JP2013085927A - 流出した血液の凝固方法及びその利用方法 - Google Patents

流出した血液の凝固方法及びその利用方法 Download PDF

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Abstract

【課題】生体組織から流出した血液を速やかに凝固させること。
【解決手段】発光ダイオード(LED)から発せられる、波長が380〜515nmの青紫のスペクトル帯域の光を生体組織から流出した血液表面へ照射すること。
【選択図】なし

Description

本発明は、医学、歯学、生物学等の分野において有用な生体から流出する血液の凝固方法に関するものである。
医学、歯学領域の治療技術は、近年、著しく発展してきたが、どんなにその技術が発展しても生体組織を侵襲した際に起こる出血は避けては通れない現象である。同様に、その他の理由で生体が創傷されたときにも必ず出血が起こる。その出血の処置についてはその規模にもよるが、毛細血管を切断した程度の出血であれば、これまでその出血部を圧迫して例えば血小板等の生体が本来持っている血液凝固システムによって止める方法、出血部を焼き生体組織を熱凝固する方法、或いは薬物によって出血を抑える方法がとられてきた。最近では各種レーザーによる止血技術が発展してきたが、今なお、生体に対して負荷のかからないより良い処置方法、そして速やかに止血させる方法が求められている。
日本は高齢化社会を迎え、平均寿命は世界最高となっている。人々の希望は単なる延命よりも、より良く生きるというクオリティー・オブ・ライフ(QOL)に重点が置かれるようになってきており、話すことと食べることは特に高齢者にとって生き甲斐に通じる重要な機能であり、その意味で歯の保存を含めた咀嚼器官の健康維持はQOLを左右する大きな要因といえる。咀嚼は食物摂取に欠かせない機能であり、しかも最近の咀嚼システムの研究では、咀嚼は脳細胞を刺激し精神・神経の発達や賦活化を促すこと、免疫機能を高めること、更には肥満を抑制する等の様々な全身機能への影響が明らかになりつつある。したがって歯を失うことによる咀嚼機能の衰えは、痴呆への道中を加速することや、生活習慣病などを引き起こす可能性につながる。現在歯周病に羅患している人口割合は35〜65歳の中高年世代では80%を越え、歯周治療における人々の要求も高くその内容も様々である。また歯周病の発症と進行には多くの関連因子が複雑に関与しており、これまで行われてきた口腔清掃を中心とした予防処置だけでは解決することはできない。不幸にも歯周病にかかり治療を行う場合、その多くは機能回復と審美的な改善を求めるものであり、現段階ではこれらの需要に対して、従来行われてきた非再生療法を中心とする治療法では不十分といわざるを得ず、失われた歯周組織を再生し得る革新的な治療法が求められている。
歯は上皮を突き破って口腔内に露出しており、歯と歯肉との境界で上皮の連続性が失われており、生体の中でも極めて特殊な環境にある。歯と歯肉は「上皮性付着」と「結合組織性付着」によって構成されている。前者は接合上皮と呼ばれる上皮が、ヘミデスモゾームと基底板を介して歯面(エナメル質)に接着している。後者は歯根膜(歯周靭帯)により構成され、歯根面セメント質内にコラーゲン線維が石灰化しながら埋入し、その線維が歯槽骨内にも同じく石灰化しながら埋入し歯肉線維に移行することにより、歯を歯槽骨や歯肉と強固に結合させている。
歯周病とは、プラーク細菌を原因とする歯周組織における炎症性疾患であり、「歯肉炎」と「歯周炎」に分類される。歯肉のみに炎症が限局した「歯肉炎」と、炎症が歯根膜、歯槽骨にいたり、歯根膜による付着が破壊された場合を「歯周炎」と呼ぶ。通常は歯肉炎から歯周炎へと進行し、歯牙の周囲にポケット(溝)を形成する。ポケットが深くなるにつれて、ポケット内のプラーク細菌が増殖し炎症がより深部へと進行する.全身的な修飾因子(薬剤、血液疾患、免疫疾患、栄養状態、ストレス、疲労、喫煙等)が関与しているほか、歯軋り等の歯牙に対する力学的負担が過大となる場合に見られる曖合性外傷と呼ばれるような局所的な修解因子が、炎症を悪化させる。重度歯周炎に罹患して組織破壊が高度に進行した症例では、抜歯を免れても一度失われた歯周組織は元の形態機能を回復することはなく、治癒後は著しい機能・審美障害が残り患者のQOLを低下させる大きな要因となっている。
歯槽骨の吸収は歯周炎の特徴的な病態の一つであるが、それと同時に生ずる歯根セメント質および歯周靭帯(歯根膜)の喪失が歯周炎の本態である。歯根膜はその名のとおり靭帯様構造を示し、歯根表面のセメント質を介して歯を歯槽骨のソケット内に懸架して強大な咬合圧に対するクッションの役割を果たし、また血管成分に富み代謝活性が高く歯周組織の恒常性の維持に重要な役割を果たしている。半世紀近くにわたる歯周組織再生を目的とした数多くの研究にもかかわらず未だ適当な治療法が確立していないのは、歯槽骨だけではなくこの歯根膜組織を同時に再生させることが非常に困難だからである。歯根膜再生が伴わない場合には口腔内上皮の欠損部への進入や歯根の骨性癒着が生じて生物学的に不安定な状態で治癒することが明らかになっており、これらは歯周炎の再発や歯の脱落を招く原因となる。
この歯周炎を治療するために、現在、スケーリング・ルートプレーニング(S・RP)が行われている。これは、歯周炎に対する治療の基本となる術式で、歯周炎に羅患した部位において感染性の組織を機械的に除去し、主に細菌感染により汚染された歯根表面セメント質および歯根膜、歯肉組織を特殊な器具を用いて除去し、歯根面に周囲組織の付着しやすい形態を付与させ自然治癒を期待する方法である。治癒形態はおもに処置根面に上皮が進行増殖して形成される上皮性付着が主体となる。この方法であれば、外科的処置が必要なく、無麻酔もしくは局所的な浸潤麻酔のみで処置でき、審美的及び機能的に問題のない部位であれば必要十分な処置法である。しかしながら、進行した歯周炎において歯槽骨が破壊された症例では処置後に再感染が予想される場合、この処置法のみでは不十分である。また、歯牙の形態が複雑な部位では術式が困難となり易く、この場合は外科的処置法が適応となる。S・RPのみでは処置しきれない複雑な形態をもつ部位に対して、外科的に歯肉弁(フラップ)を形成し明視下で治療するといった外科的処置が施される。治癒形態は基本的にはS・RPと同じ上皮性付着を期待するものである。そして、これらの処置には常に出血という現象を抑える必要性がある。
こうした中、歯周組織を積極的に再建しようとする再生医療技術が活発に研究され始めた。幾つかの技術は、すでに治療に利用されており、骨切除や骨移植、粘膜移植等が挙げられる。この歯槽骨移植としては、自家・他家・異種骨移植・人工骨移植に分類される。
主に自家骨移植が行われ、口腔内の別の部位から採取される骨片を骨欠損部に移植する方法である。また他家骨移植においては脱灰凍結乾燥他家移植骨(DFDBA)が欧米で用いられ良好な臨床成績を上げている。人工骨では代表的なものでハイドロキシアバタイト(HA)が用いられる。治癒形態はS・RPのみに比較すると欠損部位における血餅の保持において有効に働く面もあり、上皮侵入を阻害すると同時に、歯根膜細胞が遊走しやすい条件を提供できると考えられるが、動物実験において治癒形態の主体はやはり新生セメント質及び歯根膜の再生を起こさない上皮性付着が主体となることが報告されている。自家骨移植は抗原性や感染の問題が最も低く、当然受給部に受け入れられやすい。また、骨移植材に骨伝導能・骨誘導能が期待できる利点がある。しかしながら、自家骨移植では必要量の移植骨を確保することが難しい。また、他家・異種骨移植は抗原性・感染性の問題が残っており、移植材の種類を問わず、骨欠損部位が大きく、歯根面と移植骨が接する範囲が大きいと歯牙の骨性癒着(アンキローシス)を起こすという問題点があった。
1970年代後半から80年代にかけてスカンジナヴィアの研究グループは、上皮組織および歯肉結合組織は歯根膜の再生能に欠け、また骨組織は歯根表面に対して骨性癒着を引き起こすことを確認し、歯根膜組織の再生には歯根膜組織由来の細胞が欠損部、特に歯根表面に存在することが必要であることを見出した。この概念に基づいて考案されたのが組織再生誘導法(GTR法)であり、この方法とは治癒過程において増殖速度が速く早期に欠損部に進入する上皮細胞を生体親和性遮断膜で抑制し、同時に欠損部のスペースメイキングを行うことにより歯根膜組織再生を可能にするものである。この方法は、現在、最も歯周組織再生が期待できる方法であり、スペースメイキングが容易な骨欠損形態を示す部位において良好な成績を収めている。しかしながら、この方法では臨床術式が複雑であること、複雑な欠損形態を示す部位に関しては生体親和性膜を歯根面に正確に設置することが難しいこと、また治癒期間中は感染の問題からその膜上が歯肉弁で完全に被覆されていなければならず、予後が術式及び環境に左右され易い問題点があった。また、その生体親和性膜には吸収性と非吸収性があり、前者を使用した場合膜を除去するための再手術が必要となり、後者は再手術の必要はないがスペースメイキングをする上で強度的に問題が残る。また残存歯根膜からの細胞遊走を期待しているため再生量が限られてしまう他、膜の保持という観点からも適応症例は垂直性骨欠損の一部だけになる。中高年に広く見られる広範型慢性歯周炎においては水平性骨吸収が主な病態であり、このGTRでは対応できない場合が少なくない。
このように、歯周組織の再生において歯根膜由来細胞が不可欠な因子であることが解かっていても、このGTR法をはじめとする従来の治療法は成長因子の応用はあるものの残存組織からの細胞遊走を期待するだけであり、そのため組織再生量は欠損形態あるいは残存歯根膜組織量に大きく影響され、その適応症が限られてしまうのが現状である。高度に破壊された歯周組織においては再生の基盤となる細胞を残存周囲組織からの遊走に期待するだけでは不充分であり外来性に供給することが必要であることが明らかになりつつある。歯周組織における再生療法の目的は、いかにこの上皮性付着による治癒を抑制し、歯根膜による結合組織性付着を獲得するかに焦点が置かれている。
近年、その細胞移植法を行うことによって組織再生を目指す研究がいくつか報告された。これらは単一の細胞を3次元的マトリックスに播種し組織欠損部へ注入移植を行ったものが多いが、そのいずれも未だ期待した組織構築を実現するには至っていない。理由として考えられるのは細胞ソースの選択、そして組織欠損内において細胞分化の局在性をコントロールすることが難しいためであると考えられる。歯周組織再生には歯根表面にセメント質新生が伴うことが必須であり、軟組織である歯周靭帯のみならずこのセメント質、また歯槽骨という硬組織を同時に再生させ機能的に相互結合させる必要がある。これらの組織がそれぞれ異なる組織特異的な前駆細胞や成長因子の作用により時間差をもって形成されるならば、歯周組織再生における細胞移植法はより繊細なものでなければならない。つまり単にスペースメイキングされた欠損部に単一の細胞を注入して生体内での組織分化に任せるのではなく、細胞の配置場所を規定しそれぞれの部位に適切な細胞を配置することが必要とされる。
その際に必要となる細胞は、ガラス表面上あるいは種々の処理を行った合成高分子の表面上にて培養されてきた。例えば、ポリスチレンを材料とする表面処理、例えばγ線照射、シリコーンコーティング等を行った種々の容器等が細胞培養用容器として普及している。このような細胞培養用容器を用いて培養・増殖した細胞は、トリプシンのような蛋白分解酵素や化学薬品により処理することで容器表面から剥離・回収される。しかし、上述のような化学薬品処理を施して増殖した細胞を回収する場合、処理工程が煩雑になり、不純物混入の可能性が多くなること、及び増殖した細胞が化学的処理により変成若しくは損傷し細胞本来の機能が損なわれる例があること等の欠点が指摘されていた。
かかる欠点を克服するために、これまでいくつかの技術が提案されている。その中で、特に特許文献1では、水に対する上限もしくは下限臨界溶解温度が0〜80℃である温度応答性ポリマーを基材表面に被覆した細胞培養支持体上で前眼部関連細胞を培養し、必要に応じて常法により培養細胞層を重層化させ、支持体の温度を変えるだけで培養した細胞シートを剥離させることで、十分な強度を持った細胞シートの作製が可能となった。また、この細胞シートには基底膜様蛋白質も保持しており、上述したディスパーゼ処理したものに比べ、組織への生着性も明らかに改善されている。そして、その温度応答性ポリマーで基材表面を被覆した細胞培養支持体上で歯根膜細胞を培養し、歯根膜細胞シートを得、その後、培養液温度を上限臨界溶解温度以上又は下限臨界溶解温度以下とし、培養した歯根膜細胞シートを高分子膜に密着させ、そのまま高分子膜と共に剥離させること、及びそれを所定の方法で3次元構造化させることにより、構造欠陥の少ない、in vitroでの歯根膜様組織として幾つかの機能を備えた細胞シート、及び3次元構造が構築されることを見いだした(特許文献2、非特許文献1、非特許文献2)。しかしながら、いずれの方法においても、生体組織をより良く再生するためには、生体にさらに良好に付着させる検討が必要であった。
特開平2−211865号公報 再表2005−103233号公報
Tissue Engineering,11(3/4),469−478(2005) Journal of Periodontal Research,43,364−371(2008)
本発明は、上記のような生体から流出する血液の凝固に関する問題点を解決することを意図してなされたものである。具体的には、生体からの出血を抑える方法として、流出する血液の表面をアモルファス化させ凝固させる方法を示す。また、その過程で判明した当該凝固方法の利用方法を提案することを意図してなされたものである。すなわち、本発明は、従来技術と全く異なった発想からの生体から流出する血液の凝固方法を提供することを目的とする。また、本発明は、その凝固方法の利用方法を提供することも目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために、種々の角度から検討を加えて、研究開発を行った。その結果、発光ダイオード(LED)から発せられる、波長が380〜515nmの青紫のスペクトル帯域の光を生体組織から流出した血液へ照射すると、当該血液表面が速やかに凝固させられ、しかも生体への影響が極めて低いことを見出した。しかもその凝固方法は、単に出血を止める効果があるばかりでなく、生体組織を再生する場として、或いは組織再生を目的とした歯根膜細胞シートの接着する場としても極めて有用であることも見出した。本発明はかかる知見に基づいて完成されたものである。
すなわち、本発明は、生体組織から流出した血液を凝固させる方法として、発光ダイオード(LED)から発せられる、波長が380〜515nmの青紫のスペクトル帯域の光を照射する方法を提供する。また、本発明は当該血液凝固方法によって得られた組織再生に有用な血餅を利用する方法、加えて当該凝固方法によって得られた血液凝固方面を生体組織再生医療に有効な細胞シートを移植する場として利用する方法を提供する。
本発明の方法に従えば、生体組織から流出した血液の表面を速やかに凝固させることができる。この方法は、出血を抑えるばかりではなく、その凝固によって得られた血餅が生体組織の再生や細胞シートの接着する場としても有用である。このような技術は、生体内のいずれの部位においても有用であり、本発明は細胞工学、医用工学などの医学、歯学、生物学等の分野における極めて有用な発明である。
実施例1の抜歯直後の患部の出血のようすを示す図である。 実施例1の青色LED光を10秒間照射した後のようすを示す図である。 実施例1の1週間後の患部のようすを示す図である。 実施例2の実験方法を示す図である。 実施例2で凝固させた血液の断面のようすを透過型電子顕微鏡で観察した結果をを示す図である。図中の矢印(→)がさしている部分が青色LED照射によって形成された血液表面のアモルファス層であり、この層の存在により生体組織から流出した血液を抑える役割を有する。図中の小さな*印は上記アモルファス層の形成によって集まってきた血小板であり、大きな*印は上記アモルファス層の形成によって集まってきた他の細胞成分である。図中のPMLは多形核白血球、RBCは赤血球を示す。図中のバーは2μmを示す。 実施例2の図5の矢印部分を拡大して透過型電子顕微鏡で観察した結果を示す図である。図5と同様に、図中の矢印(→)がさしている部分が青色LED照射によって形成された血液表面のアモルファス層であり、この層の存在により生体組織から流出した血液を抑える役割を有する。図中の小さな*印は上記アモルファス層の形成によって集まってきた血小板であり、大きな*印は上記アモルファス層の形成によって集まってきた他の細胞成分である。図中のRBCは赤血球を示す。図中のバーは1μmを示す。 比較例1の青色LED未照射時の血液のようすを透過型電子顕微鏡で観察した結果を示す図である。血液表面にアモルファス層は認められず、また血小板が集まってくるようすも観察されなかった。図中のRBCは赤血球を示す。図中のバーは1μmを示す。を示す図である。
本発明は生体組織から流出する血液を凝固させる技術である。その方法とは、当該血液表面へ波長が380〜515nmの青紫のスペクトル帯域の発光ダイオード(LED)から発せられる光を照射することによる。この青色LEDを血液表面へ照射するとヘモグロビン(最大吸収波長:430nm)と反応し、即時に血液表面が凝固し、止血できることが分かった。本発明は、この430nm領域を含む青色LEDから発せられる光を利用するものであり、したってこの光であれば特に限定されるものではなく、それを発生さえるためのダイオード、装置、照射治具等の種類、サイズ、形状等に何ら限定されるものではない。また、本発明においては青色LED光の照射時間、照射距離、その他の照射方法についても何ら限定されるものではない。本発明の青色LEDから発せられる光を利用すれば生体組織に有害な紫外線の発生もなく好都合である。
本発明による血液凝固機構は必ずしも十分に解明されている訳ではないが、本発明の青色LEDから発せられる光を生体組織から流出した血液へ照射すると、その血液の表面がアモルファス化し薄い層が形成され、この表層によって血液成分を閉じ込めていることが分かった。本発明ではこのアモルファス化表層によって閉じ込められた血液を血餅と言い、この血餅は生体組織の再生に極めて有効であることも示すものである。このような血餅の利用方法としては特に限定されるものではなく、例えば、生体各部位における創傷、潰瘍等を治癒させる過程、組織再生を目的に行われる細胞シートの移植部位の作製に極めて有用である。また、歯科領域の治療における抜歯後の歯茎の再生、組織再生誘導治療法(GTR法)、インプラントの固定、歯根膜組織の再生を目的に利用する歯根膜細胞シートを移植する場としても極めて有用である。さらには、例えばワーファリン等を服用し血液が固まり難い患者を治療する際に、本発明の方法は生体組織に影響が少ない止血手段として極めて有用である。
ここで、本発明で使用される歯根膜細胞シートとは、キャリアに密着された靭帯様微小構造(「靭帯様」とは、培養歯根膜細胞シートが歯根象牙質に密着、配向している状態を指す)を有する培養歯根膜細胞シートである。本発明の培養歯根膜細胞シートの作製に使用される好適な細胞として歯根膜線維芽細胞、或いはその歯根膜線維芽細胞にさらにセメント芽細胞、骨芽細胞、歯肉線維芽細胞、血管内皮細胞、間葉系幹細胞の少なくとも1つ以上の細胞が混合されたものが挙げられるが、その種類は、何ら制約されるものではない。ここでいう歯根膜細胞とは、それ自身に歯根膜線維芽細胞、セメント芽細胞、骨芽細胞、歯肉線維芽細胞、血管内皮細胞、間葉系幹細胞、及びそれらの幹細胞が含まれていると考える。本発明において、高生着性再生歯根膜細胞シートとは、上記した各種細胞が培養支持体上で単層状に培養され、その後、支持体より剥離されたシートを意味する。得られた細胞シートは培養時に培養支持体に接していた下側面とそれとは反対側の上側面を有する。細胞を培養する際、本発明で示す水に対する上限もしくは下限臨界溶解温度が0〜80℃である温度応答性ポリマーで基材表面を被覆した細胞培養支持体を利用すれば、細胞シート下側面に細胞が培養時に自ら産生した接着性蛋白質が豊富に存在している。
本発明の高生着性再生歯根膜細胞シートとは、上述した歯根膜線維芽細胞、或いはその歯根膜線維芽細胞にさらにセメント芽細胞、骨芽細胞、歯肉線維芽細胞、血管内皮細胞の、間葉系幹細胞少なくとも1つ以上の細胞が混合された単層状のシートであっても良く、またそれを積層化したシートでも良い。ここで積層化シートとは、その高生着性再生歯根膜細胞シートが単独若しくは別の細胞からなるシートと組み合わされた状態のもでも良く、例えば、上述した歯根膜線維芽細胞、或いはその歯根膜線維芽細胞にさらにセメント芽細胞、骨芽細胞、歯肉線維芽細胞、血管内皮細胞、間葉系幹細胞の少なくとも1つ以上の細胞が混合された細胞シートを重ね合わしたもの、上述した単層状細胞シートにこのものとは別のセメント芽細胞、骨芽細胞、歯肉線維芽細胞の少なくとも1つ以上の細胞からなる培養細胞シートを重ね合わしたもの等が挙げられるが特に制約されるものではない。またその積層する位置、順番、積層回数は特に制約されるものではないが、例えば、上述した歯根膜線維芽細胞、或いはその歯根膜線維芽細胞にさらにセメント芽細胞、骨芽細胞、歯肉線維芽細胞、血管内皮細胞、間葉系幹細胞の少なくとも1つ以上の細胞が混合された単層状細胞シートの下側或いは上側の少なくとも一方もしくは双方に同じ細胞シートが積層化されたもの、上述した単層状細胞シートの下側或いは上側の少なくとも一方もしくは双方にこれとは別のセメント芽細胞、骨芽細胞、歯肉線維芽細胞の少なくとも1つ以上の細胞からなる細胞シートが積層化されたもの、或いは歯根膜線維芽細胞、或いはその歯根膜線維芽細胞にさらにセメント芽細胞、骨芽細胞、歯肉線維芽細胞、血管内皮細胞、間葉系幹細胞の少なくとも1つ以上の細胞が混合された単層状細胞シートに対し、同じ細胞シートと別のセメント芽細胞、骨芽細胞、歯肉線維芽細胞の少なくとも1つ以上の細胞からなる細胞シートが積層化されたものでも良い。さらに、その積層化が歯根膜線維芽細胞、或いはその歯根膜線維芽細胞にさらにセメント芽細胞、骨芽細胞、歯肉線維芽細胞、血管内皮細胞、間葉系幹細胞の少なくとも1つ以上の細胞が混合された単層状細胞シートの上側に骨芽細胞からなる細胞シートを重ね、下側にセメント芽細胞からなる細胞シートを重ね合わしたもの、歯根膜線維芽細胞、或いはその歯根膜線維芽細胞にさらにセメント芽細胞、骨芽細胞、歯肉線維芽細胞、血管内皮細胞、間葉系幹細胞の少なくとも1つ以上の細胞が混合された単層状細胞シートの上側に歯肉線維芽細胞からなる細胞シートを重ね、その上にさらに骨芽細胞からなる細胞シートを重ね、下側にセメント芽細胞からなる細胞シートを重ね合わしたものでも良い。積層回数は8回以下が良く、好ましくは6回以下、さらに好ましくは4回以下が良い。8回より多くなると積層化した中心部の細胞シートに酸素、栄養分が行き届かなくなり細胞死してしまい好ましくない。
本発明における上述した細胞を培養するための培地組成は特に限定されるものではなく、これらの細胞を培養する際に通常使われているもので良い。例えば、歯根膜線維芽細胞、或いはその歯根膜線維芽細胞にさらにセメント芽細胞、骨芽細胞、歯肉線維芽細胞、血管内皮細胞、間葉系幹細胞の少なくとも1つ以上の細胞が混合された細胞シートを培養する際の培地として、α−MEM培地、DMEM培地、或いはそれらの混合物に10%ウシ血清を混合したもの、或いはそのものにさらに50μg/ml濃度でアスコルビン酸2リン酸を加えたものでも良い。
本発明における高生着性培養歯根膜細胞シートは培養時にディスパーゼ、トリプシン等で代表される蛋白質分解酵素による損傷を受けていないものである。そのため、基材から剥離された高生着性培養歯根膜細胞シートは、細胞−細胞間のデスモソーム構造が保持され、構造的欠陥が少なく、強度の高いものである。また、本発明のシートは培養時に形成される細胞−基材間の基底膜様蛋白質も酵素による破壊を受けていない。このことにより、移植時において患部組織と良好に接着することができ、効率良い治療を実施することができるようになる。以上のことを具体的に説明すると、トリプシン等の通常の蛋白質分解酵素を使用した場合、細胞−細胞間のデスモソーム構造及び細胞、基材間の基底膜様蛋白質等は殆ど保持されておらず、従って、細胞は個々に分かれた状態となって剥離される。その中で、蛋白質分解酵素であるディスパーゼに関しては、細胞−細胞間のデスモソーム構造については10〜60%保持した状態で剥離させることができることで知られているが、細胞−基材間の基底膜様蛋白質等を殆ど破壊してしまうため、得られる細胞シートは強度の弱いものである。これに対して、本発明の細胞シートは、デスモソーム構造、基底膜様蛋白質共に80%以上残存された状態のものであり、上述したような種々の効果を得ることができるものである。
本発明における高生着性培養歯根膜細胞シートは生体組織である歯根表面に極めて良好に生着する。その性質は、支持体表面から剥離させた培養歯根膜細胞シートの収縮を抑えることで実現されることを見いだした。その際、培養歯根膜細胞シートの収縮率はシート内の何れの方向における長さにおいても20%以下であることが望ましく、好ましくは10%以下、さらに好ましくは5%以下であることが好ましい。シートの何れかの方向の長さにおいて20%以上となると、剥離した細胞シートはたるんでしまい、その状態で生体組織に付着させても組織に密着させられず、本発明で示すところの高生着性は望めない。
培養歯根膜細胞シートを収縮させない方法は、細胞シートを収縮させない方法であれば何ら制約されるものではないが、例えば、支持体から培養歯根膜細胞シートを剥離させる際、これらの細胞シートに中心部を切り抜いたリング状のキャリアなどを密着させ、そのキャリアごと細胞シートを剥離する方法などが挙げられる。
高生着性培養歯根膜細胞シートを密着させる際に使用するキャリアは、本発明の細胞シートが収縮しないように保持するための構造物であり、例えば高分子膜または高分子膜から成型された構造物、金属性治具などを使用することができる。例えば、キャリアの材質として高分子を使用する場合、その具体的な材質としてはポリビニリデンジフルオライド(PVDF)、ポリプロピレン、ポリエチレン、セルロース及びその誘導体、紙類、キチン、キトサン、コラーゲン、ウレタン等を挙げることができる。
本発明において密着という場合、細胞シートが収縮しないように、細胞シートとキャリアとの境界面において、キャリア上で細胞シートがずれたり移動したりしない状態のことをいい、物理的に結合することにより密着していても、両者のあいだに存在する液体(例えば培養液、その他の等張液)を介して密着していてもよい。
キャリアの形状は、特に限定されるものではないが、例えば得られた高生着性培養歯根膜細胞シートを移植する際に、キャリアの一部に移植部位と同程度もしくは移植部位より大きく切り抜いたものを利用すると、細胞シートは切り抜かれた周囲の部分だけに固定され、切り抜かれた部分にある細胞シートを移植部位に当てるだけで良く、好都合である。
また、本発明における培養歯根膜細胞シートの特徴である歯根表面への高い生着性は、特定の培養条件下で実現される。すなわち、本発明の培養歯根膜細胞シートは、支持体表面上に歯根膜細胞を播種後、培養することで得られるが、支持体表面上で細胞がコンフルエント(満杯な状態)になってから21日以下、好ましくは15日以下、さらに10日以下であることが好ましいことが判明した。21日より多いと剥離した培養歯根膜細胞シートの最下層の細胞の活性が低下し、そのため付着性も低減してしまい、本発明に示すところの高生着性は望めなくなる。
本発明の歯根表面とは、歯根部であれば特に限定されるものではなく、一般には、歯周組織の一部或いは全部を損傷もしくは欠損した患部などが挙げられる。このような歯根表面に対し、本発明の高生着性培養歯根膜細胞シートの利用法は特に限定されないが、例えば、本発明の高生着性培養歯根膜細胞シートを被覆する方法が挙げられる。その際、培養歯根膜細胞シートを患部の大きさ、形状に沿って適宜切断しても良い。このように、本発明の高生着性培養歯根膜細胞シートとは、生体組織である歯根表面に極めて良好に付着できるものであり、従来技術からでは全く得られなかったものである。
細胞培養支持体において基材の被覆に用いられる温度応答性ポリマーは、水溶液中で上限臨界溶解温度または下限臨界溶解温度0℃〜80℃、より好ましくは20℃〜50℃を有する。上限臨界溶解温度または下限臨界溶解温度が80℃を越えると細胞が死滅する可能性があるので好ましくない。また、上限臨界溶解温度または下限臨界溶解温度が0℃より低いと一般に細胞増殖速度が極度に低下するか、または細胞が死滅してしまうため、やはり好ましくない。
本発明に用いる温度応答性ポリマーはホモポリマー、コポリマーのいずれであってもよい。このような高分子としては、例えば、特開平2−211865号公報に記載されているポリマーが挙げられる。具体的には、例えば、以下のモノマーの単独重合または共重合によって得られる。使用し得るモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリルアミド化合物、N−(若しくはN,N−ジ)アルキル置換(メタ)アクリルアミド誘導体、またはビニルエーテル誘導体が挙げられ、コポリマーの場合は、これらの中で任意の2種以上を使用することができる。更には、上記モノマー以外のモノマー類との共重合、ポリマー同士のグラフトまたは共重合、あるいはポリマー、コポリマーの混合物を用いてもよい。また、ポリマー本来の性質を損なわない範囲で架橋することも可能である。
被覆を施される基材としては、通常細胞培養に用いられるガラス、改質ガラス、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート等の化合物を初めとして、一般に形態付与が可能である物質、例えば、上記以外の高分子化合物、セラミックス類など全て用いることができる。
温度応答性ポリマーの支持体への被覆方法は、特に制限されないが、例えば、特開平2−211865号公報に記載されている方法に従ってよい。すなわち、かかる被覆は、基材と上記モノマーまたはポリマーを、電子線照射(EB)、γ線照射、紫外線照射、プラズマ処理、コロナ処理、有機重合反応のいずれかにより、または塗布、混練等の物理的吸着等により行うことができる。
温度応答性ポリマーの被覆量は、0.5〜5.0μg/cm2の範囲が良く、好ましくは1.0〜4.0μg/cm2であり、さらに好ましくは1.2〜3.5μg/cm2である。0.5μg/cm2より少ない被覆量のとき、刺激を与えても当該高分子上の細胞は剥離し難く、作業効率が著しく悪くなり好ましくない。逆に5.0μg/cm2以上であると、その領域に細胞が付着し難く、細胞を十分に付着させることが困難となる。本発明における支持体の形態は特に制約されるものではないが、例えばディッシュ、マルチプレート、フラスコ、セルインサートなどが挙げられる。
本発明において、細胞の培養は上述のようにして製造された細胞培養支持体上で行われる。培地温度は、基材表面に被覆された前記ポリマーが上限臨界溶解温度を有する場合はその温度以下、また前記ポリマーが下限臨界溶解温度を有する場合はその温度以上であれば特に制限されない。しかし、培養細胞が増殖しないような低温域、あるいは培養細胞が死滅するような高温域における培養が不適切であることは言うまでもない。温度以外の培養条件は、常法に従えばよく、特に制限されるものではない。例えば、使用する培地については、公知のウシ胎児血清(FCS)等の血清が添加されている培地でもよく、また、このような血清が添加されていない無血清培地でもよい。
本発明の方法において、培養した細胞を支持体材料から剥離回収するには、培養された高生着性培養歯根膜細胞シートをキャリアに密着させ、細胞の付着した支持体材料の温度を支持体基材の被覆ポリマーの上限臨界溶解温度以上若しくは下限臨界溶解温度以下にすることによって、そのままキャリアとともに剥離することができる。なお、シートを剥離することは細胞を培養していた培養液中において行うことも、その他の等張液中において行うことも可能であり、目的に合わせて選択することができる。
本発明では、細胞シートを患部に当てた後、細胞シートをキャリアからはがせば良い。そのはがし方は、何ら制約されるものではないが、例えば、キャリアを濡らしてキャリアと細胞シートの密着性を弱めてはがす方法、或いはメス、はさみ、レーザー光、プラズマ波などの治具を用いても切断する方法でも良い。例えば上述したような一部を切り抜いたキャリアに密着した細胞シートを用いた場合、レーザー光などを用いて患部の境界線に沿って切断すると患部以外の余計なところへの細胞シートの付着を避けられ好都合である。
本発明で示すところの高生着性再生歯根膜細胞シートと生体組織との固定方法は特に限定されるものではなく、細胞シートと生体組織を生体内で使用可能な接着剤による接合、縫合しても良く、或いは本発明で示すところの高生着性培養歯根膜細胞シートは生体組織と速やかに生着するため、このような手段を用いずに患部に付着させるだけでも良い。
本発明における積層化シートは、その積層方法は特に限定されるものではないが、上述したキャリアに密着した高生着性培養歯根膜細胞シートを以下のような方法で行えば良い。
(1)キャリアと密着した細胞シートを細胞培養支持体に付着させ、その後培地を加えることでキャリアを細胞シートからはがし、そして更に別のキャリアと密着した細胞シートを付着させることを繰り返すことで細胞シートを重層化させる方法。
(2)キャリアと密着した細胞シートを反転させ細胞培養支持体上でキャリア側で固定させ、細胞シート側に別の細胞シートを付着させ、その後培地を加えることでキャリアを細胞シートからはがし、再び別の細胞シートを付着させる操作を繰り返すことで細胞シートを重層化させる方法。
(3)キャリアと密着した細胞シート同士を細胞シート側で密着させる方法。
(4)キャリアと密着した細胞シートを生体の患部に当て、細胞シートを生体組織に付着させた後、キャリアをはがし、再び別の細胞シートを重ねていく方法。
高生着性培養歯根膜細胞シートを高収率で剥離、回収する目的で、細胞培養支持体を軽くたたいたり、ゆらしたりする方法、更にはピペットを用いて培地を撹拌する方法等を単独で、あるいは併用して用いてもよい。加えて、必要に応じて培養細胞は等張液等で洗浄して剥離回収してもよい。
本発明に示される高生着性培養歯根膜細胞シートの用途は何ら制約されるものではないが、例えば度歯周炎、重度歯周炎及びその他の歯周関連疾患、歯肉退縮、歯肉炎等の歯肉関連疾患に有効である。
本発明の方法に従えば、生体組織から流出した血液の表面を速やかに凝固させることができる。この方法は、出血を抑えるばかりではなく、その凝固によって得られた血餅が生体組織の再生や細胞シートの接着する場としても有用である。加えて、上述の方法により得られた高生着性培養歯根膜細胞シートは、従来の方法により得られたものに比べて、剥離の際の非侵襲性の点で極めて優れており、移植用歯根膜等として臨床応用が強く期待される。特に、本発明の高生着性培養歯根膜細胞シートは従来の移植シートとは異なり、生体組織との高い生着性を有するため、極めて速く生体組織に生着する。このことから、GTRでは受動的に周囲組織(主に残存歯根膜)からの細胞遊走を期待するだけであったが、この細胞シートを用いることにより非常に高密度に標的細胞を移植することができるようになる。また、自己の細胞を用いることから抗原性・感染性の問題を解決できる。細胞移植という観点から見れば、コラーゲンゲル内で3次元培養を行った細胞をゲルごと移植する研究、生体吸収性膜上に細胞を播種して培養を行い膜ごと移植する研究等が進められているが、細胞密度に関しては圧倒的に細胞シートが勝っており、また吸収性膜などの介在物がない、純粋な細胞・細胞外基質成分のみの細胞シートの方が組織に定着する上で有利なのは明らかである。治癒過程における上皮の侵入が大きな課題であるが、歯根面にあらかじめ結合組織性細胞の定着が起きていればそれを防ぐことが出来る。この培養細胞の歯根面への定着においては、培養細胞の分泌した接着分子をふくむ細胞外基質を細胞と同時に非侵襲的に回収して移植するため、移植細胞の歯根面への早期定着にも有利に働くと予想される。歯牙の周囲に存在する付着器官はセメント質、歯根膜(靭帯部)・歯槽骨といった特殊な階層構造をもつ。これまでの研究で歯根膜組織を構築し得る細胞は歯周組織では歯槽骨でもなく歯肉でもなく、歯根膜内のみに存在することが確認されている。また歯根膜内には様々な細胞が存在しており(支持歯槽骨を形成する骨芽細胞系細胞、歯根膜の靭帯を形成する線維芽細胞、セメント質を形成するセメント芽細胞、確認はされていないが組織幹細胞も当然存在すると思われる。)これらの細胞を分離する研究も進められていて、歯根膜から採取した細胞を分離して細胞シートを作製し、移植時に積層化を行い3次元的な極性を持たせることにより、より効率よく付着器官を再構築できると考えている。以上のことは、患部の治療効率の向上、更には患者の負担の軽減もはかられ極めて有効な技術と考えられる。
以下に、本発明を実施例に基づいて更に詳しく説明するが、これらは本発明を何ら限定するものではない。
臨床の場において、患者の同意を得て、抜歯部位へ青色LEDから発する光を照射した。その際に利用した装置、照射条件は以下の通りである。
1.Blue−violet LED 380−515nm.
2.Power output at the light−guide tip:942mW.
3.Continuous output.
4.Light guide aperture:1 cm in diameter(0.785cm2).
5.Output power measured on a power meter at 410nm(Nova,Ophir,North Andover,MA)showed approximately 750mW/cm2 at a distance of 1 cm from light emitter aperture.
6.Irradiation area:approxmately 1.25cm2.
7.Irradiation time of 10 sec equals energy 50 joules and an energy density of 7.5J/cm2.
8.Irradiation time of 20 sec equals energy 100 joules and an energy density of 15 J/cm2.
9.Bluephase G2 device,Ivoclar Vivadent,Schaan,Liechtenstein
抜歯直後の患部のようす(図1)から生体組織から血液が流出していることが分かる。その後、当該患部へ青色LED光を10秒間照射したところ、患部からの出血は止まった(図2)。患部の1週間後のようすを図3に示す。以上より、本発明は出血を速やかに止める効果を有することが分かった。
本発明における血液凝固機構を調べるために、血液をペトリディッシュ上に置き、青色LED光を照射し(図4)、得られた血液を透過型電子顕微鏡で観察した。透過型電子顕微鏡で観察するサンプルは、2.5%グルタルアルデヒド(0.1Mリン酸緩衝液使用)で2時間固定し、その後、4℃下で一晩、0.1Mリン酸緩衝液中に浸漬することで洗浄し、さらに、1%OsO(0.1Mリン酸緩衝液使用)で2時間固定することで得た。図5に凝固させた血液の断面のようすを示す。図中の矢印(→)がさしている部分が青色LED照射によって形成された血液表面のアモルファス層であり、この層の存在により生体組織から流出した血液を抑えていることが分かった。図中の小さな*印は上記アモルファス層の形成によって集まってきた血小板であり、大きな*印は上記アモルファス層の形成によって集まってきた他の細胞成分である。図中のPMLは多形核白血球、RBCは赤血球を示す。青色LED光によって形成されたアモルファス層によって血小板が集まり、より効率よく止血されるようすが分かった。図6は図5の矢印部分を拡大して透過型電子顕微鏡で観察した結果を示す。図5と同様に、図中の矢印(→)がさしている部分が青色LED照射によって形成された血液表面のアモルファス層であり、この層の存在により生体組織から流出した血液を抑えることが分かった。
比較例1
実施例2と同様な実験を青色LED光を照射させずに行った。そのときの血液のようすを図7に示す。血液表面にアモルファス層は認められず、また血小板が集まってくるようすも観察されなかった。図中のRBCは赤血球を示す。図中のバーは1μmを示す。
を示す図である。
市販の3.5cmφ培養皿(ベクトン・ディッキンソン・ラブウェア(Becton Dickinson Labware)社製ファルコン(FALCON)3001)上に、N−イソプロピルアクリルアミドモノマーを50%になるようにイソプロピルアルコールに溶解させたものを0.07ml塗布した。0.25MGyの強度の電子線を照射し、培養皿表面にN−イソプロピルアクリルアミドポリマー(PIPAAm)を固定化した。照射後、イオン交換水により培養皿を洗浄し、残存モノマーおよび培養皿に結合していないPIPAAmを取り除き、クリーンベンチ内で乾燥し、エチレンオキサイドガスで滅菌することで細胞培養支持体材料を得た。基材表面における温度応答性ポリマー量を測定したところ、1.6μg/cm被覆されていることが分かった。F344系ヌードラットの上顎臼歯部から歯根膜組織を採取し、常法に従い酵素処理することで歯根膜細胞を回収し、それぞれの支持体材料表面上に播種した(1×10cells/3.5cmDish)。培地として、DMEM培地に10%ウシ血清、50μg/mlになるようにアスコルビン酸2リン酸を添加したものを使用した。37℃、5%CO下で培養した結果、細胞培養支持体材料上の歯根膜細胞においても正常に付着し、増殖した。培養14日後に培養した細胞はコンフルエントの状態となり、さらに7日間培養した細胞の上に直径2mmの円状に切り抜いた直径5mmのポリビニリデンジフルオライド(PVDF)膜から成型したキャリアをかぶせ、培地を静かに吸引し、細胞培養支持体材料ごと20℃で30分インキュベートし冷却することで、何れの細胞培養支持体材料上の細胞もかぶせたキャリアと共に剥離させられた。得られた細胞シートは収縮率5%以下の1枚のシートとして十分に強度を持ったものであった。
次に、免疫不全小動物に歯周組織欠損部を作成し、患部へ青色LED光を20秒間照射した。その被照射部へ実施例3の培養歯根膜細胞シートを移植することを試みた。具体的には、F344系ヌードラットの上顎臼歯部近心歯槽骨に骨欠損を作製し、セメント質を削除、歯根象牙質を露出させ実験的歯周組織欠損を作製した。実施例3の培養歯根膜細胞シート下部を上述した露出象牙質面に被覆し、創傷面を保護することで移植を終えた。術後、1週間後、培養歯根膜細胞シートが歯根象牙質に密着、配向しており、靭帯様組織になっていることが分かった。本発明の培養歯根膜細胞シートを移植することで歯周組織を再建できていることが分かった。
本発明の方法に従えば、生体組織から流出した血液の表面を速やかに凝固させることができる。この方法は、出血を抑えるばかりではなく、その凝固によって得られた血餅が生体組織の再生や細胞シートの接着する場としても有用である。このような技術は、生体内のいずれの部位においても有用であり、本発明は細胞工学、医用工学などの医学、歯学、生物学等の分野における極めて有用な発明である。

Claims (9)

  1. 発光ダイオード(LED)から発せられる、波長が380〜515nmの青紫のスペクトル帯域の光を生体組織から流出した血液へ照射し、当該流出血液表面を凝固させる、血液表面の凝固方法。
  2. 流出血液表面の凝固方法が血餅作製に利用される、請求項1記載の血液表面の凝固方法。
  3. 流出血液表面の凝固方法が止血に利用される、請求項1、2のいずれか1項記載の血液表面の凝固方法。
  4. 流出血液表面の凝固方法が細胞シートの移植面作製に利用される、請求項1〜3のいずれか1項記載の血液表面の凝固方法。
  5. 流出血液表面の凝固方法が歯科領域の治療に利用される、請求項1〜4のいずれか1項記載の血液表面の凝固方法。
  6. 歯科治療がワーファリン服用患者への治療である、請求項5記載の血液表面の凝固方法。
  7. 歯科治療が組織再生誘導治療法(GTR法)である、請求項5、6のいずれか1項記載の血液表面の凝固方法。
  8. 歯科治療が歯根膜細胞シートを利用した歯根膜再生治療である、請求項4〜7のいずれか1項記載の血液表面の凝固方法。
  9. 歯根膜細胞シートが細胞シートが積層化されたものである、請求項8記載の血液表面の凝固方法。
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