JP2013109178A - セルロースアシレートフィルム、位相差フィルム、偏光板及び画像表示装置 - Google Patents

セルロースアシレートフィルム、位相差フィルム、偏光板及び画像表示装置 Download PDF

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Abstract

【課題】Reの絶対値が大きく、Rthの絶対値が小さい、新規なセルロースアシレートフィルムを提供する。
【解決手段】芳香族基を含むアシル基(置換基A)及び脂肪族アシル基(置換基B)を有し、且つ置換基Aの置換度(DSA)及び置換基A及び置換基Bの総置換度(DS)がそれぞれ、下記式(I)及び式(II)を満足するセルロースアシレートの少なくとも1種、及び数平均分子量が700以上のポリエステル化合物の少なくとも1種を含有する組成物からなるセルロースアシレートフィルムである。
式(I) 0.5≦DSA≦1.0
式(II) 2.0≦DS≦2.9
【選択図】なし

Description

本発明は、画像表示装置の種々の部材として有用なセルロースアシレートフィルム、位相差フィルム、光学補償フィルム、及び偏光板、並びにそれを用いた画像表示装置に関する。
近年、液晶表示装置の普及に伴い、表示性能や耐久性に対する要求がより高くなり、応答速度の向上や、表示画像に対して斜め方向から観察した場合のコントラストやカラーバランスといった視野角をより広範囲で補償することが課題となっている。これらの課題を解決すべく、各種液晶モードが開発されており、それに伴って各モードに対応して視野角を補償する目的で位相差フィルムを光学補償フィルムとして開発することが必要となっている。
例えば、横電界を液晶に対して印加する、いわゆるインプレーンスイッチング(IPS)モードでは、色調や黒表示の視野角を改善する手段の一つとして、面内レターデーション(Re)が190nm〜390nmで、Nz(=Rth/Re+0.5)値が0.3〜0.65となる光学補償フィルムが提案されている(特許文献1参照)。このようなフィルム、即ち、Reが大きく、Rthが小さく0程度のフィルムは、例えば、ポリマーフィルムに熱収縮性フィルムを接着して加熱延伸処理を行い、その後、熱収縮性フィルムを剥離して製造することができる(特許文献2及び3参照)。しかしながらこの方法は大量の熱収縮性フィルムを消費すること、製造方法が複雑であることなどといった問題がある。
セルロースアシレートフィルムはその透明性、強靭性から、液晶表示装置向けの偏光板保護フィルムとして広く利用されている。例えばセルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートなどの脂肪酸セルロースエステルを製膜した光学フィルムが提案されている(特許文献4)。また最近では、セルロースアセテートベンゾエートなどの芳香族アシル基を置換したセルロースを製膜した光学フィルムも提案されている(特許文献5)。しかしこれらのフィルムでは、IPS液晶表示装置等の光学補償に寄与し得る光学特性、Reの絶対値が大きく、且つRthの絶対値が小さく0程度の光学性能は得られない。また、特許文献5に記載のような添加剤は、乾燥中に揮散したり、150℃以上といった温度で延伸すると、添加剤の揮散が大きく、面状を悪化させたり、工程を汚染するという問題がある。
特許文献6に開示されている高Re及び低Rthの位相差フィルムは、IPSモード等の水平配向モードの液晶表示装置の光学フィルムとして特に有用であり、一枚のフィルムで実現できれば、コスト面及び薄層化の観点で有益である。しかし、前記光学特性の位相差フィルムを製造するためには、延伸温度を高くする必要があり、フィルム物性の悪化や着色やヘイズが大きくなり画像の表示の悪化という問題がある。
特開平11−305217公報参照 特開2000−231016号公報 特開平5−157911号公報 特開2000−352620号公報 特開2006−328298号公報 特開2009−235374号公報
本発明は、面内レターデーション(Re)の絶対値が大きく、且つRthの絶対値が小さいとともに、ヘイズの上昇及び着色が軽減された、新規なセルロースアシレートフィルム、ならびにそれを用いた位相差フィルム、光学補償フィルム、反射防止フィルム、偏光板、及び画像表示装置を提供することを課題とする。
前記課題を解決するための手段は、以下の通りである。
[1] 芳香族基を含むアシル基(置換基A)及び脂肪族アシル基(置換基B)を有し、且つ置換基Aの置換度(DSA)及び置換基A及び置換基Bの総置換度(DS)がそれぞれ、下記式(I)及び式(II)を満足するセルロースアシレートの少なくとも1種、及び数平均分子量が700以上のポリエステル化合物の少なくとも1種を含有する組成物からなるセルロースアシレートフィルム。
式(I) 0.5≦DSA≦1.0
式(II) 2.0≦DS≦2.9
[2] 波長550nmにおける面内レターデーションRe(550)及び同波長における厚み方向レターデーションRth(550)がそれぞれ、180nm≦Re(550)≦300nm及び0nm≦|Rth(550)|≦30nmを満たす[1]のセルロースアシレートフィルム。
[3] 膜厚が40〜80μmである[1]又は[2]のセルロースアシレートフィルム。
[4] 前記芳香族アシル基(置換基A)が、ベンゾイル基、フェニルベンゾイル基、4−ヘプチルベンゾイル基、2,4,5−トリメトキシベンゾイル基、及び3,4,5−トリメトキシベンゾイル基から選択される[1]〜[3]のいずれかのセルロースアシレートフィルム。
[5] 前記脂肪族アシル基(置換基B)が、炭素数2〜4の脂肪族アシル基である[1]〜[4]のいずれかのセルロースアシレートフィルム。
[6] 前記ポリエステル化合物が、1種以上のジカルボン酸と1種以上の脂肪族ジオールとの重縮合エステルである[1]〜[5]のいずれかのセルロースアシレートフィルム。
[7] 前記ポリエステル化合物が、1種以上のポリエステルジオールと1種以上のジイソシアネート化合物とからなるポリエステルポリウレタンである[1]〜[6]のいずれかのセルロースアシレートフィルム。
[8] 延伸フィルムである[1]〜[7]のいずれかのセルロースアシレートフィルム。
[9] [1]〜[8]のいずれかのセルロースアシレートフィルムからなる位相差フィルム。
[10] 偏光膜と、[1]〜[9]のいずれかのセルロースアシレートフィルムとを有する偏光板。
[11] [10]の偏光板を有する画像表示装置。
本発明によれば、面内レターデーション(Re)の絶対値が大きく、且つRthの絶対値が小さいとともに、ヘイズの上昇及び着色が軽減された、新規なセルロースアシレートフィルム、ならびにそれを用いた位相差フィルム、光学補償フィルム、反射防止フィルム、偏光板、及び画像表示装置を提供することができる。
以下、本発明について詳細に説明する。
なお、本明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
また、本明細書においてセルロースアシレートのアシル基の置換度は、Cellulose Communication 6,73-79(1999)及びChirality 12(9),670-674に書かれている方法を用いて、1H−NMRあるいは13C−NMRにより、決定することができる。
[セルロースアシレートフィルム]
本発明は、芳香族基を含むアシル基(置換基A)及び脂肪族アシル基(置換基B)を有するセルロースアシレートの少なくとも1種を含有する組成物からなるセルロースアシレートフィルムからなる。主成分としてフィルム中に含有されるセルロースアシレートに、芳香族基を含むアシル基(置換基A)が存在することにより、製膜時及び延伸時に、面内レターデーションを顕著に発現させることができ、Reの絶対値が大きいフィルムを製造することができる。一方で、芳香族アシル基の割合が大きくなると、Reを上昇させることがきるものの、|Rth|も大きくなり、高Re且つ低|Rth|のフィルムを得ることができない。
芳香族アシル基の割合を小さくすることで、|Rth|を小さくすることができる。芳香族アシル基の割合が小さくなることによりRe発現性は低下するが、フィルム製造時の条件、例えば延伸温度を高くして延伸倍率を大きくすることで補うことができる。一方で、芳香族アシル基の割合を小さくすることで、セルロースアシレートの全アシル置換度が小さくなると、セルロースアシレートのTgが高くなり、延伸時の熱分解が生じ易くなることが推定される。熱分解によって生じるTgの低下は、フィルム物性の劣化やフィルム着色の増加及びフィルムヘイズの上昇といった問題を生じさせる。
本発明者が、鋭意研究を重ねた結果、芳香族アシル基の置換度DSAが0.5〜1.0で且つ総アシル置換度が2.0〜2.9であるセルロースアシレートを主成分として用いるとともに、分子量が700以上のポリエステル化合物を添加することで、上記問題点を解決でき、高Re且つ低|Rth|を示し、しかも着色及びヘイズの上昇といった問題もないセルロースアシレートフィルムを提供できることを見出した。
セルロースアシレート:
本発明では、芳香族基を含むアシル基(置換基A)及び脂肪族アシル基(置換基B)を有するセルロースアシレートをフィルムの主成分として用いる。該セルロースアシレートを1種類のみを用いてもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。前記セルロースアシレートの置換基A及び置換基Bの総置換度(DS)は、
式(II) 2.0≦DS≦2.9
を満足し、式(II’)
式(II’) 2.2≦DS≦2.8
を満足するのが好ましく、式(II’)
式(II”) 2.3≦DS≦2.7
を満足するのがより好ましい。DSが2.0未満であると、セルロースアシレートのTgが高くなり、高Reを発現するための延伸処理温度がより高くなる。そのため、延伸時の熱分解によって、フィルム着色及びヘイズ上昇が生じ易くなる。一方、DSが2.9を越えると、フィルム作製が困難になり、また|Rth|が上昇する傾向があるので好ましくない。
(芳香族アシル基(置換基A)
芳香族アシル基の芳香族基は、理化学辞典(岩波書店)第4版1208頁に芳香族化合物として定義されているものであり、本発明における「芳香族基」には、芳香族炭化水素基及び芳香族ヘテロ環基の双方が含まれる。より好ましくは芳香族炭化水素基である。
芳香族炭化水素基としては、炭素原子数が6〜24のものが好ましく、6〜10のものがさらに好ましい。芳香族炭化水素基の例には、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、ビフェニル基、ターフェニル基が含まれ、より好ましくはフェニル基である。芳香族ヘテロ環基としては、酸素原子、窒素原子あるいは硫黄原子のうち少なくとも1つを含むものが好ましい。芳香族ヘテロ環の例には、フラン、ピロール、チオフェン、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、トリアゾール、トリアジン、インドール、インダゾール、プリン、チアゾリン、チアジアゾール、オキサゾリン、オキサゾール、オキサジアゾール、キノリン、イソキノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、テトラゾール、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズチアゾール、ベンゾトリアゾール、テトラザインデンが含まれる。芳香族ヘテロ環基としては、ピリジル基、トリアジニル基、キノリル基が特に好ましい。
また前記芳香族基は、1以上の置換基を有してもよく、芳香族基が有する置換基の例には、アルキル基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜12、特に好ましくは1〜8のものであり、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、n−ブチル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ヘキサデシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル、シクロヘキシル基などが挙げられる)、アルケニル基(好ましくは炭素原子数2〜20、より好ましくは2〜12、特に好ましくは2〜8であり、例えばビニル基、アリル基、2−ブテニル基、3−ペンテニル基などが挙げられる)、アルキニル基(好ましくは炭素原子数2〜20、より好ましくは2〜12、特に好ましくは2〜8であり、例えばプロパルギル基、3−ペンチニル基などが挙げられる)、アリール基(好ましくは炭素原子数6〜30、より好ましくは6〜20、特に好ましくは6〜12であり、例えばフェニル基、ビフェニル基、ナフチル基などが挙げられる)、アルコキシ基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜12、特に好ましくは1〜8であり、例えばメトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基などが挙げられる)、アリールオキシ基(好ましくは炭素原子数6〜20、より好ましくは6〜16、特に好ましくは6〜12であり、例えばフェニルオキシ基、2−ナフチルオキシ基などが挙げられる)、アシル基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばアセチル基、ベンゾイル基、ホルミル基、ピバロイル基などが挙げられる)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素原子数2〜20、より好ましくは2〜16、特に好ましくは2〜12であり、例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などが挙げられる)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素原子数7〜20、より好ましくは7〜16、特に好ましくは7〜10であり、例えばフェニルオキシカルボニル基などが挙げられる)、アシルオキシ基(好ましくは炭素原子数2〜20、より好ましくは2〜16、特に好ましくは2〜10であり、例えばアセトキシ基、ベンゾイルオキシ基などが挙げられる)、アシルアミノ基(好ましくは炭素原子数2〜20、より好ましくは2〜16、特に好ましくは2〜10であり、例えばアセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基などが挙げられる)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素原子数2〜20、より好ましくは2〜16、特に好ましくは2〜12であり、例えばメトキシカルボニルアミノ基などが挙げられる)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素原子数7〜20、より好ましくは7〜16、特に好ましくは7〜12であり、例えばフェニルオキシカルボニルアミノ基などが挙げられる)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばメタンスルホニルアミノ基、ベンゼンスルホニルアミノ基などが挙げられる)、スルファモイル基(好ましくは炭素原子数0〜20、より好ましくは0〜16、特に好ましくは0〜12であり、例えばスルファモイル基、メチルスルファモイル基、ジメチルスルファモイル基、フェニルスルファモイル基などが挙げられる)、カルバモイル基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばカルバモイル基、メチルカルバモイル基、ジエチルカルバモイル基、フェニルカルバモイル基などが挙げられる)、アルキルチオ基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばメチルチオ基、エチルチオ基などが挙げられる)、アリールチオ基(好ましくは炭素原子数6〜20、より好ましくは6〜16、特に好ましくは6〜12であり、例えばフェニルチオ基などが挙げられる)、スルホニル基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばメシル基、トシル基などが挙げられる)、スルフィニル基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばメタンスルフィニル基、ベンゼンスルフィニル基などが挙げられる)、ウレイド基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばウレイド基、メチルウレイド基、フェニルウレイド基などが挙げられる)、リン酸アミド基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばジエチルリン酸アミド、フェニルリン酸アミドなどが挙げられる)、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基(好ましくは炭素原子数1〜30、より好ましくは1〜12であり、ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子、具体的には例えばイミダゾリル基、ピリジル基、キノリル基、フリル基、ピペリジル基、モルホリノ基、ベンゾオキサゾリル基、ベンズイミダゾリル基、ベンズチアゾリル基などが挙げられる)、及びシリル基(好ましくは、炭素原子数3〜40、より好ましくは3〜30、特に好ましくは3〜24であり、例えば、トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基などが挙げられる)が含まれる。これらの置換基は更に置換されてもよい。また、置換基が二つ以上ある場合は、同じでも異なってもよい。また、可能な場合には互いに連結して環を形成してもよい。
前記置換基の例の中でも、前記芳香族基の置換基としては、アルキル基、アルコキシ基及び芳香族基等が好ましい。
また、前記置換基Aは、前記芳香族基とカルボニル基(−C(=O)−)とが単結合によって直接連結した構造を有していても、1以上の原子団からなる連結基によって連結していてもよい。連結基の例には、C1〜C10(好ましくはC1〜C5)の直鎖、分岐鎖もしくは環状のアルキレン基(但し、1つの炭素原子又は隣接しない2以上の炭素原子は、酸素原子又は硫黄原子で置換されていてもよい)、及びアルケニレン基が含まれる。これらの連結基は、1以上の置換基を有していてもよく、該置換基の例は、芳香族基が有する置換基の例と同様である。
芳香族基を含むアシル基(置換基A)として好ましいものは、フェニルアセチル基、ジフェニルアセチル基、フェノキシアセチル基、シンナモイル基、4−メトキシ−シンナモイル基、ベンゾイル基、フェニルベンゾイル基、4−エチルベンゾイル基、4−プロピルベンゾイル基、4−t−ブチルベンゾイル基、4−ブチルベンゾイル基、4−ペンチルベンゾイル基、4−ヘキシルベンゾイル基、4−ヘプチルベンゾイル基、3,4−ジメトキシベンゾイル基、2,6−ジメトキシベンゾイル基、2,4−ジメトキシベンゾイル基、3,5−ジメトキシベンゾイル基、3,4,5−トリメトキシベンゾイル基、2,4,5−トリメトキシベンゾイル基、1−ナフトイル基、2−ナフトイル基、2−ビフェニルカルボニル基、又は4−ビフェニルカルボニル基である。
さらに好ましい置換基Aとしては、ベンゾイル基、フェニルベンゾイル基、4−ヘプチルベンゾイル基、2,4,5−トリメトキシベンゾイル基、又は3,4,5−トリメトキシベンゾイル基をあげることができる。前記セルロースアシレートが有する置換基Aは、1種であっても2種以上であってもよい。
前記セルロースアシレートの置換基Aの置換度(DSA)は、下記式(I)
式(I) 0.5≦DSA≦1.0
を満足し、好ましくは下記式(I’)
式(I’) 0.6≦DSA≦0.9
を満足し、より好ましくは下記式(I”)
式(I”) 0.65≦DSA≦0.85
を満足する。DSAが0.5未満であると、光学特性の発現性が低下し、高Reの達成が困難になる。一方、DSAが1.0を越えると、Rth発現性が高くなり、低|Rth|の達成が困難になる。
(脂肪族アシル基(置換基B)
前記セルロースアシレートは、芳香族基を含むアシル基(置換基A)とともに、脂肪族アシル基(置換基B)をさらに有する。前記脂肪族アシル基(置換基B)は、直鎖状、分岐状あるいは環状構造の脂肪族アシル基のいずれであってもよく、また不飽和結合を含む脂肪族アシル基であってもよい。好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜10、より好ましくは炭素数2〜4の脂肪族アシル基である。置換基Bの好ましい例としては、アセチル基、プロピオニル基、及びブチリル基であり、アセチル基やプロピオニル基が好ましい。置換基Bをアセチル基やプロピオニル基とすることで、適度なガラス転移点(Tg)、弾性率などを有するフィルムが得られる。アセチル基等の炭素数が小さい脂肪族アシル基を有することにより、Tgおよび弾性率などを低下させずに、フィルムとして適切な強度を得ることができる。
前記置換基Bの置換度(DSB)は、下記式(III)
式(III) 1.0≦DSB≦2.4
を満たすことが好ましく、
式(III’) 1.5≦DSB≦2.5
を満足するのがより好ましい。DSBが前記範囲のセルロースアシレートは、有機溶媒への溶解性が良好であるので、溶液製膜性により製造する際には製造適性が良好であり、また合成が容易であるという点で好ましい。
前記セルロースアシレートは、セルロースを原料として、生物的あるいは化学的に、芳香族基を含むアシル基(置換基A)及び脂肪族アシル基(置換基B)を導入して得られるセルロース骨格を有する化合物である。
原料綿としては、綿花リンタ、木材パルプ(広葉樹パルプ、針葉樹パルプ)等の天然セルロースのみならず、微結晶セルロース等の木材パルプを酸加水分解して得られる重合度の低い(重合度100〜300)セルロースを用いることができ、場合により混合して使用してもよい。これらの原料セルロースについての詳細な記載は、例えば「プラスチック材料講座(17)繊維素系樹脂」(丸澤、宇田著、日刊工業新聞社、1970年発行)や発明協会公開技報2001−1745(7頁〜8頁)及び「セルロースの事典(523頁)」(セルロース学会編、朝倉書店、2000年発行)に記載のセルロースを用いることができ、特に限定されるものではない。
前記セルロースアシレートは、例えば、アルドリッチ社製セルロースアセテート(アセチル置換度2.45)、ダイセル社製セルロースアセテート(アセチル置換度2.41(商品名:L−70、L−50)、アセチル置換度2.19(商品名:FL−70)、アセチル置換度1.76(商品名:LL−10))、イーストマンケミカル社製セルロースアセテート(アセチル化度1.77(商品名CA−320S))などの低酢化度のセルロースを出発原料として用いて、製造することができる。また、前記セルロースアセテートや、市販のセルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート等を、例えば、特開2008−163193号公報[0121]中に記載の酢酸セルロースのケン化の方法に準じた方法でケン化して、脂肪族アシル基の置換度を調整してもよい。
セルロースアシレートへの芳香族アシル基の導入は、導入する芳香族アシル基に対応する酸クロリドと、セルロースアシレートの残存水酸基との脱塩酸反応によるエステル化によって行うことができる。また、前記セルロースアシレートと芳香族カルボン酸との脱水反応やエステル交換反応による芳香族アシル化や、芳香族カルボン酸と脂肪族カルボン酸との混合酸によるセルロースのエステル化等を利用して、本発明に係わるセルロースアシレートを製造することができる。但し、本発明に係わるセルロースアシレートの合成方法についてはこれらの方法に限定されるものではない。
前記セルロースアシレートの粘度平均重合度については特に制限はないが、80〜700が好ましく、90〜500が更に好ましく、100〜500がより更に好ましい。平均重合度を500以下とすることにより、セルロースアシレートのドープ溶液の粘度が高くなり過ぎず、流延によるフィルム製造が容易になる傾向にある。
分子量が700以上のポリエステル化合物:
本発明のセルロースアシレートフィルムは、前記セルロースアシレートとともに、分子量が700以上のポリエステル化合物を含有する。以下、該化合物の数平均分子量は700〜1,000,000であることが好ましく、800〜500,000がより好ましく、900〜100,000がさらに好ましい。分子量が700未満であると、製膜時や延伸時に揮散する問題がある。一方、分子量が大き過ぎると溶解性やセルロースアシレートとの相溶性が劣る場合がある。数平均分子量が前記範囲であると、これらの問題が生じないので好ましい。
なお、本明細書において、数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって測定、評価することができる。
以下、前記ポリエステル化合物は、重縮合系ポリエステル化合物であっても、また付加重合系のポリエステル化合物であってもよい。分子量が700以上である限り、一般的にはポリマーではなく、オリゴマーに分類され、使用される化合物であってもよい。
以下、前記ポリエステル化合物の好ましい例について説明する。
〔ジカルボン酸と脂肪族ジオールからなる重縮合エステル〕
前記分子量が700以上のポリエステル化合物の例には、重縮合エステルが含まれる。該重縮合エステルは、少なくとも1種のジカルボン酸(例えば、芳香環を有するジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸)由来の繰り返し単位構造、及び少なくとも1種の脂肪族ジオール由来の繰り返し単位構造を有する。好ましくは、少なくとも1種の芳香環を有するジカルボン酸由来の繰り返し単位、少なくとも1種の脂肪族ジカルボン酸由来の繰り返し単位、及び少なくとも1種の脂肪族ジオール由来の繰り返し単位を有する重縮合エステルである。該重縮合エステルは、これらの化合物の混合物を原料として得ることができる。また、該重縮合エステルの末端は、モノカルボン酸又はモノアルコールで封止されていてもよい。
ジカルボン酸としては、芳香族ジカルボン酸及び脂肪族ジカルボン酸から選択される1種、又は2種以上の混合物である。
芳香族ジカルボン酸としては、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸、2,8−ナフタレンジカルボン酸または2,6−ナフタレンジカルボン酸等が好ましく用いられ、フタル酸、テレフタル酸がより好ましい。また、芳香族ジカルボン酸は1種でも、2種以上を用いてもよい。2種用いる場合は、フタル酸とテレフタル酸を用いることが好ましい。
脂肪族ジカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸または1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等が挙げられる。好ましくはコハク酸、アジピン酸である。また、脂肪族ジカルボン酸は1種でも、2種以上を用いてもよい。2種以上を用いる場合は、コハク酸とアジピン酸を用いることが好ましい。
前記重縮合エステルは、芳香族ジカルボン酸由来の構造単位及び脂肪族ジカルボン酸由来の構造単位の双方を有しているのが好ましく、その比率は、芳香族ジカルボン酸がジカルボン酸の総量に対して5〜70モル%であることが好ましい。芳香族ジカルボン酸が5モル%未満では、経時でフィルムの特性(例えば透水性)が変動するという問題がある。一方、芳香族ジカルボン酸が70モル%を超えると、セルロースアシレートとの相溶性が低下し、製膜過程でブリードアウトが発生し易くなり好ましくない。前記重縮合エステルを構成するジカルボン酸中の芳香族ジカルボン酸は、より好ましくは10〜60モル%であり、20〜50モル%であることがさらに好ましい。
脂肪族ジオールとしては、炭素数が2〜10の脂肪族ジオールが好ましく、さらには炭素数2〜3の脂肪族ジオールが単位重量あたりのエステル基の含有量が増加するので好ましい。具体的には、エチレングリコール、プロピレングリコールが好ましい。脂肪族ジオールは1種であっても、炭素数の異なるジオール2種以上の混合物であってもよい。
脂肪族ジオールとしては、アルキルジオールまたは脂環式ジオール類を挙げることができ、例えばエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール(3,3−ジメチロ−ルペンタン)、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール(3,3−ジメチロールヘプタン)、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−オクタデカンジオール、ジエチレングリコール等があり、これらはエチレングリコールとともに1種または2種以上の混合物として使用されることが好ましい。
好ましい脂肪族ジオールとしては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、及び1,3−プロパンジオールであり、特に好ましくはエチレングリコール、及び1,2−プロパンジオールである。
前記重縮合エステルの両末端は、モノカルボン酸と反応させて封止することが好ましく、即ち、両末端がモノカルボン酸エステル誘導体になっている前記重縮合エステルが好ましい。封止に用いられる前記モノカルボン酸は、脂肪族モノカルボン酸及びその誘導体から選択されるのが好ましい。封止用に使用可能なモノカルボン酸類の例には、酢酸、プロピオン酸、酪酸、安息香酸及びその誘導体が含まれ、酢酸またはプロピオン酸がより好ましく、酢酸が特に好ましい。即ち、前記重縮合エステルの両末端は、アセチル基によって封止されているのが特に好ましい。
以下の表に、本発明に使用可能な前記重縮合エステルの例を示すが、これらに限定されるものではない。尚、末端は、アセチル基で封止したものである。
Figure 2013109178
本発明に係る重縮合エステルの合成は、常法により上記ジカルボン酸と脂肪族ジオールとモノカルボン酸とのポリエステル化反応又はエステル交換反応による熱溶融縮合法か、あるいはこれら酸の酸クロライドとグリコール類との界面縮合法のいずれかの方法によっても容易に合成し得るものである。また、本発明に係る重縮合エステルについては、村井孝一編者「可塑剤 その理論と応用」(株式会社幸書房、昭和48年3月1日初版第1版発行)に詳細な記載がある。また、特開平05−155809号、特開平05−155810号、特開平5−197073号、特開2006−259494号、特開平07−330670号、特開2006−342227号、特開2007−003679号各公報などに記載されている素材を利用することもできる。また特開2007−2689500号広報のポリエステル系改質剤、特開2004−175972号広報のポリエステルポリオールで開示されている合成法に準じて合成することができる。
〔ポリエステルジオールを原料とするポリエステルポリウレタン〕
前記分子量が700以上のポリエステル化合物の例には、ポリエステルジオールを原料とするポリエステルポリウレタンが含まれる。前記ポリエステルジオールは、両末端に水酸基を有するポリエステル化合物であり、その例には、前記重縮合エステルの原料として例示したグリコールのポリエステルジオールが含まれる。前記ポリエステルポリウレタンは、ポリエステルジオールと、トルエンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート等のジイソシアネート化合物とを反応させた反応物である。原料としてのポリエステルジオールの分子量としては、1,000〜5,000が好ましい。前記ポリエステルポリウレタンは、市販品であってもよく、例えば、「デスモコール540」(バイエル社製)等を用いることができる。
〔付加重合系ポリエステル〕
前記分子量が700以上のポリエステル化合物の例には、付加重合系ポリエステル化合物も含まれる。付加重合系ポリエステルは、種々の分子量の市販品が提供されている。分子量700以上のものを使用することができ、例えば、「バイロンRV600」(東洋紡社製)等を用いることができる。
高Reの達成のためには、高倍率延伸が好ましいが、前記分子量範囲のポリエステル化合物の添加は、延伸時の破断伸度を大きくする作用がある。さらに、前記ポリエステル化合物は、セルロースアシレートの光学特性の発現性を低下させることなく、セルロースアシレート組成物のガラス転移点を低下させる作用があるので、高温にすることなく延伸倍率を増加させることができる。高Reの達成のためには、ガラス転移点程度の高温度での延伸処理が必要になるが、前記ポリエステル化合物を添加してTgを低下させることにより、高Re達成のための延伸処理温度を低くすることができ、延伸時の加熱によるフィルム成分の分解を抑制することができる。それにより、高温延伸処理による弊害(フィルムの着色及び機械的フィルム特性の劣化等)を生じさせることなく、高Reのフィルムを製造することができる。
なお、本発明において、前記分子量が700以上のポリエステル化合物は1種類のみを用いてもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。種類の異なる前記化合物を組み合わせて用いてもよい。
本発明のセルロースアシレートフィルムは、前記セルロースアシレート及び前記分子量が700以上のポリエステル化合物を含有するセルロースアシレート組成物からなる。該セルロースアシレート組成物中、前記セルロースアシレートを70質量%以上100質量%未満含有するのが好ましく、80質量%〜94質量%含有するのがより好ましく、85質量%〜92質量%含有するのがさらに好ましい。また、セルロースアシレート以外の高分子成分や、各種添加剤を適宜混合することもできる。混合される成分はセルロースアシレートとの相溶性に優れるものが好ましく、フィルムにしたときの透過率が好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、特に好ましくは92%以上となるようにすることが好ましい。
前記分子量が700以上のポリエステル化合物の添加量は、前記セルロースアシレート組成物中、5〜25質量%であることが好ましく、6〜20質量%であることがさらに好ましく、8〜15質量%であることがさらに好ましい。
前記セルロースアシレート組成物は、上記セルロースアシレート及び上記分子量が700以上のポリエステル化合物とともに、一般的なフィルム添加剤の1種以上を添加してもよい。添加可能な種々の添加剤の例には、紫外線防止剤、可塑剤、劣化防止剤、微粒子、光学特性調整剤等が含まれる。
本発明のセルロースアシレートフィルムを溶液製膜法で製造する態様では、上記分子量が700以上のポリエステル化合物等の添加剤は、セルロースアシレート溶液(ドープ)を調製する過程のいずれの時期に添加してもよい。また、ドープを調製する工程の最後に添加してもよい。
前記セルロースアシレート組成物は、粒子状、粉末状、繊維状、塊状、溶液、溶融物など種々の形態で調製することができる。また、粒子状又は粉末状のセルロースアシレート組成物については、粒子サイズの均一化や取り扱い性の改善のために、粉砕や篩がけを行ってもよい。
[セルロースアシレートフィルムの製造方法]
本発明のセルロースアシレートフィルムの製造方法については、特に限定されるものではないが、以下に記載する溶融製膜法又は溶液製膜法により製造することが好ましい。溶液製膜法による製造がより好ましい。溶融製膜法及び溶液製膜法ともに、一般的に行われている方法と同様に、本発明のセルロースアシレートフィルムを製造することができる。例えば、溶融製膜に関しては、特開2006−348123号公報を、溶液製膜に関しては、特開2006−241433号公報を参照し、製造することができる。
溶液製膜法:
本発明のセルロースアシレートフィルムを溶液製膜法により製造する態様について、以下、好ましい態様を説明する。
溶液製膜法では、セルロースアシレートの溶液を調製し、該溶液を支持体表面に流延し、製膜する。前記セルロースアシレート溶液の調製に用いる溶媒については、特に限定されない。好ましい溶媒としては、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、テトラクロロエチレン等の塩素系有機溶剤、並びに非塩素系有機溶媒を挙げることができる。前記非塩素系有機溶媒は、炭素原子数が3〜12のアルコール、エステル、ケトン、エーテルから選ばれる溶媒が好ましい。アルコール、エステル、ケトン、及びエーテルは、環状構造を有していてもよい。アルコール、エステル、ケトン及びエーテルの官能基(すなわち、−O−、−CO−及び−COO−)のいずれかを2つ以上有する化合物も、主溶媒として用いることができる。2種類以上の官能基を有する主溶媒の場合、その炭素原子数はいずれかの官能基を有する化合物の規定範囲内であればよい。炭素原子数が3〜12のエステル類の例としては、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、ギ酸ペンチル、酢酸メチル、酢酸エチル及び酢酸ペンチルが挙げられる。炭素原子数が3〜12のケトン類の例としては、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン及びメチルシクロヘキサノンが挙げられる。炭素原子数が3〜12のエーテル類の例には、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、アニソール及びフェネトールが挙げられる。2種類以上の官能基を有する有機溶媒の例としては、2−エトキシエチルアセテート、2−メトキシエタノール及び2−ブトキシエタノールが挙げられる。非塩素系有機溶媒としては、アルコールが好ましく、特にメチルアルコールが沸点が低く、親水性が大きく好ましい。
前記セルロースアシレート溶液の調製時には、セルロースアシレートは、有機溶媒に10〜35質量%溶解させることが好ましい。より好ましくは13〜30質量%であり、特に好ましくは15〜28質量%である。このような濃度のセルロースアシレート溶液は、セルロースアシレートを溶媒に溶解する際に所定の濃度になるようにして調製してもよいし、また予め低濃度溶液(例えば9〜14質量%)を調製した後に、濃縮工程により上記濃度の溶液として調製してもよい。さらに、予め高濃度のセルロースアシレート溶液を調製した後に、種々の添加物を添加することで上記濃度のセルロースアシレート溶液として調製してもよい。
前記セルロースアシレート溶液(ドープ)の調製については、その溶解方法は特に限定されず、室温でもよく、さらには冷却溶解法あるいは高温溶解方法、さらにはこれらの組み合わせで実施してもよい。これらに関しては、例えば特開平5−163301号、特開昭61−106628号、特開昭58−127737号、特開平9−95544号、特開平10−95854号、特開平10−45950号、特開2000−53784号、特開平11−322946号、特開平11−322947号、特開平2−276830号、特開2000−273239号、特開平11−71463号、特開平04−259511号、特開2000−273184号、特開平11−323017号、特開平11−302388号等の各公報にセルロースアシレート溶液の調製法、が記載されていて、本発明においてもこれらの技術を利用することができる。これらの詳細は、特に非塩素系溶媒系の溶媒を用いた調製方法については、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)22頁〜25頁に詳細に記載されている。さらに、セルロースアシレート溶液の調製の過程で、溶液濃縮,ろ過等の処理が行われてもよく、それらについては、同様に発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)25頁に詳細に記載されている。なお、高温度で溶解する場合は、使用する有機溶媒の沸点以上の場合がほとんどであり、その場合は加圧状態で用いられる。
本発明のセルロースアシレートフィルムを製造する方法及び設備として、従来セルロースアシレートフィルム製造に供する溶液流延製膜方法及び溶液流延製膜装置を用いることができる。溶解機(釜)から調製されたドープ(セルロースアシレート溶液)を貯蔵釜で一旦貯蔵し、ドープに含まれている泡を脱泡して最終調製をする。ドープをドープ排出口から、例えば回転数によって高精度に定量送液できる加圧型定量ギヤポンプを通して加圧型ダイに送り、ドープを加圧型ダイの口金(スリット)からエンドレスに走行している流延部の金属支持体の上に均一に流延され、金属支持体がほぼ一周した剥離点で、生乾きのドープ膜(ウェブとも呼ぶ)を金属支持体から剥離する。得られるウェブの両端をクリップで挟み、幅保持しながらテンターで搬送して乾燥し、続いて乾燥装置のロール群で搬送し乾燥を終了して巻き取り機で所定の長さに巻き取る。テンターとロール群の乾燥装置との組み合わせはその目的により変わる。ハロゲン化銀写真感光材料や電子ディスプレイ用機能性保護膜に用いる溶液流延製膜方法においては、溶液流延製膜装置の他に、下引層、帯電防止層、ハレーション防止層、保護層等のフィルムへの表面加工のために、塗布装置が付加されることが多い。これらの各製造工程については、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)25頁〜30頁に詳細に記載され、流延(共流延を含む),金属支持体,乾燥,剥離,延伸などに分類される。
乾燥後得られる、セルロースアシレートフィルムの厚さは、使用目的によって異なり、5〜500μmの範囲であることが好ましく、20〜300μmの範囲であることがより好ましく、30〜150μmの範囲であることがさらに好ましい。また、光学用、特にVA液晶表示装置用としては、40〜110μmであることが好ましい。フィルム厚さの調整は、所望の厚さになるように、ドープ中に含まれる固形分濃度、ダイの口金のスリット間隙、ダイからの押し出し圧力、金属支持体速度等を調節すればよい。
延伸:
以上のようにして、溶融製膜法あるいは溶液製膜法等によって製造したセルロースアシレートフィルムに、さらに延伸処理を施すのが好ましい。
延伸処理は、製膜工程の途中で行ってもよいし、製膜して巻き取った原反を延伸処理してもよい。溶液製膜の場合には残留溶媒を含んだ状態で延伸を行ってもよく、残留溶媒量が2〜30質量%で好ましく延伸することができる。
延伸処理は、高Reを達成するために高温度で実施するのが好ましく、ガラス転移点(Tg)近傍で行うことが好ましい。具体的には、セルロースアシレートフィルムの(Tg−30℃)〜(Tg+30℃)で実施するのが好ましく、より好ましくは(Tg−20℃)〜(Tg+20℃)、特に好ましくは(Tg−10℃)〜(Tg+20℃)である。好ましい延伸倍率は0.1%〜300%、さらに好ましくは10%〜200%、特に好ましくは30%〜100%である。これらの延伸は1段で実施しても、多段で実施してもよい。ここでいう延伸倍率は、以下の式を用いて求めたものである。
延伸倍率(%)={(延伸後の長さ)−(延伸前の長さ)}/延伸前の長さ×100
このような延伸は縦(搬送方向)延伸、横(幅方向)延伸、及びこれらの組み合わせによって実施される。縦延伸は、(1)ロール延伸(出口側の周速を速くした2対以上のニップロールを用いて、長手方向に延伸、自由端延伸ともいう)、(2)固定端延伸(フィルムの両端を把持し、これを長手方向に次第に早く搬送し長手方向に延伸)、等を用いることができる。さらに横延伸は、テンター延伸(フィルムの両端をチャックで把持しこれを横方向(長手方向と直角方向)に広げて延伸)、等を使用することができる。これらの縦延伸、横延伸は、それだけで行なってもよく(1軸延伸)、組み合わせて行ってもよい(2軸延伸)。2軸延伸の場合、縦、横逐次で実施してもよく(逐次延伸)、同時に実施してもよい(同時延伸)。
縦延伸、横延伸の延伸速度は10%/分〜10000%/分が好ましく、より好ましくは20%/分〜1000%/分、特に好ましくは30%/分〜100%/分である。多段延伸の場合、各段の延伸速度の平均値を指す。
上記好ましい範囲の延伸倍率及び延伸速度は、上記分子量が700以上のポリエステル化合物を添加することで達成することができる。該化合物を添加しないと、上記好ましい範囲の延伸速度及び延伸倍率で延伸処理を実施すると、延伸処理の途中で破断してしまう。また、一般的な可塑剤の添加により同様の効果を得ることができるが、分子量が700未満の低分子量の可塑剤を添加しても、高温度(例えばTg近傍)での延伸時には大半が揮散してしまい、または熱分解等して、フィルムの着色増加及びヘイズの上昇原因になる。
このような延伸に引き続き、縦又は横方向に0%〜10%緩和することも好ましい。さらに、延伸に引き続き、150℃〜250℃で1秒〜3分熱固定することも好ましい。
また製膜方向(長手方向)と、フィルムのReの遅相軸とのなす角度θが0°、+90°もしくは−90°に近いほど好ましい。即ち、本発明では、横延伸の場合は0°に近いほどよく、0±3°が好ましく、より好ましくは0±2°、特に好ましくは0±1°である。縦延伸の場合は、90±3°又は−90±3°が好ましく、より好ましくは90±2°又は−90±2°、特に好ましくは90±1°又は−90±1°である。
本発明のセルロースアシレートフィルムは、長尺状に製膜してもよい。例えば、幅0.5〜3m(好ましくは0.6〜2.5m、さらに好ましくは0.8〜2.2m)、長さ1ロール当たり100〜10000m(好ましくは500〜7000m、さらに好ましくは1000〜6000m)で巻き取られた長尺状のフィルムとして製造することができる。巻き取る際、少なくとも片端にナーリングを付与するのが好ましく、ナーリングの幅は3mm〜50mmが好ましく、より好ましくは5mm〜30mm、高さは0.5〜500μmが好ましく、より好ましくは1〜200μmである。これは片押しであっても両押しであってもよい。
上述の延伸セルロースアシレートフィルムは単独で使用してもよく、これらと偏光板を組み合わせて使用してもよく、これらの上に液晶層や屈折率を制御した層(低反射層)やハードコート層を設けて使用してもよい。
[セルロースアシレートフィルムの特性]
セルロースアシレートフィルムの膜厚:
本発明のセルロースアシレートフィルム(延伸フィルムの態様では延伸処理後の膜厚)は、10〜300μmが好ましく、20μm〜200μmがより好ましく、30μm〜100μmがさらに好ましく、40〜80μmであるのが特に好ましい。
セルロースアシレートフィルムの光学特性:
本明細書において、Re(λ)及びRth(λ)は各々、波長λにおける面内のレターデーション(nm)及び厚さ方向のレターデーション(nm)を表す。Re(λ)はKOBRA 21ADH又はWR(王子計測機器(株)製)において波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。
測定されるフィルムが1軸又は2軸の屈折率楕円体で表されるものである場合には、以下の方法によりRth(λ)は算出される。
Rth(λ)は前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADH又はWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)のフィルム法線方向に対して法線方向から片側50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて全部で6点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADH又はWRが算出する。
上記において、法線方向から面内の遅相軸を回転軸として、ある傾斜角度にレターデーションの値がゼロとなる方向をもつフィルムの場合には、その傾斜角度より大きい傾斜角度でのレターデーション値はその符号を負に変更した後、KOBRA 21ADH又はWRが算出する。
尚、遅相軸を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)、任意の傾斜した2方向からレターデーション値を測定し、その値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基に、以下の式(11)及び式(12)よりRthを算出することもできる。
Figure 2013109178
注記:
式中、Re(θ)は法線方向から角度θ傾斜した方向におけるレターデーション値をあらわす。
nxは面内における遅相軸方向の屈折率を表し、nyは面内においてnxに直交する方向の屈折率を表し、nzはnx及びnyに直交する方向の屈折率を表す。dは膜厚を表す。
なお、本発明のReの値がλ/2に近い値の場合は、Re・Rthが既知のフィルムを積層して測定を行い、Re・Rthを算出することで求めることができる。
本発明のセルロースアシレートフィルムは、高Reで、且つRthの絶対値が小さいという特徴がある。具体的には、本発明のセルロースアシレートフィルムのRe(550)は、180nm〜300nm(より好ましくは200nm〜280nm)であり、且つ|Rth(550)|が0nm〜30nm(より好ましくは0〜20nm)である。前記範囲のRe及びRthを示すフィルムは、例えば、IPSモード等の水平配向モードの液晶表示装置用の光学補償フィルムとして有用であり、具体的には、IPSモード等の水平配向モードの液晶表示装置の黒表示時の斜め方向の光漏れの軽減に寄与する。
ヘイズ:
本発明のセルロースアシレートフィルムは、例えば、ヘイズ計(1001DP型、日本電色工業(株)社製)を用いて測定した値が0.8以下であることが好ましく、0.7以下であることがより好ましく、0.6以下であることが特に好ましい。前記範囲にヘイズを制御することにより、光学補償フィルム等として液晶表示装置に組み込んだ際に高コントラスの画像が得られる。
セルロースアシレートフィルムのガラス転移温度:
本発明のセルロースアシレートフィルムのガラス転移温度(Tg)は、80℃〜250℃が好ましく、100℃〜200℃がさらに好ましい。Tgが前記範囲未満であると、耐熱性が低下する傾向があり、また前記範囲を超えていると上述のように、フィルムの着色及びヘイズが悪化する傾向があるので、前記範囲であるのが好ましい。
なお、本明細書において、フィルムのガラス転移温度(Tg)は、動的粘弾性測定装置により測定することができる。具体的には、試験フィルムを室温から5℃/分の割合で昇温させ、試験片の動的粘弾性の温度分散を測定し、tanδのピークの温度をガラス転移温度(Tg)として特定することができる。
フィルムの着色:
本発明のセルロースアシレートフィルムは、高Re達成のために高温度での延伸処理を施しても、着色が少ないという特徴がある。高温度延伸処理による着色は、黄色味の着色であり、その程度は、波長420nmの吸光度の値を指標として知ることができる。本発明のセルロースアシレートフィルムは、波長420nmの吸光度が、0.03以下を達成可能であり、0.02以下を達成することが好ましい。前記波長の吸光度が0.03を超えると、フィルムの黄色味が視認されるので、0.03以下であるのが好ましい。吸光度は、波長分光吸収測定器で測定することができる。
[位相差フィルム]
本発明のセルロースアシレートフィルムは、位相差フィルムとして用いることができる。
また、本発明のセルロースアシレートフィルムに、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)32頁〜45頁に詳細に記載されている機能性層を組み合わせることが好ましい。中でも好ましいのが、偏光膜の付与(偏光板の形成)、液晶組成物からなる光学補償層の付与(光学補償フィルム)、反射防止層の付与(反射防止フィルム)である。
[光学補償フィルム]
本発明のセルロースアシレートフィルムは、液晶表示装置の光学補償に利用することができる。本発明のセルロースアシレートフィルムが、光学補償に必要な光学特性を満足する場合は、そのまま光学補償フィルムとして利用することができる。また、光学補償に必要な光学特性を満足するために、他の一以上の層、例えば液晶組成物を硬化して形成した光学異方性層、又は他の複屈折性ポリマーフィルムからなる層と積層してから、光学補償フィルムとして利用することもできる。
[偏光板]
本発明は、偏光膜と該偏光膜を挟持する2枚の保護フィルムとからなる偏光板であって、2枚の保護フィルムの少なくとも一方が、本発明のセルロースアシレートフィルムである偏光板にも関する。該セルロースアシレートフィルムは、光学異方性層を有する光学補償フィルムの一部として、また反射防止層を有する反射防止フィルムの一部として、偏光膜に貼り合せられていてもよい。他の層を有する場合も、本発明のセルロースアシレートフィルムの表面が、偏光膜の表面に貼り合せられているのが好ましい。例えば、特開2006−241433号公報を参照し、製造することができる。
[画像表示装置]
本発明は、本発明のセルロースアシレートフィルムを少なくとも1枚含む画像表示装置にも関する。本発明のセルロースアシレートフィルムは、位相差フィルム又は光学補償フィルムとして、又は偏光板、光学補償フィルム及び反射防止フィルム等の一部として、表示装置に用いられる。
<液晶表示装置>
本発明のセルロースアシレートフィルムは位相差フィルムとして、又はセルロースアシレートフィルムを用いた偏光板、光学補償フィルムもしくは反射防止フィルムとして、液晶表示装置に組み込むことができる。液晶表示装置としては、TN型、IPS型、FLC型、AFLC型、OCB型、STN型、ECB型、VA型及びHAN型の表示装置が挙げられ、好ましくはIPS型である。また、本発明のセルロースアシレートフィルムは、透過型、反射型、半透過型のいずれの液晶表示装置にも用いることができる。
IPSモードの液晶表示装置に本発明のセルロースアシレートフィルムを用いる場合は、液晶セルと表示面側偏光板もしくはバックライト側偏光板との間に一枚配置するのが好ましい。また、表示面側偏光板もしくはバックライト側偏光板の保護フィルムとしても機能させ、偏光板の一部材として液晶表示装置内に組み込み、液晶セルと偏光膜との間に配置してもよい。本発明のセルロースアシレートフィルムを一枚上記位置に配置することで、IPSモードの液晶表示装置の表示特性を改善、特に、黒表示時の斜め方向をカラーシフト軽減、することができる。IPSモード液晶表示装置の光学補償に利用する態様では、本発明のセルロースアシレートフィルムのRthは、−40nm〜30nmであることが好ましく、Reは120nm〜400nmであることが好ましい。また、Nz値は0.5程度であるのが好ましく、具体的には、Nz値は0.25〜0.65であるのが好ましい。本態様では、本発明のセルロースアシレートフィルムを、その面内遅相軸を表示面側偏光膜(又はバックライト側偏光膜)の吸収軸と平行もしくは直交にして配置するのが好ましい。
本態様では、表示面側偏光膜及びバックライト側偏光膜と液晶セルとの間には、前記セルロースアシレートフィルム以外の位相差層が存在していないのが好ましい。従って、例えば、表示面側偏光板又はバックライト側偏光板が、前記セルロースアシレートフィルム以外の偏光膜用保護フィルムを有し、該保護フィルムが、液晶セルと表示面側偏光膜又はバックライト側偏光膜との間に配置される場合は、該保護フィルムには、Re及びRthの双方がほとんど0である等方性のポリマーフィルムを用いるのが好ましく、その様なポリマーフィルムとしては、特開2006−030937号公報等に記載のセルロースアシレートフィルムが好ましく用いられる。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、物質量とその割合、操作等は本発明の趣旨から逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下の具体例に制限されるものではない。
1.セルロースアシレートの合成
下記表に示す、種々の置換度DSA及びDSを有するセルロースアシレートA−1〜3及びB−1〜2を、特開2008−163193号公報[0121]中に記載の酢酸セルロースのケン化、及び同公報の[0124]中に記載の酢酸セルロースの芳香族アシル化の方法に従って、合成した。なお、合成したセルロースアシレートがそれぞれ有する置換基Aはいずれも、ベンゾイル基である。
2.セルロースアシレートフィルムの製造
(1)セルロースアシレート溶液の調製
下記表に示すセルロースアシレート及び添加剤をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して、溶解し、下記表に記載の組成のセルロースアシレート溶液をそれぞれ調製した。
下記表に示すセルロースアシレート (100−X)質量部
下記表に示す添加剤 X質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 500質量部
(2)セルロースアシレートフィルムの製造
調製した各セルロースアシレート溶液を、バンド流延機を用いて流延、バンドから剥離し、初期乾燥は70℃、100℃、及び120℃で乾燥し、製膜した。このフィルムを、下記表に示す延伸温度、延伸速度、及び延伸倍率で、フィルムの幅方向に固定端一軸延伸して、下記表に示すセルロースアシレートフィルムのそれぞれを作製した。以下、特に断りがなければ、作製したフィルムの厚さはすべて60μmである。
3.セルロースアシレートフィルムの評価
光学特性:
得られた各フィルムについて、上記方法によりRe及びRthを測定した。結果を下記表に示す。
ヘイズ:
得られた各フィルムについて、ヘイズを測定した。結果を下記表に示す。
フィルム着色:
得られた各フィルムについて、波長420nmの吸光度を測定した。結果を下記表に示す。
4.偏光板の作製と評価
(1) 偏光板の作製
各セルロースアシレートフィルムを鹸化処理した。また、市販のトリアセチルセルロースフィルム「フジタックT40UZ」を同様に鹸化処理した。
偏光膜を準備し、該偏光膜を、前記鹸化処理したセルロースアシレートフィルムから選択した1枚(以下、「フィルムA」という)と、鹸化処理した市販のトリアセチルセルロースフィルムとで挟んだ後、PVA((株)クラレ製、PVA−117H)3%水溶液を接着剤として、偏光膜の吸収軸方向とフィルムの遅相軸方向とを平行にして貼り合わせて、下記表に示す偏光板をそれぞれ作製した。
(2)偏光板の評価
得られた各偏光板について、IPS型液晶表示装置(37型ハイビジョン液晶テレビモニター(37Z2000;(株)東芝製)に組み込まれていた視認側偏光板の代わりに、フィルムAが液晶セル側になるように組み込み、極角60°方向の光漏れが最大の場所において黒輝度を調べ、以下の基準で評価した。
○:4cd/m2以下
△:4cd/m2より大きく、5cd/m2以下
×:5cd/m2大きい
結果を下記表に示す。
Figure 2013109178
Figure 2013109178
Figure 2013109178
Figure 2013109178
上記表に示す結果から、本発明の実施例のセルロースアシレートフィルムは、光学特性の発現性に優れており、表示性能に悪影響のあるヘイズの上昇や着色が抑えられていることが理解できる。本発明の実施例のフィルムでは、数平均分子量が700以上のポリエステル化合物を添加することで、フィルムの破断を抑えつつ、延伸速度を速め、且つ延伸倍率を増大させることができる。
一方、添加剤として、分子量が700未満(具体的には分子量が630)のポリエステル化合物又は低分子量のDEPを使用した比較例では、これらの添加剤の大半がガラス転移点近傍の延伸温度で揮散してしまうため、ヘイズの上昇や着色の増加を抑えることができていないことが理解できる。
また、本発明の範囲を外れた芳香族アシル基の置換度のセルロースアシレートでは、目的の範囲の光学特性への到達は困難であることが理解できる。
5.IPSモード液晶表示装置への実装評価
上記実施例で作製した各偏光板を、IPS型液晶表示装置(37型ハイビジョン液晶テレビモニター(37Z2000)、(株)東芝製)に組み込まれていた視認側偏光板の代わりに、フィルムAが液晶セル側になるように組み込み、視認性を確認したところ、十分な視野角補償ができており、良好な視認性を確保できたことが確認できた。これに対し、比較例の各偏光板を組み込んだ場合には、視野角補償が不十分であり、特に斜めから視認した際の光漏れが強く観測された。

Claims (11)

  1. 芳香族基を含むアシル基(置換基A)及び脂肪族アシル基(置換基B)を有し、且つ置換基Aの置換度(DSA)及び置換基A及び置換基Bの総置換度(DS)がそれぞれ、下記式(I)及び式(II)を満足するセルロースアシレートの少なくとも1種、及び数平均分子量が700以上のポリエステル化合物の少なくとも1種を含有する組成物からなるセルロースアシレートフィルム。
    式(I) 0.5≦DSA≦1.0
    式(II) 2.0≦DS≦2.9
  2. 波長550nmにおける面内レターデーションRe(550)及び同波長における厚み方向レターデーションRth(550)がそれぞれ、180nm≦Re(550)≦300nm及び0nm≦|Rth(550)|≦30nmを満たす請求項1に記載のセルロースアシレートフィルム。
  3. 膜厚が40〜80μmである請求項1又は2に記載のセルロースアシレートフィルム。
  4. 前記芳香族アシル基(置換基A)が、ベンゾイル基、フェニルベンゾイル基、4−ヘプチルベンゾイル基、2,4,5−トリメトキシベンゾイル基、及び3,4,5−トリメトキシベンゾイル基から選択される請求項1〜3のいずれか1項に記載のセルロースアシレートフィルム。
  5. 前記脂肪族アシル基(置換基B)が、炭素数2〜4の脂肪族アシル基である請求項1〜4のいずれか1項に記載のセルロースアシレートフィルム。
  6. 前記ポリエステル化合物が、1種以上のジカルボン酸と1種以上の脂肪族ジオールとの重縮合エステルである請求項1〜5のいずれか1項に記載のセルロースアシレートフィルム。
  7. 前記ポリエステル化合物が、1種以上のポリエステルジオールと1種以上のジイソシアネート化合物とからなるポリエステルポリウレタンである請求項1〜6のいずれか1項に記載のセルロースアシレートフィルム。
  8. 延伸フィルムである請求項1〜7のいずれか1項に記載のセルロースアシレートフィルム。
  9. 請求項1〜8のいずれか1項に記載のセルロースアシレートフィルムからなる位相差フィルム。
  10. 偏光膜と、請求項1〜9のいずれか1項に記載のセルロースアシレートフィルムとを有する偏光板。
  11. 請求項10に記載の偏光板を有する画像表示装置。
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