JP2013096895A - コーヒー豆及びコーヒー抽出液の品質評価方法 - Google Patents

コーヒー豆及びコーヒー抽出液の品質評価方法 Download PDF

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憲郎 光田
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Abstract

【課題】ヒトによるコーヒーの官能評価方法は客観性に乏しく、コーヒーの呈味の差異を具体的に数値で比較することが困難であった。また、上述の他の評価方法も呈味を評価する上で十分な方法であるとは言えなかった。
【解決手段】熟練したパネルによる官能検査に依存しないコーヒー豆、及び、コーヒー抽出液の品質評価方法、特に苦味や渋味に強く影響を与える成分を指標として科学的、かつ客観的に品質評価を行う方法を提供する。
【選択図】なし

Description

本発明は、コーヒー豆とコーヒー抽出液の品質評価方法に関する。
焙煎されたコーヒー豆から得られるコーヒー抽出液、いわゆるコーヒーは、世界各国で飲用されており、わが国においても身近な嗜好性飲料の一つとなっている。
コーヒー豆の品質は、まず、豆の形状(大きさ、色、つや、形)や、豆の欠点(黒豆、発酵豆、未成熟豆、しわ豆、虫食豆、フローター、割れ豆、ドライチェリー、ドライパルプ、貝殻豆等の病痕豆、パーチメント、カビ豆、異物による欠点豆)、栽培地の標高など生産国の様々な基準により評価がなされており、例えば、欠点を多く含むコーヒー豆から得られたコーヒー抽出液は、嗜好的に悪い影響を与える苦味や渋味が強くなり、コーヒー本来の風味が十分に生かされていない。また、これら評価で高く格付けされた品質の良いコーヒー豆から得られたコーヒー抽出液であっても、製造上の要因(殺菌工程での加熱や保存などによる劣化)により、コーヒー抽出液の風味は変化するため、コーヒー抽出液を市場に流通させる上で、コーヒー豆、および、コーヒー抽出液の品質評価が必要となっており、これら評価は、目視による外観評価や官能評価により行なわれている。
コーヒー豆の外観評価またはコーヒー抽出液の官能評価に準ずる他の評価方法としては、近赤外線分析法、電子スピン共鳴スペクトル法、核磁気共鳴スペクトル法、熱分解法、香気分析法(非特許文献1)、液体クロマトグラムによるゲル濾過分析法(特許文献1)、味センサによる評価(非特許文献2)、糖類、クロロゲン酸、有機酸などの一般的な成分による生豆または欠点豆の評価(非特許文献3,4)、ジフルクトース無水物を品質標識として用いた焙煎評価(非特許文献5)等が挙げられる。しかしながら、コーヒーは嗜好性の高さの故に、その呈味を科学的、客観的に評価することは困難であり、現在もこれら評価においては目視や熟練したカップテスター(パネル)による官能検査(カップテスト)等により評価が行なわれているのが現状である。
しかしながら、これらヒトによる外観評価や官能評価から得られる結果は、個人差や日間差が大きく、幾分客観性に欠ける手法である事から、コーヒー豆およびコーヒー抽出液の客観的な品質評価方法は現在も強く望まれており、呈味をより正確に客観的に評価できる品質管理手法の開発は産業上有用である。
特開平1−274062号公報
「コーヒー焙煎の化学と技術」141〜162頁、中林敏郎・筬島豊・本間清一・中林義晴・和田浩二共著、弘学出版、1995年2月発行 H.KOMAI,Y.NAITO,K.SATO,H.IKEZAKI,A.TANIGUCHI,K.TOKO MEASUREMENT OF COFFEE TASTE USING LIPID MEMBRANE TASTE SENSORS. Colloque Scientifique International sur le Cafe, 1995, 16th, p.300-308 ALPIZAR,E., BERTRAND,B. Incidence of evaluation on chemical composition and beverage quality of coffee in Central America. Colloque Scientifique International sur le Cafe, 2004, 20th, p.322-327 V.LELOUP,C.GANCEL,R.LIARDON,M.BLANC Evaluation of Chemical Conposition and Processability of Defective Beans. Colloque Scientifique International sur le Cafe, 2004, 20th, p.146-153 MONTILLA A.,DEL CASTILLO M.d. Difructose anhydrides as quality markers of honey and coffee. Food Res.Int.,2006, Vol.39, No.7, p.801-806
ヒトによるコーヒーの官能評価方法は客観性に乏しく、コーヒーの呈味の差異を具体的に数値で比較することが困難であった。また、上述の他の評価方法もコーヒーの呈味を評価する上で十分な方法であるとは言えなかった。
本発明は、上記の課題を鑑みてなされたものであり、熟練したパネルによる官能検査に依存しないコーヒー豆、及び、コーヒー抽出液の品質評価方法、特に苦味や渋味に強く影響を与える成分を指標として科学的、かつ客観的に品質評価を行う方法を提供することを目的とする。
発明者は、鋭意研究の結果、コーヒー抽出液に含まれる成分のうち、味覚や風味に与える影響の大きい成分が、下記の式(1)の化合物である2-O-β-D-グルコピラノシル アトラクチリゲニン(2-O-β-D-glucopyranosyl atractyligenin)、いわゆる、Kaffee Atractyloside II(以下、KA IIとも呼ぶ)であることを発見し、コーヒー豆及びコーヒー抽出液中のこの化合物の含有量について検討し、標準豆に比べ欠陥豆により多く含まれるKA IIを指標物質とする本発明を完成させた。
Figure 2013096895
(1)
すなわち、本発明は、式(1)の化合物を指標物質として用いる、コーヒー豆及びコーヒー抽出液の品質評価方法に関する。
本発明に係るコーヒー豆及びコーヒー抽出液の品質評価方法における指標物質の含有量に基づく判定によって、熟練したパネルによる味覚に基づく官能検査や、あるいは時間がかかり、熟練を要する化学定量分析等の方法によることなく、容易に且つ短時間で客観的に正確なコーヒー豆及びコーヒー抽出液の評価結果を提供することができる。
<指標物質(KA II)>
本発明は、式(1)に記載の化合物である2-O-β-D-グルコピラノシル アトラクチリゲニン(2-O-β-D-glucopyranosyl atractyligenin)、いわゆる、Kaffee Atractyloside II(KA II)を、コーヒー豆及びコーヒー抽出液の品質評価方法における指標物質とする。コーヒー豆中、及び/又は、コーヒー抽出液中のこの指標物質の含有量を測定することで、正確な品質評価結果を得ることができる。
≪KA IIの特徴≫
KA IIは、コーヒー中に含まれるカウレン系ジテルペン配糖体の一つとして知られており、アラビカ種の焙煎豆(水洗式精選・ミディアムロースト豆)中の含量は1.2〜1.4g/kgと報告されており、KA IIは、液体クロマトグラフ質量分析(LC-MS)によって感度良く検出できる事が知られている(Bredbury A.G.W., Balzer H.H. Carboxyatractyligenib and Atractyligenin Glycosides in Coffee. ASID, 18e colloque, Helsinki, 1999)。
本発明者らは、KA IIに関して、更に以下のような特徴を発見し本発明を完成した。
(1)KA IIは、コーヒー標準豆(以下、標準豆とも呼ぶ)及びコーヒー欠陥豆(以下、欠陥豆とも呼ぶ)の双方で検出される化合物である。KA IIは、コーヒー欠陥豆から得られるコーヒー抽出液の異味を構成する主要な呈味である強い苦渋味に関与する。KA IIは、コーヒー欠陥豆中にコーヒー標準豆の1.5倍以上と比較的多く含まれている。
(2)KA IIの含有量が多いコーヒー抽出液ほど、苦渋味(異味)が強い。
(3)KA IIのみでは、苦渋味(異味)は感じられないが、欠陥コーヒー抽出液(欠陥豆から抽出したコーヒー抽出液)中のKA IIの濃度と等しい濃度になるように標準コーヒー抽出液にKA IIを添加して官能評価を行うと、苦渋味(異味)を強く感じる。つまり、KA IIと他のコーヒー抽出液中の成分との相乗効果によって異味を呈する。
<コーヒー豆の品質評価方法>
本発明は、コーヒー標準豆を基準として、コーヒー被験豆の品質を評価する方法である。ここで、上述したように、KA IIのみでは異味は生じないため、KA II以外の成分については、標準豆と被験豆との間で統一されることが望ましく、被験豆に対して、標準豆は被験豆と同品種、同産地の品質の良い(各付けの高い)または通常製造で使用される程度の品質を有するコーヒー豆を選択することが望ましい。
また、本発明におけるコーヒー欠陥豆とは、欠点豆(黒豆、発酵豆、未成熟豆、しわ豆、虫食豆、フローター、割れ豆、ドライチェリー、ドライパルプ、貝殻豆等の病痕豆、パーチメント、カビ豆、異物による欠点豆)のことを言う。標準豆及び被験豆中のKA IIの含有量を測定し、比較することで被験豆の品質を評価することができる。
コーヒー被験豆を評価するために、コーヒー被験豆の抽出液中、及び、コーヒー標準豆の抽出液中のKA IIの含有量を、化学的又は物理的等の適切な方法で測定する。
KA IIは、コーヒー欠陥豆中にコーヒー標準豆の1.5倍以上と比較的多く含まれていることを利用して、コーヒー被験豆がどの程度異味を有しているかを評価する。
また、本発明の評価方法は、KA IIがアラビカ種に比べロブスタ種には少量しか含まれていないことが報告されているので、ロブスタ種のコーヒー豆の品質評価への使用は、アラビカ種に比べて不向きであると考えられ、アラビカ種のコーヒー豆を評価するのにより適した方法であると考えられる。
本発明におけるコーヒー豆の品質評価方法は、
(a)コーヒー標準豆、及び、コーヒー被験豆夫々を粉砕し、その粉砕物から標準コーヒー抽出液、及び、被験コーヒー抽出液を調製する工程と、
(b)標準コーヒー抽出液中のKA II含有量、及び、被験コーヒー抽出液中のKA II含有量を測定する工程と、
(c)標準コーヒー抽出液中のKA II含有量と、被験コーヒー抽出液中のKA II含有量とを比較する工程を含む。
この評価方法では、上述したように官能検査(カップテスト)を利用することなく、機器分析等により、測定値をKA IIの含有量で表現することで、評価結果から主観性を排除し、客観的且つ定量的にコーヒー豆の品質を評価することが可能である。
以下、夫々の工程について詳しく説明する。
≪(a)工程≫
コーヒー被験豆とコーヒー標準豆とを必要に応じて焙煎した後に、粉砕機にて同じ粒度になるように粉砕して、これらの粉砕物を夫々、必要に応じて加熱された、水、アルコール又は含水アルコールで抽出することにより、被験コーヒー抽出液、及び、標準コーヒー抽出液を得ることができる。本発明においては、アルコールで抽出した場合、抽出効率がよい点で好ましい。一方、熱水で抽出した場合は、実際にそのコーヒー焙煎豆を用いて製造されるコーヒー抽出液のKA IIの量を反映している点において好ましい。以上より抽出溶媒は、その目的によりアルコール又は熱水のいずれを適宜選択してもちいれば良い。また、コーヒー豆は、粉砕する前に、公知の一般的な方法で焙煎することが好ましい。なぜなら、コーヒー生豆の中にはKA IIは、コーヒー焙煎豆に比べ少量しか含まれておらず、KA IIは、焙煎により生成される化合物であるためである。なお、焙煎時は、コーヒー被験豆とコーヒー標準豆とは全く同じ条件で焙煎される必要がある。
コーヒー抽出液を調製する工程は、従来から公知の方法を適宜採用することができる。
≪(b)工程≫
被験コーヒー抽出液、及び、標準コーヒー抽出液中のKA II含有量は、公知の方法で適宜測定することが可能であるが、液体クロマトグラフ質量分析(LC-MS)で測定することが好ましい。これは、LC-MSが高感度及び高選択的に測定対象を検出できるためである。この方法の条件は、後述する実施例の内容から当業者であれば当然理解できるものである。また、測定によるKA II標準品は、コーヒー豆からの分取、または他のアトラクチロシドからの合成により得ることが可能である。
≪(c)工程≫
被験コーヒー抽出液中のKA II含有量を、標準コーヒー抽出液中のKA II含有量と比較検討することで、コーヒー被験豆の品質を評価する。具体的には(被験コーヒー抽出液中のKA II含有量)/(標準コーヒー抽出液中のKA II含有量)の質量比を評価値として使用する。但し、コーヒー抽出液中のKAII含有量と苦渋味の強度とは比例関係にあり、かつ、状況に応じて要する呈味は異なることから、得られた評価値から一概にコーヒー被験豆の良し悪しを決定できるものではない。そこで、コーヒー被験豆の種類、評価する季節、コーヒー被験豆の産地、又は、被験コーヒー抽出液の目標とする呈味等の様々な条件に応じて、得られた評価値からそのコーヒー被験豆にどのような品質評価を下すのかを適宜決定することができる。
例えば、品質評価における該評価値の一定の基準(合格か不合格かを区別する基準値等)は、パネルによる標準コーヒー抽出液及び欠陥コーヒー抽出液の官能評価と、標準コーヒー抽出液中及び欠陥コーヒー抽出液中のKA II含有量との関係性を検討した後に、コーヒー被験豆の種類や被験コーヒー抽出液の目標とする呈味等に応じて、適宜設定することができる。
<コーヒー抽出液の品質評価方法>
本発明は、標準コーヒー抽出液中のKA IIの含有量を基準として、被験コーヒー抽出液の品質を評価する方法にも関する。品質は、例えば苦渋味を基準にして苦渋味が高くなるほど悪いものとする。
被験コーヒー抽出液の品質を評価するために、コーヒー被験豆の抽出液中、及び、コーヒー標準豆の抽出液中のKA IIの含有量を、化学的又は物理的等の適切な方法で測定して、被験コーヒー抽出液の異味の程度や個体差を知ることができる。
また、上述したように、KA II以外の成分については、標準豆と被験豆との間で統一されていなければならないため、被験コーヒー抽出液に対しては、被験コーヒー抽出液のコーヒー豆と同品種、同産地で品質の良い(格付けの高い)または通常製造させる程度の品質を有するコーヒー豆から抽出された標準コーヒー抽出液が選択される。
また、本発明の品質評価方法は、KA IIがアラビカ種に比べロブスタ種には少量しか含まれていないことが報告されているため、アラビカ種のコーヒー豆を判定するのにより適した方法であると考えられる。
本発明におけるコーヒー抽出液の品質評価方法では、
(a’)コーヒー標準豆、及び、コーヒー被験豆夫々を焙煎し、粉砕し、その粉砕物から標準コーヒー抽出液、及び、被験コーヒー抽出液を調製する工程と、
(b’)標準コーヒー抽出液中のKA II含有量、及び、被験コーヒー抽出液中のKA II含有量を測定する工程と、
(c’)標準コーヒー抽出液中のKA II含有量と、被験コーヒー抽出液中のKA II含有量とを比較する工程を含む。工程(a’)は、上述の工程(a)に対応するが、本評価方法では、コーヒー豆を焙煎することは必須要件となる。また、工程(b’)は上述した工程(b)に対応し、同様の操作を行うことができる。また、工程(c’)は、上述した工程(c)に対応し、同様の操作を行うことができる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は、これら実施例により何ら限定されるものでなく、本発明の範囲を逸脱しない範囲で適宜変更させてもよい。なお、実施例及び検討実験中での生成物の確認、物性測定に用いた機器及び装置類は次の通りである。
プロトン核磁気共鳴スペクトル(1H−NMR)
カーボン・サーティーン核磁気共鳴スペクトル(13C−NMR);
機器:AVANCE III500型(500MHz)(ブルカーバイオスピン社製)
[検討実験]
<指標物質の決定>
第1.コーヒー抽出液の官能評価
まず、製造時に色彩選別機(カラーソーター)で除外されるコーヒー欠陥豆と、製造に使用される程度の品質のコーヒー標準豆とを準備した。
コーヒー標準豆がL値21程度になる焙煎条件(焙煎条件:コーヒー生豆 300g、温度 248℃、時間 220秒、Fan Speed 39.6、焙煎機 ジェットローストJB−10型(荒川製作所製))にて、焙煎された各コーヒー豆をブレードグラインダー(コーヒーメーカーHCS−40AM(東芝製):レギューラー設定)にて粉砕し、各粉砕物10gを夫々、市販のドリッパーに設置した市販のコーヒーフィルター(イデシギョー株式会社製)に入れて、各粉砕物の上から熱水150mlを注ぎ欠陥豆から抽出したコーヒー抽出液(以下、欠陥コーヒー抽出液と呼ぶ)及び標準豆から抽出したコーヒー抽出液(以下、標準コーヒー抽出液と呼ぶ)を作製した。
専門パネル3名が、鼻を閉じた状態で欠陥コーヒー抽出液及び標準コーヒー抽出液を夫々官能評価を行った結果、欠陥コーヒー抽出液は、標準コーヒー抽出液に比べて強い苦渋味と強く後に残る渋味(異味)が感じられた(表1参照)。
表1 KA II添加熱水抽出液の官能評価結果
Figure 2013096895
第2.熱水抽出液の調製
上述の標準豆及び欠陥豆の粉砕物10gと蒸留水75mlとを200mlナス型フラスコに添加し、オイルバス中で95℃、20分間撹拌しながら抽出を行い流水で急冷した。その後、蒸留水を用いて100mlとし、吸引濾過を行い以下の実験に用いる標準コーヒー抽出液及び欠陥コーヒー抽出液を調製した。
第3.欠陥豆特有の強い苦渋味と後に残る渋味(異味)に対応する成分の解析
(1)コーヒー抽出液の分子量分画(限外濾過)による分画
前記第2.で得られた標準コーヒー抽出液および欠陥コーヒー抽出液をそれぞれ濾過分子量の異なる4種類の遠心式限外濾過ユニット(Amicon Ultra-15 : 3K、10K、50K、100K ミルポア社製)を用いて、日立微量高速遠心機CF16RXII型の装置で順次限外濾過を行い、100kDa以上、50kDa〜100kDa、10kDa〜50kDa、3kDa〜10kDa、3kDa以下の5つの画分を得た。
この5つの画分をそれぞれ前記第2.で得られた抽出液と等濃度になるよう蒸留水で希釈・定容し、3名の専門パネルにて官能評価を行った。専門パネルが鼻を閉じた状態で官能評価を行った結果、欠陥コーヒー抽出液にて確認された異味は3kDa以下の画分に含まれていることが確認された(表2参照)。

表2 限外濾過画分の官能評価結果
Figure 2013096895
「−」は、ほぼ無味を示す。
(2)ゲル濾過クロマトグラフィー(GFC)分画
上記の官能評価の結果から、3kDa以下の画分について更に分画を進めることとした。
前記(1)で得られた標準コーヒー抽出液及び欠陥コーヒー抽出液の3kDa以下の画分を凍結乾燥し、蒸留水で溶解後、この濃縮液を用いてゲル濾過クロマトグラフィー(GFC)を行った。3kDa以下の画分について以下の条件にて10画分に分画した。
〔ゲル濾過クロマトグラフィー条件〕
カラム:Sephadex LH−20(内径30mm×長さ500mm、GEヘルスケア・ジャパン株式会社製)
溶媒:蒸留水
流速:2.0ml/分
前記上記(1)と同様に、得られた10画分の溶液を各々凍結乾燥し、濃縮液を得て、当初の熱水抽出液(上記第2.で得られた熱水抽出液)と等濃度になるように蒸留水を用いて希釈・定容し、3名の専門パネルにて官能評価を行った。専門パネルが鼻を閉じた状態で官能評価を行った結果、粉っぽく舌がざらつく感覚(雑味と思われる感覚)は欠陥コーヒー抽出液のGFC画分のNo.4からNo.6画分に含まれており、滑りを伴う不快な変敗的呈味はGFC画分のNo.4画分に含まれている事が確認されたが、上記第1.の欠陥コーヒー抽出液の官能評価にて確認された異味成分は全ての画分において明確には確認されなかった(表3参照)。

表3 ゲル濾過クロマトグラフィー画分の官能評価結果
Figure 2013096895
( )内は、呈味強度を5段階で示した数値
なお、呈味強度とは、5点評価(5段階評価)にて官能評価を行った際の専門パネル全員の平均値を示し、以下同様に用いる。
標準コーヒー抽出液、及び、欠陥コーヒー抽出液のGFC画分のNo.1〜3、5〜10画分の混合溶液と、標準コーヒー抽出液、及び、欠陥コーヒー抽出液のGFC画分のNo.4画分とをそれぞれ混ぜ合わせた4通りの試料を当初の熱水抽出液と等濃度になるように蒸留水を用いて調製し、3名の専門パネルが鼻を閉じた状態で官能評価を行った結果、欠陥コーヒー抽出液のGFC画分のNo.4画分を添加することにより、上記第1.において欠陥コーヒー抽出液の官能評価にて知覚した異味が生じることが確認された(表4参照)。

表4 ゲル濾過クロマトグラフィー画分のNo.4画分の官能評価結果
Figure 2013096895
以上の結果から、異味に寄与する成分は欠陥コーヒー抽出液のGFC画分のNo.4画分に含まれていることが示されたが、欠陥コーヒー抽出液のGFC画分のNo.4画分だけでは欠陥コーヒー抽出液の官能評価にて確認された異味は呈さなかったことから、欠陥コーヒー抽出液のGFC画分のNo.4画分に含まれる成分と他の画分に含まれる成分との相乗効果により異味を呈するものと推定された。
(3)分取HPLC分画:ODS−2カラム
上記の官能評価の結果から、欠陥コーヒー抽出液のGFC画分のNo.4画分について更に分画を進めることとした。
前記(2)で得られた標準コーヒー抽出液および欠陥コーヒー抽出液のGFC画分のNo.4画分の濃縮液に対し、下記に示す条件にて分取HPLC(SHIMADZU分取HPLC LC−10A series)を10回実施し、8画分を得た。
〔HPLC条件〕
カラム:Inertsil ODS-2(内径10.0mm×長さ250mm、粒子径5μm、ジーエルサイエンス株式会社製)
溶媒:A:0.1%ギ酸、B:アセトニトリル
0分〜80分/B:10%→50%(0分〜80分の間で徐々にBの濃度を10容積%〜50容積%にした)
流速:1.0ml/分
温度:40℃
試料量:200μl
検出器:DAD(190nm−400nm)
分取:10分間隔
官能評価を実施するため、得られた各画分をそれぞれエバポレーターで約5ml程度まで濃縮し、C18固相抽出カートリッジ(Bond elut−C18、1g 6ml/Varian社製)を用いてギ酸を除去後、メタノールにて溶出し、エバポレーターで溶媒を留去した。その後、蒸留水3mlに溶解し、各ODS−2画分の濃縮液を調製した。
〔C18固相抽出条件固相抽出条件:流速1drop/2秒〕
コンディシュニング:メタノール 6ml
洗浄:蒸留水 12ml
試料添加:試料(HPLC溶離液) 全量
洗浄:蒸留水 12ml
溶出:メタノール 6ml
上記(1)と同様に、得られた8画分を当初の熱水抽出液と等濃度になるように蒸留水を用いて希釈し、3名の専門パネルが鼻を閉じた状態で官能評価を行った結果、全ての画分において、呈味強度が弱く、欠陥コーヒー抽出液の官能評価にて確認された異味は全ての画分において確認されなかった(表5参照)。

表5 ODS−2画分の官能評価結果
Figure 2013096895
( )内は、呈味強度を5段階で示した数値
そこで、上記(2)で得られた標準コーヒー抽出液、及び、欠陥コーヒー抽出液のGFC画分のNo.1〜3、5〜10画分の混合溶液に、欠陥コーヒー抽出液のGFC画分のNo.4画分について更に分画したODS−2のNo.1〜8の画分をそれぞれ添加し、当初の熱水抽出液と等濃度になるように蒸留水を用いて調製し、3名の専門パネルが鼻を閉じた状態で官能評価を行った。その結果、ODS−2のNo.5画分を添加した場合にのみ異味が確認され、ODS−2のNo.5画分に異味に寄与する成分が含まれていることが確認された。また、GFC画分の場合と同様に、ODS−2のNo.5画分単独では異味を呈さず、他のGFC画分との相乗効果により異味を呈することが示された(表6参照)。

表6 ODS−2画分(No.1〜8;GFC画分のNo.4画分由来)とGFC画分のNo.1〜3、5〜10画分の混合溶液との混合による官能評価結果
Figure 2013096895
( )内は、呈味強度を5段階で示した数値
(4)分取HPLC分画:ODS−3カラム
上記の官能評価の結果から、ODS−2分画のNo.5画分について更に分画を進めることとした。
前記(3)で得られた標準コーヒー抽出液、及び、欠陥コーヒー抽出液のODS−2分画のNo.5画分の濃縮液に対し以下の条件にてHPLC分析(HP1100series)を実施し、クロマトグラムで差異を確認した。その結果、欠陥コーヒー抽出液のODS−2分画のNo.5画分に特徴的な2つのピークが観測された。
○ ピークA(320nm検出、保持時間:11.2分)
標準豆に比べ欠陥豆に1.5倍程度多く含まれていたピーク
○ ピークB(ELSD検出、保持時間:19.0分)
欠陥豆のみに確認されたピーク
〔HPLC条件〕
カラム:Inertsil ODS-3(内径4.6mm×長さ250mm、粒子径5μm、ジーエルサイエンス株式会社製)
溶媒:A:0.1%ギ酸、B:アセトニトリル
0分〜40分/B:15%→25%(0分〜40分の間で徐々にBの濃度を15容積%〜25容積%にした)
流速:0.85ml/分
温度:40℃
試料量:50μl
検出器:DAD(190nm−400nm)、ELSD
上記の2つのピーク(ピークA、ピークB)のどちらが異味貢献物質であるかを確認するため、前記(3)で得られた欠陥コーヒー抽出液のODS−2分画のNo.5の濃縮液に対し、上記と同条件にて分取HPLC(SHIMADZU分取HPLC LC−10A series)を20回実施し、それぞれのピークに相当するODS−3のA画分とB画分を得た。得られた各画分をそれぞれエバポレーターで濃縮し、C18固相抽出カートリッジ(Bond elut−C18、1g 6ml/Varian社製)を用いてギ酸を除去後、メタノールにて溶出し、エバポレーターで溶媒を留去した。その後、蒸留水1mlに溶解し、各ODS−3画分の濃縮液を調製した。
欠陥コーヒー抽出液のGFC画分のNo.1〜3、5〜10画分の混合溶液に、欠陥コーヒー抽出液のODS−3のA画分及びB画分をそれぞれ添加し、当初の熱水抽出液と等濃度になるように蒸留水を用いて調製し、3名の専門パネルが鼻を閉じた状態で官能評価を行った。その結果、混合溶液での官能評価によってODS−3のA画分を添加した抽出液からは不快な舌のしびれるような刺激、ODS−3のB画分を添加した抽出液からは強い渋味が確認された(表7参照)。

表7 ODS−3画分(ODS−2分画のNo.5画分由来)とGFC画分のNo.1〜3、5〜10画分の混合溶液との混合による官能評価結果
Figure 2013096895
( )内は呈味強度を5段階で示した数値
以上の結果より、欠陥コーヒー抽出液特有の呈味である強い苦渋味と後に残る渋味(異味)に寄与する成分は、ODS−3のB画分に含まれていることが判明した。なお、ODS−3のA画分を添加したものは、舌に刺激はあるものの欠陥コーヒー抽出液特有の呈味である渋味が感じられなかったため、ODS−3のA画分は欠陥コーヒー抽出液における異味に寄与する成分ではないと判断した。
(5)LCMS−IT−TOF分析
上記(4)で分取したODS−3のB画分について、液体クロマトグラフィー/質量分析(LCMS−IT−TOF)を実施した。
〔LCMS−IT−TOF条件〕
カラム:Inertsil ODS-3 (4.6×250mm, 5μm、ジーエルサイエンス株式会社製)
溶媒:A:0.1%ギ酸、B:アセトニトリル
0分〜40分/B:15%→25%(0分〜40分の間で徐々にBの濃度を15容積%〜25容積%にした)
流速:0.2ml/分
イオン化法:ESI(Negative mode)
測定範囲:m/z 150〜1200
その結果、このODS−3のB画分の化合物の精密質量は482.2420(組成式:C25389と推定)であった。また、MS/MS分析の結果、分子量180の糖の断片が確認されたため、この化合物は配糖体であることが推定された。この化合物を目的化合物として、以下特定を試みた。
(6)目的化合物の特定
前述の分取方法では、目的化合物を大量に分取することができない為、以下の方法にて目的化合物の大量分取を行った。
(a)80%メタノール抽出液の調製
目的化合物は、メタノールに可溶であった為、熱水抽出より低分子夾雑成分が少ないメタノール抽出により抽出液の調製を行った。500mlビーカーに欠陥豆粉砕物50gと、80%メタノール375mlとを添加し、室温で一晩撹拌しながら抽出を行った。その後、吸引濾過を行い、80%メタノールによる欠陥コーヒー抽出液を調製した。
(b)合成吸着剤HP−20分画
欠陥コーヒー抽出液(80%メタノール抽出液である)からエバポレーターで溶媒を留去した後、凍結乾燥を行い、蒸留水約20mlに転溶した。遠心分離(日立微量高速遠心機:CF16RXII型:1600×g、30分間)により不溶性残渣を除去し、その上清を合成吸着剤HP−20(カラムφ20×250mm、樹脂250mm、三菱化学株式会社製)に全量負荷した。2bed volume(約120ml)の蒸留水にて洗浄後、0、20、40、60、100%メタノールを用いてそれぞれ順次2bed volume(約120ml)ずつ溶出を行い、それぞれ300mlナスフラスコに回収した。
得られた0、20、40、60、100%メタノール溶出画分からそれぞれエバポレーターにて溶媒を留去した後、凍結乾燥を行い、蒸留水に転溶し各画分の濃縮液を得た。上記(4)と同条件にてHPLCにより各画分中の目的化合物を確認した結果、目的化合物は標準コーヒー抽出液:60%メタノール画分、欠陥コーヒー抽出液:40%、60%メタノール画分に含まれていることが示唆された。
(c)分取HPLC分画:ODS−3カラム
合成吸着剤HP−20による分画により分画された目的化合物を含む濃縮画分(欠陥コーヒー抽出液:40%、60%メタノール画分)に対しODS−3カラムを用いて以下の条件にて分取HPLC(SHIMADZU分取HPLC LC−10A series)を15回実施し、目的化合物の溶液をそれぞれ約45ml得た。
得られた画分からエバポレーターにて溶剤を留去した後、C18固相抽出(Bond elut−C18、1g 6ml/Varian社製)を用いてギ酸を除去後、メタノールにて抽出し、エバポレーターにて溶剤を留去した。その後、凍結乾燥を行い、約42mgの目的化合物を得た。
〔HPLC条件〕
カラム:Inertsil ODS-3(内径10.0mm×長さ250mm、粒子径5μm、ジーエルサイエンス株式会社製)
溶媒:A:0.1%ギ酸、B:アセトニトリル
0分〜40分/B:15%→25%(0分〜40分の間で徐々にBの濃度を15容積%〜25容積%にした)
流速:3.0ml/分
温度:40℃
試料量:200μl
検出器:DAD(190nm−400nm)
分取:29.2〜30.2分
〔C18固相抽出条件固相抽出条件:流速1drop/2秒〕
コンディショニング:メタノール 6ml
洗浄:蒸留水 12ml
試料添加:試料(HPLC溶離液) 全量
洗浄:蒸留水 12ml
溶出:メタノール 6ml
(d)LCMS−IT−TOF分析
分取した目的化合物に対し、上記(5)と同条件にてLCMS−IT−TOF分析を実施した結果、この目的化合物の精密質量は、482.2347(組成式:C19263と推定)であることが示唆された。
(e)1H−NMR、13C−NMR解析
1H−NMR、13C−NMR結果と文献値(Drymaria Arenarides. Phytochemistry. 1988, Vol.27, No.5, pp.1532-1534)と比較し、LCMS−IT−TOF分析結果及び1H,1H−COSY、HMQC、HMBC解析結果から、欠陥豆特有の特徴的呈味成分に寄与する目的化合物は、2-O-β-D-glucopyranosyl atractyligenin(KA II, m.w.482)である事が示唆された。
上記より、欠陥豆特有の異味に寄与している化合物として、KA II(m.w.482)が特定された。本化合物は、単独では異味を呈さず、コーヒー中の他成分との相乗効果により、異味を呈することが判明した。
示唆された化合物KA II(m.w.482)は下記式
Figure 2013096895
(1)
で表される化合物であり、上述したように、コーヒー中に含まれるカウレン系ジテルペン配糖体の一つとして知られている。
[実施例]
第1.コーヒー熱水抽出液、並びに、コーヒー生豆及びコーヒー焙煎豆のKA IIの定量
(1)熱水抽出液の調製(コーヒー焙煎豆、n=3)
焙煎(焙煎条件:コーヒー生豆 300g、温度 248℃、時間 220秒、Fan Speed 39.6、焙煎機 ジェットローストJB−10型(荒川製作所製))したコーヒー標準豆、及び、コーヒー欠陥豆を粉砕した粉砕物10gと蒸留水75mlとを200mlナス型フラスコに添加し、オイルバス中で95℃、20分間撹拌しながら抽出を行い、流水で急冷した。その後、吸引濾過を行い、コーヒー熱水抽出液を調製した。
(2)80%メタノール抽出液の調製(コーヒー生豆及びコーヒー焙煎豆、n=3)
コーヒー豆(生豆及び焙煎豆)中のKA II含量を定量する為、80%メタノール抽出液を調製した。
標準豆及び欠陥豆を焙煎せずにコーヒー生豆のまま粉砕した粉砕物10gと、80%メタノール75mlとを500mlビーカーに添加し、室温で一晩撹拌しながら抽出を行った。その後、吸引濾過を行い、生豆の標準コーヒー抽出液及び生豆の欠陥コーヒー抽出液(夫々80%メタノール抽出液である)を調製した。
また、同様に、焙煎した標準豆及び欠陥豆から80%メタノール抽出液を調製した。
(3)KA IIの定量
液体クロマトグラフ質量分析計(LC-MS)を用いて、標準添加法によって各抽出液中のKA II含量を定量した結果、標準豆の熱水抽出液中にKA IIが15.0mg/100ml、欠陥豆の熱水抽出液中にはKA IIが24.3mg/100ml含まれていることが示された。また、80%メタノール抽出液中のKA II濃度から計算して、コーヒー焙煎豆においては、欠陥豆は標準豆の2.1倍量のKA IIを含んでいることが示された。また、コーヒー生豆にも少量のKA IIが含まれていることが示された(表8参照)
〔LC-MS条件〕
装置:SHIMADZU HPLC LC-10A series、LCMS-2010EV(株式会社島津製作所製)
カラム:Inertsil ODS-3 (4.6×250mm, 5μm)(ジーエルサイエンス株式会社製)
溶媒:A:0.1%ギ酸、B:アセトニトリル
0分〜40分/B:15%→25%(0分〜40分の間で徐々にBの濃度を15容積%〜25容積%にした)
流速:0.85ml/分
温度:40℃
試料液:10μl
イオン化法:ESI(Negative mode)
SIM:481.25

表8 熱水抽出液及びコーヒー豆中のKA II定量結果
Figure 2013096895
焙煎豆中のKA IIは標準豆中に約1140ppm、欠陥豆中に約2400ppm含まれ、欠陥豆には標準豆の約2.1倍量のKA IIが含まれている事が示唆された。以上の結果より、欠陥豆の熱水抽出液を飲んだときに感じられる欠陥豆特有の異味(強い苦渋味と後に残る渋味)にはKA IIが関与しており、このKA IIの含有量の差が呈味に影響を与えていることが証明され、KA IIを指標物質として用いることで、コーヒー豆の合否を判定でき、その抽出液の苦渋味の評価できることが証明された。
第2.KA IIの含有量がコーヒー抽出液の苦渋味に影響することの実証
<官能評価による呈味確認>
上述の熱水抽出液の調整方法と同様の方法にてコーヒー標準豆及びコーヒー欠陥豆の熱水抽出液を調整し、この熱水抽出液に各々KA IIが1.6倍になるようKA IIを添加し、パネル5名にて鼻を閉じた状態で官能評価を行った。その結果、KA IIを添加することにより、標準豆及び欠陥豆の熱水抽出液に各々欠陥豆特有の苦渋味(異味)が生じることが確認され、KA IIが欠陥豆特有の異味に寄与している事が確認された(表9参照)。

表9 KA II添加熱水抽出液の官能評価結果
Figure 2013096895
第3.コーヒー豆の集団における欠陥豆(欠点豆)の含有量と、KA IIの含有量と、コーヒー抽出液の品質との間に相関関係があることの実証
上記と同様に製造時に色彩選別機(カラーソーター)で除外されるコーヒー欠陥豆と、製造に使用される程度の品質のコーヒー標準豆とを準備し、コーヒー標準豆がL値21程度になる焙煎条件(焙煎条件:コーヒー生豆 200g、温度 220℃、時間 21分、焙煎機 電動焙煎機GENECAFE((株)Genesis製))にて、焙煎された各コーヒー豆を用いて以下の試験を実施した。
この実験においては、欠点豆を含むコーヒー豆として、擬似的に欠点豆の含有量が0、20、40、60、80又は100%となるようにBrazil 4/5に欠点豆を混合したコーヒー豆の集団を調整し、上述の熱水抽出液の調整方法と同様の方法にて熱水抽出液を調製後、上記と同様の方法でKA II量の測定及び官能評価を行った。なお、本実施例で使用したBrazil 4/5は、上述の標準豆よりも格付けの高い品質のコーヒー豆である。結果を表10に示す。
表10に示されるように、コーヒー豆における欠陥豆(欠点豆)の含有量と、KA IIの含有量と、コーヒー抽出液の品質との間には相関関係が確認され、KA II量の増加に比例して苦味及び渋味が高くなることが確認された。
Figure 2013096895
この結果より、KA IIを指標物質として用いることで、コーヒー豆の合否やその品質を判定でき、その抽出液の苦渋味を評価できることが確認された。
本発明は、飲料として摂取されるコーヒー抽出液に含まれる成分と呈味、特に苦渋味との関係を客観的に示すことができる評価方法を提供できる。

Claims (12)

  1. 下記式(1)の化合物を指標物質として用いる、コーヒー豆の品質評価方法。
    Figure 2013096895

    (1)
  2. (a)コーヒー標準豆及びコーヒー被験豆夫々を粉砕し、その粉砕物から標準コーヒー抽出液及び被験コーヒー抽出液を調製する工程と、
    (b)標準コーヒー抽出液中の式(1)の化合物の含有量及び被験コーヒー抽出液中の式(1)の化合物の含有量を測定する工程と、
    (c)標準コーヒー抽出液中の式(1)の化合物の含有量と、被験コーヒー抽出液中の式(1)の化合物の含有量とを比較する工程と、
    を含む、請求項1に記載の品質評価方法。
  3. 前記工程(c)において、
    (被験コーヒー抽出液中の式(1)の化合物の含有量)/(標準コーヒー抽出液中の式(1)の化合物の含有量)の質量比を評価値として使用する、請求項2に記載の品質評価方法。
  4. 前記工程(b)において、
    液体クロマトグラフ質量分析(LC-MS)によってコーヒー抽出液中の式(1)の化合物の含有量を測定する請求項2又は3に記載の品質評価方法。
  5. 前記工程(a)において、
    コーヒー標準豆及びコーヒー被験豆夫々を焙煎してから粉砕する、請求項2〜4のいずれかに記載の品質評価方法。
  6. コーヒー豆がアラビカ種である請求項1〜5のいずれかに記載の品質評価方法。
  7. 下記式(1)の化合物を指標物質として用いる、コーヒー抽出液の品質評価方法。
    Figure 2013096895

    (1)
  8. (a’)コーヒー標準豆及びコーヒー被験豆夫々を焙煎し、粉砕し、その粉砕物から標準コーヒー抽出液及び被験コーヒー抽出液を調製する工程と、
    (b’)標準コーヒー抽出液中の式(1)の化合物の含有量及び被験コーヒー抽出液中の式(1)の化合物の含有量を測定する工程と、
    (c’)標準コーヒー抽出液中の式(1)の化合物の含有量と、被験コーヒー抽出液中の式(1)の化合物の含有量とを比較する工程と、
    を含む、請求項7に記載の品質評価方法。
  9. 前記工程(c’)において、
    (被験コーヒー抽出液中の式(1)の化合物の含有量)/(標準コーヒー抽出液中の式(1)の化合物の含有量)の質量比を評価値として使用する、請求項8に記載の品質評価方法。
  10. 前記工程(b’)において、
    液体クロマトグラフ質量分析(LC-MS)によってコーヒー抽出液中の式(1)の化合物の含有量を測定する請求項8又は9に記載の品質評価方法。
  11. コーヒー豆がアラビカ種である、請求項7〜10のいずれかに記載の品質評価方法。
  12. 下記式(1)の化合物を含有することを特徴とするコーヒー豆及びコーヒー抽出液の品質評価指標物質。
    Figure 2013096895

    (1)
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2023181595A1 (ja) * 2022-03-22 2023-09-28 株式会社島津製作所 味覚情報提供方法およびプログラム
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