JP2013099227A - 車両および車両の制御方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】少なくともモータジェネレータからの駆動力を用いて走行が可能な車両において、車両の走行環境の変化を考慮して適切に車両走行時のエネルギ効率を向上させる。
【解決手段】車両100は、走行駆動力を発生するモータジェネレータ130と、ECU300と、車両100の走行環境の変化を検出するための検出部200とを備える。ECU300は、モータジェネレータ130について、所定の駆動力を発生する第1の状態(高出力状態)と、第1の状態よりも駆動力を小さくした第2の状態(低出力状態)とを切換えながら車両100を走行させる駆動力変更運転を実行する。ECU300は、検出された走行環境の変化に応じて、駆動力変更運転についてのパラメータを調整する。
【選択図】図1

Description

本発明は、車両および車両の制御方法に関し、より特定的には、車両の慣性力を利用して走行する車両の走行制御に関する。
近年、環境に配慮した車両として、蓄電装置(たとえば二次電池やキャパシタなど)を搭載し、蓄電装置に蓄えられた電力から生じる駆動力を用いて走行する車両が注目されている。このような車両には、たとえば電気自動車、ハイブリッド自動車、燃料電池車などが含まれる。
そして、これらの車両において、さらなる環境負荷の削減のために、燃費,電費を低減することによってエネルギ効率を向上することが求められている。
特表2008−520485号公報(特許文献1)は、内燃機関とモータジェネレータとを備えたハイブリッド車両において、モータジェネレータが発電機モードの際に、車両電気系統の実消費電力よりも大きい高出力で動作するようにモータジェネレータを駆動する第1のインターバルと、モータジェネレータをスイッチオフする第2のインターバルとを交互に繰り返すように、モータジェネレータを制御する構成を開示する。
特表2008−520485号公報(特許文献1)によれば、モータジェネレータが発電機として動作する際に、第1のインターバルにおいては効率の高い動作点でモータジェネレータを駆動し、第2のインターバルにおいてはモータジェネレータが停止される。これによって、発電動作時に効率の低い状態でモータジェネレータの運転が継続されることが抑制されるので、発電動作における車両のエネルギ効率を向上することができる。
また、特開2010−6309号公報(特許文献2)は、内燃機関とモータジェネレータとを備えたハイブリッド車両において、内燃機関の発生する駆動力を用いた走行と、内燃機関を停止した惰性状態での走行とを交互に繰り返す構成を開示する。これにより、内燃機関を高効率の動作点で駆動することができるので、燃費を向上させることができる。
特表2008−520485号公報 特開2010−6309号公報 特開2009−298232号公報 特開2007−187090号公報 特開2010−178431号公報
しかしながら、上記の特表2008−520485号公報(特許文献1)においては、モータジェネレータで発電を行なう場合に、モータジェネレータの駆動と停止とを繰り返す構成であり、車両の走行のための駆動力を変化させるものではなかった。
また、特開2010−6309号公報(特許文献2)は、ハイブリッド車両において、内燃機関であるエンジンの駆動と停止とを繰り返して加速惰性走行制御を行なう構成を開示するものであり、モータジェネレータの運転については考慮されていなかった。
車両が走行する場合、気象条件などによって路面状況のような走行環境が変化する。そのため、走行安定性およびドライバビリティを確保するためには、走行環境の変化に応じて駆動状態を適合させることが望ましい。しかしながら、上記の先行文献においては、走行環境の変化を考慮することについては言及されていなかった。
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、少なくともモータジェネレータからの駆動力を用いて走行が可能な車両において、車両の走行環境の変化を考慮して適切に車両走行時のエネルギ効率を向上させることである。
本発明による車両は、車両の走行駆動力を発生する回転電機と、回転電機を制御するための制御装置と、車両の走行環境の変化を検出するための検出部とを備える。制御装置は、回転電機について、駆動力を発生する第1の状態と、第1の状態よりも駆動力を小さくした第2の状態とを切換えながら車両を走行させる駆動力変更運転を実行する。制御装置は、検出された走行環境の変化に応じて、駆動力変更運転についてのパラメータを調整する。
好ましくは、検出部は、走行環境として路面抵抗の変化に関する情報を検出する。制御装置は、路面抵抗の変化に応じてパラメータを調整する、請求項1に記載の車両。
好ましくは、制御装置は、路面抵抗が低下したことに応答して、第1の状態における加速度を低減する。
好ましくは、パラメータは、第1の状態における駆動力である。制御装置は、路面抵抗が低くなると、路面抵抗が高いときよりも第1の状態における駆動力が小さくなるように調整する。
好ましくは、パラメータは、第1の状態の実行時間である。制御装置は、路面抵抗が低くなると、路面抵抗が高いときよりも第1の状態の実行時間が長くなるように調整する。
好ましくは、制御装置は、駆動力変更運転の実行中は、車両の速度が許容範囲内に維持されるように、第1および第2の状態を切換える。パラメータは、上記許容範囲である。制御装置は、路面抵抗が低くなると、路面抵抗が高いときよりも許容範囲が狭くなるように調整する。
好ましくは、制御装置は、路面抵抗が低下したことに応答して、駆動力変更運転中の平均車速を低減する。
好ましくは、制御装置は、駆動力変更運転の実行中は、車両の速度が許容範囲内に維持されるように、車両の速度が許容範囲の下限値まで低下したことに応答して第1の状態に切換え、車両の速度が許容範囲の上限値まで上昇したことに応答して第2の状態に切換える。制御装置は、路面抵抗が低い場合には、路面抵抗が高い場合に比べて、少なくとも上限値を低下させる。
好ましくは、検出部は、走行環境として車両が受ける風圧に関する情報を検出する。制御装置は、風圧の変化に応答してパラメータを調整する。
好ましくは、パラメータは、第1の状態における駆動力である。制御装置は、ユーザからの要求駆動力が変化していなくとも、風圧の変化に基づく向かい風および追い風のいずれであるかの判定に応じて、第1の状態における駆動力を調整する。
好ましくは、制御装置は、追い風であると判定した場合には、追い風でない場合に比べて第1の状態における駆動力を低減する。
好ましくは、制御装置は、追い風であると判定した場合には、追い風でない場合に比べて第2の状態における駆動力をさらに低減する。
好ましくは、制御装置は、追い風であると判定した場合には、第2の状態において回転電機を回生運転する。
好ましくは、制御装置は、向かい風であると判定した場合には、向かい風でない場合に比べて第1の状態における駆動力を増加する。
好ましくは、制御装置は、向かい風であると判定した場合には、向かい風でない場合に比べて第2の状態における駆動力をさらに増加する。
好ましくは、車両は、第2の状態においては、主に車両の慣性力によって走行する。
好ましくは、車両は、車両の走行駆動力を発生する内燃機関をさらに備える。
本発明による車両の制御方法は、車両の走行駆動力を発生する回転電機および車両の走行環境の変化を検出するための検出部を有する車両についての制御方法である。制御方法は、回転電機を所定のレベルの駆動力を発生させる第1の状態にするステップと、回転電機を第1の状態よりも駆動力を小さくした第2の状態にするステップと、第1および第2の状態を切換えながら車両を走行させる駆動力変更運転を実行するステップと、検出された走行環境の変化に応じて、駆動力変更運転についてのパラメータを調整するステップとを備える。
本発明によれば、少なくともモータジェネレータからの駆動力を用いて走行が可能な車両において、車両の走行環境の変化を考慮して適切に車両走行時のエネルギ効率を向上させることができる。
本発明の実施の形態に従う車両の全体ブロック図である。 駆動力変更運転の基本的な動作を説明するためのタイムチャートである。 実施の形態1における慣性走行制御を説明するためのタイムチャートである。 実施の形態1において、ECUで実行される慣性走行制御処理の詳細を説明するためのフローチャートである。 路面抵抗と加速走行の実行時間との関係の一例を示す図である。 路面抵抗と駆動力との関係の一例を示す図である。 実施の形態2における慣性走行制御を説明するためのタイムチャートである。 実施の形態2において、ECUで実行される慣性走行制御処理の詳細を説明するためのフローチャートである。 実施の形態3における慣性走行制御を説明するためのタイムチャートである。 実施の形態3において、ECUで実行される慣性走行制御処理の詳細を説明するためのフローチャートである。 風圧の変化による追い風および向かい風の判定を説明するための図である。 実施の形態4において、追い風である場合の慣性走行制御を説明するためのタイムチャートである。 実施の形態4において、向かい風である場合の慣性走行制御を説明するためのタイムチャートである。 実施の形態4において、ECUで実行される慣性走行制御処理の詳細を説明するためのフローチャートである。 実施の形態5に従うハイブリッド車両の全体ブロック図である。 実施の形態5における慣性走行制御を説明するためのタイムチャートである。 実施の形態5において、ECUで実行される慣性走行制御処理の詳細を説明するためのフローチャートである。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
[車両構成の説明]
図1は、本発明の本実施の形態に従う車両100の全体ブロック図である。以下で詳細に説明されるように、車両100は、駆動源として回転電機を用いる電気自動車あるいは燃料電池車である。
図1を参照して、車両100は、蓄電装置110と、システムメインリレー(System Main Relay:SMR)115と、駆動装置であるPCU(Power Control Unit)120と、モータジェネレータ130と、動力伝達ギヤ140と、駆動輪150と、検出部200と、制御装置であるECU(Electronic Control Unit)300とを備える。PCU120は、コンバータ121と、インバータ122と、電圧センサ180,185と、コンデンサC1,C2とを含む。
蓄電装置110は、充放電可能に構成された電力貯蔵要素である。蓄電装置110は、たとえば、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池または鉛蓄電池などの二次電池、あるいは電気二重層キャパシタなどの蓄電素子を含んで構成される。
蓄電装置110は、電力線PL1およびNL1を介してPCU120に接続される。そして、蓄電装置110は、車両100の駆動力を発生させるための電力をPCU120に供給する。また、蓄電装置110は、モータジェネレータ130で発電された電力を蓄電する。蓄電装置110の出力はたとえば200V程度である。
蓄電装置110には、電圧センサ170および電流センサ175が設けられる。電圧センサ170は、蓄電装置110の電圧VBを検出し、その検出結果をECU300へ出力する。電流センサ175は、蓄電装置に入出力される電流IBを検出し、その検出値をECU300へ出力する。
SMR115に含まれるリレーは、その一方端が蓄電装置110の正極端子および負極端子に接続され、他方端がPCU120に接続される電力線PL1,NL1に接続される。そして、SMR115は、ECU300からの制御信号SE1に基づいて、蓄電装置110とPCU120との間における電力の供給と遮断とを切換える。
コンバータ121は、ECU300からの制御信号PWCに基づいて、電力線PL1,NL1と電力線PL2,NL1との間で電圧変換を行なう。
インバータ122は、電力線PL2,NL1に接続される。インバータ122は、ECU300からの制御信号PWIに基づいて、コンバータ121から供給される直流電力を交流電力に変換し、モータジェネレータ130を駆動する。
コンデンサC1は、電力線PL1およびNL1の間に設けられ、電力線PL1およびNL1間の電圧変動を減少させる。また、コンデンサC2は、電力線PL2およびNL1の間に設けられ、電力線PL2およびNL1間の電圧変動を減少させる。
電圧センサ180および185は、それぞれコンデンサC1およびC2の両端にかかる電圧VLおよびVHを検出し、その検出値をECU300へ出力する。
モータジェネレータ130は交流回転電機であり、たとえば、永久磁石が埋設されたロータを備える永久磁石型同期電動機である。
モータジェネレータ130の出力トルクは、減速機や動力分割機構を含んで構成される動力伝達ギヤ140を介して駆動輪150に伝達されて、車両100を走行させる。モータジェネレータ130は、車両100の回生制動動作時には、駆動輪150の回転によって発電することができる。そして、その発電電力は、PCU120によって蓄電装置110の充電電力に変換される。
車両100の速度(車速)を検出するために、速度センサ190が駆動輪150の近傍に設けられる。速度センサ190は、駆動輪150の回転速度に基づいて車速SPDを検出し、その検出値をECU300に出力する。また、速度センサとして、モータジェネレータ130の回転角を検出するための回転角センサ(図示せず)を用いてもよい。この場合には、ECU300は、モータジェネレータ130の回転角の時間的変化および減速比などに基づいて、間接的に車速SPDを演算する。
検出部200は、車両100の走行環境の変化を検出する。走行環境としては、たとえば、雨や雪などの気象条件、凹凸や舗装の有無、そして砂などの粒状物の有無によって変化する路面状態、あるいは、車両100に吹きつける風圧による影響などがある。検出部200は、たとえば、いずれも図示しないが、ワイパー作動用のスイッチの状態、降雪路走行時に選択するスノースイッチの状態、凍結路や低μ路走行時に作動するVSC(Vehicle Stability Control)やTCS(Traction Control System)の作動の有無、風圧計または音圧計からの信号などの情報を受ける。
検出部200は、上記のような情報から走行環境の変化を検出し、その検出信号SIGをECU300に出力する。また、サスペンションの動作によって、路面の凹凸を検出するようにしてもよい。
ECU300は、いずれも図1には図示しないがCPU(Central Processing Unit)、記憶装置および入出力バッファを含み、各センサ等からの信号の入力や各機器への制御信号の出力を行なうとともに、蓄電装置110および車両100の各機器の制御を行なう。なお、これらの制御については、ソフトウェアによる処理に限られず、専用のハードウェア(電子回路)で処理することも可能である。
ECU300は、PCU120、SMR115などを制御するための制御信号を生成して出力する。なお、図1においては、ECU300として1つの制御装置を設ける構成としているが、たとえば、PCU120用の制御装置や蓄電装置110用の制御装置などのように、機能ごとまたは制御対象機器ごとに個別の制御装置を設ける構成としてもよい。
ECU300は、蓄電装置110に備えられる電圧センサ170,電流センサ175からの電圧VBおよび電流IBの検出値に基づいて、蓄電装置110の充電状態SOC(State of Charge)を演算する。
ECU300は、ユーザによるアクセルペダル(図示せず)の操作に基づいて定められる要求トルクTRを、上位ECU(図示せず)から受ける。ECU300は、ユーザからの要求トルクTRに基づいて、コンバータ121およびインバータ122の制御信号PWC,PWIをそれぞれ生成し、モータジェネレータ130を駆動する。
また、ECU300は、ユーザにより設定されるモード信号MODを受ける。このモード信号MODは、以下に後述する慣性走行制御を実行するか否かを指示するための信号である。モード信号MODは、特定のスイッチや操作画面における設定などによって切換えられる。あるいは、特定の条件が成立したことに応答して、モード信号MODが自動的に設定されるようにしてもよい。
ECU300は、たとえば、モード信号MODがオンに設定されている場合には、慣性走行制御を行なうように動作し、モード信号MODがオフに設定されている場合には、慣性走行制御を行なわない通常の走行を行なうように動作する。
このような車両においては、モータジェネレータ130から駆動力が発生されると、蓄電装置の電力が消費される。蓄電装置110の容量は予め定められているので、蓄電装置に蓄えられた電力で、できるだけ長距離を走行するためには、走行中のエネルギ効率を向上させて電力消費を抑制することが必要となる。
車両の走行中には車両には慣性力がはたらいているため、走行中にモータジェネレータによる駆動力を、車速を維持するために必要な駆動力よりも低くした場合は、徐々に車速は低下するものの、しばらくの間は車両の慣性力を用いた走行(以下、「慣性走行」とも称する。)が継続される。
この慣性走行中は、モータジェネレータにより出力される駆動力が小さいので、蓄電装置からの電力消費が少なくなる。そのため、慣性走行を活用して走行を行なうことができれば、車両走行時のエネルギ効率を改善することが可能となり得る。
そこで、実施の形態1においては、図1に示した車両において、ユーザからの要求トルクがほぼ一定であり、それによって車速がほぼ一定に維持されるような走行がされている場合に、モータジェネレータからの駆動力が高出力状態である加速走行を行なう場合と、モータジェネレータの駆動力が低出力状態(駆動力がゼロの場合も含む)である慣性走行を行なう場合とを繰り返して走行する運転(以下、「駆動力変更運転」とも称する。)を行なう慣性走行制御を実行し、走行中におけるエネルギ効率の向上を図る。
[駆動力変更運転の説明]
図2を用いて、慣性走行制御における駆動力変更運転の基本的な動作について説明する。図2には、横軸に時間が示されており、縦軸には、車速SPD、モータジェネレータの出力、ユーザからの要求パワー、蓄電装置(バッテリ)の充放電電力、および蓄電装置のSOCが示される。なお、蓄電装置の充放電電力については、放電電力が正値で表わされ、充電電力が負値で表わされている。
図2を参照して、車両100が、平坦な道路を一定の車速V1で走行する場合を考える。この場合、図2のように、ユーザから要求されるパワーは、ほぼ一定の値として与えられる。なお、「ユーザから要求されるパワーがほぼ一定の値である」とは、多少の変動はあるものの、ある所定時間内において、ユーザ要求パワーが予め定められた所定範囲内(たとえば、±3%)に維持される状態を意味する。
本実施の形態の慣性走行制御を適用しない場合においては、モータジェネレータ130の出力は、図2中の破線W13のように、ほぼ一定の大きさで連続して出力される。これにより、車速SPDはほぼ一定に維持される。
このとき、蓄電装置110からは、図2中の破線W15のように一定の電力が連続して出力されるために、蓄電装置110のSOCは、図2中の破線W17のように、直線的に減少する。
これに対して、本実施の形態の慣性走行制御を適用した場合には、モータジェネレータ130を所定の駆動力で走行する加速走行と、加速走行時の駆動力よりも小さい駆動力で走行する慣性走行とが交互に繰り返される。なお、慣性走行時(低出力状態)においては、モータジェネレータ130からの駆動力がゼロ、すなわちモータジェネレータ130が停止状態の場合も含まれる。
具体的には、時刻t1までは、本実施の形態の慣性走行制御が適用されていない状態であり、PM0のモータ出力が連続的に出力されている。
時刻t1において、ユーザにより慣性走行制御の実行が指示されると、モータジェネレータ130が停止(低出力状態)される(図2中の実線W12)。そうすると、モータジェネレータ130からの駆動力がなくなるので、図2中の実線W10のように、慣性力による惰性走行が開始され、徐々に車速SPDが低下する。
このとき、蓄電装置110からの充放電電力がゼロとなるので、SOCの低下が抑制される。
そして、車速SPDが、目標とする車速V1に対して予め定められた許容範囲の下限値LLまで低下すると(図2中の時刻t2)、モータジェネレータ130の駆動が再開される(高出力状態)。このときのモータ出力は、車速V1を維持するために必要とされる出力PM0よりも大きいPM1に設定される。これによって、車両100が加速する。このとき、駆動力発生中は、惰性走行を行なわない場合に比べるとSOCの減少量は大きくなるが、時刻t1からt2までの惰性走行により電力が消費されていないため、トータルのSOCは高い状態が維持される(図2中の実線W16)。
そして、車速SPDが予め定められた上記の許容範囲の上限値ULまで上昇すると、再びモータジェネレータ130が低出力状態とされ(図2中の時刻t3)、惰性走行が実行される。
その後、同様に、車速SPDが下限値LLまで低下するとモータジェネレータ130が駆動され(高出力状態)、さらに車速SPDが上限値ULまで上昇するとモータジェネレータ130が停止される(低出力状態)。
このような駆動力変更運転を繰り返すことによって、車速SPDは上記の許容範囲内では変動するものの、平均速度をほぼV1に維持しながら、蓄電装置のSOCの減少を抑制することができる。その結果、全体としてエネルギ効率が向上され、蓄電装置に蓄えられた電力による走行可能距離を拡大することができる。
上記の説明においては、低出力状態においては、モータジェネレータ130を停止する場合を例として説明したが、低出力状態においては、モータジェネレータ130を停止せずに、車速を維持することができる駆動力よりも低い駆動力で継続して運転するようにしてもよい。
なお、モータジェネレータを駆動して加速する際のモータ出力、および加速時間については、任意に設定可能である。たとえば、加速時間を所定の時間に設定し、その期間内に車速SPDを下限値LLから上限値ULまで増加できるようなモータ出力とするようにしてもよい。あるいは、加速に用いるモータ出力を所定の出力にして、加速時間については成り行きとするようにしてもよい。加速時間が短すぎると、大きなパワーが必要となるので、トルクショックが生じる可能性がある。逆にモータ出力が小さすぎると、加速時間、すなわちモータジェネレータの駆動時間が長くなり、惰性走行が実施されにくくなる。また、モータジェネレータは、低出力領域では相対的に効率が低くなる場合があるので、低出力で長時間駆動を行なうと結果的にエネルギ効率の向上が図れないおそれがある。したがって、加速時間と加速時のモータ出力は、ドライバビリティおよびエネルギ効率を勘案して適切に設定される。
本実施の形態の慣性走行制御においては、上述のように、ユーザからの要求パワーがほぼ一定である場合に、図2で示したような駆動力変更運転が実行される。すなわち、ユーザからの要求パワーが変動する加速時および減速時には、駆動力変更運転は実行されない。
このような慣性走行制御により駆動力変更運転を実行する場合、路面状態などの走行環境の変化を考慮することが必要である。たとえば、降雨時や降雪時で路面が湿潤である場合、または凍結路などのような路面抵抗の低い路面を走行するような場合に、急激な加速が行なわれると駆動輪がスリップすることにより、車両の安定性が損なわれるおそれがある。また、車両に強風が吹きつけている場合には、強い向かい風や追い風によって、出力される駆動力と車速との関係が影響を受ける。駆動力変更運転においては、上述のように、加速走行と慣性走行とを繰り返し実行して車速を所定の範囲内に維持するため、このような走行環境の変化によって走行安定性やドライバビリティが影響され得る。
そこで、本実施の形態においては、慣性走行制御を実行することができる車両において、走行環境の変化に応じて慣性走行制御を実行するための各種パラメータを調整し、走行環境の変化による走行安定性やドライバビリティの悪化を抑制する。
以下、上記のような慣性走行制御を実行する場合に、走行環境の変化を考慮して慣性走行制御のパラメータを変更する具体的な実効例の詳細を説明する。
[実施の形態1]
実施の形態1においては、降雨などの影響で路面の状態がウェットとなり路面抵抗が低下した場合に、加速走行の継続時間を延長することによって加速走行時の加速度を緩和し、駆動輪のスリップを防止する手法について説明する。
図3は、実施の形態1における慣性走行制御を説明するためのタイムチャートである。図1および図3を参照して、時刻t11から時刻t17までは、路面がドライな状態で慣性走行制御を実行している場合であり、図2での説明と同様に、車速を維持することができる駆動力PM0Aよりも大きな駆動力PM1Aでモータジェネレータ130を運転する加速走行と、モータジェネレータ130を停止した慣性走行とを切換えながら駆動力変更運転を行なう。
このときの駆動力PM1Aは、路面がドライな状態の一般的な舗装道路を走行する場合に駆動力変更運転を行なう際に、ユーザ要求パワーに応じて設定される基準駆動力である。そして、この駆動力PM1Aおよび車速の許容範囲から、加速走行の実行時間TH1Aが定められる。
時刻t18になり、降雨等で路面がウェットな状態となった場合には、ドライな状態に比べて駆動輪150と路面との間の走行抵抗が低減し、スリップが生じやすくなる。このスリップを防止するために、加速走行の実行時間がドライな状態よりも延長される(TH2A>TH1A)。また、設定された実行時間TH2Aで加速走行が完了するように、モータジェネレータ130の駆動力がPM2A(PM0A<PM2A<PM1A)に変更される。これによって、加速走行時の速度の増加率、すなわち加速度が低減されるので、加速走行中に駆動輪150がスリップする可能性を低くすることができる。
図4は、実施の形態1において、ECU300で実行される慣性走行制御処理の詳細を説明するためのフローチャートである。図4および後述する図8,10,14,17に示されるフローチャート中の各ステップについては、ECU300に予め格納されたプログラムを所定周期で実行することによって実現される。あるいは、一部のステップについては、専用のハードウェア(電子回路)を構築して処理を実現することも可能である。
図1および図4を参照して、ECU300は、ステップ(以下、ステップをSと略す。)100にて、ユーザによって設定されるモード信号MODに基づいて、慣性走行制御が選択されているか否かを判定する。
モード信号MODがオフに設定されており、慣性走行制御が選択されていない場合(S100にてNO)は、以降の処理がスキップされ、ECU300は処理をメインルーチンに戻す。
モード信号MODがオンに設定されており、慣性走行制御が選択されている場合(S100にてYES)は、処理がS110に進められ、ECU300は、次に、要求トルクTRに基づいて、ユーザからの要求パワーがほぼ一定であるか否かを判定する。
ユーザ要求パワーがほぼ一定である場合(S110にてYES)は、処理がS120に進められて、ECU300は、駆動力変更運転を実行するように選択する。なお、図4には示されていないが、駆動力変更運転の開始直後は、図2,3に示されるように、まず、モータジェネレータ130が低出力状態にされて慣性走行が実行される。
そして、ECU300は、S130にて、ユーザ要求パワーに基づいて、路面がドライな状態における基準の駆動力を設定するとともに、所定の車速の許容範囲から、加速走行の実行時間を算出する。
その後、ECU300は、S140の処理を進めて、検出部200からの信号に基づいて、路面がウェットな状態であるか否かを判定する。
路面がウェットな状態である場合(S140にてYES)は、処理がS150に進められて、ECU300は、たとえば、図5に示すような路面抵抗と加速走行の実行時間との関係を示すマップに基づいて、路面がドライな状態の場合に比べて加速走行の実行時間を長く設定するとともに、その実行時間で加速走行が完了するようにモータジェネレータ130の駆動力を低減する。そして、処理がS160に進められる。
なお、加速走行の実行時間(継続時間)は、図5の実線W1のように、路面抵抗に応じて連続的に変化させるようにしてもよいし、破線W2ように離散的に変化させるようにしてもよい。
一方、路面がウェットな状態でない場合、すなわち、路面がドライな状態である場合(S140にてNO)は、S150がスキップされて、処理がS160に進められる。
そして、ECU300は、S160にて、車速SPDが速度許容範囲の上限値ULまで上昇したか否かを判定する。
上記のように、駆動力変更運転の開始直後は、まずモータジェネレータ130が低出力状態にされて慣性走行が実行されるので、車速SPDは上限値ULよりも低く、かつ徐々に車速SPDは低下する。
すなわち、車速SPDが速度許容範囲の上限値ULまで上昇していないので(S160にてNO)、処理がS165に進められて、次に、ECU300は、車速SPDが速度許容範囲の下限値LLまで低下したか否かを判定する。
車速SPDが速度許容範囲内で低下中(LL<SPD<UL)の場合、すなわち、車速SPDが速度許容範囲の下限値LLまで低下していない場合(S165にてNO)は、処理がS174に進められ、ECU300は、現在のモータジェネレータ130の状態を保持し、慣性走行を継続する。その後、メインルーチンに処理が戻され、次回の制御周期において再びS100から処理が実行される。
慣性走行が継続されている間に、車速SPDが速度許容範囲の下限値LLまで低下した場合(SPD≦LL)(S165にてYES)は、処理がS172に進められ、ECU300は、モータジェネレータ130を高出力状態に切換えて、S130またはS150で設定された駆動力により加速走行を実行する。これにより、車速SPDが上昇する。
この加速走行が実行されて速度許容範囲内で車速が上昇している間は、S160およびS165でNOが選択されて、ECU300は、S174にて、車速SPDが速度許容範囲の上限値ULに到達するまで加速走行を継続する。
そして、車速SPDが速度許容範囲の上限値ULまで上昇すると(S160にてYES)、処理がS170に進められて、ECU300は、モータジェネレータ130を低出力状態に切換えて慣性走行を実行する。
ユーザ要求パワーがほぼ一定に保持されている間は、車速SPDが速度許容範囲内に維持されるように、上記のような駆動力変更運転が実行される。
一方、加速または減速のために、ユーザからの要求パワーが変動した場合(S110にてNO)は、処理がS125に進められて、ECU300は、駆動力変更運転を中断する。
そして、ECU300は、ユーザ要求パワーによって加速が指示されている場合(S127にてYES)は、モータジェネレータ130を力行状態で駆動して、車両100を加速する(S176)。
一方、ユーザから減速が指示されている場合(S127にてNO)は、処理がS178に進められ、ECU300は、モータジェネレータ130を低出力状態に切換えた慣性走行による減速、および、モータジェネレータ130を回生状態で駆動することによる回生制動を伴う減速のいずれかを実行する。あるいは、慣性走行による減速と回生制動を伴う減速とを切換えながら減速するようにしてもよい。
その後、ユーザによる加速または減速動作が終了して、ユーザ要求パワーがほぼ一定である状態になると(S110にてYES)、駆動力変更運転が再開される。
以上のような処理に従って制御を行なうことによって、ユーザからの要求パワーがほぼ一定である状態において、慣性走行と加速走行とが繰り返される駆動力変更運転が実行でき、それによって、車両走行時のエネルギ効率を向上させることができる。そして、路面状況の変化に応じて、加速走行の実行時間およびモータ駆動力を調整することによって、車両の走行安定性およびドライバビリティを確保することができる。
なお、上記の例では、路面抵抗の変化に応じて加速走行の実行時間を調整するようにしたが、これに代えて、路面抵抗の変化に応じて駆動力を調整するようにしてもよい。この場合には、図6のような路面抵抗と駆動力との関係を示すマップに基づいて駆動力を設定してもよい。
また、上記の説明においては、路面がドライの状態とウェットの状態とを比較した場合を例として説明したが、実施の形態1はウェットの状態以外でも、スリップが生じやすい状態の場合にも適用可能である。
[実施の形態2]
実施の形態2においては、路面抵抗が低下した場合に、駆動力変更運転における車速の変動を小さくすることで加速走行時の加速度を低減し、車両の安定性を確保する構成について説明する。
図7は、実施の形態2における慣性走行制御を説明するためのタイムチャートである。図7を参照して、時刻t31から時刻t37までは、図3の時刻t11から時刻t17と同様に、車両は路面がドライの状態において駆動力変更運転を実行している。この場合、車速SPDの許容範囲はΔV1(=V1±a)であり、車両は、図2の実線W20のように、上限値UL1(=V1+a)と下限値LL1(V=V1−a)との間で加速走行と慣性走行とを切換えながら走行する。
そして、時刻t38になり、降雨等で路面がウェットな状態となって路面抵抗が低下した場合には、車速SPDの許容範囲がΔV1よりも狭いΔV2(=V1±b;b<a)に変更される。そして、加速走行の実行時間TH2Bが、路面がドライの状態での実行時間TH1Bと同程度となるように駆動力を設定する。これにより、車両は、図7中の実線W21のように上限値UL1#(=V1+b)と下限値LL1#(=V1−b)との間で加速走行と慣性走行とを切換えながら走行する。
このように車速SPDの許容範囲を調整することによって、加速走行における加速度を低減するとともに、車速の変動を小さくすることができる。
図8は、実施の形態2において、ECU300で実行される慣性走行制御処理の詳細を説明するためのフローチャートである。図8では、実施の形態1の図4のフローチャートにおけるステップS150が、S150AおよびS151Aに置き換わったものとなっている。図8において、図4と重複するステップの説明は繰り返さない。
図1および図8を参照して、ユーザ要求パワーが一定であり(S110にてYES)駆動力変更運転が実行される場合(S120)には、ECU300は、S130にて、車速SPDの許容範囲をΔV1として、ユーザ要求パワーから、路面がドライの状態である場合の、モータジェネレータ130の基準の駆動力を設定するとともに、許容範囲ΔV1と基準駆動力から加速走行の実行時間を算出する。
路面がウェットの状態である場合(S140にてYES)は、処理がS150Aに進められ、ECU300は、車速SPDの許容範囲をΔV1からΔV2(<ΔV1)に変更する。そして、ECU300は、S151Aにて、変更した許容範囲ΔV2に対応してモータジェネレータ130の駆動力と加速走行の実行時間を修正する。
路面がウェットの状態ではなくドライの状態である場合(S140にてNO)は、ステップS150AおよびS151Aがスキップされて、S130で設定された許容範囲および駆動力が採用される。
その後、S160以降の処理がなされ、ECU300は、路面がドライの状態の場合にはS130で設定された許容範囲および駆動力を用いて駆動力変更運転を実行し、路面がウェットの状態の場合にはS151Aで設定された許容範囲および駆動力を用いて駆動力変更運転を実行する。
このような処理にしたがって制御を行なうことによって、ユーザからの要求パワーがほぼ一定である状態において、駆動力変更運転を行なうことによって車両走行時のエネルギ効率を向上させることができる。そして、路面状況の変化に応じて車速の許容範囲を調整することによって、車両の走行安定性およびドライバビリティを確保することができる。
[実施の形態3]
実施の形態3においては、路面抵抗が低下した場合に、駆動力変更運転における平均車速を低下させることによって、車両の運動エネルギを低減して、車両の走行安定性を確保する構成について説明する。
図9は、実施の形態3における慣性走行制御を説明するためのタイムチャートである。図9を参照して、時刻t51から時刻t57までは、図3の時刻t11から時刻t17と同様に、車両は路面がドライの状態において駆動力変更運転を実行している。この期間においては、平均車速がV1となるように車速SPDの許容範囲(上限値UL1,下限値LL1)が設定される。
そして、時刻t58になり、降雨等で路面がウェットな状態となって路面抵抗が低下した場合には、ユーザからの要求駆動力が変更されていなくても、平均車速がV2となるように車速SPDの許容範囲が変更される(上限値UL2,下限値LL2)。なお、図9においては、上限値ULおよび下限値LLの双方が低下された場合の例が示されているが、上限値ULおよび下限値LLの少なくとも一方を低下させることにより、平均車速を低下させることができる。また、少なくとも上限値ULを低下させることがより好適である。
さらに、このときの加速走行における駆動力および実行時間を、路面がドライな状態の場合と加速度が同等あるいはより小さくなるように、変更した許容範囲に適合させることが重要である。このように、加速走行時の加速度を増加させることなく平均車速を低減することで、車両の有する運動エネルギが低減できるので、路面抵抗が低下した路面においてスリップ等を抑制することができる。
図10は、実施の形態3において、ECU300で実行される慣性走行制御処理の詳細を説明するためのフローチャートである。図10では、実施の形態1の図4のフローチャートにおけるステップS150が、S150Bに置き換わったものとなっている。図10において、図4と重複するステップの説明は繰り返さない。
図1および図10を参照して、ユーザ要求パワーが一定であり(S110にてYES)駆動力変更運転が実行される場合(S120)には、ECU300は、S130にて、ユーザ要求パワーから決まる平均車速V1に対する車速SPDの許容範囲(上限値UL1,下限値LL1)に基づいて、路面がドライの状態である場合の、モータジェネレータ130の基準の駆動力を設定するとともに、許容範囲と基準駆動力から加速走行の実行時間を算出する。
路面がウェットの状態である場合(S140にてYES)は、処理がS150Bに進められ、ECU300は、平均車速がV2(<V1)となるように車速SPDの許容範囲を定める上限値UL,下限値LLをそれぞれ上限値UL2,下限値LL2に変更する。そして、ECU300は、この許容範囲において、駆動力変更運転を行なうようにモータジェネレータ130の駆動力を修正する。
路面がウェットの状態ではなくドライの状態である場合(S140にてNO)は、ステップS150Bがスキップされて、S130で設定された許容範囲および駆動力が採用される。
その後、S160以降の処理がなされ、ECU300は、路面がドライの状態の場合にはS130で設定された許容範囲および駆動力を用いて平均車速がV1となるように駆動力変更運転を実行する。また、路面がウェットの状態の場合には、ECU300は、S150Bで設定された許容範囲および駆動力を用いて平均車速がV2となるように駆動力変更運転を実行する。
このような処理にしたがって制御を行なうことによって、ユーザからの要求パワーがほぼ一定である状態において、駆動力変更運転を行なうことによって車両走行時のエネルギ効率を向上させることができる。そして、路面状況の変化に応じて平均車速を調整することで、車両の走行安定性およびドライバビリティを確保することができる。
[実施の形態4]
実施の形態1〜3では、気象条件などの走行環境によって路面抵抗が変化した場合に、車両の走行安定性を確保しつつ慣性走行制御を実行する構成について説明した。
実施の形態4においては、車両に強風が吹きつけている場合に、風の影響を考慮して慣性走行制御を行なう構成について説明する。
車両に対して強い追い風が吹きつけている場合には、車両には風の影響により、進行方向の力が加わる。このような状態で慣性走行制御を行なった場合、加速走行時には、モータジェネレータからの駆動力に加えて追い風による推進力が加わるので、無風状態に比べて加速度が増加する。また、慣性走行時には、追い風の推進力により、無風状態に比べて減速度が低下する。すなわち、追い風の場合には、無風状態に比べて、加速走行の実行時間が短くなるとともに慣性走行の時間が長くなる。
一方、車両に対して強い向かい風が吹きつけている場合には、車両には進行方向とは反対の方向の力が風により加えられる。これにより、慣性走行制御において、加速走行時の加速度が低下し、慣性走行時の減速度が増加する。
そのため、車両に吹きつける風によって、加速走行および慣性走行の実行時間が変動して、ドライバビリティが損なわれる可能性がある。さらに、向かい風が特に強い場合には、加速走行時に十分な加速度が得られず、加速ができずに慣性走行制御が適切に実行できない場合も起こり得る。
そこで、実施の形態4においては、風圧計や音圧計からの情報に基づいて追い風/向かい風を判定し、その判定に基づいて慣性走行制御における駆動力を調整する。これによって、たとえば無風状態のような特定の状態における慣性走行制御と同様に加速走行と慣性走行との切換えを実行し、風圧の影響によるドライバビリティの悪化を抑制する。
次に、図11を用いて、風圧の変化による追い風および向かい風の判定の一例について説明する。
たとえば、車両に風圧計が搭載される場合、車速が変化するとそれに応答して風圧計で検出される風圧も変化し得る。そのため、風圧計の検出値の変化だけでは、追い風であるか向かい風であるかを直接判定することは困難である。
実施の形態4においては、図11における実線W50のような、無風状態における車速と風圧との関係を予め実験等から求めたマップを用い、現在の車速において検出された風圧が、実線W50の基準線の値よりも大きいかあるいは小さいかによって、追い風と向かい風とを判定する。
図11において、ある車速Vaにおいて検出される風圧が、W50の基準線上の点P0よりも高い点P1の場合には向かい風であると判定する。一方、検出された風圧が点P0よりも低い点P2の場合には追い風であると判定する。なお、弱い風によるわずかな風圧変化にまで過度に対応しないように、これらの判定においては、基準に対する検出された風圧の差が予め定められたしきい値より大きい場合に、追い風あるいは向かい風と判定するようにすることが好ましい。
図12および図13は、それぞれ追い風の場合および向かい風の場合について、実施の形態4を適用した場合の慣性走行制御を説明するためのタイムチャートである。
まず図12を参照して、追い風の場合について説明する。時刻t71から時刻t77までは、無風状態において慣性走行制御が実行されており、加速走行時には、PM1Dの駆動力でTH1Dの時間モータジェネレータが駆動される。そして、慣性走行においてはモータジェネレータが低出力状態とされて、TL1Dの時間だけ慣性走行が実行される。
時刻t78にて、車両に強い追い風が吹きつけた場合、無風状態と同じ駆動力で慣性走行制御を行なうと、加速走行の時間が短くなるとともに慣性走行の時間が長くなる。そのため、加速走行の実行時間TH2Dが無風状態における実行時間TH1Dと同じになるように、図12中の実線W31のように、加速走行時の駆動力がPM2D(<PM1D)に低下される。
さらに、慣性走行時に、モータジェネレータを回生運転、すなわち負の駆動力PMRを発生させるようにしてもよい。これによって、車両に制動力が与えられて、慣性走行時の減速度の低下が抑制され、慣性走行の実行時間TL2Dを無風状態の場合の実行時間TL1Dと同等にすることができる(図12中の破線W32)。
次に、図13を参照して、向かい風の場合について説明する。時刻t91から時刻t97までは、図12における時刻t71から時刻t77と同様に、無風状態において慣性走行制御が実行されている。
時刻t98にて、車両に強い向かい風が吹きつけた場合、無風状態と同じ駆動力で慣性走行制御を行なうと、上述のように、加速走行の時間が長くなるとともに慣性走行の時間が短くなる。そのため、加速走行の実行時間TH2Eが無風状態における実行時間TH1Eと同じになるように、図13中の実線W41のように、加速走行時の駆動力がPM2E(>PM1E)に増加される。これにより、向かい風により低減される加速度を補完することができる。
さらに、慣性走行時における駆動力を無負荷状態の場合よりも大きくすることで(図13中の破線W42)、慣性走行時の減速度の増加を抑制するようにしてもよい。
上記のように、追い風であるか向かい風であるかに応じて駆動力を調整することによって、無風状態(あるいは、特定の基準状態)と同様の駆動力変更運転が実行できる。
図14は、実施の形態4において、ECU300で実行される慣性走行制御処理の詳細を説明するためのフローチャートである。図14では、実施の形態1の図4のフローチャートにおけるステップS140,S150に代えて、S135,S140C,S145C,S150C,S155Cが追加されたものとなっている。図14において、図4と重複するステップの説明は繰り返さない。
図1および図14を参照して、ユーザ要求パワーが一定であり(S110にてYES)駆動力変更運転が実行される場合(S120)には、ECU300は、S130にて、ユーザ要求パワーおよび車速SPDの許容範囲から、路面がドライの状態である場合の、モータジェネレータ130の基準の駆動力を設定するとともに、許容範囲と基準駆動力から加速走行の実行時間を算出する。
そして、ECU300は、S135にて、検出部200によって、車両に備えらた風圧計(図示せず)で検出された風圧の検出値を取得するとともに、図11で説明したようなマップを用いて追い風であるか向かい風であるかを判定する(S140C)。
追い風である場合(S140CにてYES)は、処理がS150Cに進められ、ECU300は、加速走行時のモータジェネレータ130の駆動力を低下させる。さらに、ECU300は、慣性走行時にモータジェネレータ130を回生運転するように駆動力を設定する。その後、S160に処理が進められる
追い風でない場合(S140CにてNO)は、処理がステップS145Cに進められ、次にECU300は、向かい風であるか否かを判定する。
向かい風である場合(S145CにてYES)は、処理がS155Cに進められて、ECU300は、加速走行時および慣性走行時の駆動力を増加させ、S160に処理を進める。
S145CでNO、すなわち、無風状態あるいは比較的弱い風の場合には、S150C,S155Cがスキップされて、S130で設定された駆動力が採用される。
その後、S160以降の処理がなされ、ECU300は、S130、S150CまたはS155Cで設定された駆動力を用いて駆動力変更運転を実行する。
以上のような処理に従って制御を行なうことによって、ユーザからの要求パワーがほぼ一定である状態において、走行環境として風圧の変化の影響を低減してドライバビリティを確保しながら、車両走行時のエネルギ効率を向上させることができる。
[実施の形態5]
実施の形態1〜4では、駆動源としてモータジェネレータが単独で設けられる場合における慣性走行制御について説明した。
実施の形態5においては、複数の駆動源からの駆動力を用いて走行する車両について慣性走行制御を適用する場合について説明する。
図15は、実施の形態5に従う車両100Aの全体ブロック図である。車両100Aは、モータジェネレータと内燃機関であるエンジンとを駆動源とするハイブリッド車両である。
図15においては、図1におけるPCU120がPCU120Aに置き換えられ、駆動源として、モータジェネレータ130に代えて、モータジェネレータ130A,130Bおよびエンジン160が備えられる構成となっている。図15において、図1と重複する要素の説明は繰り返さない。
図15を参照して、PCU120Aは、コンバータ121と、インバータ122A,122Bと、コンデンサC1,C2と、電圧センサ180,185とを含む。
インバータ122A,122Bは、電力線PL2,NL1を介して、コンバータ121に並列に接続される。
インバータ122Aは、ECU300からの制御信号PWI1により制御され、コンバータ121からの直流電力を交流電力に変換して、モータジェネレータ130A(以下、「MG1」とも称する。)を駆動する。また、インバータ122Aは、モータジェネレータ130Aで発電された交流電力を直流電力に変換し、コンバータ121を介して蓄電装置110を充電する。
インバータ122Bは、ECU300からの制御信号PWI2により制御され、コンバータ121からの直流電力を交流電力に変換して、モータジェネレータ130B(以下、「MG2」とも称する。)を駆動する。また、インバータ122Bは、モータジェネレータ130Bで発電された交流電力を直流電力に変換し、コンバータ121を介して蓄電装置110を充電する。
モータジェネレータ130A,130Bの各出力軸は、たとえばプラネタリギヤのような動力分割機構を含んで構成される動力伝達ギヤ140Aに結合される。そして、モータジェネレータ130A,130Bからの駆動力が駆動輪150に伝達される。
また、モータジェネレータ130A,130Bは、動力伝達ギヤ140Aを介して、エンジン160とも結合される。エンジン160は、ECU300からの制御信号DRVによって制御される。エンジン160から発生される駆動力は、動力伝達ギヤ140Aを介して駆動輪150およびモータジェネレータ130A,130Bに伝達される。ECU300は、モータジェネレータ130A,130Bおよびエンジン160で発生される駆動力を協調的に制御して、車両を走行させる。
なお、実施の形態5においては、モータジェネレータ130Aは、エンジン160を始動する際のスタータモータとして用いられるとともに、エンジン160により駆動されて発電を行なう発電機として専ら用いられるものとする。また、モータジェネレータ130Bは、蓄電装置110からの電力を用いて駆動輪150を駆動するための電動機として専ら用いられるものとする。
また、図15においては、2台のモータジェネレータと1台のエンジンが備えられる構成の例が示されるが、モータジェネレータの数はこれに限定されず、たとえば、モータジェネレータが1台であってもよい。あるいは、2台より多くのモータジェネレータが備えられる場合であってもよい。
図16は、実施の形態5における慣性走行制御を説明するためのタイムチャートである。図16においては、縦軸にエンジンの駆動力が追加されている。なお、ここでは、実施の形態1と同様に、路面がドライの状態とウェットの状態における動作を例として説明する。
図16を参照して、時刻t111から時刻t117までは、路面がドライの状態において駆動力変更運転が実行されている場合を示し、時刻t118以降は路面がウェットな状態において駆動力変更運転が実行されている場合を示す。そして、いずれの場合も、加速走行時に必要とされる駆動力が、モータジェネレータ130B(MG2)からの駆動力とエンジン160からの駆動力との和により出力される。
言い換えれば、実施の形態1の図3における駆動力PM1Aが、モータジェネレータ130Bの駆動力PM1Fとエンジン160の駆動力PE1Fに分配され(PM1A=PM1F+PE1F)、駆動力PM2Aがモータジェネレータ130Bの駆動力PM2Fとエンジン160の駆動力PE2Fに分配される(PM2A=PM2F+PE2F)。
このとき、モータジェネレータ130Bの駆動力とエンジン160の駆動力の分配比率については、それぞれのエネルギ効率および応答性等を考慮して適宜設定される。したがって、場合によっては、モータジェネレータ130Bまたはエンジン160のいずれか一方の駆動力のみで必要とされる駆動力とされてもよい。
さらに、慣性走行時にもゼロでない正の駆動力が出力される場合には、モータジェネレータ130Bまたはエンジン160のいずれか一方を一定の駆動力で運転し、他方について高出力状態と低出力状態とを切換える駆動力変更運転を行なうようにしてもよい。
図17は、実施の形態5において、ECU300で実行される慣性走行制御処理の詳細を説明するためのフローチャートである。図17は、実施の形態1の図4で示されるフローチャートの、ステップS130、S150,S170,S172,S174,S176,S178は、それぞれS130D、S150D,S170D,S172D,S174D,S176D,S178Dに置き換えられたものとなっている。
図17において、置き換えられた各ステップの処理は、必要となる駆動力がモータジェネレータに加えてエンジンで出力される点が異なっているのみであり、それ以外の処理内容は実施の形態1の図4と同じである。そのため、処理内容の詳細な説明は繰り返さないが、概略的には、慣性走行制御が選択されており、ユーザ要求パワーが一定である場合には、車速が下限値まで低下するとモータジェネレータおよびエンジンが高出力状態にされて加速走行が実行され、車速が上限値まで上昇するとモータジェネレータおよびエンジンが低出力状態にされて慣性走行が実行される。そして、路面抵抗の変化に応じて、モータジェネレータおよびエンジンで出力されるトータルの駆動力が調整される(S150D)。
以上のような処理に従って制御を行なうことによって、モータジェネレータおよびエンジンを有するハイブリッド車両においても、路面状況の変化を考慮して慣性走行制御を行なうことによって、走行安定性およびドライバビリティを確保しつつ、エネルギ効率を向上させることができる。
なお、複数の駆動力を有する場合として、他の構成を用いてもよく、たとえば、各々が駆動力を発生することが可能な2つモータジェネレータを用いるようにしてもよい。
また、上記の実施の形態1〜5の構成については、必要に応じて、適宜組み合わせて実行するようにしてもよい。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
100,100A 車両、110 蓄電装置、120 PCU、121 コンバータ、122,122A,122B インバータ、130,130A,130B モータジェネレータ、140,140A 動力伝達ギヤ、150 駆動輪、160 エンジン、170,180,185 電圧センサ、175 電流センサ、190 速度センサ、200 検出部、300 ECU、C1,C2 コンデンサ、PL1,PL2,NL1 電力線。

Claims (18)

  1. 車両であって、
    前記車両の走行駆動力を発生する回転電機と、
    前記回転電機を制御するための制御装置と、
    前記車両の走行環境の変化を検出するための検出部とを備え、
    前記制御装置は、前記回転電機について、駆動力を発生する第1の状態と、前記第1の状態よりも駆動力を小さくした第2の状態とを切換えながら前記車両を走行させる駆動力変更運転を実行し、
    前記制御装置は、検出された前記走行環境の変化に応じて、前記駆動力変更運転についてのパラメータを調整する、車両。
  2. 前記検出部は、前記走行環境として路面抵抗の変化に関する情報を検出し、
    前記制御装置は、前記路面抵抗の変化に応じて前記パラメータを調整する、請求項1に記載の車両。
  3. 前記制御装置は、前記路面抵抗が低下したことに応答して、前記第1の状態における加速度を低減する、請求項2に記載の車両。
  4. 前記パラメータは、前記第1の状態における駆動力であり、
    前記制御装置は、前記路面抵抗が低くなると、前記路面抵抗が高いときよりも前記第1の状態における駆動力が小さくなるように調整する、請求項3に記載の車両。
  5. 前記パラメータは、前記第1の状態の実行時間であり、
    前記制御装置は、前記路面抵抗が低くなると、前記路面抵抗が高いときよりも前記第1の状態の実行時間が長くなるように調整する、請求項3または4に記載の車両。
  6. 前記制御装置は、前記駆動力変更運転の実行中は、前記車両の速度が許容範囲内に維持されるように、前記第1および第2の状態を切換え、
    前記パラメータは、前記許容範囲であり、
    前記制御装置は、前記路面抵抗が低くなると、前記路面抵抗が高いときよりも前記許容範囲が狭くなるように調整する、請求項3〜5のいずれか1項に記載の車両。
  7. 前記制御装置は、前記路面抵抗が低下したことに応答して、前記駆動力変更運転中の平均車速を低減する、請求項2に記載の車両。
  8. 前記制御装置は、前記駆動力変更運転の実行中は、前記車両の速度が許容範囲内に維持されるように、前記車両の速度が前記許容範囲の下限値まで低下したことに応答して前記第1の状態に切換え、前記車両の速度が前記許容範囲の上限値まで上昇したことに応答して前記第2の状態に切換え、
    前記制御装置は、前記路面抵抗が低い場合には、前記路面抵抗が高い場合に比べて、少なくとも前記上限値を低下させる、請求項7に記載の車両。
  9. 前記検出部は、前記走行環境として前記車両が受ける風圧に関する情報を検出し、
    前記制御装置は、前記風圧の変化に応答して前記パラメータを調整する、請求項1に記載の車両。
  10. 前記パラメータは、前記第1の状態における駆動力であり、
    前記制御装置は、ユーザからの要求駆動力が変化していなくとも、前記風圧の変化に基づく向かい風および追い風のいずれであるかの判定に応じて、前記第1の状態における駆動力を調整する、請求項9に記載の車両。
  11. 前記制御装置は、追い風であると判定した場合には、追い風でない場合に比べて前記第1の状態における駆動力を低減する、請求項10に記載の車両。
  12. 前記制御装置は、追い風であると判定した場合には、追い風でない場合に比べて前記第2の状態における駆動力をさらに低減する、請求項11に記載の車両。
  13. 前記制御装置は、追い風であると判定した場合には、前記第2の状態において前記回転電機を回生運転する、請求項11に記載の車両。
  14. 前記制御装置は、向かい風であると判定した場合には、向かい風でない場合に比べて前記第1の状態における駆動力を増加する、請求項10に記載の車両。
  15. 前記制御装置は、向かい風であると判定した場合には、向かい風でない場合に比べて前記第2の状態における駆動力をさらに増加する、請求項14に記載の車両。
  16. 前記車両は、前記第2の状態においては、主に前記車両の慣性力によって走行する、請求項1に記載の車両。
  17. 前記車両は、
    前記車両の走行駆動力を発生する内燃機関をさらに備える、請求項1に記載の車両。
  18. 車両の走行駆動力を発生する回転電機および前記車両の走行環境の変化を検出するための検出部を有する車両の制御方法であって、
    前記回転電機を、所定のレベルの駆動力を発生させる第1の状態にするステップと、
    前記回転電機を、前記第1の状態よりも駆動力を小さくした第2の状態にするステップと、
    前記第1および第2の状態を切換えながら前記車両を走行させる駆動力変更運転を実行するステップと、
    検出された前記走行環境の変化に応じて、前記駆動力変更運転についてのパラメータを調整するステップとを備える、車両の制御方法。
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