JP2013094490A - 導入具および神経刺激電極留置システム。 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】導入具10は、内腔を有する筒状の本体11と、生体組織を鈍的切開する鈍的切開部12Bを有し、透明性を有するように形成されて本体11の先端部に取り付けられた切開部材12と、本体11の先端部の外面および切開部材12の外面の少なくとも一方に設けられた判別電極18、19と、を備える。
【選択図】図1
Description
例えば、特許文献1には、心臓が徐脈を発生したときには心臓を刺激して心拍数を上昇させ、心臓が頻脈または細動を発生したときには迷走神経を刺激して心拍数を低下させる、埋め込み式の心臓治療装置が開示されている。特許文献1では、心臓刺激電極が心筋内または心房内に配置される。神経刺激電極を巻きつけて留置する部位としては、頚部領域あるいは外側頚動脈の右中央位置が好適であるとされている。
しかしながら、迷走神経はその経路中に頸部、胸部および腹部の内臓へ分岐する枝を有しているため、頸部において迷走神経を刺激すると、治療対象組織である心臓に加えて、頸部等の他の器官にも刺激が伝達されることがある。その結果、患者が喉の詰まりや咳きこみ等の反射的自覚症状を呈することがあり、患者のQOL(生活の質)の低下の一因となるという問題がある。
本発明の導入具は、内腔を有する筒状の本体と、生体組織を鈍的切開する鈍的切開部を有し、透明性を有するように形成されて前記本体の先端部に取り付けられた切開部材と、前記本体の先端部の外面および前記切開部材の外面の少なくとも一方に設けられた判別電極と、を備えることを特徴としている。
また、上記の導入具において、前記判別電極は、前記本体の周方向における一部の範囲のみに形成されていることがより好ましい。
また、上記の導入具において、前記本体の基端部および前記切開部材の少なくとも一方には、前記内腔の周方向において、前記判別電極と同じ位置に指標部が形成されていることがより好ましい。
また、上記の導入具において、前記判別電極は、前記本体の長手方向に延在するように形成されていることがより好ましい。
また、上記の神経刺激電極留置システムにおいて、前記測定結果は心電図であってもよい。
また、上記の神経刺激電極留置システムにおいて、前記測定結果は筋電図であってもよい。
以下、本発明に係る神経刺激電極留置システムの第1実施形態を、図1から図14を参照しながら説明する。
図1に示すように、本神経刺激電極留置システム(以下、単に「留置システム」と称する。)1は、結合組織等の組織内を通って迷走神経等の所望の神経組織に神経刺激電極(以下、単に「電極」と称する。)100を導入および留置するための各処置を行うものである。留置システム1は、略筒状に形成された本実施形態の導入具10と、導入具10に挿入される観察部20と、対象の神経組織に対して電極100が留置可能となるように処置を行うための剥離部30と、電極100の留置操作を行うためのスタイレット(電極操作部材)40とを備えている。
本体11は、図2および図3に示すように、観察部20が挿入される第一ルーメン(第一の内腔)13と、剥離部30が挿通される第二ルーメン(第二の内腔)14と、電極100およびスタイレット40が挿通される第三ルーメン(電極用内腔)15との3つのルーメン(内腔)を有しており、公知のマルチルーメンチューブ等を用いることができる。これら第一ルーメン13、第二ルーメン14、および第三ルーメン15は、ほぼ円柱状に形成されている。
本体11の材質としては後述する周辺組織を切開して進退できる程度の剛性を有するものであれば特に制限はなく、ステンレス等の金属や、樹脂等を好適に用いることができる。導入具10の導入操作をしやすくする観点からは、導入具10の外径が6ミリメートル(mm)以下とされることが好ましい。
円錐部12Bは、先端の曲率半径が、例えば0.2mm程度に設定されており、鋭利でない先端を有する。円錐部12Bを先頭にして導入具10を押し込むことにより、キャップ12の周囲に存在する周辺組織を鈍的に切開しながら留置システム1を対象組織付近まで導入することができる。この操作については手技の説明において詳述する。
なお、判別電極18、19を、電極100が接続される後述する神経刺激装置に接続し、神経刺激装置によって判別電極18、19間に電圧を印加してもよい。
照明手段22がライトガイドである場合は、撮像手段23内に設けられた図示しない光源と接続される。ライトガイドに代えて、LED等の発光部材を照明手段として先端に搭載してもよい。
観察部20としては、外径寸法等が適切な値であれば、公知の内視鏡装置を好適に使用することができる。
ヘラ部32は、板状またはシート状に形成され、ロッド31の軸線方向と略直交する方向に延びるように取り付けられている。へラ部32は、神経組織周辺の結合組織等(以下、「周辺組織」と称することがある。)を剥離できる程度の一定の剛性を有しており、ロッド31と同様の材料で形成することができる。ロッド31から延びるヘラ部32の先端側周縁は、後述する剥離操作を鈍的に行うことができるように、円錐部12Bの先端同様、鋭利とならないように形成されている。
電極100は、長尺のリード部101と、リード部101の先端側に設けられた電極部102と、電極部102を神経組織に接触するように支持する支持部103とを有している。
リード部101は、図示しないリードを複数有する。各リードにおいて、導電性の芯線は、耐久性が高いMP35N線又は35MLT線を用いて形成されており、各芯線にETFE材料による絶縁被覆が施されて各リードが形成され、内腔104内に配置されている。リードの先端側は電極部102に接続され、リードの基端側は図示しない神経刺激装置と接続されるためのコネクタ105に接続されている。コネクタ105は、接続される神経刺激装置にあわせて公知のものが適宜選択され。例えばIS1コネクタなどを用いることができる。
なお、上記の構成に代えて、絶縁被覆のない芯線のみをリード部101の略円筒状の周壁内に埋設してリードとしてもよい。
各電極102A、102Bは留置時に神経組織に対向する側にのみ露出しており、反対側の面はシリコーン樹脂などにより覆われ、電気的に絶縁されている。つまり、印加した電気エネルギーが神経組織の周辺にある組織や器官へ漏れることを低減している。
対象の神経組織が迷走神経である場合、剥離された神経組織は約1〜2mmの外径を有していることが多く、それらに対応するためにリードの芯線および電極部の電極はφ2mm以下に形成されていることが好ましい。
支持部の個数や形状は、各電極102A、102Bを神経組織に接触させるという目的を果たす限り、適宜設定されてよい。
また、支持部の厚みとしては、対象組織に過度な負荷を与えないように、0.5mm以下の厚さとされるのが好ましい。
図1に示すように、第二ルーメン14には排液チューブ2が接続されている。排液チューブ2には排液ポンプ3が接続されており、第二ルーメン14の先端開口から第二ルーメン14内に浸入した体液や血液を吸引してルーメン外に排出することができる。第三ルーメン15にはシリンジ4が接続されており、第三ルーメン15内にシリンジ4から生理食塩水(生食)等を供給することにより、第三ルーメン15の先端開口から生食を放出してキャップ12を洗浄し、観察部20の視野を改善することができる。
以上で留置システム1の使用前の準備は終了するが、剥離部30および電極100は、必ずしもこのときに挿入する必要はなく、導入具10が迷走神経付近に到達した後に挿入されてもよい。この場合は、必要に応じて第二ルーメン14、第三ルーメン15の基端側に栓をしておくのが好ましい。
小切開に導入具10を挿入後、術者は、観察部20でキャップ12の周囲の様子を確認しながら、本体11を持って軸線方向に力を加え、導入具10を体内に向かって押し込む。図8に示すように、胸郭上口Tiは気管Tcに近い位置にあるため、導入具10を挿入すると、程なくして観察部20の視野内に、白っぽい管状の気管Tcが見えてくる。この例では気管Tcを迷走神経Vnへのガイドとして利用することができる。
生体組織の多くを占める疎性結合組織には血管は少なく、また鋭利でない円錐部12Bが血管を切断することもほとんどないため、導入具10を前進させている間の出血はそれほど多くない。しかし、鈍的に切開された生体組織からは、組織間液等の体液が滲出してくるため、必要に応じて排液ポンプ3を用いて吸引、排出する。
一般的に、神経に電気的な刺激を印加すると、神経の種類に応じた生体反応が患者に起こる。例えば、迷走神経を刺激した場合には患者の心拍数が低下し、横隔神経を刺激した場合には患者の腹部の周囲が痙攣することが知られている。
術者は、接近した神経に適宜判別電極18、19を接触させて、患者Pの生体反応を直接観察することで、導入具10が接近した神経が迷走神経Vnか否かを識別することができる。
この神経が迷走神経Vnであれば、この神経に対して以下で説明する処置を行う。また、この神経が迷走神経Vnでなければ、導入具10を前進させるルートを変え、迷走神経Vnが見つかるまで上述の手順を繰り返す。
なお、迷走神経Vnに対する剥離処理中や電極100の留置時等に、処置を行う空間にシリンジ4を用いて生理食塩液(生食)を注入吸引すると、観察部20の視野を明瞭にすることができる。また、生食に代えて二酸化炭素ガスを当該空間に供給し、周辺の組織を押しのけることによって、処置のためのスペースを形成してもよい。
導入具10の抜去により、電極100留置のための一連の作業は終了する。
このように神経の種類を識別することで、治療対象でない神経に刺激するのを抑え、治療対象である迷走神経Vnに電極100を留置することができる。
判別電極18、19は、本体11の全周にわたり形成されている。このため、本体11に対して本体11の軸線回りのいずれの方向に神経が位置している場合であっても、軸線回りに本体11を回転させる必要なく、その神経に判別電極18、19を容易に接触させることができる。
例えば、図12に示す導入具10Aのように、本体11の先端部の外面において、判別電極18A、19Aを本体11の周方向における一部の範囲のみに形成してもよい。この場合、第一ルーメン13の周方向において、判別電極18A、19Aと同じ位置に、指標部を形成してもよい。
この指標部は、本体11の基端部の外面に設けられた指標部11Aであってもよいし、キャップ12の外面に設けられた指標部12Cであってもよい。
本体11の捩れに対する強度が高い場合には、本体11に指標部11Aを設けることで、術者は、判別電極18A、19Aを直接見なくても判別電極18A、19Aが形成されている周方向の位置が分かる。そして、導入具10Aを自身の軸線回りに回動させることで、判別電極18A、19Aが形成されている周方向の位置を変えることができる。
一方で、キャップ12に指標部12Cを設けることで、本体11の捩れに対する強度が低い場合であっても、観察部20の位置を観察部20で観察することで、判別電極18A、19Aが形成されている周方向の位置が分かる。
導入具10Bの判別電極18B、19Bをこのように構成することで、本体11の長手方向において、神経に判別電極18B、19Bを接触させやすくし、神経の検出範囲を大きくすることができる。
導入具10Cの判別電極18C、19Cをこのように構成することで、導入具10Cの第一ルーメン13に挿通された観察部20により、判別電極18C、19Cに神経が接触している状態を観察することができる。
具体的には、導入具10の第一ルーメン13に内視鏡の挿入部を挿入し、内視鏡で周囲の様子を確認しながら、患者Pに形成した小切開を通して導入具10を挿入していく。このとき、導入具10が何らかの神経に接近した場合には、術者は、必要に応じてその神経に導入具10の判別電極18、19を接触させて患者Pの生体反応を直接観察する。これにより、その神経が迷走神経Vnか否かを識別する。
このように、導入具10を用い、患者Pの生体反応を直接観察することで、判別電極18、19に接触した神経の種類を容易に識別し、手技を迅速に行うことができる。
次に、本発明の第2実施形態について図15を参照しながら説明するが、前記実施形態と同一の部位には同一の符号を付してその説明は省略し、異なる点についてのみ説明する。
図15に示すように、本実施形態の留置システム7は、前記第1実施形態の留置システム1のモニター24に代えて、患者Pの心臓Htにおける電気的な活動状況を測定し、心電図(測定結果)D1を表示する心電図測定器(監視部)51を備えている。
心電図測定器51としては公知の構成のものを用いることができ、心電図測定器51は表示部52および心電図用電極53を備えている。
心電図用電極53は、患者Pの心臓Ht近傍の生体表面に取り付けられる。心電図用電極53で検出された心臓Htの所定部位の電位差は、リード線54を介して不図示の処理装置に伝えられて処理され、表示部52に前述の心電図D1が表示される。
この例では、観察部20の観察光学系21で取得された映像も、表示部52に表示されるようになっている。
すなわち、導入具10の判別電極18、19が迷走神経Vnに接触して迷走神経Vnに微弱な電圧が印加されると、心電図D1におけるRR間隔が長くなったり、心拍数が減少したりする。一方で、交感神経に電圧が印加されると、RR間隔が短くなったり、心拍数が増加したりする。
このように、患者Pの生体反応を目視するだけでなく心電図D1を確認することで、判別電極18、19を接触させた神経の種類をより確実に識別することができる。
次に、本発明の第3実施形態について図16を参照しながら説明するが、前記実施形態と同一の部位には同一の符号を付してその説明は省略し、異なる点についてのみ説明する。
図16に示すように、本実施形態の留置システム8は、前記第1実施形態の留置システム1のモニター24に代えて、患者Pの運動神経における電気的な活動状況を測定し、筋電図(測定結果)D2を表示する筋電図測定器(監視部)61を備えている。
筋電図測定器61としては公知の構成のものを用いることができ、筋電図測定器61は表示部62および筋電図用電極63を備えている。
筋電図用電極63は、患者Pの腹部Abに取り付けられる。筋電図用電極63で検出された腹部Abの所定部位の電位差は、リード線54を介して不図示の処理装置に伝えられて処理され、表示部62に前述の筋電図D2が表示される。
すなわち、導入具10の判別電極18、19が運動神経に接触して運動神経に微弱な電圧が印加されると、その運動神経に対応する筋繊維が興奮するため、その筋繊維の筋電図D2における振幅が大きくなる。
患者Pの体内に挿入した導入具10が迷走神経Vnに到達するまでに、他の神経などを横切る場合がある。神経は白色をなしていて、内視鏡下では神経と脂肪との区別さえ明確でない場合が多い。このような場合であっても、その神経が運動神経である場合には留置システム8を用いることで、運動神経を確実に識別することができる。
そして、判別電極18、19を接触させた神経が運動神経であった場合には、導入具10を前進させるルートを変え、迷走神経Vnが見つかるまで上述の手順を繰り返す。
たとえば、前記第1実施形態から第3実施形態では、導入具が第一および第二ルーメン、および電極用内腔である第三ルーメンの3つの内腔を有する例を説明したが、導入具が有するルーメンの数に制限は無く、いくつでもよい。
前記第1実施形態から第3実施形態では、導入具は一対の判別電極を有していたが、導入具が有する判別電極の数は、適宜設定可能である。
迷走神経Vnに微弱な電圧が印加されると、インスリンの分泌が亢進して血糖値が下がる。患者Pにおける時間の経過に伴う血糖値の変化を測定することで、電圧を印加した神経が迷走神経Vnか否かを識別することができる。
(付記項1)
内腔を有する筒状の本体と、生体組織を鈍的切開可能な鈍的切開部を有し、透明性を有するように形成されて前記本体の先端部に取り付けられた切開部材と、を有する導入具を用いて胸部に位置する対象神経組織へアプローチするアプローチ方法であって、
胸部を切開して前記導入具の挿入部位を形成し、
前記挿入部位に前記導入具の前記鈍的切開部を挿入し、
前記本体に観察部を挿入した前記鈍的切開部で、前記切開部材の周囲を観察しつつ周囲の周辺組織を鈍的に切開して前記導入具を前進させ、
判別電極で神経組織に電圧を印加し、生体反応を観察することで前記神経組織の種類を識別し、
前記対象神経組織付近まで前記切開部材を移動させる。
付記項1に記載のアプローチ方法であって、前記挿入部位を胸郭上口に形成する。
(付記項3)
付記項1に記載のアプローチ方法であって、生体反応を観察するとともに心電図を確認する。
(付記項4)
付記項1に記載のアプローチ方法であって、生体反応を観察するとともに筋電図を確認する。
10、10A、10B、10C 導入具
11 本体
11A、12C 指標部
12 キャップ(切開部材)
12B 円錐部(鈍的切開部)
13 第一ルーメン(第一の内腔)
14 第二ルーメン(第二の内腔)
15 第三ルーメン(電極用内腔)
18、18A、18B、18C、19、19A、19B、19C 判別電極
20 観察部
30 剥離部
51 心電図測定器(監視部)
61 筋電図測定器(監視部)
D1 心電図(測定結果)
D2 筋電図(測定結果)
Claims (9)
- 内腔を有する筒状の本体と、
生体組織を鈍的切開する鈍的切開部を有し、透明性を有するように形成されて前記本体の先端部に取り付けられた切開部材と、
前記本体の先端部の外面および前記切開部材の外面の少なくとも一方に設けられた判別電極と、
を備えることを特徴とする導入具。 - 前記判別電極は、前記本体の全周にわたり形成されていることを特徴とする請求項1に記載の導入具。
- 前記判別電極は、前記本体の周方向における一部の範囲のみに形成されていることを特徴とする請求項1に記載の導入具。
- 前記本体の基端部および前記切開部材の少なくとも一方には、前記内腔の周方向において、前記判別電極と同じ位置に指標部が形成されていることを特徴とする請求項3に記載の導入具。
- 前記判別電極は、前記本体の長手方向に延在するように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の導入具。
- 所望の神経組織に神経刺激電極を留置するための神経刺激電極留置システムであって、
請求項1に記載の導入具と、
前記切開部材を通して前記切開部材の周囲を観察可能に前記導入具に挿入される観察部と、
前記導入具に対して自身の軸線回りに回転可能かつ前記軸線方向に相対移動可能に配置され、前記神経組織周辺の周辺組織を除去する剥離部と、
を備えることを特徴とする神経刺激電極留置システム。 - 生体の状態を測定し、測定結果を表示する監視部を備えることを特徴とする請求項6に記載の神経刺激電極留置システム。
- 前記測定結果は心電図であることを特徴とする請求項7に記載の神経刺激電極留置システム。
- 前記測定結果は筋電図であることを特徴とする請求項7に記載の神経刺激電極留置システム。
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