JP2013089891A - 圧電体前駆体溶液、圧電セラミックスの製造方法、圧電素子の製造方法、液体噴射ヘッドの製造方法、及び、液体噴射装置の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】少なくともビスマス、バリウム、鉄及びチタンを含むペロブスカイト型酸化物を形成するための圧電体前駆体溶液は、少なくとも、ビスマス塩、バリウム塩、鉄塩、並びに、チタンの部分アルコキシド(チタンにアルコキシ基及び該アルコキシ基以外の官能基が結合したチタン化合物)を含む。圧電セラミックスの製造方法は、前記圧電体前駆体溶液を塗布する工程と、該塗布した前駆体溶液を結晶化させてペロブスカイト型酸化物を含む圧電セラミックスを形成する工程と、を備える。圧電素子の製造方法は、前記圧電セラミックスに電極を形成する工程を備える。液体噴射ヘッドの製造方法は、前記圧電素子の製造方法により圧電素子を形成する工程を備える。
【選択図】図1
Description
少なくとも、ビスマス塩、バリウム塩、鉄塩、並びに、チタンにアルコキシ基及び該アルコキシ基以外の官能基が結合したチタン化合物を含む態様を有する。
また、本発明は、上記圧電体前駆体溶液を塗布する工程と、
該塗布した前駆体溶液を結晶化させてペロブスカイト型酸化物を含む圧電セラミックスを形成する工程と、を備えた、圧電セラミックスの製造方法の態様を有する。
前記圧電セラミックスに電極を形成する工程と、を備えた、圧電素子の製造方法の態様を有する。
さらに、本発明は、上記圧電素子の製造方法を含む液体噴射ヘッドの製造方法の態様を有する。
さらに、本発明は、上記液体噴射ヘッドの製造方法を含む液体噴射装置の製造方法の態様を有する。
上記前駆体溶液にMnが含まれていると、圧電体層の絶縁性を高く(リーク特性を改善)する効果が期待される。
まず、図1〜5を参照して、本製造方法の例を説明する。図2及び図4(c)に例示する記録ヘッド(液体噴射ヘッド)1は、圧電体層(圧電セラミックス)30及び電極(20,40)を有する圧電素子3と、ノズル開口71に連通し圧電素子3により圧力変化が生じる圧力発生室12とを備えている。従って、液体噴射ヘッドの製造方法は、圧電素子を形成する工程と、圧力発生室を形成する工程と、を備えることになる。圧力発生室12は、流路形成基板10のシリコン基板15に形成されている。ノズル開口71は、ノズルプレート70に形成されている。流路形成基板10の弾性膜(振動板)16上に下電極(第1電極)20、圧電体層30及び上電極(第2電極)40が順に積層され、圧力発生室12が形成されたシリコン基板15にノズルプレート70が固着されている。
なお、本明細書で説明する位置関係は、発明を説明するための例示に過ぎず、発明を限定するものではない。従って、第1電極の上以外の位置、例えば、下、左、右、等に第2電極が配置されることも、本発明に含まれる。
塗布工程S1では、少なくとも、ビスマス塩、バリウム塩、鉄塩、並びに、チタンにアルコキシ基(アルコキシル基ともいう。)及び該アルコキシ基以外の官能基が結合したチタン化合物を含む圧電体前駆体溶液を塗布する。図1(a)の例では、電極(20)の表面に前駆体溶液31を膜状に塗布している。
Ti(OR1)n(R2)4-n (I)
で表される化合物を用いることができる。ここで、OR1はアルコキシ基、R1は炭化水素基、R2はOR1以外の1価の官能基、nは1〜3の整数、を示す。炭化水素基には、飽和鎖式のアルキル基や脂環式の炭化水素基が含まれる。上記式(I)で表されるチタンの部分アルコキシドを用いると、圧電体層のクラックを抑制する効果が向上する。
nは、2が好ましいが、1又は3でもよい。
Ti(OR11)(OR12)(R21)(R22) (II)
Ti(OR11)(OR12)(OR13)(R2) (III)
Ti(OR1)(R21)(R22)(R23) (IV)
式中、OR11,OR12,OR13は互いに異なるアルコキシ基、R21,R22,R23は互いに異なる官能基(アルコキシ基を除く。)、を示す。
アルコキシ基以外の官能基には、アセチルアセトネートといったアセトネート(アセトナートともいう。)系の官能基、オクチレングリコレートといったグリコレート(グリコラートともいう。)系の官能基、2−エチルヘキサン酸の共役塩基といったカルボキシレート(カルボキシラートともいう。)基、等が含まれる。
圧電薄膜の亀裂進展評価は、ビッカース硬さ試験法に準じた所定の圧子を薄膜表面に所定の試験荷重で押し込み、薄膜表面に亀裂が進展するか否かを調べることにより行うことができる。
以上より、圧電体層のクラックを抑制するためには、少なくとも、ビスマス塩、バリウム塩、鉄塩、及び、チタンの「部分アルコキシド」を含む前駆体溶液を用いて圧電体層を形成すればよい。
(Bi,Ba)(Fe,Ti)Oz …(1)
(Bi,Ba,MA)(Fe,Ti)Oz …(2)
(Bi,Ba)(Fe,Ti,MB)Oz …(3)
(Bi,Ba,MA)(Fe,Ti,MB)Oz …(4)
ここで、MAはBi、Ba及びPbを除く1種以上の金属元素であり、MBはFe、Ti及びPbを除く1種以上の金属元素である。zは、3が標準であるが、ペロブスカイト構造をとり得る範囲内で3からずれてもよい。Aサイト元素とBサイト元素との比は、1:1が標準であるが、ペロブスカイト構造をとり得る範囲内で1:1からずれてもよい。
Fe,Ti,MBのモル数合計に対するFeのモル数比は、例えば50〜99.9%程度とすることができる。Fe,Ti,MBのモル数合計に対するTiのモル数比は、例えば0.1〜50%程度とすることができる。Fe,Ti,MBのモル数合計に対するMBのモル数比は、例えば0.1〜33%程度とすることができる。
上記第1加熱工程では、乾燥温度<脱脂温度<結晶化温度として、電極(20)の表面の塗布膜(31)を乾燥温度で加熱した後、乾燥処理後に電極(20)の表面の塗布膜(31)を脱脂温度で加熱してもよい。
図2は、液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッド1を便宜上、分解した分解斜視図である。図3,4は、記録ヘッドの製造方法を例示するための断面図であり、圧力発生室12の長手方向D2に沿った垂直断面図である。記録ヘッド1を構成する各層は、接合されて積層されてもよいし、分離されない材料の表面を変性する等して一体に形成されてもよい。
形成される圧電体層30の厚みは、電気機械変換作用を示す範囲で特に限定されないが、例えば0.2〜5μm程度とすることができる。好ましくは、製造工程でクラックが発生しない程度に圧電体層30の厚さを抑え、十分な変位特性を示す程度に圧電体層30を厚くするとよい。
一般的には、圧電素子3の何れか一方の電極を共通電極とし、他方の電極及び圧電体層30を圧力発生室12毎にパターニングして圧電素子3を構成する。図2,4に示す圧電素子3は、下電極20を共通電極とし、上電極40を個別電極としている。
なお、圧力発生室12は、圧電素子3の形成前に形成されてもよい。
以上により、記録ヘッド1が製造される。
なお、記録ヘッドは、下電極を共通電極とし上電極を個別電極とした共通下電極構造とされてもよいし、上電極を共通電極とし下電極を個別電極とした共通上電極構造とされてもよいし、下電極及び上電極を共通電極とし両電極間に個別電極を設けた構造とされてもよい。
図5は、上述した記録ヘッド1を有する記録装置(液体噴射装置)200の外観を示している。記録ヘッド1を記録ヘッドユニット211,212に組み込むと、記録装置200を製造することができる。図5に示す記録装置200は、記録ヘッドユニット211,212のそれぞれに、記録ヘッド1が設けられ、外部インク供給手段であるインクカートリッジ221,222が着脱可能に設けられている。記録ヘッドユニット211,212を搭載したキャリッジ203は、装置本体204に取り付けられたキャリッジ軸205に沿って往復移動可能に設けられている。駆動モーター206の駆動力が図示しない複数の歯車及びタイミングベルト207を介してキャリッジ203に伝達されると、キャリッジ203がキャリッジ軸205に沿って移動する。図示しない給紙ローラー等により給紙される記録シート290は、プラテン208上に搬送され、インクカートリッジ221,222から供給され記録ヘッド1から吐出するインクにより印刷がなされる。
以下、実施例を示すが、本発明は以下の例により限定されるものではない。
Pt/TiOx(酸化チタン)/SiO2/Siの各層を有する基板を次のようにして作製した。
まず、Si基板を拡散炉中で1100℃の熱酸化を行い、膜厚1.3μmのSiO2膜をSi基板表面に形成した。次に、SiO2膜表面にDCスパッタ法により膜厚20nmのTi膜を成膜して、ランプ熱処理装置(RTA法)で酸素中700℃5分間の熱処理を行い、TiOx薄膜を形成した。さらに、TiOx膜表面に330℃300WのDCスパッタ法により膜厚130nmのPt薄膜を形成した。
(BFM−BT前駆体溶液作製)
Bi,Fe,Mn,Ba各金属元素の前駆体材料として2−エチルヘキサン酸塩を用いた。Tiの前駆体材料には、実施例1としてチタンジイソプロポキシビス(アセチルアセトネート)、実施例2としてチタンジオクチロキシビス(オクチレングリコレート)、多価のチタンの各結合が全てアルコキシ基以外の官能基との結合とされた比較例1として2−エチルヘキサン酸チタン、多価のチタンの各結合が全てアルコキシ基との結合とされた比較例2としてチタニウムテトライソプロポキシド、を用いた。
溶解する金属のモル比は、Bi:Fe:Mn=100:95:5、Ba:Ti=100:100、且つ、BFM:BT=75:25にした。ここでBFM−BTは、一般式(Bi,Ba)(Fe,Ti,Mn)Ozで表され、Bi:Fe:Mn:Ba:Ti=75:71.25:3.75:25:25となる。また、BFMはBiのモル数、すなわち、FeとMnのモル数の合計、BTはBaのモル数、すなわち、Tiのモル数、を表している。
溶媒にはオクタンとキシレンの混合物を用い、安定化剤として全量の10vol%の2−ジメチルアミノエタノールを添加した。
それぞれの前駆体溶液をPt/TiOx/SiO2/Si基板上に3000rpmでスピンコートし(塗布工程)、加熱して乾燥し(乾燥工程)、さらに加熱して脱脂した(脱脂工程)。これらの工程を8回繰り返して8層に成膜し、ランプ熱処理装置(RTA法)で800℃5分間の熱処理により結晶化させてBFM−BTの圧電薄膜を形成した。
実施例1,2及び比較例1,2のBFM−BT薄膜について、所定の圧子を薄膜表面に所定の試験荷重で押し込み、薄膜表面に亀裂が進展するか否かを目視で調べた。図1(b)に示すように、実施例2の亀裂進展が最も遅く、実施例1の亀裂進展も比較例1,2の亀裂進展よりも遅かった。このように、チタンの部分アルコキシドを含む前駆体溶液を用いた圧電体層は、チタンの部分アルコキシドを含まない前駆体溶液を用いた圧電体層と比べて亀裂の進展が遅い、すなわち、クラックが生じ難いことが分かる。
各BFM−BT薄膜の表面をSEM(走査型電子顕微鏡)で観察した。図1(b)に示すように、実施例1,2によるBFM−BT薄膜は、比較例1,2によるBFM−BT薄膜と比較して結晶粒界が平滑な薄膜表面を示した。このように、チタンの部分アルコキシドを含む前駆体溶液を用いた圧電体層は、チタンの部分アルコキシドを含まない前駆体溶液を用いた圧電体層と比べて表面が平滑になることが分かる。
各BFM−BT薄膜についてX線回折広角法(XRD)によりX線回折チャートを求めたところ、いずれも(110)面に優先配向していることが分かり、大きな差は無かった。
本発明は、種々の変形例が考えられる。
上述した実施形態では圧力発生室毎に個別の圧電体を設けているが、複数の圧力発生室に共通の圧電体を設け圧力発生室毎に個別電極を設けることも可能である。
上述した実施形態では流路形成基板にリザーバの一部を形成しているが、流路形成基板とは別の部材にリザーバを形成することも可能である。
上述した実施形態では圧電素子の上側を圧電素子保持部で覆っているが、圧電素子の上側を大気に開放することも可能である。
上述した実施形態では振動板を隔てて圧電素子の反対側に圧力発生室を設けたが、圧電素子側に圧力発生室を設けることも可能である。例えば、固定した板間及び圧電素子間で囲まれた空間を形成すれば、この空間を圧力発生室とすることができる。
また、上述した実施形態及び変形例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成、公知技術並びに上述した実施形態及び変形例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成、等も実施可能である。本発明は、これらの構成等も含まれる。
Claims (7)
- 少なくともビスマス、バリウム、鉄及びチタンを含むペロブスカイト型酸化物を形成するための圧電体前駆体溶液であって、
少なくとも、ビスマス塩、バリウム塩、鉄塩、並びに、チタンにアルコキシ基及び該アルコキシ基以外の官能基が結合したチタン化合物を含む、圧電体前駆体溶液。 - 前記チタン化合物が一般式Ti(OR1) n(R2)4-n(式中、OR1はアルコキシ基、R2は前記OR1以外の1価の官能基、nは1〜3の整数、を示す。)で表される化合物である、請求項1に記載の圧電体前駆体溶液。
- 前記チタンに結合した前記アルコキシ基以外の官能基がアセトネート系の官能基、グリコレート系の官能基、カルボキシレート基、の中から選ばれる一種以上の官能基である、請求項1又は請求項2に記載の圧電体前駆体溶液。
- 請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の圧電体前駆体溶液を塗布する工程と、
該塗布した前駆体溶液を結晶化させてペロブスカイト型酸化物を含む圧電セラミックスを形成する工程と、を備えた、圧電セラミックスの製造方法。 - 請求項4に記載の圧電セラミックスの製造方法により圧電セラミックスを形成する工程と、
前記圧電セラミックスに電極を形成する工程と、を備えた、圧電素子の製造方法。 - 請求項5に記載の圧電素子の製造方法により圧電素子を形成する工程を備えた、液体噴射ヘッドの製造方法。
- 請求項6に記載の液体噴射ヘッドの製造方法により液体噴射ヘッドを形成する工程を備えた、液体噴射装置の製造方法。
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