以下、本発明に係る画像形成装置の実施形態について図面を参照しつつ、詳細に説明する。
[第1実施形態]
(印刷システムの全体構成)
図1は、本発明の第1実施形態に係るインクジェット印刷装置を含む印刷システムの全体構成を示す概念図である。なお、本実施形態においては、インクジェット印刷装置(請求項中の画像形成装置に相当。以下、「印刷装置」と略記する。)100が、黒及びマゼンタの2色のインクを吐出してライン単位で印刷を行うシングルパス方式のインクジェットプリンタである場合を例に説明する。この印刷装置100では、印刷範囲の幅以上の長さを有するラインヘッドを用いて、ラインヘッドの下を印刷用紙(請求項中の記録媒体に相当)が一度通過する際に、すべての印刷領域を形成して印刷する。
本実施形態において、印刷システムはユーザー端末200と、印刷装置100とから構成される。ユーザー端末200は、CPUを備えた演算処理装置であり、パーソナルコンピュータ等の汎用コンピュータや、機能を特化させた専用装置により実現することができ、モバイルコンピュータやPDA(Personal Digital Assistance )、携帯電話機であってもよい。
そして、本実施形態では、図1に示すように、ネットワーク3に対して、印刷装置100と、複数のユーザー端末200が接続されている。ネットワーク3は、通信プロトコルTCP/IPを用いた10BASE−Tや100BASE−TX等によるローカルネットワーク(LAN)や無線LAN(WLAN)等の無線ネットワークである。この無線ネットワークには、例えば、ピア・トゥー・ピアによる家庭内ネットワークなどの簡易的なネットワークなども含まれる。
印刷装置100は、図1に示すように、環状の搬送経路上を搬送される用紙表面上に画像を互いに重なり合うように形成する装置である。搬送経路は、用紙を供給する給紙系搬送路FRと、この給紙系搬送路FRから画像形成部(請求項中の画像形成手段に相当)であるヘッドユニット110を経て排紙経路DRへ至る通常経路CRと、通常経路CRに分岐接続された反転経路SRとから概略構成されている。
印刷用紙の供給を行う給紙機構(請求項中の給紙手段に相当)として、筐体側面の外部に配設されたサイド給紙トレイ120と、筐体内部に設けられた複数の給紙トレイ130(130a、130b、130c)とが備えられている。また、給紙機構には、各トレイ120,130から画像形成部(ヘッドユニット110)に至る給紙系搬送路FR上で印刷用紙を搬送するために、搬送ローラ183を含む搬送ローラ群が備えられている。なお、後述する用紙搬送手段370(図2参照)は、これらの給紙機構によって構成される。また、印刷済みの印刷用紙を排出する排紙機構として、排紙経路DR上で印刷用紙を搬送するための搬送ローラ群と排紙口140とが備えられている。
本実施形態において、給紙トレイ130の各トレイ130a、130b、130cには、黄色及び水色の印刷用紙と、白紙とがいずれかの給紙トレイに収納されており、この給紙機構によって、複数色の印刷用紙が選択的に画像形成部へ供給されるようになっている。
給紙機構のいずれかの給紙トレイ130から給紙された印刷用紙は、ローラ等の駆動機構によって筐体内の給紙系搬送路FRに沿って搬送され、印刷用紙の先頭部分の基準位置であるレジスト部Rに導かれる。そして、このレジスト部Rのレジストローラに対し、これより上流の各ローラ駆動によって印刷用紙の供給動作が行われる。
一方、レジスト部Rの搬送方向側には、複数の印字ヘッドを備えたヘッドユニット110が設けられている。印刷用紙は、ヘッドユニット110の対向面に設けられた搬送ベルト160によって印刷条件により定められる速度で搬送される。そして、搬送中の印刷用紙に対して各印字ヘッドから吐出されたインクにより、ライン単位で画像が形成される。
そして、印刷済みの印刷用紙は、さらに、ローラ等の駆動機構によって通常経路CR上を搬送される。印刷用紙の片側の面のみに印刷を行う片面印刷の場合は、そのまま排紙経路DRを経て、排紙口140に導かれて排紙され、排紙口140の受台として設けられた排紙台150に印刷面を下にして積載されていく。排紙台150は、筐体から突出したトレイ形状をしており、ある程度の厚みを有している。排紙台150は傾斜しており、傾斜の下位置に形成された壁により、排紙口140から排紙された印刷用紙が自然に整えられて重なっていくようになっている。
また、印刷用紙の両面に印刷を行う両面印刷の場合は、原稿の表面の画像を印刷した印刷用紙の表面を下にして排紙する(フェイスダウン)ために、原稿の裏面の画像を印刷用紙の裏面に先に印刷し、その後に原稿の表面の画像を印刷用紙の表面に印刷する。したがって、印刷用紙は、裏面の印刷終了時には排紙経路DR側に導かれずに、さらに筐体内を搬送され、反転経路SRに送出される。この排紙経路DRと反転経路SRとの分岐点には、印刷用紙の搬送路を切り替えるための切替機構170が設けられている。裏面への印刷を終えてこれから表面への印刷を行うは、切替機構170によって反転経路SRに引き込まれる。
この反転経路SRでは、通常経路CRから用紙が受け渡され、用紙を往復させることにより用紙の表裏を反転させる、所謂スイッチバックを行う。そして、ローラ等の駆動機構によって、切替機構172を経由して通常経路CRに戻され、レジスト部Rを経て再給紙され、裏面と同様の手順によって表面の印刷が行われる。その後、両面に画像が形成された印刷用紙は、通常経路CR上を搬送された後、切替機構170によって排出経路DRへ送出され、排紙口140に導かれて表面を下にした向きで排紙され、排紙口140の受台として設けられた排紙台150に積載されていく。
印刷装置100では、給紙された印刷用紙の先頭部分の基準位置となるレジスト部Rに、両面印刷時に片面印刷済みの印刷用紙も再給紙されてくる。このため、レジスト部Rの直前部分には、新規に給紙される印刷用紙の給紙経路と、裏面印刷の用紙が循環して搬送されてくる再給紙経路とが合流する合流点が形成される。そして、レジスト部Rは、給紙系搬送路FRと通常経路CRとの合流点下流側において、用紙の送り出しを行う。
前記搬送ベルト160は、通常経路CRにおいて、ヘッドユニット110に対向する面の前端及び後端に配設された駆動ローラ161及び従動ローラ162に掛け渡されており、図1中、時計回り方向に回転移動する。画像形成部であるヘッドユニット110には、搬送ベルト160のベルト移動方向に沿って、黒とマゼンタの2色のインクヘッドが並べて配置されている。ヘッドユニット110では、単色の有彩色インク(ここではマゼンタ)と無彩色インクによって、複数の画像を互いに重なり合うようにして2色印刷の画像を形成する。
さらに、図1に示すように、印刷装置100には、演算モジュールである演算処理部330が備えられている。この演算処理部330は、CPUやDSP(Digital Signal Processor)等のプロセッサ、メモリ、及びその他の電子回路等のハードウェア、或いはその機能を持ったプログラム等のソフトウェア、又はこれらの組み合わせなどによって構成される。演算処理部330は、プログラムを適宜読み込んで実行することにより種々の機能モジュールを仮想的に構築する。構築した各機能モジュールは、画像データに関する処理や、各部の動作制御、ユーザー操作に対する種々の処理を行う。また、この演算処理部330には、操作パネル340が接続されており、この操作パネル340を通じて、ユーザーによる指示や設定操作を受け付けることができる。
また、印刷装置100は、ユーザー操作に基づく印刷指示に従って、ネットワーク3を通じてユーザー端末200から受信したジョブデータを印刷する機能も備えている。具体的には、印刷装置100にネットワーク3を通じて接続されたユーザー端末200には、プリンタドライバ等のアプリケーションが設けられている。このアプリケーションを実行することで、LANなどの通信インターフェース360を通じて、ユーザー端末200から印刷装置100に対して印刷ジョブが送信される。印刷ジョブを受信した印刷装置100では、印刷ジョブ中の印刷データ及び実行命令に基づいて、演算処理部330において印刷処理を実行する。
(色変換処理に関する機能)
本実施形態における色変換処理機能は、印刷装置100に備えられた演算処理部330によって、ヘッドユニット110及び各駆動手段の動作を制御することにより実現される。図2は、演算処理部330における色変換処理に係る機能モジュールを示すブロック図である。なお、説明中で用いられる「モジュール」とは、装置や機器等のハードウェア、或いはその機能を持ったソフトウェア、又はこれらの組み合わせなどによって構成され、所定の動作を達成するための機能単位を示す。
図2に示すように、演算処理部330は、主としてジョブデータ受信部331と、画像処理部337と、入力画像情報取得部332(請求項中の画像色情報取得手段に相当)と、色変換制御部333と、用紙色情報取得部334(請求項中の用紙色情報取得部に相当)と、用紙情報記憶部335と、プロファイル記憶部336とを備えている。
ジョブデータ受信部331は、一連の印刷処理単位であるジョブデータを受信する通信インターフェースである。また、ジョブデータ受信部331は、受信したジョブデータに含まれるデータを入力画像情報取得部332及び、画像処理部337内にある色変換回路337bに受け渡すモジュールでもある。なお、ここでの通信としては、例えば、10BASE−Tや100BASE−TX等によるイントラネット(企業内ネットワーク)や家庭内ネットワークなどのLANの他、赤外線通信等の近距離通信も含まれる。ここで、上記ジョブデータには、RGBで定義された印刷画像データの他、付加情報として、解像度や印刷枚数、用紙サイズ、用紙種類、印刷モードが含まれている。
入力画像情報取得部332は、各印刷紙面における画像データを解析するモジュールである。具体的には、入力画像情報取得部332は、ジョブデータ受信部331によって受信されたジョブデータに含まれる画像データを解析し、画像処理部337における画像形成に係る入力画像の色情報を取得する。具体的には、ページ毎に入力された画像データがカラー画像であるかモノクロ画像であるかを示す情報や、入力画像がカラー画像である場合にはさらに、そのカラー画像を構成する色のうち代表的な有彩色(単色)を示すデータ(有彩色データ)を、入力画像の色情報として取得する。
この画像データの各ページがカラー画像であるか否かを判定する手法としては、各画素毎にカラー画素であるか否かを判断し、カラー画素である画素が所定数以上存在する場合には、そのページがカラー画像であると判定する手法を用いている。また、有彩色データの取得手法としては、例えば、候補となるいくつかの有彩色について、同じ色のデータを有するカラー画像中の画素の数をそれぞれカウントし、最もカウント数の高い有彩色(代表色)を各ページの有彩色データとして決定する手法を用いている。この手法は、カラー画像に対する占有面積率が所定値以上である色であって、かつ、後述する擬似カラー画像によって近似色を再現できる色を、代表色とする場合の、有彩色データの決定方法の一つである。
なお、カラー画像の代表色となる有彩色データの取得手法としては、これに限定するものではなく、種々の手法を用いてもよい。例えば、カウント数の高い色が2つ以上あり、互いのカウント数に差がない場合には、赤色及び肌色又はそれに近い色相の候補色(請求項中の指定色に相当)を有彩色データとしてもよい。これは、人物などの写真が含まれている画像に対しては、その人物の表現力を最優先で向上させるためである。また、入力画像の色情報を入力画像情報取得部332で取得する際の判断基準は、ユーザーによって変更可能としてもよい。例えば、操作パネル340を介して、ユーザーが判断基準のパラメータ等を変更指定することができる。
また、入力画像情報取得部332は、画像データを解析して、原稿のページ毎における属性の判定を行う機能も備えている。ここで、判定される属性とは、文字原稿、図形原稿、又は写真原稿などであり属性情報として生成される。そして、これらの入力画像の色情報及び属性情報は、色変換制御部333へ送信される。
用紙色情報取得部334は、用紙種別データを取得するモジュールである。用紙種別データは、操作パネル340、及び通信インターフェース360から受信した用紙設定に基づいて取得することができる。また、用紙検出機構350によって検出された給紙機構において選択可能な複数種類の用紙のそれぞれの色に関する情報を、用紙種別データとして取得することもできる。この用紙の色に関する情報としては、白色かどうか、又は色付き用紙の色相の他、普通紙やインクジェット用紙などの用紙種別が含まれる。この情報については、ユーザーが行うプリンタドライバや操作パネル340における用紙設定から取得してもよい。また、給紙機構により給紙される用紙の色を検出して取得してもよい。用紙色の検出には、用紙にスポット光を照射しその反射光の色成分分析により色判別を行うセンサを用いることができる。取得したデータは、用紙情報記憶部335へ入力される。
なお、プリンタドライバは、例えば本印刷装置100をネットワークプリンタのように利用する場合に、ネットワーク上の各クライアントPCで実行されるアプリケーション又はミドルウェアである。このプリンタドライバは、LANなどの通信インターフェースを通じて、印刷装置100に対して印刷データ及び実行命令を送信することができる。用紙検出機構350は、画像形成部(ヘッドユニット110)において印刷する対象となっている印刷用紙のサイズや用紙色情報等を検出する機構である。
用紙情報記憶部335は、いずれの給紙トレイ130(130a〜130c)に、どの色の印刷用紙が積載されているかを記憶し、画像印刷を行う際に、これらの情報を色変換制御部333へ送信するものである。この用紙情報記憶部335は、用紙色情報取得部334から送信された用紙の色に関する情報と、給紙トレイ130との情報を関連付けて記憶する。
色変換制御部333は、入力画像の色情報に従って、色の異なる印刷用紙を選択したり、色変換パターンの切り替えを行うモジュールであり、印刷処理に応じて、プロファイル記憶部336から該当するデータを読み出して処理を行う。この色変換制御部333には、給紙切替制御部333a(請求項中の給紙制御手段に相当)と色変換パターン切替部333b(請求項中の色変換選択手段に相当)とを備えている。
色変換パターン切替部333bは、入力画像の色情報及び属性情報に応じて、色変換パターンを切り替えるモジュールである。本実施形態では、複数の色変換パターンがプロファイル記憶部336に蓄積されており、入力画像の色情報が入力された際、所定の色変換パターンを選択する。
この色変換パターンは、入力されたフルカラーの画像データを2色印刷する場合にどの色を有彩色のインクで印字させ、どの色を無彩色のインクで印字させるかを定義したものである。本実施形態では、図3(a)〜(d)に示すように、複数の色変換パターンを用いている。なお、この図3に示す色変換パターンは、色相環に適合する色味を6等分して多角形で表現したものである。色相環とは、色相の総体を順序立てて円環にして並べた円グラフであり、色相を角度で示すものもある。この色相環上では、補色が反対の位置に設けられている。また、図3(a)〜(d)では、無彩色インク、つまり、K(ブラック)のインクが割り当てられる領域を斜線のハッチングで示している。同様に、有彩色インク(M(マゼンタ)、C(シアン)、Y(イエロー)のいずれかのインク)が割り当てられる領域を、ドットのハッチングで示している。
図3(a)に示すように、有彩色/無彩色の変換パターンは、暖色系のRYM色、及び寒色系のCGB色のすべてについて有彩色インク(マゼンタ)で印字する設定となっている。従来の2色印刷では、専らこの有彩色/無彩色の変換パターンが用いられている。有彩色/無彩色の変換パターンを用いた2色印刷では、用紙に安価な白色を用いつつ、単色(モノクロ)印刷を行うよりも、色文字や色図形を表現力よく再現することができる。
また、図3(b)に示すように、赤色疑似カラーの変換パターンは、R(レッド)の色を中心にY(イエロー)からM(マゼンタ)までをマゼンタ色に変換し、その他のC(シアン)、G(グリーン)、B(ブルー)の色は無彩色に変換する設定となっている。この赤色疑似カラーの変換パターンは、適切な色の用紙と組み合わせることで、写真を含む入力画像を表現力よく再現することができる。例えば、白色の用紙とM(マゼンタ)のインクとを組み合わせることで、マゼンタ色の花や衣装を安価な用紙コストで再現性よく表現することができる。また、黄色の用紙とM(マゼンタ)のインクとを組み合わせることで、R(レッド)の色相に近い人物(肌色)や赤身の食品(牛、魚など)等を表現力よく再現することができる。
また、図3(c)に示すように、青色疑似カラーの変換パターンは、B(ブルー)を中心にC(シアン)からM(マゼンタ)までをマゼンタ色に変換し、その他のG(グリーン)、Y(イエロー)、R(レッド)の色については無彩色に変換するようになっている。この青色疑似カラーの変換パターンでは、水色の用紙とマゼンタ色を組み合わせて紫を表現できる。また、水色の用紙を用いる場合、用紙の色と同じ水色の海や空は、M(マゼンタ)のインクを用いて印字しない無色の画像して処理することで、用紙色により表現することができる。
なお、すべての色変換パターンでは、彩度についても考慮しており、図3(a)〜(c)に示すように、一定の彩度以下の色(図中の中央部分)は、無彩色の黒色に変換するようになっている。
ちなみに、入力画像のマゼンタをマゼンタに変換するマゼンタ色疑似カラーの変換パターンも、実際には作成することができる。図3(d)に示すように、マゼンタ色疑似カラーの変換パターンでは、M(マゼンタ)を中心にR(レッド)からB(ブルー)までをマゼンタ色に変換し、その他のY(イエロー)、G(グリーン)、C(シアン)の色については、無彩色に変換する。
しかし、本実施形態の印刷装置100では、図3(d)に示したマゼンタ色疑似カラー変換を用いず、図3(a)に示した赤色疑似カラー変換で代用している。その理由は、自然画に肌色が存在する場合が多く、上述したように、マゼンタ色擬似カラー変換よりも赤色擬似カラー変換の方が肌色の再現性が優れているからである。また、赤色擬似カラー変換を用いても、白紙の用紙とM(マゼンタ)のインクとの組み合わせによって、入力画像中のマゼンタ色を印刷画像上でもマゼンタ色で表現することができるからである。
また、色変換パターン切替部333bは、選択された色変換パターンと、選択された印刷用紙とに基づいて、画像データの色情報を調整する機能も備えている。この機能は、色変換パターン内において特定の色部分の色変換を行うものである。具体的には、入力されたフルカラー画像データのうち、選択された印刷用紙の色情報と近似する色情報を有する画像部分については、記録材の量を0として印刷上無色となるように色変換処理する。また、例えば、色変換パターンとして青色疑似カラーが選択され、印刷用紙として水色の印刷用紙が選択された場合に、画像データの水色部分については、記録材の量を0として印刷処理上無色と見倣すなどの微調整を行う。これは、印刷用紙の用紙色で画像を色相的に表現できる場合に、不必要にインクによる画像形成が行われないようにするためである。
給紙切替制御部333aは、入力画像の色情報に従い、給紙機構における印刷用紙の選択を制御するモジュールである。具体的に、給紙切替制御部333aは、モノクロ画像かカラー画像かの情報や、カラー画像についての代表色たる有彩色データなどの色情報や、印刷用紙の色に関する情報に基づいて、プロファイル記憶部336に記憶された色変換プロファイルを参照して使用する色の印刷用紙を選択する。そして、給紙切替制御部333aは、選択された印刷用紙が積載されている給紙トレイ130の情報に基づいて、用紙搬送手段370を駆動制御して給紙トレイ130から目的の印刷用紙を画像形成部へ搬送させる。
プロファイル記憶部336は、2色印刷を行う際の印刷用紙及び色変換パターンの選択条件を記憶し、入力された画像データに応じた選択条件を色変換制御部333へ送信するものである。
具体的に、プロファイルは、図4乃至図7の説明図に示すように、画像データの色情報(カラーかモノクロかの情報や、代表色たる有彩色データを含む)、画像データの属性情報、印刷装置に積載されている印刷用紙の色情報、及び使用されるインクの色情報などの各条件に応じて印刷用紙及び色変換パターンが選択されるようになっている。したがって、色変換制御部333は、印刷時における使用するインクや印刷用紙の情報に基づいて、該当するプロファイルを参照するようになっている。なお、このプロファイルについては、ユーザーがプロファイルの選択を行ってもよいし、このプロファイルの定義を変更してもよい。
本実施形態において、このプロファイルでは、印刷用紙として、入力画像の色情報から算出された入力画像の有彩色データと近似する有彩色の印刷用紙が含まれている場合には、その近似する有彩色の印刷用紙を選択するように定義されている。また、このプロファイルでは、画像形成部(ヘッドユニット110)で形成される画像の色情報と、画像データの有彩色データとが同一色相若しくは反対色相の場合には、無彩色の印刷用紙を選択するように定義されている。反対に、画像形成部で形成される画像の色情報と、画像データの有彩色データとが隣接色相の場合には、有彩色の印刷用紙を選択するように定義されている。
ここで、同一色相、反対色相及び隣接色相とは、色相環上の位置によって定義される色味である。この色相環とは、色相の総体を順序立てて円環にして並べた円グラフであり、色相を角度で示すものもある。この色相環上では、補色が反対の位置に設けられている。したがって、同一色相とは、色相環において同一角度に属する色相をいい、反対色相とは、色相環において180度反転した角度に属する色相をいい、隣接色相とは、色相環において隣接する角度の範囲に属する色相をいう。
以下、図4乃至図7の説明図を参照して各プロファイルについて説明する。先ず、図4では、給紙トレイ130に白紙及び黄色の印刷用紙とが積載され、黒色及びマゼンタのインクで2色印刷を行う際の印刷用紙の色と、色変換パターンの選択条件を示している。具体的には、図4に示すように、画像データがモノクロ画像かカラー画像かを判断しており、モノクロ画像である場合には、色変換パターンについてはグレースケールが選択されるとともに、印刷用紙は白紙が選択される。
一方、入力された画像データがカラー画像である場合には、色変換パターンについては、図3(b)に示すような赤色疑似カラーが選択される。また、印刷用紙の選択については、画像データにおける有彩色データと、印刷に使用されるインクの色(マゼンタ)とを比較して、上記の定義に基づいて選択される。
例えば、入力画像の有彩色データが、入力画像の印刷に使用されるインク色(マゼンタ)と同一色相であるマゼンタ色である場合には、白紙が選択され、反対方向に位置する色相である緑色の場合には白紙が選択される。
一方、入力画像の有彩色データが、インク色(マゼンタ)と隣接する色相の色である場合には、有彩色データと近似する有彩色の印刷用紙が含まれているかを判断する。そして、近似する有彩色の印刷用紙がある場合にはその色の印刷用紙が選択され、近似する有彩色の印刷用紙がない場合には、白紙が選択される。
具体的には、入力画像の有彩色データがインク色(マゼンタ)と隣接する色相の色であって、インク色に対して色相環上で反時計周り方向に位置する赤色や肌色である場合には、その有彩色データと近似する有彩色の印刷用紙である黄色の用紙が選択される。また、単色の有彩色データが使用されるインク色(マゼンタ)と隣接する色相であって、インク色に対して色相環上で時計周り方向に位置する青色については、その有彩色データと近似する有彩色の印刷用紙がないため、白紙が選択される。
また、本実施形態では、白紙及び水色の印刷用紙とが積載され、黒色及びマゼンタのインクで2色印刷を行う場合についても、印刷用紙の色と色変換パターンとの選択を行っている。その選択条件は図5の説明図に示すとおりである。
具体的には、図5に示すように、先ず、画像データがモノクロ画像かカラー画像かを判断しており、モノクロ画像である場合には、色変換パターンについてはグレースケールが選択されるとともに、印刷用紙は白紙が選択される。
一方、入力された画像データがカラー画像である場合には、色変換パターンについては、図3(c)に示すような青色疑似カラーが選択される。さらに、画像データの有彩色データと、印刷に使用されるインクの色(マゼンタ)とを比較して、比較結果から印刷用紙が選択される。
例えば、入力画像の有彩色データが、入力画像の印刷に使用されるインク色(マゼンタ)と同一色相であるマゼンタ色である場合には、白紙が選択され、反対方向に位置する色相である緑色の場合には、白紙が選択される。
一方、入力画像の有彩色データが、インク色(マゼンタ)と隣接する色相の色であって、インク色に対して色相環上で反時計周り方向に位置する赤色や肌色である場合には、その有彩色データと近似する有彩色の印刷用紙がないため、白紙が選択される。また、入力画像の有彩色データが、入力画像の印刷に使用されるインク色(マゼンタ)と隣接する色相の色であって、インク色に対して色相環上で時計周り方向に位置する青色については、その有彩色データと近似する有彩色の印刷用紙である水色の印刷用紙が選択される。
また、本実施形態では、白紙と黄色の印刷用紙とが積載され、黒色及びマゼンタのインクで2色印刷を行う場合については、カラー画像の属性情報、すなわち印刷が文字、図形であるか、又は写真であるかに応じて、印刷用紙の色と色変換パターンとの選択を行っている。その選択条件は図6の説明図に示すとおりである。
具体的には、図6に示すように、先ず、画像データがモノクロ画像かカラー画像かを判断しており、モノクロ画像である場合には、色変換パターンについてはグレースケールが選択されるとともに、印刷用紙は白紙が選択される。
一方、入力された画像データがカラー画像である場合には、その画像データの属性について判断する。この画像データの属性が文字又は図形である場合には、色文字や色図形の再現性を優先して、図3(a)に示すような有彩色/無彩色パターンが選択される。一方、画像データの属性が写真である場合には、自然画に多く存在する肌色や赤色の再現性を優先して、図3(b)に示すような赤色疑似カラーが選択される。また、印刷用紙の選択については、入力画像の有彩色データと、入力画像の印刷に使用されるインクの色(マゼンタ)とを比較して、比較結果から印刷用紙が選択される。
ここで、画像データの有彩色データが、インク色(マゼンタ)と隣接する色相の色であって、インク色に対して色相環上で反時計周り方向に位置する赤色や肌色である場合は、画像データの属性が文字又は図形であるか写真であるかに関わらず、その有彩色データと近似する有彩色の印刷用紙である黄色の用紙が選択される。
また、入力画像の有彩色データがインク色(マゼンタ)と同一色相であるマゼンタ色である場合には、白紙が選択される。さらに、入力画像の有彩色データがインク色(マゼンタ)と隣接する色相の色であって、インク色に対して色相環上で時計周り方向に位置する青色では、その有彩色データと近似する有彩色の印刷用紙がないため、白紙が選択される。また、入力画像の印刷に使用されるインク(マゼンタ)の反対方向に位置する色相である緑色の場合にも、白紙が選択される。
さらに、本実施形態では、白紙及び青色と黄色の印刷用紙とが積載され、黒色及びマゼンタのインクで2色印刷を行う場合であって、カラー画像の属性情報を含めた場合についても、印刷用紙の色と、色変換パターンの選択を行っており、その選択条件は図7の説明図に示すとおりである。
具体的には、図7に示すように、先ず、画像データがモノクロ画像かカラー画像かを判断しており、モノクロ画像である場合には、色変換パターンについてはグレースケールが選択されるとともに、印刷用紙は白紙が選択される。
一方、入力された画像データがカラー画像である場合には、その画像データの属性について判断する。この画像データの属性が文字又は図形である場合には、図3(a)に示すような有彩色/無彩色パターンが選択される。
他方、画像データの属性が写真である場合には、その画像データ中のR(レッド)、及びB(ブルー)の画素の面積、及び濃さを算出し、数値の高い画素を元に色変換パターンを設定する。
具体的に、入力画像の有彩色データが赤色や肌色の場合は、R(レッド)の画素が多いため、赤色疑似カラーが選択される。一方、入力画像の有彩色データが青色の場合は、B(ブルー)の画素が多いため、青色疑似カラーが選択されるようになっている。なお、本実施形態において、図7に示すように、入力画像の有彩色データがマゼンタ色や緑色である場合は、R(レッド)の画素が多いものとして赤色疑似カラーが選択される。
印刷用紙の選択条件は、画像の属性が文字、図形であっても、写真であっても同様である。そして、この場合の印刷用紙は、入力画像の有彩色データと、入力画像の印刷に使用されるインクの色(マゼンタ)とを比較して選択される。
具体的には、その画像データの有彩色データがインク色(マゼンタ)と隣接する色相の色であって、インク色に対して色相環上で反時計周り方向に位置する赤色や肌色では、その有彩色データと近似する有彩色の印刷用紙である黄色の用紙が選択される。また、入力画像の有彩色データがインク色(マゼンタ)と同一色相であるマゼンタ色である場合には、白紙が選択される。また、入力画像の有彩色データがインク色(マゼンタ)と隣接する色相の色であって、色相環上で時計周り方向に位置する青色では、その有彩色データと近似する有彩色の印刷用紙である水色の印刷用紙が選択される。また、入力画像の印刷に使用されるインク(マゼンタ)の反対方向に位置する色相である緑色の場合にも、白紙が選択される。
画像処理部337は、画像処理に特化したデジタル信号処理を行う演算処理装置であり、印刷に必要な画像データの変換等を行い、印刷を実行するモジュールである。この画像処理部337は、画像形成制御部337aと色変換回路337b(請求項中の色変換手段に相当)を備えている。色変換回路337bは、色変換制御部333の制御に従い、入力画像の色変換を行う回路であり、具体的には、RGB印刷画像をMKの2色印刷画像に変換し、各色についての印刷画像に基づいて、画像形成制御部337aに印刷を実行させる。特に、本実施形態において、色変換回路337bは、色変換パターン切替部333bによって切替えられた色変換のパターンを参照し、RGBの各色をM(マゼンタ)とK(黒)のインクで表現するように色変換を行う。
画像形成制御部337aは、各色のインクヘッドの駆動を制御し、画像形成処理全体を制御するモジュールであり、スケジュールに従ったタイミング及び印字速度で画像形成を行う。
(色変換制御の動作)
次に、以上の構成を有する印刷装置における色変換動作について説明する。なお、以下に説明する色変換の動作に用いられるジョブデータは、図10に示すように、原稿から読み取った5ページ分の画像データであるものとする。そして、原稿の1ページ目は、白紙に黒文字が印字された印刷物であり、2ページ目は、白紙に赤色、マゼンタ色、青色、及び緑色の文字が印字された印刷物である。また、原稿の3ページ目は、白紙に肌色を有する顔写真又は赤色を有する写真が印字された印刷物であり、4ページ目は、白紙にマゼンタ色を有する花の写真が印字された印刷物である。最後に、原稿の5ページ目は、全体的に空や海などの青又は水色が表示された写真が印字された印刷物である。また、本実施形態では、入力画像の色情報に従い、印刷用紙の色を選択する機能と色変換パターンの選択を行う機能との2つの機能が動作する場合を例に説明する。
((1)白紙と黄色の印刷用紙が積載され、且つ、画像の属性を判定しない場合の動作)
初めに、給紙トレイ130に白紙と黄色の印刷用紙が備わっており、且つ、画像の属性を判定しない場合の色変換制御について説明する。図8は図2の演算処理部330が行う処理を示すフローチャート図であり、図9は図8の印刷用紙選択処理を示すフローチャート図であり、図10は図8の処理により入力された画像データから印刷処理される画像の色変化の状態を示す説明図である。なお、ここでは、給紙トレイ130(130a〜130c)に白紙と黄色の印刷用紙が積載されている情報が用紙情報記憶部335に蓄積され、これに基づいて、色変換時に図4に示すプロファイルが選択されるものとする。
先ず、ユーザーからの指示で印刷処理が実行されると、ジョブデータがジョブデータ受信部331に入力される。その後、ジョブデータは入力画像情報取得部332へ送信され、図8に示すように、入力画像情報取得部332は、入力画像を解析し(ステップS101)、ページ毎に画像データがモノクロ画像かカラー画像かを判断する(ステップS102)。
本実施形態において、1ページ目は白紙に黒色の文字のみが印刷されているので、モノクロ画像と判断され(ステップS102で「モノクロ」)、その色情報は色変換制御部333に入力される。色変換パターン切替部333bでは、プロファイルを参照して色変換パターンをグレースケール処理に決定し(ステップS103)、その情報を画像処理部337へ送信する。また、給紙切替制御部333aでは、プロファイルを参照して白紙を選択し(ステップS103)、用紙情報記憶部335に含まれた用紙情報を参照して、白紙が積載された給紙トレイ130を駆動制御する。その後、画像形成部では、ヘッドユニット110の黒のインクヘッドを用いて白紙にモノクロ印刷が行われる(ステップS104)。これにより、ジョブデータの1ページ目は、図10に示すように、白紙に黒インクで文字が印刷された印刷物が生成される。
一方、画像データがカラー画像であると判断された場合には(ステップS102で「カラー」)、入力画像情報取得部332では、単色の有彩色データを決定する(ステップS105)。本実施形態において、2ページ目〜5ページ目までは文字又は写真のカラー画像であるので、2ページ目〜5ページ目までの画像データについては、入力画像情報取得部332において、各ページ毎の有彩色データが算出される(ステップS105)。本実施形態では、2ページ目は赤色、マゼンタ色、青色、緑色の文字が含まれているが、M(マゼンタ)のインクと白色の用紙との組み合わせで再現できるマゼンタ色が多く含まれているため、有彩色データはマゼンタとなる。
3ページ目は、赤色擬似カラー変換と、給紙トレイ130に積載されている黄色の用紙との組み合わせで再現できる赤色及び肌色の写真が含まれているので、赤色及び肌色が有彩色データとなる。4ページ目では、M(マゼンタ)のインクと白色の用紙との組み合わせで再現できるマゼンタ色の写真が含まれているため、マゼンタ色が有彩色データとなる。5ページ目では、2つある写真のうちシアン色の写真は、下地色の影響でシアン色となっているのか、そもそも写真としてシアン色であるのか区別が付かない。一方、もう一つの青色の写真は、下地色と異なり明らかに写真の画像自体が空や海などの青色であることが明らかであるため、青色が有彩色データとなる。
次いで、この色情報は色変換制御部333に入力される。色変換パターン切替部333bでは、色情報が入力されるとプロファイル記憶部336を参照して色変換パターンを選択する(ステップS108)。本実施例では、図4に示すように、カラー画像の色変換に用いるプロファイルはすべて赤色疑似カラーのパターンであるため、色情報の内容に関わらず全ページとも赤色疑似カラーが選択される。選択された色変換パターンの情報は画像処理部337へ送信される。
また、色変換パターン切替部333bによる色変換パターンの選択(ステップS108)と平行して、給紙切替制御部333aでは、各ページの有彩色データと印刷に使用する有彩色のインク(マゼンタ)とを比較し(ステップS106)、プロファイルを参照して使用する印刷用紙を選択する(ステップS107)。
具体的には、色変換パターン切替部333bでは、図9に示すように、先ず、単色の有彩色データが、使用される色の色相と同一の色相又は反対位置の色相であるか否かを判断する(ステップS201)。単色の有彩色データが使用される色の色相と同一色相又は反対色相である場合には(ステップS201でYES)、白紙が選択される(ステップS202)。一方、使用される色の色相と同一色相又は反対色相でない場合には(ステップS201でNO)、その有彩色データと近似する有彩色の印刷用紙が給紙トレイ130に積載されているか否かを判断する(ステップS203)。
そして、有彩色データと近似する有彩色の印刷用紙が給紙トレイ130に積載されている場合には(ステップS203でYES)、その色紙が選択され(ステップS204)、有彩色データと近似する有彩色の印刷用紙が給紙トレイ130に積載されていない場合には(ステップS203でNO)、白紙が選択される(ステップS201)。
本実施形態においては、2及び4ページ目の有彩色データはマゼンタ色であり、印刷に使用される有彩色インク(マゼンタ色)の色相と同一色相であるので(ステップS201でYES)、白紙が選択される(ステップS202)。
一方、3ページ目の有彩色データは赤色及び肌色であり、また、5ページ目の有彩色データは青色であり、印刷に使用される有彩色インク(マゼンタ色)の色相と同一色相又は反対色相ではないため(ステップS201でNO)、その有彩色データと近似する有彩色の印刷用紙が給紙トレイ130に積載されているか否かが判断される(ステップS203)。
そして、3ページ目の有彩色データは赤色及び肌色であり、有彩色データに近似する有彩色の印刷用紙である黄色の印刷用紙が含まれているので(ステップS203でYES)、黄色の色紙が選択される(ステップS204)。一方、5ページ目の有彩色データは青色であり、有彩色データに近似する有彩色の印刷用紙はないため(ステップS203でNO)、白紙が選択される(ステップS202)。
その後、2ページ目から5ページ目の画像データを用いて、選択されたそれぞれの色変換パターンと印刷用紙によってカラー印刷処理が行われる(ステップS109)。これにより、図10に示すように、2ページ目は、白紙に、赤色とマゼンタ色の文字がマゼンタ色で表示され、青色と緑色の文字は黒色で表示される。つまり、画像データ中のマゼンタ色の文字以外は、画像データとは異なる色の印刷結果(赤→マゼンタ、青→黒、緑→黒)が得られる。しかし、画像データ中に最も多いマゼンタ色の文字がマゼンタ色で再現され、青色の文字が青色成分を含む紫色で再現されるので、画像全体としては、K(ブラック)とM(マゼンタ)の2色印刷によって、画像データに近い印刷結果を得ることができる。
3ページ目では、黄色の印刷用紙にマゼンタのインクが吐出され、写真部分が赤色及び肌色で表示される。4ページ目では、白紙にマゼンタのインクが吐出され、写真部分がマゼンタ色で表示される。これにより、3,4ページ目はそれぞれ画像データに忠実な印刷結果を得ることができる。5ページ目では、白紙に青色部分が黒色で表示され、シアン色の部分はグレー色に表される。これにより、白色の用紙とK(ブラック)及びM(マゼンタ)の2色のインクとを用いて、用紙色とインク色とのいずれとも異なる寒色系の写真(青、シアン)を含む画像データから、それらに近い色相(黒、グレー)の印刷結果を得ることができる。
((2)白紙と水色の印刷用紙が積載され、且つ、原稿属性を判定しない場合の動作)
次いで、給紙トレイ130に白紙と水色の印刷用紙が備わっており、且つ、画像の属性を判定しない場合の色変換制御について説明する。この場合にも、図8及び図9のフローチャートに示した処理が行われる。図11は図8の処理により入力された画像データから印刷処理される画像の色変化の状態を示す説明図である。なお、ここでは、給紙トレイ130(130a〜130c)に白紙と水色の印刷用紙が積載されている情報が用紙情報記憶部335に蓄積され、色変換時に図5に示すプロファイルが選択されるものとする。
先ず、ユーザーからの指示で印刷処理が実行されると、ジョブデータがジョブデータ受信部331に入力される。その後は、上記と同様に、図8のフローチャートに示す処理が行われる。具体的には、まず、ステップS101〜ステップS105までの処理が行われる。
その後、図8のステップS105で決定された色情報は色変換制御部333に入力される。色変換パターン切替部333bでは、色情報が入力されるとプロファイル記憶部336を参照して色変換パターンを決定する(ステップS108)。本実施例では、図4に示すように、カラー画像の色変換に用いるプロファイルはすべて青色疑似カラーのパターンであるため、色情報の内容に関わらず全ページとも青色疑似カラーに決定される。決定された色変換パターンの情報は画像処理部337へ送信される。
また、色変換パターン切替部333bによる色変換パターンの決定と平行して、給紙切替制御部333aでは、各ページの有彩色データと印刷に使用する有彩色のインク(マゼンタ)とを比較し(ステップS106)、プロファイルを参照して使用する印刷用紙を選択する(ステップS107)。
図8のステップS107においては、図9のフローチャートの処理が行われる。ここでは、2及び4ページ目の有彩色データはマゼンタ色であり、印刷に使用される有彩色インク(マゼンタ色)の色相と同一色相であるので(ステップS201でYES)、白紙が選択される(ステップS202)。
一方、3ページ目の有彩色データは赤色及び肌色であり、また、5ページ目の有彩色データは青色であり、印刷に使用される有彩色インク(マゼンタ色)の色相と同一色相又は反対色相ではないため(ステップS201でNO)、その有彩色データと近似する有彩色の印刷用紙が給紙トレイ130に積載されているか否かが判断される(ステップS203)。
そして、3ページ目の有彩色データは赤色及び肌色であり、有彩色データに近似する有彩色の印刷用紙はないため(ステップS203でNO)、白紙が選択される(ステップS202)。一方、5ページ目の有彩色データは青色であり、有彩色データに近似する有彩色の印刷用紙である水色の印刷用紙が含まれているので(ステップS203でYES)、水色の色紙が選択される(ステップS204)。
その後、2ページ目から5ページ目の画像データを用いて、選択されたそれぞれの色変換パターンと印刷用紙によってカラー印刷処理が行われる(ステップS109)。これにより、図11に示すように、2ページ目は、白紙に、青色とマゼンタ色の文字がマゼンタ色で表示され、赤色と緑色の文字は黒色で表示される。つまり、画像データ中のマゼンタ色の文字以外は、画像データとは異なる色の印刷結果(赤→黒、青→マゼンタ、緑→黒)が得られる。しかし、画像データ中に最も多いマゼンタ色の文字がマゼンタ色で再現され、暖色系の赤色の文字は同じ暖色系のマゼンタ色で、寒色系の青色や緑色の文字は寒色の黒色で、それぞれ再現されるので、画像全体としては、K(ブラック)とM(マゼンタ)の2色印刷によって、画像データに近い印刷結果を得ることができる。
3ページ目では、白色の印刷用紙に黒のインクが吐出され、写真部分がモノクロで表示される。このカラー印刷処理では、後述するように、5ページ目のシアン色の下地及び写真を水色の用紙で再現し、青色の写真を、水色の用紙とマゼンタのインク色とにより紫色で再現して、シアン色の写真と区別するようにしている。そのために、このカラー印刷処理では、青色擬似カラーの変換パターンを用いている。したがって、3ページ目の肌色と赤色の写真は、それぞれ黒色で印刷されることになる。4ページ目では、白紙にマゼンタのインクが吐出され、写真部分がマゼンタ色で表示される。これにより、4ページ目は画像データに忠実な印刷結果を得ることができる。5ページ目では、青色部分は水色の印刷用紙にマゼンタで印字することで紫色を表示させ、水色部分については無色とすることで印刷用紙の水色をそのまま表示させる。
((3)白紙と黄色の印刷用紙が積載され、且つ、原稿属性を判定する場合の動作)
次いで、給紙トレイ130に白紙と黄色の印刷色紙が備わっており、且つ、画像の属性を判定する場合の色変換制御について説明する。図12は図2の演算処理部330が行う処理を示すフローチャート図であり、図13は図12の印刷用紙選択処理を示すフローチャート図であり、図14は図12の処理により入力された画像データから印刷処理される画像の色変化の状態を示す説明図である。なお、ここでは、給紙トレイ130(130a〜130c)に白紙と黄色の印刷用紙が積載されている情報が用紙情報記憶部335に蓄積され、色変換時に図6に示すプロファイルが選択されるものとする。
先ず、ユーザーからの指示で印刷処理が実行されると、ジョブデータがジョブデータ受信部331に入力される。その後、ジョブデータは入力画像情報取得部332へ送信され、図12に示すように、入力画像情報取得部332は、入力画像を解析し(ステップS401)、ページ毎に画像データがモノクロ画像かカラー画像かを判断する(ステップS402)。
本実施形態において、1ページ目は白紙に黒色の文字のみが印刷されているので、モノクロ画像と判断され(ステップS402で「モノクロ」)、その色情報は色変換制御部333に入力される。色変換パターン切替部333bでは、プロファイルを参照して色変換パターンをグレースケール処理に決定し(ステップS403)、その情報を画像処理部337へ送信する。また、給紙切替制御部333aでは、プロファイルを参照して白紙を選択し(ステップS403)、用紙情報記憶部335に含まれた用紙情報を参照して、白紙が積載された給紙トレイ130を駆動制御する。その後、画像形成部では、ヘッドユニット110の黒のインクヘッドを用いて白紙にモノクロ印刷が行われる(ステップS404)。これにより、ジョブデータの1ページ目は、図14に示すように、白紙に黒インクで文字が印刷された印刷物が生成される。
一方、画像データがカラー画像であると判断された場合には(ステップS402で「カラー」)、入力画像情報取得部332では、単色の有彩色データを決定する(ステップS405)。本実施形態において、2ページ目〜5ページ目までは文字又は写真にカラー画像であるので、2ページ目〜5ページ目までの画像データは、入力画像情報取得部332において、各ページ毎の有彩色データが算出される(ステップS405)。本実施形態では、2ページ目は赤色、マゼンタ色、青色、緑色の文字が含まれているが、マゼンタ色が多く含まれているため、有彩色データはマゼンタとなる。
3ページ目は、赤色及び肌色の写真が含まれているので、赤色及び肌色が有彩色データとなる。4ページ目では、マゼンタ色の写真が含まれているため、マゼンタ色が有彩色データとなる。5ページ目では、空や海などの青色が含まれているため、青色が有彩色データとなる。
また、入力画像情報取得部332では、各ページに対して画像の属性を算出する(ステップS406)。本実施形態において、2ページ目は文字のみの画像データであるので文字又は図形の属性となり、3ページ目、4ページ目及び5ページ目は、写真の画像であるので写真の属性となる。
そして、これらの単色の有彩色データ及び属性情報を含む画像データの色情報は、色変換制御部333に入力される。色変換パターン切替部333bでは、色情報が入力されるとプロファイルを参照して色変換パターンを選択する(ステップS409)。
この色変換パターンの選択では、図13に示すように、画像データの属性を判断し(ステップS501)、属性が文字又は図形である場合には(ステップS501で「文字、図形」)、図3(a)に示すような有彩色/無彩色パターンが選択される(ステップS502)。また、画像データの属性が写真である場合には(ステップS501で「写真」)、図3(b)に示すような赤色疑似カラーが選択される。
本実施形態では、2ページ目の属性は文字、図形であるため、有彩色/無彩色パターンが選択される。また、3〜5ページ目の属性は写真であるため、赤色疑似カラーが選択される。選択された情報は画像処理部337へ送信される。
また、図12に示すように、色変換パターン切替部333bによる色変換パターンの選択(ステップS409)と平行して、給紙切替制御部333aでは、各ページの有彩色データと印刷に使用する有彩色のインク(マゼンタ)とを比較し(ステップS407)、プロファイルを参照して使用する印刷用紙を選択する(ステップS408)。
本実施形態においては、2及び4ページ目の有彩色データはマゼンタ色であり、印刷に使用される有彩色インク(マゼンタ色)の色相と同一色相であるので(ステップS201でYES)、白紙が選択される(ステップS202)。
一方、3ページ目の有彩色データは赤色及び肌色であり、また、5ページ目の有彩色データは青色であり、印刷に使用される有彩色インク(マゼンタ色)の色相と同一色相又は反対色相ではないため(ステップS201でNO)、その有彩色データと近似する有彩色の印刷用紙が給紙トレイ130に積載されているか否かが判断される(ステップS203)。
そして、3ページ目の有彩色データは赤色及び肌色であり、有彩色データに近似する有彩色の印刷用紙である黄色の印刷用紙が含まれているので(ステップS203でYES)、黄色の色紙が選択される(ステップS204)。一方、5ページ目の有彩色データは青色であり、有彩色データに近似する有彩色の印刷用紙はないため(ステップS203でNO)、白紙が選択される(ステップS202)。
その後、2ページ目から5ページ目の画像データを用いて、選択されたそれぞれの色変換パターンと印刷用紙によってカラー印刷処理が行われる(ステップS410)。これにより、図14に示すように、2ページ目は、白紙に、すべての文字がマゼンタで表示される。つまり、画像データ中のマゼンタ色の文字以外は、画像データとは異なる色の印刷結果(赤→マゼンタ、青→マゼンタ、緑→マゼンタ)が得られる。しかし、画像データ中に最も多いマゼンタ色の文字がマゼンタ色で再現されるので、画像全体としては、K(ブラック)とM(マゼンタ)の2色印刷によって、画像データに近い印刷結果を得ることができる。
3ページ目では、黄色の印刷用紙にマゼンタのインクが吐出され、写真部分が赤色及び肌色で表示される。4ページ目では、白紙にマゼンタのインクが吐出され、写真部分がマゼンタ色で表示される。これにより、3,4ページ目はそれぞれ画像データに忠実な印刷結果を得ることができる。5ページ目では、白紙に青色部分が黒色で表示され、シアン色の部分はグレー色に表される。これにより、白色の用紙とK(ブラック)及びM(マゼンタ)の2色のインクとを用いて、用紙色とインク色とのいずれとも異なる寒色系の写真(青、シアン)を含む画像データから、それらに近い色相(黒、グレー)の印刷結果を得ることができる。
((4)白紙と青色及び黄色の印刷用紙が積載され、且つ、原稿属性を判定する場合の動作)
次いで、給紙トレイ130に白紙と青色及び黄色の色紙が備わっており、且つ、画像の属性を判定する場合の色変換制御について説明する。この場合にも、図12のフローチャートに示した処理が行われる。図15は図12の印刷用紙選択処理を示すフローチャート図であり、図16は図12の処理により入力された画像データから印刷処理される画像の色変化の状態を示す説明図である。なお、ここでは、給紙トレイ130(130a〜130c)に白紙と青色及び黄色の印刷用紙が積載されている情報が用紙情報記憶部335に蓄積され、色変換時に図7に示すプロファイルが選択されるものとする。
先ず、ユーザーからの指示で印刷処理が実行されると、ジョブデータがジョブデータ受信部331に入力される。その後は、上記と同様に、図12のフローチャートに示す処理が行われる。具体的には、まず、ステップS401〜ステップS406までの処理が行われる。
その後、図12のステップS405で決定された有彩色データとステップS406で決定された属性情報を含む画像データの色情報は、色変換制御部333に入力される。色変換パターン切替部333bでは、色情報が入力されるとプロファイル記憶部336を参照して色変換パターンを選択する(ステップS409)。
この色変換パターンの選択では、図15に示すように、画像データの属性を判断し(ステップS601)、属性が文字又は図形である場合には(ステップS601で「文字、図形」)、図3(a)に示すような有彩色/無彩色パターンが選択される(ステップS602)。また、画像データの属性が写真である場合には(ステップS601で「写真」)、その画像データ中に多く含まれる画素が青色(B)か、赤色(R)かを判断する(ステップS603)。
多く含まれる画素が青色である場合には(ステップS603で「青」)、青色疑似色カラーが選択され(ステップS604)、多く含まれる画素が赤色である場合には(ステップS603で「赤」)、赤色疑似色カラーが選択される(ステップS605)。
本実施形態では、2ページ目の属性は文字、図形であるため、有彩色/無彩色パターンが選択される。また、属性が写真である3〜5ページのうち、3ページ目の有彩色データは赤色及び肌色であり、4ページ目の有彩色データはマゼンタ色であるので、赤色疑似カラーが選択される。一方、5ページ目の有彩色データは青色であるので、青色疑似カラーが選択される。選択された情報は画像処理部337へ送信される。
また、図12に示すように、色変換パターン切替部333bによる色変換パターンの選択(ステップS409)と平行して、給紙切替制御部333aでは、各ページの有彩色データと印刷に使用する有彩色のインク(マゼンタ)とを比較し(ステップS407)、プロファイルを参照して使用する印刷用紙を選択する(ステップS408)。
本実施形態においては、2及び4ページ目の有彩色データはマゼンタ色であり、印刷に使用される有彩色インク(マゼンタ色)の色相と同一色相であるので(ステップS201でYES)、白紙が選択される(ステップS202)。
一方、3ページ目の有彩色データは赤色及び肌色であり、また、5ページ目の有彩色データは青色であり、印刷に使用される有彩色インク(マゼンタ色)の色相と同一色相又は反対色相ではないため(ステップS201でNO)、その有彩色データと近似する有彩色の印刷用紙が給紙トレイ130に積載されているか否かが判断される(ステップS203)。
そして、3ページ目の有彩色データは赤色及び肌色であり、有彩色データに近似する有彩色の印刷用紙である黄色の印刷用紙が含まれているので(ステップS203でYES)、黄色の色紙が選択される(ステップS204)。一方、5ページ目の有彩色データは青色であり、有彩色データに近似する有彩色の印刷用紙である、水色の印刷用紙が含まれているので(ステップS203でYES)、水色の印刷用紙が選択される(ステップS204)。
その後、2ページ目から5ページ目の画像データを用いて、選択されたそれぞれの色変換パターンと印刷用紙によってカラー印刷処理が行われる(ステップS410)。これにより、図16に示すように、2ページ目は、白紙に、すべての文字がマゼンタで表示される。つまり、画像データ中のマゼンタ色の文字以外は、画像データとは異なる色の印刷結果(赤→マゼンタ、青→マゼンタ、緑→マゼンタ)が得られる。しかし、画像データ中に最も多いマゼンタ色の文字がマゼンタ色で再現されるので、画像全体としては、K(ブラック)とM(マゼンタ)の2色印刷によって、画像データに近い印刷結果を得ることができる。
3ページ目では、黄色の印刷用紙にマゼンタのインクが吐出され、写真部分が赤色及び肌色で表示される。4ページ目では、白紙にマゼンタのインクが吐出され、写真部分がマゼンタ色で表示される。これにより、3,4ページ目はそれぞれ画像データに忠実な印刷結果を得ることができる。5ページ目では、青色部分は水色の印刷用紙にマゼンタで印字することで紫色を表示させ、水色部分については無色とすることで印刷用紙の水色をそのまま表示させる。これにより、5ページ目のシアン色の下地及び写真を水色の用紙で再現し、青色の写真を、水色の用紙とマゼンタのインク色とにより紫色で再現して、シアン色の写真と区別しつつ、画像全体としては、K(ブラック)とM(マゼンタ)の2色印刷によって、画像データに近い印刷結果を得ることができる。
なお、本実施形態では、ヘッドユニット110がマゼンタ色と黒色のインクヘッドを有する2色印刷装置を例に説明したが、本発明は、これに限定するものでなく、例えば、2色の有彩色インクと無彩色インクを用いた3色印刷装置に用いてもよい。また、本実施形態では、有彩色インクをマゼンタとしたが、本発明は、これに限定するものではなく、シアン、イエロー、又はレッドを用いてもよい。
(作用・効果)
このような本実施形態によれば、2色印刷装置において、入力された画像の色情報に基づいて、色の異なる複数種類の印刷用紙の選択を切り替えることができるので、例えば、原稿がモノクロ画像である場合には、安価な白紙を選択させ、原稿が写真などのカラー画像である場合には、色紙を選択させることができる。これにより、ユーザーが色紙を挿入させるページを指定することなく、カラー印刷が必要な部分にのみ色紙を使用して、表現力を向上させるとともに、色が必要でない印刷ページには、安価な白紙を用いることができるので、印刷物全体のコストを低減させることができる。したがって、フルカラー画像に対応する擬似カラー画像を、少ないコスト及び手間と高い表現力で取得することができる。
特に、給紙切替制御部333aは、入力画像の色情報から算出される入力画像の代表色である有彩色データの色と近似する有彩色の印刷用紙を選択するので、有彩色の印刷用紙の色で入力画像の色を表現することができ、高価なインクを使用せずにカラー印刷物を得ることができる。また、代表色となる有彩色データが赤色や肌色である場合で、印刷用紙に黄色の用紙が含まれていれば、その黄色の用紙を選択させることで、マゼンタ色のインク量と黄色の印刷用紙とで赤色や肌色の表現力を向上させることができる。このように、本実施形態によれば、入力画像の代表となる色情報によって、違う色味の色紙を自動選択することによって、より多くの色を安価に再現できる。
さらに、給紙切替制御部333aは、入力画像の色情報から算出される有彩色データが、印刷に使用される有彩色インクの色相と同一色相である場合には、白色の印刷用紙を選択し入力画像と同じ色のインクを吐出することとしたので、入力画像と同じ色の画像を低コストである白紙で形成することができる。また、色情報から算出される有彩色データが、印刷に使用されるインクの色相と反対色相である場合にも、有彩色のインクと色紙との組み合わせでは入力画像の色に近い色を表現できないため、白紙を選択して黒インクで印字させることとした。このため、表現力の低い部分は低コストで印字することができる。
さらに、入力画像の色情報から算出される有彩色データが、印刷に使用するインクの色相と隣接する色相である場合には、印刷に使用されるインクと有彩色の用紙とを組み合わせることで、入力画像の色に近似する色を表現する。このため、高価なフルカラー印刷を用いずにカラー印刷物を得ることができる。
また、本実施形態では、入力画像の色情報に基づいて色変換のパターンを切り替えるので、例えば、色文字が含まれた画像では、有彩色/無彩色パターンが用いられ、ユーザーが強調したいカラー文字をすべて反映させた画像を取得することができる。また、本実施形態では、例えば、印刷用紙が水色である場合であって、画像の色情報に水色が含まれている場合には、画像データの水色部分を無色とするなどの色変換パターン内での微調整を行う。このため、印刷用紙の色を有効活用して画像の色を表現することができ、印刷コストを押さえつつ、ユーザーが意図した印刷物を提供することができる。
さらに、本実施形態では、無彩色インクと有彩色インクとを用いて2色又は3色の擬似カラー印刷を行うインクジェット印刷装置を例に取って説明した。しかし、これに限らず本発明は、電子写真方式や孔版印刷方式等、インクジェット以外の方式により無彩色及び有彩色の記録材を用いて擬似カラー画像の形成を行う各種の画像形成装置に、広く適用可能である。
[第2実施形態]
次いで、本発明の第2実施形態について説明する。上述した第1実施形態において、色変換パターン切替部333bは、入力されたフルカラー画像データのうち、選択された記録媒体の色情報と近似する色情報を有する画像部分について、記録材の量を0として印刷上無色となるように色変換処理した。しかし、第2実施形態では、この色変換処理の際、さらに、当該画像部分のうち、文字のエッジ、画像の輪郭又は点のいずれかを含む変換対象領域について、選択された印刷用紙の色情報と異なる色情報の画素に置換して印字処理する場合を説明する。なお、本実施形態では、印刷装置には水色の印刷用紙のみが積載され、カラー画像は赤色疑似カラーの色変換パターンが用いられる場合を例に説明する。
図17は本発明の第2実施形態に係る演算処理部330の内部構造を示すブロック図であり、図18(a)は図17のエッジ抽出部で処理されるエッジ抽出処理のフィルターを示す説明図であり、図18(b)は画像データ上にフィルターを配置させた状態を示す説明図である。また、図19(a)及び(b)は図17のプロファイル記憶部に記憶されるカラープロファイルの説明図である。なお、本実施形態において、上述した実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付し、その機能等は特に言及しない限り同一であり、その説明は省略する。
本実施形態では、色変換制御部333において、この置換処理の有無を判断しており、色変換制御部333は、プロファイル記憶部336に記憶されたプロファイルに基づいて、置換処理の有無を判断する。このプロファイルデータは、画像処理部380において、置換処理を行うか否かの条件を含めている点で第1実施形態と相違する。ここで、プロファイル記憶部336に蓄積されているプロファイルの一例を図19(a)及び(b)に示す。
図19(a)に示すプロファイルは、給紙トレイ130に白紙のみが積載され、カラー画像を黒色及びマゼンタのインクで2色印刷を行う際のプロファイルデータである。このプロファイルデータでは、印刷用紙については、全て白紙が選択されるとともに、入力された画像データがカラー画像である場合に赤色疑似カラーが選択されるように設定されている。
また、図19(b)に示すプロファイルは、給紙トレイ130に水色の印刷用紙のみが積載され、カラー画像を黒色及びマゼンタのインクで2色印刷を行う際のプロファイルデータである。このプロファイルデータでは、印刷用紙については、全て水色が選択されるとともに、入力された画像データがカラー画像である場合には、赤色疑似カラーが選択されるように設定されている。
そして、図19(a)及び(b)に示すプロファイルデータには、さらに置換処理の有無が設定されている。この置換処理は、選択された用紙の色情報と、入力画像の色情報とを比較し、印刷用紙の色情報と近似する入力画像の色情報については、置換処理を実行すると判断し、印刷用紙の色情報と近似しない入力画像の色情報については、置換処理を実行しないと判断するようになっている。具体的には、図19(a)に示すように、印刷用紙が無彩色である白紙である場合には、入力画像の色情報(赤色、肌色、水色、青、及び緑色等)は、印刷用紙の色と近似しないので、置換処理は実行しないと判断される。
次に、図19(b)に示すように、印刷用紙が有彩色である水色の印刷用紙である場合には、入力画像の色情報がインク色(マゼンタ)と隣接する色相の色であって、インク色に対して色相環上で反時計周り方向に位置する赤色や肌色は、印刷用紙の色(水色)と近似していないので、置換処理は実行しないと判断される。また、入力画像の色情報が、入力画像の印刷に使用されるインク色(マゼンタ)と反対方向に位置する色相である緑色についても、印刷用紙の色(水色)と近似していないので、置換処理は実行しないとは判断される。一方、入力画像の色情報が、単色の有彩色データが使用されるインク色(マゼンタ)と隣接する色相であって、インク色に対して色相環上で時計周り方向に位置する青色については、印刷用紙の色(水色)と近似するので、置換処理は実行すると判断される。そして、この判断結果は、画像処理部380へ入力され、画像処理部380において置換処理が実行される。
画像処理部380は、図17に示すように、色変換回路381と画像形成制御部384とを備えている。色変換回路381は、色変換制御部333の制御に従い、入力画像の色変換を行う回路であり、エッジ抽出部382と、合成処理部383とを備えている。そして、このエッジ抽出部382と合成処理部383とが置換処理部として機能する。ここで、色変換回路381は、色変換パターン切替部333bからの置換処理の信号を取得した場合には、RGB印刷画像のうち、選択された印刷用紙の色情報と近似する色情報を有する画像部分については、その画像データの色情報のまま、エッジ抽出部382へ入力する。一方、選択された印刷用紙の色情報と近似しない色情報を有する画像部分については、色変換回路381は、色変換のパターンを参照し、RGBの各色をM(マゼンタ)とK(黒)のインクで表現するように色変換を行う。そして、その画像データを合成処理部383へ入力する。
エッジ抽出部382は、選択された印刷用紙の色情報と近似する色情報を有する画像部分のうち、文字のエッジ、画像の輪郭又は点のいずれかを含む変換対象領域を抽出するモジュールである。このエッジ抽出部382は、無彩色エッジ抽出部382bと、有彩色エッジ抽出部382aとを備えている。ここで、無彩色エッジ抽出部382bと、有彩色エッジ抽出部382aとは、いずれか一方が処理を実行すればよく、色変換パターン切替部333bの制御信号に基づいて、変換対象領域を印字するインクの色情報に応じて適宜選択されるようになっている。なお、本実施形態では、変換対象領域は、無彩色であるKインクで印字処理するように設定されているものとし、無彩色エッジ抽出部382bが処理を実行するものとする。
この有彩色エッジ抽出部382a及び無彩色エッジ抽出部382bは、図18(a)に示すようなフィルターFを用いて、図18(b)に示すように、画像中の画素Eを注目画素E1として順次選択し、注目画素E1の画素値と、その周辺画素(フィルターF内に含まれる画素)の画素値との差分から、その注目画素部分が変換対象領域か否かを判断する。具体的には、画像データ内の、印刷用紙の色情報と近似する色情報を有する画素を、注目画素E1として順次選択して、この注目画素E1にフィルターの中央部分F1を配置させる。そして、下式
所定のしきい値≧
|(フィルターFの中央部分F1の画素値×8)
−(その他のフィルター内(8マス)の合計画素値)|
に示すように、中央部分の画素値を8倍した画素値から、他のフィルター内の合計画素値を減算し、その減算値の絶対値が所定のしきい値以上であるか否かを判断する。
そして、その減算値の絶対値が所定のしきい値以上である場合には、その注目画素E1は変換対象領域と判断する。一方、その減算値の絶対値が所定のしきい値未満である場合には、その注目画素E1は、非変換対象領域であると判断する。エッジ抽出部382において抽出された変換対象領域の画像データは、色変換回路381の機能により、選択された印刷用紙の色情報と異なる色情報の画素に色変換され、合成処理部383へ入力される。なお、本実施形態では、変換対象領域は、無彩色であるKインクで印字処理するように設定されているため、黒色の画素に色変換される。一方、非変換対象領域の画像データは、色変換回路381の機能により、記録材の量を0として印刷上無色となるように色変換処理され、画像形成制御部384へ入力される。
合成処理部383は、変換対象領域の画像データと、色変換回路381において無彩色又は有彩色に色変換された画像データとを合成するモジュールである。この合成処理部383は、有彩色合成部383aと無彩色合成部383bとを備えている。ここでも、有彩色合成部383aと無彩色合成部383bとは、いずれか一方が処理を実行すればよく、色変換パターン切替部333bの制御信号に基づいて、変換対象領域を印字させる色情報(有彩色又は無彩色)に応じて適宜選択されるようになっている。
本実施形態では、変換対象領域は黒色の画素に色変換されているため、無彩色に色変換された画像データが選択されて、交換対象領域の画像データと合成される。そして、合成処理部383は、合成処理された画像データ(交換対象領域及び無彩色画像データ)と、合成処理を行わなかった画像データ(有彩色画像データ)とを、画像形成制御部384へ入力する。
画像形成制御部384は、各色のインクヘッドの駆動を制御し、画像形成処理全体を制御するモジュールである。本実施形態においては、画像形成制御部384は、合成処理された画像データと、合成処理が行われなかった画像データと、非変換対象領域の画像データとに基づいて、それぞれ、インクヘッド110を制御してインクを吐出させて印刷画像を形成させる。なお、本実施形態では、図19(a)及び(b)に示すように、印刷用紙に水色の印刷用紙が積載され、カラー画像についても一律に赤色疑似カラーが選択されるプロファイルを用いて説明した。しかし、本発明は、これに限定するものではなく適宜変更可能である。例えば、第1実施形態に示すような、2種以上の印刷用紙や、複数の色変換パターンを用いるプロファイルにおいて、置換処理の有無を判断する構成としてもよい。
(置換処理の動作)
次に、以上の構成を有する印刷装置における置換処理動作について説明する。図20は図17の置換処理を示すフローチャート図である。この置換処理動作は、第1実施形態における、ステップS109及びステップS410の印刷動作時において実行される。なお、ここでは、印刷装置には水色の印刷用紙のみが積載され、カラー画像は赤色疑似カラーの色変換パターンが用いられ、変換対象領域部分を無彩色のインクで印字処理する場合を例に説明する。
先ず、色変換制御部333において、選択された印刷用紙の色情報と、入力画像の色情報とを比較して(ステップS701)、選択された有彩色の印刷用紙の色と近似する入力画像の色情報があるか否かが判断される(ステップS702)。選択された有彩色の印刷用紙の色と近似する入力画像の色情報がない場合には(ステップS702でNO)、置換処理を実行しないと判断し(ステップS703)、通常通り、2色印刷が行われる(ステップS708)。一方、選択された有彩色の印刷用紙の色と近似する入力画像の色情報がある場合には(ステップS702でYES)、置換処理を実行すると判断し、置換処理の操作信号を画像処理部380に入力する。
画像処理部380では、先ず、色変換回路381において、RGB印刷画像のうち、選択された印刷用紙の色情報と近似する色情報を有する画像部分について、その画像データの色情報のまま、エッジ抽出部382へ入力する。一方、選択された印刷用紙の色情報と近似しない色情報を有する画像部分については、色変換パターン切替部333bによって切替えられた色変換のパターンを参照し、RGBの各色をM(マゼンタ)とK(黒)のインクで表現するように色変換を行う。そして、その画像データは合成処理部383へ入力される。
無彩色エッジ抽出部382bでは、印刷用紙の色情報と近似する色情報を有する画像部分について、図18(a)に示すようなフィルターFを用いて、図18(b)に示すように、画像中の画素Eを注目画素E1として順次選択し、文字のエッジ、画像の輪郭又は点のいずれかを含む変換対象領域を抽出する(ステップS704)。そして、抽出した変換対象領域の画像データは、色変換回路381の機能により、選択された印刷用紙の色情報と異なる色情報である無彩色の画素に色変換され(ステップS705)、合成処理部383へ入力される。
一方、非変換対象領域の画像データは、色変換回路381の機能により、非変換対象領域の画像データについて、記録材の量を0(画素値=0)として印刷上無色となるように色変換処理され(ステップS706)、画像形成制御部384へ入力される。
次いで、合成処理部383では、色変換された変換対象領域の画像データと、色変換回路381において無彩色に色変換された画像データとを合成処理して(ステップS707)、合成された画像データを画像形成制御部384へ入力する。また、画像形成制御部384では、合成処理された画像データと、合成処理が行われなかった画像データと、非変換対象領域の画像データとに基づいて、各色のインクヘッド110の駆動を制御して印刷画像を形成させる(ステップS708)。
(作用・効果)
このような本実施形態によれば、2色印刷によって表現できない原稿色を印刷用紙にインクを吐出せずに、選択された有彩色の印刷用紙の色によって表現する際に、文字のエッジ、又は画像の輪郭及び点などを変換対象領域として抽出して、その変換対象領域を搭載されたインク(例えば、黒インク又はマゼンタインク)色に色変換処理させて印字処理させる。これにより、例えば、空(そら)の画像データに文字や雲などが表現されている場合には、その文字のエッジ及び雲画像の輪郭部分については印字処理することができるので、印刷用紙の色を表現に用いた場合であっても、画像データの情報を失わさずに表現させることができる。