以下、図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態の業務分析システムの構成を示すブロック図である。
本実施形態の業務分析システムは、作業分析サーバ100、位置情報管理サーバ110及び複数のセンサ120を備える。
作業分析サーバ100は、位置情報管理サーバ110から取得した分析対象領域内の分析対象者の位置情報に基づいて、当該分析対象者の行動を分析することによって、例えば、当該分析対象者が行った作業を推定し、さらに、当該分析対象者の担当業務等を推定する。
ここで、「作業」及び「業務」について説明する。本実施形態の説明において、「業務」とは、各作業員の担当業務、言い換えると、各作業員に与えられた役割を意味する。業務の例をいくつか示すとすれば、物品を運搬する業務、物品を加工する業務、又は作業員を監督する業務等である。各作業員の業務には、明示的に与えられるもの、暗黙のうちに与えられるもの、作業員が自発的に担うもの、比較的長期間にわたって与えられるもの、臨時に与えられるもの、等があり得る。すなわち、各作業員の業務は、明確である場合もあるが、そうではない場合もある。「作業」は、各作業員が業務を遂行するために行う動作であり、例えば、監視対象領域内の移動又は物品の加工作業等である。
また、ここで、分析対象領域とは、本実施形態の業務分析システムによる分析の対象の領域であり、例えば工場、店舗又は倉庫等の施設である。分析対象者は例えば工場、店舗又は倉庫等における作業員である。本発明は作業員以外の人物にも適用することができるが、以下の説明では、分析対象者を例示的に作業員と記載する。また、本実施形態では分析対象領域の典型例として屋内の工場などの作業場を例示するが、屋外を分析対象とする場合にも本発明を適用することができる。
作業員の行動を分析するために、作業分析サーバ100は、業務分析可視化部101、業務情報集計部102、業務判別部103、業務分類部104、滞留箇所推定部105、作業推定部106、作業履歴データベース(DB)107、業務特徴DB108及び作業場レイアウトDB109を備える。これらの各部が実行する処理、各DBに格納されるデータ、及び、これらを実現するためのハードウェア構成については後述する。
位置情報管理サーバ110は、複数のセンサ120から作業員の位置情報を取得し、それを蓄積し、蓄積した位置情報を作業分析サーバ100に渡す。これらの処理のために、位置情報管理サーバ110は、位置情報収集部111及び位置情報DB112を備える。位置情報収集部111は、センサ120から位置情報を含むデータを取得し、必要があれば座標系の変換等を行った後、そのデータを位置情報DB112に格納する。位置情報DB112は、位置情報収集部111によって格納されたデータを蓄積して作られるデータベースである。
センサ120は、分析対象領域内の作業員の位置を計測するために利用できる情報を収集する装置である限り、どのようなものであってもよい。例えば、作業員が測位のための電波又は音波(以下、測位信号とも記載する)を発信する端末(図示省略)を携帯する場合、センサ120は、分析対象領域に設置された、電波又は音波の計測器であってもよい。その場合、センサ120は、受信した電波又は音波の減衰の程度から、当該センサと発信機(すなわちそれを携帯する作業員)との距離を推定してもよい。各センサの設置位置が既知であれば、複数のセンサ120によって推定された距離に基づいて、作業員の位置を推定することができる。この推定は、センサ120自身が行ってもよいし、センサ120から情報を取得した位置情報管理サーバ110が行ってもよい。センサ120は例えば無線LANの基地局であってもよく、その場合、作業員は無線LANに接続される端末を携帯する。
上記の例では、作業員が携帯する端末からの測位信号を、環境側に設置されたセンサ120が受信することによって、作業員の位置が計測される。これに対して、作業員がセンサ120を含む端末を携帯し、そのセンサ120が環境側に設置された装置からの測位信号を受信することによって、作業員の位置を計測してもよい。その場合は、作業員が携帯する端末が取得した位置情報を、環境側の装置を経由して(又は直接)位置情報管理サーバに送信する必要がある。
あるいは、センサ120は監視カメラであってもよい。その場合、監視カメラによって撮影された画像を公知の方法で処理することによって、作業員の位置を計測することができる。
作業員の行動を高精度に分析するために、センサ120によって取得される作業員の位置情報の精度は高いことが望ましい。しかし、通常、高精度の位置情報を取得するためには、大量のセンサ120を設置する必要が生じるなど、高いコストが発生する。本発明では、現実的なコストで作業員の行動を分析するために、位置情報がある程度の誤差を含んでいることが前提となる。
図2は、本発明の第1の実施形態の業務分析システムのハードウェア構成を示すブロック図である。
本実施形態の業務分析システムを構成する作業分析サーバ100は、相互に接続されたプロセッサ201、メインメモリ202、入力装置203、出力装置204、インターフェース(I/F)205及び記憶装置206を備える計算機である。
プロセッサ201は、メインメモリ202に格納されたプログラムを実行する。
メインメモリ202は、例えば半導体メモリであり、プロセッサ201によって実行されるプログラム及びプロセッサ201によって参照されるデータを格納する。具体的には、記憶装置206に格納されたプログラム及びデータの少なくとも一部が、必要に応じてメインメモリ202にコピーされる。
入力装置203は、業務分析システムの管理者(すなわち、作業分析サーバ100を使用して作業員の行動を分析する者)からの入力を受ける。入力装置203は、例えばキーボード及びマウス等を含んでもよい。
出力装置204は、例えば画像表示装置であり、その一例は液晶表示装置である。出力装置204によって表示される画面の例については後述する。
I/F205は、ネットワーク220Aに接続され、位置情報管理サーバ110と通信するインターフェースである。
記憶装置206は、例えばハードディスク装置(HDD)又はフラッシュメモリのような不揮発性の記憶装置である。本実施形態の記憶装置206には、少なくとも、業務分析可視化部101、業務情報集計部102、業務判別部103、業務分類部104、滞留箇所推定部105、作業推定部106、作業履歴DB107、業務特徴DB108及び作業場レイアウトDB109が格納される。
業務分析可視化部101、業務情報集計部102、業務判別部103、業務分類部104、滞留箇所推定部105及び作業推定部106は、プロセッサ201によって実行されるプログラムである。以下の説明においてこれらの各部が実行する処理は、実際にはプロセッサ201によって実行される。
本実施形態の業務分析システムを構成する位置情報管理サーバ110は、相互に接続されたI/F211、プロセッサ212、メインメモリ213、I/F214及び記憶装置215を備える計算機である。
I/F211は、ネットワーク220Aに接続され、作業分析サーバ100と通信するインターフェースである。
プロセッサ212は、メインメモリ213に格納されたプログラムを実行する。
メインメモリ213は、例えば半導体メモリであり、プロセッサ212によって実行されるプログラム及びプロセッサ212によって参照されるデータを格納する。具体的には、記憶装置215に格納されたプログラム及びデータの少なくとも一部が、必要に応じてメインメモリ213にコピーされる。
I/F214は、ネットワーク220Bに接続され、各センサ120と通信するインターフェースである。
記憶装置215は、例えばハードディスク装置(HDD)又はフラッシュメモリのような不揮発性の記憶装置である。本実施形態の記憶装置215には、少なくとも、位置情報収集部111及び位置情報DB112が格納される。
位置情報収集部111は、プロセッサ212によって実行されるプログラムである。以下の説明においてこれらの各部が実行する処理は、実際にはプロセッサ212によって実行される。
なお、図2では省略されているが、位置情報管理サーバ110は、作業分析サーバ100と同様に、入力装置及び出力装置を備えてもよい。
ネットワーク220Aは、作業分析サーバ100と位置情報管理サーバ110との通信を媒介するものであり、例えば、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)、公衆無線網、又はいわゆるインターネット等、またはそれらの組み合わせであってもよい。
ネットワーク220Bは、位置情報管理サーバ110と各センサ120の通信を媒介するものであり、例えば、有線又は無線のLANであってもよい。
図2には二つのネットワーク220A及び220Bを示したが、これらは同一のネットワークであってもよい。その場合、位置情報管理サーバ110は一つのI/Fのみを備えてもよい。
図2に示したハードウェア構成は典型的な例に過ぎず、本実施形態は、これ以外のハードウェアによって実現することもできる。例えば、作業分析サーバ100と位置情報管理サーバ110が一つの計算機として実装されてもよい。具体的には、例えば作業分析サーバ100が位置情報管理サーバ110を兼ねる場合、I/F205がネットワーク220Bに接続され、記憶装置206に位置情報収集部111及び位置情報DBが格納される。
あるいは、作業分析サーバ100と位置情報管理サーバ110がネットワーク220Aを介して接続されなくてもよい。後述するように、本実施形態の作業分析サーバ100が実行する位置情報の分析処理は必ずしも即時性を要求されない。このため、例えば位置情報管理サーバ110が収集した位置情報を、架け替え可能な記憶媒体(例えば光ディスク又はフラッシュメモリ等)に書き込み、その記憶媒体を作業分析サーバ100の設置場所まで運搬して、書き込まれた情報を作業分析サーバ100の記憶装置206にコピーしてもよい。その場合、I/F205及び211は、記憶媒体への書き込み及び読み出しのためのインターフェース又はドライブ装置等によって置き換えられる。
図3は、本発明の第1の実施形態の業務分析システムの動作の全体を示す説明図である。
本実施形態の業務分析システムは、最初に、位置情報収集処理(ステップ301)を実行する。具体的には、分析対象領域311に設置されたセンサ120が、作業員が携帯する端末312の位置(すなわち当該作業員の位置)を計測し、計測された位置情報を位置情報管理サーバ110が取得して位置情報DB112に格納する。なお、図3には一つの端末312のみを示すが、通常は複数の作業員が携帯する複数の端末312の位置が計測される。
次に、業務分析システムは、位置情報分析処理(ステップ302)を実行する。具体的には、作業分析サーバ100が位置情報管理サーバ110の位置情報DB112に格納された位置情報を分析して、その結果を業務分析システムのユーザ(すなわち、作業員たちの行動の分析結果を利用する者)に出力する。
なお、センサ120によって取得された位置情報をすぐに分析することは必ずしも要求されない。例えば、位置情報収集処理(ステップ301)によって一日分の位置情報が収集され、その位置情報を分析する処理(ステップ302)がその翌日以降に実行されてもよいし、位置情報収集処理(ステップ301)によって一月分の位置情報が収集され、その位置情報を分析する処理(ステップ302)がその翌月以降に実行されてもよい。
いずれの場合であっても、作業分析サーバ100は、位置情報管理サーバ110の位置情報DB112に格納された位置情報の少なくとも一部を取得して記憶装置206に格納する。具体的には、作業分析サーバ100は、位置情報DB112全体の複製を記憶装置206に格納してもよいし、位置情報DB112内の位置情報のうち業務の分析のために必要な部分のみを記憶装置206に格納してもよい。
図4は、本発明の第1の実施形態において実行される位置情報収集処理(ステップ301)のシーケンス図である。
各センサ120は、所定のタイミングで(例えば定期的に)センシングを行い、その結果を含む位置情報を位置情報管理サーバ110に送信する(ステップ401〜403)。送信される位置情報は、センシング結果に加えて、センシングを行ったセンサ120の識別子、センシングの対象(すなわち測位対象)である端末312の識別子、及び、センシングを行った時刻等を含んでもよい。例えば端末312が自らの識別子を含む測位信号を送信することで、センサ120は測位対象の端末312を識別することができる。
センサ120から送信されるセンシング結果は、センシングによって得られたデータそのもの(例えば受信した測位信号の強度等)であってもよいし、それに基づいて計算された端末312の位置を示す情報(例えば座標値)であってもよい。センシングによって得られたデータそのものが送信される場合、位置情報管理サーバ110は、複数のセンサ120から取得したセンシング結果に基づいて、端末312の位置を計算し、計算の結果を位置情報DB112に格納する。
センサ120は、測位信号を受信するたびに位置情報を送信してもよいが、複数の測位信号に基づく複数のセンシング結果を含む測位情報をまとめて送信してもよい。
図5は、本発明の第1の実施形態の位置情報DB112に格納される位置情報の説明図である。
位置情報DB112に格納される各レコード500は、作業員ID501、X座標502、Y座標503及び時刻504を含む。
作業員ID601は、分析対象者を一意に識別する情報であり、例えば、分析対象者が携帯する端末312の識別情報であってもよいし、その端末312の識別情報に対応付けられた作業員の識別情報(氏名等)であってもよい。
X座標502及びY座標503は、分析対象領域内における端末312の(すなわちそれを携帯する作業員の)位置を、二次元直交座標系中の座標値として特定する情報である。X座標502及びY座標503にさらにZ座標を加えて三次元の位置情報を扱ってもよい。これらの座標値は一例であり、必ずしも直交座標系を用いなくてもよい。例えば、X座標502及びY座標503としてそれぞれ経度及び緯度を示す情報が含まれてもよい。さらに、必要があれば高度を示す情報が含まれてもよい。例えば分析対象領域内のフロアごとに二次元の座標系が管理される場合、各レコード500はさらにフロアを特定する情報を含んでもよい。
時刻504は、測位が行われた時刻(言い換えると、センサが測位信号を受信した時刻)を示す。時刻504は、必要であれば、測位が行われた年月日を示す情報を含んでもよい。
図6は、本発明の第1の実施形態の作業分析サーバ100が実行する位置情報分析処理(ステップ302)を示すフローチャートである。
最初に、作業分析サーバ100は、業務特徴抽出処理(ステップ601)を実行する。これによって、蓄積された位置情報が作業履歴に変換され、さらに、その作業履歴の集合に基づいて業務特徴DB108が構築される。この処理の詳細については、図7等を参照して後述する。
次に、作業分析サーバ100は、業務集計処理(ステップ602)を実行する。これによって分析対象領域における業務状況が把握され、利用者に提示される。この処理の詳細については、図14等を参照して後述する。
図7は、本発明の第1の実施形態の作業分析サーバ100が実行する業務特徴抽出処理(ステップ601)を示すフローチャートである。
業務特徴抽出処理が開始されると、最初に、滞留箇所推定部105が滞留箇所推定処理(ステップ701)を実行する。具体的には、滞留箇所推定部105は、位置情報DBに蓄積された位置情報に基づいて、作業員が滞留した箇所を推定する。この処理の詳細については、図8を参照して後述する。
次に、作業推定部106が作業推定処理(ステップ702)を実行する。具体的には、作業推定部106は、作業員の滞留箇所の推定結果と、作業場レイアウトDB109に格納された作業場レイアウトとを比較することによって、作業員が行った作業の内容を推定し、その結果を作業履歴DB107に格納する。この処理の詳細については、図9等を参照して後述する。なお、作業場レイアウトDB109には、図10に示すように、作業場のレイアウトを示す情報(具体的には、作業場におけるゾーンの形状の情報及び当該ゾーンにおける作業分類を示すコード値等)が記録されている。
次に、業務分類部104が業務確率分布算定処理(ステップ703)を実行する。具体的には、業務分類部104は、作業履歴DB107に格納された履歴情報を分類して、業務ごとの確率モデルを構築し、その結果を業務特徴DBに格納する。この処理の詳細については、図12を参照して後述する。
以下、上記の各ステップについて説明する。
図8は、本発明の第1の実施形態の滞留箇所推定部105が実行する滞留箇所推定処理(ステップ701)の概念の説明図である。
図8には、分析対象領域800における、各時刻における作業員の位置情報801を示す。長方形で表示される分析対象領域800は、例えば分析対象のフロアの平面図であり、白円で表示される各時刻における位置情報801は、その平面図における作業員の各時刻における位置(座標)を示す。図8には、一例として、作業員が二つの作業箇所を行き来し、それぞれの作業箇所で作業を行う場合の位置情報を示す。ここで作業箇所とは、作業員が作業を行うために滞留する場所である。
仮に位置情報801に誤差がなければ、図8の白円は、各作業箇所及びそれらを結ぶ作業員の移動経路の上に集中するはずである。しかし、既に説明したように、本実施形態で得られる位置情報801は、比較的大きい誤差を含む場合がある。例えば、電波又は音波による測位信号は、測位対象の作業員の周囲の状況(例えば他の作業員が周囲にいるかどうか等)の影響を受ける。このため、実際の位置情報801は測位対象の周囲の状況の変化に応じて、例えば図8に示すようにばらつく。滞留箇所推定処理(ステップ701)は、このように誤差を含んだ位置情報から、作業員の実際の滞留箇所を推定する処理である。
具体的には、滞留箇所推定部105は、ばらつきのある位置情報801が、各作業箇所を中心とする正規分布に従って得られるとの仮定に基づいて、滞留箇所を推定する。図8の例では、一点鎖線の楕円802が、それぞれの正規分布に属する位置情報801のおおよその範囲を示し、黒いひし形のシンボル803がそれぞれの正規分布の中心を示す。図8の例は、二つの一点鎖線の楕円802A及び802B、並びに、それぞれに対応する二つの黒いひし形のシンボル803A及び803Bを示す。以下の説明では、一点鎖線の楕円802A及び802Bに対応する正規分布をそれぞれ正規分布802A及び802Bとも記載し、黒いひし形のシンボル803A及び803Bに対応する正規分布の中心をそれぞれ中心803A及び803Bとも記載する。
これらの正規分布を推定するために、例えば、各位置情報801に潜在的な変数が付与されていると仮定することによって、公知のEM(Expectation-Maximization)アルゴリズムを用いることができる。この潜在変数は、各位置情報801がどの正規分布から生成されたか(図8の例では各位置情報801が正規分布802A又は802Bのいずれに属するか)を表現する変数である。したがって、この潜在変数の期待値を計算することによって、各位置情報801がどの正規分布から生成されたかを推定することができる。後述するように、各位置情報801がどの正規分布から生成されたかが推定されると、それに基づいて、各位置情報801が、作業員がどの作業箇所に滞留していたときに取得されたものであるか、を推定することができる(図9及び図10参照)。
公知のEMアルゴリズムを用いる場合、滞留箇所推定部105は、最初にそれぞれの正規分布のパラメータをランダムに初期化する。次に、滞留箇所推定部105は、そのパラメータを用いて上記の潜在変数の期待値を計算する。次に、滞留箇所推定部105は、その潜在変数の期待値が正しいと仮定した条件下での最適な正規分布のパラメータを計算する。次に、滞留箇所推定部105は、計算された最適なパラメータを用いて、潜在変数の期待値を再計算する。次に、滞留箇所推定部105は、再計算された潜在変数の期待値が正しいと仮定した条件下での最適な正規分布のパラメータを再計算する。このように、滞留箇所推定部105は、正規分布のパラメータを用いた潜在変数の期待値の計算と、潜在変数の期待値に基づく正規分布のパラメータの計算と、を計算結果が収束するまで交互に繰り返す。これによって正規分布が推定され、その正規分布に基づいて、各位置情報801が、作業員がどの作業箇所に滞留していたときに取得されたものであるか、を推定することができる。
なお、滞留箇所推定処理(ステップ701)では、さらに正規分布間の遷移がマルコフモデルで表現できるとした公知の隠れマルコフモデルを用いることもできる。隠れマルコフモデルを用いた場合であっても、同様に公知のEMアルゴリズムが適用でき、このアルゴリズムの高速化のために公知のバックワードフォーワードアルゴリズムを適用することもできる。これによって、正規分布間の移動、すなわち滞留箇所の変遷までを加味した滞留箇所推定ができるようになり、より精度よく滞留箇所が判定できるようになる。
次に、作業推定処理(ステップ702)について説明する。
一般に、作業員が行う作業の種別と、その作業が行われる場所との間には関連がある。例えば、分析対象領域が倉庫である場合、そこで行われる作業として、物品の搬入、搬出、仕分け等が考えられ、それぞれの作業が行われる場所(又はその範囲)は概ね決まっているものと考えられる。したがって、作業員の滞留箇所を推定できれば、そのときに作業員が行っていた作業を推定できると考えられる。本実施形態ではこのような考え方に基づいて作業推定処理(ステップ702)が実行される。
図9は、本発明の第1の実施形態の作業推定部106が実行する作業推定処理(ステップ702)の概念の説明図である。
分析対象領域800、位置情報801及び推定された正規分布(802A及び802B)の中心(803A及び803B)は、図8に示したものと同じである。ゾーンA(901A)、ゾーンB(901B)及びゾーンC(901C)は、各作業が行われる作業箇所の範囲に相当し、作業場レイアウトDB109によって定義される。
図10は、本発明の第1の実施形態の作業場レイアウトDB109に格納されるレイアウト情報の説明図である。
作業場レイアウトDB109に格納される各レコード1000は、ゾーンID1001、種別コード1002及び形状1003を含む。
ゾーンID1001は、ゾーンを一意に識別する情報である。
種別コード1002は、当該ゾーン(すなわちゾーンID1001によって識別されるゾーン)において行われる作業の種別を示す。例えば、物品の仕分け作業が行われるゾーンを示す情報等が種別コード1002として格納される。
形状1003は、当該ゾーンの形状を示す座標点列である。例えば図9の破線で示す長方形の座標点列が形状1003として格納される。
作業推定部106は、滞留箇所推定処理(ステップ701)によって推定された滞留箇所(すなわち推定された分布の中心の位置)がどのゾーンに含まれるかを判定することによって、作業員が行っていた作業を推定することができる。
図8及び図9の例では、正規分布802Aの中心803AがゾーンA(901A)に含まれ、正規分布802Bの中心803BがゾーンC(901C)に含まれる。この場合、正規分布802Aに属すると判定された位置情報801の測位時刻において、作業員がゾーンA(901A)に対応する作業を行っていたと推定される。同様に、正規分布802Bに属すると判定された位置情報801の測位時刻において、作業員がゾーンC(901C)に対応する作業を行っていたと推定される。
図9の例では、ゾーンB(901B)に含まれる位置情報801がいくつか存在するが、それらは例えば正規分布802Bに属すると判定されるため、ゾーンB(901B)に対応する作業は行われなかったと推定される。このように、位置情報の分布を推定して、その分布とレイアウト情報とを照合することによって、位置情報のばらつきの影響を軽減し、より確からしい作業を推定することができる。
さらに、滞留時間を計算することによって、当該作業を行っていたか否かを判定してもよい。例えば、作業員があるゾーンに滞留した時間が所定の値以下である場合に、当該作業員は当該ゾーンを単に通過しただけであり作業を行っていないと判定してもよい。あるいは、滞留時間に基づいて複数の作業のうちどれを行っていたかを判定することもできる。これは、同一の作業箇所で所要時間の異なる複数の作業が行われる可能性を考慮したものである。例えば、滞留時間が所定の値以下である場合に、所要時間の短い作業(例えば物品を運搬する作業)が行われ、滞留時間が所定の値を超える場合に、所要時間の長い作業(例えば運ばれてきた物品を加工する作業)が行われたと判定してもよい。このような判定を行う場合には、図10に示すレイアウト情報に加えて、それぞれの作業に対応する滞留時間を示す情報が保持されている必要がある。
作業推定部106は、作業推定処理(ステップ702)の結果を作業履歴DB107に出力する。
図11は、本発明の第1の実施形態の作業履歴DB107に格納される作業履歴情報の説明図である。
作業履歴DB107に格納される各レコード1100は、作業員ID1101、時刻1102及び作業内容1103を含む。
作業員ID1101は、作業員を一意に識別する情報である。この作業員が行っていた作業が推定されると、その作業が行われた時刻、及び、作業内容を表す番号が、それぞれ時刻1102及び作業内容1103として格納される。
次に、業務確率分布算定処理(ステップ703)について説明する。
業務分類部104は、作業履歴DB107を用いて、業務確率分布算定処理(ステップ703)を実行する。具体的には、業務分類部104は、作業履歴DB107に格納された作業履歴を分類することによって、作業員の業務を判定する。本来、各作業員の担当業務はそれぞれが従事する作業などに応じて定まっているべきものではあるが、実際には各作業員の担当業務が明確でない場合がある。そのような場合であっても、各作業員の担当業務を自動的に抽出(推定)することが本発明の特徴の一つであり、そのために業務特徴抽出処理(ステップ601)が実行される。
図12は、本発明の第1の実施形態の業務分類部104が実行する業務確率分布算定処理(ステップ703)の概念の説明図である。
本実施形態の業務確率分布算定処理では、業務ごとに作業の発生確率が定まっているとの仮定に基づいて、この確率分布をもって業務を特徴づける。ただし、当該確率分布の値(例えば、作業1がxx%の確率で発生する、など)は正確にはわからない。すなわち、本業務確率分布算定処理では、作業員がどの業務に従事しているか、確率分布の値がいくつであるか、という2つの値を決定せねばならない。このような場合にも、公知のEMアルゴリズムが適用できる。
Step1201において、業務分類部104は、各作業員の従事する業務がどれであるかを推定し、その期待値を重みとして算定する。次に、Step1202において、業務分類部104は、この重みに基づき、各業務を表す確率分布を更新する。この確率分布の更新の度合いに基づき、Step1203において、業務分類部104は、計算を続けるか否かを判定する。もし、更新による確率分布の変化が大きい場合には、再度Step1,2を実行し、変化が十分に(例えば所定の値より)小さくなるまでStep1201〜1203を繰り返す。
本実施形態では、各業務を表す確率分布として、離散マルコフ連鎖に基づく確率分布を用いる。離散マルコフ連鎖は、現在の作業によって次に発生する作業の確率が異なるというモデルである。つまり、現在の作業がA、次の作業がBであるとすると、確率分布P(A,B)が定数となる。ただし、Pは確率であるので、P(A,A)+P(A,B)+P(A,C)+・・・と次に発生しうる全ての作業の発生確率を足し合わせると、1にならなければならない。このような確率分布は業務α、業務β、・・・と業務ごとに存在する。以下では具体的にこの場合のEMアルゴリズムに基づく業務確率分布算定処理の例を挙げる。
まず、業務分類部104は、業務ごとに確率P(A,B)を適当な乱数で初期化する。ただし、上記の、「足し合わせて1になる」という条件を満たすように、P(A,B)←P(A,B)÷{P(A,A)+P(A,B)+P(A,C)+・・・}とする。
Step1201の重み算定において、業務分類部104は、尤度の比率を重みとして算出する。例えば作業履歴がA,B,A,C,C,B,C・・・と続く作業員1に関しては、業務分類部104は、P(A,B)×P(B,A)×P(A,C)×P(C,C)×P(C,B)×P(B,C)×・・・とかけあわせて得られる尤度Lを業務ごとに計算する。このように計算された尤度Lは、その値が大きいほど、作業履歴が業務の確率分布によく当てはまっている(すなわち、当該作業履歴の確率分布が当該業務の確率分布と類似している)ことを示す。業務αの尤度をL(α)とすると、重みはその比率(言い換えると正規化された尤度)であるので、L(α)÷{L(α)+L(β)+・・・}が業務αの重みγ(α)として得られる。すなわち、作業員1の作業履歴A,B,A,C,C,B,C・・・に関する業務αの重みγ(α)の値が、最大値である1に近いほど、当該作業履歴が業務αらしいことを示す。
業務分類部104は、他の作業員(例えば、作業履歴がA,A,A,A,C,A,C・・・と続く作業員2、及び、作業履歴がB,B,B,C,C,B,C・・・と続く作業員3等)についても、同様の手順で業務ごとの重みを計算する。
次にStep1202のモデル更新について説明する。標準的な離散マルコフ連鎖では、単純に発生件数を数え上げることによって確率を算定することができる。つまり、作業Aの発生件数と、次に作業Bが発生した件数を用いれば、(作業A→作業Bの発生件数)÷(作業Aの全発生件数)が作業Aの次に作業Bが発生する確率、つまりP(A,B)になる。ただし、本実施形態では各業務に重みがつけられている。そのため、発生件数に重みをかけてP(A,B)が計算される。例えば、ある作業員に関して作業A→作業Bの遷移が発生した件数をC(A→B)回とすると、業務αに関しては、γ(α)×C(A→B)回の遷移が発生したとみなす。ここで、通常、回数は自然数であるが、重みづけによって1.8回、などの小数を含む回数が発生することになる。このように、作業員及び業務ごとに異なる重みを付けて発生件数を数え上げることによって、全ての業務のP(A,B)・・・が更新できる。
その後、Step1203において、この更新による値の変化が(例えば所定の値より)少ないと判定された場合、この計算を終了することができる。なお、初期化に用いた乱数によって算定結果が異なるため、最終的に得られた確率分布の当てはまりが最も低くなる乱数が得られるまで、この業務特徴抽出処理全体を何度も繰り返し実行してもよい。また、業務ごとの発生確率π(α)を用い、尤度を計算する際に掛け合わせてもよい。この場合、確率分布は公知の混合マルコフ連鎖の確率分布と一致し、π(α)は重みγの作業員ごとの平均値によって更新できることが知られている。
本実施形態では単純なマルコフ連鎖を用いたが、公知の隠れマルコフモデルおよびその亜種である自己回帰隠れマルコフモデルなどを用いて同様の処理を行ってもよい。その場合も、公知のEMアルゴリズムを用いた混合確率モデルの推定方法を適用することができる。
また、本実施形態では、例えば、作業Aの次に再び作業Aが発生する確率P(A,A)、作業Aの次に作業Bが発生する確率P(A,B)、等の分布(言い換えると、ある時刻における作業から、それより後の時刻における作業への遷移確率の分布)に基づいて作業員の業務が分析されたが、それ以外の確率の分布に基づいて作業員の業務が分析されてもよい。例えば、ある作業の発生確率(例えば作業Aの発生確率P(A))、又は、より複雑な条件付きの発生確率(例えば作業A,B,Cが順次発生する確率P(A,B,C)等が用いられてもよい。
また、本実施形態では業務の種類が一定であるとしたが、これを可変とすることもできる。あるいは、AIC(赤池情報量規準)などの公知の基準を用いて最適な業務数を自動算出することもできる。
図13は、本発明の第1の実施形態の業務特徴DB108の構造の説明図である。
業務特徴DB108に格納される各レコード1300は、業務ID1301、重み1302及び確率モデル1303を含む。
業務ID1301は、業務を一意に識別する情報である。
重み1302は、業務の発生確率を表す値であり、言い換えると、全作業員のうち当該業務(すなわち業務ID1301によって識別される業務)に従事する者の割合を表す。例えば、業務αについて計算されたγ(α)が重み1302として格納される。
確率モデル1303は、当該業務を表現する確率モデルである。例えば、図12のステップ1202において各業務について計算された確率分布が確率モデル1303として格納される。
後述するように(図16参照)、業務の名称が入力された場合には、その名称が当該業務に対応するレコードに追加されてもよい。
上記の図7から図13を参照して説明した処理が、図6の業務特徴抽出処理(ステップ601)に相当する。業務特徴抽出処理の結果、業務特徴DB108が構築されたことによって、業務量を推計できるようになる。このため、次に、業務集計処理(ステップ602)が実行される。
図14は、本発明の第1の実施形態の作業分析サーバ100が実行する業務集計処理(ステップ602)を示すフローチャートである。
最初に、業務判別部103が業務判別処理(ステップ1401)を実行する。具体的には、業務判別部103は、業務特徴DB108を参照し、作業員の作業履歴から作業員が従事していた業務を推定する。これによって作業履歴DB107に格納されている作業履歴が業務に割り付けられる。この処理の詳細については図15を参照して後述する。
次に、業務情報集計部102が業務情報集計処理(ステップ1402)を実行する。具体的には、業務情報集計部102は、業務分類部104に業務特徴DB108の構築の命令を出し、作業員の作業履歴を業務判別部103に渡して従事業務を取得し、この結果を用いて、業務の従事率の算出など、各種の集計を行う。この処理の詳細については後述する。
次に、業務分析可視化部101が画面生成処理(ステップ1403)を実行する。具体的には、業務分析可視化部101は、業務情報集計部102による集計結果を用いて、ユーザに作業員の業務状況を把握できるような画面を提示する。この処理の詳細については図16を参照して後述する。
図15は、本発明の第1の実施形態の業務判別部103が実行する業務判別処理(ステップ1401)の説明図である。
業務判別処理は、各作業員の作業履歴に基づいて、各作業員が従事する業務を判定する処理である。業務判別処理には、大まかに、(1)全体判定、(2)時間帯判定、の2種類があり、(2)時間帯判定の際には、さらに、(3)分割時間幅調整処理が行われてもよい。
最初に、(1)全体判定について説明する。業務判別部103は、業務特徴DB108に格納された確率分布と、作業履歴DB107に格納された作業員の作業履歴全体(例えば、1日分の作業履歴が取得された場合にはその全体)とを用いて、作業員の作業履歴が大まかにどの業務に相当するか(すなわち当該作業員が当該1日の間に大まかにどの業務に従事していたか)を判定する。このとき、図12を参照して説明したマルコフ連鎖の重み計算を用いることができる。
ここで、図12を参照して説明した業務確率分布算定処理(ステップ703)と、図15に示す業務判別処理(ステップ1401)との関係を説明する。図12を参照して説明したように、業務分類部104は、各作業員の作業履歴に基づいて、各業務における作業の発生確率の分布(本実施形態では作業の遷移が発生する確率の分布)のモデルを推定する。業務判別部103は、そのようにして推定された確率分布のモデルに各作業員の作業履歴がどの程度当てはまるかを計算し、それによって各作業員が担当する業務を判定する。このとき、業務分類部104が使用する作業履歴と、業務判別部103が使用する作業履歴とは同一でなくてもよい。
例えば、ある1日に計測された位置情報に基づいて業務分類部104が各作業の確率分布のモデルを推定し、業務判別部103は、その確率分布のモデルを用いて、別の日の作業員の業務を判定してもよい。分析対象領域のレイアウト及びそこでの作業手順等が変更されない限り、異なる日に異なる作業員が同一の業務のために行う作業の流れは類似すると考えられるためである。
具体的には、業務判別部103は、これから業務を判別しようとする作業員の作業履歴と、業務特徴DB108に格納された確率分布のモデル(すなわち確率モデル1303)と、について、図12を参照して説明したマルコフ連鎖の重みを計算し、その重みが最大となる業務が、当該作業員の従事業務(担当業務)であると判定する。また、上記の通り業務の分担が明確でない場合もあるため、重みの値そのものを、当該作業員が当該業務に従事していた割合を示す従事率として使用することもできる。
次に、(2)時間帯判定について説明する。上記の通り、作業員の業務の分担は明確でない場合がある。しかし、作業履歴をいくつかの時間帯に分割し、それぞれの時間帯について業務の判別を行うことによって、それぞれの時間帯の業務が比較的明確になる場合がある。
例えば、一人の作業員の午前と午後に従事する業務が異なる場合がある。このような場合であっても、(1)全体判定を実行すれば、1日の全体の作業履歴について、各業務に関する重みを計算することができ、その重みが最も大きい業務を当該1日の当該作業員の従事業務として判定することはできる。しかし、このような場合には、いずれの業務に関する重みの値も小さくり、また、それぞれの業務に関する重みの値の差も小さくなる傾向がある。このため、例えば計算された最も大きい重みの値が所定の値より小さい場合、又は、最も大きい重みの値と2番目に大きい重みの値との差が所定の値より小さい場合等に、当該1日の当該作業員の従事業務が明確ではないと判定してもよい。
このような場合に、業務判別部103は、例えば作業員の作業履歴を午前と午後に分割し、それぞれの時間帯ごとに各業務に関する重みを計算することができる。これによってそれぞれの時間帯の業務を明確に判定することができ、これによって、各作業員の従事業務の時間変化を知ることができる場合がある。
次に、(3)時間帯判定における分割時間幅調整処理について説明する。上記のように(2)時間帯判定によって作業員の担当業務を精度よく判定できる場合があり、一般には、分割される時間の幅が小さいほど分析の分解能が高くなる傾向がある。しかし、その時間幅が小さすぎるために、誤差又は突発的な事象が多く検出され、その結果、かえって判定の精度が低下する場合もある。業務判別部103は、(2)時間帯判定によって得られた担当業務のうち、従事時間の合計が最も長くなる業務が、(1)全体判定によって得られた担当業務と一致しない場合、上記のような原因で判定の精度が低下したと判定する。そして、業務判別部103は、両者が一致するまで、分割される時間の幅を少しずつ大きくしながら(2)時間帯判定を繰り返し実行する。これによって、適切な分割の時間幅を自動的に決定することができる。
なお、上記のように、ある時間帯(例えば1日)に取得された作業履歴から推定された確率モデルを、別の時間帯(例えば午前又は午後)に取得された作業履歴に基づく業務の判別に使用するためには、推定された確率モデルが時間帯を特定する情報に依存しないモデルを選択することが必要になる。
次に、業務情報集計処理(ステップ1402)について説明する。業務情報集計部102は、業務判別処理(ステップ1401)によって得られた結果について、一般的な集計処理を実行する。例えば、業務情報集計部102は、時間帯ごとに、各業務に従事する作業員の人数を集計してもよいし、業務ごとにそれに従事する全作業員の全従事時間を積算してもよいし、作業員の総数に対するそれぞれの業務の従事人数の比率又は全業務の全作業員の従事時間に対する各業務の従事時間の比率を計算してもよい。
次に、画面生成処理(ステップ1403)について説明する。
図16は、本発明の第1の実施形態の業務分析可視化部101によって表示される業務集計可視化画面の説明図である。
図16には、業務分析可視化部101が表示する画面の代表的な例として、業務名称付与画面1600及び業務集計結果表示画面1620を示す。
最初に、業務名称付与画面1600について説明する。
本実施形態によれば、業務特徴抽出処理(図6のステップ601)によってそれぞれの業務の特徴(例えば作業の遷移確率の分布)が抽出され、業務集計処理(ステップ602)によって各作業員の担当業務が判定される。しかし、これらの処理によれば、互いに類似した流れの作業を行っている作業員たちを、同一の業務の担当者であると推定することはできるが、その業務が何であるかを推定することはできない。それぞれの業務が何であるかは、本実施形態の業務分析システムのユーザ(すなわち、作業員たちの行動の分析結果を利用する者)が判断する必要がある。業務名称付与画面1600は、その判断を支援するための情報を提示すると共に、判断の結果の入力を受け付けるために、業務分析可視化部101によって出力装置204に表示される。なお、以下の説明において、表示される画面に対するユーザの操作(例えば項目の選択及び文字列の入力等)は、入力装置203を用いて行われる。
図16に示すように、業務名称付与画面1600は、パターンID選択部1601、業務特徴表示部1602、業務担当者表示部1603、業務名称入力部1604及び設定ボタン1605を含む。
パターンID選択部1601は、これから名称を入力しようとする業務に対応する確率分布のパターンを指定するために使用される。例えば、ユーザの操作によってパターンID選択部1601の下に複数のパターンの識別情報を含むドロップダウンリスト(図示省略)が表示され、それらから選択されたパターンの識別情報が表示項目選択部1621に表示されてもよい。あるいは、ユーザが当該識別情報をパターンID選択部1601に直接入力してもよいし、名称を入力しようとする業務の識別情報(業務ID1301)そのものを選択又は入力してもよい。例えば、ユーザは、業務αの名称を入力しようとする場合、業務αに対応する確率モデル1303の識別情報(例えば「パターン1」)を選択する。
業務特徴表示部1602には、パターンID選択部1601において選択された業務の特徴、例えば、当該業務について抽出された確率モデル1303において発生確率の高いゾーン間遷移が表示される。図6の例では、業務特徴表示部1602に複数のゾーン1611A〜1611Dを含む分析対象領域の平面図(レイアウト図)が表示され、さらに、ゾーン1611Bから1611Aに向かう矢印1612A、ゾーン1611Cから1611Bに向かう矢印1612B、及びゾーン1611Aから1611Dに向かう矢印1612Cが表示される。これは、例えばゾーン1611A〜1611Dにそれぞれ作業A〜Dが対応する場合、選択されたパターン1の確率分布において、作業B→Aの遷移、作業C→Bの遷移及び作業A→Dの遷移の発生確率が高いことを示す。ここで、「発生確率が高い」とは、例えば、発生確率が所定の値を超えること、又は、発生確率の順位が上位の所定の順位以内であること、等であってもよい。
業務担当者表示部1603には、業務情報集計処理(ステップ1402)の結果、これから名称を入力しようとする業務を担当していると判定された作業員の識別情報が表示される。
ユーザは、業務特徴表示部1602及び業務担当者表示部1603を参照して、これから名称を入力しようとする業務が何であるかを判定し、その業務に適合する名称を業務名称入力部1604に入力する。例えば、各業務を遂行するための標準的な作業手順等がわかっている場合には、ユーザは業務特徴表示部1602に表示された遷移と整合する作業手順に対応する業務を特定し、その業務に適合する名称を入力してもよい。あるいは、業務担当者表示部1603に表示された作業員の少なくとも一部の担当業務がわかっている場合には、ユーザはその担当業務に適合する名称を入力してもよい。
業務名称入力部1604への入力が終了すると、ユーザは設定ボタン1605を操作する。これによって、業務名称入力部1604に入力された名称が、パターンID選択部1601において選択された識別情報に対応する業務の名称として登録される。この名称は、例えば業務特徴DB108に格納されてもよい。
業務集計結果表示画面1620は、表示項目選択部1621、業務集計結果表示部1622及び業務担当者表示部1623を含む。
表示項目選択部1621は、ユーザが業務集計結果表示部1622への表示を望む項目を指定するために使用される。例えば、ユーザの操作によって表示項目選択部1621の下に表示項目の複数の候補を含むドロップダウンリスト(図示省略)が表示され、それらから選択された項目に対応する情報が表示項目選択部1621に表示されてもよい。図16の例では表示項目として従事率が選択されている。
業務担当者表示部1623は、業務名称付与画面1600の業務担当者表示部1603と同様であるが、ユーザは、業務担当者表示部1623に表示された作業者のいずれかを選択することができる。図16の例では「作業員53」が選択されている。
業務集計結果表示部1622には、業務担当者表示部1623において選択された作業者に関する、表示項目選択部1621において選択された項目の情報が表示される。図16の例では、作業員53の従事率が業務集計結果表示部1622に表示される。具体的には、横軸を時刻、縦軸を従事率とするグラフが表示される。従事率とは、図5に示す(2)時間帯判定によって計算された重みに相当する。すなわち、いずれかの業務に関して「従事率」及び「作業員53」が選択された場合、各時間帯の作業員53の作業履歴の当該業務に関して計算された重みが業務集計結果表示部1622に表示される。
なお、業務集計結果表示画面1620は、業務名称付与画面1600から呼び出されてもよい。例えば、図16に示すようにパターンID選択部1601において「パターン1」が選択されている場合において、ユーザが業務担当者表示部1603に表示された「作業員53」を選択すると、業務集計結果表示画面1620が表示され、作業員53のパターン1に対応する業務への従事率が業務集計結果表示部1622に表示されてもよい。
また、図16の業務集計結果表示画面1620は一例であり、実際には他の情報(例えば業務情報集計処理(ステップ1402)によって集計された結果)が表示されてもよい。
以上の本発明の第1の実施形態によれば、各作業員の担当業務が事前にわかっていない場合であっても、比較的誤差の大きい位置情報に基づいて各作業員の作業履歴を推定し、それらに基づいて作業員を担当業務ごとに分類することができる。すなわち、例えば分析対象の作業員の数が多い場合であっても、個々の作業員に対する聞き取り調査等を行うことなく、ほぼ自動的にそれらの作業員の業務を分析することができるため、分析が大幅に省力化される。
<第2の実施形態>
以下、本発明の第2の実施形態について説明する。上記の第1の実施形態では、いずれの作業員の担当業務も不明であることを前提とし、各作業員の(誤差を含んだ)位置情報に基づいて各作業員が行った作業の流れを推定し、互いに類似した流れの作業を行った作業員たちを、同一の業務の担当者であると推定することによって、作業員が担当業務ごとに分類された。しかし、実際には、一部(少なくとも一人)の作業員の担当業務が予め明らかになっている場合もある。第2の実施形態では、このように一部の作業員の担当業務がわかっている場合に、その担当業務の情報を業務集計処理に利用する。
図17は、本発明の第2の実施形態の業務分析システムの構成を示すブロック図である。
本実施形態の業務分析システムは、作業分析サーバ1700、位置情報管理サーバ110及び複数のセンサ120を備える。
作業分析サーバ1700は、作業員DB1701をさらに備えること、及び、業務分類部104が作業員DB1701を参照して業務確率分布算定処理(ステップ703)を行うことを除いて、第1の実施形態の作業分析サーバ100と同じである。位置情報管理サーバ110及び複数のセンサ120は、第1の実施形態と同じである(図1参照)。
本実施形態の業務分析システムのハードウェア構成は、第1の実施形態と同様である。ただし、本実施形態の作業分析サーバ100の記憶装置206には、さらに作業員DB1701が格納される。
図18は、本発明の第2の実施形態の作業員DB1701の構造の説明図である。
作業員DB1701に格納される各レコード1800は、作業員ID1801及び業務種別1802を含む。
作業員ID1801は、作業員を一意に識別する情報である。
業務種別1802は、当該作業員(すなわち作業員ID1801によって識別される作業員)の担当業務を識別する情報である。当該作業員の担当業務が不明の場合は、業務種別1802は空又は不明であることを示す値であってもよい。ユーザは、後述する業務名称付与画面(図20)を用いて、作業員DB1701に値を登録することができる。
図19は、本発明の第2の実施形態の業務特徴抽出処理において業務分類部104が実行する業務確率分布算定処理(ステップ703)の概念の説明図である。
図19に示すステップ1901は、図12のステップ1201と基本的に同じである。ただし、ステップ1901では、作業員DB1701に担当業務が登録されている作業員の作業履歴の当該担当業務に関する重みが「1」(すなわち最大値)、その他の業務に関する重みが「0」(すなわち最小値)と設定される。作業員DB1701に担当業務が登録されていない作業員の作業履歴については、ステップ1201と同様に重みが計算される。
例えば、作業履歴がA,B,A,C,C,B,C,・・・と続く作業員1の担当業務として「業務α」が登録され、その他の作業員の担当業務が登録されていない場合、ステップ1901において、当該作業員1の作業履歴の業務αに関する重みが「1」に、他の業務に関する重みが「0」に設定される。他の作業員の各業務に関する重みは、図12のステップ1201と同様に扱われる。
図19のステップ1902では、図12のステップ1202と同様の処理が実行される。ただし、ステップ1901において「1」又は「0」に設定された重みはそのまま固定され、ステップ1902において更新されない。
図19のステップ1903は、図12の1203と同じであるため、説明を省略する。
このように、担当業務が明らかである作業員の作業履歴に関する重みが固定され、それを教師データとして確率モデルが計算される(ステップ1902)。これによって、その作業履歴に類似する流れの作業を行った作業員が、当該業務の担当者として分類され易くなる。このため、例えば多数の作業員の業務を分析したい場合に、それらのうち代表的な少数の作業員の実際の担当業務を、例えば聞き取り調査等によって明らかにすることによって、それ以外の多数の作業員の業務の分析精度も向上することが期待できる。
図20は、本発明の第2の実施形態の業務分析可視化部101によって表示される業務集計可視化画面の説明図である。
図20には、第2の実施形態の業務分析可視化部101が表示する画面の代表的な例として、業務集計結果表示画面2000及び業務名称付与画面2020を示す。
業務集計結果表示画面2000は、表示項目選択部2001、業務集計結果表示部2002、業務担当者表示部2003及び業務設定ボタン2004を含む。これらのうち、表示項目選択部2001、業務集計結果表示部2002及び業務担当者表示部2003は、それぞれ図16の表示項目選択部1621、業務集計結果表示部1622及び業務担当者表示部1623と同じである。
ユーザが業務設定ボタン2004を操作すると、業務分析可視化部101は、業務名称付与画面2020を表示する。
業務名称付与画面2020は、業務名称入力部2021、業務担当者表示部2022、業務非担当者表示部2023、追加ボタン2024、削除ボタン2025及び再計算ボタン2026を含む。ユーザは、業務名称付与画面2020を用いて、作業員の担当業務を手動で指定することができる。
業務名称入力部2021は、ユーザが担当者を指定しようとする業務の名称を入力するために使用される。例えば、ユーザの操作によって業務名称入力部2021の下に業務の名称のドロップダウンリスト(図示省略)が表示され、ユーザがそれらのいずれかを選択してもよいし、リストに含まれていない業務の名称を直接入力してもよい。図20の例では「業務α」が入力されている。
業務担当者表示部2022には、当該業務(すなわち業務名称入力部2021において名称を入力された業務)の担当者として指定された作業員の識別情報のリストが表示される。初期状態では、業務担当者表示部2022にはいずれの作業員も表示されていない。
業務非担当者表示部2023には、当該業務を担当者として指定されていない作業員の識別情報のリストが表示される。
ユーザが業務非担当者表示部2023に表示された作業員を指定して追加ボタン2024を操作すると、その作業員が当該業務を担当する者として追加される。その結果、当該作業者に関する業務種別1802に当該業務が登録され、当該作業者の識別情報が業務非担当者表示部2023から業務担当者表示部2022に移動する。図20の例では、作業員1、51及び53の業務種別1802に業務αが登録される。
一方、ユーザが業務担当者表示部2022に表示された作業員を指定して削除ボタン2025を操作すると、その作業員が当該業務を担当する者から削除される。例えば作業員53を指定して削除ボタン2025が操作された場合、作業員53の業務種別1802から業務αの登録が削除される。
その後、ユーザが再計算ボタン2026を操作すると、図19に示す業務特徴抽出処理が実行され、各作業員の作業履歴の各業務に関する重みが計算される。図20の例では、作業員1、51及び53の作業履歴の業務αに関する重みが1に固定され、その他の業務に関する重みが0に固定され、それらが教師データとして使用される。
以上の本発明の第2の実施形態によれば、少数の作業員の担当業務の調査結果を利用することによって、調査のための労力の増加を抑えながら、その他の多数の作業員の業務の分析精度を向上させることができる。