JP2013094819A - 高Cr−高Ni基合金からなる継目無管の製造方法 - Google Patents

高Cr−高Ni基合金からなる継目無管の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】穿孔圧延時に溶融被れ疵の発生を防止できる高Cr−高Ni基合金継目無管の製造方法の提供。
【解決手段】質量%で、Crを20〜30%、Niを30〜50%、並びにMoおよびWの1種以上をMo+0.5Wで1.5%以上含有する継目無管を製造する際、(1)式を満足する条件でビレットを加熱して穿孔圧延する。
T≦1475.5−1.564×D/Bd−15.951×Vf−178.088×Φr−105.983×Φθ…(1)
同式中のΦr:径方向対数歪、Φθ:周方向対数歪は(2)式、(3)式で示され、各式中の記号の意味は下記の通り。
Φr=−ln(2×th/Bd)…(2)
Φθ=ln(2×(Sd−th)/Bd)…(3)
T:ビレットの加熱温度[℃]、D:ロールゴージ部の直径[mm]、Bd:ビレットの直径[mm]、Vf:ロールゴージ部での周速[m/sec]、th:中空素管の肉厚[mm]、Sd:中空素管の外径[mm]。
【選択図】なし

Description

本発明は、高Cr−高Ni基合金からなる継目無管の製造方法に関し、特に、傾斜穿孔圧延機によりビレットを穿孔圧延する工程に着目した高Cr−高Ni基合金継目無管の製造方法に関する。
近年、油井管、ボイラー管などの使用環境はますます過酷なものとなっている。このため、それらの管に使用する継目無管への要求特性が高度化している。例えば、高深度化、高腐食性環境化が進む油井に使用される油井管には、より高強度で、より優れた耐食性を有することが求められる。また、原子力発電設備、化学プラントなどで用いられる管には、高温の純水や塩素イオン(Cl-)を含む高温水に晒される環境において、耐食性、特に耐応力腐食割れ性に優れることが求められる。これらの要求から、油井管などには、CrおよびNi、さらにはMoを多量に含有する高Cr−高Ni基合金(以下、単に「高合金」ともいう)からなる継目無管が適用されつつある。
高合金の継目無管は、マンネスマン・マンドレルミル方式、マンネスマン・プラグミル方式、マンネスマン・アッセルミル方式などのマンネスマン製管法により製造することができる。この製管法は次のステップからなる:
(1)傾斜穿孔圧延機(ピアサ)により、所定温度に加熱された丸ビレットを穿孔圧延し、中空素管(ホローシェル)に成形する;
(2)延伸圧延機(例:マンドレルミル、プラグミル)により、中空素管を延伸圧延する;
(3)定径圧延機(例:サイザ、ストレッチレデューサ)により、延伸圧延された素管を所定の外径と肉厚に定径圧延し、製品管に仕上げる。
ところで、Moを含有する高Cr−高Ni基合金は、例えば、炭素鋼と比較して変形抵抗が2.4倍程度高く、13%Cr鋼やBBS鋼と比較しても2倍近く変形抵抗が高いことから、熱間加工によるせん断変形に伴って加工発熱が顕著に生じる。このため、特に、高合金の丸ビレットを穿孔圧延する際、ビレットは、大きなせん断変形が与えられることから、加工発熱が著しく生じ、ビレット温度が上昇する。これにより、穿孔圧延で得られる高合金の中空素管には、肉厚内部で粒界溶融割れが発生し、この粒界溶融割れに起因して、管内面に溶融状の被れ疵(以下、「溶融被れ疵」という)が生じ易い。
この溶融被れ疵は、後工程の延伸圧延および定径圧延を経ても残存し、製品不良を引き起こす。このため、中空素管の内面に溶融被れ疵が発生した場合、その疵が存在する部分を不良部として切り落とす必要がある。その結果、製品に使用されない不良部が増加することから、製品歩留りが低下し、これに伴って製造コストが悪化する。
したがって、高Cr−高Ni基合金の継目無管の製造では、穿孔圧延時に溶融被れ疵の発生を防止することが強く望まれる。すなわち、溶融被れ疵の発生が、主として穿孔圧延時のビレット温度に大きく依存することから、溶融被れ疵の発生を防止するために、ビレットの加熱温度を含めた穿孔圧延の諸条件を適正化する方策が必要とされる。
穿孔圧延の諸条件を適正化して溶融被れ疵の発生防止を図る従来技術は、下記のものがある。特許文献1には、高Cr−高Ni基合金のビレットを穿孔圧延する際に、傾斜ロールのゴージ部での周速、ビレットの半径、および中空素管の肉厚に着目し、これらによる加工発熱量を加味して、ビレットの加熱温度、およびその他の穿孔圧延の諸条件(ロールゴージ部での周速、穿孔比など)を規定する技術が開示されている。
特開2008−161906号公報
しかし、前記特許文献1に開示される技術は、溶融被れ疵の発生を有効に防止する方策として万能とはいえず、未だ改良の余地がある。
本発明の目的は、次の特性を有する高Cr−高Ni基合金継目無管の製造方法を提供することである:
穿孔圧延の際に、管内面で溶融被れ疵の発生を有効に防止すること。
本発明の要旨は、次の通りである。
傾斜穿孔圧延機を用いて、質量%で、Crを20〜30%、Niを30〜50%、並びにMoおよびWの1種以上をMo+0.5Wで1.5%以上含有する高Cr−高Ni基合金からなるビレットを穿孔圧延し、継目無管を製造する方法であって、
当該継目無管の製造方法は、下記(1)式を満足する条件でビレットを加熱して穿孔圧延し、中空素管に成形する工程を含むこと、
を特徴とする高Cr−高Ni基合金継目無管の製造方法。
T≦1475.5−1.564×D/Bd−15.951×Vf−178.088×Φr−105.983×Φθ ・・・(1)
ただし、上記(1)式中のΦrおよびΦθは、それぞれ下記(2)式および(3)式により求められる。
Φr=−ln(2×th/Bd) ・・・(2)
Φθ=ln(2×(Sd−th)/Bd) ・・・(3)
ここで、上記(1)式〜(3)式中の記号の意味は下記の通りである。
T:ビレットの加熱温度[℃]、
D:傾斜ロールのゴージ部の直径[mm]、
Bd:ビレットの直径[mm]、
Vf:傾斜ロールのゴージ部での周速[m/sec]、
Φr:径方向対数歪、
th:中空素管の肉厚(目標値)[mm]、
Φθ:周方向対数歪、および
Sd:中空素管の外径(目標値)[mm]。
上記の製造方法では、ビレットの加熱温度Tを1120〜1250[℃]とし、傾斜ロールのゴージ部での周速Vfを2.28〜4.55[m/sec]とし、下記(4)式で表される穿孔圧延比ELを3.5以下とすることができる。
EL=M0/M1 ・・・(4)
ここで、上記(4)式中の記号の意味は下記の通りである。
M0:ビレットの断面積[mm2]、および
M1:中空素管の断面積[mm2]。
本発明の高Cr−高Ni基合金継目無管の製造方法は、下記の顕著な効果を有する:
穿孔圧延の際に、管内面で溶融被れ疵の発生を有効に防止できること。
本発明の高合金継目無管の製造方法を適用できる穿孔機の構成例を模式的に示す上面図である。 図1に示す穿孔機の穿孔位置の周辺を模式的に示す側面図である。
本発明者らは、上記目的を達成するため、高Cr−高Ni基合金からなる継目無管をマンネスマン製管法により製造する際、後述する実施例で実証するように、傾斜穿孔圧延機を用い穿孔圧延の諸条件を種々変更して穿孔圧延を実施し、これにより得られた各中空素管の内面で溶融被れ疵の発生有無を調査する試験を行った。この試験の結果、前記特許文献1に開示される技術で着目した諸条件に加え、傾斜ロールのゴージ部の直径、ビレットの直径、および中空素管の外径に着目し、これら加工度に関係する諸条件よる加工発熱量も総合的に加味して、ビレットの加熱温度、およびその他の穿孔圧延の諸条件(ロールゴージ部での周速、穿孔比など)を規定することにより、前記特許文献1に開示される技術で規定されない穿孔圧延条件であっても、溶融被れ疵が発生しないことが判明した。
本発明は、このような調査結果に基づき、完成させたものである。すなわち、本発明の高Cr−高Ni基合金継目無管の製造方法は、傾斜穿孔圧延機を用いて、質量%で、Crを20〜30%、Niを30〜50%、並びにMoおよびWの1種以上をMo+0.5Wで1.5%以上含有する高Cr−高Ni基合金からなるビレットを穿孔圧延し、継目無管を製造する方法であって、下記(1)式を満足する条件でビレットを加熱して穿孔圧延し、中空素管に成形する工程を含むこと、を特徴とする。
T≦1475.5−1.564×D/Bd−15.951×Vf−178.088×Φr−105.983×Φθ ・・・(1)
ただし、上記(1)式中のΦrおよびΦθは、それぞれ下記(2)式および(3)式により求められる。
Φr=−ln(2×th/Bd) ・・・(2)
Φθ=ln(2×(Sd−th)/Bd) ・・・(3)
ここで、上記(1)式〜(3)式中の記号の意味は下記の通りである。
T:ビレットの加熱温度[℃]、
D:傾斜ロールのゴージ部の直径[mm]、
Bd:ビレットの直径[mm]、
Vf:傾斜ロールのゴージ部での周速[m/sec]、
Φr:径方向対数歪、
th:中空素管の肉厚(目標値)[mm]、
Φθ:周方向対数歪、および
Sd:中空素管の外径(目標値)[mm]。
上記の製造方法では、ビレットの加熱温度Tを1120〜1250[℃]とし、傾斜ロールのゴージ部での周速Vfを2.28〜4.55[m/sec]とし、下記(4)式で表される穿孔圧延比ELを3.5以下とすることができる。
EL=M0/M1 ・・・(4)
ここで、上記(4)式中の記号の意味は下記の通りである。
M0:ビレットの断面積[mm2]、および
M1:中空素管の断面積[mm2]。
以下に、本発明の製造方法を上記のように規定した理由および好ましい態様について説明する。
1.高Cr−高Ni基合金の成分組成
本発明で採用する高Cr−高Ni基合金の具体的な組成は、以下の通りである。以下の記述において、成分含有量の「%」は「質量%」を意味する。
Cr:20〜30%
Crは、Niとの共存下において、耐応力腐食割れ性に代表される耐硫化水素腐食性を向上させるのに有効な元素である。しかし、その含有量が20%未満では、その効果が得られない。一方、その含有量が30%を超えると、上記の効果は飽和し、熱間加工性の観点からも好ましくない。そこで、Crの含有量は20〜30%とする。
Ni:30〜50%
Niは、耐硫化水素腐食性を向上させる作用を有する元素である。しかし、その含有量が30%未満では、合金の外表面にNi硫化物皮膜が十分に生成しないため、Niを含有させる効果が得られない。一方、50%を超えるNiを含有させても、その効果は飽和するため、合金コストに見合った効果が得られずに経済性を損なう。そこで、Niの含有量は30〜50%とする。
Mo+0.5W:1.5%以上
MoおよびWは、ともに耐孔食性を改善する作用を有する元素であり、いずれか一方または両方を添加することができる。しかし、その含有量が「Mo+0.5W」で1.5%未満では、その効果が得られないので、「Mo+0.5W」で1.5%以上とする。また、これらの元素は必要以上に含有させてもその効果が飽和するだけであり、過度の含有は熱間加工性を低下させる。したがって、「Mo+0.5W」の値が10%以下の範囲内で含有させることが好ましい。
本発明で採用する高Cr−高Ni基合金は、上記の合金元素の他に、下記の元素を含有してもよい。
C:0.04%以下
Cは、Cr、Mo、Feなどと炭化物を形成するが、その含有量が増加すると延性値と靱性値が低下する。このため、Cの含有量は0.04%以下に制限するのが好ましい。
Si:0.5%以下
Siは、σ相の生成を防止し、延性および靱性の低下を抑制するために、できるだけ含有量を少なくする方がよい。したがって、Siの含有量は0.5%以下に制限するのが好ましい。
Mn:0.01〜3.0%
Mnは、熱間加工性の向上に寄与する。このため、Mnを0.01%以上含有させるのが好ましい。しかし、その含有量が過剰になると、耐食性が劣化する場合があるので、3.0%以下とするのが好ましい。したがって、Mnを含有させる場合には、その含有量を0.01〜3.0%の範囲とするのがよい。特に、σ相の生成が問題となる場合には、その含有量を0.01〜1.0%とするのが望ましい。
P:0.03%以下
Pは、通常は不純物として合金中に含まれるが、熱間加工性などに悪影響を及ぼす元素である。このため、Pの含有量は0.03%以下に制限するのが好ましい。
S:0.03%以下
Sも不純物として合金中に含まれるが、靱性などに悪影響を及ぼす元素である。このため、Sの含有量は0.03%以下に制限するのが好ましい。
Cu:0.01〜1.5%
Cuは、クリープ破断強度を向上させるのに有効な元素であり、0.01%以上含有させるのが好ましい。しかし、その含有量が1.5%を超えると、合金の延性が低下する場合がある。したがって、Cuの含有量は0.01〜1.5%の範囲とするのが好ましい。
Al:0.20%以下
Alは、脱酸剤として有効であるが、σ相等の金属間化合物の生成を助長する。このため、Alの含有量は0.20%以下に制限するのが好ましい。
N:0.0005〜0.2%
Nは、固溶強化元素であり、高強度化に寄与するとともに、σ相等の金属間化合物の生成を抑制して、靱性の向上に寄与する。このため、Nは0.0005%以上含有させるのが好ましい。しかし、その含有量が0.2%を超えると、耐孔食性が劣化するおそれがある。このため、Nの含有量は0.0005〜0.2%の範囲とするのが好ましい。
Ca:0.005%以下
Caは、熱間加工性を阻害するSを硫化物として固着するが、その含有量が過剰な場合、かえって熱間加工性を劣化させる。このため、Caの含有量は0.005%以下に制限するのが好ましい。
2.継目無管の製造方法
本発明において、高Cr−高Ni基合金の継目無管は、上記の必須含有元素を含有し、さらに必要に応じて任意含有元素を含有し、残部がFeおよび不純物からなる高合金により製造される管であり、工業的に慣用される製造設備および製造方法により製造することができる。例えば、高合金の溶製には、電気炉、アルゴン−酸素混合ガス底吹き脱炭炉(AOD炉)や真空脱炭炉(VOD炉)などを利用することができる。
上記の成分組成に溶製された溶湯は、連続鋳造法により横断面が矩形の鋳片に鋳造され、この連続鋳造鋳片は、孔型ロールを用いて横断面が円形の丸ビレットに分塊圧延される。この丸ビレットを素材とし、傾斜穿孔圧延機により穿孔圧延して中空素管を成形し、この中空素管を延伸圧延機により延伸圧延し定径圧延機により定径圧延することにより、高合金継目無管を製造することができる。
2−1.傾斜穿孔圧延機
図1は、本発明の高合金継目無管の製造方法を適用できる穿孔機の構成例を模式的に示す上面図であり、図2は、その穿孔機の穿孔位置の周辺を模式的に示す側面図である。図1および図2に示すように、穿孔機10は、一対の傾斜ロール1と、プラグ2と、芯金3と、プッシャ4と、HMD(Hot Metal Detector)5とを備える。
一対の傾斜ロール1は、パスラインXに対して所定の交叉角γと傾斜角δを有した状態で、プラグ2の周りに対向して配設される。傾斜ロール1は、図1および図2に示すようなコーン型に限られず、バレル型であってもよい。また、穿孔機10は、図1および図2に示すような傾斜ロール1を2つ設けた2ロール式に限られず、傾斜ロールを3つ設けた3ロール式であってもよい。
プラグ2は、芯金3の先端に嵌め込まれて芯金3と結合され、穿孔機10の出側となる傾斜ロール1同士の間のパスラインX上に配置される。
プッシャ4は、穿孔機10の入側のパスラインX上に配置される。図1に示すプッシャ4は、シリンダ本体41と、シリンダロッド42と、接続部材43と、ビレット押し棒44とから構成される。ビレット押し棒44は、接続部材43により、周方向に回転可能にシリンダロッド42と連結される。シリンダ本体41は、油圧式または電動式のものを用いることができ、シリンダロッド42を進退させる。
このような構成のプッシャ4は、パスラインX上に供給されたビレット20の後端にビレット押し棒44の先端を当接させ、シリンダ本体41によってシリンダロッド42およびビレット押し棒44を進出させることでビレット20を押圧する。これにより、ビレット20は、パスラインXに沿って傾斜ロール1およびプラグ2に向けて搬送され、傾斜ロール1に噛み込む。さらに、プッシャ4は、傾斜ロール1に噛み込んだビレット20がプラグ2の先端に接触してから穿孔圧延が定常状態に達するまでの間、すなわち非定常状態の間、ビレット20を押圧し続ける。
ここで、定常状態とは、穿孔圧延されたビレット20(中空素管)の先端が傾斜ロール1より抜けた時点からビレット20の後端が傾斜ロール1より抜けた時点までをいう。非定常状態とは、ビレット20の先端が傾斜ロール1に噛み込んでから定常状態に入るまでをいう。
HMD5は、穿孔機10の出側であって、傾斜ロール1の後端近傍に配設される。HMD5は、穿孔圧延された中空素管の先端が傾斜ロール1の間を通過したか否か、すなわち穿孔圧延が非定常状態から定常状態に達したか否かを検知する。
2−2.穿孔圧延
本発明の高合金継目無管の製造方法は、上述した穿孔機を用い、上記(1)式を満足する条件で高合金ビレットを加熱して穿孔圧延し、中空素管に成形する。すなわち、穿孔圧延時に加工度に関係する諸条件として、上記(1)式に示すように、傾斜ロールのゴージ部の直径「D」とビレットの直径「Bd」との比「D/Bd」、傾斜ロールのゴージ部での周速「Vf」、径方向対数歪「Φr」、および周方向対数歪「Φθ」に着目し、これらによる加工発熱量を総合的に加味した関係式からビレットの加熱温度「T」を設定する。ここで、径方向対数歪「Φr」は、上記(2)式の通り、中空素管の肉厚「th」とビレットの直径「Bd」との比の影響を考慮したものであり、周方向対数歪「Φθ」は、上記(3)式の通り、中空素管の外径「Sd」とビレットの直径「Bd」との比、いわゆる拡管比の影響を考慮したものである。
上記(1)式を満足する条件で穿孔圧延を行うことにより、ビレットに加工発熱が生じても、ビレット温度は粒界溶融割れが発生する温度以下に抑えられるため、中空素管の内面で溶融被れ疵の発生を有効に防止することができる。もっとも、穿孔圧延による加工度が比較的小さい場合には、上記(1)式の条件を満足する範囲内でビレットの加熱温度を高くすることができ、これに伴って穿孔速度を上昇することが可能となるため、穿孔機への負荷の低減と能率向上が図られると同時に、プラグとビレットとの接触時間の短縮化が図られ、その結果としてプラグ寿命を向上できる。
穿孔圧延の際、ビレットの加熱温度「T」は、1120〜1250[℃]の範囲内であることが好ましい。加熱温度が1120℃未満と低い場合、ビレットの変形抵抗が増大するので、穿孔機への負荷が増加し、操業に支障を来たすからである。一方、加熱温度が1250℃を超えた場合、加工発熱の付与とあいまって、粒界溶融割れに起因する溶融被れ疵が発生するおそれがあるからである。
傾斜ロールのゴージ部での周速「Vf」は、2.28〜4.55[m/sec]の範囲内であることが好ましい。ロールゴージ部での周速が低すぎると、穿孔圧延の所要時間が増加し、これに伴ってプラグ寿命が低下するとともに、操業効率が悪くなるからである。一方、ロールゴージ部での周速があまりに高いと、粒界溶融割れが発生し、溶融被れ疵が発生し易くなるからである。なお、図1および図2に示すように、傾斜ロール1のゴージ部1aは、傾斜ロール1同士の間隔が最も小さくなる位置のことを意味する。
上記(4)式で表される穿孔圧延比「EL」は、3.5以下であることが好ましい。穿孔圧延比が大きいほど、加工量増大によるロールスリップや穿孔時間増大によるプラグ溶損等といったトラブルが発生し易くなるからである。
[試験方法]
本発明の効果を確認するため、前記図1および図2に示す傾斜穿孔圧延機を用いて、高Cr−高Ni基合金のビレットを穿孔圧延し、中空素管に成形する試験を行った。その際、下記表1および表2に示す通りに、穿孔圧延の諸条件を種々変更した。
Figure 2013094819
Figure 2013094819
その他の試験条件は、下記の通りである。
・ビレットの直径:225mm
・傾斜ロールのゴージ部の直径:1400mm
・中空素管の外径:330mm
[評価方法]
穿孔圧延後、各中空素管の内面を観察し、溶融被れ疵の発生状況を調査した。上記表1および表2にその調査結果も併せて示す。
表1および表2中で、「溶融被れ疵評価」の欄の記号の意味は次の通りである。
○:良。溶融被れ疵が認められなかったことを示す。
×:不可。溶融被れ疵が認められたことを示す。
[試験結果]
表1および表2に示す結果から次のことが示される。試験番号1〜5、7〜10、13〜15、19〜21、25〜27、31〜33、37〜39、43〜45、49〜50、および55〜57では、いずれも(1)式の条件を満たし、溶融被れ疵が発生しなかった。一方、(1)式の条件を満たさないその他の試験番号では、溶融被れ疵が発生した。
本発明は、マンネスマン製管法による高Cr−高Ni基合金の継目無管の製造に有効に利用できる。
1:傾斜ロール、 1a:ゴージ部、 2:プラグ、 3:芯金、
4:プッシャ、 5:HMD(Hot Metal Detector)、
10:穿孔機、 20:ビレット、
41:シリンダ本体、 42:シリンダロッド、
43:接続部材、 44:ビレット押し棒、 X:パスライン

Claims (2)

  1. 傾斜穿孔圧延機を用いて、質量%で、Crを20〜30%、Niを30〜50%、並びにMoおよびWの1種以上をMo+0.5Wで1.5%以上含有する高Cr−高Ni基合金からなるビレットを穿孔圧延し、継目無管を製造する方法であって、
    当該継目無管の製造方法は、下記(1)式を満足する条件でビレットを加熱して穿孔圧延し、中空素管に成形する工程を含むこと、
    を特徴とする高Cr−高Ni基合金継目無管の製造方法。
    T≦1475.5−1.564×D/Bd−15.951×Vf−178.088×Φr−105.983×Φθ ・・・(1)
    ただし、上記(1)式中のΦrおよびΦθは、それぞれ下記(2)式および(3)式により求められる。
    Φr=−ln(2×th/Bd) ・・・(2)
    Φθ=ln(2×(Sd−th)/Bd) ・・・(3)
    ここで、上記(1)式〜(3)式中の記号の意味は下記の通りである。
    T:ビレットの加熱温度[℃]、
    D:傾斜ロールのゴージ部の直径[mm]、
    Bd:ビレットの直径[mm]、
    Vf:傾斜ロールのゴージ部での周速[m/sec]、
    Φr:径方向対数歪、
    th:中空素管の肉厚[mm]、
    Φθ:周方向対数歪、および
    Sd:中空素管の外径[mm]。
  2. ビレットの加熱温度Tを1120〜1250[℃]とし、傾斜ロールのゴージ部での周速Vfを2.28〜4.55[m/sec]とし、下記(4)式で表される穿孔圧延比ELを3.5以下とすること、
    を特徴とする請求項1に記載の高Cr−高Ni基合金継目無管の製造方法。
    EL=M0/M1 ・・・(4)
    ここで、上記(4)式中の記号の意味は下記の通りである。
    M0:ビレットの断面積[mm2]、および
    M1:中空素管の断面積[mm2]。
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