JP2013124781A - 扁平ヒートパイプおよびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】断面が扁平形状をなし、かつ熱輸送特性あるいは熱輸送能力に優れたヒートパイプを提供する。
【解決手段】厚さに対して幅が広い扁平型のコンテナ2の内部に、加熱されて蒸発しかつ放熱して凝縮する作動流体が封入された扁平ヒートパイプ1において、前記コンテナ2は、互いに対向する平坦内壁面2a,2bと、これらの平坦内壁面2a,2bの左右両端部同士を繋いでいる側壁面2cとを有し、前記平坦内壁面2a,2bのうちのいずれか一方の平坦内壁面2aに、多孔構造の焼結材によって断面形状が矩形となるように構成されたウイック3が密着させられて配置され、かつそのウイック3と前記平坦内壁面2a,2bのうちの他方の平坦内壁面2bとの間に前記作動流体の蒸気が流通可能な隙間が形成され、前記ウイック3と前記左右の側壁面2cとの間および前記隙間が、作動流体の状が流通する蒸気流路4とされている。
【選択図】図2
【解決手段】厚さに対して幅が広い扁平型のコンテナ2の内部に、加熱されて蒸発しかつ放熱して凝縮する作動流体が封入された扁平ヒートパイプ1において、前記コンテナ2は、互いに対向する平坦内壁面2a,2bと、これらの平坦内壁面2a,2bの左右両端部同士を繋いでいる側壁面2cとを有し、前記平坦内壁面2a,2bのうちのいずれか一方の平坦内壁面2aに、多孔構造の焼結材によって断面形状が矩形となるように構成されたウイック3が密着させられて配置され、かつそのウイック3と前記平坦内壁面2a,2bのうちの他方の平坦内壁面2bとの間に前記作動流体の蒸気が流通可能な隙間が形成され、前記ウイック3と前記左右の側壁面2cとの間および前記隙間が、作動流体の状が流通する蒸気流路4とされている。
【選択図】図2
Description
この発明は、作動流体およびウイックを内蔵させてあるコンテナが薄板状に形成されているヒートパイプに関し、特に金属パイプを押し潰して扁平状に構成したヒートパイプに関するものである。
周知のようにヒートパイプは、密閉構造のコンテナの内部に封入した凝縮性の作動流体がその潜熱として熱を輸送するように構成された伝熱素子もしくは熱伝達部材であり、銅などの熱伝導率に優れた金属よりも優れた熱伝導特性を示す。そのコンテナには高い気密性と製造容易性などが求められるので、一般的には、金属製パイプが使用されていた。しかしながら、熱源や放熱箇所における熱伝達部位が平面を成す場合が多いことにより、その熱伝達部位との間の接触面積を大きくして両者の間の熱授受を良好にするために、少なくとも、加熱部(受熱部)や冷却部(放熱部)となる部分の外表面を平坦に形成した扁平型のヒートパイプが開発されている。特に最近では、電子部品の冷却などに使用されるヒートパイプにあっては、ヒートパイプの全体としての厚さがより薄いことが求められるようになってきている。
このような扁平型もしくは薄型のヒートパイプおよびその製造方法の一例が特許文献1に記載されている。特許文献1に記載された発明は、蒸気流路の閉塞を防止し、かつ高い毛管力を得ることを目的としたものであり、軸線方向に沿った切欠のある心棒をパイプの内部に挿入し、その切欠とパイプの内面とによって区画された空間部分に金属粉末を充填し、その状態で加熱して金属粉末を焼結するとともにその焼結金属をパイプの内面に焼結させ、ついで心棒を引き抜いた後に、パイプを押し潰して薄板状に成形する方法およびその方法で得られるヒートパイプである。パイプが扁平加工されることにより、その内部の焼結金属は、コンテナ内壁の平坦部分全体に熱的に接触し、そのため熱密度が小さくなり、またコンテナ両脇の湾曲部分が空隙部となって蒸気流路が確保される、とされている。
引用文献1に記載されたヒートパイプは、コンテナとなるパイプの内部に心棒および金属粉末を挿入し、その状態で加熱して金属粉末を焼結させることにより得られるものであって、パイプの内部に心棒を挿入する工程、およびその心棒に形成されている切欠に金属粉末を充填する工程が必須である。そのため、特許文献1に記載されているように全体としての厚さが2mm程度の薄い扁平ヒートパイプを製造する場合、コンテナの原材料となるパイプが細いものとなるから、その内部に心棒を挿入することが困難であり、製造作業性の悪いものとなる可能性がある。また同様に、細径のパイプに心棒を挿入し、かつその心棒の切欠に金属粉末を充填する場合、その切欠は開口断面積が小さく、開口面積に対して長さの長いものとなるから、金属粉末を充填する作業性が必ずも良くはなく、また金属粉末の充填密度が大きくばらついてしまう可能性がある。
特許文献1に記載されたヒートパイプでは、コンテナの内部で焼結金属(すなわちウイック)を形成した後にパイプを押し潰しており、その結果、焼結金属が、扁平加工されたパイプ内壁の平坦部分に挟み込まれている。そして、その扁平なコンテナの両脇の部分が蒸気流路となっている。したがって、ウイックとして機能する焼結金属は、コンテナの互いに対向する平坦部分で押し潰されて矩形断面になっており、その断面形状でいわゆる長辺に相当する部分は、コンテナの平坦部分に密着(熱的に接触)し、いわゆる短辺に相当する部分が蒸気流路に露出している。そのため、特許文献1に記載された構成では、コンテナと焼結金属との間の熱授受面積が広くなりこの部分の熱密度が小さくなるが、焼結金属のうち蒸気流路に向けて露出している箇所の面積が小さいので、作動液の蒸発が生じにくく、これが原因となって作動液の蒸発部に向けた還流が制限され、ひいてはヒートパイプ全体としての熱輸送特性が必ずも十分には高くなく、未だ改善の余地があった。
この発明は上記の技術的課題に着目してなされたものであり、焼結材をウイックとしてコンテナの内部に設けたヒートパイプであって、熱抵抗が小さく、また最大熱輸送量に優れた扁平ヒートパイプおよびその製造方法を提供することを目的とするものである。
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、厚さに対して幅が広い扁平型のコンテナの内部に、加熱されて蒸発しかつ放熱して凝縮する作動流体が封入された扁平ヒートパイプにおいて、前記コンテナは、互いに対向する平坦内壁面と、これらの平坦内壁面の左右両端部同士を繋いでいる側壁面とを有し、前記平坦内壁面のうちのいずれか一方の平坦内壁面に、多孔構造の焼結材によって断面形状が矩形となるように構成されたウイックが密着させられて配置され、かつそのウイックと前記平坦内壁面のうちの他方の平坦内壁面との間に前記作動流体の蒸気が流通可能な隙間が形成され、前記ウイックと前記左右の側壁面との間および前記隙間が、作動流体の蒸気が流通する蒸気流路とされ、前記矩形断面のウイックの外表面のうち、短辺側に二つの側面と前記他方の平坦内壁面側を向いている長辺側の一つの表面との合計三面が前記蒸気流路に露出していることを特徴とするものである。
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記ウイックは、金属製微粒子もしくは金属製極細線を素材として構成され、かつ前記一方の平坦内壁面に焼結によって固定されていることを特徴とする扁平ヒートパイプである。
請求項3の発明は、厚さに対して幅が広い扁平型のコンテナの内部に、加熱されて蒸発しかつ放熱して凝縮する作動流体が封入された扁平ヒートパイプの製造方法において、金属製の焼結材料を加熱かつ焼結して多孔構造のウイックを作製し、前記コンテナとされる円形断面のパイプの内部に、そのウイックを挿入してそのパイプの内面に沿わせて接触させ、その状態で加熱して前記ウイックをパイプの内面に焼結によって固定し、ついで前記ウイックと該ウイックに対向する前記パイプの内面とが接近する方向に前記パイプを加圧して変形させるとともに、前記ウイックと前記内面との間に作動流体の蒸気が流通できる間隙が空いた状態にまで前記パイプを押し潰して前記パイプを中空の扁平状に成形する工程を含んでいることを特徴とする方法である。
請求項4の発明は、請求項3の発明において、前記パイプを押し潰して扁平状に成形することにより前記ウイックを矩形断面の平板状に成形することを特徴とする扁平ヒートパイプの製造方法である。
請求項5の発明は、請求項3または4の発明において、前記ウイックは、前記パイプの内面と同一曲率の円弧面を有する成形型に、金属粉末もしくは金属極細線を充填して焼結することにより作製することを特徴とする扁平ヒートパイプの製造方法である。
請求項6の発明は、請求項3ないし5のいずれかの発明において、前記ウイックが内面に固定された前記パイプを中空の平板状に成形することに先立って前記ウイックが内面に固定された前記パイプを曲げ加工することを特徴とする扁平ヒートパイプの製造方法である。
この発明による扁平ヒートパイプによれば、矩形断面のウイックが、そのいわゆる長辺に相当する側の一面でコンテナの平坦内壁面に密着させられているので、コンテナとウイックとの間の熱伝達面積が広くなって、ヒートパイプの全体としての熱抵抗が小さくなる。また、矩形断面を成すウイックの表面のうち三面が蒸気流路に露出させられ、外部からの入熱があるいわゆる加熱部においてはその三面が、作動流体の蒸発面となるので、作動流体の蒸発が促進され、それに伴って液相の作動流体の還流を十分に生じさせることができ、したがって蒸気のコンテナとウイックとの間の熱伝達が良好に行われることと相まって、ヒートパイプの全体としての熱抵抗が小さく、また熱輸送能力に優れた扁平ヒートパイプとすることができる。
また、この発明による製造方法によれば、予め焼結されて所定形状に形成されたウイックをパイプの内部に挿入し、これをパイプの内面に固定するので、ウイックをパイプの内部に設ける作業が容易である。より具体的には、ウイックは、パイプの内部の僅かな一部を占める小さい断面積のものであり、しかも予め焼結されて形状の定まってものであるから、たとえパイプの内径が小さいとしても、それより更に小さい断面積のウイックをパイプの内部に挿入するのであるから、特に困難な作業が要求されることはない。また、ウイックは金属粉末や金属極細線を素材とするものであっても、パイプに挿入するのに先立って予め焼結によって作製するから、適宜な焼結用治具あるいは成形型を使用することが可能であって、密度や気孔率などのバラツキを回避もしくは抑制することができ、それに伴って得られるヒートパイプの作動流体の還流特性を向上させることができ、また製造作業性を向上させることができる。
つぎにこの発明を具体例に基づいて説明する。先ず、この発明に係る扁平ヒートパイプの構造について説明する。この発明に係るヒートパイプは、従来知られている一般的なヒートパイプと同様に、主として、作動流体の潜熱の形で熱を輸送する伝熱素子であり、したがって熱輸送を行う作動流体を封入してあるコンテナを備えている。その作動流体は、使用する温度の範囲で蒸発し、また凝縮するいわゆる凝縮性の流体であり、酸素や二酸化炭素あるいは塩素などを含まない純水や、気体の溶解量の少ない純水、あるいはアルコールもしくはアンモニアなどが採用される。また、コンテナは、その内部に作動流体を封入するとともに、その作動流体と外部の加熱源や放熱部との間での熱伝達を媒介するものであり、高い気密性や作動流体と化学的な反応を生じないことなどが要求されることにより、銅やアルミニウムもしくはその合金などの金属材料によって構成されている。特に銅を素材としてコンテナが構成されていれば、その熱伝導率が高いことにより、ヒートパイプの全体としての熱抵抗を低くすることができる。さらに、この発明に係るヒートパイプは、凝縮した作動流体を蒸発の生じる箇所に還流させるために、ウイックを備えている。ウイックは、浸透している作動流体の表面張力によって毛管力を生じさせ、かつ液相作動流体の流路を形成するためのものであり、多孔構造に構成されている。具体的には、微粉末材料あるいは多数本の極細線を焼結して構成されている。
この発明に係るヒートパイプは、上述した作動流体およびウイックを、空気などの非凝縮性の気体を脱気した状態でコンテナの内部に封入して構成されており、特に外形形状が扁平形状を呈するように構成されている。ここで扁平形状とは、幅あるいは長さに対して厚さが小さい立体形状であり、一例として厚さが2mm前後で長さが数十mmないし百数十mmもしくは数百mm、幅が十mm前後もしくは十数mm前後である。このような扁平なコンテナの内部空間にウイックが配置されており、この発明ではそのウイックは断面形状が矩形もしくは実質的に矩形に形成されている。そのウイックの厚さは、ウイックの内部空間の厚さより小さく、したがってコンテナの内部で平坦な一方の内面に設置されたウイックと、平坦な他方の内面との間に、作動流体の蒸気が流通することのできるスペースが形成されている。そのスペースの開口面積は、ヒートパイプが熱輸送を行っている状態では、ウイックとコンテナ内面との間を閉じるような液相作動流体による液膜が生じたり、液相作動流体が詰まって閉じられたりしない広さである。
上述した構成のこの発明に係る扁平ヒートパイプ1の一例を図1および図2に示してある。図1に外観を示すように、このヒートパイプ1は全体としての厚さが2mm程度の扁平形状(もしくは薄板状)を成しており、直角あるいは百数十°の角度に湾曲させられている。なお、その曲がり方向は、扁平状を成すヒートパイプ1の平坦な上面もしくは下面と平行な平面に沿う(平面内での)方向である。図1に示すヒートパイプ1は、丸パイプを所定の長さに切断し、その両端部を密封してコンテナとしたものであるため、コンテナの両端部は丸パイプの端部をテーパー状に形成するとともに圧潰し、かつ溶着させて閉じたことにより、幾分尖った形状をなしている。
図2にはこのヒートパイプ1の断面形状を模式的に示してある。なお、その断面は、幅方向に沿う平面(長手方向に対して垂直な平面)に沿って切断した場合の断面である。コンテナ2は、上下に薄い矩形状の中空扁平状に形成されており、その内部空間も同様に矩形状を成している。したがって、この内部空間は、幅の広い平坦な下側内壁面2aと、これに対向する幅の広い平坦な上側内壁面2bと、高さの低い左右の側壁面2c,2cとによって画定されている。なお、その側壁面2cは後述するようにパイプを押し潰してコンテナ2を作製した場合には、湾曲した側壁面となる。また、このコンテナ2は、一例としてその厚さは2mm程度、幅は8mm〜9mm程度であり、したがってコンテナ2の肉厚を0.4mm程度とすれば、内部空間の高さは1.2mm程度、幅は7.2mm〜8.2mm程度である。
その下側内壁面2aの中央部にウイック3が配置されている。このウイック3は、前述したように、作動流体を浸透させて毛管力を発生させ、また液相の作動流体が流動する流路を内部に形成するためのものであり、互いに連通した多数の微細孔を内部に備えた多孔構造体である。この発明に係るヒートパイプ1におけるウイック3は、コンテナ2の内部空間の高さより小さい厚さで、かつコンテナ2の内部空間の幅より狭い幅の矩形断面を成すように形成され、コンテナ2のほぼ全長に亘って配置されている。したがって、ウイック3とその左右両側の側壁面2cとの間、およびウイック3の上面と上側内壁面2bとの間にスペースが空いており、これらのスペースが作動流体蒸気の流路4となっている。言い換えれば、矩形断面を成すウイック3の外表面のうち、上面および左右の両側面の合計三面が蒸気流路4に露出している。このウイック3の寸法の一例を挙げると、高さが0.8mm〜1.0mm程度、幅が4.8mm〜6.1mm程度である。したがって、ウイック3の上面側のスペース(蒸気流路)の上下幅(高さ)は0.2mm〜0.4mm程度である。
そして、上記のコンテナ2の内部には、水やアルコールもしくはアンモニアなどの適宜な凝縮性流体が作動流体として封入されている。
つぎに上記のヒートパイプ1の製造方法について説明する。上述したように、この発明に係るヒートパイプ1のいわゆる固体構造物は、コンテナ2とウイック3であり、そのコンテナ2の素材として先ず、銅などの金属製の丸パイプ(以下、単にパイプと記す)を用意し、これを適当長さに切断するとともに、脱脂・洗浄などの処理を施しておく。そのパイプの径は、一例として挙げた上記の寸法のコンテナ2を得る場合には、6.0mm程度である。
他方、ウイック3を別工程で作製しておく。図3はその製造過程を示しており、ここに示す例では、所定の焼結材料を成形型5によって成形し、かつ焼結してウイック3を作製する。その成形型5は、図3に示すように、下型5aと上型5bとを備え、これらの上下型5a,5bを対面させて合わせることにより、所定の円弧状を成すキャビティ6が形成されるように凹部6a,6bが形成されている。そのキャビティ6の形状は、曲率中心に対して外側のいわゆる外周面が、コンテナ2の素材であるパイプの内面の曲率と等しい曲率の円弧面をなし、かつその外周面が平坦面となるように展開もしくは引き延ばした場合にほぼ矩形断面となるように構成した形状であり、したがってその外周面の周長は、図1に示すウイック3の幅とほぼ等しい長さに設定されている。また、キャビティ6は、作製するべきウイック3の長さ以上の長さに設定されている。
また、焼結材料は、ウイック3の素材として適したものであり、銅などの金属粉末や銅などの極細線などである。この焼結材料をいわゆる型閉じした上記の成形型5におけるキャビティ6に充填し、これを加熱すると焼結材料同士の融合が生じて、多孔質のウイック粗形材3Aが得られる。このウイック粗形材3Aの外形形状は上記のキャビティ6の形状に即したものとなるのに対して、空孔率(気孔率)や空孔径などは焼結材料の充填率や加熱温度あるいは焼結時の加圧力などによって変化する。この発明に係る方法では、上記のように成形型5を使用して焼結を行うので、焼結材料の充填率や加圧力の調整が容易であり、したがってウイック3の気孔率や空孔径を目標どおりに容易に設定することができる。
ついで、上記のようにして作製したウイック粗形材3Aを、脱脂・洗浄などの処理を
行って予め用意されているパイプ7の内部に挿入する。図4にその状態を示してある。ウイック粗形材3Aをパイプ7に挿入する場合、それぞれが予め形を整えられた剛性のある部材であるから、その挿入作業は容易である。その状態で、全体を加熱してウイック粗形材3Aをパイプ7の内面に焼結により密着させる。その場合、ウイック粗形材3Aの外周面の曲率は、パイプ7の内面の曲率に実質的に一致させてあるので、その外周面の全体がパイプ7の内面に密着する。そのため、この状態で加熱することによりウイック粗形材3Aの外周面のほぼ全体がパイプ7の内面に接合される。また、焼結のために特に加圧する必要はない。言い換えれば、熱抵抗となる空隙が、ウイック粗形材3Aの外周面(ウイック3)とパイプ7の内面(コンテナ2の下側内壁面2a)との間に形成されることは殆どない。
行って予め用意されているパイプ7の内部に挿入する。図4にその状態を示してある。ウイック粗形材3Aをパイプ7に挿入する場合、それぞれが予め形を整えられた剛性のある部材であるから、その挿入作業は容易である。その状態で、全体を加熱してウイック粗形材3Aをパイプ7の内面に焼結により密着させる。その場合、ウイック粗形材3Aの外周面の曲率は、パイプ7の内面の曲率に実質的に一致させてあるので、その外周面の全体がパイプ7の内面に密着する。そのため、この状態で加熱することによりウイック粗形材3Aの外周面のほぼ全体がパイプ7の内面に接合される。また、焼結のために特に加圧する必要はない。言い換えれば、熱抵抗となる空隙が、ウイック粗形材3Aの外周面(ウイック3)とパイプ7の内面(コンテナ2の下側内壁面2a)との間に形成されることは殆どない。
ウイック粗形材3Aをパイプ7の内面に密着させた後、パイプ7の内部に作動流体を封入する。その封入操作は、従来の一般的なヒートパイプを製造する場合と同様に、幾分過剰な量の作動流体をパイプ7の内部に入れた後に加熱し、その作動流体蒸気によってパイプ7内の空気などの気体を押し出してパイプ7の内部を作動流体蒸気で満たし、その状態でパイプ7の両端部を封止するいわゆる加熱追い出し法や、パイプ7の内部を真空吸引して空気などの非凝縮性ガスを排気した後、作動流体を充填する真空吸引法などによって行えばよい。
こうして実質的なヒートパイプを作製した後、そのコンテナ2に荷重を掛けて扁平形状に成形する。その場合、ウイック3がコンテナ2の下側内壁面2aの中央部に位置するように、ウイック粗形材3Aの幅方向での中心部と、これにパイプ7の直径方向で対向する位置とに図4に矢印で示す方向に圧縮荷重を掛けてパイプ7を圧潰する。このような成形加工は、適宜なプレス機を使用して行うことができるが、この発明の方法では、ウイック3の上面とコンテナ2の内面との間に、蒸気流路となるスペースが空いた状態に成形加工する必要があるので、プレス機を使用して扁平加工を行う場合、プレス機のストロークを制限することが好ましい。例えばプレス機のラムの下限位置を規制するストッパを設け、あるいはブレーキを作動させるリミットスイッチを設け、もしくはラムの機構上の下限位置が所期の圧潰寸法となるようにパイプ7をプレス機にセットする。
パイプ7を扁平に加工することにより、下側内壁面2aが平坦になり、ウイック粗形材3Aとその内面に固定されているのでパイプの変形に併せて平坦形状に変形させられる。すなわち、断面が円弧状のウイック粗形材3Aが、矩形断面のウイック3に成形され、図1に示す形状になる。なお、図1に示すように湾曲した形状とする場合には、パイプ7に扁平加工を施す以前に曲げ加工を施す。被加工材の断面形状が円形であって、容易に曲げ加工することができるからである。
上述したこの発明に係る扁平ヒートパイプ1は、冷却や加熱のための熱輸送(熱伝達)に使用され、長手方向の一方の端部を高熱部(加熱部)に配置し、他方の端部を高熱部より低温の冷却部(放熱部)に配置する。コンテナ2の内部には空気などの非凝縮性のガスが排気された状態で凝縮性の作動流体が封入されているので、温度差が生じると、高温側で作動流体の蒸発が生じ、その蒸気が、高熱側に対して圧力の低い低温側に流動する。そして、その低温部分で作動流体が放熱して凝縮する。すなわち、作動流体がその蒸発潜熱の形で熱を輸送する。
外部からの熱は、主としてコンテナ2を介してウイック3に伝達され、そのウイック3に浸透している作動流体がその熱によって蒸発する。したがってウイック3の表面が作動流体の蒸発部位となる。上述したこの発明に係るヒートパイプ1は、ウイック3が矩形断面に成形され、しかもその三面が蒸気流路4に露出した構成になっているので、作動流体の蒸発が生じるいわゆる蒸発面の面積がウイック3の体積に対して広くなる。そのため、作動流体の蒸発あるいは作動流体に対する熱の伝達が促進され、作動流体による熱輸送量が多く、熱輸送特性あるいは熱輸送能力に優れたヒートパイプとすることができる。また、この発明に係るヒートパイプ1では、ウイック3の上面とコンテナ2の上側内壁面との間にスペースが空けられていてこの部分も作動流体蒸気の流路4となっているので、作動流体蒸気の流動が促進され、この点においても熱輸送特性あるいは熱輸送能力を良好なものとすることができる。
つぎに、この発明の実施例と比較例、ならびにそれぞれの熱輸送特性の測定結果とを示す。
図1および図2に示す形状の扁平ヒートパイプを上述した方法により作成し、その熱抵抗およびドラアウト温度を測定した。ヒートパイプの長さは160mm、厚さは2mm、コンテナの肉厚は0.4mm、幅は6mmのパイプを扁平加工して8.7mmとした。曲げ角度は135°とした。作動流体は水を使用した。ウイックは銅粉末を焼結し、高さ0.8mmないし1.0mm程度、幅は4.8mm〜6.1mmとした。さらに、ウイックの気孔率は65%、空孔径は60μmとした。
そのヒートパイプの一方の端部を、電気ヒータの加熱面(面積:20mm×20mm)に接触させ、また他方の端部を水を冷却媒体とした冷却面(面積:50mm×50mm)に設置し、加熱面の温度Th(℃)、加熱面から熱を受けて作動流体の蒸発が生じる端部(蒸発部)の温度Te(℃)、冷却面に接している他方の端部(凝縮部)の温度Tc(℃)、蒸発部と凝縮部との間の部分(断熱部)の温度Ta(℃)を熱電対によって測定し、さらに入熱量Q(W)、ドライアウトが生じる最大熱量Qmax (W)を求め、下記の式に基づいて熱抵抗Rtを求めた。結果を図5に符号Aを付した線で示してある。
Rt=(Th−Tc)/Q(℃/W)
Rt=(Th−Tc)/Q(℃/W)
ウイックの断面形状を外側輪郭線が円弧状(もしくはドーム状)を成すいわゆる半楕円形状とし、頂部とコンテナの上側内壁面との間に、液相作動流体の液膜(もしくはメニスカス)ができる程度に狭い隙間を形成した。その断面形状を図6に模式的に示してあり、符号2がコンテナを示し、符号3がウイックを示している。その他の形状、寸法ならびに測定条件は実施例1と同様にし、熱抵抗および熱輸送可能な最大熱量を求めた。結果を図5に符号Bを付した線で示してある。
図5に示す結果から明らかなように、この発明に係るヒートパイプによれば、熱抵抗が0.50(℃/W)程度もしくはそれより小さくなり、比較例のヒートパイプよりも熱抵抗が小さく、熱輸送特性に優れていることが認められた。また、比較例のヒートパイプによる最大熱輸送量が40(W)程度であるのに対して、この発明によるヒートパイプでは43(W)程度の最大熱輸送量となり、熱輸送量の点でも優れていることが認められた。
上記の実施例1で示した構成のヒートパイプを複数本用意し、入熱量を40(W)として各部の温度Th,Te,Ta,Tcを測定し、かつ熱抵抗Rtを求めた。結果を図7の図表に「本発明例」として示してある。
上記の比較例1で示した構成のヒートパイプを複数本用意し、入熱量を40(W)として各部の温度Th,Te,Ta,Tcを測定し、かつ熱抵抗Rtを求めた。結果を図7の図表に「比較例」として示してある。
図7に示す結果から知られるように、この発明に係るヒートパイプの熱抵抗は平均で0.262(℃/W)となっており、比較例のヒートパイプの熱抵抗が平均で0.310(℃/W)となっているのに比較して、熱抵抗が0.05(℃/W)程度小さく,熱輸送特性もしくは熱輸送能力に優れていることが認められた。
なお、この発明は上述した具体例に限定されないのであって、ウイックはコンテナの平坦内壁面に密着させられ、その状態で三面が蒸気流路に露出していればよく、したがって下側内壁面の中央部から左右いずれかに偏って配置されていてもよい。また、この発明に係るヒートパイプにおけるウイックは、予め断面が円弧形状に形成された粗形材を矩形断面に変形させたもの以外に、平板状の粗形材をパイプの内面に沿うように湾曲させ、これをパイプの扁平加工に伴って矩形断面に変形させたものであってもよい。
1…扁平ヒートパイプ、 2…コンテナ、 2a…下側内壁面、 2b…上側内壁面、 2c…側壁面、 3…ウイック、 3A…ウイック粗形材、 4…蒸気流路、 5…成形型、 5a…下型、 5b…上型、 6…キャビティ、 6a,6b…凹部、 3A…ウイック粗形材、 7…パイプ。
Claims (6)
- 厚さに対して幅が広い扁平型のコンテナの内部に、加熱されて蒸発しかつ放熱して凝縮する作動流体が封入された扁平ヒートパイプにおいて、
前記コンテナは、互いに対向する平坦内壁面と、これらの平坦内壁面の左右両端部同士を繋いでいる側壁面とを有し、
前記平坦内壁面のうちのいずれか一方の平坦内壁面に、多孔構造の焼結材によって断面形状が矩形となるように構成されたウイックが密着させられて配置され、かつ
そのウイックと前記平坦内壁面のうちの他方の平坦内壁面との間に前記作動流体の蒸気が流通可能な隙間が形成され、
前記ウイックと前記左右の側壁面との間および前記隙間が、作動流体の蒸気が流通する蒸気流路とされ、
前記矩形断面のウイックの外表面のうち、短辺側に二つの側面と前記他方の平坦内壁面側を向いている長辺側の一つの表面との合計三面が前記蒸気流路に露出している
ことを特徴とする扁平ヒートパイプ。 - 前記ウイックは、金属製微粒子もしくは金属製極細線を素材として構成され、かつ前記一方の平坦内壁面に焼結によって固定されていることを特徴とする請求項1に記載の扁平ヒートパイプ。
- 厚さに対して幅が広い扁平型のコンテナの内部に、加熱されて蒸発しかつ放熱して凝縮する作動流体が封入された扁平ヒートパイプの製造方法において、
金属製の焼結材料を加熱かつ焼結して多孔構造のウイックを作製し、
前記コンテナとされる円形断面のパイプの内部に、そのウイックを挿入してそのパイプの内面に沿わせて接触させ、
その状態で加熱して前記ウイックをパイプの内面に焼結によって固定し、
ついで前記ウイックと該ウイックに対向する前記パイプの内面とが接近する方向に前記パイプを加圧して変形させるとともに、前記ウイックと前記内面との間に作動流体の蒸気が流通できる間隙が空いた状態にまで前記パイプを押し潰して前記パイプを中空の扁平状に成形する
工程を含んでいることを特徴とする扁平ヒートパイプの製造方法。 - 前記パイプを押し潰して扁平状に成形することにより前記ウイックを矩形断面の平板状に成形することを特徴とする請求項3に記載の扁平ヒートパイプの製造方法。
- 前記ウイックは、前記パイプの内面と同一曲率の円弧面を有する成形型に、金属粉末もしくは金属極細線を充填して焼結することにより作製することを特徴とする請求項3または4に記載の扁平ヒートパイプの製造方法。
- 前記ウイックが内面に固定された前記パイプを中空の平板状に成形することに先立って前記ウイックが内面に固定された前記パイプを曲げ加工することを特徴とする請求項3ないし5のいずれかに記載の扁平ヒートパイプの製造方法。
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