以下、本発明の面状発光体に係る第1実施形態〜第2実施形態、および変形例を、図面に基づいて順次説明する。
≪第1実施形態≫
図1には、第1実施形態の面状発光体の概略断面構成図を示す。この図に示す面状発光体1-1は、有機電界発光素子ELを用いて構成された複数の発光パネル1を面状に接合したものであって、図面においては2枚の発光パネル1を接合した部分の断面を示している。
各発光パネル1は、透明基板3の一主面上に有機電界発光素子ELを備え、さらに有機電界発光素子ELを覆う封止材5を備えている。有機電界発光素子ELは、発生させた光(以下、発光光hと記す)を、透明基板3側から取り出すように構成されている。
各発光パネル1は、透明基板3を同一方向に向けた状態で、透明基板3が連続する面状を保つように配列されており、これによって1枚の面状発光体1-1が構成されている。ここでは、一例として大型の支持基板21の一主面上に、接着剤23を介して複数の発光パネル1を固定することにより、面状発光体1-1が構成されている。この際、支持基板21と透明基板3との間に有機電界発光素子ELが挟持され、透明基板3の光取り出し面3aが外側に露出されるように、支持基板21に対して発光パネル1が固定されている。また隣接して配置された発光パネル1同士は、できる限り近接して配置されることが好ましく、透明基板3の周端面において密着させた状態で配列されることとする。
有機電界発光素子ELは各透明基板3上に設けられており、透明基板3側から順に、透明電極11、有機発光機能層13、および対向電極15をこの順に積層して構成されている。この有機電界発光素子ELにおいては、透明基板3の屈折率n1、透明電極11の屈折率n2とした場合に、n2−n1≦0.47であることが本実施形態の1つ目の特徴である。
尚、隣接する発光パネル1の透明基板3間は、接着剤を介して接合されていても良い。この場合、接着剤は、光透過性を有し、透明基板3と同程度の屈折率を有することが好ましく、これにより接着された透明基板3を光学的に1枚の基板として取り扱うことが可能になる。
以上のように複数の発光パネル1をタイリングしてなる面状発光体1-1は、透明基板3における光取り出し面3a側に、光取り出し部材9が設けられていることが2つ目の特徴である。
以下、このような構成の面状発光体1-1を構成する各構成要素の詳細を説明する。
<透明基板3(発光パネル1)>
透明基板3は、有機電界発光素子ELを支持する支持基板であって、有機電界発光素子ELで生じた発光光hを取り出す側に配置され、可視光に対する光透過性が高い材料を用いて構成されている。
このような透明基板3としては、ガラス基板、石英基板、透明樹脂フィルムが例示されるが、これらの材料基板の中から、所定の屈折率n1を有する材料を選択して用いることが重要である。所定の屈折率n1とは、後に説明する有機電界発光素子ELの透明電極11の屈折率n2に対して、n2−n1≦0.47となる範囲の屈折率である。また透明基板3の屈折率n1は、上述した範囲内において、有機電界発光素子ELにおける透明電極11の屈折率n2との差が小さいほど良く、さらに二次的には透明基板3の光取り出し面3aと接する部分(主に大気)の屈折率との差が小さいほど良い。
先にあげた材料基板のうち、ガラス基板を用いる場合であれば、金属を含有させることによって屈折率n1を調整して用いることができる。このような金属としては、例えばリン(P)や鉛(Pb)が用いられる。
また樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、セロファン、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)、セルロースアセテートフタレート、セルロースナイトレート等のセルロースエステル類またはそれらの誘導体、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンビニルアルコール、シンジオタクティックポリスチレン、ポリカーボネート、ノルボルネン樹脂、ポリメチルペンテン、ポリエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン類、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトンイミド、ポリアミド、フッ素樹脂、ナイロン、ポリメチルメタクリレート、アクリルあるいはポリアリレート類、アートン(商品名JSR社製)あるいはアペル(商品名三井化学社製)といったシクロオレフィン系樹脂等を挙げられる。
透明基板3としてこのような樹脂フィルムを用いる場合、樹脂フィルムの表面には、無機材料または有機材料を用いたバリア膜、さらには無機材料および有機材料の両方を用いたハイブリッドバリア膜が形成されていても良い。
ここで用いられるバリア膜は、水蒸気透過度(測定環境40℃、90%RH)が、0.01g/(m2・day)以下のバリア性フィルムであることが好ましい。また、酸素透過度(測定環境20℃、100%RH)が10-3g/(m2・day)以下で、かつ水蒸気透過度が10-3g/(m2・day)以下の高バリア性フィルムであることが好ましい。さらに、水蒸気透過度、酸素透過度がいずれも10-5g/(m2・day)以下であることが特に好ましい。尚、上記「水蒸気透過度」は、JIS−K−7129−1992に準拠した方法で測定された値であり、「酸素透過度」はJIS−K−7126−1992に準拠した方法で測定された値である。
以上のようなバリア膜としては、例えば、酸化珪素膜、二酸化珪素膜、窒化珪素膜等の無機材料膜を用いることができる。さらにバリア膜の脆弱性を改良するために、これら無機材料膜と共に有機材料膜を用いた積層構造のハイブリッドバリア膜としても良い。無機材料層と有機層の積層順については特に制限はないが、両者を交互に複数回積層させることが好ましい。
バリア膜の成膜方法については特に限定はなく、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、分子線エピタキシー法、クラスタ−イオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法、大気圧プラズマ重合法、プラズマCVD法、レーザーCVD法、熱CVD法、コーティング法等を用いることができる。また、特開2004−68143号公報に記載されているような大気圧プラズマ重合法によるものが特に好ましい。一方で、生産性の高い塗布方式も好ましく、例えば特開2011−121298号公報に記載されているような、ポリシラザン塗布膜のエキシマ照射改質処理で得られるバリア膜も好ましい。
<有機電界発光素子EL(発光パネル1)>
図2には、実施形態の面状発光体に用いられる有機電界発光素子ELの概略断面構成図を示す。この図に示す有機電界発光素子ELは、有機材料のエレクトロルミネッセンス(electroluminescence:以下ELと記す)を利用したいわゆる有機EL素子であって、陽極31と陰極35との間に有機発光機能層13を挟持している。有機発光機能層13は、少なくとも発光層13bを備えた有機材料層であって、陽極31側から注入された正孔と、陰極35から注入された電子とが、発光層13bにおいて再結合することにより発光光hを生じる。発光層13bにおいて生じた発光光hは、陽極31または陰極35のうち、透明電極11として構成された電極から外部に取り出される。
このような有機電界発光素子ELは、有機発光機能層13の劣化を防止することを目的として、透明基板3上において後述する封止材5で封止される。このため、有機電界発光素子ELが設けられる透明基板3の周縁には、有機電界発光素子ELを封止するためのスペースを設ける必要があり、有機電界発光素子ELは透明基板3の中央に配置されることになる。
また有機電界発光素子ELの層構造が限定されることはなく、一般的な層構造であって良い。例えば有機発光機能層13は、陽極31側から順に正孔輸送層13a、発光層13b、電子輸送層13cを積層した構成が例示されるが、このうち少なくとも発光層13bを有することが必須である。また有機発光機能層13は、これらの層の他にも、陽極31と正孔輸送層13aとの間の正孔注入層、電子輸送層13cと陰極35の間の電子注入層、さらには正孔阻止層や電子阻止層等が必要に応じて必要箇所に積層されていて良い。
また発光層13bは、各波長領域の発光光を発生させる各色発光層を有し、これらの各色発光層を、非発光性の中間層を介して積層させた構造としても良い。中間層は、正孔阻止層、電子阻止層として機能しても良い。さらに陽極31および陰極35も、必要に応じた積層構造であっても良い。
図1に示した本第1実施形態の面状発光体1-1では、上記構成の有機電界発光素子ELにおける陽極31または陰極35のうち、何れか一方が透明電極11として構成され、他方が対向電極15として用いられる。一例として、陽極31が透明電極11、陰極35が対向電極15として用いられる。ここで重要なことは、透明電極11が、所定の屈折率n2を有することである。所定の屈折率n2とは、先に説明した透明基板3の屈折率n1に対して、n2−n1≦0.47となる範囲の屈折率である。また透明電極11の屈折率n2は、上述した範囲内において、透明基板3の屈折率n1との差が小さいほど良い。
ここで対向電極15は、一般的には反射特性の良好な反射電極として構成されるが、これに限定されることはなく、対向電極15側からも発光光hを取り出す場合には対向電極15も透明電極として良く、また他の構成であっても良い。
以上のような有機電界発光素子ELは、有機電界発光素子ELで発生させた発光光hを透明基板3側から光を取り出すボトムエミッション型の素子として構成されている。このため、陽極31および陰極35のうち、透明電極11として構成された電極(陽極31または陰極35)を透明基板3側とし、上述した積層順を保って透明基板3上に配置されている。
このような構成の有機電界発光素子ELは、透明基板3上において透明電極11および対向電極15の端子部分を、有機発光機能層13によって互いに絶縁性を保った状態で封止材5から露出させた状態で設けられている。このような構成において、透明電極11と対向電極15とで有機発光機能層13が挟持された部分のみが、有機電界発光素子ELにおける発光領域Aとなる。これに対して、透明基板3上における発光領域Aの周囲は、発光領域Aを除いて全てが非発光領域Bとなる。尚、図面においては対向電極15の端子部分が封止材5から露出した箇所の断面を示したが、透明電極11も透明基板3上の何れかの部分において封止材5から露出している。例えば、透明電極11は、対向電極15と絶縁性を保ちつつ、当該対向電極15と同一方向に端子部分を露出させていることとする。
以下、上述した有機電界発光素子ELを構成する主要各層の詳細を、陽極31、陰極35、有機発光機能層13の発光層13b、有機発光機能層13の他の層の順に説明し、その後、有機電界発光素子ELの作製方法を説明する。
[陽極31]
陽極31は、有機発光機能層13に正孔を供給する電極膜であり、正孔注入性を有する程度に仕事関数が大きい(例えば4eV以上)導電性材料を用いて構成される。このような導電性材料は、金属、合金、有機または無機の導電性化合物、およびこれらの混合物が用いられる。具体的には、金(Au)等の金属、ヨウ化銅(CuI)、酸化インジウムスズ(SnO2−In2O3:Indium Tin Oxide:ITO)、酸化スズ(SnO2)、酸化亜鉛(ZnO)等の導電性光透過性材料が挙げられる。また、酸化インジウム亜鉛(In2O3−ZnO:例えばIDIXO出光興産社登録商標)等の非晶質の導電性光透過性材料であっても良い。
陽極31を透明電極11とする場合であれば、上述した材料のうち導電性光透過性材料を用いて陽極31を構成すれば良い。上述した導電性光透過性材料であれば、組成や成膜条件によって屈折率の調整が可能であり、上述した範囲の屈折率n2を有する透明電極11からなる陽極31が得られる。
また陽極31のシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましい。さらに陽極31の膜厚は、材料にもよるが、通常10nm以上1000nm以下、好ましくは10nm以上200nm以下の範囲で設定される。
以上のような構成の陽極31は、蒸着法やスパッタリング法によって成膜される。陽極31をパターン形成する場合であれば、成膜した陽極膜を、フォトリソグラフィー法によって形成したレジストパターンをマスクにしてパターンエッチングすれば良い。また、パターン精度をあまり必要としない(精度100μm以上程度)場合の陽極31の形成であれば、蒸着法やスパッタリング法によって陽極31を成膜する際に、所望の形状のマスクを介して成膜を行えば良い。
以上のほかにも、陽極31として、有機の導電性化合物のように塗布可能な導電性材料を用いる場合であれば、印刷方式およびコーティング方式等の湿式成膜法を適用して陽極31が成膜される。
[陰極35]
陰極35は、有機発光機能層13に電子を供給する電極膜であり、電子注入性を有する程度に仕事関数が小さい(例えば4eV以下)導電性材料を用いて構成される。このような導電性材料は、金属、合金、有機または無機の導電性化合物、およびこれらの混合物が用いられる。具体的には、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al2O3)混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属等が挙げられる。
これらの導電性材料の中で、電子注入性及び酸化等に対する耐久性の点から、電子注入性金属とこれより仕事関数の値が大きく安定な金属である第二金属との混合物、例えば、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al2O3)混合物、リチウム/アルミニウム混合物等が好適である。
尚、陰極35を透明電極11とする場合であれば、上述した材料のうち上述した屈折率n2を備えた導電性光透過性材料を用いて陰極35を構成すれば良い。
また陰極35のシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましい。さらに陰極35の膜厚は、材料にもよるが、通常10nm以上5μm以下、好ましくは50nm以上200nm以下の範囲で設定される。
以上のような陰極35は、蒸着法やスパッタリング法等の方法により成膜される。また陰極35をパターン形成する場合は、上述した陽極31のパターン形成と同様の方法を採用することができる。
[発光層13b]
発光層13bは、陽極31側から供給された正孔と、陰極35側から供給された電子とが再結合して発光光を発生する層である。このような発光層13bは、ホスト材料および発光性のゲスト材料(発光ドーパント化合物ともいう)を含有し、ゲスト材料において発光させることが発光効率を高める点から好ましい。
このうちホスト材料は、公知のホスト材料を単独で用いてもよく、または複数種を併用して用いてもよい。ホスト材料を複数種用いることで、電荷の移動を調整することが可能であり、有機電界発光素子の発光を高効率化することができる。また、後述する発光材料を複数種用いることで異なる発光色を混ぜて取り出すことが可能となり、これにより任意の発光色を得ることができる。
このようなホスト材料としては、従来公知の低分子化合物でも、繰り返し単位をもつ高分子化合物でもよく、ビニル基やエポキシ基のような重合性基を有する低分子化合物(蒸着重合性発光ホスト)でも良い。
公知のホスト材料としては、正孔および電子(キャリア)の輸送を担う物質であって正孔輸送能および電子輸送能を有し、かつ発光の長波長化を防ぐと共に、高ガラス転移点(Tg)を有する化合物が好ましい。尚、ガラス転移点(Tg)とは、DSC(Differential Scanning Colorimetry:示差走査熱量法)を用いて、JIS−K−7121に準拠した方法により求められる値である。
ここでホスト材料は、上述したように正孔輸送能および電子輸送能などのキャリア輸送能を有する材料が好ましく用いられる。しかしながら一般的に、有機材料のキャリア輸送能(キャリア移動度)は、電界強度に依存性が見られ、電界強度依存性の高い材料は正孔と電子の注入・輸送バランスを崩しやすい。このため、ホスト材料は、キャリア移動度の電界強度依存性が少ない材料を用いるか、または電界強度依存性が同じ程度の材料を組み合わせて用いることが、有機電界発光素子における発光色のばらつきを最小限に抑える点から好ましい。
尚、このような性質は、有機発光機能層13において複数の発光層を積層させた構成において、発光層間に挟持させた中間層に対しても当てはめられる。中間層を構成する材料として、上述した物性を有する材料を用いることにより、有機電界発光素子ELにおける発光色のばらつきが最小限に抑えられる。このような中間層は、正孔阻止層または電子阻止層として機能させても良い。
またゲスト材料は、燐光発光材料(燐光性ドーパント)および蛍光発光材料(蛍光性ドーパント)のどちらを用いても良いが、燐光発光材料が好ましい。また、複数のゲスト材料を混合してもよく、燐光発光材料と蛍光発光材料を同一の発光層中に混合して用いてもよい。
燐光発光材料は、燐光性化合物または燐光発光性化合物とも言い、有機電界発光素子ELの発光層に使用される公知のものの中から適宜選択して用いることができる。なかでも元素の周期表で8〜10族の金属を含有する錯体系化合物が好ましく、さらに好ましくはイリジウム化合物、オスミウム化合物、白金化合物(白金錯体系化合物)、または希土類錯体であり、特にイリジウム化合物が好ましく用いられる。
蛍光発光材料は、代表例として、クマリン系色素、ピラン系色素、シアニン系色素、クロコニウム系色素、スクアリウム系色素、オキソベンツアントラセン系色素、フルオレセイン系色素、ローダミン系色素、ピリリウム系色素、ペリレン系色素、スチルベン系色素、ポリチオフェン系色素、または希土類錯体系蛍光体等が挙げられる。
以上のような発光性のゲスト材料は、一つの発光層に2種以上を含有していても良く、発光層におけるゲスト材料の濃度比が発光層の厚さ方向で変化していても良い。
以上のようなホスト材料および発光性のゲスト材料を用いて構成される発光層13bおよび中間層は、例えば、蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB(Langmuir Blodgett)法、インクジェット法、印刷法等の公知の薄膜成膜法によって形成することができる。
[正孔輸送層13a,電子輸送層13c]
陽極31−陰極35間において、発光層13bを挟持する位置にして配置される正孔輸送層13aおよび電子輸送層13cは、発光層13bとの組み合わせを考慮して従来公知の材料を用いることができる。一例として、正孔輸送層13aであればα−NPDが用いられ、電子輸送層13cであればAlq3が用いられる。
[その他の層]
また、陽極31と正孔輸送層13aとの間に正孔注入層を設け、陰極35と電子輸送層13cとの間に電子注入層を設けても良い。これらの注入層は、駆動電圧低下や発光輝度向上のために設けられ、例えば「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日エヌ・ティー・エス社発行)」の第2編第2章「電極材料」(123〜166頁)に詳細に記載されているものが好適に用いられる。一例として、正孔注入層であれば銅フタロシアニンが用いられ、電子注入層であれば無機材料であるフッ化リチウムが用いられる。さらに発光層13bと電子輸送層13cとの間に正孔阻止層を設ける場合であれば、一例としてBAlqが用いられる。
[有機電界発光素子ELの作製方法]
ここでは有機電界発光素子ELの作製方法の一例として、透明基板3側から順に、透明電極11としての陽極31/有機発光機能層13/対向電極15としての陰極35がこの順に積層された有機電界発光素子ELの作製方法を説明する。
先ず屈折率n1を有する透明基板3上に、屈折率n2を有する光透過性の陽極用物質からなる薄膜を1μm以下、好ましくは10nm以上200nm以下の膜厚になるように蒸着法やスパッタリング等の方法により形成させ、透明電極11としての陽極31とする。
次に陽極31(透明電極11)上に、有機発光機能層13を形成する。ここでは、例えば、正孔注入層、正孔輸送層13a、発光層13b、正孔阻止層、電子輸送層13cの各有機化合物薄膜をこの順に成膜する。これらの有機化合物薄膜の成膜方法としては、上述したように蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB(Langmuir Blodgett)法、インクジェット法、印刷法等があるが、均質な膜が得られやすく、かつピンホールが生成しにくい等の点から、蒸着法、スピンコート法、インクジェット法、印刷法が特に好ましい。さらに層毎に異なる成膜法を適用してもよい。またこの際、有機発光機能層13は、陽極31(透明電極11)の一部を端子部分として露出する形状にパターン形成する。
成膜法として蒸着法を採用する場合、その蒸着条件は使用する化合物の種類等により異なるが、一般にボート加熱温度50℃以上450℃以下、真空度10-6Pa以上10-2Pa以下、蒸着速度0.01nm/秒以上50nm/秒以下、基板温度−50℃以上300℃以下、膜厚0.1nm以上5μm以下、好ましくは5nm以上200nm以下の範囲で適宜選ぶことが望ましい。
これらの層を形成後、その上に陰極用物質からなる薄膜を1μm以下、好ましくは50nm以上200nm以下の範囲の膜厚になるように、例えば、蒸着法やスパッタリング等の方法により形成させ、対向電極15としての陰極35とする。この際、陰極35(対向電極15)は、有機発光機能層13によって陽極31(透明電極11)に対して絶縁状態を保ちつつ、有機発光機能層13の上方から透明基板3の周縁に端子部分を引き出した形状にパターン形成する。
以上により、透明基板3上に所望の有機電界発光素子ELが得られる。このような有機電界発光素子ELの作製においては、一回の真空引きで一貫して有機発光機能層13から陰極35(対向電極15)まで作製するのが好ましいが、途中で取り出して異なる成膜法を施しても構わない。その際、作業を乾燥不活性ガス雰囲気下で行う等の配慮が必要となる。また作製順序を逆にして、陰極35、電子注入層、電子輸送層13c、発光層13b、正孔輸送層13a、正孔注入層、陽極31の順に作製することも可能である。この場合、陰極35を透明電極11として形成し、陽極31を対向電極15として形成する。
このようにして得られた有機電界発光素子ELに直流電圧を印加する場合には、陽極31を+、陰極35を−の極性として、電圧2V以上40V以下程度を印加すると発光が観測できる。また交流電圧を印加してもよい。なお、印加する交流の波形は任意でよい。
<封止材5(発光パネル1)>
封止材5は、有機電界発光素子ELを覆うものであって、板状(フィルム状)の封止部材であっても良く封止膜であっても良い。このような封止材5は、有機電界発光素子ELにおける透明電極11および対向電極15の端子部分を露出させる状態で、少なくとも有機発光機能層13を覆う状態で設けられている。
封止材5として板状(フィルム状)の封止部材を用いる場合であれば、凹板状または平板状の封止部材が、有機電界発光素子ELを覆う状態で透明基板3に対して対向配置され、有機電界発光素子ELにおける透明電極11および対向電極15の端子部分のみを露出させる状態で透明基板3に接着して設けられている。
このような板状(フィルム状)の封止部材の具体例としては、ガラス板、ポリマー板、金属板等が挙げられる。ガラス板としては、特にソーダ石灰ガラス、バリウム・ストロンチウム含有ガラス、鉛ガラス、アルミノケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラス、石英等を挙げることができる。また、ポリマー板としては、ポリカーボネート、アクリル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルサルファイド、ポリサルフォン等を挙げることができる。金属板としては、ステンレス、鉄、銅、アルミニウム、マグネシウム、ニッケル、亜鉛、クロム、チタン、モリブテン、シリコン、ゲルマニウム及びタンタルからなる群から選ばれる一種以上の金属または合金からなるものが挙げられる。
発光パネル1の薄型化の観点からは、ポリマー板または金属板が好ましく用いられる。またポリマー板は、酸素透過度10-3g/(m2・day)以下、水蒸気透過度10-3g/(m2・day)以下のものであることが好ましい。また、水蒸気透過度、酸素透過度がいずれも10-5g/(m2・day)以下であることがさらに好ましい。尚、上記「水蒸気透過度」は、JIS−K−7129−1992に準拠した方法で測定された値であり、「酸素透過度」はJIS−K−7126−1992に準拠した方法で測定された値である。
また封止材5が凹板状の封止部材である場合、その凹部はサンドブラスト加工、化学エッチング加工等によって形成される。
さらに封止材5として板状の封止部材を用いる場合、封止材5と透明基板3との接着に用いる接着剤としては、アクリル酸系オリゴマーまたはメタクリル酸系オリゴマーの反応性ビニル基を有する光硬化型または熱硬化型接着剤、2−シアノアクリル酸エステル等の湿気硬化型接着剤等が挙げられる。さらにエポキシ系等の熱硬化型または化学硬化型(二液混合)接着剤が挙げられる。またホットメルト型のポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィンが挙げられる。この他にも、カチオン硬化タイプの紫外線硬化型エポキシ樹脂接着剤が挙げられる。
尚、以上の接着剤の中でも、有機電界発光素子の熱処理による劣化を防止するために、室温から80℃までの温度範囲で接着硬化できるものが好ましく用いられる。また、前記接着剤中に乾燥剤を分散させておいてもよい。封止部分への接着剤の塗布は、ディスペンサーを用いて行っても良いし、スクリーン印刷によって行っても良い。
また、封止材5が凹板状の封止部材である場合、封止部材と有機電界発光素子ELとの間隙には、気相及び液相では窒素、アルゴン等の不活性気体やフッ化炭化水素、シリコンオイルのような不活性液体を充填することが好ましい。また、真空としても良い。さらに内部に吸湿性化合物を封入しても良い。
吸湿性化合物としては、例えば、金属酸化物(例えば、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム等)、硫酸塩(例えば、硫酸ナトリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸コバルト等)、金属ハロゲン化物(例えば、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、フッ化セシウム、フッ化タンタル、臭化セリウム、臭化マグネシウム、沃化バリウム、沃化マグネシウム等)、過塩素酸類(例えば、過塩素酸バリウム、過塩素酸マグネシウム等)等が挙げられ、硫酸塩、金属ハロゲン化物及び過塩素酸類においては無水塩が好適に用いられる。
一方、封止材5として封止膜を用いる場合であれば、有機電界発光素子ELにおける有機発光機能層13を完全に覆い、かつ有機電界発光素子ELにおける透明電極11および対向電極15の端子部分を露出させる状態で、透明基板3上に封止膜が設けられる。
このような封止膜は、無機材料や有機材料を用いて構成される。特に、水分や酸素等、有機電界発光素子ELにおける有機発光機能層13の劣化をもたらす物質の浸入を抑制する機能を有する材料で構成されることとする。このような材料として、例えば、酸化珪素、二酸化珪素、窒化珪素等の無機材料が用いられる。さらに封止膜の脆弱性を改良するために、これら無機材料からなる膜と共に、有機材料からなる膜を用いて積層構造としても良い。
これらの封止膜の形成方法については、特に限定はなく、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、分子線エピタキシー法、クラスタ−イオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法、大気圧プラズマ重合法、プラズマCVD法、レーザーCVD法、熱CVD法、コーティング法等を用いることができる。
<光取り出し部材9>
光取り出し部材9は、入射した光を透過させて放出する機能を有するシート状、フィルム状、板状、または膜状の光学部材(以下、代表してシートと記す)であって、隣接して配置された複数の発光パネル1間(すなわち透明基板3間)に跨って、透明基板3における発光光hの取り出し面側に配置されている。以下、光取り出し部材9の配置状態と構成の詳細を説明する。
この光取り出し部材9は、隣接して配置された複数の発光パネル1において、発光領域A間に形成される非発光領域Bに設けられる。光取り出し部材9は、このような非発光領域Bにおいて、発光領域Aに対して平面的に積層されることなく配置され、非発光領域Bの50%以上を覆う状態で配置されていることが好ましく、非発光領域Bの100%を覆っていて良い。
尚、光取り出し部材9は、面状発光体1-1の周縁に位置する非発光領域Bにも配置されて良い。また光取り出し部材9は、図示したように隣接する発光パネル1間に渡って連続的に設けられていても良いし、発光パネル1毎に(すなわち透明基板3毎に)設けられていても良い。このような場合であっても、光取り出し部材9は、発光領域Aに対して平面的に積層されることなく(重なることなく)配置されることとする。
以上のように配置される光取り出し部材9は、光拡散シートや、集光シートを用いて構成される。光拡散シートは、一般的な光拡散シートであって良く、例えば表面凹凸形状を有するシート部材が用いられる。集光シートは、プリズムシートと呼ばれる一般的な集光シートであって良く、例えば液晶表示装置のLEDバックライト用に実用化されているものが用いられる。集光シートの形状としては、例えば、基材に頂角90度の断面三角形状のストライプがピッチ50μmで形成されたものであっても良いし、断面三角形状の頂角が丸みを帯びた形状、ピッチをランダムに変化させた形状、その他の形状であっても良い。
光取り出し部材9は、以上のような光拡散シートや集光シートを積層した構成であっても良く、これによって光取り出し部材9から取り出される発光光hの放射角(光取り出し角度)が調整される。例えば、広い角度に渡って発光光hを取り出したい場合であれば、光取り出し部材9として、光拡散シートを用いるか、または集光シートの光取り出し面上に光拡散シートを積層させることで、最上面に光拡散シートを配置した構成とする。一方、光取り出し面に対する正面側の狭い角度で発光光hを取り出したい場合であれば、光取り出し部材9として、集光シートを用いるか、光拡散シートの光取り出し面上に集光シートを積層させて用いることで、最上面に集光シートを配置した構成とする。集光シートを用いた構成においては、集光シートを構成するプリズムのストライプの形状やピッチを調整することにより、放射角が制御される。
尚、光拡散シートが最上面に配置される構成では、ある特定方向に取りだされる光量が増えるため、該方向における輝度が高くなる。このため、本発明を適用するアプリケーションに応じて、最上面に光拡散シートを配置した構成と、最上面に集光シートを配置した構成のいずれかを選択する。
尚、以上のような光取り出し部材9は、透明基板3に対して、ここでの図示を省略した接着剤によって固定して設けられている。ここで用いる接着剤は、光透過性の高い材料を用いることが好ましく、かつ透明基板3の屈折率と同程度の屈折率を有していて良い。
<保護膜、保護板>
尚、ここでの図示は省略したが、透明基板3との間に有機電界発光素子ELおよび封止材5を挟んで保護膜もしくは保護板を設けても良い。この保護膜もしくは保護板は、有機電界発光素子ELを機械的に保護するためのものであって、発光パネル1および面状発光体1-1の機械的強度の向上を図るためのものである。特に、封止材5が封止膜である場合には、有機電界発光素子ELに対する機械的な保護が十分ではないため、このような保護膜もしくは保護板を設けることが好ましい。
以上のような保護膜もしくは保護板は、ガラス板、ポリマー板、ポリマーフィルム、金属板、金属フィルム、またはポリマー材料膜や金属材料膜が適用される。このうち特に、軽量かつ薄膜化ということからポリマーフィルムを用いることが好ましい。
<支持基板21>
支持基板21は、複数の発光パネル1を貼り合わせた状態で支持可能の板状のものであれば、光透過性を有する必要はなく、特に材質が限定されることはなくい。ただし、面状発光体1-1をフレキシブルに屈曲する構成とする場合であれば、支持基板21として屈曲性を有する可撓性基板が用いられる。このような材料としては、例えば樹脂フィルムや、板厚0.01mm以上0.50mm以下のガラス基板が好ましく用いられる。ガラス基板を用いる場合の更に好ましい板厚は0.01mm以上0.20mm以下である。
<接着剤23>
接着剤23は、広く工業分野において、粘着剤、接着剤、あるいは粘着材、接着材等の呼称で用いられる剤あるいは材のうち、塗布し、貼り合わせた後に、種々の化学反応により高分子量体または架橋構造を形成する硬化型の接着剤であって、UVのような光を照射するか、熱を加えるか、あるいは加圧によって接着部分が硬化する材料が用いられる。
以上のような接着剤23の具体例としては、例えば、ウレタン系、エポキシ系、フッ素含有系、水性高分子−イソシアネート系、アクリル系等の硬化型接着剤、湿気硬化ウレタン接着剤、ポリエーテルメタクリレート型、エステル系メタクリレート型、酸化型ポリエーテルメタクリレート等の嫌気性接着剤、シアノアクリレート系の瞬間接着剤、アクリレートとペルオキシド系の2液型瞬間接着剤等が挙げられる。
<面状発光体の製造方法>
先ず透明基板3上に有機電界発光素子ELを形成した後、有機電界発光素子ELにおける透明電極11および対向電極15の端子部分を露出させた状態で、少なくとも有機発光機能層13を覆う封止材5を設ける。これにより、発光パネル1を得る。
次に支持基板21上に接着剤23を介して複数の発光パネル1をタイリングして貼り合わせる。この場合、支持基板21と透明基板3との間に有機電界発光素子ELを挟持させる状態で発光パネル1を配置し、隣接する発光パネル1の透明基板3同士を周端面において密着させて配列する。その後、透明基板3において有機電界発光素子ELが設けられた面と反対側の光取り出し面3aに、有機電界発光素子ELの発光領域Aに重ならないように、光取り出し部材9を貼り合わせる。また必要に応じて、各発光パネル1間において、周端に引き出された透明電極11および対向電極15の端子部分を接続させる。これにより、面状発光体1-1を得る。
尚、発光パネル1毎に独立して光取り出し部材9を設ける場合には、各発光パネル1における透明基板3の非発光領域Bに光取り出し部材9を設けた後、光取り出し部材9を設けた発光パネル1を支持基板21上にタイリングする。
<第1実施形態の効果>
以上説明した面状発光体1-1では、有機電界発光素子ELの有機発光機能層13で生じた発光光hは、透明電極11を通過して透明基板3から取り出される。この際、透明基板3の屈折率n1と透明電極11の屈折率n2との屈折率差n2−n1≦0.47と規定したことにより、様々な角度で透明電極11と透明基板3との界面に達した発光光hが、透明基板3に取り込まれ易くなり、透明基板3内においての発光光hの取り込み光量を増加させることができる。
さらに、このように発光光hの取り込み光量の増加が図られた透明基板3の光取り出し面3aには、非発光領域Bに対応して光取り出し部材9を設けた。これにより、発光領域Aからの光の取り出し量を減少させることなく、透明基板3内に取り込まれた発光光hが非発光領域Bの光取り出し部材9から効率的に取り出され、配列された複数の発光パネル1(すなわち透明基板3)の繋ぎ目付近において、非発光領域Bからの発光光hの取り出し量を増加させることが可能である。
この結果、透明基板3上に有機電界発光素子ELを設けた複数の発光パネル1を面状に配列した構成において、発光パネル1同士(すなわち透明基板3同士)の繋ぎ目付近に生じる非発光領域Bからの発光光hの取り出し量を増加させることが可能になり、大面積の面状発光体1-1における輝度の面内均一性の向上を図ることが可能になる。
≪第2実施形態≫
図3には、第2実施形態の面状発光体の概略断面構成図を示す。この図に示す第2実施形態の面状発光体1-2が、図1を用いて説明した第1実施形態の面状発光体と異なるところは、透明基板3と光取り出し部材9との間に、透明基板部材25を設けたところにあり、他の構成は同様であることとする。このため、第1実施形態と同様の構成要素についての重複する説明は省略する。
<透明基板部材25>
透明基板部材25は、透明基板3の板厚を部分的に厚膜化するために設けられたものであって、透明基板3の光取り出し面3a側に、透明基板3と光取り出し部材9とで挟持された状態で配置される。つまり、透明基板部材25は、発光パネル1の非発光領域Bにおいて、発光領域Aに対して平面的に積層されることなく配置され、非発光領域Bの50%以上を覆う状態で配置されていることが好ましく、非発光領域Bの100%を覆って配置されても良い。
また透明基板部材25は、面状発光体1-2の周縁に位置する非発光領域Bにも上述と同様に配置されて良いこと、さらには、図示したように隣接する発光パネル1間(透明基板3間)に渡って連続的に設けられていても良いし、発光パネル1毎(透明基板3毎)に設けられていても良いことは光取り出し部材9と同様である。
このような透明基板部材25は、光透過率が透明基板3と同等以上の材質が好ましい。また屈折率n3は、透明基板3の屈折率n1に対して[n3≧n1−0.1]であることが好ましい。また透明基板部材25は、非発光領域Bにおける透明基板3の板厚を部分的に厚膜化するためのものであり、膜厚tが大きいほど好ましい。ただし、透明基板部材25の厚膜化によって、面状発光体1-2が厚板化されるため、有機電界発光素子ELを用いた面状発光体の特徴である薄型化を妨げることのない範囲で透明基板部材25の膜厚tが設定されていることとする。
透明基板部材25を構成する材質は、上述した光透過率および屈折率n3を満足していれば特に限定されることはない。例えば、ガラス、PET(ポリエチレンテレフタレート)、またはPEN(ポリエチレンナフタレート)など、既知の材料の中から、透明基板3との組み合わせによって適宜選択された材料が用いられる。
尚、以上のような透明基板部材25は、透明基板3に対して、ここでの図示を省略した接着剤によって固定して設けられている。ここで用いる接着剤は、可視光に対する光透過性が高いほど好ましく、一例として90%以上であることとする。また接着剤の屈折率は、透明基板3の屈折率と同程度であって、その差が0.1の範囲が好ましい。
<面状発光体の製造方法>
先ず透明基板3上に有機電界発光素子ELを形成した後、有機電界発光素子ELにおける透明電極11および対向電極15の端子部分を露出させた状態で、少なくとも有機発光機能層13を覆う封止材5を設ける。これにより、発光パネル1を得る。
次に支持基板21上に接着剤23を介して複数の発光パネル1をタイリングして貼り合わせる。この場合、支持基板21と透明基板3との間に有機電界発光素子ELを挟持させる状態で発光パネル1を配置し、隣接する発光パネル1同士(すなわち透明基板3同士)を密着させて配列する。その後、透明基板3において有機電界発光素子ELが設けられた面と反対側の光取り出し面3aに、有機電界発光素子ELの発光領域Aに重ならないように、透明基板部材25および光取り出し部材9をこの順に貼り合わせる。尚、あらかじめ透明基板部材25と光取り出し部材9とを貼り合わせておき、これを透明基板3の光取り出し面3aに貼り合わせても良い。以上により、面状発光体1-2を得る。
尚、発光パネル1毎に独立して透明基板部材25や光取り出し部材9を設ける場合には、各発光パネル1における透明基板3の非発光領域Bに透明基板部材25や光取り出し部材9を設けた後、発光パネル1を支持基板21上にタイリングする。
<第2実施形態の効果>
以上説明した面状発光体1-2は、第1実施形態の面状発光体の効果に加えて、さらに透明基板部材25を設けたことによる効果を得ることができる。すなわち、非発光領域Bの光取り出し面3a側に透明基板部材25を設けたことにより、非発光領域Bの透明基板3が厚膜化された状態となっている。これにより、非発光領域Bにおいては、透明基板3の界面においての発光光hの反射回数が減るため、透明基板3内での内部反射の繰り返しによる発光光hの失活(減衰)を抑制することができる。この結果、第1実施形態と比較して、非発光領域Bからの発光光hの取り出し量をさらに増加させることが可能になる。
≪変形例−1≫
以上説明した各第1実施形態および第2実施形態の構成の面状発光体に対しては、発光パネル1間の非発光領域Bからの光取り出し効果をさらに向上させるための構成として、さらに低屈折率部材を導入しても良い(例えば、特開2001−202827号公報参照)。
この場合、光取り出し部材9と透明基板3との間に、透明基板3の屈折率(n1)よりも低い屈折率を有する低屈折率部材を設ける。ここで用いる低屈折率部材は、シート状、フィルム状、板状、または平坦な膜状である。また低屈折率部材の膜厚は、この低屈折率部材の媒質中における光の波長よりも大きくて良く、光の波長よりもさらに10%以上大きいことが好ましい。これは、低屈折率部材の膜厚が、媒質中における光の波長程度である場合には、低屈折率部材中に浸透したエバネッセン(電磁波)が、ここから染み出して透明基板3内に入り込むため、低屈折率部材を設けた効果が薄れるからである。
以上のような低屈折率部材を構成する材料としては、例えば、エアロゲル、多孔質シリカ、フッ化マグネシウム、フッ素系ポリマー等が挙げられる。透明基板3の屈折率は一般に1.5以上1.7以下程度であるので、低屈折率層は屈折率がおよそ1.5以下であることが好ましい。また低屈折率材料の屈折率が低いほど、外部への取り出し効率が高くなるため、低屈折率材料の屈折率は1.35以下であることが好ましい。
以上のような低屈折率部材の導入によっても、非発光領域Bからの発光光hの取り出し量を増加させることが可能である。
≪変形例−2≫
以上説明した各第1実施形態および第2実施形態の構成の面状発光体に対しては、発光パネル1間の非発光領域Bからの光取り出し効果をさらに向上させるための構成として、さらに回折格子を導入しても良い(特開平11−283751号公報参照)。
この場合、光取り出し部材9と透明基板3との間の何れかの層間、好ましくは透明基板3の界面に回折格子を設ける。ここで用いる回折格子は、正方形のラチス状、三角形のラチス状、ハニカムラチス状等、二次元的に配列が繰り返される構成であって、二次元的な周期屈折率を持っていることが望ましい。これは、有機電界発光素子ELで発生する発光光hは、あらゆる方向にランダムに放出されるため、ある方向にのみ周期的な屈折率分布を持っている一般的な1次元回折格子では、特定の方向に進む光しか回折されず、光の取り出し効率がさほど上がらない。しかしながら、屈折率分布を二次元的な分布にすることにより、あらゆる方向に進む光が回折されるため、光の取り出し効率が上がる。
また回折格子の周期は、媒質中における光の波長の約1/2以上3倍以下程度が好ましい。
以上のような回折格子の導入により、有機電界発光素子ELでの発光光hのうち、透明基板3の界面での全反射等により外に出ることができない光の進行方向を、回折格子においてのブラッグ回折によって屈折とは異なる特定の向きに変えて光取り出し部材9に入射させて外部に取り出すことが可能になる。この結果、非発光領域Bからの発光光hの取り出し量を増加させることが可能である。
≪適用例≫
以上説明した各実施形態および変形例の面状発光体は、表示デバイス、ディスプレイ、各種の発光光源として用いることができる。発光光源としては、例えば、家庭用照明、車内照明、時計や液晶用のバックライト、看板広告、信号機、光記憶媒体の光源、電子写真複写機の光源、光通信処理機の光源、光センサーの光源等が挙げられる。発光光源がこれらに限定されるものではないが、特にカラーフィルターと組み合わせた液晶表示装置のバックライト、照明用光源としての用途に有効に用いることができる。
尚、カラーフィルターと組み合わせて液晶表示装置のバックライトとして用いる場合には、輝度をさらに高めるため、集光シートと組み合わせて用いることが好ましい。
≪試料No.101〜112の発光パネルの作製≫
図4を参照し、試料No.101〜112の発光パネルの作製手順を説明する。
試料No.101〜112のそれぞれにおいて、各屈折率n1を有する透明基板3をそれぞれ用意した。各透明基板3の材料および物性は以降の表1にまとめて示した。尚、同じ材料を用いた透明基板3で物性が異なるものは、材料の組成または金属の含有量が異なる。各透明基板3は、厚さ0.7mm、面積50mm×50mmである。
各透明基板3の一主面上に、ITO(インジウムチンオキシド:透明導電性材料)を膜厚150nmでパターン成膜し、屈折率n2=2.12の透明電極11を形成した。この透明電極11は陽極31として機能する。ITOからなる透明電極11(陽極31)を設けた透明基板3を、イソプロピルアルコールで超音波洗浄し、乾燥窒素ガスで乾燥し、UVオゾン洗浄を5分間行った。
次に、透明電極11が形成された透明基板3を真空蒸着装置の基板ホルダーに固定すると共に、透明基板3における透明電極11の形成面側に蒸着マスクを対向配置した。また真空蒸着装置内の蒸着用るつぼの各々に、有機発光機能層13および対向電極15(陰極35)を構成する各材料を、それぞれの層の成膜に最適な量で充填した。尚、蒸着用るつぼはモリブデン製またはタングステン製抵抗加熱用材料で作製されたものを用いた。
次いで、真空蒸着装置の蒸着室内を真空度4×10-4Paまで減圧し、各材料が入った蒸着用るつぼに順次通電して加熱することにより、以下のように各層を成膜した。
先ず、下記構造式(1)に示すCuPc(銅フタロシアニン)を正孔注入材料とし、ITOからなる透明電極11(陽極31)上に、蒸着速度0.1nm/秒で蒸着し、膜厚15nmの正孔注入層131を設けた。
次いで、下記構造式(2)に示すα−NPDを正孔輸送材料とし、正孔注入層131上に蒸着速度0.1nm/秒で蒸着し、膜厚25nmの正孔輸送層132を設けた。
次いで、下記構造式(3)に示すFir(pic)を青色ゲスト材料、下記構造式(4)に示すDPVBiをホスト材料とし、正孔輸送層132上に合計の蒸着速度0.1nm/秒で共蒸着し、構造式(3)のFir(pic)を3質量%とした膜厚15nmの青色発光層133を設けた。
次いで、下記構造式(5)に示すCBPを中間層材料とし、青色発光層133上に蒸着速度0.1nm/秒で蒸着し、膜厚5nmの中間層134を設けた。
次いで、下記構造式(6)に示すIr(ppy)3を緑色ゲスト材料、上記構造式(5)に示したCBPをホスト材料とし、中間層134上に合計の蒸着速度0.1nm/秒で共蒸着し、構造式(6)のIr(ppy)3を5質量%とした膜厚10nmの緑色発光層135を設けた。
次いで、上記構造式(5)に示したCBPを中間層材料とし、緑色発光層135上に蒸着速度0.1nm/秒で蒸着し、膜厚5nmの中間層136を設けた。
次いで、下記構造式(7)に示すIr(piq)3を赤色ゲスト材料、上記構造式(5)に示したCBPをホスト材料とし、中間層136上に合計の蒸着速度0.1nm/秒で共蒸着し、構造式(7)に示すIr(piq)3を8質量%とした膜厚10nmの赤色発光層137を設けた。
次いで、下記構造式(8)に示すBAlqを正孔阻止材料とし、赤色発光層137上に蒸着速度0.1nm/秒で蒸着し、膜厚15nmの正孔阻止層138を設けた。
次いで、下記構造式(9)に示すAlq3を電子輸送材料とし、正孔阻止層138上に蒸着速度0.1nm/秒で蒸着し、膜厚30nmの電子輸送層139を設けた。
さらに、フッ化リチウム(LiF)を電子注入材料とし、電子輸送層139上に蒸着速度0.1nm/秒で蒸着し、膜厚1nmの電子注入層140を設けた。
最後にアルミニウム(Al)を電子注入層140上に蒸着し、膜厚110nmの対向電極15を形成した。この対向電極15は陰極35として機能する。以上により透明基板3上に有機電界発光素子ELを形成した。
その後、有機電界発光素子ELの形成面側を300μmのエポキシ樹脂で覆い、さらに12μmのアルミニウム箔で覆った後に硬化させ、2層構造の封止材5を形成した。尚、有機電界発光素子ELの形成から封止材5の形成までの工程は、有機電界発光素子ELを大気に接触させることなく窒素雰囲気下のグローブボックス(純度99.999%以上の高純度窒素ガスの雰囲気下)内で行なった。
また、有機電界発光素子ELの形成においては、各層の形成に蒸着マスクを使用し、50mm×50mmの透明基板3における中央の45mm×45mmを発光領域Aとし、発光領域Aの全周に幅2.5mmの非発光領域Bを設けた。また、陽極31と陰極35とは、正孔注入層131〜電子輸送層139までの有機電界発光機能層13および電子注入層140を介して絶縁された状態で、透明基板3の周縁に端子部分を引き出された形状で形成した。
以上のようにして、各屈折率n1の透明基板3上に有機電界発光素子ELを設け、これを封止材5で覆った構成を有する試料No.101〜112の各発光パネルを得た。これらの各発光パネルにおいては、青色発光層133、緑色発光層135、および赤色発光層137のそれぞれで発生した各色の発光光hが、ITOで構成された透明電極11側、すなわち透明基板3側から取り出される。したがって、透明基板3において有機電界発光素子ELが設けられたと逆側の面が光取り出し面3aとなる。
以上のようにして得られた試料No.101〜112各発光パネルのうち、試料No.101〜107の各発光パネルに対しては、透明基板3の光取り出し面3a側における非発光領域Bに、光取り出し部材9として光拡散シート(ライトアップ100NSH:KIMOTO社製商品名)を貼り合わせた。
<実施例1の各試料の評価−1>
実施例1で作製した上記試料No.101〜112の各発光パネルについて、光取り出し面3a側の正面輝度分布を、2次元色彩輝度計(CA−2000:コニカミノルタセンシング社製)を用いて測定した。測定値から、発光領域Aにおける面内の平均輝度(発光領域平均)に対する、非発光領域Bにおける面内の平均輝度(非発光領域平均)の値を、相対輝度(%)として算出した。この結果を上記表1に合わせて示した。
表1から分かるように、試料No.101〜104の各発光パネルは、透明基板3の屈折率n1と透明電極11の屈折率n2との屈折率差n2−n1≦0.47であり、かつ透明基板3に光取り出し部材9が設けられた構成であって、相対輝度が20%以上である。
これに対して、試料No.105〜107の各発光パネルは、透明基板3に光取り出し部材9を設けているものの、屈折率差n2−n1>0.47であり、相対輝度は20%未満である。また試料No.108〜112の各発光パネルは、透明基板3に光取り出し部材9を設けておらず、試料No.108では相対輝度が11.39、試料No.109〜112では相対輝度が1桁でしかない。
以上から、透明基板3の屈折率n1と透明電極11の屈折率n2との屈折率差n2−n1≦0.47であり、かつ透明基板3に光取り出し部材9を設けた構成とすることにより、発光パネルにおける非発光領域Bからの光取り出し効率が向上することが確認された。したがって、これらの発光パネルを配列して構成される本発明構成の面状発光体は、非発光領域Bからの光取り出し効率が向上し、透明基板同士の繋ぎ目付近に生じる非発光領域からの発光光の取り出し量を増加させることが可能になり、大面積の面状発光体における輝度の面内均一性の向上を図ることが可能であることが確認された。
<実施例1の各試料の評価−2>
また試料No.101〜112の発光パネルについての保存性を評価した。ここでは、高温高湿環境(温度60℃、湿度90%)下に試料No.101〜112の各発光パネルを保存し、輝度が1000cdになる駆動電圧で各発光パネルを駆動し、ダークスポットの発生が3%になる時間を測定し、保存時間とした。この結果を、試料No.104の保存時間を100とした相対時間として上記表1に合わせて示した。
表1から分かるように、透明基板3としてガラス材料を用いた試料の保存性は、ポリイミド(PI)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンテレフタレート(PET)を用いた試料の保存時間の2倍以上である。このことから、透明基板3としてガラス材料を用いることにより、有機電界発光素子ELを構成する有機材料の劣化が抑えられ、保存性が向上する効果が確認された。
≪試料No.201〜205の面状発光体の作製≫
下記表2に示すように、実施例1で作製した試料No.101,102,104,107,112の各発光パネルを用いて面状発光体を作製した。
ここでは図1を参照し、2枚の発光パネルを、有機電界発光素子ELの形成面を同一方向に向けて面状に配置し、厚み2mmのアクリルからなる支持基板21上に接着剤23を介してタイリングして貼り合わせた。これにより、2枚の発光パネルを配列した試料No.201〜205の面状発光体を得た。
<実施例2の各試料の評価−1>
試料No.201〜205の面状発光体について発光状態を目視で観察した。その結果を上記表2に合わせて示す。尚、目視検査においては、発光パネル間で輝度の暗い箇所が全く見られない場合に◎、発光パネル間で輝度の暗い箇所がほとんど見られない場合に○、発光パネル間で輝度の暗い箇所が少し見られる場合に△、発光パネル間で輝度の暗い箇所が目に付く場合に×とした。
表2から明らかなように、試料No.201〜203の各面状発光体を構成する発光パネルは、透明基板3の屈折率n1と透明電極11の屈折率n2との屈折率差n2−n1≦0.47であり、かつ透明基板3に光取り出し部材9が設けられた構成であって、発光パネル間で輝度の暗い箇所が目視で目に付くことはなかった。
これに対して、試料No.204の面状発光体を構成する発光パネルは、透明基板3に光取り出し部材9を設けているものの、屈折率差n2−n1>0.47であり、発光パネル間で輝度の暗い箇所がやや目に付いた。また試料No.205の各発光パネルは、屈折率差n2−n1>0.47であり、かつ透明基板3に光取り出し部材9を設けておらず、発光パネル間で輝度の暗い箇所が非常に目に付いた。
以上より本発明構成の面状発光体においては、発光輝度の面内均一性が向上したことが目視によって確認された。
尚、試料No.101 の発光パネルを5行5列に配列した面状発光体を作製し、各発光パネルの電極端子を電源に繋げて発光状態を観察したところ、輝度の暗い部分が全く気にならなかった。
<実施例2の各試料の評価−2>
また試料No.201〜205の面状発光体について、連続駆動時の寿命(発光寿命)を測定した。ここでは、各発光パネルに対して初期輝度が3000cd/m2となるように駆動電流を設定した。輝度の測定は、分光放射輝度計CS-2000(コニカミノルタセンシング社製)を用いた。設定した駆動電流で発光パネルを駆動し続け、初期輝度が半減する時間(輝度半減寿命)を、発光寿命として測定した。この結果を、試料No.203の発光寿命を100とした相対時間として上記表2に合わせて示した。
表2から分かるように、非発光領域Bの輝度向上効果が高く相対輝度が高い発光パネルを用いた本発明構成の面状発光体(試料No.201〜203)では、本発明構成ではない面状発光体と比較して、発光寿命が長いことが分かる。これにより、本発明構成の面状発光体は、相対輝度が高いことにより全体的な駆動電流値が低く抑えられ、この結果として有機材料の劣化が抑えられて輝度半減寿命が長くなることが確認された。これは、本発明の面状発光体は、省エネルギーにも貢献することを示している。