JP2013096732A - 分析方法および分析装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】質量分析計を用いた分析方法および分析装置において、薬物と薬物代謝物とが混在する検体中の薬物成分を精度よく測定する。
【解決手段】薬物と、薬物が薬物代謝酵素により抱合体と抱合して代謝された薬物代謝物と、が混在する検体に入射電圧を印加して質量分析部に導入し、検体における薬物の濃度を分析する分析方法であって、入射電圧を変化させながら、薬物代謝物からの抱合体の解離状態をモニタリングするモニタリング工程S301と、モニタリング工程S301における解離状態に基づいて、入射電圧を選択する選択工程S302と、選択工程S302で選択された入射電圧を検体に印加して、検体における薬物の濃度を測定する濃度測定工程S305と、を含む。
【選択図】図5

Description

本発明は、質量分析計を用いた分析方法および分析装置に関し、特に、薬物と、薬物が薬物代謝酵素によって代謝された薬物代謝物と、が混在する検体中の薬物成分の分析に用いる分析方法および分析装置に関する。
従来、検体中に存在する薬物成分を分析する技術が知られている。このような検体分析の対象となる薬物の一例として、例えば、ミコフェノール酸(Mycophenolic acid,MPA)が挙げられる。MPAは、細胞の核酸合成を阻害する代謝拮抗薬であるミコフェノール酸モフェチル(Mycophenolate mofetil,MMF)が、エステル加水分解酵素によって代謝されたものである。MMFは、抗ウイルス作用、抗腫瘍作用および免疫抑制作用を有しており、経口吸収されると速やかに活性型のMPAに代謝される。MPAの95%以上は、肝臓において、腸肝循環する不活性なミコフェノール酸のグルクロン酸抱合体(Mycophenolic acid glucuronide,MPAG)に代謝される。MPAからMPAGへの代謝は、薬物代謝酵素であるUDP−グルクロン酸転移酵素によって行われる。より詳細には、薬物代謝酵素であるUDP−グルクロン酸転移酵素によって、MPAに対して抱合体であるグルクロン酸が抱合されることによって、MPAGへと代謝される。
臨床現場においては、例えば、血中薬物モニタリング(Therapeutic Drug Monitoring,TDM)によって、MPAの血中濃度の管理が行われている。これは、腎移植におけるMPAの体内動態パラメータ(pharmacokinetics,PK)と急性拒絶反応の間に優位な関係が認められているためである。
MPAの定量分析方法としては、抗原抗体反応を用いた免疫学的な方法(例えば、非特許文献1参照)、および、LC/ESI−MS法(例えば、非特許文献2参照)が知られている。
LC/ESI−MS法は、検体を高速液体クロマトグラフィ(High Performance Liquid Chromatography,HPLC,LC)で分離したのち、エレクトロスプレーイオン化法(Electrospray Ionization,ESI)でイオン化し、質量分析計(Mass Spectrometer,MS)に導入して分析を行う分析方法である。
さらに近年、多様で不規則な臨床現場のニーズに対応するために、SPE/FIA−MS法(例えば、特許文献1参照)が用いられている。
SPE/FIA−MS法は、前処理に固相抽出(Solid Phase Extraction,SPE)を用いて精製を行ったのち、フローインジェクション分析法(Flow Injection Analysis,FIA)で質量分析計(MS)に導入して分析を行う分析方法である。SPE/FIA−MS法は、自動化装置によって自動化されており、多数の検体を同時並列処理することによってスループットの高速化を実現している。
特開2010−60474号公報
Oellerich M.、他、「Pharmacokinetic and Metabolic Investigations of Mycophenolic Acid in Pediatric Patients After Renal Transplantation: Implications for Therapeutic Drug Monitoring.」、Ther. Drug. Monit. 、(米国)、2000年、第22巻、第1号、p20−26 R. DiFrancesco 、他、「Simultaneous determination of corisol, dexamethasone, methylprednisolone, prednisone, prednisolone, mycophenolic acid and mycophenolic acid glucuronide in human plasma utilizing liquid chromatography-tandem mass spectrometry」、J. Chromatogr. B 、(オランダ)、2007年、第859巻、第1号、p.42−51 Z.Yan、他、「Cone voltage induced in-source dissociation of glucuronides in electrospray and implications in biological analyses」、Rapid Commun. Mass Spectrom. 、(英国)、2003年、第17巻、第13号、p.1433−1442
一般に、分析対象の検体中には、薬物と、薬物が薬物代謝酵素によって代謝された薬物代謝物と、が混在する。即ち、MMFが投与された患者の検体中には、薬物としてのMPAと、MPAが代謝された薬物代謝物としてのMPAGと、が存在する。
特許文献1に記載のSPE/FIA−MS法で検体中のMPAの測定を行った場合、MPAと、その代謝物であるMPAGと、が同時に質量分析計に導入されることになる。また、質量分析計において、イオン化部(大気圧状態)から質量分析部(真空状態)へと検体を導入するために印加する入射電圧によって、MPAGからグルクロン酸が解離してMPAが生成される。このため、質量分析部の検出器に到達するMPAは、「本来の検体中に存在するMPA」と、「入射電圧によってMPAGから生成されたMPA」と、が混在することになる。このため、特許文献1に記載の方法では、MPAの定量精度および信頼性が低いという問題点がある。
非特許文献3には、質量分析部への導入の際に生じるMPAGからのグルクロン酸の解離の度合いは、入射電圧によって変動することが記載されており、入射電圧の値を適宜選択することによってMPAGからのグルクロン酸の解離を抑え、検体中に本来存在するMPAの定量を可能としている。しかしながら、選択した入射電圧の値によっては、本来の検体中に存在するMPAの質量分析部への導入効率が低下する可能性がある。前記のようにMPAの質量分析部への導入効率が低下したとしても、検体中の濃度がμg/mLオーダのタンパク質結合型MPAを分析する場合には影響はない。一方、検体中の濃度がng/mLオーダの遊離型MPAを分析する場合には、前記の理由によりMPAの質量分析部への導入効率が低下すると、イオン強度が足りず、必要な検出限界値が得られないという問題点がある。
また、質量分析計の使用に伴って、質量分析部の導入部分に設けられているカーテンプレートが検体によって汚染される。この汚染度合いによって、入射電圧が一定であっても、MPAGに加えられるエネルギ量は変動し、MPAGからグルクロン酸が解離する度合いも変動する。このため、初期に設定した一定の入射電圧の設定値で分析を続けると、MPAの定量精度および信頼性が低くなってしまうという問題点がある。
非特許文献2に記載のLC/ESI−MS法では、原理的にMPA、MPAGおよび内部標準物質が分離されるので、これらが同時に質量分析部に導入されることはない。また、質量分析部への導入時にMPAGからグルクロン酸が解離してMPAが生成されたとしても、本来のMPAとは見分けがつき、MPAの定量に支障をきたすことはない。しかしながら、LC/ESI−MS法は、クロマトグラフィによる分離操作を必要とするために煩雑であり、スループットが低い。また、LC/ESI−MS法では、一度に多くの検体を分析することができないという問題点がある。
非特許文献1に記載の抗原抗体反応を用いた免疫学的な方法では、原理的に薬物代謝物(例えば、ミコフェノール酸アシルグルクロン酸抱合体(MPA−AcylG))との交差反応によってMPAの定量値が高値を示すという問題点がある。
そこで、本発明は、前記した従来技術による問題点を鑑みてなされたものであり、質量分析計を用いた分析方法および分析装置において、薬物と薬物代謝物とが混在する検体中の薬物成分を精度よく測定する分析方法および分析装置を提供することを目的とする。
このような課題を解決するために、本発明は、薬物と、前記薬物が薬物代謝酵素により抱合体と抱合して代謝された薬物代謝物と、が混在する検体に入射電圧を印加して質量分析部に導入し、前記検体における前記薬物の濃度を分析する分析方法であって、前記入射電圧を変化させながら、前記薬物代謝物からの前記抱合体の解離状態をモニタリングするモニタリング工程と、前記モニタリング工程における解離状態に基づいて、前記入射電圧を選択する選択工程と、前記選択工程で選択された前記入射電圧を前記検体に印加して、前記検体における前記薬物の濃度を測定する濃度測定工程と、を含むことを特徴する分析方法である。
また、本発明は、薬物と、前記薬物が薬物代謝酵素により抱合体と抱合して代謝された薬物代謝物と、が混在する検体に入射電圧を印加して質量分析部に導入し、前記検体における前記薬物の濃度を分析する分析装置であって、前記入射電圧を変化させながら、前記薬物代謝物からの前記抱合体の解離状態をモニタリングするモニタリング手段と、前記モニタリング手段によってモニタリングされた解離状態に基づいて、前記入射電圧を選択する選択手段と、前記選択手段で選択された前記入射電圧を前記検体に印加して、前記検体における前記薬物の濃度を測定する検体測定手段と、を備えることを特徴する分析装置である。
本発明によれば、質量分析計を用いた分析方法および分析装置において、薬物と薬物代謝物とが混在する検体中の薬物成分を精度よく測定する分析方法および分析装置を提供することができる。
本実施形態に係るSPE/FIA−MS法を用いた分析装置の構成を示す斜視図である。 本実施形態に係る分析装置による分析処理の手順を示すフローチャートである。 本実施形態に係る分析装置の圧力負荷部の構成を模式的に示す説明図である。 本実施形態に係る分析装置のイオン化部および質量分析部の構成を模式的に示す説明図である。イオン化部および質量分析部の構成を模式的に示す説明図である。 本実施形態に係る分析装置による入射電圧調整処理の手順を示すフローチャートである。 本実施形態に係る分析装置の制御部の構成を模式的に示す説明図である。 入射電圧とMPAイオンのピーク面積の相関データの一例を示すグラフである。 入射電圧とMPAイオンのピーク面積の相関データの他の例を示すグラフである。
以下、本発明を実施するための形態(以下「実施形態」という)について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において、共通する部分には同一の符号を付し重複した説明を省略する。なお、本実施形態は、本発明の適用形態の一例を示したものであって、本発明の利用はこれに限定されるものではない。
本実施形態では、検体中の薬物を定量する方法の一例であるSPE/FIA−MS法を用いた分析装置100について説明する。SPE/FIA−MS法は、前処理に固相抽出(SPE)を用いて検体の精製を行ったのち、フローインジェクション分析法(FIA)で精製した前処理検体を質量分析計(MS)に導入し、定量を行う方法である。SPE/FIA−MS法を用いることによって、多様で不規則な臨床現場のニーズに臨機応変に対応することができる。また、SPE/FIA−MS法は自動化されており、多数の検体を同時並列処理することでスループットの高速化を実現している。
本実施形態では、検体中の分析対象となる薬物としてMPA、MPAが代謝された薬物代謝物としてMPAG、MPAの代謝酵素(薬物代謝酵素)としてUDP−グルクロン酸転移酵素を例にし、SPE/FIA−MS法を用いてMPAの正確な定量を行うための方法について記載する。なお、本実施形態に示す方法は、MPAに限らず、薬物代謝酵素によって代謝された薬物代謝物の存在下で、検体中の薬物を測定する場合も適応可能である。薬物代謝酵素としては、前記UDP−グルクロン酸転移酵素の他、例えば、シトクロムP450、ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ、アルコール脱水素酵素、アルデヒド脱水素酵素、モノアミンオキシダーゼ、キサンチンオキシダーゼなどの酸化還元酵素、UDP−スルホン酸転移酵素、糖転移酵素、グルタチオンレダクターゼなどの抱合酵素あるいは加水分解酵素などがある。
≪分析装置100の構成≫
図1は、本実施形態に係るSPE/FIA−MS法を用いた分析装置100の構成を示す斜視図である。
分析装置100は、検体搬送機構101、試薬保管部102、固相抽出カートリッジディスク103、試薬プローブ104、検体プローブ105、固相抽出カートリッジ保管部106、固相抽出カートリッジプローブ107、前処理検体プローブ108、圧力負荷部109、イオン化部110、質量分析部111および制御部112を備えている。
検体搬送機構101は、分析対象となる検体を検体プローブ105の稼働範囲まで搬送する。試薬保管部102は、分析に必要な各種試薬を保管する。固相抽出カートリッジディスク103は、検体から特定の成分を精製する固相抽出材(例えば、逆相固相抽出材である日立ハイテクノロジーズ社製「NOBIAS RP−SG1」)が充填された固相抽出カートリッジを保持し、無限軌道上で搬送する。試薬プローブ104は、試薬保管部102に保管された試薬を固相抽出カートリッジに吸引・吐出する。検体プローブ105は、検体搬送機構101で移送されてきた検体を固相抽出カートリッジディスク103に保持された固相抽出カートリッジに吸引・吐出する。固相抽出カートリッジ保管部106は、分析に用いる空の固相抽出カートリッジを保管する。固相抽出カートリッジプローブ107は、固相抽出カートリッジ保管部106に保管されている空の固相抽出カートリッジを、固相抽出カートリッジディスク103に移送する。
前処理検体プローブ108は、固相抽出カートリッジで精製した前処理溶液を吸引・吐出して、イオン化部110に導入する。圧力負荷部109は、固相抽出カートリッジディスク103に保持された固相抽出カートリッジに空気圧力を負荷する。イオン化部110は、導入された前処理溶液をイオン化する。質量分析部111は、イオン化部110でイオン化された薬物を分析する。制御部112は、装置各部の動作を制御し、かつモニタ機能および記憶機能を有する。
なお、固相抽出カートリッジディスク103の上方部は、無限軌道上に複数の固相抽出カートリッジを収容するディスクが備えられている。また、固相抽出カートリッジディスク103の下方部には、無限軌道上に複数の受容器を収容できるディスクを備えている。この上下2対からなるディスクは、同形状である必要はなく、回転軸も同位置でなくてもよい。固相抽出カートリッジディスク103の2つのディスクは、上方向からみると交差する構成になっているので、受容器へ前処理検体プローブ108がアクセスする際に上方のディスクが干渉することがない構成になっている。
また、試薬保管部102には、メタノール(和光純薬工業株式会社製 #138−14521)、蒸留水(和光純薬工業株式会社製 #046−16971)、MPAの内部標準物質としてMPA−d3(Mycophenolic acid-d3)(Toronto Research Chemicals Inc製 #M831502)、および後述する各種薬物が保管されている。MPA−d3は、メタノールで希釈することで2000ng/mLに調製されている。
≪分析装置100による分析処理≫
次に、分析装置100による分析処理の手順について、図2を用いて説明する。
図2は、本実施形態に係る分析装置100による分析処理の手順を示すフローチャートである。
分析装置100による分析処理は、検体搬送工程S201、検体前処理工程S202、前処理検体搬送工程S203、イオン化工程S204、質量分析工程S205からなり、分析装置100は、前記した順番で各工程を行う。以下、各工程の詳細な手順について説明する。
<検体搬送工程S201>
検体搬送工程S201では、検体搬送機構101で移送されてきた検体を、検体プローブ105の駆動範囲まで移動させる。検体としては、例えば、血液、血清、血漿、尿、唾液および細胞組織などの生体由来サンプルを用いる。
<検体前処理工程S202>
検体前処理工程S202では、固相抽出カートリッジディスク103上で検体の前処理を行う。検体前処理工程S202は、固相抽出カートリッジ搬送工程S2021、コンディショニング工程S2022、平衡化工程S2023、検体添加工程S2024、洗浄工程S2025、溶出工程S2026からなり、分析装置100は、前記した順番で各工程を行う。
<固相抽出カートリッジ搬送工程S2021>
固相抽出カートリッジ保管部106に保管されている空の固相抽出カートリッジを、固相抽出カートリッジプローブ107によって固相抽出カートリッジディスク103に移送する。
<コンディショニング工程S2022>
まず、固相抽出カートリッジディスク103を回転させることによって、固相抽出カートリッジを試薬プローブ104の駆動範囲に搬送する。次に、試薬プローブ104が試薬保管部102に保管されたメタノール200μLを吸引し、固相抽出カートリッジに添加する。つづいて、固相抽出カートリッジディスク103を回転させることによって、固相抽出カートリッジを圧力負荷部109の駆動範囲に搬送する。圧力負荷部109は、固相抽出カートリッジに対して加圧を行う。加圧後、固相抽出カートリッジ内の溶出液を廃液タンク(図示省略)に排出する。
ここで、圧力負荷部109の構成について図3を用いて説明する。
図3は、本実施形態に係る分析装置100の圧力負荷部109の構成を模式的に示す説明図である。
圧力負荷部109は、気体の吸引および加圧を行うシリンジポンプ1092、シリンジポンプ1092に吸引する気体中の夾雑物を取り除くエアフィルタ1095、加圧された気体を固相抽出カートリッジ1091に送り込む接合部1097、シリンジポンプ1092・エアフィルタ1095・接合部1097間の流路の切り換えを制御する3方電磁弁1096、3方電磁弁1096と接合部1097との間に位置して接合部1097へ送り込まれる気体の流量を計測する流量計1093、および3方電磁弁1096と接合部1097との間に位置して接合部1097へ送り込まれる気体の圧力を計測する圧力計1094によって構成される。
圧力負荷部109の動作としては、まず、シリンジポンプ1092とエアフィルタ1095側の3方電磁弁1096が開き、接合部1097側の3方電磁弁1096が閉じた状態でシリンジポンプ1092を印圧方向に吸引する。次に、シリンジポンプ1092と接合部1097側の3方電磁弁1096が開き、エアフィルタ1095側の3方電磁弁1096が閉じた状態でシリンジポンプ1092を加圧することによって、接合部1097へ気体が押し出され、固相抽出カートリッジ1091の加圧が行われる。
図2の説明に戻り、平衡化工程S2023について説明する。
<平衡化工程S2023>
固相抽出カートリッジディスク103を回転させることによって、固相抽出カートリッジを試薬プローブ104の駆動範囲まで搬送する。次に、試薬プローブ104を用いて、試薬保管部102に保管された蒸留水200μLを固相抽出カートリッジに添加する。つづいて、固相抽出カートリッジディスク103を回転させることによって、固相抽出カートリッジを圧力負荷部109の駆動範囲に搬送する。圧力負荷部109は、固相抽出カートリッジに対して加圧を行う。加圧後、固相抽出カートリッジ内の溶出液を廃液タンク(図示省略)に排出する。
<検体添加工程S2024>
固相抽出カートリッジディスク103を回転させることによって、固相抽出カートリッジを検体プローブ105の駆動範囲まで搬送する。次に、検体プローブ105を用いて、検体搬送機構101に保管された検体100μLを固相抽出カートリッジに添加する。つづいて、固相抽出カートリッジディスク103を回転させることによって、固相抽出カートリッジを試薬プローブ104の駆動範囲まで搬送する。試薬プローブ104を用いて、試薬保管部102に保管されたMPA−d3 5μLを固相抽出カートリッジに添加する。そして、固相抽出カートリッジディスク103を回転させることによって、固相抽出カートリッジを圧力負荷部109の駆動範囲に搬送する。圧力負荷部109は、固相抽出カートリッジに対して加圧を行う。加圧後、固相抽出カートリッジ内の溶出液を廃液タンク(図示省略)に排出する。
<洗浄工程S2025>
固相抽出カートリッジディスク103を回転させることによって、固相抽出カートリッジを試薬プローブ104の駆動範囲まで搬送する。試薬プローブ104を用いて、試薬保管部102に保管された蒸留水200μLを固相抽出カートリッジに添加する。次に、固相抽出カートリッジディスク103を回転させることによって、固相抽出カートリッジを圧力負荷部109の駆動範囲に搬送する。圧力負荷部109は、固相抽出カートリッジに対して加圧を行う。加圧後、固相抽出カートリッジ内の溶出液を廃液タンク(図示省略)に排出する。
<溶出工程S2026>
固相抽出カートリッジディスク103を回転させることによって、固相抽出カートリッジを試薬プローブ104の駆動範囲まで搬送する。試薬プローブ104を用いて、試薬保管部102に保管されたメタノール100μLを固相抽出カートリッジに添加する。次に、固相抽出カートリッジディスク103を回転させることによって、固相抽出カートリッジを圧力負荷部109の駆動範囲に搬送する。圧力負荷部109は、固相抽出カートリッジに対して加圧を行う。加圧によって固相抽出カートリッジを上方から下方に通液したメタノール溶出液は、前処理検体として固相抽出カートリッジディスク103の下方部のディスクに収容されている受容器で受けられる。
以上のような工程により、検体の前処理が完了する。
<前処理検体搬送工程S203>
固相抽出カートリッジディスク103を回転させることによって、受容器に収容された前処理検体を前処理検体プローブ108の駆動範囲まで搬送する。前処理検体プローブ108は、前処理検体10μLを吸引してイオン化部110へ導入する。
<イオン化工程S204および質量分析工程S205>
イオン化工程S204においては、イオン化部110で前処理検体中の成分をイオン化し、質量分析部111に前処理検体のイオンを導入する。質量分析工程S205においては、質量分析部111において前処理検体中のMPA濃度を分析する。
図4は、本実施形態に係る分析装置100のイオン化部110および質量分析部111の構成を模式的に示す説明図である。
質量分析部111は、スキマー1111、前段の四重極質量分析計1112、衝突室1113、後段の四重極質量分析計1114およびイオン検出器1115によって構成される。質量分析部111は、三連四重極型質量分析計を用いており、分析モードはSRM(Selected Reaction Monitoring)が用いられる。SRMでは、イオン化部110で検体をイオン化して、特定の質量対電荷比(質量/電荷比、m/z)のイオン種を前段の四重極質量分析計1112で親イオンとして選択し、この親イオンを衝突室1113で解裂させて解裂イオンを生成し、特定の質量対電荷比(質量/電荷比、m/z)の解裂イオンを後段の四重極質量分析計1114でプロダクトイオンとして選択し、イオン検出器1115で検出する。
なお、極質量分析計としては、四重極型質量分析計の他、イオントラップ型質量分析計、飛行時間型質量分析計およびフーリエ変換イオンサイクロン共鳴型質量分析計や、それらを2段に組合せMS/MSを行う質量分析計を用いてもよい。
≪質量分析部111における定量≫
次に、質量分析部111におけるMPAの定量方法について説明する。通常、SPE/FIA−MS法を用いた場合には、患者検体中のMPAとMPAGが同時に質量分析部111に導入される。ここで、イオン化部110(大気圧状態)から質量分析部111(真空状態)へ導入する際に、検体に対して入射電圧(Declistering Potential,DP)が印加される。この入射電圧DPのエネルギによって、MPAGからグルクロン酸が解離して二次的にMPAが生成される。このため、MPAGから生成したMPA(解離MPA)と患者検体中に本来から存在するMPAとが混在した状態で、質量分析部111の検出器に検体が到達することになる。この状態で定量を行うと、定量の精度および信頼性が低くなってしまう。
また、質量分析部111への導入部分にはカーテンプレートが設けられているが、このカーテンプレートの汚染度合いによって、一定の入射電圧DPであってもMPAGに加わるエネルギ量は変動し、MPAGから解離するグルクロン酸の比率も変動する。このため、初期に設定した一定の入射電圧DPの設定値で分析を続けると、MPAの定量の精度および信頼性が低くなってしまう。
このため、本実施形態に係る分析装置100では、図5に示すような処理によって質量分析部111への導入時における入射電圧DPを調整して、MPAの定量精度を向上させている。なお、図5に示す入射電圧調整処理は、例えば、ユーザが設定した所定の時間間隔で自動的に行ってもよいし、カーテンプレートの洗浄を行った後に自動的に行ってもよい。また、ユーザがカーテンプレートの汚染度合いを目視して必要に応じて手動で入射電圧調整処理を開始させてもよい。
図5は、本実施形態に係る分析装置100による入射電圧調整処理の手順を示すフローチャートである。
分析装置100による入射電圧調整処理は、モニタリング工程S301、入射電圧選択工程S302、キャリブレータ測定工程S303、評価工程S304、検体MPA濃度測定工程S305からからなり、分析装置100は、前記した順番で各工程を行う。以下、各工程の詳細な手順について説明する。
<モニタリング工程S301>
まず、分析装置100は、入射電圧DPを連続的に変化させながらMPAGからのグルクロン酸の解離度合い(グルクロン酸の解離率)をモニタリングする。本実施形態では、MPAを分析対象とする。即ち、モニタリング対象物質(MPAG)中のMPA量が増加すれば、MPAGからのグルクロン酸の解離率が上昇し、MPA量が減少すれば、MPAGからのグルクロン酸の解離率が低下していることがわかる。
標準物質としては、MPAG(Mycophenolic acid β-D-Glucuronide)(Toronto Research Chemicals Inc製 #M831522)のメタノール溶液(1000ng/mL)を用いる。MPAGのメタノール溶液は、試薬保管部102に保管されている。分析装置100は、試薬保管部102を回転させて、前処理検体プローブ108の駆動範囲に搬送し、前処理検体プローブ108がMPAGのメタノール溶液100μLを吸引して、イオン化部110に移送する。
イオン化部110は、MPAGメタノール溶液をイオン化して質量分析部111にイオンを導入する。このとき、入射電圧DPを、−40Vから0Vまで1V間隔で100msecごとに変化させながら分析を行う。そして、入射電圧DPの変化とMPAイオン量との相関を用いて、MPAGからのグルクロン酸の解離率をモニタリングする。
表1は、MPAを分析対象としたモニタリング時のMS分析条件パラメータの一例を示す表である。表1に示すような分析条件パラメータは、後述する制御部112の内部データベース1125(図6参照)に格納されている。表1に示した例では、MPA(分子量(Molecular Weight,MW):320.3)について、分析モード:SRM、トランジッション:MPAのQ1/Q3(Q1:前段の四重極質量分析計1112で選択する親イオンの質量対電荷比、Q3:後段の四重極質量分析計1114で選択するプロダクトイオンの質量対電荷比)319.3/191.3、EP(Entrance Potential):−5V、CE(Collision Energy):−50V、CXP(Collision Cell Exit Potential):0V、CUR(Curtain Gas):10L/min、CAD(Collision Gas):3L/min、IS(IonSpray Voltage):−4500V、TEM(Temperature):600℃、GS1(Nebulizer Gas):30L/min、GS2(Turbo Gas):30L/minに設定されている。
Figure 2013096732
このように測定されたMPAGからのグルクロン酸の解離率は、制御部112によって処理される。
図6は、本実施形態に係る分析装置100の制御部112の構成を模式的に示す説明図である。制御部112は、ユーザ入力部1121、コントロール部1120を構成する分析制御部1122およびデータ照合部1123、分析データ記憶部1124、内部データベース1125、装置インターフェース1126、データ処理部1127を備えている。制御部112は、装置インターフェース1126を介して、分析装置100の他の構成部と接続されている。
分析データ記憶部1124には、質量分析部111で取得された各成分イオンの質量対電荷比m/zおよびイオン種の強度などの情報が自動格納される。分析データ記憶部1124に格納された各イオン種の質量対電荷比m/zおよび強度は、分析制御部1122によって読み出され、データ処理部1127によってこれらのデータを互いに関連付けするデータ処理が行われる。図5のモニタリング工程S301で取得された各入射電圧DPおよびMPAイオンのスペクトルデータ(ピーク面積)についても、分析データ記憶部1124に自動的に格納され、データ処理部1127によって相関関係を取るデータ処理が行われる。
<入射電圧選択工程S302>
図4の説明に戻り、次に、分析装置100は、制御部112のデータ処理部1127によって、MPAGからのグルクロン酸の解離率が低い最適な入射電圧DPの値を選択する。具体的には、分析装置100は、モニタリング工程S301で取得した入射電圧DPとMPAイオンのピーク面積の相関データを用いて、MPAのピーク面積が最小になる入射電圧DPの値を選択する。
図7は、入射電圧とMPAイオンのピーク面積の相関データの一例を示すグラフである。図7のグラフにおいて、縦軸はMPAイオンのピーク面積、横軸は入射電圧DPを示す。なお、モニタリング工程S301では入射電圧DPを−40Vから0Vの範囲で測定を行っているが、参考のため図7にはこの範囲以外のデータについても示している。MPAイオンのピーク面積値は、入射電圧DPが−50Vで最大、入射電圧DPが−5Vで最小となっている。即ち、入射電圧DPを−5Vと選択することによって、MPAGからのグルクロン酸の解離率を最小とすることができる。即ち、入射電圧DPによってMPAGから生成されたMPAを最小とすることができる。
なお、図7には、入射電圧DPが−100V付近にもMPAイオンのピーク面積が小さくなる点が出現している。しかしながら、−100Vのような高い電位差を印加すると、質量分析部111への導入効率が低下する。このため、本実施形態では、質量分析部111への導入効率を考慮して、入射電圧DPの測定範囲を0Vに近い範囲(−40V〜0V)に設定し、その範囲内におけるMPAイオンのピーク面積が最小となる入射電圧DPの値を選択するようになっている。
データ処理部1127によって選択された入射電圧DPの値(図示の例では−5V)は、コントロール部1120を介して、内部データベース1125に格納されている分析条件パラメータの入射電圧DPの値を書き換える。なお、本実施形態では、内部データベース1125に格納されている分析条件パラメータの値を自動的に書き換えるものとしたが、モニタリング工程S301で得られた入射電圧DPとMPAイオンのピーク面積の相関データをユーザが目視で確認した後、入射電圧DPの値を手動で書き換えてもよい。また、コントロール部1120のデータ照合部1123によって、選択した入射電圧DPの値をユーザ入力部1121を介してユーザに示し、この入射電圧DPでの分析を行うか否かの指定を促すようにしてもよい。
図8は、入射電圧とMPAイオンのピーク面積の相関データの他の例を示すグラフである。前記したように、質量分析部111導入部分のカーテンプレートが汚染度合いによってMPAGからグルクロン酸が解離する度合いが変動し、最適な入射電圧DPの値(MPAイオンのピーク面積が最小となる入射電圧DP)も変動する。図8は、図7に示したグラフと異なる日時において同様の条件で測定したデータである。図8に示す相関データでは、入射電圧DPが−60Vで最大のピーク面積値、入射電圧DPが−15Vで最小のピーク面積値を示している。この場合、入射電圧DPを−15Vと選択することによって、MPAGからのグルクロン酸の解離率を最小とすることができる。即ち、入射電圧DPによってMPAGから生成されたMPAを最小とすることができる。このように、測定日時によって最適な入射電圧DPの値は変動することがわかる。
なお、このような相関データの変化は、カーテンプレートの汚染度合いによって入射電圧DPが一定であってもMPAGに加えられるエネルギ量は変動しMPAGからグルクロン酸が解離する度合いも変動することに起因する。即ち、カーテンプレートの汚染度合いが進行することにより、ピーク面積が最小となる入射電圧DPが減少する(ピーク面積が最小となる入射電圧DPの絶対値が大きくなる)方向にシフトする。
このため、この変化を、質量分析部111のカーテンプレートの洗浄を行うタイミングを規定するために用いてもよい。具体的には、例えば、測定された相関データの値(ピーク面積が最小となる入射電圧DP)と、洗浄直後における相関データの値(ピーク面積が最小となる入射電圧DP)とが所定の割合ずれた場合には、カーテンプレートの洗浄を行うようにする。これにより、適切なタイミングでカーテンプレートの洗浄を行うことができる。
または、ピーク面積が最小となる入射電圧DPの値が所定値以下となる(ピーク面積が最小となる入射電圧DPの値の絶対値が所定値以上となる)場合には、カーテンプレートの洗浄を行うようにしてもよい。入射電圧DPの値の絶対値が大きくなると、即ち、高い電位差を印加すると、質量分析部111への導入効率が低下するためである。
<キャリブレータ測定工程S303>
図4の説明に戻り、つづいて、分析装置100は、入射電圧選択工程S302で選択した入射電圧DPの値を用いて、MPAのキャリブレータを測定する。質量分析での定量分析では、一般的に、同位体標識法を用いることによって相対定量解析を行うことができる。定量分析の手順は、まず、いくつかの既知濃度の標準物質、および一定の既知濃度の同位体標識を施した標準物質を混合して分析する。次に、標準物質および同位体標識を施した標準物質由来のイオンの質量対電荷比m/zに対して、イオン強度の時間変化(マススペクトグラム)を取得し、マスクロマトグラムのピーク面積を求める。そして標準物質の濃度、および標準物質と同位体標識を施した標準物質のピーク面積の比との関係から、検量線を作成する。つづいて、濃度が不明の標準物質を含む検体に、既知濃度の同位体標識を施した標準物質を添加した後に分析し、マスクロマトグラムのピーク面積比を求める。
そして、作成された検量線に基づいて、マスクロマトグラムのピーク面積比に対応する標準物質の濃度を決定する。同位体標識を施した標準物質は、未標識成分と同時に検出されるが、検出イオンの質量対電荷比m/zが所定の値だけ異なるので、そのイオンペアについてマスクロマトグラムのピーク面積を比較することにより、各成分の濃度比を決定することができる。
本実施形態では、MPAのキャリブレータとして、MPAを血清に溶解させた擬似検体を用いる。疑似検体のMPA濃度は、1ng/mL、10ng/mL、100ng/mLおよび1000ng/mLとしている。擬似検体は、試薬保管部102に保管されている。まず、試薬保管部102を回転させて前処理検体プローブ108の駆動範囲に疑似検体を搬送する。次に、前処理検体プローブ108によって、各濃度の疑似検体をそれぞれ100μL吸引して、固相抽出カートリッジに添加する。このとき、固相抽出カートリッジは、図2に示した固相抽出カートリッジ搬送工程S2021、コンディショニング工程S2022および平衡化工程S2023を完了した状態にしておく。
次に、固相抽出カートリッジディスク103を回転させて、固相抽出カートリッジを試薬プローブ104の駆動範囲まで搬送する。つづいて、試薬プローブ104を用いて、試薬保管部102に保管された内部標準物質MPA−d3 5μLを固相抽出カートリッジに添加する。そして、固相抽出カートリッジディスク103を回転させることによって、固相抽出カートリッジを圧力負荷部109の駆動範囲に搬送する。圧力負荷部109は、固相抽出カートリッジに対して加圧を行う。加圧後、固相抽出カートリッジ内の溶出液を廃液タンク(図示省略)に排出する。
その後、図2に示した洗浄工程S2025、溶出工程S2026、イオン化工程S204および質量分析工程S205を行う。質量分析部111で測定されたMPAイオンおよびMPA−d3のピーク強度データは、分析制御部1122を介してデータ処理部1127によって読み出される。データ処理部1127は、既知であるキャリブレータの濃度とMPAイオンのピーク面積/MPA−d3のピーク面積の相関データ(検量線)を生成して、分析データ記憶部1124に格納する。
表2は、キャリブレータ測定時のMS分析条件パラメータの一例を示す表である。MPA(MW:320.3)については分析モード;SRM、トランジッション(Q1/Q3):319.3/191.3、DP:−5V、EP:−5V、CE:−50V、CXP:0V、CUR:10L/min、CAD:3L/min、IS:−4500V、TEM:600℃、GS1:30L/min、GS2:30L/minに設定した。また、MPA−d3(MW:323.3)については、トランジッション(Q1/Q3):322.3/194.3、DP:−5V、EP:−5V、CE:−50V、CXP:0V、CUR:10L/min、CAD:3L/min、IS:−4500V、TEM:600℃、GS1:30L/min、GS2:30L/minに設定した。
ここで、入射電圧DPは、入射電圧選択工程S302で選択されたMPAのピーク面積が最小になる入射電圧DPである。ここでは、相関データが図7の状態であるものとして、−5Vに設定されている。なお、相関データが図8の場合には、入射電圧DPは−15Vとなる。
Figure 2013096732
<評価工程S304>
つづいて、評価工程S304では、キャリブレータ測定工程S303で取得した検量線が、定量分析に用いるために許容範囲内か否かを評価する。これは、選択した入射電圧DPの値によっては、本来の検体中に存在するMPAの質量分析計への導入効率が低下する場合があるためである。MPAの質量分析計への導入効率が低下したとしても、検体中の濃度がμg/mLオーダのタンパク質結合型MPAの分析には影響はない。しかし、検体中の濃度がng/mLオーダの遊離型MPAの分析にはイオン強度が足りなくなり、必要な検出限界値が得られない可能性がある。このような可能性を考慮して、分析装置100は、キャリブレータ測定工程S303で得られた検量線の評価を行う。
具体的には、検量線の最低濃度(1ng/mL)のピーク面積をシグナル(S)、ブランクであるメタノールを8回測定したピーク面積の標準偏差(σ)をノイズ(N)とし、S/Nを算出し、その値を指標として許容範囲内か判断する。S/N≧10の場合には許容範囲内と判断し、今回取得した検量線を用いて、内部データベース1125に格納されている既存の検量線を書き換える。一方、S/N値<10の場合には、許容範囲外と判断し、装置洗浄等を行った後に再度モニタリング工程S301から処理を行う。
本実施形態では、内部データベース1125に格納されている既存の検量線に対して自動的に書き換えを行うものとしたが、例えば、ユーザが1ng/mLのMPAイオンのピーク形状を目視で確認した後、検量線の書き換えを行ってもよい。この場合は、取得した検量線で分析を継続するか否かの指定を、ユーザ入力部1121を介して行う。
<検体MPA濃度測定工程S305>
検体MPA濃度測定工程S305では、図2に示した処理によって検体の分析(MPA濃度測定)を行う。このとき、制御部112は、内部データベース1125に格納されている検量線基づいて、得られた検体中のMPAのピーク面積と内部標準物質であるMPA−d3のピーク面積との比に対応するMPA濃度を測定する。
<変形例>
なお、本実施形態に係る分析装置100は、前記実施形態の構成に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変更が可能である。
前述した説明では、モニタリング工程S301において、MPA(薬物)を分析対象としてモニタリングを行ったが、他の物質、例えば、MPAG(薬物代謝物)を分析対象としてモニタリングを行ってもよい。
表3は、MPAGを分析対象としたモニタリング時のMS分析条件パラメータの一例を示す表である。MPAG(MW:496.3)を分析対象とする場合は、分析モード:SRM、トランジッション(Q1/Q3):495.3/191.3、EP:−5V、CE:−50V、CXP:0V、CUR:10L/min、CAD:3L/min、IS:−4500V、TEM:600℃、GS1:30L/min、GS2:30L/minに設定されている。
Figure 2013096732
モニタリング工程S301では、前記したMPAを分析対象とする場合と同様に、入射電圧DPを−40Vから0Vまで1V間隔で100msecごとに変化させながら分析を行う。そして、入射電圧選択工程S302では、入射電圧DPとMPAGイオンのピーク面積の相関データを分析して、MPAGのピーク面積が最大になる入射電圧DPの値を選択する。これは、測定されるMPAG量が多いほどグルクロン酸の解離が生じていないことを示すためである。その後の工程は、前述したMPAを分析対象とする場合(図5参照)と同様に行えばよい。
さらに、モニタリング工程S301において、グルクロン酸(抱合体)を分析対象としてもよい。この場合、入射電圧選択工程S302においては、グルクロン酸イオンのピーク面積が最小になる入射電圧DPの値を選択する。
≪まとめ≫
以上説明したように、実施形態にかかる分析装置100は、薬物(MPA)が薬物代謝物(UDP−グルクロン酸転移酵素)によって所定の抱合体(グルクロン酸)と抱合された薬物代謝物(MPAG)と、薬物(MPA)と、が混在する検体中の薬物濃度(MPA濃度)を質量分析計を用いて分析する際に、連続的に変化する電圧(入射電圧DP)を検体に印加して、薬物代謝物からの抱合体の解離状態をモニタリングする。そして、モニタリングされた解離状態に基づいて、検体に印加する電圧(入射電圧DP)の最適値を選択し、選択された値の電圧(入射電圧DP)を検体に印加して、検体中の薬物の濃度を測定する。電圧(入射電圧DP)の最適値としては、薬物代謝物からの抱合体の解離率が最も低い電圧の値を選択する。これにより、測定過程で電圧印加が必要な質量分析計を用いた分析装置100においても、電圧印加に伴う抱合体の解離を最小限に抑えて、薬物と薬物代謝物とが混在する検体中の薬物成分を精度よく測定することができる。
また、分析装置100は、選択した値の電圧(入射電圧DP)を薬物のキャリブレータに印加して、キャリブレータ中の薬物の濃度を測定し、選択された電圧(入射電圧DP)の値を評価するので、モニタリング時における抱合体の解離状態が、通常の計測時と著しく異なっていた場合でも適切な電圧値を再設定して、測定精度をさらに向上させることができる。
また、分析装置100は、UDP−グルクロン酸転移酵素以外の他の薬物代謝酵素によって代謝された薬物の分析にも用いることができるので、多岐にわたる用途に利用することができる。即ち、分析措置100の分析対象である薬物はミコフェノール酸(薬物代謝物がミコフェノール酸のグルクロン酸抱合体であり、抱合体がグルクロン酸である)に限られるものではない。
また、分析装置100は、モニタリングにおける測定対象物質を、薬物、薬物代謝物、抱合体のいずれかとすることができるので、測定環境に応じて適切な物質を測定対象として選択することができる。
本発明は、質量分析計を用いて分析を行う分析装置に有効であり、特に、濃度測定対象の薬物がミコフェノール酸(MPA)であり、薬物代謝酵素がUDP−グルクロン酸転移酵素であり、薬物代謝物がミコフェノール酸のグルクロン酸抱合体(MPAG)である場合に適している。
100 分析装置
101 検体搬送機構
102 試薬保管部
103 固相抽出カートリッジディスク
104 試薬プローブ
105 検体プローブ
106 固相抽出カートリッジ保管部
107 固相抽出カートリッジプローブ
108 前処理検体プローブ
109 圧力負荷部
1091 固相抽出カートリッジ
1092 シリンジポンプ
1093 流量計
1094 圧力計
1095 エアフィルタ
1096 3方電磁弁
1097 接合部
110 イオン化部
111 質量分析部
1111 スキマー
1112 四重極質量分析計
1113 衝突室
1114 四重極質量分析計
1115 イオン検出器
112 制御部
1120 コントロール部
1121 ユーザ入力部
1122 分析制御部
1123 データ照合部
1124 分析データ記憶部
1125 内部データベース
1126 装置インターフェース
1127 データ処理部
DP 入射電圧

Claims (12)

  1. 薬物と、前記薬物が薬物代謝酵素により抱合体と抱合して代謝された薬物代謝物と、が混在する検体に入射電圧を印加して質量分析部に導入し、前記検体における前記薬物の濃度を分析する分析方法であって、
    前記入射電圧を変化させながら、前記薬物代謝物からの前記抱合体の解離状態をモニタリングするモニタリング工程と、
    前記モニタリング工程における解離状態に基づいて、前記入射電圧を選択する選択工程と、
    前記選択工程で選択された前記入射電圧を前記検体に印加して、前記検体における前記薬物の濃度を測定する濃度測定工程と、を含む
    ことを特徴する分析方法。
  2. 前記選択工程は、
    前記薬物代謝物からの前記抱合体の解離率が最も低い前記入射電圧を選択する
    ことを特徴とする請求項1に記載の分析方法。
  3. 前記モニタリング工程は、
    前記入射電圧を変化させながら、前記薬物代謝物から解離した前記薬物の量を前記質量分析部で測定することによって前記薬物代謝物からの前記抱合体の解離状態をモニタリングする
    ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の分析方法。
  4. 前記モニタリング工程は、
    前記入射電圧を変化させながら、前記薬物代謝物の量を前記質量分析部で測定することによって前記薬物代謝物からの前記抱合体の解離状態をモニタリングする
    ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の分析方法。
  5. 前記モニタリング工程は、
    前記入射電圧を変化させながら、前記薬物代謝物から解離した前記抱合体の量を前記質量分析部で測定することによって前記薬物代謝物からの前記抱合体の解離状態をモニタリングする
    ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の分析方法。
  6. 前記選択工程で選択された前記入射電圧を前記薬物のキャリブレータに印加して、前記薬物のキャリブレータにおける前記薬物の濃度を測定するキャリブレータ測定工程と、
    前記キャリブレータ測定工程の測定結果に基づいて、所定の分析精度を満たすか否かを評価する評価工程と、をさらに含み、
    前記評価工程において、前記所定の分析精度を満たすと評価された場合、前記濃度測定工程を行う
    ことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の分析方法。
  7. 前記評価工程において、前記所定の分析精度を満たさないと評価された場合、前記質量分析部の清掃が必要であると評価する
    ことを特徴とする請求項6に記載の分析方法。
  8. 前記薬物はミコフェノール酸であり、
    前記薬物代謝酵素はUDP−グルクロン酸転移酵素であり、
    前記薬物代謝物はミコフェノール酸のグルクロン酸抱合体であり、
    前記抱合体はグルクロン酸である
    ことを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の分析方法。
  9. 前記薬物代謝酵素は、シトクロムP450、ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ、アルコール脱水素酵素、アルデヒド脱水素酵素、モノアミンオキシダーゼ、酸化還元酵素、UDP−スルホン酸転移酵素、糖転移酵素、グルタチオンレダクターゼなどの抱合酵素、加水分解酵素のいずれかである
    ことを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の分析方法。
  10. 前記選択工程で選択された前記入射電圧の値と、前記質量分析部の清掃後に最初に選択された前記入射電圧の値と、の差が所定値よりも大きい場合、前記質量分析部の清掃が必要であると評価する
    ことを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載の分析方法。
  11. 前記選択工程で選択された前記入射電圧の値の絶対値が所定値よりも大きい場合、前記質量分析部の清掃が必要であると評価する
    ことを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載の分析方法。
  12. 薬物と、前記薬物が薬物代謝酵素により抱合体と抱合して代謝された薬物代謝物と、が混在する検体に入射電圧を印加して質量分析部に導入し、前記検体における前記薬物の濃度を分析する分析装置であって、
    前記入射電圧を変化させながら、前記薬物代謝物からの前記抱合体の解離状態をモニタリングするモニタリング手段と、
    前記モニタリング手段によってモニタリングされた解離状態に基づいて、前記入射電圧を選択する選択手段と、
    前記選択手段で選択された前記入射電圧を前記検体に印加して、前記検体における前記薬物の濃度を測定する検体測定手段と、を備える
    ことを特徴する分析装置。
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