JP2013113414A - 圧力容器 - Google Patents

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Abstract

【課題】現地での全体焼鈍が不要で、しかも貯槽の大容量化が可能な圧力容器を提供する。
【解決手段】溶接部における溶接後の熱処理が不要な母材厚の上限値が法規により規定され、複数の板材の突合せ溶接により外殻が形成された圧力容器10において、前記外殻が、ノズル18が一体的に設けられたノズル取付板材A11と、開口部の無い板材B12とから構成され、ノズル取付板材A11及び板材B12はノズル18より引張強さが大きく、板材B12の板厚は前記上限値以下とされ、ノズル取付板材A11は、ノズル取付板材A11の端面に向けて板厚が漸減するテーパ状の周縁部を有し、ノズル取付板材A11の端面の板厚が前記上限値以下とされている。
【選択図】図1

Description

本発明は、高圧ガスが貯蔵されるガスホルダー等の圧力容器に関し、特に、現地ヤードで組立が行われる大型の圧力容器に関する。
高圧ガス保安法及びガス事業法では、法規で定められた母材厚を超える板材を用いてガスホルダー(ガスタンク)等の圧力容器を製作する場合、溶接部に発生する内部応力を除去するため、適切な方法により溶接後の熱処理を行わなければならないと定めている。そして、高圧ガス保安法 特定設備検査規則では、「適切な方法により、溶接後の熱処理を行うようにしなければならない。」と規定され、同特定設備の技術基準の解釈では、「溶接部の熱処理は、溶接部を炉内に入れること。」と規定されている。また、ガス事業法技術基準の解釈では、附属書Sにおいて、「溶接後、熱処理の方法は、炉内加熱による方法、局部加熱による方法、圧力容器の内面からの加熱」と列挙されている。
現地ヤードで組立が行われる大型の圧力容器では、圧力容器全体を現地ヤードで炉内に入れることができないため、ガス事業法技術基準の解釈に従い、大型圧力容器の全体焼鈍が行われる(特許文献1参照)。即ち、圧力容器の一部に設けた開口に超高速燃焼ガスバーナーの噴射口を圧力容器の内部に向けて装着し、排気筒を圧力容器の頂部に取り付け、圧力容器の外面全体を断熱材で被覆する。そして、超高速燃焼ガスバーナーに点火して圧力容器内の気体の温度を上昇させ、圧力容器が所定の温度になるまで加熱した後、超高速燃焼ガスバーナーを消して圧力容器を大気温度まで徐冷する。
特公平1−42328号公報
しかしながら、上述した大型圧力容器の全体焼鈍法は、加熱による圧力容器の変形や温度の均一化、加熱・冷却速度の制御など留意しなければならない課題が多く、現地施工費が増大するという問題もある。そのため、通常は、溶接部の焼鈍が不要な板厚(法規で定められた母材厚以下の板厚)を有する鋼板を用いて圧力容器が製作される。しかし、このような鋼板を用いて圧力容器を製作した場合、板厚制限のために貯槽容量を小さくしなければならなくなる。その結果、需要量を確保するため、複数基の貯槽が必要となり、製作費及び必要敷地面積が増大することになる。
一方、引張強さの高い鋼材を使用すれば板厚を薄くすることができ、溶接部の焼鈍が不要となると共に、大容量の貯槽の製作が可能となるが、圧力容器に設けられるノズルの強度が確保できないという問題がある。
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、現地での全体焼鈍が不要で、しかも貯槽の大容量化が可能な圧力容器を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明は、溶接部における溶接後の熱処理が不要な母材厚の上限値が法規により規定され、複数の板材の突合せ溶接により外殻が形成された圧力容器において、
前記外殻が、ノズルが一体的に設けられたノズル取付板材Aと、開口部の無い板材Bとから構成され、前記ノズル取付板材A(ノズルを除いた板材部分をいう、以下同様)及び前記板材Bは前記ノズルより引張強さが大きく、前記板材Bの板厚は前記上限値以下とされ、前記ノズル取付板材Aは、該ノズル取付板材Aの端面に向けて板厚が漸減するテーパ状の周縁部を有し、前記端面の板厚が前記上限値以下とされていることを特徴としている。
圧力容器の外殻を構成する板材に高強度の鋼材を使用すれば、法定上限値以下の板厚を有する板材により大容量の圧力容器を構成した場合でも、該板材に作用する面内引張応力を許容引張応力以下とすることができる。しかし、高強度の鋼材を用いてノズルを鍛造した場合、大容量圧力容器のノズルとして十分な性能を確保できないことが判明した。
そこで、本発明では、圧力容器の外殻を構成する板材に、ノズルに使用する鋼材より引張強さが大きな鋼材を使用すると共に、前記板材を、ノズルが一体的に設けられるノズル取付板材Aと、開口部の無い板材Bにグループ分けする。そして、板材Bの板厚を法定上限値以下として、現地における焼鈍を不要とすると共に、貯槽の大容量化を図る一方、従来と同程度の引張強さを有する鋼材を使用してノズルを鍛造し、ノズルと一体化されるノズル取付板材Aの板厚を法定上限値より大きくしてノズルの強度を確保する。またその際、ノズル取付板材Aと板材Bの溶接部の焼鈍処理を不要とするため、ノズル取付板材Aの周縁部をテーパ状として、ノズル取付板材Aの端面の板厚を法定上限値以下とする。
例えば、ノズル取付板材A及び板材Bを780N/mm級高張力鋼で形成し、ノズルを610N/mm級高張力鋼で形成することにより、現地における全体焼鈍が不要で、大容量化が可能な圧力容器を実現することができる。
なお、ノズル取付板材A及び板材Bの板厚の下限値は、板材に作用する面内引張応力≦板材の許容引張応力の条件から定まる。
また、本発明に係る圧力容器では、前記ノズル取付板材Aと前記板材Bとを溶接接合する前に、前記ノズル取付板材Aを焼鈍しておくことが望ましい。
本発明では、板材Bの板厚が法定上限値以下なので、ノズルが一体的に設けられたノズル取付板材Aのみ工場で炉内焼鈍処理すれば良い。
本発明に係る圧力容器では、圧力容器の外殻を構成するノズル取付板材A及び板材Bの引張強さをノズルに使用する鋼材に比べて大きくすることにより貯槽の大容量化を図ると共に、板材Bの板厚を法定上限値以下にして現地における焼鈍を不要とする。また、従来と同程度の引張強さを有する鋼材を使用してノズルを鍛造し、ノズルと一体化されるノズル取付板材Aの板厚を法定上限値より大きくしてノズルの強度を確保すると共に、ノズル取付板材Aの周縁部をテーパ状として、ノズル取付板材Aの端面の板厚を法定上限値以下とすることにより、ノズル取付板材Aと板材Bの溶接部の焼鈍処理を不要とする。これらにより、圧力容器の製作費及び必要敷地面積の増大を抑制することができる。
本発明の一実施の形態に係るガスホルダーの立面図である。 同ガスホルダーの平面図である。 同ガスホルダーの底面図である。 図2のA−A矢視断面図である。 図2のB−B矢視断面図である。
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態に付き説明し、本発明の理解に供する。
高圧ガス保安法に基づき規定された特定設備検査規則の第29条には、「特定設備の溶接部は、応力除去のため、適切な方法により溶接後の熱処理を行うようにしなければならない。ただし、応力除去を行う必要がないと認められるときは、この限りではない。」と規定され、別添1 特定設備の技術基準の解釈の第38条第1号には、溶接後に応力除去のための熱処理を行う必要がない炭素鋼の溶接部として、「イ 母材の厚さが32mm以下のもの」、「ロ 母材の厚さが32mmを超え38mm以下のものであって予熱温度が95℃以上のもの」が挙げられている。
また、ガス事業法に基づき規定されたガス工作物技術基準の解釈例の第71条第1項柱書には、「溶接部(平底円筒形貯槽に係るものを除く。)であって次の各号に掲げるもの以外のものは、JIS B8265(2008)「圧力容器の構造−一般事項」の「6.7熱処理」の規定に従って溶接後熱処理を行うものとする。」と記載され、次の各号に掲げるものとして同項第一号には、「規定最小引張強さが620ニュートン毎平方ミリメートルを超える高張力鋼(P番号11A−2及び11Bの材料)で作られた容器(最低使用温度が−30度以下のものを除く。)であって、厚さが32ミリメートル以下(150度以上の予熱を行う場合は38ミリメートル以下)のものの長手継手若しくは周継手の溶接部(曲げ加工前に溶接を行う場合は、板の厚さが1ミリメートルを超えるもの及び溶接線が交わるものを除く。)又は容器にノズル、フランジ等を取り付ける溶接部」と規定されている。
ここで、620ニュートン毎平方ミリメートルを超える高張力鋼(P番号11Bの材料)は、炭素鋼で焼き入れ焼き戻しによって引張強さが790N/mm級のものを指す。また、前記「6.7熱処理」の規定には、「附属書S」の規定に従うとされ、「附属書S」では、SM570、SPV450、SPV490等の炭素鋼で引張強さが590N/mm級のP番号1〜3で、厚さが38mmを超える場合、厚さが32mmを超え38mm以下で95℃以上の予熱を行わない場合は、溶接後熱処理を行うと規定されている。
上記より、38mm以下の板厚を有する板材を用いてガスホルダーを製作すれば、溶接部における溶接後の熱処理が不要であることがわかる。以下、溶接部における溶接後の熱処理が不要な板厚(母材厚)の法定上限値が38mmであることを前提としたうえで、本発明に基づいて製作した大型のガスホルダー(圧力容器)について説明する。
本発明の一実施の形態に係るガスホルダー10の立面図を図1に、ガスホルダー10の平面図を図2に、ガスホルダー10の底面図を図3にそれぞれ示す。
ガスホルダー10は直径14m程度の球殻からなり、貯槽容量は約1500mである。ガスホルダー10の外周部には、複数の支柱15がガスホルダー10を取り囲むように配置されており、ガスホルダー10は複数の支柱15を介してグランド17上に固定されている。また、各支柱15間には、タイロッドブレース16がX状に取り付けられている。ガスホルダー10の自重は支柱15で支持され、ガスホルダー10に作用する地震時水平力はタイロッドブレース16で抵抗する構造となっている。
ガスホルダー10の外殻は、湾曲した(一定の曲率を有する)複数の板材の端面同士を突合せ溶接することにより形成されている。各板材は平面視して大略矩形状とされ、ノズル18、19、20が一体的に設けられたノズル取付板材A13、14と、開口部の無い板材B12の2種類の板材を使用している。なお、以下の説明では、「ノズル取付板材A13、14」を単に「板材A11」と呼ぶことがある。
板材A11及び板材B12は、引張強さが780N/mm以上である780N/mm級高張力鋼から形成されている。
板材B12の板厚は、溶接後の熱処理が不要な板厚の法定上限値である38mmとされている。一方、板材A11はノズル18、19、20が設けられるため、50mmの板厚、即ち法定上限値を超える板厚とされている。
また、板材A11では、溶接部21の焼鈍処理を不要とするため、図5に示すように、板材A11の周縁部11aの一方の面(大気に接する面)を、端面11bに向けて板厚が漸減するテーパ状とし、板材A11の端面11bの板厚を法定上限値である38mmとしている。なお、周縁部11aの傾斜角度は、面内方向寸法3に対し板厚方向寸法1以下の割合が好ましい。本実施の形態では、周縁部11aの幅は36mm程度となる。
板材A11及び板材B12の端部は両面開先加工されている。板材A11と板材B12の端部同士もしくは板材B12の端部同士を現地にて突合せ溶接する際は、板材A11及び板材B12の端部をガスバーナ等で150℃以上に予熱した後、被覆アーク溶接等により両面多層溶接を行って溶接部21を形成する。
ノズル取付板材A13、14は、ガスホルダー10の頂部と底部にそれぞれ配置される(図1参照)。ガスホルダー10の頂部に配置されるノズル取付板材A13には、図2に示すように、作業員が出入りするためのノズル18(マンホール)が中央部に設けられ、ノズル18の周囲に複数のノズル19(安全弁ノズル)が設けられている。一方、ガスホルダー10の底部に配置されるノズル取付板材A14には、図3に示すように、ノズル18が中央部に設けられ、高圧ガスの給排出を行うための一対のノズル20(給排出ノズル)がノズル18を挟んで設けられている。
各ノズル18、19、20は、引張強さが610N/mm以上である610N/mm級高張力鋼を鍛造して形成され、板材A11の表面から外方に突出した状態で板材A11に接合される。図4は、ガスホルダー10の頂部に配置されるノズル取付板材A13の断面を示したものである。ノズル18と板材A11は、工場において溶接接合されて一体化され、ノズル取付板材A13となる。ノズル取付板材A13は焼鈍炉に入れられて熱処理され内部応力が除去される。
因みに、本実施の形態に係るガスホルダー10と同じ設計圧力に対して、従来より使用されている610N/mm級高張力鋼を使用し、板材の板厚を全体焼鈍が不要な38mmとしてガスホルダーを設計した場合、貯槽容量は約720mとなる。これに対して、本実施の形態に係るガスホルダー10の貯槽容量は、上述したように約1500mであり、従来設計のものに比べて2倍以上の容量を実現することができる。
以上、本発明の一実施の形態について説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。例えば、上記実施の形態では、圧力容器を球殻としたが、円筒など他の形状でもよいことは言うまでもない。また、上記実施の形態では、板材Bの板厚及びノズル取付板材Aの端面の板厚を法定上限値である38mmとして設計したが、法定上限値未満で設計しても良いことは言うまでもない。さらにまた、ノズル取付板材Aの形状は矩形に限定されず、例えば、各ノズル毎に円形としても良い。
10:ガスホルダー(圧力容器)、11:板材A、11a:周縁部、11b:端面、12:板材B、13、14:ノズル取付板材A、15:支柱、16:タイロッドブレース、17:グランド、18:ノズル(マンホール)19:ノズル(安全弁ノズル)、19:ノズル(給排出ノズル)、21:溶接部

Claims (3)

  1. 溶接部における溶接後の熱処理が不要な母材厚の上限値が法規により規定され、複数の板材の突合せ溶接により外殻が形成された圧力容器において、
    前記外殻が、ノズルが一体的に設けられたノズル取付板材Aと、開口部の無い板材Bとから構成され、前記ノズル取付板材A及び前記板材Bは前記ノズルより引張強さが大きく、前記板材Bの板厚は前記上限値以下とされ、前記ノズル取付板材Aは、該ノズル取付板材Aの端面に向けて板厚が漸減するテーパ状の周縁部を有し、前記端面の板厚が前記上限値以下とされていることを特徴とする圧力容器。
  2. 請求項1記載の圧力容器において、焼鈍された前記ノズル取付板材Aが前記板材Bに溶接接合されていることを特徴とする圧力容器。
  3. 請求項1又は2記載の圧力容器において、前記ノズル取付板材A及び前記板材Bが780N/mm級高張力鋼から形成され、前記ノズルが610N/mm級高張力鋼から形成されていることを特徴とする圧力容器。
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