチを用いて、ピストン81の位置を検知してもよい。つまり、本発明の目的に反しない限り、ピストン81の位置の検知に用いる位置検知手段は任意である。
次に、上述した本発明のフロースイッチ70を有する液量推定装置を、図4〜図8を参照して説明する。
以下に説明する車両燃料システムは、車両に搭載されて、液化石油ガス(LPG)を当該車両の燃料Fとして収容する燃料タンクを備えるとともに、当該燃料タンク内の燃料Fの液量を推定するシステムである。
図4に示すように、車両燃料システム(図中、符号1で示す)は、液体タンクとしての燃料タンク10と、燃料タンク10内の燃料Fの液量を推定する液量推定装置7と、を有している。
燃料タンク10は、例えば、車両の床下などに配置されて、当該車両の燃料Fを収容する周知の車両部品であり、本実施形態においては、直方体の箱形状で容積100Lとなるように形成されている。燃料タンク10には、図示しない車両の燃料充填口に接続されて、燃料供給スタンドなどから供給される燃料Fを燃料タンク10内に流入させるための流入管11と、この流入管11を開放及び閉塞する、電磁弁で構成された流入弁12と、が設けられている。また、流入管11には、安全上取付が必要となる図示しない遮断バルブが設けられている。また、燃料タンク10には、図示しない内燃機関に燃料Fを供給するためのインジェクション装置等に接続されて、燃料タンク10内の燃料Fを当該インジェクション装置等に向けて流出させる流出管13と、この流出管13を開放及び閉塞する、電磁弁で構成された流出弁14と、が設けられている。なお、図4に示した燃料タンク10等の構成は一例であって、例えば、流入管11及び流出管13の燃料タンク10への接続箇所はシステム構成等に応じて適宜定められる。燃料タンク10内には、気化した燃料F等が収容される気相部17と、液体状の燃料Fが収容される液相部18と、が存在する。燃料タンク10内には、燃料Fが空の場合は気相部17のみ存在し、また、燃料Fが満量の場合でも若干の空間が設けられ、即ち、気相部17が存在する。
液量推定装置7は、気密タンク31と、他の管路としての配管39と、上述したフロースイッチ70と、加熱手段としてのヒータ46と、気相部圧力情報測定手段としての気相部圧力センサ58と、気密タンク温度測定手段としての気密タンク温度センサ59と、制御部60と、を有している。
気密タンク31は、燃料タンク10と別体で設けられ、当該燃料タンク10に近接して配置されており、本実施形態においては、直方体の箱形形状で容積1.0Lとなるように形成されている。気密タンク31は、配管39によって燃料タンク10に接続されている。この配管39は、その一端39aが、燃料タンク10の側壁10bの上端に接続され、他端39bが、気密タンク31の下壁31cに接続されている。つまり、気密タンク31は、燃料タンク10と別体で設けられるとともに、燃料タンク10の上部、即ち、燃料タンク10内の気相部17に接続されている。これにより、気密タンク31には、気相部17と同じ気体が充填される。
フロースイッチ70は、筐体71の一端71aが配管39を介して気密タンク31に接続され、筐体71の他端71bが配管39を介して燃料タンク10に接続されるように、配管39の途中部分に設けられている。このフロースイッチ70は、上述したように、(1)筐体71の一端71a側から他端71b側に向かう流体の流動を検知するフロースイッチ、(2)ピストン81を弁体として筐体71の他端71b側から一端71a側に向かう流体の流動を阻止する逆止弁、(3)ピストン81を弁体として、その開閉によって配管39を開放又は閉塞するように動作する電磁弁、として機能する。また、ピストン81の底壁部83(即ち、本体部83aと流通孔83b)はオリフィス板として機能する。
フロースイッチ70は、配管39内に気密タンク31から気相部17に向けて気体が流動している流動有り状態、気体が流動していない流動無し状態を検知する。具体的には、フロースイッチ70のリードスイッチ88が、基板87を介して後述する制御部60に電気的に接続されており、このリードスイッチ88によって配管39内の気体の流動有無状態を検知して、流動有り状態、流動無し状態に応じた電気信号(上述した流動有り状態信号及び流動無し状態信号)を制御部60に出力する。
フロースイッチ70のピストン81の底壁部83は、オリフィス板として機能し、流体としての気体の流動方向(即ち、軸P方向)に垂直になるように設けられている。底壁部83は、流通孔83bを通じて気体を流動させることにより、配管39に流れる気体の流量を規制する。本実施形態において、底壁部83は、規制流量が100ccm(圧力差1気圧において、流量が100cc/分)となるように調整されている。なお、底壁部83の構成については、装置構成などに応じて適宜定められる。
また、フロースイッチ70は、逆止弁として機能し、気相部17から気密タンク31に向かう流体の流動を阻止する。例えば、強い衝撃などにより、気密タンク31が破損してしまった場合、この破損した箇所から大気中に高圧のLPGが漏れてしまうおそれがあるが、フロースイッチ70の逆止弁機能により、このような漏れを防止できる。
また、フロースイッチ70は、電磁弁として機能し、ピストン81の底壁部83の流通孔83bを閉塞又は開放することにより、気相部17と気密タンク31との接続を開いたり閉じたりするように設けられている。具体的には、フロースイッチ70の巻線コイル91が、基板87を介して後述する制御部60に電気的に接続されており、制御部60から供給される電流によって巻線コイル91の生じる磁力が制御されて、ピストン81の流通孔83bが閉塞又は開放されるように制御される。
ヒータ46は、例えば、電熱線やハロゲンヒータ、カーボンヒータなどの電気エネルギーから熱を生成して放出することにより対象物を加熱するための周知の加熱器である。勿論、電気以外にも各種燃料の燃焼などにより熱を放出するものであってもよい。ヒータ46は、気密タンク31の4つの側壁31bに密着して設けられており、各側壁31bを介して気密タンク31内の気体を加熱してその温度を上昇(即ち、昇温)させる。
また、ヒータ46によって、気密タンク31内の気体を効率よく加熱するとともに、配管39や燃料タンク10がヒータ46の熱の影響を受けないようにするために、図示しないグラスウールなどからなる断熱材などによってヒータ46を覆う等の断熱処理が施されている。これにより、気密タンク31及び気相部17の圧力及び温度は、ヒータ46による加熱及び気相部17への気体の押し込みが無い状態では安定している。「圧力及び温度が安定」とは、値の変動が全くない場合と、液量の推定に支障が無い程度の小さい変動幅がある場合とを含む。ヒータ46は、後述する制御部60に電気的に接続されており、当該制御部60からの制御信号によって制御される。
本実施形態において、気密タンク31は直方体の箱形形状に形成され、ヒータ46は、気密タンク31の4つの側壁31bに密着して設けられているものであったが、これに限定されるものではなく、例えば、気密タンク31が長尺の管状に形成されており、その外周面に、ヒータ46としての電熱線が巻き付けられている構成など、気密タンク31内の気体を加熱可能なものであれば、これらの構成は任意である。
気密タンク31と気相部17との圧力を等しくする場合、まず、フロースイッチ70の巻線コイル91に上記他方向に通電してピストン81を巻線コイル91に近づける磁力を発生させ、ピストン81を流動有り位置Qbに移動させて流通孔83bを開くと、気相部17と気密タンク31とが配管39を通じて接続されて、それぞれの圧力は同一になる。そのあとに、巻線コイル91に上記一方向に通電してピストン81を巻線コイル91から離す磁力を発生させ、ピストン81を流動無し位置Qaに移動させて流通孔83bを閉じると、気密タンク31は密閉状態となり、この状態において、ヒータ46により気密タンク31内の気体を加熱すると、気密タンク31内の圧力が気相部17の圧力より高くなる。それから、巻線コイル91の通電を停止すると、気相部17と気密タンク31との圧力差によってピストン81が流動有り位置Qbに向けて押されて、流通孔83bが開かれて、気相部17と気密タンク31との圧力差を解消するように、気密タンク31から気相部17に気体が流れる。つまり、気密タンク31の気体が、気相部17に押し込まれる。
気密タンク温度センサ59は、例えば、サーミスタや熱電対などで構成されて、気密タンク31の上壁31aに設けられており、気密タンク31内の温度を測定する。気密タンク温度センサ59は、後述する制御部60に電気的に接続されており、測定した気密タンク31内の温度に応じた電気信号を制御部60に出力する。
制御部60は、図5に示すように、周知の組み込み機器用のマイクロコンピュータ61などで構成されている、このマイクロコンピュータ61は、中央演算処理装置(CPU)62と、ROM(Read Only Memory)63と、RAM(Random Access Memory)64と、メモリ65と、タイマ66と、を備えている。
CPU62は、車両燃料システム1における各種制御を司り、ROM63に記憶されている各種制御プログラムにしたがって本実施形態に係る制御を含む各種の処理を実行する。ROM63は、前記制御プログラムやこの制御プログラムに参照されるパラメータなどの各種情報を記憶している。特に、ROM63は、CPU62を、気体押込制御手段、平衡圧力検出手段、液量推定手段などの各種手段として機能させるための制御プログラムを記憶している。そして、CPU62は、この制御プログラムを実行することで前述した各種手段として機能する。RAM64は、CPU62が各種の処理を実行する上において必要なデータ、プログラム等が適宜記憶される。メモリ65は、例えば、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)やフラッシュメモリなどの電源断となってもデータを保持できる不揮発性のメモリで構成されている。このメモリ65には、後述する液量推定処理で用いられる数式やパラメータ(後述する圧力調整時間など)等の各種情報が記憶されている。タイマ66は、CPU62が任意の時間の計時を行うために用いられる周知の計時機構である。本実施形態において、タイマ66の計時単位(最小時間単位)は、1m秒としている。より高速のマイクロコンピュータ61を用いることで、計時単位をより小さくすることができ、即ち、計時の分解能を容易に高くすることができる。タイマ66は、流動継続時間計時手段に相当する。
制御部60のマイクロコンピュータ61が備えるメモリ65には、図6に一例を示すように、気相部17の所定の圧力(押込前圧力)のときに、ヒータ46により気密タンク31の気体が所定温度に加熱されてピストン81の流通孔83bが開かれた後における気密タンク31から気相部17に気体が流動している状態の継続時間を示す流動継続時間Tと、その後流動が無くなり気相部17の圧力と気密タンク31の圧力とが平衡したときの気相部17の圧力Pm3(平衡圧力)と、の関係を示す平衡圧力関係情報Hが格納されている。この平衡圧力関係情報Hは、例えば、予備計測やシミュレーションなどによって得られたグラフを示す関数(回帰式)やデータテーブルなどであり、気相部17に気体が押し込まれる前の圧力毎に複数個設けられている。本実施形態では、図7に模式的に示すように、気相部17に気体が押し込まれる前の圧力(押込前圧力)が0.10MPaから3.00MPaまで0.01MPa毎に複数個の平衡圧力関係情報Hが格納されている。
これら気相部17と気密タンク31とにおいて、気相部17と気密タンク31とをそれぞれ同一の初期圧力P1としたのち、ピストン81の流通孔83bを閉じて気密タンク31を密閉し、その内部の気体を加熱して当該気密タンク31内の圧力を初期圧力P1から変化後圧力P2に変化させたのちピストン81の流通孔83bを開いて気相部17と気密タンク31とを連通すると、これら気相部17と気密タンク31との圧力差を解消するようにこれらの間において気体が流動する。そして、気体の流動が無くなり圧力差が解消された平衡状態になると、これら気相部17及び気密タンク31の圧力が平衡圧力P3になる。
このときの気体の流動総量と気相部17の容積との間には相関関係がある。即ち、気相部17と気密タンク31とを連通させたあとには、気相部17の圧力と気密タンク31内の圧力との圧力差が徐々に小さくなり平衡圧力P3に向かうが、気相部17の容積が大きいほど、気相部17における平衡圧力P3に向かう圧力変化量(初期圧力P1と平衡圧力P3との圧力差)は小さくなり、また、気密タンク31における平衡圧力P3に向かう圧力変化量(変化後圧力P2と平衡圧力P3との圧力差)は大きくなり、そのため、気体の流動総量が増加し、また、気体の流動総量に応じて気体が流動している流動継続時間Tも増加する。このことから、気相部17の容積が大きいほど平衡圧力P3が低くなって、流動継続時間Tが長くなり、つまり、図6に示すように、流動継続時間Tが長くなるほど、平衡圧力P3(即ち、気相部17の圧力Pm3)が低くなる。即ち、流動継続時間Tと平衡圧力P3との間にも相関関係がある。また、気相部17の初期圧力(押込前圧力)が高いほど、気体の密度が高く、気体が流動しにくいので、流動継続時間Tが長くなる(図6のグラフが全体的に上方に移動する)傾向にある。
また、マイクロコンピュータ61が備える図示しないインタフェース部は、フロースイッチ70、ヒータ46、気相部圧力センサ58、及び、気密タンク温度センサ59のそれぞれと、CPU62と、を接続しており、これら間での各種信号の送受を可能としている。
次に、上述したCPU62が実行する処理(液量推定処理1)の一例を、図8に示すフローチャートを参照して説明する。
車両のイグニッションスイッチがオンされると、車両燃料システム1に電源が供給されて制御部60のCPU62が動作を開始し、CPU62は、所定の初期化処理を実行する。そして、CPU62は、初期化処理が終了した後に、例えば、一定周期などの所定のタイミングで、図8のフローチャートに示すステップT100に進む。
ステップT100では、フロースイッチ70のピストン81を流動有り位置Qbに移動して、ピストン81の流通孔83bを開く。具体的には、フロースイッチ70の巻線コイル91に上記他方向に向かう電流を流すと、フロースイッチ70のピストン81は流動有り位置Qbに移動して、ピストン81の流通孔83bと弁座部77の突起部77bとの嵌合が外れ、ピストン81の流通孔83bを開く。これにより、気相部17と気密タンク31との接続が開かれて、これらが互いに連通される。そして、ステップT105に進む。
ステップT105では、所定の圧力調整時間が経過するまで待つ。この圧力調整時間は、気相部17の圧力、及び、気密タンク31の圧力が同一となるまでの待ち時間である。そして、圧力調整時間経過後に、ステップT110に進む。「圧力が同一」とは、厳密に同一の場合と、液量の推定に支障が無い程度の小さい差異がある場合とを含む。
または、このような処理に代えて、気相部17と気密タンク31とにそれぞれ圧力センサを設けて、これらセンサによって測定された圧力が同一になるまで待つようにしてもよく、つまり、気相部17及び気密タンク31のそれぞれにおける圧力がそれぞれ同一になるようにピストン81の流通孔83bの開閉を制御する処理を行うものであればよい。
ステップT110では、気相部圧力センサ58から出力された電気信号に基づいて、気相部圧力センサ58によって測定された気相部17の圧力Pm1(初期圧力P1)を検出し、気密タンク温度センサ59から出力された電気信号に基づいて、気密タンク温度センサ59によって測定された気密タンク31内の温度Ts1を検出する。そして、ステップT115に進む。
ステップT115では、フロースイッチ70のピストン81を流動無し位置Qaに移動して、ピストン81の流通孔83bを閉じる。具体的には、フロースイッチ70の巻線コイル91に上記一方向に向かう電流を流すと、フロースイッチ70のピストン81は流動無し位置Qaに移動して、ピストン81の流通孔83bと弁座部77の突起部77bとが嵌合し、当該流通孔83bを閉じる。これにより、気相部17と気密タンク31との接続が閉じられて、気密タンク31が密閉される。そして、ステップT120に進む。
ステップT120では、気密タンク31内の気体を所定の目標温度になるまで加熱するようにヒータ46を駆動するための制御信号を、当該ヒータ46に送出する。これにより、ヒータ46は、気密タンク31内の気体を加熱してその温度を目標温度Ttまで上昇させる。本実施形態において、ステップT110で測定した気密タンク31内の温度Ts1と、目標温度Ttと、の比が、所定の値(Tt:Ts1=6:5)となるように、目標温度Ttが定められている。また、上述した平衡圧力関係情報Hは、気密タンク31内の温度Ts1と目標温度Ttとの比が上記所定の値と同一になる状態において予備測定等を行い作製している。勿論、これ以外の目標温度を設定してもよい。そして、ヒータ46による加熱により、気密タンク31内の気体が膨張しようとするものの密閉状態であるため、気密タンク31内の圧力が高まる。なお、これに限らず、例えば、バイメタル等の感温部材を利用して、上記目標温度以上でオフ状態になり、上記目標温度より低い所定の通電温度でオン状態となるように設定された温度スイッチを、ヒータ41の給電線に直列に接続するとともに気密タンク20内に配置して、気密タンク31内の気体を目標温度に加熱しつづけるようにヒータ46を駆動するための制御信号を、当該ヒータ46に送出するなど、気密タンク31内の気体を加熱するためのヒータ46の制御方法は任意である。そして、ステップT130に進む。
ステップT130では、気密タンク温度センサ59から出力された電気信号に基づいて、気密タンク温度センサ59によって測定された気密タンク31内の温度Ts2を検出する。そして、ステップT140に進む。
ステップT140では、ステップT130で検出した気密タンク31内の温度Ts2が、目標温度Ttに達しているか否かを判定する。そして、目標温度Ttに達していないときはステップT130に戻り(T140でN)、目標温度Ttに達していたときステップT150に進む(T140でY)。
ステップT150では、気密タンク31内の温度が目標温度になるまで加熱した後に、フロースイッチ70の巻線コイル91への通電を停止して、ピストン81においてそれに加わる圧力に応じたシリンダ75内の移動を可能にする。このとき、ヒータ46による加熱によって気密タンク31の圧力が気相部17の圧力より高くなっているので、これら圧力の差によるピストン81を流動無し位置Qaから流動有り位置Qbに移動させようとする力が、スプリング85の付勢力に打ち勝ち、ピストン81が流動有り位置Qbに移動して、ピストン81の流通孔83bが開かれる。これにより、気相部17と気密タンク31との接続が開かれて、これらが互いに連通されて、気密タンク31内の気体が膨張して、気相部17に押し込まれる。また、ステップT150では、流通孔83bが開かれた後も気密タンク31内の温度が上記目標温度Ttを維持するようにヒータ46を駆動制御するための制御信号を、ヒータ46に送出する。そして、ステップT160に進む。
なお、CPU62によって、インジェクタ開度や燃料の流量などを示す各種電気信号などに基づいて燃料消費量を検出するとともに、燃料消費量が所定の基準値を超えるときなど、燃料Fの液量の変動が大きいときに上記ステップT100〜T140を予め実行しておき、燃料消費量が所定の基準値以下のときなど、燃料Fの液量の燃料残量の変動が小さいときに、本ステップT150を実行するようにしてもよい。これにより、燃料Fの流入や流出により燃料タンク10内の液量が変動している場合など当該液量の推定に適さない状態において、気密タンク31と気相部17との接続を閉じて、気密タンク31内の気体を加熱して圧力を高めておき、そして、液量の変動が収まった場合など当該液量の推定に適した状態において、気密タンク31と気相部17との接続を開いて、気密タンク31内の気体を膨張させて一時に気相部17に押し込むことにより、液量の推定に要する時間を短くすることができる。
ステップT160では、フロースイッチ70のリードスイッチ88から出力された電気信号に基づいて、フロースイッチ70によって検知された配管39内の気体の流動状態を検出し、流動有り状態が検出されるまで待ってから、タイマ66によって、気体が流動している状態の継続時間を示す流動継続時間Tの計時を開始する。そして、ステップT170に進む。
ステップT170では、フロースイッチ70のリードスイッチ88から出力された電気信号に基づいて、フロースイッチ70によって検知された配管39内の気体の流動状態を検出し、流動有り状態が検出されたときは当該流動状態の検出を継続し(T170でY)、流動無し状態、即ち、気相部17と気密タンク31との圧力が平衡した状態が検出されたときステップT180に進む。
ステップT180では、タイマ66による流動継続時間Tの計時を停止する。そして、ステップT190に進む。
ステップT190では、ステップT110で検出された気相部17の圧力Pm1と、ステップT180で計時された流動継続時間Tと、に基づいて、気相部17と気密タンク31との圧力が平衡した後の気相部17の圧力Pm3(平衡圧力P3)を取得(検出)する。
具体的には、ピストン81の流通孔83bが開かれて気相部17に気体が押し込まれる前の当該気相部17の圧力Pm1(押込前圧力)によって特定される平衡圧力関係情報Hに、流動継続時間Tを当てはめることにより、この平衡圧力関係情報Hから気相部17の圧力Pm3を取得する。
気相部の圧力Pm3の取得の一例を示すと、気相部17に気体が押し込まれる前の圧力Pm1が1.00MPaのとき、平衡圧力関係情報Hとして、図6のグラフが特定され、そして、流動継続時間Tが48秒だったとすると、上記グラフから、気相部17の圧力Pm3を1.01000MPaとして取得する。そして、ステップT200に進む。
ステップT200では、ステップT110で検出された気相部17の圧力Pm1及び気密タンク31内の温度Ts1と、ステップT130で検出された気密タンク31内の温度Ts2と、ステップT190で取得された気相部17の圧力Pm3と、に基づいて、燃料タンク10の容積VTのうち気相部17に対応する部分の容積VA(以下、気相部容積VAという)を算出する。
この算出に用いる式の導出について以下に示す。気相部17の容積をVA、気密タンク31の容積をVs、ピストン81の流通孔83bが開かれて気相部17に気体が押し込まれる前の気相部17の圧力(即ち、気密タンク31の圧力)をPm1(初期圧力P1)、ヒータ46による加熱前の気密タンク31の温度をTs1、加熱後の気密タンク31の温度をTs2、加熱後の気密タンク31の圧力をPs2(変化後圧力P2)、ピストン81の流通孔83bが開かれた後に気相部17と気密タンク31の圧力が平衡した後の気相部17の圧力をPm3(平衡圧力P3)、ピストン81の流通孔83bが開かれた後に圧力平衡に至るまでの時間(流動継続時間)をT、とする。
気密タンク31の気体を加熱することにより温度がTs1からTs2に上昇したとき、気密タンクの容積Vsは変わらないので、
Ps2=(Ts2/Ts1)×Pm1・・・(2.1)
となる。
そして、ピストン81の流通孔83bが閉じられているので気相部17の圧力はPm1のままであり、気相部17と気密タンク31とに圧力差が生じ、その後、ピストン81の流通孔83bが開かれることにより、気相部17の圧力がPm3に平衡するまでの流動継続時間Tの間、気密タンク31から気相部17に気体が流動する。そして、平衡後の気相部17の圧力Pm3は、ボイルの法則により、
Pm3×(Vs+VA)=Pm1×((Ts2/Ts1)×Vs+VA)
Pm3=Pm1((Ts2/Ts1)×Vs+VA)/(Vs+VA)
・・・(2.2)
となり、この(2.2)式を変形すると、
VA=((Pm3−(Ts2/Ts1)Pm1)×Vs)/(Pm1−Pm3)
・・・(2.3)
が導かれ、この(2.3)式を用いて、気相部容積VAを算出する。そして、ステップT210に進む。
ここで、上記(2.2)式から、気相部17の容積VAが大きいほど、気相部17の圧力Pm3が低い状態で平衡するので、気体流動の流動継続時間Tが長くなることが予想できる。つまり、気相部17の容積VAが大きいほど、平衡後の気相部17の圧力Pm3が低くなり、そして、圧力Pm3が低いほど、気体の流動に伴う気相部17の圧力変化量(圧力Pm1→圧力Pm3)が小さく、気密タンクの圧力変化量(圧力Ps2→圧力Pm3)が大きくなるので、気体の流動総量が多くなるとともに流動継続時間Tが長くなる。
ステップT210では、燃料タンク10内の容積VTからステップT200で算出した気相部容積VAを差し引くことにより、当該燃料タンク10の容積VTのうち液相部18に対応する部分の容積VL(以下、液相部容積VLという)を算出し、この液相部容積VLを燃料タンク10内の燃料Fの液量VLとする。そして、車両に搭載された図示しない燃料計に、液量VLを表示するための信号を送出する。そして、本フローチャートの処理を終了する。
上述したステップT120〜T150が、気体押込制御手段に相当し、ステップT190が、平衡圧力検出手段に相当し、ステップT110、T200、T210が、液量推定手段に相当する。
次に、上述した車両燃料システム1における動作例について説明する。
車両のイグニッションスイッチがオンされると、車両燃料システム1は動作を開始して、周期的(例えば、3分毎)に燃料タンク10内の燃料Fの液量の推定を行う。この液量VLの推定において、まず、フロースイッチ70のピストン81の流通孔83bを開き(T100)、気相部17、及び、気密タンク31の圧力が同一となる圧力調整時間の経過を待ち(T105)、その後、気相部17の圧力Pm1と気密タンク31内の温度Ts1とを検出する(T110)。そして、ピストン81の流通孔83bを閉じて気密タンク31を密閉状態として(T115)、ヒータ46によって気密タンク31内の気体を加熱しながら、気密タンク31内の温度Ts2を検出して、この温度Ts2が所定の目標温度Ttになるまで加熱したのちに、ピストン81に加わる圧力に応じた当該ピストン81の移動を可能にすると、ピストン81の流通孔83bが開かれて気相部17と気密タンク31とが連通される(T120〜T150)。これにより、気相部17と気密タンク31との間に圧力差が生じて気密タンク31から気相部17に気体が押し込まれ、そして、フロースイッチ70の出力に基づいて、この気体の押し込みによる気相部17から気密タンク31に気体が流動している状態の継続時間を示す流動継続時間Tを計時する(T160〜T180)。
そして、気相部17に気体が押し込まれる前の気相部17の圧力Pm1と、計時した流動継続時間Tを用いて、平衡圧力関係情報Hから平衡状態における気相部17の圧力Pm3を取得する(T190)。そして、気相部17の圧力Pm1と、平衡状態における気相部17の圧力Pm3と、気密タンク31内の気体を加熱する前の気密タンク31内の温度Ts1と、気密タンク31内の気体を目標温度Ttになるまで加熱した後で且つピストン81の流通孔83bが開かれる前の気密タンク31内の温度Ts2と、を用いて、ボイルの法則から燃料タンク10の気相部容積VAを算出し(T200)、この気相部容積VAを燃料タンク10の容積VTから差し引くことで液相部容積VLを算出して、この液相部容積VLを、燃料タンク10内の燃料Fの液量VLとして求めて、燃料計に表示する(T210)。
次に、車両燃料システム1における燃料タンク10内の燃料Fの液量VLの推定例を示す。
燃料タンク10の容積VTが100L、気密タンク31の容積が1.0L、であり、上述した液量推定処理において、気体が押し込まれる前の気相部17の圧力Pm1が1.00MPaとなり、加熱前の気密タンク31内の温度Ts1が300K、加熱後の気密タンク31内の温度Ts2が360Kとなり、ピストン81の流通孔83bが開かれたのち気相部17から気密タンク31に気体が流動している状態の継続時間を示す流動継続時間Tが28秒となったものとする。
このとき、気相部17に気体が押し込まれる前の当該気相部17の圧力Pm1が、1.00MPaであるので、平衡圧力関係情報Hとして、図10に示すグラフが特定される。そして、このグラフに、流動継続時間Tである28秒を当てはめると、気相部17の圧力Pm3として、1.01818MPaが取得される。
そして、気相部容積VAは、上記(2.3)式から、
VA=((1.01818−(360/300)×1.00)×1.0)
/(1.00−1.01818)
=10.0L
となり、この気相部容積VAを燃料タンク10の容積VTから差し引くと、液相部容積VL、即ち、燃料タンク10内の燃料Fの液量VLは、
VL=100−10.0=90.0L
となる。このようにして、燃料タンク10内の燃料Fの液量VLを推定する。
このような車両燃料システム1(即ち、液量推定装置7)に、上述したフロースイッチ70を用いることで、フロースイッチ、オリフィス、逆止弁及び電磁弁を、それぞれ別体で設ける必要が無く、そのため、液量推定装置7及び車両燃料システム1を小型化できる。
上述した実施形態は、車両に搭載され、液化ガスを収容するとともにその液量を推定する車両燃料システムを説明するものであったが、これに限定されるものではない。例えば、工場や家庭などに設置され、灯油やガソリン、各種薬液などを収容するとともにその液量を推定する液量推定システムなどであってもよく、本発明の目的に反しない限り、本発明を適用する装置及びシステムは任意である。また、液量の推定対象となる液体についても、液化石油ガスに限らず、例えば、窒素、酸素、アンモニアのなどの工業用途の液化ガス、又は、常温常圧で液状となる燃料(灯油、ガソリン等)、各種薬液等、本発明の目的に反しない限り、その種類は任意である。
なお、本発明では、シリンダ及びピストンにプラスチック摺動材料を用いた構成であるが、流体やスプリングなどとの関係で動作力が確保できるならば、シリンダ及びピストンにアルミニウムやステンレスなどの非磁性金属を用いた構成も考えられる。
なお、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。