JP2013106172A - 指向性スピーカ装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】スピーカの音圧の出力性能を維持させつつスピーカ同士の間隔を狭め、折り返し歪みが生じない周波数帯域を拡大することが可能な指向性スピーカ装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る指向性スピーカ装置は、非円形スピーカを複数(5つの楕円形スピーカ42a〜42eで例示)隣接して並べてなる。ここで、非円形スピーカ同士は、口径の最も長い部分以外の部分によって隣の非円形スピーカと隣接しているものとする。そして、本発明に係る指向性スピーカ装置は、各非円形スピーカから出力される音声信号のうち少なくとも2つは、それぞれ遅延量及び/またはゲインが異なるものとする。
【選択図】図4

Description

本発明は、複数のスピーカを隣接して並べた指向性スピーカ装置に関する。
2つ以上のスピーカを近接して並べ、それぞれのスピーカへの入力信号を適切に制御することにより、そのスピーカ群から出力される音の指向性を制御する技術が広く知られている。このようにスピーカが規則的に並べられてなるスピーカ群を、以下ではアレイスピーカと呼ぶ。その技術を利用すると例えば、ある特定の方向にのみ音のエネルギーを集中させるビームを作り、その直進方向軸上にいる人にのみ音を聞かせることができる。あるいは、各スピーカの実際の位置とは異なる特定の位置(アレイスピーカの奥側あるいは手前側)にあたかも音源があるかのように音の波面を形成し、その特定の位置に音像を定位させることができる。
まず、アレイスピーカで、ある特定の方向にのみ音のエネルギーを集中させて音声ビームを出力するように制御を行う場合を考える。図1に示すように、アレイスピーカ12の各スピーカから、時間的に少しずつ遅らせた信号11を一端のスピーカからもう一端のスピーカにかけて順に出力させることによって、ホイヘンスの原理によりそれら出力信号による波面13が合成され、ある特定の方向にのみエネルギーを集中させることができる。スピーカ同士の距離間隔をd、入力信号の最大周波数をfmax、音速をcすると、これらが次の関係を満たせば、空間折り返しひずみの発生を避けることができ、所望の制御が可能となる。
d≦c/(2fmax) (1)
ただし、スピーカ同士の距離間隔というのは、スピーカを点音源と見做したときの間隔であり、実際は、スピーカの中心位置同士の間隔のことを指すものとする。通常、音声信号(楽音信号)の最大周波数は20kHz程度までを含んでおり、例えば20kHzの入力信号が数式(1)で等式を満たすためには、気温15℃の標準状態の乾燥空気の場合、d=8.5mmとなる。すなわち、スピーカが円形であるとすると、その直径が8.5mm以下のものを用いる必要がある。しかし、スピーカの振動板の総面積は、そのスピーカ群の音圧出力性能に大きく関係し、一般性を損なわず、その面積が広いほど出力音圧を大きくすることができるとしてよい。したがって、そのような小径のスピーカは、低周波数の音声信号を出力することが通常困難であり実用的ではない。つまり実際は、ある程度の直径のあるスピーカを用いざるを得ず、その結果、数式(1)を満たす最大周波数fmax以上の入力信号には折り返しひずみが生じることとなる。以上より、このようなスピーカ制御においては、スピーカの出力性能を維持させつつ間隔を狭めることが重要である。
スピーカを平面上に二次元的に並べると、その平面の片側の任意の方向に音声ビームを出力することが可能である。ここで、例えばテレビなどのように映像を伴うような音声再生を行う場合、映像表示装置とスピーカを隣接して配置させることが多く、スピーカの配置場所に対する制約が生じる。また、そのとき、音声ビーム出力方向を垂直方向に制御する必要性はあまり無い。したがってこの場合、例えば図2に示すテレビ装置20のように、複数の円形スピーカ22を直線軸上に水平に並べ、水平方向にのみ音声ビームを作って音の出力方向を制御するといった手段が考えられる。なお、テレビ装置20では、テレビ画面を表示する表示パネル23の下方のエンクロージャ21に、複数の円形スピーカ22が一列に配設されている。そして、ここにおいても、上述したように、折り返し歪みをなるべく避けるには、スピーカの出力性能を維持させつつスピーカ同士の間隔を狭めることが重要である。
このように、ある特定の方向にのみ音のエネルギーをさせるようにアレイスピーカを使用することのほか、上述したように、各スピーカの実際の位置とは異なる特定の位置(アレイスピーカの奥側あるいは手前側)にあたかも音源があるかのように音の波面を形成し、その特定の位置に音像を定位させるような応用例もある。その代表的な例として、Wave Field Synthesis(WFS)がある(例えば、非特許文献1を参照)。WFSで代表される波面合成再生方式は、図3で模式的に示したように、水平方向に直線軸上に並べたアレイスピーカ32を、各スピーカの出力信号31の遅延を制御することで制御することにより、あたかもそのスピーカアレイの奥側あるいは手前側に音源(以下、「仮想音源」と呼ぶ。)があるかのように音声の波面34を合成し、その仮想的な音源位置33に音像を定位させる技術である。このWFS技術では、水平方向の折り返し歪みを避けるためには、以下の関係を満たす必要があるとしている。
d≦c/(2fmaxsinαmax) (2)
ここで、αmaxは、図3のように、合成波面34に沿った直線とx軸とのなす角の最大値である。αmaxは、仮想音源からの音の放射角と等しいとできるため、折り返し歪みが生じない周波数帯域及び放射角を拡大するためには、上述した例と同様に、スピーカの出力性能を維持させつつスピーカ同士の間隔を狭めることが重要である。
この課題に対し、従来さまざまな手法が提案されている。特許文献1では、例えば水平方向にスピーカを並べる場合、平行する上下2列に並べることによって、左右方向のスピーカ同士の間隔を狭めている。
特開平6−225379号公報
A. J. Berkhout, D. de Vries, and P. Vogel, "Acoustic control by wave field synthesis", J. Acoust. Soc. Am. Volume 93(5), アメリカ合衆国、Acoustical Society of America, May 1993, pp. 2764-2778
しかしながら、特許文献1に記載された技術では、アレイスピーカを上下2列に互い違いに配置するだけで、スピーカ同士の間隔は狭まっていない。上の列のアレイスピーカと下の列のアレイスピーカそれぞれから出力される音声信号で波面を合成するためには、上述のとおり、スピーカ同士の間隔が重要であり、喩え左右方向から見たときの間隔を狭めたとしても、実際の間隔が狭まっていないため、折り返し歪みが生じない周波数帯域を拡大できることにはならない。
本発明は、上述のような実状に鑑みてなされたものであり、その目的は、スピーカの音圧の出力性能を維持させつつスピーカ同士の間隔を狭め、折り返し歪みが生じない周波数帯域を拡大することが可能な指向性スピーカ装置を提供することにある。
上述したような課題を解決するために、本発明の第1の技術手段は、非円形スピーカを複数隣接して並べた指向性スピーカ装置であって、前記非円形スピーカ同士は、口径の最も長い部分以外の部分によって隣の非円形スピーカと隣接しており、各非円形スピーカから出力される音声信号のうち少なくとも2つは、それぞれ遅延量及び/またはゲインが異なることを特徴としたものである。
第2の技術手段は、第1の技術手段において、前記非円形スピーカ同士は、口径の最も短い部分によって隣の非円形スピーカと隣接していることを特徴としたものである。
第3の技術手段は、第1または第2の技術手段において、前記非円形スピーカ同士は直線上に並んでいることを特徴としたものである。
第4の技術手段は、第1または第2の技術手段において、前記非円形スピーカ同士は曲線上に並んでいることを特徴としたものである。
第5の技術手段は、第1〜第4のいずれか1の技術手段において、前記非円形スピーカは楕円形のスピーカであることを特徴としたものである。
第6の技術手段は、第1〜第4のいずれかの技術手段において、前記非円形スピーカは長方形のスピーカであることを特徴としたものである。
第7の技術手段は、第1〜第4のいずれかの技術手段において、前記非円形スピーカは平行四辺形のスピーカであることを特徴としたものである。
本発明の指向性スピーカ装置によれば、スピーカの音圧の出力性能を維持させつつスピーカ同士の間隔を狭め、折り返し歪みが生じない周波数帯域を拡大することが可能になる。
アレイスピーカで特定の方向にのみ音のエネルギーを集中させる様子を説明するための模式図である。 従来のスピーカアレイを備えたテレビ装置の構成例を示す図である。 波面合成再生方式を説明するための模式図である。 本発明に係る指向性スピーカ装置における複数のスピーカの設置例を示す図である。 従来のテレビ装置におけるアレイスピーカの配置例を示す図である。 本発明に係る指向性スピーカ装置の一構成例を示すブロック図である。 図6の指向性スピーカ装置における音声信号処理部の一構成例を示すブロック図である。 各仮想音源に対応する音声信号を図7の音声信号処理部におけるバッファに蓄える様子を示す図である。 図7の音声信号処理部の処理例を説明するためのフロー図である。 図7の音声信号処理部における遅延計算部の処理例を説明するためのフロー図である。 図7の音声信号処理部におけるゲイン計算部の処理例を説明するためのフロー図である。 図7の音声信号処理部における距離計算部の処理例を説明するためのフロー図である。 図10の処理で計算された遅延量に基づき、図7の音声信号処理部におけるバッファから音声信号を読み出す様子を示す図である。 図7の音声信号処理部において生成される、各仮想音源、各スピーカについての1セグメント長の音声信号波形の例を示す模式図である。 図6の指向性スピーカ装置における各スピーカと各仮想音源との配置例を示す鳥瞰図である。 図15の配置例における1番目の仮想音源に対し、図7の音声信号処理部で求めた遅延量の一例を示す模式図である。 図15の配置例における1番目の仮想音源に対し、図7の音声信号処理部で求めたゲイン係数の一例を示す模式図である。 図15の配置例と同じスピーカアレイのそれぞれのスピーカについて、音声ビームを出力する際の遅延量の一例を示す模式図である。 図15の配置例と同じスピーカアレイのそれぞれのスピーカについて、音声ビームを出力する際のゲイン係数の一例を示す模式図である。 本発明に係る指向性スピーカ装置における複数のスピーカの他の設置例を示す図である。 本発明に係る指向性スピーカ装置における複数のスピーカの他の設置例を示す図である。 本発明に係る指向性スピーカ装置における複数のスピーカの他の設置例を示す図である。 本発明に係る指向性スピーカ装置における複数のスピーカの他の設置例を示す図である。 本発明に係る指向性スピーカ装置における複数のスピーカの他の設置例を示す図である。 本発明に係る指向性スピーカ装置を備えたテレビ装置の構成例を示す図である。 本発明に係る指向性スピーカ装置を備えたテレビ装置の他の構成例を示す図である。 本発明に係る指向性スピーカ装置を備えたテレビ装置の他の構成例を示す図である。 本発明に係る指向性スピーカ装置を備えたテレビ装置の他の構成例を示す図である。 本発明に係る指向性スピーカ装置を備えたオーディオシステムの構成例を示す図である。 本発明に係る指向性スピーカ装置を備えたオーディオシステムの他の構成例を示す図である。 本発明に係る指向性スピーカ装置を備えたオーディオシステムの他の構成例を示す図である。 本発明に係る指向性スピーカ装置を備えたオーディオシステムの他の構成例を示す図である。 本発明に係る指向性スピーカ装置を備えた映像投影システムの構成例を示す図である。 本発明に係る指向性スピーカ装置を備えた自動車の例を示す図である。 本発明に係る指向性スピーカ装置を備えたタブレット型PCの例を示す図である。 本発明に係る指向性スピーカ装置における複数のスピーカの他の設置例を示す図である。
本発明に係る指向性スピーカ装置は、非円形スピーカを複数隣接して並べた装置である。非円形スピーカは、口径の長さが一定ではなく、楕円形、四角形など様々な形状が該当する。なお、口径の長さとは、スピーカにその中心を通る線を引いてその線上で計ったスピーカの長さ(幅)である。
図4は、本発明に係る指向性スピーカ装置における複数のスピーカの設置例を示す図である。図4で例示する指向性スピーカ装置40は、直方体のエンクロージャ41に5個の楕円スピーカ42a〜42eが設置されている。
このような楕円スピーカは従来、図5に従来のテレビ装置におけるアレイスピーカの配置例を示すように、長手方向が水平方向となるように、狭額縁の薄型テレビ装置50に取り付け、使用される。このテレビ装置50では、表示パネル53の下方のエンクロージャ51に2つの楕円スピーカ52a,52bが設置されている。このように楕円スピーカ52a,52bを設置すれば、同図の通り、垂直方向の設置面積を大きくすることなく振動板面積を広くとることができ、音声出力性能を維持させつつ、狭い額縁のテレビシステムを実現できる。
しかし、このようなスピーカを本発明では図4の指向性スピーカ装置40のように、例えば各楕円スピーカ42a〜42eの口径の最も短い部分が隣接するように並べ設置する。楕円スピーカ42a〜42e等の非円形スピーカをこのように設置し、上述したように音声の波面を合成して音声ビームを作る場合、あるいはWFS方式によって音像定位させるなどの場合、スピーカアレイ軸上に各スピーカの中心が位置するため、スピーカアレイ軸方向に対して、円形のスピーカを使った場合と同様の制御を行うことができる。さらに、同じ振動板面積を有する円形のスピーカからなるスピーカアレイと比べ、振動板面積が等しいにも関わらず、スピーカ間隔dを小さくすることができるので、折り返し歪みを生じない周波数帯域を拡大することが可能となる。
本発明に係る指向性スピーカ装置は、その主たる特徴の一つとして、図4で例示したように非円形スピーカ同士が、口径の最も長い部分以外の部分によって隣の非円形スピーカと隣接している。さらに、本発明に係る指向性スピーカ装置では、ビーム方式やWFS方式で例示したように、その主たる特徴の一つとして、音声再生に際し、各非円形スピーカから出力される音声信号のうち少なくとも2つは、それぞれ遅延量及び/またはゲインが異なるようにする。
以下、図6等を参照しながら、本発明に係る指向性スピーカ装置の構成例及び処理例について説明する。以下の例では、遅延量やゲインの計算について上述のWFS方式で再生する場合の具体例を示しているが、この音声再生方式に限らず、上述した音声ビームを出力するような音声再生方式であっても、各非円形スピーカから出力される音声信号のうち少なくとも2つが、それぞれ遅延量及び/またはゲインが異なるものであればよい。
図6は、本発明に係る指向性スピーカ装置の一構成例を示すブロック図、図7は、図6の指向性スピーカ装置における音声信号処理部の一構成例を示すブロック図、図8は、各仮想音源に対応する音声信号を図7の音声信号処理部におけるバッファに蓄える様子を示す図である。
図6で例示する指向性スピーカ装置60は、音声信号処理部63の他に、デコーダ61、音声信号抽出部62、D/Aコンバータ64、増幅器65、そして複数のスピーカ群が配列したアレイスピーカ66を備え、音声データの再生が可能となっている。デコーダ61は、コンテンツを復号化し、音声信号抽出部62に出力する。復号化の対象となるコンテンツとしては、デジタル放送として受信したコンテンツ、インターネットからダウンロードするコンテンツ、外部記憶装置または内部記憶装置から読み出すコンテンツなど、どのような経路で取得したコンテンツであってもよい。
音声信号抽出部62は、復号化されたコンテンツから音声信号を抽出し、音声信号処理部63に、ある一定標本数ずつまとめて出力する。ここでは、音声信号の標本周波数を44100Hzとしたときに512標本点ずつまとめて出力するものとする。以降、その一まとまりの標本値群をセグメントと呼ぶ。そのセグメント出力は、例えば約11.6ms(≒512[sample]÷44100[Hz])毎に行われる。
また、ここでは、上記コンテンツにおける音声データが仮想音源の数だけ音声信号を持っていることを前提に説明する。ただし、指向性スピーカ装置60に、音声データの加工(フォーマット変換)によって各仮想音源についての音声信号を生成するフォーマット変換処理部を設けてもよい。このフォーマット変換処理部は、仮想音源毎の音声信号すら含まない音声トラックからなるコンテンツを、仮想音源に対する音像として再生可能なフォーマットに変換する。この変換処理は、例えば、指向性スピーカ装置60内部に位置が記憶された各仮想音源に関して、音声データから各仮想音源についての音声信号を算出し、さらに各仮想音源位置を伴うように加工する。このような変換処理により、仮想音源の位置を示す位置情報も含めて仮想音源に関する情報を一切含まない音声データでも、仮想音源に対する音像として聴取させるように再生できる。
音声信号処理部63は、後述する信号処理を行い、その処理結果をD/Aコンバータ64に出力する。ここで、その処理結果は各スピーカ66が出力すべき音声信号となる。D/Aコンバータ64は、それぞれの音声信号をデジタル信号からアナログ信号に変換し、増幅器65に出力する。各増幅器65は、それぞれの音声信号を増幅し、各スピーカ66に出力する。スピーカ66に出力された音声信号は、音となって空間中に出力される。
音声信号処理部63は、図7の音声信号処理部70で例示できる。音声信号処理部70は、距離計算部71、ゲイン計算部72、遅延計算部73、バッファ74、波形生成部75、及び波形加算部76を備える。
ここで、遅延計算部73は、WFS方式により音響波面を合成するための遅延を計算し、ゲイン計算部72は、同じくWFS方式により音響波面を合成するためのゲイン係数を計算する。遅延計算部73は、各スピーカと各仮想音源との組み合わせの全てについて、該当するスピーカと仮想音源との距離に応じて各スピーカに対する遅延量を算出する遅延算出部の一例である。遅延算出部では、計算ではなく、予め格納された距離−遅延量のテーブルから遅延量を求めてもよい。ゲイン計算部72は、各スピーカと各仮想音源との組み合わせの全てについて、該当するスピーカと仮想音源との距離に応じて各スピーカに対するゲイン係数を算出するゲイン算出部の一例である。ゲイン算出部では、計算ではなく、予め格納された距離−ゲイン係数のテーブルから遅延量を求めてもよい。
バッファ74は音声信号を一時的に蓄える。より具体的には図8に示すように、音声信号処理部70に入力された、各仮想音源に対応する各音声信号は、それぞれ別々のバッファ領域81,82,83等に蓄えられる。バッファ領域81〜83等としては物理的に別々のバッファを設けておいてもよい。それぞれのバッファ領域81等では、例えば4セグメント分など、ある一定のセグメント数だけ音声信号波形を保持しておき、それより過去のセグメントは順次捨てていく。どれだけのセグメント数を保持するかについては、ハードウェアの性能などによって適切に決定する。
波形生成部75は、算出された遅延量に応じて音声データをバッファ74より読み出す読出部の一例である。より詳細には、この読出部は、各仮想音源について、各バッファ領域81〜83等から遅延量に応じて読み出しを行う。また、波形生成部75は、次の音声信号算出部の一例でもある。この音声信号算出部は、算出されたゲイン係数を読出部で読み出した音声データに乗算することで、各スピーカと各仮想音源に対する出力音声信号を算出、すなわち各仮想音源のそれぞれについて各スピーカへ出力するための出力音声信号を算出する。そして、波形加算部76は、算出された出力音声信号をスピーカ毎に加算する。
図9は、図7の音声信号処理部の処理例を説明するためのフロー図であり、図9に基づき音声信号処理部70での処理の流れを説明する。まず、音声信号処理部70は、ステップS91a,S91bのループ及びステップS92a,S92bのループで示すように各スピーカと各仮想音源の全ての組み合わせについて、遅延量を取得し(ステップS93)、それに基づいてバッファ74より音声信号を読み出し(ステップS94)、次にゲイン係数を取得し(ステップS95)、先ほど読み出した音声信号にそのゲイン係数を乗算して音声信号を得る(ステップS96)。音声信号処理部70は、このようにして得られた音声信号群をスピーカ毎に加算して(ステップS97)、各スピーカの出力音声信号を得る。最終的に、各出力音声信号が各スピーカから音として出力される。
このように、上述の遅延量の取得からゲイン係数の乗算までは各スピーカと各仮想音源の全ての組み合わせについて行い、各スピーカの出力音声信号を求めるための加算はスピーカ毎に行うが、ここでは説明のために、i番目のスピーカとj番目の仮想音源の組み合わせの場合を例に挙げて、各処理の詳細について説明する。
まず、ステップS93では、i番目のスピーカとj番目の仮想音源の組み合わせの場合の遅延量を取得する。遅延計算部73における遅延量の計算処理例を、図10のフロー図に基づき説明する。遅延計算部73は、遅延量を計算するのに先立ちi番目のスピーカとj番目の仮想音源の距離を計算し、その距離を得る(ステップS101)。
その距離は距離計算部71によって計算される。距離計算部71における計算処理例を図12に基づき説明する。距離計算部71は、スピーカと仮想音源の距離を計算するために、まず仮想音源位置とスピーカ位置を取得する(ステップS121,S122)。ステップS121,S121の順序は問わない。ところで、スピーカは通常、機器に設置され固定されているので、スピーカ位置は既知とすることは一般性を損なわない。無論、スピーカは移動可能であり、移動に伴いスピーカ位置も自動的にまたはユーザ操作により設定可能としておいてもよい。
ここでは、ステップS122において、例えばi番目のスピーカ位置を読み込んだとして説明する。読み込んだ位置は例えば直交座標で表現される三次元のベクトル値《l》=(lixiyiztrとし、各要素はメートルの単位で表現される。ここで、trは転置行列を表し、《》はベクトルを表す記号とする。以下同様の表記を用いる。
ステップS121では、距離計算部71は、音声信号に伴うように装置内部などから読み出され入力された、仮想音源の位置を示す位置情報を読み出す。仮想音源の位置情報は時間とともに変化してもよいが、この例では予め決まっているものとする。ここでは例として、ステップS121においてj番目の仮想音源の位置情報を読み込んだとする。読み込んだ位置は上と同じく直交座標で表現される三次元のベクトル値《sj》=(sjxjyjztrとし、各要素はメートルの単位で表現される。そして、同じく距離計算部71は、i番目のスピーカ位置とj番目の仮想音源位置との間の距離dij=|《l》−《sj》|を計算する(ステップS123)。
その結果を基に、上述の遅延計算部73は、図10のフロー図に従って、離散値の遅延量τijを計算する(ステップS102)。τijの具体的な計算方法については後述する。
ここでは、仮想音源位置が予め決まっており、その仮想音源の位置情報が音声信号に伴うように入力されるものとしたが、予め仮想音源の位置情報が音声信号とともに記録されているようなデータフォーマットも考えられ、そのようなデータフォーマットの場合においては、仮想音源の位置情報を音声データから取得すればよい。無論、この場合でも、音声信号とともに記録された仮想音源の位置情報は時刻によって変化するものであってもよい。このように、音声データは、仮想音源についての位置情報を伴ったデータであってもよいし、伴わなくてもよく、その場合には指向性スピーカ装置60の内部や外部記憶装置などから音声信号に伴うように位置情報が読み出せればよい。例えば指向性スピーカ装置60におけるデフォルトの仮想音源位置を示す位置情報、もしくは指向性スピーカ装置60側でユーザ設定により決めたユーザ設定の仮想音源位置を示す位置情報を、再生対象の音声信号に伴うように読み出せばよい。
図9を再度参照すると、ステップS94では、このようにしてステップS93で求められた遅延量を基にバッファ74から音声信号を読み出す。その読み出し方法を模式的に示したものが図13である。図13は図8のバッファ領域81〜83等のうちの1つを抜き出した模式図である。この抜き出したバッファ130に入っているデータの最新の値から、離散値の遅延量だけ読み出す部分をデータが古い方にシフトさせ、そこから1セグメント分の音声信号を読み出す。読み出した信号を《xij》=(x(0),x(T),・・・,x(NT))とする。ただし、Nはセグメントの長さで上述と同様512、Tはサンプリング周期で例えば1÷44100[Hz]=0.023[ms]である。
ステップS95では、このようにして読み出した音声信号の波形に乗算するためのゲイン係数を取得する処理を施すが、ゲイン係数の取得はゲイン計算部72においてゲイン係数を計算することにより実行する。図11のフロー図に基づき、ゲイン計算部72におけるゲイン係数の計算処理例を説明する。ゲイン係数を計算するためには、仮想音源とスピーカとの距離を取得する必要があるが、その距離計算は上述で図12を用いて説明した通りである。このようにしてゲイン計算部72は距離dijを取得し(ステップS111)、距離dijに対してゲイン係数gijを計算する(ステップS112)。gijの具体的な計算方法については後述する。
そして、ステップS96では、求めたゲイン係数を先ほど読み出した音声信号に乗算する。その乗算後の信号を《yij》とすると、《yij》=gij《xij》となる。そして、ステップS92a,S92bのループで示したように、上述の処理を各仮想音源に対して行った後、i番目のスピーカに対する出力音声信号《o》を次式により求める(ステップS97)。
Figure 2013106172
上記信号《yij》の状態は、例えば図14の波形一覧表140で表現したようになる。図14は、図7の音声信号処理部70において生成される、各仮想音源、各スピーカについての1セグメント長の音声信号波形の例を模式的に示している。波形一覧表140では、スピーカ数が8個、仮想音源が3個の例を表している。また、波形一覧表140において縦軸は仮想音源のインデックス、横軸はスピーカのインデックスを表しており、それぞれ全ての組み合わせについて、1セグメントの長さの音声信号波形が算出されている。波形一覧表140において列毎に波形を加算すると、各スピーカに対する出力音声信号《o》が算出される。
次に、i番目のスピーカとj番目の仮想音源に対し、上述の遅延量τijとゲイン係数gijを、それぞれi番目のスピーカ位置とj番目の仮想音源位置との間の距離dijから求める方法について説明する。図15は各仮想音源とスピーカの配置例を示す鳥瞰図である。図15で示す配置例150では、横軸でスピーカアレイの軸方向を、縦軸で視聴者からスピーカへの奥行き方向を、それぞれ示しており、ともに単位はメートルである。LSP1〜LSP8はそれぞれ1番目から8番目のスピーカを、NS1〜5はそれぞれ1〜5番目の仮想音源を表している。この配置例150では、スピーカ数が8個、仮想音源が5個としている。なお、仮想音源が5個の場合、図14の波形一覧表140における仮想音源のインデックス数は5つとなる。
配置例150において、1番目の仮想音源に対し求めた各スピーカの遅延量とゲイン係数を模式的に表したものが、それぞれ図16と図17である。図16は、配置例150における1番目の仮想音源に対し、遅延計算部73で求めた遅延量の一例を示す模式図で、図17は、配置例150における1番目の仮想音源に対し、ゲイン計算部72で求めたゲイン係数の一例を示す模式図である。ここで、図16では、縦軸で遅延量の値を、横軸でスピーカのインデックスを表し、図17では、縦軸でゲイン係数の値を、横軸でスピーカのインデックスを表している。
図16で示す遅延量のグラフ160から分かるように、遅延量は、仮想音源NS1の座標と各スピーカの座標との間のユークリッド距離に従って増加させており、具体的には、例えばNS1の座標と対象スピーカの座標との距離を音が進むのに要する時間に相当する標本点の数とする。
また、図17で示すゲイン係数のグラフ170から分かるように、ゲイン係数は仮想音源NS1の座標と各スピーカの座標との間のユークリッド距離の平方根に反比例としている。
なお、ここでの例は仮想音源のx座標とスピーカのx座標との距離(一次元のユークリッド距離)を用いているが、x座標とz座標(スピーカからの奥行き方向の座標)をパラメータとしても、あるいは、仮想音源の三次元空間上の位置座標とスピーカの三次元空間上の位置座標とのユークリッド距離(三次元のユークリッド距離)をパラメータとしてもよい。ここで、スピーカの配設方向(並び方向、ただし直線上に並んでいない場合には配置に基づき大まかに決めた並び直線の方向)を一次元ユークリッド空間、スピーカの設置平面を二次元ユークリッド空間、スピーカの設置空間を三次元ユークリッド空間としている。
このような方式で水平方向に直線軸上に並べた楕円型スピーカによるスピーカアレイを制御することにより、あたかもそのスピーカアレイの奥側あるいは手前側に音源があるかのように音声の波面を合成し、その仮想的な音源位置に音像を定位させることができる。その際、振動板総面積が等しい円形スピーカを使用することに比べ、スピーカ間隔を狭めることができるため、折り返し歪みが生じない周波数帯域を拡大することができ、良好な音質と音像を提供することが可能となる。
また、同様の再生方式により、図1を参照しながら説明した音声ビームを形成することもできる。具体的な例について、図18および図19を参照しながら説明する。図18は、配置例150と同じスピーカアレイのそれぞれのスピーカについて、音声ビームを出力する際の遅延量の一例を示す模式図で、図19は、配置例150と同じスピーカアレイのそれぞれのスピーカについて、音声ビームを出力する際のゲイン係数の一例を示す模式図である。
図18に示すように、スピーカアレイの一端からもう片方の端にかけて、遅延量を一定の割合で増加させると同時に、図19に示すようなゲイン係数を採用すると、スピーカアレイから出力される音声は合成されて平面波を形成し、ある特定の方向にのみエネルギーを集中させることができる。ここで、図19のゲインが両端で小さくしているのは、音声ビーム両端の不要な折り返し歪みを抑制するための処理である。
本発明に係る指向性スピーカ装置は、図18および図19で説明した音声再生方式であっても、振動板総面積が等しい円形スピーカを使用することに比べ、スピーカ間隔を狭めることができるため、スピーカの音圧の出力性能を維持させつつスピーカ同士の間隔を狭め、折り返し歪みが生じない周波数帯域を拡大することが可能になる。
本発明に係る指向性スピーカ装置の再生方式について補足的に説明する。
まず、WFS方式で再生するような指向性スピーカ装置では、この再生方式は、既存のモノラルやステレオ再生を置き換える方式として使用できる。また、ビーム方式で再生する指向性スピーカ装置では、この再生方式の応用例として、例えば、表示装置の表示画面内の複数の窓(分割領域)にそれぞれ別のコンテンツを表示し、それぞれの音声を別の方向に出力させ、複数の人が別のコンテンツを視聴できるようにすることができる。ビーム方向については、人の位置をセンシングし、人がいる方向に、例えばその人に最も近い表示位置のコンテンツ音声をビーム出力させることができる。そのほか、5.1chのL/R/SL/SRをそれぞれ別の方向にビーム出力し、部屋の壁面に反射させて音像定位するような制御を行ってもよい。この場合、方向を調整するために調整用マイクを視聴位置に置いて、スピーカから出力させたテスト信号を収音し解析した結果に基づいて方向を自動調整するような機能を設けておけばよい。また、上述の応用例を採用する場合には、この指向性スピーカ装置に、WFS方式での再生とビーム方式での再生とを切り替えボタン等により切替可能に構成してもよい。
また、本発明に係る指向性スピーカ装置は、上述の楕円型スピーカを口径の最も長い部分同士を結ぶ直線が垂直方向となるように設置する設置方法に限らず、例えば長方形型スピーカなど、円形以外の様々なスピーカを様々な方向に設置してよい。非円形スピーカの形状や配置について、図4の指向性スピーカ装置以外の例を図20〜図24を参照しながら説明する。図20〜図24は、本発明に係る指向性スピーカ装置における複数のスピーカの他の設置例を示す図である。
図20で例示する指向性スピーカ装置200は、楕円形スピーカ202a〜202bをエンクロージャ201の正面に設置する際に、口径の最も長い部分同士を結ぶ直線を垂直方向から傾けて設置した例、すなわち口径の最も短い部分同士を結ぶ直線を水平方向から角度β(β>0)傾けて設置した例である。図20の例では図4の例と同様に各非円形スピーカとして楕円形のスピーカを用いている。このように、非円形スピーカ同士は、図4の例のように口径の最も短い部分によって隣の非円形スピーカと隣接していることが好ましいが、図20の例のように口径の最も長い部分以外の部分によって隣接していればよい。また、図20の指向性スピーカ装置200や図4の指向性スピーカ装置40のように、複数の非円形スピーカは直線上に並んでいればよい。
なお、図示しないが、極端な例を挙げると、非円形スピーカが二つの円を重ねるようにした瓢箪型のように凹みがあるものである場合でも、この凹みが一直線上(または後述するように曲線上)に並ぶように隣の非円形スピーカと配列することが好ましいが、口径の最も長い部分以外の部分同士が一直線上(または後述するように曲線上)に並べばよい。
図21で例示する指向性スピーカ装置210は、楕円形スピーカではなく長方形のスピーカ212a〜212eを用い、それらをエンクロージャ211の正面に設置したものである。図22で例示する指向性スピーカ装置220は、楕円形スピーカではなく平行四辺形のスピーカ222a〜222eを用い、それらをエンクロージャ221の正面に設置したものである。図23で例示する指向性スピーカ装置230は、楕円形スピーカではなく平行四辺形のスピーカ232a〜232eを用い、それらをエンクロージャ231の正面に設置したものである。このように、各非円形スピーカは長方形のスピーカであっても、あるいは平行四辺形のスピーカであっても、あるいは平行四辺形のうちの菱形のスピーカであってもよい。
また、図20の指向性スピーカ装置200や図22の指向性スピーカ装置220では各スピーカを同じ斜め方向に配置した例を挙げたが、例えば、左半分のスピーカ群と右半分のスピーカ群とで逆に傾けるように配置しても、同様の効果は得られる。
上述の例では、各スピーカとして通常のコーン型のスピーカを図示している。それに対し、図24で例示する指向性スピーカ装置240は、図21の指向性スピーカ装置210と同様に長方形のスピーカ242a〜242eをエンクロージャ241の正面に設置したものであるが、スピーカ242a〜242eとして、振動板がリボン型のスピーカを用いている。
さらに、図示しないが、全帯域スピーカによく見られる、コーン型振動板の中央に小口径のコーン型振動板を取り付けたダブルコーン型振動板を用いてもよい。あるいは、同じく図示しないが、ホーン型スピーカやドーム型スピーカを用いてもよい。なお、図20〜図24のいずれにおいても5個のスピーカを配列した例を挙げているが、スピーカの数は複数であればよい。
次に、本発明の実装について簡単に説明する。本発明は、例えばテレビなど映像の伴う装置に利用できる。本発明を適用可能な装置の様々な例について、図25〜図35を参照しながら説明する。図25〜図28は、それぞれ本発明に係る指向性スピーカ装置を備えたテレビ装置の構成例を示す図で、図29〜図32は、それぞれ本発明に係る指向性スピーカ装置を備えたオーディオシステムの構成例を示す図、図33は、本発明に係る指向性スピーカ装置を備えた映像投影システムの構成例を示す図、図34は、本発明に係る指向性スピーカ装置を備えた自動車の例を示す図である。図35は、本発明に係る指向性スピーカ装置を備えたタブレット型PCの例を示す図である。なお、図25〜図35においてスピーカの数はまちまちであるが、スピーカの数は複数であればよい。
本発明に係る指向性スピーカ装置をテレビ装置に利用する場合、指向性スピーカ装置の配置は口径の最も長い部分以外の部分によって隣の非円形スピーカと隣接しているという条件さえ満たせば自由に決めればよい。
図25で例示するテレビ装置250のように、表示パネル253の下方のエンクロージャ251の正面に複数のスピーカ252でなるスピーカアレイを設けてもよい。図26で例示するテレビ装置260のように、表示パネル263の上方のエンクロージャ261に、複数のスピーカ262でなるスピーカアレイを設けてもよい。図27で例示するテレビ装置270のように、表示パネル273の上方のエンクロージャ271aの正面に複数のスピーカ272aでなるスピーカアレイを設け、さらに表示パネル273の下方のエンクロージャ271bの正面に複数のスピーカ272bでなるスピーカアレイを設けてもよい。このように、本発明に係る指向性スピーカ装置は複数セット設けることができる。
また、図28で例示するテレビ装置280のように、台座284の上の表示パネル283の表面に透明のフィルム型の複数のスピーカ282でなるスピーカアレイを設けて、画面内からあたかも音が出力しているように知覚できるようにしてもよい。あるいは、図示しないが、液晶パネル等の表示パネルに振動板としてのスピーカ素子を組み込んで、図28の各スピーカ282のように領域毎に制御を行ってもよい。また、画面の左右方向に複数のスピーカを配置した例を挙げたが、他の例として、上下方向に複数のスピーカを配置することもできる。これにより、画面の左右方向に配置した例と同様に、画面内からあたかも音が出力しているように知覚できるだけでなく、左右方向(水平方向)の音像定位位置をそのままで、上下方向(垂直方向)について、上下のスピーカから出力される音によってディスプレイ画面内に音像定位させることができる。
また、本発明に係る指向性スピーカ装置はオーディオシステム装置に利用できる。図29で例示するオーディオシステム290のように、複数のスピーカ292でなるスピーカアレイを設けたエンクロージャ291に、光ディスク296やポータブルプレーヤ297あるいはネットワークメディアサーバ298から提供される音楽コンテンツを入力・再生する音楽コンテンツ再生装置が設けられていてもよい。ここでは、音楽コンテンツ再生装置としては、光ディスク296用に光ディスク読取装置293が、ポータブルプレーヤ297用にプレーヤ接続端子294が、ネットワークメディアサーバ298との通信用に無線通信装置295が、それぞれ搭載された例を挙げている。
また、図30で例示するAVラックシステム300のように、台座304と表示パネル303を有するテレビ装置を搭載するためのテレビ装置台(テレビボード)のエンクロージャ301に、複数のスピーカ302でなるスピーカアレイを埋め込むこともできる。図30の例のテレビ台は、図29で説明したような音楽コンテンツ再生装置にスピーカアレイが埋め込まれている。
また、図31で例示する指向性スピーカ装置310は、垂直方向に音声ビームや仮想音源での音像を制御する装置のエンクロージャ311の正面に、複数のスピーカ312でなるスピーカアレイを設けている。この例や図28を参照しながら説明した他の例のように、本発明の指向性スピーカ装置はスピーカアレイとして垂直方向に複数のスピーカを配置して、上下のスピーカ312から出力される音によって垂直方向の決まった位置に音像定位させることができる。
さらに、図32で例示する指向性スピーカ装置320のように、複数のスピーカ321でなるスピーカアレイを、エンクロージャ321の聴取者の方ではなく上方(あるいは下方)に向けて配置して使用してもよく、その場合、図示したように反射板323を設置してもよい。
また、本発明に係る指向性スピーカ装置を映像投影システムに利用することもできる。図33で例示する映像投影システム330のように、映像投射装置334で映像を投射する音透過型のスクリーン333の後ろに設けたエンクロージャ331に、複数のスピーカ332でなるアレイスピーカを配置してもよい。
また、本発明に係る指向性スピーカ装置はカーオーディオに適用することもできる。例えば、図34で例示する自動車340のように、車内のダッシュボード341の表面に、複数のスピーカ342を曲線状に並べてなるスピーカアレイを埋め込むようにしてもよい。さらに、本発明に係る指向性スピーカ装置はタブレットPCに適用することもできる。図35で例示するタブレットPC350のように、表示部353のエンクロージャ351の少なくとも一辺に複数のスピーカ352でなるアレイスピーカを埋め込んでもよい。その場合、タブレットPC350では図示するようにアレイスピーカ全体に対して音出力のための開口部352aを設けておいてもよいし、各スピーカ352のそれぞれに対して開口部を設けてもよい。
また、図34で例示したようにスピーカアレイの各スピーカ342は、直線上ではなく曲線上に並んでいてもよい。図36は、本発明に係る指向性スピーカ装置における複数のスピーカの他の設置例を示す図である。図36で例示する指向性スピーカ装置360も、複数のスピーカ362が点線で図示したように曲線上に並んでエンクロージャ361に設けられた例である。このように、本発明に係る指向性スピーカ装置は、スピーカアレイの各非円形スピーカが必ずしも直線上に並んでいる必要はなく、曲線上に並んでいてもよい。
また、例えば図7で例示した音声信号処理部における各構成要素など、本発明に係る指向性スピーカ装置の各非円形スピーカとそのエンクロージャ以外の各構成要素は、例えば、マイクロプロセッサ(またはDSP:Digital Signal Processor)、メモリ、バス、インターフェイス、周辺装置などのハードウェアと、これらのハードウェア上にて実行可能なソフトウェアとにより実現される。上記ハードウェアの一部または全部は集積回路/IC(Integrated Circuit)チップセットとして搭載することができ、その場合、上記ソフトウェアは上記メモリに記憶しておければよい。また、上記の各構成要素の全てをハードウェアで構成してもよく、その場合についても同様に、そのハードウェアの一部または全部を集積回路/ICチップセットとして搭載することも可能である。
また、上述した様々な構成例における機能を実現するためのソフトウェアのプログラムコードを記録した記録媒体を装置に供給し、各非円形スピーカを備えた装置において、マイクロプロセッサまたはDSPによりプログラムコードが実行されることによっても、本発明の目的が達成される。この場合、ソフトウェアのプログラムコード自体が上述した様々な構成例の機能を実現することになり、このプログラムコード自体や、プログラムコードを記録した記録媒体であっても、本発明を構成する一要素とすることができる。
31…スピーカの出力信号、32…スピーカアレイ、33…仮想的な音源位置、34…音声の波面、40,60…指向性スピーカ装置、41…エンクロージャ、42a,42b,42c,42d,42e…楕円スピーカ、61…デコーダ、62…音声信号抽出部、63…音声信号処理部、64…D/Aコンバータ、65…増幅器、66…スピーカ、70…音声信号処理部、71…距離計算部、72…ゲイン計算部、73…遅延計算部、74…バッファ、75…波形生成部、76…波形加算部、81,82,83…バッファ領域、130…バッファ。

Claims (7)

  1. 非円形スピーカを複数隣接して並べた指向性スピーカ装置であって、
    前記非円形スピーカ同士は、口径の最も長い部分以外の部分によって隣の非円形スピーカと隣接しており、
    各非円形スピーカから出力される音声信号のうち少なくとも2つは、それぞれ遅延量及び/またはゲインが異なることを特徴とする指向性スピーカ装置。
  2. 前記非円形スピーカ同士は、口径の最も短い部分によって隣の非円形スピーカと隣接していることを特徴とする請求項1に記載の指向性スピーカ装置。
  3. 前記非円形スピーカ同士は直線上に並んでいることを特徴とする請求項1または2に記載の指向性スピーカ装置。
  4. 前記非円形スピーカ同士は曲線上に並んでいることを特徴とする請求項1または2に記載の指向性スピーカ装置。
  5. 前記非円形スピーカは楕円形のスピーカであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の指向性スピーカ装置。
  6. 前記非円形スピーカは長方形のスピーカであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の指向性スピーカ装置。
  7. 前記非円形スピーカは平行四辺形のスピーカであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の指向性スピーカ装置。
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