JP2013099271A - 細胞培養基板およびそれを用いた細胞シート付細胞培養基板 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明は、支持基板と、上記支持基板上に形成され、粘着剤を含む粘着剤層と、上記粘着剤層上に形成され、細胞接着層を含む細胞培養層と、上記粘着剤層の露出表面を覆うように形成され、上記粘着剤層からの溶出成分の溶出を防ぐ保護層と、を有することを特徴とする細胞培養基板を提供することにより、上記目的を達成する。
【選択図】図1
Description
このような細胞培養用シートを用いることにより、支持基板の形状、サイズ等に合わせて、細胞培養用シートを切り出して細胞培養基板を形成することができるため、細胞培養基板の形成の自由度が高く、また、容易に細胞培養基板を形成することができるという利点がある。
以下、本発明の細胞培養基板、細胞シート付細胞培養基板、細胞シート付細胞培養基板の製造方法および細胞シートの製造方法について詳細に説明する。
まず、本発明の細胞培養基板について説明する。
本発明の細胞培養基板は、支持基板と、上記支持基板上に形成され、粘着剤を含む粘着剤層と、上記粘着剤層上に形成され、細胞接着層を含む細胞培養層と、上記粘着剤層の露出表面を覆うように形成され、上記粘着剤層からの溶出成分の溶出を防ぐ保護層と、を有することを特徴とするものである。
また、このようなことから、支持基板、粘着剤層、および細胞培養層として、粘着剤層および細胞培養層を含む細胞培養用シートから、所望のサイズの細胞培養用シートを切り出し、支持基板上に粘着剤層を介して接着させたものを用いる場合であっても、細胞を安定的に培養可能なものとすることができる。
以下、本発明の細胞培養基板の各構成について詳細に説明する。
本発明に用いられる粘着剤層は、上記支持基板上に形成され、粘着剤を含むものである。
また、本発明における粘着剤層は溶出成分を含むもの、すなわち、培地中に粘着剤層を構成する粘着材料が溶出するものである。
本発明においては、なかでも10%以上であることが好ましい。
なお、上記質量減少率は、プラスチックフィルム上に形成された15cm×15cm×0.1cmの粘着剤層を、37℃の純水中で、粘着剤層が上となるよう水中に沈めた状態で、24時間浸漬させた後の質量の減少率をいうものである。
具体的には、溶剤、粘着剤およびそのモノマー成分、その他の成分等を挙げることができる。本発明においては、なかでも溶剤もしくは粘着剤のモノマー成分を含むものであることが好ましく、特に、溶剤もしくは粘着剤のモノマー成分を主成分として含むものであることが好ましい。培地中に溶出し易く、さらに、培地中に溶出した場合、細胞培養に悪影響を与える可能性が高いものであるため、本発明の効果をより効果的に発揮することができるからである。
なお、主成分として含むとは、溶出成分の50質量%以上であることをいうものであり、なかでも、75質量%以上であることをいうものである。
本発明における粘着剤層を構成する粘着材料としては、粘着剤を含むものであれば特に限定されるものではないが、通常、溶剤を含むものである。
なお、本発明における低分子成分とは、分子量が、1000以下の範囲内の有機物を指すものである。
本発明においては、なかでも、アセトン、メチルエチルケトン、トルエン、クロロホルムであることが好ましい。上記粘着剤等を均一に溶解または分散することができるからである。また、培地中に溶出し易く、さらに、培地中に溶出した場合、細胞培養に悪影響を与える可能性が高いものであるため、本発明の効果をより効果的に発揮することができるからである。
本発明に用いられる粘着剤層の厚みとしては、上記支持基板および細胞培養層を所望の強度で接着させることができるものであれば特に限定されるものではないが、10μm〜300μmの範囲内であることが好ましく、なかでも20μm〜200μmの範囲内であることが好ましい。上記厚みが上述の範囲内であることにより、上記支持基板および細胞培養層を安定的に接着させることができるからである。また、上記厚みが上述の範囲内であることにより、溶出成分が多くなるため、本発明の効果をより効果的に発揮することができるからである。
本発明においては、なかでも、既に説明した図1に示すように、上記細胞培養層と同一形状であることが好ましい。上記細胞培養層を安定的に接着することができるからである。また、支持基板、粘着剤層、および細胞培養層として、粘着剤層および細胞培養層を含む細胞培養用シートから、所望のサイズの細胞培養用シートを切り出したものとすることができ、本発明の細胞培養基板を容易形成可能なものとすることができるからである。
なお、図2中の符号については、図1のものと同一の部材を示すものであるので、ここでの説明は省略する。
本発明に用いられる保護層は、上記粘着剤層の露出表面を覆うように形成され、上記粘着剤層からの溶出成分の溶出を防ぐものである。
本発明に用いられる保護層形成材料としては、上記粘着剤層からの溶出成分の溶出を防ぐことができるバリア性を有するものであれば特に限定されるものではなく、無機材料であっても有機材料であっても良い。
本発明においては、なかでも、有機材料であることが好ましい。塗布等により容易に保護層を形成することができるからである。
本発明においては、なかでも、シリコーン樹脂、ポリエチレングリコール、アガロースを含むものであることが好ましく、特に、ポリジメチルシロキサン(PDMS)を含むものであることが好ましい。シリコーン樹脂、ポリエチレングリコール、アガロース等は細胞接着阻害性を有し、上記保護層に細胞接着阻害性を付与できるからである。また、その結果、上記細胞培養層上で培養された細胞シートが、保護層や支持基板に接着することを抑制することができ、上記細胞シートを容易に剥離することができるからである。また、PDMSは、細胞接着阻害性に優れ、溶出成分が少なく、形成が容易であるからである。
本発明における保護層は、上記粘着剤層の露出表面を覆うように形成され、上記粘着剤層からの溶出成分の溶出を防ぐものである。
ここで、本発明における保護層表面が細胞接着阻害性を有しているとは、細胞が接着、伸展しにくく、細胞接着伸展率が低い状態であることをいうものである。本発明において、このような細胞接着伸展率が低い状態としては、具体的には、上記細胞接着伸展率が5%以下である状態とすることができる。本発明においては、なかでも2%以下であることが好ましい。安定的に細胞の接着を防ぐことができるからである。
また、上記細胞の播種は、10%FBS(血清)入りDMEM培地に懸濁させて保護層上に播種し、その後、上記細胞ができるだけ均一に分布するよう、上記細胞が播種された保護層をゆっくりと振とうすることにより行うものである。
さらに、細胞接着伸展率の測定は、測定直前に培地交換を行って接着していない細胞を除去した後に行う。また、細胞接着伸展率の測定個所としては、細胞の存在密度が特異的になりやすい箇所(例えば、存在密度が高くなりやすい所定領域の中央、存在密度が低くなりやすい所定領域の周縁)を除いて測定を行うものである。
本発明においては、なかでも、80%以上であることが好ましい。
本発明において水和能が高く細胞接着阻害材料として用いられる材料としては、例えばジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールメタクリレート等を用いたエチレングリコール系材料や、ベタイン構造等を有する両性イオン材料、MPCポリマー等のリン脂質材料等が挙げられる。
細胞接着阻害材料の撥水性や撥油性、または超親水性によって、細胞と細胞接着阻害材料との間における相互作用を小さいものとすることができ、細胞との接着性を低いものとすることができるからである。
上記撥水性または撥油性を有する材料としては、例えば撥水性または撥油性の有機置換基を有するものを用いることができ、具体的にはゾルゲル反応等によりクロロまたはアルコキシシラン等を加水分解、重縮合して大きな強度を発揮するオルガノポリシロキサン、反応性シリコーンを架橋したオルガノポリシロキサン等や撥水性または撥油性の有機置換基を有する界面活性剤も用いることができる。
オルガノポリシロキサンとしては、例えば、ポリジメチルシロキサン(PDMS)等のシリコーンを挙げることができる。
上記界面活性剤としては、例えば、日光ケミカルズ(株)製NIKKOL BL、BC、BO、BBの各シリーズ等の炭化水素系、デュポン社製ZONYL FSN、FSO、旭硝子(株)製サーフロンS−141、145、大日本インキ化学工業(株)製メガファックF−141、144、ネオス(株)製フタージェントF−200、F251、ダイキン工業(株)製ユニダインDS−401、402、スリーエム(株)製フロラードFC−170、176等のフッ素系あるいはシリコーン系の非イオン界面活性剤を挙げることができ、また、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤を用いることもできる。
さらに上記超親水性を有する材料としては、エネルギー照射に伴う光触媒の作用等によって、上記オルガノポリシロキサン等の有機置換基を分解したもの等が挙げられる。
また、デシルメトキシシランなどの長鎖アルキル系材料、フルオロアルキルシランなどのフッ素系材料を挙げることができる。
また、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリルアミドなどの親水性材料、さらに、BSAタンパク、アガロース等も用いることができる。
ここで、上記粘着剤層の露出表面を覆うとは、上記粘着剤層からの溶出成分の溶出を防ぐことができるものであれば特に限定されるものではないが、具体的には、上記粘着剤層の露出表面の80%以上を覆うものであり、なかでも本発明においては、90%以上を覆うものであることが好ましく、なかでも100%覆うもの、すなわち上記粘着剤層の全露出表面を覆うものであることが好ましい。上記粘着剤層からの溶出成分の溶出を安定的に防ぐことができるからである。
なお、上記粘着剤層の露出表面とは、粘着剤層のうち、上記支持基板および細胞培養層により覆われている表面以外の表面を指すものである。
本発明においては、なかでも、上記保護層が上記細胞培養層の側面および図4に例示するように、上面の一部を含むもの、すなわち、上記保護層が、上記細胞培養層の上面の一部を覆うように形成されていることが好ましい。上記保護層を細胞接着阻害性を有するものとした場合、上記形成個所が上記細胞培養層の上面の一部を含むものであることにより、細胞培養層上に形成された細胞シートが細胞培養層の側面、保護層、支持基板等と接着することを抑制することができ、細胞シートを容易に剥離できるものとすることができるからである。また、細胞シートを任意の形状とすることが容易だからである。
なお、図3および図4中の符号については、図1のものと同一の部材を示すものであるので、ここでの説明は省略する。
なお、図5中の符号については、図1のものと同一の部材を示すものであるので、ここでの説明は省略する。
なお、図6中の符号については、図1のものと同一の部材を示すものであるので、ここでの説明は省略する。
また、本発明に用いられる保護層が無機材料のみからなるものである場合には、1nm〜1μmの範囲内であることが好ましく、なかでも、10nm〜500nmの範囲内であることが好ましい。蒸着法等で安定的に製膜することができるからである。
なお、このように保護層が複数層からなるものである場合の厚みとしては、各層について、上述の厚みを有するものとすること、すなわち、保護層が、無機材料のみからなる複数の保護層からなる場合には、それぞれの層について、1nm〜1μmの範囲内とすることが好ましい。各層を安定的に形成することができるからである。
また、保護層をパターン状に形成する場合には、マスクを介して塗布する方法や、フォトリソグラフィー法等公知のパターン方法を用いることができる。
本発明に用いられる細胞培養層は、上記粘着剤層上に形成されるものであり、少なくとも細胞接着層を含むものである。
本発明における細胞接着層としては、細胞培養時に細胞接着性を示すものであれば特に限定されるものではないが、例えば、細胞接着性を有する細胞接着材料を含むものや、細胞接着性を有し、かつ、刺激により細胞接着阻害性を発揮する刺激応答性材料を含むものとすることができる。
本発明においては、なかでも、刺激応答性材料を含むものであることが好ましい。上記細胞接着層で形成された細胞シートを非侵襲的に剥離し、回収することが可能となるからである。
本発明においては、なかでも、温度応答性材料であることが好ましい。刺激の付与が容易だからである。
なお、本発明においては、上記各刺激応答性材料の1種類のみまたは2種類以上を組み合わせて用いるものであっても良い。
本発明における温度応答性材料の細胞接着性を発揮する温度が、10℃〜45℃の範囲内であることが好ましく、なかでも、33℃〜40℃の範囲内であることが好ましい。上記温度領域が上述の範囲内であることにより、細胞を安定的に培養することができるからである。
本発明においては、上記温度応答性材料が1種類の化合物のみからなるものであっても良く、2種類以上含むものであっても良い。
このような添加剤およびバインダー樹脂としては、上記「2.保護層」の項に記載の内容と同様とすることができる。
また、後述する基材上に上記細胞接着層の構成材料のモノマー成分等を塗布し、基材上にポリマー状の細胞接着材料や刺激応答性材料等をグラフト重合するものであっても良い。
本発明における細胞培養層は、表面に上記細胞接着層を含むものであれば特に限定されるものではなく、既に説明した図1に示すように細胞接着層のみからなるものであっても良く、図7に例示するように細胞培養層4が細胞接着層3および細胞接着層3の粘着剤層側に形成された基材6を有するものであっても良い。
なお、図7中の符号については、図1のものと同一の部材を示すものであるので、ここでの説明は省略する。
このような基材としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリスチレン(PS)、ポリカーボネート(PC)、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリイミド(PI)、ナイロン(Ny)、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルサルフォン、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、ウレタンアクリレートなどのアクリル系材料、セルロース、ガラス等が挙げられる。ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクタン、もしくはその共重合体のような生分解性ポリマーであってもよい。また、基材が多孔質なものであってもよい。
本発明においては、なかでも、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリカーボネートを好ましく用いることができ、特に、ポリエチレンテレフタレートを好ましく用いることができる。透明性、寸法安定性、機械的性質、電気的性質、耐薬品性等の性質に優れているからである。
本発明に用いられる支持基板は、上記粘着剤層、細胞培養層、および保護層を支持するものである。
このような支持基板としては、上記各構成を支持できるものであれば特に限定されるものではなく、一般的に細胞培養に用いられるマルチウェルプレート等のプレート、ディッシュ、シャーレ等を用いることができる。
本発明の細胞培養基板は、上記支持基板、粘着剤層、細胞培養層および保護層を含むものであるが、必要に応じて他の構成を有するものであっても良い。このような他の構成としては、例えば、上記各構成を覆う蓋等を挙げることができる。
なお、細胞培養用シートについては、必要により、粘着剤層および細胞培養層表面に、支持基板に接着させる前にゴミ等が付着することを防ぐ目的セパレータを積層するものであっても良い。
次に本発明の細胞シート付細胞培養基板について説明する。
本発明の細胞シート付細胞培養基板は、上述の細胞培養基板と、上記細胞培養層上に形成された細胞シートと、を有することを特徴とするものである。
なお、図9中の符合については、図1と同一の部材を示すものであるので、ここでの説明は省略する。
以下、本発明の細胞シート付細胞培養基板の各構成について説明する。
なお、上記細胞培養基板については、上記「A.細胞培養基板」の項に記載の内容と同様の内容とすることができるので、ここでの説明は省略する。
本発明に用いられる細胞シートとしては、細胞間結合で細胞同士が少なくとも単層で連結されたシート状の細胞集合体であれば特に限定されるものではない。
このような細胞シートに用いられる細胞としては、足場依存性を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えば生体内の各組織、臓器を構成する上皮細胞や内皮細胞、収縮性を示す骨格筋細胞、平滑筋細胞、心筋細胞、神経系を構成するニューロン、グリア細胞、線維芽細胞、生体の代謝に関係する肝実質細胞、非肝実質細胞や脂肪細胞、分化能を有する細胞として、種々組織に存在する幹細胞、さらには骨髄細胞、ES細胞、iPS細胞、幹細胞、ES細胞やiPS細胞から分化誘導した種々の細胞等を用いることができる。
また上記細胞は、1種類のみであっても良く、2種類以上用いるものであっても良い。
本発明の細胞シート付細胞培養基板は、上記細胞培養基板および細胞シートを含むものであるが、必要に応じてその他の構成を有するものであっても良い。
また、他の基板上で形成した細胞シートを、上記細胞培養基板の細胞培養層上に転写する方法であっても良い。
次に、本発明の細胞シート付細胞培養基板の製造方法について説明する。
本発明の細胞シート付細胞培養基板の製造方法は、上述の細胞培養基板上に、細胞を播種し、培養することにより、細胞シートを形成する細胞シート形成工程を有することを特徴とするものである。
ここで、図10(a)〜(b)が上記細胞シート形成工程である。
また、図10中の符合については、図9と同一の部材を示すものであるので、ここでの説明は省略する。
以下、本発明の細胞シート付細胞培養基板の製造方法に含まれる各工程について詳細に説明する。
本発明における細胞シート形成工程は、上述の細胞培養基板上に、細胞を播種し、培養することにより、細胞シートを形成する工程である。
また、播種し、培養される細胞については、用途に応じて種々の細胞を用いることができ、上記「B.細胞シート付細胞培養基板」の項に記載の内容と同様とすることができる。
本発明の細胞シート付細胞培養基板の製造方法は、上記細胞シート形成工程を少なくとも有するものであるが、必要に応じてその他の工程を有するものであっても良い。
具体的には、既に説明した図8に示すような細胞培養シートを準備して、細胞培養基板を形成する細胞培養基板形成工程を有するものとすることができる。
次に、本発明の細胞シートの製造方法について説明する。
本発明の細胞シートの製造方法は、上述の細胞シート付細胞培養基板から細胞シートを剥離する剥離工程を有することを特徴とするものである。
ここで、図11(a)〜(b)が剥離工程である。
なお、この例においては、細胞シート付細胞培養基板の細胞接着層(細胞培養層)として刺激応答性材料であるポリ−N−イソプロピルアクリルアミド(PIPAAm)を含むものを用いるものである。また、図11中の符合については、図9と同一の部材を示すものであるので、ここでの説明は省略する。
以下、本発明の細胞シートの製造方法に含まれる各工程について説明する。
本発明における剥離工程は、細胞シート付細胞培養基板から細胞シートを剥離する工程である。
本工程において、細胞シート付細胞培養基板から細胞シートを剥離する方法としては、細胞シートを安定的に剥離することができる方法であれば特に限定されるものではなく、例えば、ディスパーゼ等の酵素を用いて細胞シート付細胞培養基板の細胞接着層から細胞シートを剥離する方法等を用いることができる。
また、上記細胞接着層が刺激応答性材料を含むものである場合には、刺激応答性材料の性質に合わせた刺激を付与して剥離する方法を用いることができる。
具体的には、上記刺激応答性材料が、温度応答性材料であるポリ−N−イソプロピルアクリルアミド(PIPAAm)である場合には、37℃近傍で細胞を培養することで細胞シート付細胞培養基板を形成し、32℃以下に温度を低下させることにより、細胞シートを剥離する方法を用いることができる。
本発明の細胞シートの製造方法は、上記剥離工程を有するものであれば特に限定されるものではないが、必要に応じてその他の工程を有するものであっても良い。
(1−1)温度応答性細胞培養用シートの作製
N−イソプロピルアクリルアミドを、最終濃度40重量%になるようにイソプロピルアルコール(IPA)に溶解させた。市販の易接着性ポリエチレンテレフタレートフィルム(片面に粘着剤が塗布されてなる粘着剤層が形成されている。三光産業社より入手、透明50−Fセパ1090)(以下において「易接着PET」と略することがある)を調達し、これを10cm角に切り出した。
ここに前記溶液を、易接着PETの易接着面に0.5ml展開し、ミヤバーNO.4でコーティングした。電子線照射装置(岩崎電気社製)を用いて該サンプル上に電子線照射を行い、該溶液をグラフト重合した。このときの電子線照射線量は300kGyであった。
このようにして得られた温度応答性細胞培養用シートを、32mmφの円形に切り出し、35mmφポリスチレンディッシュ(ベクトンディッキンソン社製)底面に粘着剤層を介して貼り付けた。
さらに、培養用シート側面、ディッシュ底面が露出している部位および培養用シートの培養面の外周部約1mm幅を液状のPDMSで満たし、70℃で2時間、硬化処理を行った。PDMSはダウコーニング(DowCorning)社製Sylgard(登録商標)184を用いた。
また、硬化処理後にポリスチレンディッシュの蓋を開けた際に、特に溶剤臭はしなかった。
このようにして得られた細胞培養基板を、エチレンオキサイドガスにて滅菌した。ウシ血管内皮細胞(JCRBより入手)を、1.1×105cells/cm2になるように調整し、細胞培養基板内に播種した。
このとき、使用培地は10%FBS含有DMEM(シグマ製)であった。培養はCO2インキュベーターで37℃、5%CO2の条件にて行い、培養12日後顕微鏡観察したところ、細胞は温度応答性フィルム上のみに接着し、コンフルエントになっている様子(細胞シートが形成されている様子)が確認された。その後、細胞シートが形成された細胞シート付細胞培養基板を20℃、5%CO2条件下のインキュベーターに入庫した。25分後、20℃のインキュベーターから出庫すると、32mmφ温度応答性フィルム上に形成されていた細胞シートが剥離している様子が確認された。
(1−1)温度応答性細胞培養シートの作製
実施例1の(1−1)に記載の手法と同様の手法により作製した。
作成された温度応答性細胞培養用シートを、32mmφの円形に切り出し、35mmφポリスチレンディッシュ(ベクトンディッキンソン社製)底面に粘着剤層を介して貼り付けた。基材を組み立て、蓋を閉めた状態で2時間後、ポリスチレンディッシュの蓋を開けた際に、上記易接着性ポリエチレンテレフタレートフィルムの粘着剤層に含まれる溶剤と思われる臭気がわずかにした。
実施例1の(1−3)と同様に評価したところ、24時間後においても細胞シートの自発的剥離は確認されなかった。
また、実施例1での培地中に、粘着剤の溶剤として使用される溶剤の一種であるメチルエチルケトン/トルエン=1/1(KT―11)を濃度25%となるように添加して、4時間培養したところ、播種した全ての細胞が死滅することが確認できた。
このような結果より、実施例で形成された保護層が形成された細胞培養基板とすることで、上記粘着剤層から細胞へ悪影響の及ぼす溶剤の溶出を抑制することができ、細胞をより信頼性高く培養できることが確認できた。
(2−1)粘着剤付シートの作製
粘着剤(アクリル系ポリマー:SKダイン2147(綜研化学社製)/KT−11/イソシアネート系硬化剤:TD―75=100/20/0.04)を東レフィルム加工社製のセラピールMFA(厚み38μmのPETフィルム)に、200μm厚となる様、アプリケーターにて塗布した。90℃のオーブンで2分間加熱後、サンディック社製OPSシートを貼り合わせ、粘着剤付シートを作製した。
このようにして得られた粘着剤付シートの作製を、32mmφの円形に切り出し、35mmφポリスチレンディッシュ(ベクトンディッキンソン社製)底面に粘着剤層を介して貼り付けた。
さらに、培養用シート側面、ディッシュ底面が露出している部位および培養用シートの培養面の外周部約1mm幅を液状のPDMSで満たし、室温にて24時間、硬化処理を行った。PDMSはダウコーニング(DowCorning)社製Sylgard(登録商標)184を用いた。
また、硬化処理後にポリスチレンディッシュの蓋を開けた際に、特に溶剤臭はしなかった。
(2−1)粘着剤付シートの作製
実施例2の(2−1)に記載の手法と同様の手法により作製した。
このようにして得られた粘着剤付シートの作製を、32mmφの円形に切り出し、35mmφポリスチレンディッシュ(ベクトンディッキンソン社製)底面に粘着剤層を介して貼り付けた。24時間後、ポリスチレンディッシュの蓋を開けた際に、上記粘着剤層に含まれるKT−11と思われる臭気がわずかにした。
2 … 粘着剤層
3 … 細胞接着層
4 … 細胞培養層
5 … 保護層
6 … 基材
10 … 細胞培養基板
20 … 細胞培養用シート
30 … 細胞シート付細胞培養基板
31 … 細胞シート
Claims (7)
- 支持基板と、
前記支持基板上に形成され、粘着剤を含む粘着剤層と、
前記粘着剤層上に形成され、細胞接着層を含む細胞培養層と、
前記粘着剤層の露出表面を覆うように形成され、前記粘着剤層からの溶出成分の溶出を防ぐ保護層と、
を有することを特徴とする細胞培養基板。 - 前記保護層の表面が、細胞接着阻害性を有することを特徴とする請求項1に記載の細胞培養基板。
- 前記保護層が、前記細胞培養層の側面を覆うように形成されていることを特徴とする請求項2に記載の細胞培養基板。
- 前記保護層が、前記細胞培養層の上面の一部を覆うように形成されていることを特徴とする請求項3に記載の細胞培養基板。
- 請求項1から請求項4までのいずれかの請求項に記載の細胞培養基板と、
前記細胞培養層上に形成された細胞シートと、
を有することを特徴とする細胞シート付細胞培養基板。 - 請求項1から請求項4までのいずれかの請求項に記載の細胞培養基板上に、細胞を播種し、培養することにより、細胞シートを形成する細胞シート形成工程を有することを特徴とする細胞シート付細胞培養基板の製造方法。
- 請求項5に記載の細胞シート付細胞培養基板から細胞シートを剥離する剥離工程を有することを特徴とする細胞シートの製造方法。
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