JP2013109088A - 偏波もつれ光子対発生素子 - Google Patents

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Abstract

【課題】コスト及びサイズが低減された、外部光回路を用いない、シリコン導波路素子を用いたワンチップ偏波もつれ光子対発生素子を提供する。
【解決手段】偏波されたポンプ光が入力され、自然放出四光波混合過程によりTE偏波成分に対して第1の量子相関光子対を生成すると共にTM偏波成分に対して第2の量子相関光子対を生成する第1の単結晶半導体導波路と、前記導波路を通過したTEおよびTM偏波成分と第1および第2の量子相関光子対との偏波面をそれぞれ90度回転させる偏波回転素子と、自然放出四光波混合過程により90度回転されたTE偏波成分に対して第3の量子相関光子対を生成すると共に90度回転されたTM偏波成分に対して第4の量子相関光子対を生成する第2の単結晶半導体導波路と、を備え、第2の単結晶半導体導波路における、偏波面が90度回転された第1の量子相関光子対および第4の量子相関光子対から偏波もつれ光子対を生成する。
【選択図】図5

Description

本発明は偏波もつれ光子対発生素子に関する。
近年、量子力学の基本的な性質を直接応用することにより、新たな情報通信や信号処理を実現しようとする量子情報処理技術の研究が盛んに行われている。例えば、不確定性原理により、光子一つがどのような偏波状態にあるかを完全に測定することはできない。このことを利用して共有鍵暗号方式における鍵配送を行う暗号方式は「量子暗号通信」と呼ばれ、暗号鍵の安全性が量子力学の原理により保証された究極的に安全な暗号通信システムである。また、この量子暗号における伝送距離の延長のため、「量子テレポーテーション」と呼ばれる量子状態を転送するシステムの開発が行われている。
量子力学的相関を有する光子対(量子もつれ光子対)は、以上のような量子情報通信システムにおける重要な要素である。光子の量子状態を量子テレポーテーションにより共有するためには、送信者と受信者との間で量子もつれ光子対を共有することが必要である。量子もつれ光子対を利用することにより、長距離伝送に適した量子暗号通信システムを提供することができる。
量子もつれ光子対を発生する方法として、量子相関光子対発生技術があり、近年、光ファイバやシリコン細線導波路等における自然放出四光波混合過程(SFWM; Spontaneous Four Wave Mixing)を用いた量子相関光子対の発生技術が報告されている(非特許文献1、2参照)。これは、次のようなものである。3次の非線形光学媒質である半導体単結晶導波路に、光周波数fpのポンプ光が入力されると、
2fp=fs+fi(1)
を満たす光周波数fsのシグナル光子および光周波数fiのアイドラ光子が発生する。このシグナル光子とアイドラ光子から構成される光子対は、時間位置(発生時刻)または偏波に関して量子力学的な相関を有し、量子相関光子対を形成する。量子もつれ状態は、量子相関のある状態の重ね合わせ状態とみなことができるため、量子相関光子対を発生することは、量子もつれ光子対を発生するための重要な要素技術である。
このようなSFWMを用いた量子相関光子対の発生は、従来の2次の非線形光学効果を用いた発生とは異なり、非線形光学効果に寄与する4つの光子の光周波数がほぼ同程度であるという特徴がある。これにより、位相整合条件を満たすことが比較的容易であるという利点がある。また、4つの光子の光周波数がほぼ同じであることから、4つの光子の群速度もほぼ同じである。そのため、パルス状のポンプ光を用いた場合、ポンプ光パルスとシグナル光子パルスまたはアイドラ光子パルスとのウォークオフが小さく抑えられる。その結果、得られる光子対パルスはフーリエ変換限界に近いパルス形状を持つ。これは、量子テレポーテーション等、独立した光子対源からの光子の量子干渉が必要な実験において有効な特性である。
このようなSFWMを用いた量子相関光子対の発生を行う非線形媒質としてシリコン細線導波路を用いることで、それ以前に用いられてきた光ファイバに比べ、特に以下のような3つの利点が得られる。
1つ目の利点は、シリコン細線導波路を用いることで、装置の小型化・低コスト化が図れることである。例えば、非線形媒質の損失がなく、位相整合条件が満たされている場合、自然放出四光波混合過程により発生する量子相関光子対数は、ポンプ光パルスのピークパワーP0、非線形媒質の長さLおよび媒質の非線形性の大きさを表す非線形定数γを用いて、(γP0L)2に比例する。ここで、非特許文献1で用いられている光ファイバのγは2[1/W/km]程度である。一方、シリコン細線導波路のγは300[1/W/m](3×105[1/W/km])程度であり(非特許文献2)、光ファイバに比べ5桁程度大きい。したがって、同一ポンプ光強度において同一の光子数生成率を得るためには、シリコン細線導波路の長さは光ファイバの長さの約1/100,000でよい。このため、シリコン細線導波路を用いることで、非常に短い長さ(サイズ)の導波路または比較的低強度のポンプ光源を用いることができる。
2つめの利点は、シリコン細線導波路を用いることで、導波路の冷却なしに雑音光子対を抑制することが可能であり、装置の小型化・低コスト化が図れることである。光ファイバを非線形光学媒質として用いた場合、ポンプ光が自然放出四光波混合過程だけでなく自然放出ラマン散乱過程を誘起し、それにより発生した雑音光子により光子対の品質が劣化する問題がある。これは、通常の光ファイバを構成する石英ガラス(fused silica)のアモルファス性により光ファイバのラマン散乱スペクトラムが連続的かつ広帯域なものになるため、シグナル光子またはアイドラ光子の波長チャネルへの自然放出ラマン散乱光子の混入を避けることは大変困難であることに起因する。この問題を回避するため、非特許文献1においては、ファイバを冷却することにより自然放出ラマン散乱による雑音光子を抑圧している。しかし、この方式においては光ファイバの冷却装置が必要であり、装置の更なる大型化・高コスト化につながる。一方、シリコン細線導波路等の単結晶半導体導波路は、比較的狭帯域のラマン散乱スペクトラムを持つ。例えば単結晶シリコン導波路では、ポンプ光周波数から約15.6THz離れた周波数において常温で帯域105GHz程度の自然放出ラマン散乱が観測されている(非特許文献2)。そこで、偏波もつれ光子対の光周波数をラマン散乱ピークと異なるように配置すると、光ファイバを非線形媒質として用いた場合と異なり、非線形媒質の冷却を行わずとも、自然放出ラマン散乱による雑音光子のない、純度の高い偏波もつれ光子対の発生が可能となる。
3つめの利点は、シリコン細線導波路をもちいることで、量子相関光子対を次段の量子演算回路へ高効率に結合させることが可能となることである。最近の光子量子演算の動向として、光子を干渉させて演算を行う光回路をシリコン基板上の平面光波回路(PLC; Planer Lightwave Circuit)上に実装する試みが世界中で行われている(非特許文献3)。PLCを用いることで、自由空間に比べて非常に高い光路安定性を得ることが可能になる上、非常に多数の光子を用いた大規模な演算を行う場合にも装置を小型化可能であるという大きな利点がある。このようなPLC上の量子演算装置へ量子相関光子対を自由空間光学系あるいは光ファイバ系から導入する場合、空間モードの大きさ及び形状の違いから、平面光波回路への100%の結合は技術的に困難であるため、利用可能な光子数の低下を招く。そこで、シリコン細線導波路を量子相関光子対源として用いることで、光子対源も次段のPLC型量子演算回路と同一チップ上に集積化可能となり、上記の結合効率の問題は解決する。
このような半導体単結晶導波路における量子相関光子対発生技術を用いて量子もつれ光子対の発生を行うことで、量子相関光子対発生において得られた数多くの利点を、量子もつれ光子対発生においても同様に得ることができる。
特開2009−69513号公報 特開2006−330109号公報 特開2009−53224号公報
S. D. Dyer et al., Opt. Express 17, 10290 (2009). K. Harada et al., IEEE. J. Sel. Topics Quantum Electron. 16, 325 (2010). A. Peruzzo et al., Science 329, 1500 (2010). H. Takesue et al., Opt. Express 16, 5721 (2008). H. Fukuda et al., Opt. Express 16, 2628 (2008).
量子もつれ光子対では、様々な物理量に関しての量子力学的相関を有する場合が考えられるが、ここでは、偏波状態に関する量子もつれ光子対(以下、偏波もつれ光子対)を想定する。横方向の偏波(H偏波)を有する単一の光子状態を|H>とし、縦方向の偏波(V偏波)を有する単一の光子の状態を|V>とする。偏波もつれ状態にある光子対の一方をシグナル光子、他方をアイドラ光子と呼ぶこととし、それぞれ添え字sおよびiで表す。このとき、偏波もつれ光子対の状態は、例えば次式(2)のように表される。
これらHおよびVの偏波は、シリコン細線導波路においてはそれぞれTE偏波及びTM偏波に対応する。しかし、シリコン細線導波路においてそれら二つの偏波を利用することは、群速度の違いによるパルス間ウォークオフの問題を生じる。例えば、コアの断面が幅480nm、高さ200nmであるようなシリコン細線導波路において、TE偏波モードの群屈折率ng,TEは4.2であり、TM偏波モードの群速度ng,TMの値3.0に比べて大きい。この違いにより、導波路長が1cmの場合、約40psのウォークオフが生じてしまう。よって、|H>偏波の光子の波束と|V>偏波の光子の波束とが伝搬中に分離してしまい、ひいては式(2)に示すような偏波もつれ状態の純度の低下を招く。したがって、シリコン細線導波路を用いる場合、導波路内ではどちらか一方の偏波モードのみを用いて偏波エンタングルメントを得るという工夫が必要であった。
このような要求を実現するため、今回発明者の武居らはシリコン細線導波路の他に外部光回路としてファイバーループ干渉計を導入し、導波路内において単一の偏波(TM)のみを用いた偏波もつれ光子対装置を提案・実証している(非特許文献4、特許文献1)。これは次のようなものである。
図1は量子もつれ光子対発生装置を示している。量子もつれ光子対発生装置500は、ポンプ光源501と、偏波コントローラ502と、光サーキュレータ503と、偏波ビームスプリッタ(PBS)504、偏波保持ファイバ505、506、および半導体導波路507から構成されるループと、ポンプ光抑圧フィルタ103と、分離用フィルタ104とを備える。ポンプ光501から出力された光周波数fpのポンプ光は、偏波コントローラ502により45°の直線偏波に調整され、光サーキュレータ503の第1の端子503Aに入力される。光サーキュレータの第2の端子503Bから出力されたポンプ光は、PBS504の第1の端子504Bに入力され、PBS504により縦(V)偏波成分と横(H)偏波成分に分離される。VおよびH偏波成分は、PBS504の第2の端子504Aおよび第3の端子504Cから出力され、それぞれ屈折率固有軸が偏波面に一致するように軸方向を調整された偏波保持ファイバ505および506に入力される。
偏波保持ファイバ505および506は、屈折率固有軸に平行な偏波面の光がシリコン導波路507のTMモードにカップルするよう軸方向を調整され、シリコン導波路507に接続される。すなわち、PBS504Aから出力されたV偏波のポンプ光は、半導体導波路507のTMモードにカップルされ、同様に、PBS504Cから出力されたH偏波のポンプ光もシリコン導波路507のTMモードにカップルされる。
シリコン導波路507を右方向に伝搬するポンプ光は、自然放出四光波混合により量子相関光子対|TM>sr|TM>irの状態を発生する。ここで、|TM>srは右周り(r)方向にシグナル光子がTMモードに1個ある状態を、|TM>irは右周り(r)方向にアイドラ光子がTMモードに1個ある状態を表す。同様に、半導体導波路507を左方向に伝搬するポンプ光は、自然放出四光波混合により|TM>sl|TM>slの状態を発生する(添え字lは左方向を表す。)。TMモードにある量子相関光子対|TM>sr|TM>irは、偏波保持ファイバ506の屈折率固有軸にカップルされ、H偏波状態でPBS504に第3の端子504Cから入力される。すなわち、PBS504への入力の時点で、|H>s|H>iで記述される状態に変換されている。同様に、状態|TM>sl|TM>ilは偏波保持ファイバ505の屈折率固有軸にカップルされ、V偏波の量子相関光子対|V>s|V>iに変換されて第2の端子504BからPBS504に入力される。量子相関光子対|H>s|H>iおよび|V>s|V>iは、PBS504において重ね合わされる。
ポンプ光パルス強度を調整して、量子相関光子対|H>s|H>iと|V>s|V>iが同時に発生する確率を十分小さくすることにより、近似的に式(2)に示す偏波に関する量子もつれ光子対の状態が得られる。発生した量子もつれ光子対は、PBS504の第1の端子504Bから出力された後、光サーキュレータ503の第2の端子503Bに入力され、第3の端子503Cより取り出される。取り出された量子もつれ光子対は、ポンプ光抑圧フィルタ103を透過させることにより残留しているポンプ光成分が抑圧される。その後、分離用フィルタ104に入力され、シグナル光子とアイドラ光子が分離されて、それぞれが出力される。このようにして、偏波に関する量子もつれ光子対の発生が可能となる。
しかし、偏波もつれ光子対発生装置の更なる小型化・低コスト化のためには、光ファイバで構成されるような外部光回路は極力用いない方がよい。また、前述のように光ファイバとシリコン細線導波路の結合は有限の結合損失を生じることからも、外部ファイバ系との接続を避けることで、偏波もつれ光子対のさらなる性能向上を得ることができる。また、偏波もつれ発生素子部をPLC量子演算回路と同じ基板上に集積することで、量子演算に必要な偏波もつれ光子対を高密度に集積することができるようになり、量子演算の計算容量を向上することができる。
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、コスト及びサイズが低減された、外部光回路を用いない、シリコン導波路素子を用いたワンチップ偏波もつれ光子対発生素子を提供することにある。
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、TE偏波ポンプ光およびTM偏波ポンプ光の1:1重ね合わせである斜め45度に偏波されたポンプ光が入力され、このポンプ光のうちTE偏波成分に対して自然放出四光波混合過程により第1の量子相関光子対を生成すると共に、TM偏波成分に対して自然放出四光波混合過程により第2の量子相関光子対を生成する第1の単結晶半導体導波路と、前記第1の単結晶半導体導波路を通過したTE偏波成分およびTM偏波成分と前記自然放出四光波混合過程によって生成された第1の量子相関光子対および第2の量子相関光子対との偏波面をそれぞれ90度回転させる偏波回転素子と、前記偏波面が90度回転されたTE偏波成分に対して自然放出四光波混合過程により第3の量子相関光子対を生成すると共に前記偏波面が90度回転されたTM偏波成分に対して自然放出四光波混合過程により第4の量子相関光子対を生成する第2の単結晶半導体導波路と、を備え、前記第1の単結晶半導体導波路および第2の単結晶半導体導波路は導波方向における長さが互いに等しく、かつ該第1の単結晶半導体導波路および第2の単結晶半導体導波路の導波方向における長さが前記偏波回転素子の導波方向における長さより長く構成されることにより、前記第2の単結晶半導体導波路における、前記偏波面が90度回転された第1の量子相関光子対および前記第4の量子相関光子対から偏波もつれ光子対を生成することを特徴とする偏波もつれ光子対発生素子である。
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の偏波もつれ光子対発生素子において、前記単結晶半導体導波路はシリコン細線導波路であることを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の偏波もつれ光子対発生素子において、前記単結晶半導体導波路は、導波路のコア部分が結晶対称性を有し、2次の非線形光学効果が抑制される半導体物質により構成されていることを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の偏波もつれ光子対発生素子において、前記単結晶半導体導波路は、導波路のコア部分が単結晶シリコン、単結晶ゲルマニウム、またはシリコンゲルマニウム混晶により構成されていることを特徴とする。
請求項5に記載の発明は、請求項1記載の偏波もつれ光子対発生素子と、ポンプ光源と、偏波調整手段と、ポンプ光減衰手段と、分離手段とを備えることを特徴とする偏波もつれ光子対発生装置である。
従来の量子もつれ光子対発生装置を示す図である。 本発明の偏波もつれ光子対発生素子の導波路のコア部分の接続構成を示す図である。 偏波もつれ光子対発生素子の導波路のコア部分の概略構成を示す図である。 (a)は偏芯二重コア構造を有する偏波もつれ光子対発生素子の導波路のコア構成の断面を示し、(b)は上面から見た構成を示す図である。 偏波もつれ光子対発生素子における光子対の生成を説明する図である。 TE偏波およびTM偏波のそれぞれにおける導波路断面の電界分布を示す図である。 TE偏波およびTM偏波における光子対生成効率の計算結果を示す図である。 (a)は理論計算の際に用いた屈折率分散を示し、(b)は理論計算の際に用いた分散パラメータDを示す図である。 本発明の偏波もつれ光子対発生素子において、ウォークオフの問題が生じないことを説明するための図である。 実際の偏波回転素子の導波路損失を考慮した場合において、偏波もつれ状態が生成できることを説明する図である。 本発明の偏波もつれ光子対発生素子の導波路のコア部分の他の接続構成を示す図である。 本発明の偏波もつれ光子対発生素子を用いた偏波もつれ光子対発生装置を示す図である。
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。図2は、本発明の偏波もつれ光子対発生素子のコア部分の接続構成を示す図であり、図3は偏波もつれ光子対発生素子のコア部分の概略構成を示す図である。図2に示すように、偏波もつれ光子対発生素子10のコア部分は、シリコン細線導波路(Si wire waveguide:SSWともいう)1と、偏波回転素子(PRともいう)3と、シリコン細線導波路(SWW)2とがポンプ光の導波方向に縦続接続されて構成される。シリコン細線導波路1、2には共に自然放出四光波混合過程(SFWM)を生じる同一の構成の単結晶半導体が用いられ、この2つのシリコン細線導波路1、2の間に配置される偏波回転素子3により偏波が90度回転される。導波方向において、シリコン細線導波路1、2は互いに等しい長さ(L1=L2)を有し、この長さが偏波回転素子3の長さよりも長い(L1=L2>L3)構成により、偏波が斜め45度偏波であるポンプ光が入力されると、SFWMにより所望の偏波もつれ光子対を得ることができる。
図3に示すように、偏波もつれ光子対発生素子10のコア部分において、シリコン細線導波路1、2は、断面積が一定の扁平な形状の導波路1、2で構成されている。偏波回転素子3は、前記導波路1、2よりも断面積が小さいが断面積が一定で正方形の断面形状を有する第一のコア32と、第一のコア32の周囲に設けられた第二のコア34とを有し、さらに第一のコア32の上流側および下流側には導波路1および導波路2とのそれぞれに接続するためにテーパ状に形成された導波路であるテーパ部31、33とを有している。偏波もつれ光子対発生素子10は、図3に示すシリコン細線導波路1、2および偏波回転素子3の周囲に不図示のクラッドを設けて構成されている。ここで、扁平とは、幅をW、高さをHとしたとき、W>Hであることを言う。また、図3に示す概略構成には、各導波路の配置関係を示されているのであり、長さ(L1=L2>L3)の関係は示されていない。
シリコン細線導波路1、2とテーパ部31、33と第一のコア32とは同一の材料からなり、一体形成されている。伝搬方向の中心軸は、シリコン細線導波路1、2とテーパ部31、32と第一のコア32との各導波路の中心部分にあり、シリコン細線導波路1、2と第一のコア32とでは一致していないが、シリコン細線導波路1、2を伝搬する光と第一のコア32を伝搬する光とがテーパ部31、32により光学的に接続されている。一方、第一のコア32と第二のコア34とは伝搬方向の中心軸が一致していない偏芯二重コア構成となっている(非特許文献5、特許文献2)。偏波回転素子3はシリコン細線導波路1伝搬後の光の偏波を90度だけ回転させてシリコン細線導波路2に接続するように設定されている。
ここで、偏芯二重コア構造を有する偏波もつれ光子対発生素子について説明する。図4は偏芯二重コア構造を有する偏波もつれ光子対発生素子のコア構成を示す図であり、(a)は偏波回転素子3の断面図であり、(b)はシリコン細線導波路1、2と偏波回転素子3との構成を示す上面図である。図4(a)に示すように、第一のコア32は第二のコア34内部に設けられている。第二のコア34の左下部分に第一のコア32が設けられている。この第一のコア32は第二のコア34の左端に対してオフセットを有している。一例として、第一のコア32の断面は200nm×200nmであり、第二のコア34の断面は840nm×840nmであり、シリコン細線導波路1、2の断面は、幅400nmであり、高さ200nmに形成されている。また、導波方向において、シリコン細線導波路1、2の長さはそれぞれ1cmであり、テーパ部31、33の長さはそれぞれ10μmであり、第一のコアおよび第二のコアの長さは35μmである。なお、シリコン細線導波路1、2は、典型的には、断面サイズを400nmから500nmの範囲の幅とし、200nmから220nmの高さとすることが可能である。
偏波もつれ光子対発生素子10において、直線偏波である入射光は、入力用の導波路コア1から入射するが、入力用の導波路コア1が扁平形状であるために、TEおよびTMの偏波はそれぞれ保持される。そして、入射光は、テーパ形状の導波路コアであるテーパ部31を経て第一のコア32および第二のコア34を伝搬する際に偏波が回転し、所望の回転角だけ回転した後にテーパ形状の出力用導波路コアであるテーパ部33を経て出力用の導波路2に出力される。出力用の導波路コア2が扁平形状であるために、TEおよびTMの偏波はそれぞれ保持される。
入力側の導波路1、31と第一のコア32と出力側の導波路33、2の材料としては、シリコンなどの高屈折率材料を用いる。これらのコアの断面積は、シリコンを用いる場合は0.1μm2以下である。クラッドの材料としては、第一のコア32、第二のコア34より低屈折率の材料を用いる。具体的には酸化シリコンやエポキシ樹脂、ポリイミド、その他の各種ポリマなどがある。第二のコア34の材料としては、第一のコア32とクラッドの中間の屈折率を持つシリコン窒化膜やシリコン酸窒化膜、1.5以上の屈折率を持つポリマ材料などを用いる。第一のコア32の材料がシリコンで、第二のコア34の材料が屈折率1.6のシリコン酸窒化膜の場合、第二のコア34の断面積は1.5μm2以下である。なお、図3、4では、第二のコア34が第一のコア32のみを覆っている場合を例に挙げて示しているが、これに限るものではなく、第二のコア34が、第一のコア32だけでなく、テーパ部31、33の一部あるいは全体を覆うようにしてもよい。
この偏波もつれ光子対発生素子10に、斜め45度偏波、すなわちH偏波とV偏波が1対1で重ね合わされているようなポンプ光を入力した場合の光の生成について説明する。入力されたポンプ光の伝搬は、シリコン細線素子1中では、図5に示すようにTE(H)偏波の光の伝搬(図5の(a)に示される系統)とTM(V)偏波の光の伝搬(図5の(b)に示される系統)に分離して考えることができる。
ポンプ光がTE偏波の場合(a)、このポンプ光はシリコン細線導波路1にてSFWMにより|TE>s|TE>iの偏波状態を有する量子相関光子対Aを生成する。次に偏波回転素子3にて、ポンプ光及び生成された光子対Aの偏波状態はそれぞれ、TMおよび|TM>s|TM>iへと回転される。さらにシリコン細線導波路2において、TM状態の偏波は、新たな|TM>s|TM>iの光子対Bを生成する。
ポンプ光がTM偏波の場合(b)、ポンプ光はシリコン細線導波路1にてSFWMにより|TM>s|TM>iの偏波状態を有する量子相関光子対Cを生成する。次に偏波回転素子3にて、ポンプ光及び生成された光子対Cの偏波状態はそれぞれ、TEおよび|TE>s|TE>iへと回転される。さらにシリコン細線導波路2において、TE状態のポンプ光は、新たな|TE>s|TE>iの光子対Dを生成する。
なお、SWFMの発生効率は極めて低いため、上記光子対AからDのうち二対以上の生成が同時に起こることはほとんどない(あるいは、同時に起こることのないようにポンプ光強度を設定できる)。
ここで、図1に示すような扁平形状のシリコン細線導波路1中におけるTEポンプ光によるTE偏波光子対の生成効率と、TMポンプ光によるTM偏波光子対の生成効率とを比べると、前者の方が圧倒的に高い。これは、SWFMが主に生じるシリコンコア部への光閉じ込めが、TE偏波の方がTM偏波に比べて強いためである(図6参照)。図6には、TE偏波およびTM偏波のそれぞれにおける導波路断面の電界分布が示されており、図示の中央部にシリコン細線導波路1が示されている。
これらの生成効率の違いを計算する。SWFMにより発生する光子対数Iは、ポンプ光のシリコン細線導波路1への入射パワーをP、シリコン細線導波路1の長さをLとし、導波路の単位長さ当りの損失αを考慮すると、次式(3)のように表わされる。
ここでLeffは伝搬損失を考慮した導波路の実効的な長さで、Leff=(1−exp(−αL))/αである。また、gはパラメトリックゲイン関数と呼ばれ、次式(4)であらわされる。
ΔβはSWFMにおける波数不整合であり、シリコン細線導波路における伝搬定数β(λ)(λは伝搬する光の波長)を用いて次式(5)と表される。ここで添字p、s、iはポンプ光、シグナル光子、アイドラ光子を示す。
Δβ=2β(λp)−(λs)−(λi) (5)
式(3)およびエネルギー保存条件(1)を用い、TE偏波およびTM偏波における光子対生成効率の計算結果を図7に示す。ここで各パラメータは次の通りである。L=2cm、ポンプ光強度P=100mWである。TE偏波についてα=1.5dB/cm、γ=300[1/W/m](非特許文献2)。TM偏波についてα=1.0dB/cm、γ=60[1/W/m](この値は、TEモードにおけるγの値と、TEモードおよびTMモードにおけるコア内への光強度閉じ込め割合の比から求めた)。β(λ)については、ビーム伝搬法により求めた屈折率分散(図8(a))を用いた。またポンプ光波長として1.55μmを用いた。図7より、TE偏波のポンプ光を用いた場合、生成される光子対数はTM偏波の場合と比べて1桁以上大きくなることが分かる。これは、前述のコアへの光閉じ込めの具合が大きく異なることによる。また、TM偏波ポンプにおいて、生成される光子対の帯域幅はTE偏波の場合に比べて極めて狭い。これは、TM偏波モードの方がTE偏波モードより大きな群速度分散を有するため、シグナル光子(あるいはアイドラ光子)の波長がポンプ光から少しでも離れてしまうと、位相整合を満たすことができなくなるからである。参考のため、この導波路における群速度分散の大きさを、よく用いられる分散パラメータD=d(dβ(ω)/dω)/dλとして図8(b)に示す。ここでωは光の角周波数で、ω=2π/λである。
図7に示す結果より、TM偏波ポンプにおける光子対生成効率は、TE偏波のそれと比べて無視できるほど小さいことが分かった。加えて、シグナル光子及びアイドラ光子の波長を、TM偏波ポンプにより生成される光子対が十分小さいように適切に選ぶことができる。このようにした場合、前述の光子対AからDのうち、光子対Bおよび光子対Cの発生がほとんど起こらないとして無視することができる。残りの光子対Aおよび光子対Dにより、式(2)に示すような偏波もつれ状態を得ることができる。
TE偏波及びTM偏波間の群速度が大きく異なるため、ウォークオフが問題となることを前述した。しかし本発明の偏波もつれ光子対発生素子10では、この影響は完全に排除することができる。すなわち本発明の偏波もつれ光子対発生素子では図9に示すように、入力端で同時刻で入力されたTE偏波(図中破線の波で示されている)の光パルス及びTM偏波(図中実線の波で示されている)の光パルスは、偏波もつれ光子対発生素子10の中途領域ではパルス中心位置の差が生じているが、出力端においてTE偏波パルス及びTM偏波パルス間の中心位置が一致している。これは入射ポンプ光がTE偏波とTM偏波との場合を比較すると、シリコン細線導波路1においてTM偏波の光はTE偏波に比べて早く伝搬する。しかし、偏波回転素子3によって偏波が90度回転したのち、各々の偏波は入れ替わるため、シリコン細線導波路2での群速度差によるウォークオフも逆方向に働く。したがって、シリコン細線導波路1とシリコン細線導波路2の長さが等しい場合、入射ポンプ光のウォークオフはキャンセルされる。同様に、生成される光子対についても、光子対はつねにポンプ光と同一偏波で発生することから、ウォークオフの効果をキャンセルすることができる。
偏波回転素子3もシリコンをコアとする導波路であるため、その部分において発生する光子対が雑音として問題となる可能性がある。しかし、偏波もつれ光子対発生素子10においては、偏波回転素子3の長さが約50μm程度であり、シリコン細線導波路の長さが1cmである、図4に示されている一例のように、偏波回転素子3の長さはシリコン細線導波路の長さに比べて十分短い。また、光子対数は、式(3)から導波路長の二乗に比例する。したがって、偏波回転素子3において発生する光子対は、他のSWWにて発生する光子対に比べて少なく、無視することができる。
実際の導波路損失を考慮すると、シリコン細線導波路2入射時のポンプ光強度は、シリコン細線導波路1入射時に比べ小さくなる。したがって、両者で生じる光子対AおよびDの生成確率が等しくならず、式(2)の偏波もつれ状態が劣化してしまう可能性がある。しかし、導波路へ入射する偏波面の傾き角を斜め45度としておくことで、この問題は自動的に解決する。この理由について図10を参照して説明する。
図10を参照すると、いま、シリコン細線導波路1へ入射するTE偏波のポンプ光(a)の強度をPTE、TM偏波のポンプ光(b)の強度をPTMとする。偏波回転素子3の透過率をηとすると、シリコン細線導波路2入射時のTM偏波として入射したポンプ光(b)の光強度はηexp(-αTML)PTMとなる。ここでαTMはTM偏波光に対するシリコン細線導波路の単位長さあたりの伝搬損である。シリコン細線導波路1およびシリコン細線導波路2の長さが等しいこと、光子対AおよびDはそれぞれTE偏波のポンプ光より生成されることを考慮すると、それぞれの部分で発生する光子対数は、それぞれの導波路へ入射するポンプ光の強度に比例する。したがって、光子対AおよびDの生成効率は、PTE 2および(ηexp(-αTML)PTM2にそれぞれ比例することとなる。
一方、光子対Aはシリコン細線導波路1にて発生するため、後部であるシリコン細線導波路2にて発生する光子対Dに比べて、偏波回転素子3およびシリコン細線導波路2の分だけ長く伝搬することとなる。これらの余分な部分を伝搬する際の光子対Aの透過率は、光子対Aはシリコン細線導波路2をTM偏波として伝搬することから、(ηexp(-αTML))2である。ここで二乗は、光子対の透過率は、光子対を構成するそれぞれの光子の透過率の積として得られることによる。この光子対Aに対する透過率も考慮に入れると、シリコン細線導波路2出射後の光子対AおよびDの数はそれぞれ(ηexp(-αTML)PTE2および(ηexp(-αTML)PTM2となる。これらはPTE=PTMのときにのみ相等しい。したがって、シリコン細線導波路1へ入射するポンプ光の偏波を斜め45度とすることで、PTE=PTMを実現し、光子対AおよびDの生成効率を等しくすることが可能となる。
上記においては簡単のため偏波回転素子3の挿入損失に偏波依存性を考慮しなかったが、実際には偏波依存性が存在する場合がある。その場合には、入射偏波の傾きを適宜調整することで、光子対AおよびDの生成効率を等しくすることが可能である。
入射偏波面の傾きを45度とする手段は、ポンプ光源と一体に構成されてもよいが、図11に示すように、入射偏波面の傾きを45度とする新たな偏波回転素子4を、シリコン細線導波路1の前段に新たに設けて偏波もつれ光子対発生素子10に集積することも可能である。この場合、入射ポンプ光の偏波はTEあるいはTMでよいため、入射光の偏波の調整が簡単になるという利点がある。このときの偏波回転手段4は、前述の偏波回転素子3と同様の構成で、かつシリコン細線32および第2コア34の伝搬方向の長さが半分であるような構成をとることができる。
図12は、偏波もつれ光子対発生素子10を用いた偏波もつれ光子対発生装置の全体構成を示す図である。図12に示すように、本発明に係る偏波もつれ光子対発生装置は、光周波数がfpのポンプ光を出力するポンプ光源40と、ポンプ光を斜め45度偏波とする偏波調整手段50と、2fp=fs+fiの関係を満たす光周波数fsのシグナル光子および光周波数fiのアイドラ光子から構成される、式(2)で表わされるような偏波もつれ光子対を発生する前述の偏波もつれ光子対発生素子10と、偏波もつれ光子対発生素子10からの出力よりポンプ光を選択的に減衰させるポンプ光減衰手段60と、ポンプ光減衰手段を透過した光子対からシグナル光子およびアイドラ光子を分離して出力する分離手段70とを少なくとも備える。
光源40は、例えば、半導体レーザーであり、光周波数がfpのポンプ光を出力する。またポンプ光はパルス形状を有していてもよい。
また、ポンプ光減衰手段60は、光子対発生部からの出力よりポンプ光を選択的に減衰させる(除去する)。例えば、ポンプ光減衰部60は、ファイバーブラッググレーティングなどから構成すればよい。
分離手段70は、ポンプ光減衰部60を透過した光子対からシグナル光子およびアイドラ光子を分離して出力する。分離したシグナル光子は、シグナル光子出力部から出力され、アイドラ光子は、アイドラ光子出力部から出力される。分離手段70は、波長によりシグナル光子およびアイドラ光子を分離するものであり、例えば誘電体多層膜フィルタやファイバーブラッググレーティング、アレイ光導波路から構成することができる。
本発明に係る偏波もつれ光子対発生装置では、SWFMにより、偏波もつれ光子対がシリコン細線導波路内で発生する。前述したように、SWFMによる偏波もつれ光子対生成素子としてシリコン細線導波路を用いた偏波もつれ光子対生成素子10によれば、光ファイバを用いた場合に比べて光子対発生装置の大幅な小型化が可能である。また、所望の偏波もつれ光子対を得るためにシリコン細線導波路を長くしても十分に小型であり、導波路長を適宜に長くして、所望の偏波もつれ光子対を得るのに必要なポンプ光パワーを低減することができる。これにより、安価なレーザーをポンプ光パルス光源に用いて低コスト化を図ることができる。
また、偏波回転素子としては、図3、4に示したような構成に限る必要はなく、特許文献2や特許文献3で他に挙げられているような様々な形態をとることができる。
また、上記ではSWFMを生じる非線形媒質としてシリコン細線導波路を挙げたが、本発明はこれに限らず、コア材料が単結晶半導体である導波路を用いることができる。単結晶半導体導波路としては、光導波路のコア部分が中心対称性を有し、二次の非線形光学効果が抑制される半導体物質により構成されているものを用いてもよい。パラメトリック下方変換など、二次の非線形光学効果が副次的に発生して雑音となる可能性を抑制することができる。特に、単結晶シリコン、単結晶ゲルマニウム、またはシリコンゲルマニウム混晶などがこのような物質として適している。これら材料を用いたコアより光導波路を構成すれば、光ファイバと比較するとコア断面積が小さく非線形定数γが大きいので、導波路長を短くして偏波もつれ光子対発生装置の小型化を実現できる。またクラッド部分としては、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜、シリコン酸窒化膜、ポリイミド等の有機膜、酸化アルミニウム、酸化チタン、樹脂膜、水、または空気等が挙げられる。これらは、偏波回転素子部の材料についても同様である。特に偏波回転素子の第2コアの屈折率は、第1コアの材料の屈折率より小さく、かつクラッドの材料の屈折率より大きければよい。
また、単結晶半導体による光導波路は、コアの断面構造を、ポンプ光、シグナル光子、およびアイドラ光子に対してシングルモード条件を満たすようにすることができる。
ところで、ポンプ光、シグナル光子、およびアイドラ光子に対してシングルモード条件を満たすようにコアの断面の寸法(幅、高さ)が設計された単結晶半導体導波路は、通常コアの断面寸法が、数100nmのオーダーである。これは、一般的なシングルモード光ファイバのコア径に比べて非常に小さい。このため、光ファイバからの出射光を光子対発生部としての単結晶半導体導波路に入力(光結合)し、また、この単結晶半導体導波路からの出力光子を光ファイバに出力(光結合)することが容易ではなく、多くの場合、光損失を伴う。
これに対し、単結晶半導体導波路の両端にスポットサイズ変換構造を設けることにより、単結晶半導体導波路とポンプ光源等の他の装置とを、光ファイバを用いて低い光結合損失で光学的に接続することが可能となる。このような、スポットサイズ変換構造による光結合で、より低いポンプ光強度による偏波もつれ光子対の生成が可能となり、コストの低減が可能となる。また、発生した偏波もつれ光子対を、効率よく光導波路より取り出して使用することができる。また、PLCで構成された量子演算装置へ、同一基板上で直接接続することができる。
スポットサイズ変換構造としては、例えば単結晶半導体導波路の両端の一部分が、端部に行くほど断面の寸法が漸次小さくなる構造がある。例えば、光導波路が形成されている基板平面に平行な方向のコア幅が、漸次小さくなればよい。また、基板の法線方向のコア高さが漸次小さくなっていてもよい。また、コア幅およびコア高さが漸次小さくなっていてもよい。このスポットサイズ変換構造を、図12に示す第1のシリコン細線導波路の入射側、及び第2のシリコン細線導波路の出射側に設けることにより、上記結合効率の問題を解決することができる。
本発明に係る偏波もつれ光子対発生装置では、SWFMにより、偏波もつれ光子対が単結晶半導体導波路および偏波回転素子より構成される導波路で発生する。この構成により、前述したようなシリコン細線導波路内の強い偏波依存性に関するウォークオフの問題を解決し、非特許文献4及び特許文献1で報告されているような光ファイバによる外部光回路を用いることなく、上の単結晶半導体導波路のみで偏波もつれ光子対を発生することが可能となる。
また、斜め45度の偏波を有するポンプ光を用いることで、それぞれの導波路で誘起される伝搬損失の影響をキャンセルし、式(2)で表わされるような偏波もつれ状態を純度よく得ることができる。
また、単結晶半導体導波路を光子対発生用媒質として用いることで、SFWMを用いた量子相関光子対の発生を行う非線形媒質としてシリコン細線導波路を用いることで得られる従来の3つの利点と同様の利点を得ることができるのは言うまでもない。
シリコン細線導波路(単結晶半導体導波路)に偏波回転素子を組み合わせた構成の導波路を用いることにより、ファイバ干渉計などの外部光回路を用いずに、ワンチップで偏波もつれ光子対を発生させる素子を初めて実現した。
1、2 シリコン細線導波路
3 偏波回転素子
10 偏波もつれ光子対発生素子
31、33 テーパ部
32 第一のコア
34 第二のコア
40 光源
50 偏波調整手段
60 ポンプ光減衰手段
70 分離手段

Claims (5)

  1. TE偏波ポンプ光およびTM偏波ポンプ光の1:1の重ね合わせである斜め45度に偏波されたポンプ光が入力され、このポンプ光のうちTE偏波成分に対して自然放出四光波混合過程により第1の量子相関光子対を生成すると共に入力されたTM偏波成分に対して自然放出四光波混合過程により第2の量子相関光子対を生成する第1の単結晶半導体導波路と、
    前記第1の単結晶半導体導波路を通過したTE偏波成分およびTM偏波成分と前記自然放出四光波混合過程によって生成された第1の量子相関光子対および第2の量子相関光子対との偏波面をそれぞれ90度回転させる偏波回転素子と、
    前記偏波面が90度回転されたTE偏波成分に対して自然放出四光波混合過程により第3の量子相関光子対を生成すると共に前記90度回転されたTM偏波成分に対して自然放出四光波混合過程により第4の量子相関光子対を生成する第2の単結晶半導体導波路と、
    を備え、
    前記第1の単結晶半導体導波路および第2の単結晶半導体導波路は導波方向における長さが互いに等しく、かつ該第1の単結晶半導体導波路および第2の単結晶半導体導波路の導波方向における長さが前記偏波回転素子の導波方向における長さより長く構成されることにより、前記第2の単結晶半導体導波路における、前記偏波面が90度回転された第1の量子相関光子対および前記第4の量子相関光子対から偏波もつれ光子対を生成することを特徴とする偏波もつれ光子対発生素子。
  2. 前記単結晶半導体導波路はシリコン細線導波路であることを特徴とする請求項1記載の偏波もつれ光子対発生素子。
  3. 前記単結晶半導体導波路は、導波路のコア部分が結晶対称性を有し、2次の非線形光学効果が抑制される半導体物質により構成されていることを特徴とする請求項1に記載の偏波もつれ光子対発生素子。
  4. 前記単結晶半導体導波路は、導波路のコア部分が単結晶シリコン、単結晶ゲルマニウム、またはシリコンゲルマニウム混晶により構成されていることを特徴とする請求項3に記載の偏波もつれ光子対発生素子。
  5. 請求項1に記載の偏波もつれ光子対発生素子と、ポンプ光源と、偏波調整手段と、ポンプ光減衰手段と、分離手段とを備えることを特徴とする偏波もつれ光子対発生装置。
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