JP2013116313A - 放射線撮影装置及び放射線撮影方法 - Google Patents

放射線撮影装置及び放射線撮影方法 Download PDF

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Abstract

【課題】アンラップエラーによる軟部組織の画像化の阻害を防止するとともに、オフセット補正後の位相微分画像において、OK領域間でのデータの段差及び傾きを低減する。
【解決手段】被検体を配置しないプレ撮影により生成した位相微分画像をオフセット画像として記憶する。被検体を配置した本撮影により生成した位相微分画像について、アンラップエラーが生じやすいNG領域を検出し、それ以外の領域をOK領域とする。位相微分画像及びオフセット画像のOK領域のみをアンラップ処理する。アンラップ処理後の位相微分画像から、アンラップ処理後のオフセット画像を減算するオフセット補正を行う。そして、オフセット補正後の位相微分画像のOK領域に残存するほぼ一定の傾きを有するノイズを除去する傾き補正処理を行い、OK領域間に残存する段差を除去する段差補正処理を行う。
【選択図】図13

Description

本発明は、放射線の位相変化に基づく画像を検出する放射線撮影装置及び放射線撮影方法に関する。
放射線、例えばX線は、物質を構成する元素の重さ(原子番号)と物質の密度及び厚さとに依存して吸収され減衰するといった特性を有する。この特性に着目し、医療診断や非破壊検査等の分野において、被検体の内部を透視するためのプローブとしてX線が利用されている。
一般的なX線撮影装置では、X線を放射するX線源と、X線を検出するX線画像検出器との間に被検体を配置して、被検体を透過したX線の撮影を行う。この場合、X線源からX線画像検出器に向けて放射されたX線は、被検体を透過する際に吸収され減衰した後、X線画像検出器に入射する。この結果、被検体によるX線の強度変化に基づく画像がX線画像検出器により検出される。
X線吸収能は、原子番号が小さい元素ほど低くなるため、生体軟部組織やソフトマテリアルなどでは、X線の強度変化が小さく、画像に十分なコントラストが得られないといった問題がある。例えば、人体の関節を構成する軟骨部とその周辺の関節液は、いずれも殆どの成分が水であり、両者のX線吸収能の差が小さいため、コントラストが得られにくい。
このような問題を背景に、被検体によるX線の強度変化に代えて、被検体によるX線の位相変化に基づいた画像を得るX線位相イメージングの研究が近年盛んに行われている。X線位相イメージングは、被検体に入射したX線の位相変化が強度変化より大きいことに基づき、X線の位相変化を画像化する方法であり、X線吸収能が低い被検体に対しても高コントラストの画像を得ることができる。X線位相イメージングの一種として、2枚の回折格子とX線画像検出器とを用いてX線タルボ干渉計を構成することにより、X線の位相変化を検出するX線撮影装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
このX線撮影装置は、X線源から見て被検体の背後に第1の回折格子を配置し、第1の回折格子からタルボ距離だけ離れた位置に第2の回折格子を配置し、その背後にX線画像検出器を配置したものである。タルボ距離は、第1の回折格子を通過したX線が、タルボ効果によって第1の回折格子の自己像(縞画像)を形成する距離であり、第1の回折格子の格子ピッチとX線波長とに依存する。この自己像は、被検体でのX線の位相変化で屈折が生じることにより変調される。この変調量を検出することにより、X線の位相変化が画像化される。
上記変調量の検出方法として縞走査法が知られている。縞走査法とは、第1の回折格子に対して第2の回折格子を、第1の回折格子の面に平行でかつ第1の回折格子の格子線方向に垂直な方向に、所定の走査ピッチで並進移動(走査)させながら、各走査位置において、X線源からX線を放射し、被検体、第1及び第2の回折格子を通過したX線をX線画像検出器により撮影する方法である。このX線画像検出器により得られる各画素の画素値の上記走査に対する変化を表す信号(強度変調信号)について位相ズレ量(被検体が存在しない場合の初期位置からの位相差)を算出することにより、上記変調量に関連する画像が得られる。この画像は、被検体の屈折率を反映した画像であり、X線の位相変化(位相シフト)の微分量に対応するため、位相微分画像と呼ばれる。
特許文献1に示されているように、上記位相ズレ量は、複素数の偏角を抽出する関数(arg[…])や、逆正接関数(tan−1[…])を用いて算出される。このため、位相微分画像は、上記関数の値域(−πから+π、または、−π/2から+π/2)に畳み込まれた(ラップされた)値により表現される。このようにラップされた位相微分画像には、値域の上限から下限に変化する箇所、または下限から上限に変化する箇所で不連続点が生じることがあるため、この不連続点をなくして連続化するようにアンラップ処理を行うことが知られている(例えば、特許文献2参照)。
このアンラップ処理は、光学的計測の分野等でも行われている(例えば、特許文献3参照)。一般に、アンラップ処理は、画像内の所定位置を起点とし、該起点から所定の経路に沿って順に行われる。この経路中に上記不連続点が検出されると、この不連続点以降のデータに、上記関数の値域に相当する値が一律に加算または減算される。これにより、不連続点がなくなり、データが連続化する。
また、X線位相イメージングでは、回折格子等の測定系に由来するノイズムラが位相微分画像に現れる。このノイズムラを除去するために、予め被検体のない状態で位相微分画像を取得して、これをオフセット画像として記憶しておき、被検体を配置した状態で取得された位相微分画像からオフセット画像を減算するオフセット補正が行われている(例えば、特許文献1参照)。
WO2004/058070号公報 特開2011−045655号公報 特開2008−082869号公報
しかしながら、被検体に骨部等のX線吸収能が高い高吸収体が含まれる場合には、該高吸収体では、X線が大きく減衰して、上記強度変調信号の強度や振幅が低下するため、位相ズレ量の算出精度が低下してしまう。これにより、位相微分画像の高吸収体領域では、アンラップエラーが生じやすくなる。このアンラップエラーには、本来不連続点でない箇所に不連続性が生じて不連続点と見なされることによりアンラップ処理が行われるケースと、本来不連続点である箇所の不連続性が低下して不連続点と見なされないことによりアンラップ処理が行われないケースとがある。
図18に示すように、高吸収体である骨部の領域に起点を設定し、起点から一方向に伸びる経路に沿ってアンラップ処理を行う場合には、骨部領域ではアンラップエラーが生じやすいため、一旦アンラップエラーが生じると、アンラップエラーが生じた箇所以降の経路にエラー値(上記関数の値域に相当する値)が積算される。この結果、アンラップ処理後の位相微分画像にはアンラップ処理の経路方向に沿った筋状のノイズが生じ、このノイズが軟部組織である軟骨部の一部に重なるため、X線位相イメージングでの関心領域である肝心の軟部組織の画像化を阻害してしまうという問題がある。そこで、アンラップエラーが生じやすい領域(NG領域)を判別し、それ以外の領域(OK領域)をアンラップ処理する方法が考えられる。
しかし、位相微分画像をNG領域が分断し、複数のOK領域が生じた場合には、前述のノイズムラの除去を行うために、各OK領域にアンラップ処理を行った位相微分画像(図19(A)参照)から、全体にアンラップ処理を行ったオフセット画像(図19(B)参照)を減算すると、オフセット処理後の位相微分画像(図19(C)参照)には、OK領域間でデータに段差が生じるといった問題が発生する。さらに、図19(A)の位相微分画像と図19(B)のオフセット画像との間でノイズムラの傾きに差異がある場合には、図19(C)に示すオフセット処理後の位相微分画像にも傾きが残存する可能性がある。
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、アンラップエラーによる軟部組織の画像化の阻害を防止するとともに、オフセット補正後の位相微分画像において、OK領域間でのデータの段差及び傾きを低減することを可能とする放射線撮影装置及び放射線撮影方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明の放射線撮影装置は、放射線源から射出され、被検体を透過した放射線を検出して画像データを生成する放射線検出器と、前記放射線源と前記放射線検出器との間に配置された格子部と、前記画像データに基づき、所定の範囲にラップされた値で表現された位相微分画像を生成する位相微分画像生成部と、前記被検体を配置しない状態で行われるプレ撮影において、前記位相微分画像生成部により生成された前記位相微分画像をオフセット画像として記憶するオフセット画像記憶部と、前記被検体を配置した状態で行われる本撮影において、前記位相微分画像生成部により生成された前記位相微分画像内でアンラップエラーが生じやすいNG領域を検出するとともに、それ以外の領域をOK領域として検出するOK/NG領域検出部と、前記本撮影により得られた前記位相微分画像と、前記オフセット画像とのそれぞれについて前記OK領域のみをアンラップ処理するアンラップ処理部と、前記アンラップ処理後の位相微分画像から、前記アンラップ処理後のオフセット画像を減算するオフセット補正を行うオフセット処理部と、前記オフセット補正後の位相微分画像の前記OK領域に残存するほぼ一定の傾きを有するノイズを除去する傾き補正処理を行う傾き補正処理部と、前記OK領域間に残存する段差を除去する段差補正処理を行う段差補正処理部と、を備えるものである。
前記OK領域が複数存在するか否かを判定する判定部を備え、前記傾き補正処理部及び前記段差補正処理部は、前記OK領域が複数存在する場合にのみ前記処理を行うことが好ましい。
前記傾き補正処理部は、前記オフセット補正後の位相微分画像の前記OK領域の画素値の一方向への変化を線形式または多項式でフィッティングすることにより補正関数を求め、これを前記一方向と直交する方向に拡張することにより傾き補正画像を作成し、この傾き補正画像に基づいて前記ノイズを除去することが好ましい。
前記傾き補正処理部は、前記OK領域が複数存在し、隣り合う前記OK領域の補正関数の傾きが近い場合に、該隣り合う前記OK領域の画素値の一方向への変化を線形式または多項式でまとめてフィッティングすることにより補正関数を求め、この補正関数を該隣り合う前記OK領域の補正関数とすることも好ましい。
前記傾き補正処理部は、前記オフセット補正後の位相微分画像の前記OK領域の画素値の異なる2方向への変化を線形式または多項式でフィッティングすることにより第1及び第2の補正関数を求め、この第1及び第2の補正関数に基づいて傾き補正画像を作成し、この傾き補正画像に基づいて前記ノイズを除去することも好ましい。
前記段差補正処理部は、前記傾き補正処理後の位相微分画像について、各OK領域の少なくとも一部の領域について画素値の平均値を算出し、各OK領域で該平均値が同一となるように、各OK領域ごとに画素値に一定値を加算または減算することが好ましい。
前記アンラップ処理部は、前記OK領域を一方向に貫通する貫通ラインに沿って起点群を設定し、前記起点群の隣接する起点間のアンラップ処理と、前記起点群の各起点から前記貫通ラインに直交する直線経路に沿ったアンラップ処理と行うことが好ましい。
前記アンラップ処理部は、前記起点群から見て前記NG領域の背後に残存する前記OK領域内の画素に対するアンラップ処理をさらに行うことが好ましい。この場合、前記アンラップ処理部は、前記NG領域の背後に残存する画素に対するアンラップ処理の回数が少なくなるように前記起点群の方向を決定することが好ましい。
前記アンラップ処理部は、前記起点群を、前記位相微分画像のいずれかの一辺に沿って設定することが好ましい。
前記格子部は、放射線源からの放射線を通過させて第1の周期パターン像を生成する第1の格子と、前記第1の周期パターン像を部分的に遮蔽して第2の周期パターン像を生成する第2の格子と有し、前記放射線画像検出器は、前記第2の周期パターン像を検出して画像データを生成することが好ましい。
前記格子部は、前記第1の格子または第2の格子を所定の走査ピッチで移動させ、複数の走査位置に順に設定する走査機構を備え、前記放射線画像検出器は、前記各走査位置で前記第2の周期パターン像を検出して画像データを生成し、前記位相微分画像生成部は、前記放射線画像検出器により生成される複数の画像データに基づいて位相微分画像を生成することが好ましい。
前記走査機構は、前記第1の格子または第2の格子を、格子線に直交する方向に移動させることが好ましい。また、前記走査機構は、前記第1の格子または第2の格子を、格子線に対して傾斜する方向に移動させることも好ましい。
前記位相微分画像生成部は、前記放射線検出器により得られる単一の画像データに基づいて前記位相微分画像を生成することも好ましい。
前記OK/NG領域検出部は、画素値の強度変化を表す強度変調信号の平均強度、振幅、ビジビリティのうち1つまたは複数の組み合わせに基づいて前記NG領域を検出することが好ましい。
前記OK/NG領域検出部は、画素値の強度変化を表す強度変調信号の平均強度に基づいて吸収画像を生成し、この吸収画像に微分処理を施すことにより生成した吸収微分画像に基づいて前記NG領域を検出することも好ましい。
前記段差補正処理部は、画素値の強度変化を表す強度変調信号の平均強度に基づいて吸収画像を生成し、この吸収画像に微分処理を施すことにより生成した吸収微分画像内に、前記OK領域を設定するとともに、前記各OK領域中から画素値がほぼ同一となる1つまたは複数の画素からなる画素領域を抽出し、前記傾き補正処理後の位相微分画像について、前記各OK領域の画素領域の画素値が同一となるように、前記各OK領域ごとに各画素値に一定値を加算または減算することが好ましい。
吸収画像、吸収画像の微分画像、小角散乱画像のうちいずれかを生成し、前記位相微分画像の前記NG領域を置換するNG領域画像置換部を備えることが好ましい。
前記第1の格子は、吸収型格子であり、入射した放射線を幾何光学的に投影することにより前記第1の周期パターン像を生成することが好ましい。前記第1の格子は、吸収型格子または位相型格子であり、入射した放射線にタルボ効果を生じさせて前記第1の周期パターン像を生成するものであってもよい。
前記放射線源から放射された放射線を部分的に遮蔽して焦点を分散化するマルチスリットを備えることが好ましい。
本発明の放射線撮影方法は、被検体を配置しない状態において、放射線源から射出され、格子部を通過した放射線を検出して画像データを生成し、この画像データに基づき、所定の範囲にラップされた値で表現された位相微分画像を生成して、これをオフセット画像として記憶するプレ撮影工程と、被検体を配置した状態において、前記放射線源から射出され、被検体及び前記格子部を通過した放射線を検出して画像データを生成し、この画像データに基づき、所定の範囲にラップされた値で表現された位相微分画像を生成する本撮影工程と、前記本撮影工程で生成された前記位相微分画像内でアンラップエラーが生じやすいNG領域を検出するとともに、それ以外の領域をOK領域として検出するOK/NG領域検出工程と、前記本撮影工程で生成された前記位相微分画像と、前記オフセット画像とのそれぞれについて前記OK領域のみをアンラップ処理するアンラップ処理工程と、アンラップ処理後の前記位相微分画像から、アンラップ処理後の前記オフセット画像を減算するオフセット補正を行うオフセット処理工程と、前記オフセット補正後の位相微分画像の前記OK領域に残存するほぼ一定の傾きを有するノイズを除去する傾き補正処理工程と、前記OK領域間に残存する段差を除去する段差補正処理工程と、を備えるものである。
本発明によれば、本撮影で生成された位相微分画像とプレ撮影で生成されたオフセット画像とのそれぞれについてOK領域のみをアンラップ処理した後、アンラップ処理後の位相微分画像からアンラップ処理後のオフセット画像を減算するオフセット補正を行い、オフセット補正後の位相微分画像のOK領域に残存するほぼ一定の傾きを有するノイズを除去する傾き補正処理と、OK領域間に残存する段差を除去する段差補正処理とを行うので、アンラップエラーによる軟部組織の画像化の阻害を防止するとともに、オフセット補正後の位相微分画像におけるOK領域間でのデータの段差及び傾きを低減することができる。
X線撮影装置の構成を示すブロック図である。 X線画像検出器の構成を示す模式図である。 第1及び第2の格子の構成を説明する説明図である。 強度変調信号を示すグラフである。 画像処理部の構成を示すブロック図である。 アンラップ処理方法の流れを説明するフローチャートである。 アンラップ処理の起点及び経路の設定方法を説明する図である。 アンラップ処理を説明する説明図である。 複数のOK領域が存在する場合の起点及び経路の設定方法を説明する図である。 傾き補正画像の作成方法を説明する説明図である。 プレ撮影時のX線撮影装置の作用を説明するフローチャートである。 本撮影時のX線撮影装置の作用を説明するフローチャートである。 オフセット補正について説明する説明図である。 傾き補正画像の別の作成方法を説明する説明図である。 1つの起点から画素ごとに順にアンラップ処理を行う例を説明する図である。 NG領域画像置換部を備えた画像処理部の構成を示すブロック図である。 段差補正処理の別形態を説明する説明図である。 従来のアンラップ処理を説明する説明図である。 従来のオフセット補正を説明する説明図である。
図1において、X線撮影装置10は、X線源11、格子部12、X線画像検出器13、メモリ14、画像処理部15、画像記録部16、撮影制御部17、コンソール18、及びシステム制御部19を備える。X線源11は、例えば、回転陽極型のX線管と、X線の照射野を制限するコリメータとを有し、撮影制御部17の制御に基づき、被検体Hに向けてX線を放射する。
格子部12は、第1の格子21、第2の格子22、及び走査機構23を備える。第1及び第2の格子21,22は、X線照射方向であるz方向に関してX線源11に対向配置されている。X線源11と第1の格子21との間には、被検体Hが配置可能な間隔が設けられている。X線画像検出器13は、例えば、半導体回路を用いたフラットパネル検出器であり、第2の格子22の背後に、検出面13aがz方向に直交するように配置されている。
第1の格子21は、z方向に直交する格子面内の一方向であるy方向に延伸された複数のX線吸収部21a及びX線透過部21bを備えた吸収型格子である。X線吸収部21a及びX線透過部21bは、z方向及びy方向に直交するx方向に交互に配列されており、縞状のパターンを形成している。第2の格子22は、第1の格子21と同様にy方向に延伸され、かつx方向に交互に配列された複数のX線吸収部22a及びX線透過部22bを備えた吸収型格子である。X線吸収部21a,22aは、金(Au)、白金(Pt)等のX線吸収性を有する材料により形成されている。X線透過部21b,22bは、シリコン(Si)や樹脂等のX線透過性を有する材料や空隙により形成されている。
第1の格子21は、X線源11から放射されたX線を部分的に通過させて第1の周期パターン像(以下、G1像という)を生成する。第2の格子22は、第1の格子21により生成されたG1像を部分的に透過させて第2の周期パターン像(以下、G2像という)を生成する。被検体Hが配置されていない場合において、G1像は、第2の格子22の格子パターンとほぼ一致する。
X線画像検出器13は、G2像を検出して画像データを生成する。メモリ14は、X線画像検出器13から読み出された画像データを一時的に記憶する。画像処理部15は、メモリ14に記憶された画像データに基づいて位相微分画像を生成し、この位相微分画像に基づいて位相コントラスト画像を生成する。画像記録部16は、位相微分画像と位相コントラスト画像とを記録する。
走査機構23は、第2の格子22をx方向に並進移動させ、第1の格子21に対する第2の格子22の相対位置を順次に変更する。走査機構23は、圧電アクチュエータや静電アクチュエータにより構成され、後述する縞走査を実行するために、撮影制御部17の制御に基づいて駆動される。メモリ14には、縞走査の各走査位置でX線画像検出器13により得られる画像データが一括して記憶される。
コンソール18は、操作部18a及びモニタ18bを備えている。操作部18aは、キーボードやマウス等により構成され、X線源11の管電圧、管電流、照射時間等の撮影条件の設定や、本撮影またはプレ撮影のモード選択、撮影実行指示等の操作入力を可能とする。本撮影とは、X線源11と第1の格子21との間に被検体Hを配置した状態で行う撮影モードである。プレ撮影とは、X線源11と第1の格子21との間に被検体Hを配置せずに行う撮影モードである。詳しくは後述するが、プレ撮影は、第1及び第2の格子21,22の製造誤差や配置誤差等により生じるバックグランド成分をオフセット画像として取得するために用いられる。
モニタ18bは、撮影条件等の撮影情報や、画像記録部16に記録された位相微分画像及び位相コントラスト画像の表示を行う。システム制御部19は、操作部18aから入力される信号に応じて各部を統括的に制御する。
図2において、X線画像検出器13は、入射X線により半導体膜(図示せず)に生じた電荷を収集する画素電極31と、画素電極31によって収集された電荷を読み出すためのTFT(Thin Film Transistor)32とを備えた画素部30が2次元状に多数配列されたものである。半導体膜は、例えば、アモルファスセレンにより形成されている。
また、X線画像検出器13は、ゲート走査線33、走査回路34、信号線35、及び読み出し回路36を備える。ゲート走査線33は、画素部30の行ごとに設けられている。走査回路34は、TFT32をオン/オフするための走査信号を各ゲート走査線33に付与する。信号線35は、画素部30の列ごとに設けられている。読み出し回路36は、各信号線35を介して画素部30から電荷を読み出し、画像データに変換して出力する。各画素部30の詳細な層構成については、例えば、特開2002−26300号公報に記載されている層構成と同様である。
読み出し回路36は、積分アンプ、A/D変換器、補正回路(いずれも図示せず)等を備える。積分アンプは、各画素部30から信号線35を介して出力された電荷を積分して画像信号を生成する。A/D変換器は、積分アンプにより生成された画像信号を、デジタル形式の画像データに変換する。補正回路は、画像データに対して、暗電流補正、ゲイン補正、リニアリティ補正等を行う。この補正後の画像データがメモリ14に記憶される。
X線画像検出器13は、入射X線を半導体膜で直接電荷に変換する直接変換型に限られず、ヨウ化セシウム(CsI)やガドリウムオキシサルファイド(GOS)等のシンチレータで入射X線を可視光に変換し、可視光をフォトダイオードで電荷に変換する間接変換型であってもよい。さらに、X線画像検出器13を、シンチレータとCMOSセンサを組み合わせて構成してもよい。
図3において、X線源11から照射されるX線は、X線焦点11aを発光点としたコーンビームである。第1の格子21は、タルボ効果が生じず、X線透過部21bを通過したX線をほぼ幾何光学的に投影するように構成される。具体的には、x方向へのX線透過部21bの幅を、X線源11から照射されるX線の実効波長より十分大きな値とし、X線の大部分がX線透過部21bで回折しないようにすることで実現される。X線源11の回転陽極としてタングステンを用い、管電圧を50kVとした場合には、X線の実効波長は約0.4Åである。この場合には、X線透過部21bの幅を1〜10μm程度とすればよい。
これにより、G1像は、第1の格子21からz方向下流への距離に依らず、常に第1の格子21の自己像となる。G1像は、X線焦点11aからz方向下流への距離に比例して拡大される。
第2の格子22の格子ピッチpは、前述のように、第2の格子22の格子パターンが第2の格子22の位置におけるG1像に一致するように設定されている。具体的には、第2の格子22の格子ピッチpは、第1の格子21の格子ピッチp、X線焦点11aと第1の格子21との間の距離L、第1の格子21と第2の格子22との間の距離Lと、下式(1)をほぼ満たすように設定されている。
G1像は、被検体HでX線に位相変化が生じて屈折することにより変調される。この変調量には、被検体HでのX線の屈折角φ(x)が反映される。同図には、被検体HでのX線の位相変化を表す位相シフト分布Φ(x)に応じて屈折するX線の経路が例示されている。符号X1は、被検体Hが存在しない場合にX線が直進する経路を示し、符号X2は、被検体Hにより屈折したX線の経路を示している。
位相シフト分布Φ(x)は、X線の波長をλ、被検体Hの屈折率分布をn(x,z)として、下式(2)で表される。
上記屈折角φ(x)は、位相シフト分布Φ(x)と、下式(3)の関係にある。
第2の格子22の位置において、X線は、屈折角φ(x)に応じた量だけx方向に変位する。この変位量Δxは、X線の屈折角φ(x)が微小であることに基づいて、近似的に下式(4)で表される。
このように、変位量Δxは、位相シフト分布Φ(x)の微分値に比例する。したがって、変位量Δxを後述する縞走査により検出することにより、位相シフト分布Φ(x)の微分値が得られ、位相微分画像が生成される。
縞走査は、格子ピッチpをM個に分割した値(p/M)を走査ピッチとし、走査機構23により、この走査ピッチで第2の格子22を並進移動させ、第2の格子22を並進移動させるたびに、X線源11からX線を放射してG2像をX線画像検出器13により撮影することにより行われる。Mは3以上の整数であり、例えば、M=5であることが好ましい。
上式(1)を僅かに満たさない場合や、第1の格子21と第2の格子22との間にz方向周りの回転や、xy平面に対する傾斜が僅かに生じている場合には、G2像にはモアレ縞が生じる。このモアレ縞は、第2の格子22の並進移動に伴って移動し、x方向への移動距離が格子ピッチpに達すると元のモアレ縞に一致する。このモアレ縞の移動を確認することで、第2の格子22の並進移動量を検証することができる。
上記縞走査により、X線画像検出器13の各画素部30について、M個の画素値が得られる。図4に示すように、M個の画素値Iは、第2の格子22の走査位置kに対して周期的に変化する。走査位置kは、第2の格子22を一周期分並進移動させた場合の走査ピッチ(p/M)ごとの各位置である。走査位置kに対する画素値Iの変化を表す信号を強度変調信号と呼ぶ。
同図中の破線は、被検体Hを配置しない状態で得られる強度変調信号を示している。これに対して、実線は、被検体Hを配置した状態で、被検体Hにより位相ズレ量ψ(x)が生じた強度変調信号を示している。この位相ズレ量ψ(x)は、上記変位量Δxと下式(5)の関係にある。
したがって、各画素部30について、縞走査で得られるM個の画素値Iに基づき、強度変調信号の位相ズレ量ψ(x)を求めることにより、位相微分画像が得られる。
次に、位相ズレ量ψ(x)の算出方法について説明する。強度変調信号は、一般に下式(6)で表される。
ここで、Aは入射X線の平均強度を表し、Aは強度変調信号の振幅を表す。nは正の整数、iは虚数単位である。なお、図4に示すように、強度変調信号が正弦波を描く場合には、n=1である。
本実施形態では、走査ピッチ(p/M)が一定であるため、下式(7)が成立する。
上式(7)を上式(6)に適用すると、位相ズレ量ψ(x)は、下式(8)で表される。
ここで、arg[…]は、複素数の偏角を抽出する関数である。また、位相ズレ量ψ(x)は、逆正接関数を用いて下式(9)のように表すことも可能である。
複素数の偏角は、値域が−πから+πの範囲であるため、上式(8)に基づいて位相ズレ量ψ(x)を算出した場合には、位相ズレ量ψ(x)は、−πから+πの範囲に畳み込まれた(ラップされた)値を取る。これに対して、逆正接関数は、通常、値域が−π/2から+π/2の範囲であるため、上式(9)に基づいて位相ズレ量ψ(x)を算出した場合には、位相ズレ量ψ(x)は、−π/2から+π/2の範囲に畳み込まれた値を取る。なお、上式(9)において、逆正接関数内の分母及び分子の正負を判別することにより、値域を−πから+πとすることができるため、−πから+πの範囲で位相ズレ量ψ(x)を算出することも可能である。
本実施形態では、各画素部30について位相ズレ量ψ(x)を算出することにより得られるデータを位相微分画像という。なお、位相ズレ量ψ(x)に定数を乗じたり加算したりしたデータで表される画像を位相微分画像としてもよい。
図5において、画像処理部15は、位相微分画像生成部40、オフセット画像記憶部41、OK/NG領域検出部42、アンラップ処理部43、オフセット処理部44、分断判定部45、傾き補正処理部46、段差補正処理部47、及び位相コントラスト画像生成部48を備える。位相微分画像生成部40は、本撮影またはプレ撮影において縞走査を行った結果、メモリ14に記憶されたM枚分の画像データを用い、上式(8)または上式(9)に基づいて演算を行うことにより位相微分画像を生成する。
プレ撮影時に位相微分画像生成部40により生成された位相微分画像は、オフセット画像としてオフセット画像記憶部41により記憶される。本撮影時に位相微分画像生成部40により生成された位相微分画像は、アンラップ処理部43に入力される。なお、オフセット画像記憶部41は、位相微分画像生成部40からオフセット画像が新たに入力された場合には、記憶中のオフセット画像を消去した後、新たに入力されたオフセット画像を記憶する。
OK/NG領域検出部42は、メモリ14に記憶されたM枚分の画像データに基づき、位相微分画像中においてアンラップエラーが生じやすい領域(以下、NG領域という)を検出し、NG領域以外の領域をOK領域として検出する。OK/NG領域検出部42は、各画素部30について、強度変調信号の平均強度Aが閾値より低い領域、振幅Aが閾値より低い領域、またはビジビリティA/Aが閾値より低い領域をNG領域とする。
このNG領域は、被検体Hに含まれる高吸収体領域(被検体Hが人体である場合には、X線吸収能が高い骨部等)に相当する。これは、X線が高吸収体で吸収されることにより、平均強度A、振幅A、またはビジビリティA/Aが低下することに基づいている。なお、平均強度A、振幅A、ビジビリティA/Aのうち2以上を組み合わせてNG領域を検出してもよい。また、NG領域が散在することにより、ある程度の大きさを有する集合領域として得られない場合には、上記閾値を変化させてNG領域の大きさを調整すればよい。
アンラップ処理部43は、位相微分画像生成部40から入力された位相微分画像に対して、NG領域以外のOK領域のみを対象としてアンラップ処理を施す。また、アンラップ処理部43は、オフセット画像記憶部41に記憶されたオフセット画像に対して、OK領域のみを対象として同様にアンラップ処理を施す。
オフセット処理部44は、アンラップ処理後の位相微分画像からアンラップ処理後のオフセット画像を減算するオフセット補正を行う。分断判定部45は、OK/NG領域検出部42により検出されたOK領域がNG領域により分断されているか、すなわち複数のOK領域が存在するか否かを判定する。
傾き補正処理部46は、分断判定部45により複数のOK領域が存在すると判定された場合に、オフセット補正後の位相微分画像(差分画像)の各OK領域に残存するほぼ一定の傾きを有するノイズを補正により除去する。段差補正処理部47は、分断判定部45により複数のOK領域が存在すると判定された場合に、傾き補正処理後の位相微分画像に残存する各OK領域間の段差を補正により除去する。
一方、分断判定部45により1つのOK領域のみが存在すると判定された場合には、傾き補正処理部46及び段差補正処理部47は動作せず、オフセット処理部44によるオフセット補正後の位相微分画像が直接位相コントラスト画像生成部48に入力される。これは、OK領域が1つの場合には、本発明の課題であるOK領域間でのデータの段差の発生という問題はなく、傾きも残存しにくいためである。
位相コントラスト画像生成部48は、段差補正処理部47により段差が補正された位相微分画像、またはオフセット処理部44から直接入力された位相微分画像を、x方向に沿って積分処理することにより、位相シフト分布を表す位相コントラスト画像を生成する。そして、段差補正後またはオフセット補正後の位相微分画像と、位相コントラスト画像とが画像記録部16に記録される。
次に、図6及び図7を用いて、アンラップ処理部43によるアンラップ処理方法をより詳細に説明する。まず、位相微分画像の各行または各列に、アンラップ処理を開始する起点が設定される(ステップS10)。これらの複数の起点を起点群という。
図7は、説明の簡略化のため、位相微分画像を10×7画素の画像として表しており、位相微分画像にはOK/NG領域検出部42により検出されるNG領域が示されており、NG領域以外の領域がOK領域である。ステップS10では、OK領域をx方向またはy方向に貫通する貫通ラインが探索され、そのうち1つの貫通ラインに起点群が設定される。本実施形態では、x方向とy方向とのそれぞれに貫通ラインが存在するが、短い方のy方向に沿う貫通ラインに沿って起点群P0〜P6が設定される。ここでは、起点群P0〜P6は、x方向の端部(短辺)に沿って設定される。
起点群P0〜P6の設定の後、起点群P0〜P6を設定した貫通ラインと直交する方向(x方向)に、各起点群P0〜P6を起点とした直線状の直線経路R0〜R6が設定され、各直線経路R0〜R6に沿ってアンラップ処理が実行される(ステップS11)。直線経路R0〜R6は、NG領域には設定されない。このため、起点群P0〜P6側から見たNG領域の背後には、起点群P0〜P6と同一のOK領域に属するが、直線経路R0〜R6が設定されない画素が残存する。
具体的に、ステップS11では、まず、起点P0から直線経路R0に沿って順にアンラップ処理が行われ、直線経路R0のアンラップ処理が終了すると、起点P0を基準として起点P1のアンラップ処理が行われた後、起点P1から直線経路R1に沿って順にアンラップ処理が行われる。そして、直線経路R1と同一行でNG領域の背後に残存する画素についてはアンラップ処理が行われず、起点P1を基準として起点P2のアンラップ処理が行われる。この後、同様の手順でアンラップ処理が行われ、直線経路R6のアンラップ処理が終了するとステップS11は終了する。
次いで、NG領域の背後に残存した画素に回り込み経路が設定され、この回り込み経路に沿ってアンラップ処理を行う回り込み処理が行われる(ステップS12)。具体的に、ステップS12では、直線経路R1と同一行に残存する画素に回り込み経路WR0が設定され、直線経路R5と同一行に残存する画素に回り込み経路WR1が設定される。回り込み経路WR0は、隣接する直線経路R0上の画素を起点としてアンラップ処理が行われる。回り込み経路WR1は、隣接する直線経路R6上の画素を起点としてアンラップ処理が行われる。
図8に示すように、上記各経路上のアンラップ処理は、上式(8)または上式(9)の関数の値域の上限から下限、または下限から上限に変化する不連続点DPを検出し、検出した不連続点DP以降のデータに一律に該値域に相当する値を加算または減算することで不連続点DPをなくし、データを連続化する処理である。
図9に示すように、位相微分画像がNG領域により分断されて、複数のOK領域が存在する場合には、各OK領域に対して、上記ステップS10〜S12が個別に実行される。同図の位相微分画像には、第1及び第2のOK領域が存在する。第1のOK領域には、x方向端においてy方向に貫通する貫通ラインに沿って起点群P0a〜P6aが設定されるとともに、各起点群P0a〜P6aからy方向に直線経路R0a〜R6aが設定される。そして、各直線経路R0a〜R6aに沿ったアンラップ処理と、起点群P0a〜P6aの隣接する起点間のアンラップ処理とが行われる。
同様に、第2のOK領域には、x方向端においてy方向に貫通する貫通ラインに沿って起点群P0b〜P6bが設定されるとともに、各起点群P0b〜P6bからy方向に直線経路R0b〜R6bが設定される。そして、各直線経路R0b〜R6bに沿ったアンラップ処理と、起点群P0b〜P6bの隣接する起点間のアンラップ処理とが行われる。なお、第1及び第2のOK領域に回り込み経路を設定する必要がある場合には適宜設定が行われ、設定された回り込み経路に沿ってアンラップ処理が行われる。
アンラップ処理部43は、オフセット画像に対しても上記位相微分画像と同一のOK領域を設定し、該OK領域に上記位相微分画像のアンラップ処理時と同一の起点群、直線経路、回り込み経路を設定して、同一の順序でアンラップ処理を行う。
次に、傾き補正及び段差補正方法について説明する。傾き補正処理部46は、オフセット処理部44によるオフセット処理後の位相微分画像について、各OK領域に残像するほぼ一定の傾きを有するノイズを表す傾き補正画像を作成し、作成した傾き補正画像を該位相微分画像の各OK領域から減算する。
具体的には、傾き補正処理部46は、図10に示すように、OK領域をx方向に貫通するラインLxに沿った画素値ψ’の変化を線形式でフィッティングすることにより補正関数(ψ’=ax+b、a,bはパラメータ)を求め、これをy方向に拡張することにより傾き補正画像を作成する。このy方向への拡張は、例えば、x方向に沿った各行に上記補正関数をそのまま適用することにより行う。
また、上記補正関数(第1の補正関数)に加えて、OK領域をy方向に貫通するラインLyに沿って同様に補正関数(第2の補正関数)を求め、この第1及び第2の補正関数に基づいて傾き補正画像を作成してもよい。前述のノイズの傾きは、G2像に生じるモアレ縞の方向に依存しており、x方向及びy方向に発生し得る可能性があるため、後者の拡張方法を用いることにより、x方向及びy方向の傾きが反映されたより精度の高い傾き補正画像が得られる。
傾き補正処理部46は、各OK領域について上記処理を行い、各OK領域ごとに傾き補正画像を生成する。
段差補正処理部47は、傾き補正処理部46による傾き補正処理後の位相微分画像について、各OK領域の少なくとも一部の領域について画素値の平均値を算出し、各OK領域で該平均値が同一となるように、各OK領域ごとに画素値に一定値を加算または減算する。なお、段差補正処理部47は、各OK領域の一部の領域に限られず、各OK領域に含まれる全ての画素値の平均値を算出してもよい。この場合は、OK領域内の全画素値の平均を取るので、ノイズが平準化されて、局所的なトレンドによる影響を低く抑えられる。また、段差補正処理部47は、各OK領域の一部の領域について画素値の平均値を算出するには、各OK領域のうち中央領域(例えば、矩形状領域)について画素値の平均値を算出してもよいし、各OK領域中における位相微分画像の4辺のいずれかの辺に沿った一部の領域(例えば、NG領域が位相微分画像をy方向に分断し、OK領域がx方向に分離して存在している場合には、位相微分画像のy方向に対向する2辺のいずれかの辺に沿った領域)について画素値の平均値を算出してもよい。
次に、図11及び図12に示すフローチャートを参照しながらX線撮影装置10の作用を説明する。操作部18aを用いて撮影モードの選択がなされると(ステップS20)、選択された撮影モードがプレ撮影であるか否かの判定が行われる(ステップS21)。プレ撮影である場合には(ステップS21でYES)、撮影指示の待受状態となる(ステップS22)。
操作部18aを用いて撮影指示がなされると(ステップS22でYES)、走査機構23により第2の格子22が所定の走査ピッチずつ並進移動されながら、各走査位置kにおいて、X線源11によるX線照射及びX線画像検出器13によるG2像の検出が行われる(ステップS23)。この縞走査の結果、M枚の画像データが生成され、メモリ14に格納される。
メモリ14に格納されたM枚の画像データは、画像処理部15により読み出され、画像処理部15内では、位相微分画像生成部40により位相微分画像が生成される(ステップS24)。この位相微分画像は、オフセット画像としてオフセット画像記憶部41に記憶される(ステップS25)。プレ撮影動作は、以上で終了する。なお、このプレ撮影は、X線撮影装置10の立ち上げ時等に被検体Hを配置しない状態で少なくとも一度行われればよく、本撮影の前に毎回行われる必要はない。
次に、被検体Hが配置され、ステップS20の撮影モードの選択により本撮影が選択された場合には(ステップS21でNO)、撮影指示の待受状態となる(ステップS30)。操作部18aを用いて撮影指示がなされると(ステップS30でYES)、ステップS23と同様の縞走査が行われ(ステップS31)、メモリ14にM枚の画像データが格納される。この後、同様に、位相微分画像生成部40によって位相微分画像が生成される(ステップS32)。
OK/NG領域検出部42により、メモリ14に格納された画像データに基づき、NG領域及びOK領域の検出が行われる(ステップS33)。この検出結果に基づき、アンラップ処理部43により、ステップS32で生成された位相微分画像のOK領域のみがアンラップ処理される(ステップS34)。同様に、アンラップ処理部43により、オフセット画像記憶部41に記憶されたオフセット画像のOK領域のみがアンラップ処理される(ステップS35)。
アンラップ処理が終了すると、オフセット処理部44により、アンラップ処理後の位相微分画像から、アンラップ処理後のオフセット画像を減算するオフセット補正が行われる(ステップS36)。そして、分断判定部45によりOK領域が分断されているか(OK領域が複数存在するか)否かが判定される(ステップS37)。
OK領域が複数存在する場合には(ステップS38でYES)、傾き補正処理部46により、オフセット処理後の位相微分画像の各OK領域について傾き補正画像が作成され、各傾き補正画像を該位相微分画像の各OK領域から減算することにより、傾きが除去される(ステップS39)。そして、段差補正処理部47により、傾き補正処理後の位相微分画像の各OK領域の少なくとも一部の領域について画素値の平均値が算出され、各OK領域で該平均値が同一となるように、各OK領域ごとに画素値に一定値が加算または減算される(ステップS40)。これにより、OK領域間の段差が解消される。
一方、OK領域が1つの場合には(ステップS38でNO)、傾き補正処理部46及び段差補正処理部47による処理は行われず、段差補正後の位相微分画像は直接位相コントラスト画像生成部48に入力される。
この段差補正後の位相微分画像、またはオフセット処理部44から直接入力された位相微分画像を位相コントラスト画像生成部48が積分処理することにより、位相コントラスト画像が生成され(ステップS41)、段差補正後またはオフセット補正後の位相微分画像と位相コントラスト画像とが画像記録部16に記録された後、モニタ18bに画像表示される(ステップS42)。
なお、分断判定部45による判定処理は、OK/NG領域の判定を行った後、傾き補正処理を行うまでの間であればいずれの時点で行ってもよい。
以上のように、アンラップ処理部43は、位相微分画像に対してアンラップエラーが生じやすいNG領域以外のOK領域のみについてのみアンラップ処理を行うため、アンラップエラーが生じ難く、ノイズの少ない位相微分画像が得られる。X線位相イメージングでの関心領域である軟部組織(軟骨部等)は、NG領域外に存在するため、アンラップエラーによるノイズで軟部組織の画像化が阻害されることは防止される。
また、アンラップ処理部43は、オフセット画像に対しても同様のアンラップ処理を施すため、図13(A)及び図13(B)に示すように、位相微分画像に含まれるノイズムラは、オフセット画像のノイズムラとほぼ同一となる。オフセット補正後の位相微分画像(差分画像)には、図13(C)に示すように、各OK領域に若干の傾きが残存するとともに、OK領域間に若干の段差Sが残存する。この傾きは、傾き補正処理部46により除去される。段差Sは、段差補正処理部47により除去される。なお、関心領域である軟部組織は、傾き補正処理部46により作成される傾き補正画像よりも高周波のデータで表されるため、傾き補正処理により除去されることはない。
なお、上記実施形態では、傾き補正処理部46は、OK領域が複数存在する場合に、図14(A)に示すように、各OK領域ごとに補正関数を求めているが、さらに、OK領域間で補正関数の傾きが近いか否かを判定し、傾きが近い場合には、図14(B)に示すように、ほぼ一直線上に画素値が並ぶようにOK領域内の画素値をシフトさせ、これらの画素値に線形式をフィッティングすることにより補正関数を求めてもよい。上記画素値のシフトは、例えば、各OK領域内の画素値の平均値を求め、この平均値の差異に基づいて行えばよい。これにより、より精度よく補正関数を求めることができる。
また、上記実施形態では、傾き補正処理部46は、ある方向への画素値の変化を線形式でフィッティングすることにより補正関数を求めているが、線形式に限られず、多項式でフィッティングを行うことにより補正関数を求めてもよい。
また、上記実施形態では、アンラップ処理部43は、複数の直線経路R0〜R6のうち1つの直線経路をアンラップ処理するたびに、その直線経路の起点と次の直線経路との起点とのアンラップ処理を行っているが、直線経路R0〜R6のアンラップ処理を行う前に、起点群P0〜P6を先にアンラップ処理し、アンラップ処理後の各起点群P0〜P6から直線経路R0〜R6のそれぞれをアンラップ処理してもよい。
また、逆に、各直線経路R0〜R6をアンラップ処理した後、各起点群P0〜P6をアンラップ処理し、アンラップ処理後の各直線経路R0〜R6のデータを、アンラップ処理後の各起点群P0〜P6のデータに合わせてシフトさせてもよい。
また、上記実施形態では、アンラップ処理部43は、x方向とy方向とのそれぞれに貫通ラインが存在する場合に、y方向を優先してy方向に沿うように起点群を設定しているが、x方向を優先してx方向に沿うように起点群を設定してもよい。
また、アンラップ処理部43は、起点群をy方向に設定するかx方向に設定するかを、NG領域の形状に基づいて決定してもよい。例えば、NG領域の背後に残存する画素に対して行う回り込み処理の回数が少なくなるように起点群の方向を決定する。図7に示すように起点群をy方向に設定した場合には、x方向に沿った2つのライン(起点P1,P5を含むライン)で回り込み処理が必要となるため、回り込み処理の回数は2である。これに対して、起点群をx方向に設定した場合には、y方向に沿った6つのラインで回り込み処理が必要となるため、回り込み処理の回数は6となる。したがって、同図に示すNG領域の形状の場合には、回り込み処理の回数が少なくなるy方向を起点群の方向として決定する。
また、上記実施形態では、アンラップ処理部43によるアンラップ処理において、起点群をOK領域のx方向またはy方向の端部に設定しているが、必ずしも起点群をx方向またはy方向の端部に設定する必要はない。
また、上記実施形態では、アンラップ処理部43によるアンラップ処理において、位相微分画像の各列または各行ごとにアンラップ処理を行うように、各列または各行に起点を設定しているが、これに代えて、OK領域に1つの起点(開始点)を設定し、この開始点から隣り合う画素を順にアンラップ処理してもよい。
例えば、図15(A)に示すように、OK領域に開始点P0を設定し、この開始点P0からx方向及びy方向に隣接する画素をアンラップ処理する。次いで、図15(B)に示すように、アンラップ処理された各画素からx方向及びy方向に隣接する画素をアンラップ処理する。このとき、隣接画素がNG領域に属する画素である場合には対象とせず、アンラップ処理は行わない。また、隣接画素が、アンラップ処理された他の画素の隣接画素である場合にはいずれかを優先する。ここでは、x方向への隣接画素をy方向への隣接画素より優先している。この後、同様にアンラップ処理を進めて行けばよい。
また、上記実施形態では、OK/NG領域検出部42は、強度変調信号の平均強度、振幅、またはビジビリティに基づいて、アンラップエラーが生じやすいNG領域を検出しているが、NG領域の検出基準はこれに限られず、強度変調信号の平均強度の画素間ばらつき(すなわち、吸収画像の画素間ばらつき)や、位相微分画像の画素間ばらつきが所定値より大きい領域をNG領域として検出してもよい。なお、この位相微分画像の画素間ばらつきは、第1及び第2の格子21,22の格子線に直交する方向(x方向)へのばらつきであることが好ましい。
また、位相微分画像の各画素について絶対値を取り、この絶対値が所定値を超える箇所を検出することにより、高吸収体領域のエッジ部分を検出し、このエッジ部で囲われる領域をNG領域として検出してもよい。しかし、ここでNG領域の検出に用いられる位相微分画像は、アンラップ処理部43によるアンラップ処理前のものであるため、図8に示す不連続点DPが存在し、高吸収体領域のエッジ部分の検出を阻害することが考えられる。なお、位相微分画像に代えて吸収画像を用いたとしても、吸収画像は、高吸収体領域のエッジ部分で信号の変化が緩やかであるため、NG領域を精度よく検出することができない。
このため、吸収微分画像に基づいてNG領域を検出することが好ましい。この場合、OK/NG領域検出部42は、本撮影時に得られたM枚分の画像データに基づき、各画素部30に対応する強度変調信号の平均値を算出することにより吸収画像を生成し、生成した吸収画像を微分処理することにより吸収微分画像を生成する。吸収画像の微分処理は、例えば、x方向に画素間の差分値を算出することにより行う。そして、OK/NG領域検出部42は、吸収微分画像に微分処理等を行い、正または負方向に突出したピークを検知することによりNG領域の検出を行う。吸収微分画像は、高吸収体領域のエッジ部分で信号が急峻に変化し、かつラップが生じない(不連続点が存在しない)ため、NG領域を精度よく検出することができる。
なお、OK/NG領域検出部42は、吸収微分画像に加えて吸収画像も参照し、吸収微分画像に生じたピークにより囲まれ、吸収量の大きい領域をNG領域として検出してもよい。
また、OK/NG領域検出部42は、プレ撮影時に得られたM枚分の画像データに基づいて吸収画像を生成して、これを補正画像として記憶しておき、本撮影時にM枚分の画像データに基づいて生成した吸収画像に対して補正画像を減算または除算した後、吸収微分画像を生成してもよい。これにより、吸収微分画像から被検体Hに関係しないノイズ成分が除去されるため、NG領域がより精度よく検出される。
また、OK/NG領域検出部42は、強度変調信号の平均強度や最大強度が所定値より大きく、強度変調信号に飽和が生じている領域をNG領域として検出してもよい。この強度変調信号の飽和は、被検体Hを透過せずに第1及び第2の格子21,22を介してX線画像検出器13に直接入射した画素領域(素抜け領域)で生じやすい。強度変調信号が飽和すると位相ズレ量ψ(x)が正確に得られなくなるため、この素抜け領域もアンラップエラーが生じやすい領域である。なお、OK/NG領域検出部42は、上記の各検出基準を組み合わせてNG領域を検出してもよい。
さらに、X線画像検出器13、第1の格子21、第2の格子22に欠陥が生じたり、ゴミなどが付着したりした場合には、特定の画素部30の画素値が常に高く、または低くなることがある。このような画素欠陥が生じた領域は、強度変調信号の平均強度、振幅、またはビジビリティが異常値を示すため、アンラップエラーが生じやすい領域となる。このような画素欠陥領域についても、上記の各検出基準を適宜組み合わせることにより、NG領域として検出可能である。
また、上記実施形態では、NG領域にはアンラップ処理が行われないため、最終的に画像記録部16に記録されモニタ18bに表示される位相微分画像のNG領域は、不連続点が残存したノイズの大きい画像となる可能性があるため、図16に示すように、画像処理部15にNG領域画像置換部50を設けてもよい。ここで、上記実施形態と同一構成部については同一の符号を付しており、これらの説明は省略する。
NG領域画像置換部50は、本撮影時にメモリ14に記憶されたM枚分の画像データに基づき、吸収画像、吸収画像の微分画像、または小角散乱画像を生成し、該画像のNG領域に対応する部分を、オフセット補正後の位相微分画像のNG領域に挿入して置換する。また、同様に、位相コントラスト画像のNG領域を置換してもよい。吸収画像は、強度変調信号の平均強度を画像化することにより生成される。吸収画像の微分画像は、吸収画像を所定方向(例えば、x方向)に微分処理することにより生成される。小角散乱画像は、強度変調信号の振幅を画像化することにより生成される。
また、上記実施形態では、段差補正処理部47は、各OK領域の少なくとも一部の領域について画素値の平均値を同一とすることに基づいて段差補正を行なっているが、吸収微分画像を用いて段差補正を行なってもよい。吸収微分画像は、ラップが生じないことにより、OK領域間での段差が殆ど生じず、段差補正の基準データとして好適である。
具体的には、段差補正処理部47は、前述のように吸収微分画像60を生成し、図17に示すように、吸収微分画像60内に、OK/NG領域検出部42で検出されたOK領域を設定し、各OK領域中から画素値がほぼ同一となる1つまたは複数の画素からなる画素領域D1,D2をそれぞれ抽出する。そして、傾き補正処理部46による傾き補正処理後の位相微分画像について、各OK領域の画素領域D1,D2の画素値が同一となるように、各OK領域ごとに各画素値に一定値を加算または減算する。なお、各画素領域D1,D2を複数の画素からなる領域とする場合には、該複数の画素値の平均値等を、各画素領域D1,D2の画素値とする。
また、段差補正処理部47は、画素領域D1,D2を、各OK領域中においてノイズが所定の閾値未満の領域に設定することが好ましい。こうすることで、画素領域D1,D2は、各OK領域内において被検体H(軟部組織や肉部)が存在する領域以外の素抜け領域に設定される。素抜け領域は、ノイズが少なく画素値の変化がほぼ一定であるため、OK領域間の段差が顕著に得られる
なお、本実施形態においても、プレ撮影により生成した補正画像を、本撮影で生成した吸収画像から減算または除算した後、吸収微分画像を生成してもよい。
また、上記実施形態では、被検体HをX線源11と第1の格子21との間に配置しているが、被検体Hを第1の格子21と第2の格子22との間に配置してもよい。
また、上記実施形態では、縞走査時に第2の格子22を格子線に直交する方向(x方向)に移動させているが、本出願人により特願2011−097090号として出願されているように、第2の格子22を格子線に対して傾斜する方向(xy平面内でx方向及びy方向に直交しない方向)に移動させてもよい。この場合には、第2の格子22の移動のx方向成分に基づいて、走査位置kを設定すればよい。第2の格子22を格子線に対して傾斜する方向に移動させることにより、縞走査の一周期分の走査に要するストローク(移動距離)が長くなるため、移動精度が向上するといった利点がある。
また、上記実施形態では、縞走査時に第2の格子22を移動させているが、第2の格子22に代えて、第1の格子21を格子線に直交する方向または傾斜する方向に移動させてもよい。
また、上記第実施形態では、X線源11から射出されるコーンビーム状のX線を射出するX線源11を用いているが、平行ビーム状のX線を射出するX線源を用いることも可能である。この場合には、上式(1)に代えて、p=pをほぼ満たすように第1及び第2の格子21,22を構成すればよい。
また、上記実施形態では、X線源11から射出されたX線を第1の格子21に入射させており、X線源11は単一焦点であるが、X線源11の射出側直後(X線源11と第1の格子21との間)に、WO2006/131235号公報等に記されたマルチスリット(線源格子)を設けることにより、X焦点を分散化してもよい。マルチスリットの格子線はy方向に平行である。これより、高出力のX線源を用いることが可能となり、X線量が向上するため、位相微分画像の画質が向上する。この場合、マルチスリットのピッチpは、下式(10)を満たす必要がある。ここで、距離Lは、マルチスリットから第1の格子21までの距離を表す。
このようにマルチスリットを設けた場合には、マルチスリットの位置がX線焦点の位置となるため、上記実施形態の距離Lは、距離Lに置き換えられる。
また、マルチスリットを設けた場合には、マルチスリットを固定したまま、第1の格子21または第2の格子22を移動させて縞走査を行うことの他に、第1及び第2の格子21,22を固定したまま、マルチスリットを移動させることにより縞走査を行ってもよい。この場合、マルチスリットのピッチpを前述のMで割った値(p/M)を走査ピッチとして、マルチスリットをx方向に並進移動させればよい。これにより、第1及び第2の格子21,22に対するマルチスリットの走査位置kは、k=0,1,2,・・・,M−1と順に変更される。
また、上記実施形態では、第1の格子21が入射X線を幾何光学的に投影するように構成しているが、WO2004/058070号公報等で知られているように、第1の格子21をタルボ効果が生じる構成としてもよい。第1の格子21でタルボ効果を生じさせるためには、X線の空間干渉性を高めるように、小焦点のX線光源を用いるか、上記マルチスリットを用いればよい。
第1の格子21でタルボ効果が生じる場合には、第1の格子21の自己像(G1像)は、第1の格子21からz方向下流にタルボ距離Zだけ離れた位置に生じる。このため、第1の格子21から第2の格子22までの距離Lをタルボ距離Zとする必要がある。この場合には、第1の格子21を位相型格子とすることも可能である。
タルボ距離Zは、第1の格子21の構成とX線のビーム形状とに依存する。例えば、第1の格子21が吸収型格子であり、X線源11から射出されるX線がコーンビーム状である場合には、タルボ距離Zは、下式(11)で表される。ここで、「m」は、正の整数である。この場合には、格子ピッチp,pは、上式(1)をほぼ満たすように設定される(ただし、マルチスリットを用いる場合には、距離Lは距離Lに置き換えられる)。
また、第1の格子21がX線にπ/2の位相変調を与える位相型格子であり、X線源11から射出されるX線がコーンビーム状である場合には、タルボ距離Zは、下式(12)で表される。ここで、「m」は、「0」または正の整数である。この場合には、格子ピッチp,pは、上式(1)をほぼ満たすように設定される(ただし、マルチスリットを用いる場合には、距離Lは距離Lに置き換えられる)。
また、第1の格子21がX線にπの位相変調を与える位相型格子であり、X線源11から射出されるX線がコーンビーム状である場合には、タルボ距離Zは、下式(13)で表される。ここで、「m」は、「0」または正の整数である。この場合には、G1像のパターン周期が第1の格子21の格子周期の1/2倍となるため、格子ピッチp,pは、次式(14)をほぼ満たすように設定される(ただし、マルチスリットを用いる場合には、距離Lは距離Lに置き換えられる)。

また、第1の格子21が吸収型格子であり、X線源11から射出されるX線が平行ビーム状である場合には、タルボ距離Zは、下式(15)で表される。ここで、「m」は、正の整数である。この場合には、格子ピッチp,pは、p=pの関係をほぼ満たすように設定される。
また、第1の格子21がX線にπ/2の位相変調を与える位相型格子であり、X線源11から射出されるX線が平行ビーム状である場合には、タルボ距離Zは、下式(15)で表される。ここで、「m」は、「0」または正の整数である。この場合には、格子ピッチp,pは、p=pの関係をほぼ満たすように設定される。
そして、第1の格子21がX線にπの位相変調を与える位相型格子であり、X線源11から射出されるX線が平行ビーム状である場合には、タルボ距離Zは、下式(17)で表される。ここで、「m」は、「0」または正の整数である。この場合には、G1像のパターン周期が第1の格子21の格子周期の1/2倍となるため、格子ピッチp,pは、p=p/2の関係をほぼ満たすように設定される。
また、上記実施形態では、格子部12に第1及び第2の格子21,22の2つの格子を設けているが、第2の格子22を省略し、第1の格子21のみとすることも可能である。
例えば、特開平2009−133823号公報に記されたX線画像検出器を用いることにより、第2の格子22を省略し、第1の格子21のみとすることが可能である。このX線画像検出器は、X線を電荷に変換する変換層と、変換層において変換された電荷を収集する電荷収集電極とを備えた直接変換型のX線画像検出器であり、各画素の電荷収集電極が複数の線状電極群を備える。1つの線状電極群は、一定の周期で配列された線状電極を互いに電気的に接続したものであり、他の線状電極群と互いに位相が異なるように配置されている。この線状電極群が第2の格子22として機能し、線状電極群が複数存在することにより、一度の撮影で位相の異なる複数のG2像の検出が行われる。したがって、この構成では、走査機構23を省略することが可能である。
また、走査機構23を省略し、第1及び第2の格子21,22を介してX線画像検出器13により得られる単一の画像データに基づいて位相微分画像を生成する方法がある。この方法として、本出願人により特願2010−256241号として出願されている画素分割法がある。この画素分割法では、第1の格子21と第2の格子22とを、z方向の回りに僅かに回転させて、y方向に周期を有するモアレ縞をG2像に発生させる。X線画像検出器13により得られる単一の画像データを、該モアレ縞に対して互いに位相が異なる画素行(x方向に並ぶ画素)の群に分割し、分割された複数の画像データを、縞走査により互いに異なる複数のG2像に基づくものと見なして、上記縞走査法と同様な手順で位相微分画像を生成する。この画素分割法において、前述の強度変調信号は、単一の画像データに生じるモアレ縞の1周期分の画素値の強度変化として表される。
さらに、画素分割法と同様に、走査機構23を省略し、第1及び第2の格子21,22を介してX線画像検出器13により得られる単一の画像データに基づいて位相微分画像を生成する方法として、WO2010/050483号公報に記載されたフーリエ変換法が知られている。このフーリエ変換法は、上記単一の画像データに対してフーリエ変換を行うことによりフーリエスペクトルを取得し、このフーリエスペクトルからキャリア周波数に対応したスペクトル(位相情報を担うスペクトル)を分離した後、逆フーリエ変換を行うことにより位相微分画像を生成する方法である。なお、このフーリエ変換法において、前述の強度変調信号は、画素分割法の場合と同様に、単一の画像データに生じるモアレ縞の1周期分の画素値の強度変化として表される。
本発明は、医療診断用の放射線撮影装置の他に、工業用の放射線撮影装置等に適用することが可能である。また、放射線は、X線以外に、ガンマ線等を用いることも可能である。
10 X線撮影装置
12 格子部
13 X線画像検出器
21 第1の格子
21a X線吸収部
21b X線透過部
22 第2の格子
22a X線吸収部
22b X線透過部
30 画素部
31 画素電極
33 ゲート走査線
35 信号線

Claims (23)

  1. 放射線源から射出され、被検体を透過した放射線を検出して画像データを生成する放射線検出器と、
    前記放射線源と前記放射線検出器との間に配置された格子部と、
    前記画像データに基づき、所定の範囲にラップされた値で表現された位相微分画像を生成する位相微分画像生成部と、
    前記被検体を配置しない状態で行われるプレ撮影において、前記位相微分画像生成部により生成された前記位相微分画像をオフセット画像として記憶するオフセット画像記憶部と、
    前記被検体を配置した状態で行われる本撮影において、前記位相微分画像生成部により生成された前記位相微分画像内でアンラップエラーが生じやすいNG領域を検出するとともに、それ以外の領域をOK領域として検出するOK/NG領域検出部と、
    前記本撮影により得られた前記位相微分画像と、前記オフセット画像とのそれぞれについて前記OK領域のみをアンラップ処理するアンラップ処理部と、
    前記アンラップ処理後の位相微分画像から、前記アンラップ処理後のオフセット画像を減算するオフセット補正を行うオフセット処理部と、
    前記オフセット補正後の位相微分画像の前記OK領域に残存するほぼ一定の傾きを有するノイズを除去する傾き補正処理を行う傾き補正処理部と、
    前記OK領域間に残存する段差を除去する段差補正処理を行う段差補正処理部と、
    を備えることを特徴とする放射線撮影装置。
  2. 前記OK領域が複数存在するか否かを判定する判定部を備え、
    前記傾き補正処理部及び前記段差補正処理部は、前記OK領域が複数存在する場合にのみ前記処理を行うことを特徴とする請求項1に記載の放射線撮影装置。
  3. 前記傾き補正処理部は、前記オフセット補正後の位相微分画像の前記OK領域の画素値の一方向への変化を線形式または多項式でフィッティングすることにより補正関数を求め、これを前記一方向と直交する方向に拡張することにより傾き補正画像を作成し、この傾き補正画像に基づいて前記ノイズを除去することを特徴とする請求項1または2に記載の放射線撮影装置。
  4. 前記傾き補正処理部は、前記OK領域が複数存在し、隣り合う前記OK領域の補正関数の傾きが近い場合に、該隣り合う前記OK領域の画素値の一方向への変化を線形式または多項式でまとめてフィッティングすることにより補正関数を求め、この補正関数を該隣り合う前記OK領域の補正関数とすることを特徴とする請求項3に記載の放射線撮影装置。
  5. 前記傾き補正処理部は、前記オフセット補正後の位相微分画像の前記OK領域の画素値の異なる2方向への変化を線形式または多項式でフィッティングすることにより第1及び第2の補正関数を求め、この第1及び第2の補正関数に基づいて傾き補正画像を作成し、この傾き補正画像に基づいて前記ノイズを除去することを特徴とする請求項2に記載の放射線撮影装置。
  6. 前記段差補正処理部は、前記傾き補正処理後の位相微分画像について、各OK領域の少なくとも一部の領域について画素値の平均値を算出し、各OK領域で該平均値が同一となるように、各OK領域ごとに画素値に一定値を加算または減算することを特徴とする請求項1から5いずれか1項に記載の放射線撮影装置。
  7. 前記アンラップ処理部は、前記OK領域を一方向に貫通する貫通ラインに沿って起点群を設定し、前記起点群の隣接する起点間のアンラップ処理と、前記起点群の各起点から前記貫通ラインに直交する直線経路に沿ったアンラップ処理と行うことを特徴とする請求項1から6いずれか1項に記載の放射線撮影装置。
  8. 前記アンラップ処理部は、前記起点群から見て前記NG領域の背後に残存する前記OK領域内の画素に対するアンラップ処理をさらに行うことを特徴とする請求項7項に記載の放射線撮影装置。
  9. 前記アンラップ処理部は、前記NG領域の背後に残存する画素に対するアンラップ処理の回数が少なくなるように前記起点群の方向を決定することを特徴とする請求項8に記載の放射線撮影装置。
  10. 前記アンラップ処理部は、前記起点群を、前記位相微分画像のいずれかの一辺に沿って設定することを特徴とする請求項7に記載の放射線撮影装置。
  11. 前記格子部は、放射線源からの放射線を通過させて第1の周期パターン像を生成する第1の格子と、前記第1の周期パターン像を部分的に遮蔽して第2の周期パターン像を生成する第2の格子と有し、
    前記放射線画像検出器は、前記第2の周期パターン像を検出して画像データを生成することを特徴とする請求項1に記載の放射線撮影装置。
  12. 前記格子部は、前記第1の格子または第2の格子を所定の走査ピッチで移動させ、複数の走査位置に順に設定する走査機構を備え、
    前記放射線画像検出器は、前記各走査位置で前記第2の周期パターン像を検出して画像データを生成し、
    前記位相微分画像生成部は、前記放射線画像検出器により生成される複数の画像データに基づいて位相微分画像を生成することを特徴とする請求項11に記載の放射線撮影装置。
  13. 前記走査機構は、前記第1の格子または第2の格子を、格子線に直交する方向に移動させることを特徴とする請求項12に記載の放射線撮影装置。
  14. 前記走査機構は、前記第1の格子または第2の格子を、格子線に対して傾斜する方向に移動させることを特徴とする請求項12に記載の放射線撮影装置。
  15. 前記位相微分画像生成部は、前記放射線検出器により得られる単一の画像データに基づいて前記位相微分画像を生成することを特徴とする請求項11に記載の放射線撮影装置。
  16. 前記OK/NG領域検出部は、画素値の強度変化を表す強度変調信号の平均強度、振幅、ビジビリティのうち1つまたは複数の組み合わせに基づいて前記NG領域を検出することを特徴とする請求項12から15いずれか1項に記載の放射線撮影装置。
  17. 前記OK/NG領域検出部は、画素値の強度変化を表す強度変調信号の平均強度に基づいて吸収画像を生成し、この吸収画像に微分処理を施すことにより生成した吸収微分画像に基づいて前記NG領域を検出することを特徴とする請求項12から15いずれか1項に記載の放射線撮影装置。
  18. 前記段差補正処理部は、画素値の強度変化を表す強度変調信号の平均強度に基づいて吸収画像を生成し、この吸収画像に微分処理を施すことにより生成した吸収微分画像内に、前記OK領域を設定するとともに、前記各OK領域中から画素値がほぼ同一となる1つまたは複数の画素からなる画素領域を抽出し、前記傾き補正処理後の位相微分画像について、前記各OK領域の画素領域の画素値が同一となるように、前記各OK領域ごとに各画素値に一定値を加算または減算することを特徴とする請求項12から17いずれか1項に記載の放射線撮影装置。
  19. 吸収画像、吸収画像の微分画像、小角散乱画像のうちいずれかを生成し、前記位相微分画像の前記NG領域を置換するNG領域画像置換部を備えることを特徴とする請求項12から18いずれか1項に記載の放射線撮影装置。
  20. 前記第1の格子は、吸収型格子であり、入射した放射線を幾何光学的に投影することにより前記第1の周期パターン像を生成することを特徴とする請求項11から18いずれか1項に記載の放射線撮影装置。
  21. 前記第1の格子は、吸収型格子または位相型格子であり、入射した放射線にタルボ効果を生じさせて前記第1の周期パターン像を生成することを特徴とする請求項11から18いずれか1項に記載の放射線撮影装置。
  22. 前記放射線源から放射された放射線を部分的に遮蔽して焦点を分散化するマルチスリットを備えることを特徴とする請求項1から21いずれか1項に記載の放射線撮影装置。
  23. 被検体を配置しない状態において、放射線源から射出され、格子部を通過した放射線を検出して画像データを生成し、この画像データに基づき、所定の範囲にラップされた値で表現された位相微分画像を生成して、これをオフセット画像として記憶するプレ撮影工程と、
    被検体を配置した状態において、前記放射線源から射出され、被検体及び前記格子部を通過した放射線を検出して画像データを生成し、この画像データに基づき、所定の範囲にラップされた値で表現された位相微分画像を生成する本撮影工程と、
    前記本撮影工程で生成された前記位相微分画像内でアンラップエラーが生じやすいNG領域を検出するとともに、それ以外の領域をOK領域として検出するOK/NG領域検出工程と、
    前記本撮影工程で生成された前記位相微分画像と、前記オフセット画像とのそれぞれについて前記OK領域のみをアンラップ処理するアンラップ処理工程と、
    アンラップ処理後の前記位相微分画像から、アンラップ処理後の前記オフセット画像を減算するオフセット補正を行うオフセット処理工程と、
    前記オフセット補正後の位相微分画像の前記OK領域に残存するほぼ一定の傾きを有するノイズを除去する傾き補正処理工程と、
    前記OK領域間に残存する段差を除去する段差補正処理工程と、
    を備えることを特徴とする放射線撮影方法。
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