JP2013122164A - 地域防災システム - Google Patents
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Abstract
【解決手段】盛土により円錐台形状に造成されて消波堤として機能する大規模なマウンド1を、津波の襲来が想定される地域の海岸線に沿って間隔をおいて配列して多数設置する。あるいは、盛土により円錐台形状に造成されて災害発生時に避難場所として利用可能な大規模なマウンド2を、津波等の災害による被害が想定される地域に対して間隔をおいて分散配置して多数設置する。沿海地域に対しては消波用のマウンド1と避難場所としてのマウンド2の双方を並設することが好ましい。マウンドの内部に地下空洞部やそこに通じる通路を設けたり、マウンドの頂部に塔状構造物を設けるこことも考えられる。
【選択図】図1
Description
また、防波堤や防潮堤以外の津波対策としては、各種の消波堤や消波装置、たとえば特許文献1に示されるように海上に係留した浮体によって消波して波のエネルギーを低減させるという浮消波堤を沖合に設置することも考えられる。
また、特許文献1に示されるような浮消波堤も、大規模な津波に対しては消波効果は殆ど期待できるものではない。
あるいは、マウンドの頂部に災害時及び/又は通常時に各種用途に利用可能な塔状構造物、たとえば津波避難ビル、オフィス、集合住宅、ホテル等の多層ないし高層建物を設けておくと、さらに有効に活用可能である。
本実施形態の地域防災システムは、たとえば図1に示すような大地震により津波被害が想定される沿海地域を対象として、その地域の海岸線に沿って消波堤として機能する多数のマウンド1を配列するとともに、地域内の各所に災害発生時に避難場所として利用可能な人工の高台としての多数のマウンド2を分散設置したことを主眼とする。
これらのマウンド1は土木工事による盛土によって円錐台形状をなすように施工されたもので、(a)に示すように全体として3列をなすように千鳥配置され、縦横に隣接するものどうしの相互間隔がたとえば50〜100m程度とされ、それぞれのマウンド1の大きさはたとえば底部直径が50m程度、頂部直径が10m程度、高さは10m程度、周面の傾斜角度(法面勾配)は25〜30°程度とされた大規模なものである。
なお、マウンド1の法面勾配は擁壁を必要としない範囲に設定することが好ましく、それによりマウンド1の造成工事を十分に簡略にかつ安価に施工することが可能である。
しかも、各マウンド1を密接させることなく間隔をおいて配列しているので、各マウンド1間には迂回路とはなるものの平常時に支障なく使用可能な平坦な通路や道路を確保できるものである。したがって通常のように長大な防潮堤を連続的に設けることに代えて本実施形態のマウンド群を消波堤として設けることにより、平常時においても海岸部と地域内部(市街地)とが分断されてしまう不便は生じないし、防潮堤を設ける場合には要所に通路を確保するために設ける必要のある格別の開口部やそれを開閉するための扉を設ける必要もない。
避難場所としてのマウンド2も、上記の消波堤としてのマウンド1と同様に盛土により円錐台形状をなす人工の高台として設置されるものであるが、その設置パターンはたとえば図3に示すように縦横に間隔をおいて格子状に配置され、かつそれぞれのマウンド2は上記の消波堤としてのマウンド1よりもさらに大規模とされていて、たとえば底部直径が110m程度、頂部直径が50m程度、高さが15m程度とされている。
そして、図4に示すように、周面には非常時に避難道路となり平常時には管理道路として使用される道路4や、非常時に避難通路となり平常時には遊歩道としても使用可能な階段5が頂部に通じるように設けられている。
特に、太陽光や風力による発電設備等の自立分散型エネルギー供給施設を設けて、このマウンド2全体をスマートシティの一つのタイプとして活用できるようにしておくことにより、マウンド2単位で相当数の避難者が独立かつ自立的に相当期間の避難生活を営めるようにしておくことが好ましい。
その場合、マウンド2全体が平常時においても好ましい景観と環境を提供できることが好ましく、そのためにはたとえば図4に示す具体例のようにマウンド2の周面に段部3を設けたり、周面全体を植樹や植栽により緑化したものとすることが考えられるが、全体の意匠や仕上げは平常時の用途に応じて、かつ本来の目的である避難場所としての機能を損なわない範囲で、任意に設計すれば良い。
特に、自然の高台や津波に対して安全な中高層建物がない地域に対して、上記のように人工の高台としての多数のマウンド2をたとえば500m程度の間隔で縦横に設置しておけば、個々のマウンド2のカバーエリアは500m×500m=250,000m2となり、地域内の全域からいずれかのマウンド2への避難距離は最大でもわずか350m程度となることから、その範囲内に居住する多くの住人が大地震発生直後にいずれかのマウンド2まで迅速に避難することが可能であり、その後に襲来する津波による人的被害を十分に軽減することが可能である。
特に、従来のように単なる防波堤や防潮堤の高さに頼る津波対策では想定規模を超える津波に対しては殆ど無力であるが、本発明のように消波用のマウンド1を間隔をおいて配列することにより津波を完全に堰き止めることはできないものの津波エネルギーを有効に低減可能であるし、想定規模を超える津波に対しても容易に破壊されることはないので粘り強く消波機能を発揮し得るものとなる。
また、避難場所としてのマウンド2を多数分散配置しておくことにより、津波はもとより洪水その他の災害に対して迅速な被害が可能であって人的被害を軽減できるし、各マウンド2を多数の被災者の避難生活の場として長期にわたって有効に活用可能であるから、特に多数の被災者が発生することが想定される都市域における地域防災システムとして極めて有効である。
そのようにすれば、マウンド1,2の造成工事を瓦礫処理・処分を兼ねて実施することが可能であるし、マウンド1,2の造成スペースを瓦礫処分スペースとして利用可能である(つまり、マウンド1,2を造成するべき位置を瓦礫処分場としてそこに瓦礫を山積みすれば良い)ので合理的である。
また、上記実施形態において避難場所としてのマウンド2の具体例として例示した図4に示す構成は、消波堤として設置するマウンド1の構成例としても同様に適用可能であることはいうまでもなく、可能であれば消波堤としてのマウンド1も平常時には任意の用途に活用するべく必要に応じてそのための施設や設備を整備しておけば良い。
その場合、マウンド群の外側に防波堤や防潮堤を設ければ、津波が防波堤や防潮堤を越流しても、また防波堤や防潮堤が破壊され倒壊されたとしても、さらにマウンド群による消波効果により津波被害を軽減し得る。また、マウンド群の内側に防潮堤を設ければ、津波はマウンド群によりエネルギーが弱められてから防潮堤に到達するので、その防潮堤の簡略化を図ることもできる。
このような地下空洞部10を設ける場合には、たとえばシールド性能の高い鉄筋コンクリート造の地下外壁11を原地盤上に先行施工して、その外側に盛土によるマウンド2を造成すれば良い。それにより、盛土工事に要する手間とコストを軽減することが可能であるし、そのように施工される地下空洞部10は実質的に原地盤の地盤上に設けられるものであるから地下水の影響を受け難いというメリットがある。
なお、図示例の地下空洞部10は水平断面形状を円形とし、かつその面積をマウンド2の頂部と同等にし、底部を原地盤のレベルとしているが、地下空洞部10の形状や規模、底部の深度その他の仕様はマウンド2全体の形状や規模も考慮して任意に設定すれば良い。勿論、地下空洞部10の上部には屋根部12を架設してその上部(つまりマウンド2の頂部)を上記実施形態の場合と同様に利用可能とすれば良いし、マウンド2の周面も上記実施形態の場合と同様に利用可能である。
なお、(a)あるいは(b)に示したような地下空洞部10を設ける場合においては、必要であれば(b)に示しているようにマウンド2の底部から地下空洞部10に通じる通路14を設けておくと良く、その通路14には津波襲来時あるいは洪水発生時に地下空洞部10への浸水を防止するための防潮機能を備えた設備を設けておくと良い。
なお、この場合、塔状構造物15の平面形状や規模、高さ、構造は任意であって、図示例のような多層ないし高層の建物としてのみならず文字どおり塔(タワー)として設けることでも良い。また、必ずしも図示例のように地下空洞部10と塔状構造物15の双方を並設することはなく、地下空洞部10を省略して塔状構造物15のみを設けることでも良いが、いずれにしても塔状構造物15は想定される災害に対して耐え得る構造としておく必要があることはもとより、その屋上面は上記実施形態におけるマウンド2の頂部と同様に避難広場等として利用可能にしておくと良い。
2 マウンド(避難場所)
3 段部
4 道路
5 階段
10 地下空洞部
11 地下外壁
12 屋根部
13 床部
14 通路
15 塔状構造物
Claims (6)
- 盛土により円錐台形状に造成されて消波堤として機能する大規模なマウンドを、津波の襲来が想定される地域の海岸線に沿って間隔をおいて配列して多数設置してなることを特徴とする地域防災システム。
- 盛土により円錐台形状に造成されて災害発生時に避難場所として利用可能な大規模なマウンドを、津波等の災害による被害が想定される地域に対して間隔をおいて分散配置して多数設置してなることを特徴とする地域防災システム。
- 盛土により円錐台形状に造成されて消波堤として機能する大規模なマウンドを、津波の襲来が想定される地域の海岸線に沿って間隔をおいて配列して多数設置するとともに、
盛土により円錐台形状に造成されて災害発生時に避難場所として利用可能な大規模なマウンドを、津波等の災害による被害が想定される地域に対して間隔をおいて分散配置して多数設置してなることを特徴とする地域防災システム。 - 請求項1,2または3記載の地域防災システムであって、
前記マウンドの内部に、災害時及び/又は通常時に利用可能な諸施設を設置するための地下空洞部を設けてなることを特徴とする地域防災システム。 - 請求項4記載の地域防災システムであって、
前記マウンドの底部から前記地下空洞部に通じる通路を設けてなることを特徴とする地域防災システム。 - 請求項1,2,3,4または5記載の地域防災システムであって、
前記マウンドの頂部に、災害時及び/又は通常時に利用可能な塔状構造物を設けてなることを特徴とする地域防災システム。
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