JP2013083688A - コンデンサレンズ及び顕微鏡装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】長い物体距離や大きな開口数という高い光学性能を達成するとともに、全長の短いコンデンサレンズ、及び、このコンデンサレンズを有する顕微鏡装置を提供する。
【解決手段】顕微鏡装置10に用いられ、標本からの観察光を集光するコンデンサレンズCLは、観察光が集光されて出射する側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群G1と、正の屈折力を有する第2レンズ群G2と、正の屈折力を有する第3レンズ群G3と、から構成され、所定の条件を満足することを特徴とする。
【選択図】図2

Description

本発明は、コンデンサレンズ及び顕微鏡装置に関する。
多光子励起により標本を観察する顕微鏡装置では、光源から出た照明光を対物レンズを介して標本に照射し、この照明光により励起した標本から発生する蛍光を対物レンズにより集光して検出するように構成されている。また、このようにして発生した蛍光を、標本を挟んで対物レンズに対向するように配置されたコンデンサレンズで集光し検出するように構成された顕微鏡装置も存在する。このような顕微鏡装置を用いて標本の深部(例えば表面から1mm以上の深さの部分)を観察する場合、上述の対物レンズやコンデンサレンズにも1mm以上の作動距離(対物レンズやコンデンサレンズの最も標本側のレンズ面から標本(物体)までの光軸上の距離(物体距離とも呼ぶ))が要求される。また、標本で発生した蛍光を効率良く集光するためには、開口数(NA)の大きい対物レンズやコンデンサレンズが必要である(例えば、特許文献1参照)。
特開2004−317749号公報
しかしながら、このような顕微鏡装置に用いられるコンデンサレンズは、標本の下部に配置されるため、その全長が長いと、観察者が対物レンズを介して標本を観察するときに、その観察するための位置が高くなり、作業しにくくなってしまう。そのため、このようなコンデンサレンズは、上述した物体距離や開口数といった光学性能を満足しながら、その全長を短くしなければならないという課題があった。
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、長い物体距離や大きな開口数という高い光学性能を達成するとともに、全長の短いコンデンサレンズを提供し、さらに、このコンデンサレンズを有する顕微鏡装置を提供することを目的とする。
前記課題を解決するために、本発明に係るコンデンサレンズは、標本からの観察光を集光するコンデンサレンズであって、観察光が集光されて出射する側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群と、正の屈折力を有する第2レンズ群と、正の屈折力を有する第3レンズ群と、から構成され、次式の条件を満足することを特徴とする。
NA > 0.9
0.03 < OD/TL < 0.17
但し、
NA:最も標本側のレンズ面の標本側の媒質が浸液である水のときの開口数
OD:最も標本側のレンズ面から標本までの光軸の距離
TL:全長
また、このようなコンデンサレンズは、次式の条件を満足することが好ましい。
TL/f < 3
但し、
TL:全長
f:全系の焦点距離
また、このようなコンデンサレンズは、次式の条件を満足することが好ましい。
3.0 < r6/n6 < 6.0
但し、
6:第3レンズ群の最も射出側のレンズ面の曲率半径
6:第3レンズ群の最も射出側のレンズの媒質のd線に対する屈折率
また、このようなコンデンサレンズは、次式の条件を満足することが好ましい。
φ > 1.7
但し、
φ:最も標本側のレンズ面の有効径[mm]であり、以下に定義するφ′よりも大きな値であるとする
φ′:標本がスライドガラスで覆われ、さらに最も標本側のレンズ面とスライドガラスとの間に浸液として水が満たされているときの最も標本側のレンズ面における軸上ビーム光束径[mm]であり、次式で表される
φ′=2×((d・tanθG+((OD−d)・tanθI))
但し、
OD:最も標本側のレンズ面から標本までの光軸上の距離
NA:最も標本側のレンズ面の標本側の媒質が浸液である水のときの開口数
d:スライドグラスの厚さ
G:スライドグラスの媒質のd線に対する屈折率
I:浸液のd線に対する屈折率
θG=sin-1(NA/nG
θI=sin-1(NA/nI
また、このようなコンデンサレンズは、次式の条件を満足することが好ましい。
f1/f > 6.4
但し、
f1:第1レンズ群の焦点距離
f:全系の焦点距離
また、このようなコンデンサレンズは、次式の条件を満足することが好ましい。
L/TL < 1
但し、
L:最も射出側のレンズ面から標本までの光軸上の距離
TL:全長
また、このようなコンデンサレンズは、最も標本側に石英で形成された平行平板を有することが好ましい。
また、本発明に係る顕微鏡装置は、標本を挟んで対物レンズと対向するように配置され、標本から出た光を集光する上述のコンデンサレンズのいずれかを有することを特徴とする。
本発明を以上のように構成すると、長い物体距離や大きな開口数という高い光学性能を達成するとともに、全長の短いコンデンサレンズを提供することができ、さらに、このコンデンサレンズを有する顕微鏡装置を提供することができる。
顕微鏡装置の構成を示す説明図である。 コンデンサレンズのレンズ断面図である。 コンデンサレンズの最も標本側の有効径を説明するための説明図である。 第1実施例に係るコンデンサレンズの諸収差図である。 第2実施例に係るコンデンサレンズの諸収差図であって、球面収差を考慮しないときを示す。 第2実施例に係るコンデンサレンズの諸収差図であって、球面収差を考慮したときを示す。 第3実施例に係るコンデンサレンズの諸収差図である。
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照して説明する。まず、図1を用いて顕微鏡装置の構成について説明する。この顕微鏡装置10は、第1の光源装置20から放射されたレーザ光を対物レンズ34を介してステージ11上に載置された標本に照射して走査する走査光学系30と、このレーザ光により励起した標本から発生する蛍光(観察光)を、対物レンズ34を介して第1の光検出部50に導く第1の集光光学系40と、標本を挟んで対物レンズ34と対向するように配置されたコンデンサレンズ61により標本から発生した蛍光を集光して第2の光検出部70に導く第2の集光光学系60と、を有している。また、この顕微鏡装置10は、水銀ランプ等を有し、対物レンズ34を介して標本を同軸落射照明するための落射照明光を放射する第2の光源装置80、ハロゲンランプ等を有し、コンデンサレンズ61を介して標本を透過照明するための透過照明光を放射する第3の光源装置90、コンデンサレンズ61を含み第3の光源装置90からの透過照明光を標本に導く透過照明光学系100、CCD等の撮像素子を有し、落射照明若しくは透過照明による標本の像を検出して画像に変換する撮像装置110、及び、標本を透過したレーザ光の強度を検出する透過光検出部120を有している。
この顕微鏡装置10において、第1の光源装置20は、標本の多光子励起を誘発させるための、所定の周期で非常に短いパルス状の赤外光(レーザ光)を射出するものである。このパルス状の赤外光は、例えば100フェムト秒のパルス光であって、以下、「IRパルス光」と呼ぶ。
走査光学系30は、第1の光源装置20側から順に、走査ユニット31、スキャンレンズ32、第2対物レンズ33、及び、対物レンズ34を有している。
また、第1の集光光学系40は、走査光学系30の第2対物レンズ33及び対物レンズ34の間の光軸上に配置され、第1の光源装置20からのIRパルス光を透過し、標本で発生した蛍光を反射する第1のダイクロイックミラー41、この第1のダイクイックミラー41で反射した蛍光を集光して第1の光検出部50に導く、第1の集光レンズ42及び第2の集光レンズ43から構成されている。なお、第1の光検出部50は蛍光を検出するために、例えば、PMT(Photo Multiplier Tube:光電子倍増管)が用いられる。
また、第2の集光光学系60は、標本側から順に、コンデンサレンズ61、このコンデンサレンズ61で集光された蛍光を反射し、標本を透過したIRパルス光を透過する第2のダイクロイックミラー62、この第2のダイクロイックミラー62で反射した蛍光を第2の光検出部70に導く、第3の集光レンズ63及び第4の集光レンズ64から構成されている。なお、第2の光検出部70も、蛍光を検出するために、例えば、PMTが用いられる。
また、この顕微鏡装置10において、第2の光源装置80から放射された落射照明光は、走査光学系30の第2対物レンズ33と対物レンズ34との間の光軸上に配置されたハーフミラー81で反射されて対物レンズ34に導かれ、この対物レンズ34を介して標本上に照射される。また、透過照明光学系100は、第3の光源装置90から放射された透過照明光を反射する第1のミラー101、及び、この第1のミラー101で反射した光を集光をする第5の集光レンズ102から構成され、第5の集光レンズ102で集光された透過照明光がコンデンサレンズ61を介して標本に照射される。また、走査光学系30の光軸上であって、第2対物レンズ33よりも第1の光源装置20側には、第2のミラー111が配置され、標本で反射した落射照明光又は標本を透過した透過照明光は、対物レンズ34で略平行光に変換されたのち、第2対物レンズ33で集光され、この第2のミラー111で反射されて撮像装置110に導かれる。さらに、第3の光源装置90と第1のミラー101との間には、標本を透過したIRパルス光を反射する第3のミラー121が配置されており、この第3のミラー121で反射されたIRパルス光は、透過光検出部120に入射する。
また、対物レンズ34の第1の光源装置20側には標本を微分干渉観察するための第1のDICプリズム35が配置され、コンデンサレンズ61の透過光検出部120側には標本を微分干渉観察するための第2のDICプリズム65が配置されている。
なお、上述した第1のダイクロイックミラー41、第2のダイクロイックミラー62、ハーフミラー81、第2のミラー111、第3のミラー121、第1のDICプリズム35及び第2のDICプリズム65は、標本の観察方法に応じて、適宜光軸上に対して挿抜される。
この顕微鏡装置10を、多光子励起による走査型顕微鏡として用いる場合には、第1のダイクロイックミラー41及び第2のダイクロイックミラー62を光軸上に配置して観察を行う。第1の光源装置20から出射した略平行光であるIRパルス光(レーザ光)は、走査ユニット31に入射する。この走査ユニット31は、光軸に直交する方向にIRパルス光を2次元的に走査するものであり、例えば、IRパルス光を反射することによりこのIRパルス光を光軸に直交する面内で所定の方向に偏向させる第1の偏向素子、及び、第1の偏向素子で反射されたIRパルス光をさらに反射することによりこのIRパルス光を光軸に直交する面内で第1の偏向素子の偏向方向と直交する方向に偏向させる第2の偏向素子とから構成される。そして、これらの偏向素子により偏向されて走査ユニット31を出射したIRパルス光は、スキャンレンズ32により像面I1に集光された後、第2対物レンズ33を通過することにより再び略平行光となり、第1のダイクロイックミラー41を透過して対物レンズ34により標本上のこの対物レンズ34の焦点面に集光される。なお、標本上に集光されたIRパルス光は点像となっており、その点像の径は対物レンズ34の開口数(NA)で決まる大きさである。なお、本実施形態に係る顕微鏡装置10は、標本の観察した位置に応じて対物レンズ34を光軸方向に移動させて、この対物レンズ34の焦点面を観察位置に移動させることができる。
上述したようにこのIRパルス光は、標本を励起するための励起光として用いられる。そのためこのIRパルス光が標本に照射されると、標本からは多光子励起による蛍光(観察光)が発生し、この蛍光のうち、対物レンズ34側に放射された蛍光は、この対物レンズ34で略平行光となり、第1のダイクロイックミラー41で反射される。そして、この蛍光は、第1の集光レンズ42で像面I2に集光された後、第2の集光レンズ43で略平行光にされて第1の光検出部50に入射する。
一方、標本で発生した蛍光のうち、コンデンサレンズ61側に放射された蛍光は、コンデンサレンズ61に入射する。本実施形態に係る顕微鏡装置10において、このコンデンサレンズ61の焦点面も、対物レンズ34の焦点面の移動に合わせて光軸方向に移動可能に構成されている。そのため、このコンデンサレンズ61に入射した蛍光は、略平行光に変換されて第2のダイクロイックミラー62で反射され、第3の集光レンズ63で像面I3に集光された後、第4の集光レンズ64で略平行光にされて第2の光検出部70に入射する。
多光子励起による蛍光は、対物レンズ34の焦点面上であって、IRパルス光が集光されて点像になっている部分でしか発生しないため、この蛍光をスキャンユニット31でデスキャンしたり、ピンホールを配置したりする必要はなく、第1及び第2の光検出部50,70で直接検出することができる。そのため、これらの第1及び第2の光検出部50,70は、NDD(Non Descanned Detector)とも呼ばれる。
また、このとき、第1及び第2のDICプリズム35,65を光軸上に配置し、さらに、第3のミラー121を光軸上に配置して、標本を透過したIRパルス光を透過光検出部120で検出することにより、標本の微分干渉観察を行うことも可能である。
また、標本を第3の光源装置90の透過照明光により、微分干渉観察するときは、第2のミラー111、並びに、第1及び第2のDICプリズム35,65を光軸上に配置して観察を行う。第3の光源装置90を出射した透過照明光は第1のミラー101で反射されて、第5の集光レンズ102で略平行光にされ、第2のDICプリズム65を透過してコンデンサレンズ61で集光されて標本に照射される。そして、この標本を透過した透過照明光は、対物レンズ34で再度集光されて略平行光になった後、第1のDICプリズム35及びハーフミラー81を透過して第2対物レンズ33で集光され、さらに、第2のミラー111で反射されて撮像装置110に入射して、標本の画像が取得される。
また、標本を第3の光源装置90の透過照明光により、微分干渉観察するときは、第2対物レンズ33で集光された光を接眼レンズ12に導くようにな不図示のミラー(第2のミラー111を約90度回転させて配置したもの)、並びに、第1及び第2のDICプリズム35,65を光軸上に配置して観察を行う。この第3の光源装置90を出射した透過照明光は第1のミラー101で反射されて、第5の集光レンズ102で略平行光にされ、第2のDICプリズム65を透過してコンデンサレンズ61で集光されて標本に照射される。そして、この標本を透過した透過照明光は、対物レンズ34で再度集光されて略平行光になった後、第1のDICプリズム35透過して第2対物レンズ33で集光され、さらに、第2対物レンズ33で集光された光を接眼レンズ12に導くような不図示のミラーで反射されることにより、接眼レンズ12で目視により標本を観察することができる。
なお、上述の説明と同様に、第1及び第2のDICプリズム35,65を介さずに、落射照明若しくは透過照明した標本を、第2のミラー111の偏向角度を変えて、第2対物レンズ33で集光された光を接眼レンズ12に導くことにより、目視により標本を観察することもできる。
次に、図2を用いて、上述の顕微鏡装置10に用いられるコンデンサレンズCL(61)について説明する。このコンデンサレンズCLは、標本から出た観察光がこのコンデンサレンズCLで集光されて出射する側(以下、「射出側」と呼ぶ)、すなわち、図1における第2の光検出部70側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群G1と、正の屈折力を有する第2レンズ群G2と、正の屈折力を有する第3レンズ群G3と、から構成される。なお、このコンデンサレンズCLの射出側には、開口絞りSが配置されている。
第1レンズ群G1は、射出側から順に、両凸レンズL1と射出側に凹面を向けた負メニスカスレンズL2とを接合した接合レンズで構成される。また、第2レンズ群G2は、射出側に凸面を向けた正メニスカスレンズL3で構成される。また、第3レンズ群G3は、射出側から順に、両凸レンズL4と射出側に凹面を向けた平凹レンズL5と平行平板形状の保護部材PLとを接合した接合レンズで構成される。
本実施形態に係るコンデンサレンズCLは、全長を短くするために、正の屈折力を有する3つのレンズ群で構成され、色収差の補正をするために、そのうちの2群(第1レンズ群G1及び第3レンズ群G3)を接合レンズで構成している。また、このコンデンサレンズCLは、上述したように、標本で発生した蛍光(2光子励起により発生した蛍光)を集光して第2の光検出部70に導くものであるため、標本側は高開口数であることが必要である。そのため、標本側の接合レンズである第3レンズ群G3において、標本側のレンズL5が負レンズとなるように配置されている(すなわち、射出側から順に、正レンズL4、負レンズL5の順で接合されるように配置されている)必要がある。
ところで、このようなコンデンサレンズCLでは、開口数を大きくするために、最も標本側のレンズ面と標本(例えばスライドグラスSG)との間を浸液ILで満たして使用される。この場合、マウスの脳細胞のように、生体細胞を標本とする場合には浸液ILとして水が使用される。上述した第3レンズ群G3の標本側の負レンズL5には、色収差補正のため、高屈折率で高分散の硝材を用いることが必要であるが、このような硝材は、水に触れると時間の経過と共に白色化する、いわゆる「水やけ」を起こし易い。そのため、本実施形態に係るコンデンサレンズCLでは、このコンデンサレンズCLの最も標本側、すなわち、第3レンズ群G3の最も標本側に、水やけを起こし難い石英で形成された平行平板形状の保護部材PLが接合されている。このような保護部材PLを設けることにより、浸液(水)とこのコンデンサレンズCLの最も標本側のレンズ面とが接触しても、水やけを起こすことがない。また、この保護部材PLを平行平板形状とすることで、このコンデンサレンズCL全体の収差に与える影響を最小限に抑えることができる。なお、この保護部材PLは、平行平板形状に限定されることはなく、正の屈折力や負の屈折力を有するレンズで構成することも可能である。また、この保護部材PLの材質は石英に限定されることはなく、水やけをしにくい材質ならば使用することが可能である。また、水やけをしにくい成分を最も標本側のレンズ面に塗布(コーティング)しても良い。
なお、上述したように、透過NDD(第2の光検出部70)で標本を観察する場合、対物レンズ34を介して標本に照射された励起光(多光子励起)により生じた蛍光を、このコンデンサレンズCLにより集光して透過NDDに導く。例えば、上述したマウスの脳細胞のスライス標本を表面から深部(1mm以上の深さ)まで観察する場合を想定すると、励起点から発する蛍光を効率良く取得するためには、対物レンズ34及びコンデンサレンズCL(61)を、光軸方向に沿って同時に上下させる必要があり、対物レンズ34と同様に、このコンデンサレンズCLも1mm以上の作動距離(物体距離)が必要になる。
それでは、本実施形態に係るコンデンサレンズCLを構成するための条件について説明する。まず、本実施形態に係るコンデンサレンズCLは、次の条件式(1)を満足することが望ましい。
NA > 0.9 (1)
但し、
NA:最も標本側のレンズ面の標本側の媒質が浸液である水のときの開口数
標本のより深部で明るい蛍光像を得るためには、励起点で発生した蛍光のうち、標本内で散乱された成分までこのコンデンサレンズCLで取り込むことが好ましいが、この場合、広い角度から散乱された蛍光を集光する必要があり、そのために高開口数が必要となる。励起点で発生した蛍光が、球面状に広がると仮定すると、コンデンサレンズCLで取り込むことが可能な蛍光は、この球面のうち、光軸に直交する面で切り取った半球面状に広がる蛍光である。このうち、25%以上の蛍光がコンデンサレンズCLに入射するためには、上記条件式(1)を満足することが望ましい。ここで、上述したように、浸液として水を使用しているため、最も標本側のレンズ面(図2における第9面)の標本側の媒質は水である。なお、より明るい蛍光強度を検出するためには、条件式(1)の下限値を1.15とすることが望ましい。
また、本実施形態に係るコンデンサレンズCLは、次の条件式(2)を満足することが望ましい。
0.03 < OD/TL < 0.17 (2)
但し、
OD:最も標本側のレンズ面から標本までの光軸の距離(物体距離)
TL:コンデンサレンズCLの全長
条件式(2)は本実施形態に係るコンデンサレンズCLの物体距離と全長との比を規定するものであり、この条件式(2)を満足することにより、標本の深部まで観察することができる物体距離の長いコンデンサレンズCLを提供することができる。この条件式(2)の下限値を下回るとコンデンサレンズCLの全長が長くなる傾向にあるので好ましくない。なお、条件式(2)の下限値を0.05とすることが望ましい。さらに、条件式(2)の下限値を0.06とすることが望ましい。
また、この条件式(2)の上限値を上回ると先玉(最も標本側のレンズ(第3レンズ群G3))の有効径が大きくなる傾向にあるため、結果的にレンズが厚くなり(レンズ縁厚を確保するため)コンデンサレンズCLの大型化に繋がるので好ましくない。なお、条件式(2)の上限値を0.12とすることが望ましい。さらに、条件式(2)の上限値を0.10とすることが望ましい。
また、本実施形態に係るコンデンサレンズCLは、次の条件式(3)を満足することが望ましい。
TL/f < 3 (3)
但し、
TL:コンデンサレンズCLの全長
f:コンデンサレンズCLの全系の焦点距離
条件式(3)は本実施形態に係るコンデンサレンズCLの全長と全系の焦点距離との比、すなわちテレ比を規定するものである。この条件式(3)を満足することにより、全長が短いコンデンサレンズCLを提供することができる。上述したように、このコンデンサレンズCLの全長が長くなると、観察者が対物レンズを介して標本を観察するときに、その観察するための位置が高くなり、作業しにくくなってしまうからである。この条件式(3)の上限値を上回ると全長が長くなるので好ましくない。
また、本実施形態に係るコンデンサレンズCLは、次の条件式(4)を満足することが望ましい。
3.0 < r6/n6 < 6.0 (4)
但し、
6:第3レンズ群G3の最も射出側のレンズ面の曲率半径
6:第3レンズ群G3の最も射出側のレンズの媒質のd線に対する屈折率
条件式(4)は、本実施形態に係るコンデンサレンズCLが高開口数であるための条件であって、このコンデンサレンズCLの最も標本側に配置された第3レンズ群G3のうち、最も射出側に位置するレンズ(図2における両凸レンズL4)の射出側のレンズ面(第6面)の曲率半径とこのレンズの媒質のd線に対する屈折率との比として規定されている。この条件式(4)の下限値を下回るとコンデンサレンズCLが小型化し過ぎてしまい、高開口数を確保するために構成するレンズの縁厚が薄くなる傾向にあり、製造が困難になるため好ましくない。また、この条件式(4)の上限値を上回るとコンデンサレンズCLが大型化してしまう傾向にあるため好ましくない。なお、条件式(4)の上限値を5.0とすることが望ましい。さらに、条件式(4)の上限値を4.8とすることが望ましい。
また、本実施形態に係るコンデンサレンズCLは、次の条件式(5)を満足することが望ましい。
φ > 1.7 (5)
但し、
φ:最も標本側のレンズ面の有効径[mm]
なお、図2に示すように、標本を覆うようにスライドグラスSGが配置されているときは、この有効径φは、スライドグラスSGの厚さd及び媒質のd線に対する屈折率nGにより決まる、上述の最も標本側のレンズ面における軸上ビーム光束系φ′よりも大きな値となる。ここで、図3に示すように、最大開口数の光線の標本からスライドグラスSGに射出するときの射出角をθGとし、この最大開口数の光線のスライドグラスSGから浸液ILに射出するときの射出角をθIとする。まず、浸液IL内では、NA=nI×sinθIの関係が成り立つため、次式(a)の関係を導き出すことができる。
θI=sin-1(NA/nI) (a)
また、スネルの法則より、nG×sinθG=nI×sinθIが成り立つことこから、上述の浸液ILでの関係を式(a)に当てはめることにより次式(b)を導き出すことができ、さらにこの式(b)から次式(c)の関係が導き出される。
sinθG=(nI/nG)sinθI
=(nI/nG)・(NA/nI
=NA/nG (b)
θG=sin-1(NA/nG) (c)
また、図3に示すように、スライドグラスSGと浸液ILとの境界における軸上ビーム光束の高さy1は、次式(d)で表され、この軸上ビーム光束がコンデンサレンズCLの最も標本側の面に入射するときの、スライドグラスSGと浸液ILとの境界に入射した位置からの高さy2は、次式(e)で表される。
y1=d・tanθG (d)
y2=(OD−d)・tanθI (e)
以上より、コンデンサレンズCLの最も標本側のレンズ面における軸上ビーム光束径φ′は、次式(f)のように表される。
φ′=2×(y1+y2)
=2×(d・tanθG+((OD−d)・tanθI)) (f)
条件式(5)は、コンデンサレンズCLの最も標本側の有効径を規定するものである。十分な物体距離を有し、かつ、高開口数のコンデンサレンズCLとするためには、最も標本側のレンズ面の有効径φが上記条件式(5)を満足することが必要である。この条件式(5)の下限値を下回ると、十分な物体距離又は開口数を得ることができない。なお、条件式(5)の下限値を3.6とすることが望ましい。さらに、条件式(5)の下限値を6とすることが望ましい。
また、本実施形態に係るコンデンサレンズCLは、次の条件式(6)を満足することが望ましい。
f1/f > 6.4 (6)
但し、
f1:第1レンズ群G1の焦点距離
f:コンデンサレンズCLの全系の焦点距離
条件式(6)は、本実施形態に係るコンデンサレンズCLで発生する球面収差を抑えるための条件である。このようなコンデンサレンズCLにおいて球面収差が生じると、高NA成分の光が第2の光検出部70の光検出素子から外れてしまい、取得画像が暗くなる場合がある。上述したように、NDDは少しでも明るい蛍光像を得るために、励起点から生じてコンデンサレンズCLに直接入射する蛍光だけでなく、標本内部での散乱光も受光素子まで届くようにすることが必要である。そのため、このコンデンサレンズCLにおける最大開口数の光線(d線)での球面収差量の絶対値は、0.04以下であることが望ましい。なお、ここで言う球面収差量は、ガウス像面からのズレ量、すなわち、このコンデンサレンズCLの射出側から平行光束を入射させ、標本面上に結像させたときの球面収差量である。
コンデンサレンズCLを構成する第1〜第3レンズ群G1〜G3の屈折力が強くなると、これらのレンズ群G1〜G3を構成するレンズ面の曲率が強くなり球面収差が発生し易くなる。そのため、球面収差は、各レンズ群G1〜G3の屈折力(又は焦点距離)の配置で決定され、例えば、全系の焦点距離と各レンズ群G1〜G3の焦点距離との比で規定されることになる。特に、第1レンズ群G1の屈折力を強く(特に第1面の曲率をきつく)すると、高次の球面収差が大きく発生してしまうため、条件式(6)に示す屈折力配分とすることが望ましい。
また、本実施形態に係るコンデンサレンズCLは、次の条件式(7)を満足することが望ましい。
L/TL < 1 (7)
但し、
L:最も射出側のレンズ面(第1面)から標本までの光軸上の距離
TL:コンデンサレンズCLの全長
上述したように、このコンデンサレンズCL(61)を有する顕微鏡装置10は、標本の微分干渉観察を行うこともできる。この微分干渉観察において、第1及び第2のDICプリズム35,65は、対物レンズ34及びコンデンサレンズCLの入射瞳の位置に配置される。そのため、このコンデンサレンズCLの入射瞳は、このコンデンサレンズCLを構成するレンズ群の外に位置するようになっている。すなわち、上述の条件式(7)の条件を満たすように構成されている。
また、有極分子を有する標本に照明光を照射すると、この分子の非線形応答によって、照明光の第2高調波が発生するが(Second Harmonic Generation)、本実施形態に係るコンデンサレンズCLは、この第2高調波の光による観察(SHG観察)にも対応することができる。多光子励起を行う場合、第1の光源装置20から放射されるIRパルス光は、およそ700nm以上の波長の光が使用される。そのため、このような照明光による第2高調波の光の波長は紫外光の領域になるが、色収差の補正のために必要な高屈折率で高分散の硝材は、紫外光透過率が低い傾向にある。そのため、このような硝材が使われるレンズ(例えば、上述の第3レンズ群G3の平凹レンズ(負レンズ)L5)は、第2高調波の光の減衰を少なくするために可能な限り薄くする必要がある。
なお、第2高調波の光として、例えば380nmの光の透過率を考慮すると、このコンデンサレンズCLに対して使用可能な硝材は低屈折率なものとなる。よって高開口数を実現するためには、このコンデンサレンズCLを構成するレンズの曲率半径は小さくなる傾向にある。しかしながら、曲率半径が小さくなると、レンズの縁厚が不足する傾向にあり製造が困難になることに注意が必要である。また、レンズの中心厚が厚くなりコンデンサレンズCLの全長が長くなりがちになることに注意が必要である。
また、SHG観察に対応するために、本実施形態に係るコンデンサレンズCLは、380nm程度の紫外光の透過率を確保することが必要であるが、接合レンズ(第1及び第3レンズ群G1,G3)を構成するレンズL1,L2及びL4,L5,PLを接着する接着剤によっては紫外光で変性する場合がある。そのため、これらの接合レンズに用いられる接着剤は紫外線で変性しないものであることが必要である。
また、このコンデンサレンズCLは、標本を透過したIRパルス光による微分干渉観察にも対応しているため、このコンデンサレンズCLを構成するレンズの空気との境界面(浸液と接する最も標本側の面(第9面)を除く、空気との境界面であって、図2の場合、第1面、第3面、第4面、第5面及び第6面)に、赤外光対応の反射防止コートを成膜することが望ましい。
また、本実施形態に係るコンデンサレンズCLは、図1に示すように、第3の光源装置90から放射された透過照明光を集光して標本に照射する透過照明光学系としての機能を有している。このような照明光学系で正弦条件(サインコンディション)が崩れていると、主に照明ムラが生じてしまう。また、開口絞りSにより適切に開口数を制限できなくなり、対物レンズ34の開口数に対して適切な照明光NAを設定できず、例えば、透過照明による明視野観察を行う際、コントラストの悪い像となってしまう。図2に示す構成のコンデンサレンズCLにおいては、第1レンズ群G1から第2レンズ群G2へのパワー移動、つまり、第1レンズ群G1の正のパワーを第2レンズ群G2に移動し、さらに、第3レンズ群G3の第7面の曲率半径を小さくすることで正弦条件を補正することが可能である。なお、このようなコンデンサレンズCLにおいて良好な照明を行うためには、正弦条件違反量の絶対値が0.3μmより小さいことが望ましい。さらに良好な照明を行うためには、正弦条件違反量の絶対値が0.15μmより小さいことが望ましい。
[第1実施例]
それでは、上述したコンデンサレンズCLの実施例について説明する。なお、以降の実施例において、コンデンサレンズCLの構成は、図2に示した通りである。まず、以下の表1に、第1実施例に係るコンデンサレンズCLの諸元の値を示す。この表1において、全体諸元に示すNAは開口数を、ODは物体距離を、TLは全長を、d0は開口絞りSから第1面(最も射出側のレンズ面)までの光軸上の距離を、Lは第1面から標本までの光軸上の距離(L=TL−d0)を、fは全系の焦点距離を、f1は第1レンズ群G1の焦点距離を、f2は第2レンズ群G2の焦点距離を、f3は第3レンズ群G3の焦点距離を、nは浸液の媒質のd線に対する屈折率を、nGはスライドグラスSGの媒質のd線に対する屈折率を、dはスライドグラスSGの厚さを、それぞれ表している。なお、全長TLは、開口絞りSから標本面までの光軸上の距離である。また、レンズデータに示す第1欄mは、光線の進行する方向に沿った射出側からの光学面の順序(面番号)を、第2欄rは、各光学面の曲率半径を、第3欄dは、各光学面から次の光学面までの光軸上の間隔(面間隔)を、第4欄nd及び第5欄νdは、d線(λ=587.6nm)に対する屈折率及びアッベ数を示している。なお、表1に示す面番号1〜11は、図2に示す番号1〜11に対応している。ここで、以下のすべての諸元値において掲載されている焦点距離f、曲率半径r、面番号d、その他長さの単位は一般に「mm」が使われるが、光学系は、比例拡大又は比例縮小しても同等の光学性能が得られるので、これに限られるものではない。なお、曲率半径0.000はレンズ面の場合は平面を表している。また、空気の屈折率1.00000は省略してある。また、これらの符号の説明及び諸元表の説明は、以降の実施例においても同様である。
(表1)
[全体諸元]
NA=1.2
OD=1.67
TL=30.3
d0=0.5
L=29.8
f=10.5
f1=142.6
f2=28.1
f3=13.9
n=1.33
G=1.52
d=0.17

(レンズデータ)
m r d nd νd
1 60.000 8.40 1.603 65.4
2 -16.500 1.30 1.755 27.6
3 -125.375 0.30
4 16.100 7.50 1.729 54.6
5 60.364 0.30
6 7.808 7.90 1.603 65.4
7 -35.200 1.90 1.903 35.7
8 0.000 0.50 1.459 67.8
9 0.000 1.50 1.333 55.9
10 0.000 0.17 1.524 54.3
11 0.000
また、次の表2に、第1実施例のコンデンサレンズCLにおける、最大NAで規格化した各NAの光線における球面収差量[mm]を示す。
(表2)
規格化NA 球面収差量
1.0 -0.00326
0.7 0.00136
0.5 0.00009
0.0 0.00000
また、次の表3に、第1実施例のコンデンサレンズCLにおける、最大NAで規格化した各NAの光線における正弦条件違反量[μm]を示す。
(表3)
規格化NA 正弦条件違反量
1.0 0.00883
0.7 0.02671
0.5 0.02312
0.0 0.00000
以下の表4に、この第1実施例に係るコンデンサレンズCLの、上述した条件式(1)〜(7)の値(条件対応値)を示す。なお、各符号の説明は、上述した通りである。
(表4)
[条件対応値]
(1)NA=1.2
(2)OD/TL=0.055
(3)TL/f=2.89
(4)r6/n6=4.87
(5)φ =6.8, φ′=6.7
(6)f1/f=13.58
(7)L/TL=0.98
以上のように、この第1実施例に係るコンデンサレンズCLは、上述の条件式(1)〜(7)をすべて満足している。
図4に、本第1実施例に係るコンデンサレンズCLの球面収差、像面湾曲、歪曲収差及びコマ収差の諸収差図を示す。各収差図において、NAは開口数を、Yは像高を、dはd線(λ=587.6nm)を、gはg線(λ=435.8nm)を、FはF線(λ=486.1nm)を、CはC線(λ=656.3nm)を、tはt線(λ=1014.0nm)を、それぞれ示している。また、各収差図における縦軸は、球面収差図では開口数の値を示し、像面湾曲図及び歪曲収差図では像高をそれぞれ示し、横軸は収差量を示している。また、コマ収差図は像高Y=0.5mm及び0mmのときの値を示しており、横軸は視野像高を示し、縦軸は主光線からのずれ量を示している。また、球面収差図において、実線は球面収差を示し、破線は正弦条件(サインコンディション)を示している。また、像面湾曲図において、実線はメリジオナル像面での値を示し、破線はサジタル像面での値を示している。また、この図4に示す諸収差は、第1レンズ群G1側、すなわち、射出側から光線追跡を行ったときの値である。なお、これらの収差図の説明は以降の実施例においても同様である。この図4に示す各収差図から明らかなように、第1実施例では諸収差が良好に補正され、優れた光学性能を有していることがわかる。
(第2実施例)
第2実施例として、まず、表5に、球面収差を考慮せず、正弦条件を満たし、かつ、軸上色収差を補正したコンデンサレンズCLの諸元の値を示す。
(表5)
−球面収差未補正時−
[全体諸元]
NA=1.2
OD=2.00
TL=29.0
d0=2.4
f=10.5
f1=66.88
f2=38.1
f3=13.36
n=1.33
G=1.52
d=0.17

[レンズデータ]
m r d nd νd
1 31.000 8.20 1.603 60.7
2 -23.000 1.50 1.847 23.8
3 -150.176 0.30
4 15.300 4.30 1.755 52.3
5 28.751 0.30
6 7.741 7.50 1.603 65.4
7 -42.000 2.00 1.805 25.4
8 0.000 0.50 1.459 67.8
9 0.000 1.83 1.333 55.9
10 0.000 0.17 1.524 54.3
11 0.000
次に、表6に、上記表5に示すコンデンサレンズCLに対して、球面収差を補正したときの諸元の値を示す。
(表6)
−球面収差補正時−
[全体諸元]
NA=1.2
OD=2.00
TL=30.3
d0=3.2
f=10.5
f1=70.5
f2=39.1
f3=13.4
n=1.33
G=1.52
d=0.17

[レンズデータ]
m r d nd νd
1 36.743 8.40 1.603 65.4
2 -20.690 1.30 1.755 27.6
3 -152.008 0.30
4 15.602 4.50 1.729 54.6
5 30.245 0.30
6 7.680 7.90 1.603 65.4
7 -44.738 1.90 1.903 35.7
8 0.000 0.50 1.459 67.8
9 0.000 1.83 1.333 55.9
10 0.000 0.17 1.524 54.3
11 0.000
また、次の表7に、上述の球面収差未補正時及び補正時のコンデンサレンズCLにおける、全系の焦点距離に対する各レンズ群G1〜G3の焦点距離の比を示す。
(表7)
未補正 補正
f1/f 6.37 6.71
f2/f 3.63 3.72
f3/f 1.27 1.28
また、次の表8に、上述の球面収差未補正時及び補正時のコンデンサレンズCLにおける、最大NAで規格化した各NAの光線における球面収差量[mm]を示す。
(表8)
球面収差量
規格化NA 未補正 補正
1.0 -0.04733 -0.00378
0.7 0.00828 0.00317
0.5 0.00648 0.00221
0.0 0.00000 0.00000
上述した表8に示すように、光線のNAが大きくなるに従って球面収差量の絶対値が大きくなる。このとき、表5に示すように、第1〜第3レンズ群G1〜G3の屈折力配置を変化させることにより、球面収差の発生が抑えられていることがわかる。
また、次の表9に、上述の球面収差未補正時及び補正時のコンデンサレンズCLにおける、最大NAで規格化した各NAの光線における正弦条件違反量[μm]を示す。
(表9)
正弦条件違反量
規格化NA 未補正 補正
1.0 -0.00208 0.02487
0.7 0.00109 0.00494
0.5 0.00676 0.00682
0.0 0.00000 0.00000
次の表10に、この第2実施例に係るコンデンサレンズCLのうち、球面収差を補正したときの、各条件対応値の値を示す。
(表10)
[条件対応値]
(1)NA=1.2
(2)OD/TL=0.066
(3)TL/f=2.89
(4)r6/n6=4.79
(5)φ =8.2, φ′=8.1
(6)f1/f=6.71
(7)L/TL=0.89
以上のように、球面収差補正後の第2実施例に係るコンデンサレンズCLは、上述の条件式(1)〜(7)をすべて満足している。
また、図5に、本第2実施例における球面収差補正前のコンデンサレンズCLの諸収差図を示し、図6に球面収差補正後のコンデンサレンズCLの諸収差図を示す。これらの図5及び図6から、球面収差補正後のコンデンサレンズCLは、諸収差が良好に補正され、優れた光学性能を有していることがわかる。
[第3実施例]
次に第3実施例として、保護部材PLを有しないコンデンサレンズCLの諸元の値を表11に示す。すなわち、この第3実施例においては、図2に示す第8面の標本側にスライドガラスSGを介して標本が配置されており、この第8面とスライドガラスSGのコンデンサレンズCL側の面(第9面)との間に浸液ILが満たされている。また、第10面が標本である。
(表11)
[全体諸元]
NA=1.0
OD=4.00
TL=30.3
d0=3.0
f=10.5
f1=74.86
f2=34.73
f3=15.01
n=1.33
G=1.52
d=0.17

[レンズデータ]
m r d nd νd
1 54.000 8.68 1.623 57.0
2 -15.498 1.50 1.805 25.4
3 -58.695 0.30
4 13.500 3.79 1.729 54.7
5 25.497 0.30
6 8.839 7.06 1.623 57.0
7 -31.000 1.50 1.795 28.7
8 0.000 3.83 1.333 55.9
9 0.000 0.17 1.522 54.3
10 0.000
また、次の表12に、第3実施例のコンデンサレンズCLにおける、最大NAで規格化した各NAの光線における球面収差量[mm]を示す。
(表12)
規格化NA 球面収差量
1.0 -0.02613
0.7 -0.01718
0.5 -0.00916
0.0 0.00000
また、次の表13に、第3実施例のコンデンサレンズCLにおける、最大NAで規格化した各NAの光線における正弦条件違反量[μm]を示す。
(表13)
規格化NA 正弦条件違反量
1.0 -0.09484
0.7 0.01663
0.5 0.01830
0.0 0.00000
以下の表14に、この第3実施例に係るコンデンサレンズCLの、上述した条件式(1)〜(7)の値(条件対応値)を示す。
(表14)
[条件対応値]
(1)NA=1.0
(2)OD/TL=0.132
(3)TL/f=2.89
(4)r6/n6=5.45
(5)φ =11.2, φ′=9.0
(6)f1/f=7.13
(7)L/TL=0.90
以上のように、この第3実施例に係るコンデンサレンズCLは、上述の条件式(1)〜(7)をすべて満足している。
また、図7に、本第3実施例におけるコンデンサレンズCLの諸収差図を示す。この図7から、第3実施例のコンデンサレンズCLは、諸収差が良好に補正され、優れた光学性能を有していることがわかる。
10 顕微鏡装置 34 対物レンズ 61(CL) コンデンサレンズ
G1 第1レンズ群 G2 第2レンズ群 G3 第3レンズ群
PL 保護部材(平行平板)

Claims (8)

  1. 標本からの観察光を集光するコンデンサレンズであって、
    前記観察光が集光されて出射する射出側から順に、
    正の屈折力を有する第1レンズ群と、
    正の屈折力を有する第2レンズ群と、
    正の屈折力を有する第3レンズ群と、から構成され、
    次式の条件を満足することを特徴とするコンデンサレンズ。
    NA > 0.9
    0.03 < OD/TL < 0.17
    但し、
    NA:最も標本側のレンズ面の前記標本側の媒質が浸液である水のときの開口数
    OD:最も標本側のレンズ面から前記標本までの光軸の距離
    TL:全長
  2. 次式の条件を満足することを特徴とする請求項1に記載のコンデンサレンズ。
    TL/f < 3
    但し、
    TL:全長
    f:全系の焦点距離
  3. 次式の条件を満足することを特徴とする請求項1または2に記載のコンデンサレンズ。
    3.0 < r6/n6 < 6.0
    但し、
    6:前記第3レンズ群の最も射出側のレンズ面の曲率半径
    6:前記第3レンズ群の最も射出側のレンズの媒質のd線に対する屈折率
  4. 次式の条件を満足することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のコンデンサレンズ。
    φ > 1.7
    但し、
    φ:最も標本側のレンズ面の有効径[mm]であり、以下に定義するφ′よりも大きな値であるとする
    φ′:標本がスライドガラスで覆われ、さらに最も標本側のレンズ面と前記スライドガラスとの間に浸液として水が満たされているときの前記最も標本側のレンズ面における軸上ビーム光束径[mm]であり、次式で表される
    φ′=2×((d・tanθG+((OD−d)・tanθI))
    但し、
    OD:前記最も標本側のレンズ面から前記標本までの光軸上の距離
    NA:前記最も標本側のレンズ面の前記標本側の媒質が浸液である水のときの開口数
    d:前記スライドグラスの厚さ
    G:前記スライドグラスの媒質のd線に対する屈折率
    I:前記浸液のd線に対する屈折率
    θG=sin-1(NA/nG
    θI=sin-1(NA/nI
  5. 次式の条件を満足することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のコンデンサレンズ。
    f1/f > 6.4
    但し、
    f1:前記第1レンズ群の焦点距離
    f:全系の焦点距離
  6. 次式の条件を満足することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のコンデンサレンズ。
    L/TL < 1
    但し、
    L:最も射出側のレンズ面から前記標本までの光軸上の距離
    TL:全長
  7. 最も標本側に石英で形成された平行平板を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のコンデンサレンズ。
  8. 標本を挟んで対物レンズと対向するように配置され、前記標本から出た光を集光する請求項1〜7のいずれか一項に記載のコンデンサレンズを有することを特徴とする顕微鏡装置。
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