JP2013083630A - 中性子捕獲層用のホウ素−10化合物 - Google Patents
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Abstract
【課題】中性子検出用のホウ素コーティングを提供する。
【解決手段】中性子検出器10は、内部容積の境界を画定するシェル20を含む。中性子検出器10の一部は、カソードとして働く。検出器は、内部容積の中に位置付けられかつアノードとして働く中心構造を含む。検出器は、壁30の内側にあるホウ素コーティング60であって、中性子に対して感受性のあるホウ素コーティング60が形成されるように、ホウ素コーティング60の少なくとも一部がホウ素含有粉末から壁30に熱拡散されるホウ素コーティング60を含む。検出器は、中心構造によって収集された信号を送信するために、中心構造に動作可能に接続された電気コネクターを含む。ホウ素を熱拡散する関連した方法は、ある量のホウ素含有粉末が熱拡散するようにホウ素含有粉末を高温に曝すステップを含む。
【選択図】図1
【解決手段】中性子検出器10は、内部容積の境界を画定するシェル20を含む。中性子検出器10の一部は、カソードとして働く。検出器は、内部容積の中に位置付けられかつアノードとして働く中心構造を含む。検出器は、壁30の内側にあるホウ素コーティング60であって、中性子に対して感受性のあるホウ素コーティング60が形成されるように、ホウ素コーティング60の少なくとも一部がホウ素含有粉末から壁30に熱拡散されるホウ素コーティング60を含む。検出器は、中心構造によって収集された信号を送信するために、中心構造に動作可能に接続された電気コネクターを含む。ホウ素を熱拡散する関連した方法は、ある量のホウ素含有粉末が熱拡散するようにホウ素含有粉末を高温に曝すステップを含む。
【選択図】図1
Description
本発明は、中性子検出用のホウ素コーティングに関し、詳細には、中性子検出用のホウ素コーティングの熱拡散付着に関する。
中性子検出器は、通過する中性子と相互に作用するホウ素コーティングを含むことができ、荷電粒子を密閉容積内に放出して電気信号を生成することができる。中性子検出器の最適な性能は:ホウ素コーティングの厚さの均一性と、その他の元素および化合物の存在と、全体的なホウ素コーティングの含量における特定のホウ素同位体の比率とを含めたいくつかの要因に左右される可能性がある。中性子検出器の表面にホウ素を堆積する以前から知られている方法は、コーティングの厚さにむらを引き起こす可能性がある。これらの同じ方法は、検出器表面のミクロフィーチャーの周りの毛管作用によって、または見通し線上へのホウ素の付着が制限されることによって引き起こされた、望ましくない隙間を備えたホウ素コーティングを生成する可能性がある。その他の公知の方法は、ホウ素を中性子検出器に接着させるための結合剤の使用を含み、中性子の検出を妨げる可能性がある不純物が導入される。さらに、中性子検出器の表面上にホウ素を堆積するいくつかの以前から知られている方法は、比較的費用がかかる可能性がある。したがって、微量のその他の元素および化合物が最小限に抑えられた状態で、中性子検出器の長さ全体にわたって比較的薄く均一なホウ素コーティングが生成される、最適化されたホウ素付着プロセスが求められている。
下記の概要は、本明細書で論じられるシステムおよび/または方法のいくつかの態様の基本的な理解をもたらすために、単純化された概要を提示する。この概要は、本明細書で論じられるシステムおよび/または方法の広範な概観ではない。この概要は、主要な/重大な要素を特定しようとするものではなく、またはそのようなシステムおよび/または方法の範囲を画定しようとするものではない。その唯一の目的は、後で提示されるさらに詳細な記述の前置きとして、単純化された形でいくつかの概念を提示することである。
本発明の一態様は、内部容積の境界を画定するシェルを含む、中性子検出器を提供することである。中性子検出器の一部は、カソードとして働く。検出器は、内部容積内に位置付けられてアノードとして働く中心構造を含む。検出器は、壁の内側にホウ素コーティングを含み、ホウ素コーティングの少なくとも一部は、ホウ素含有粉末から壁に熱拡散されて、中性子に対して感受性のあるホウ素コーティングを形成する。検出器は、中心構造により収集された信号を送信するために、中心構造に動作可能に接続された電気コネクターを含む。
本発明の別の態様は、中性子検出器用の中性子捕獲層を生成するために、基板表面にホウ素含有粉末を拡散させる方法を提供する。この方法は、導電性基板を提供し、この導電性基板に接触させてホウ素含有粉末を配置するステップを含む。この方法は、ある量のホウ素含有粉末が導電性基板に熱拡散して、中性子に対して感受性のあるホウ素コーティングが形成されるように、ホウ素含有粉末および導電性基板を高温に曝すステップを含む。この方法は、導電性基板およびホウ素コーティングを、外部シェルの少なくとも一部として中性子検出器に組み込むステップを含む。
本発明の前述およびその他の態様は、添付図面を参照しながら以下の記述を読むことにより、本発明が関係する当業者に明らかにされよう。
本発明の1つまたは複数の態様を組み込む例示的な実施形態について記述し、図に示す。これらの示された実施例は、本発明を限定しようとするものではない。例えば、本発明の1つまたは複数の態様は、その他の実施形態およびさらにその他のタイプのデバイスで利用することができる。さらに、ある用語は、便宜上のためだけに本明細書で使用され、本発明を限定すると解釈するものではない。さらになお、図面では、同じ符号は同じ要素を示すのに用いられる。
例示的な中性子検出器10の概略図は、図1に概ね示される。図1は、可能性ある構造/構成などの一実施例を示し、その他の実施例が本発明の範囲内で企図されることが理解されよう。ある特定の実施例において、中性子検出器10は、例えば、中性子によって誘発された核反応で放出された荷電粒子を観察することによって、通過する中性子を検出するために使用される。中性子検出器10は、使用済み核燃料の放射線モニタリングなどの様々な適用例で、または自国防衛の適用例で、使用することができる。
中性子検出器10は、外部シェル20を含むことができる。外部シェル20は、円筒形外部シェル20を形成する円形断面を有していてもよいが、その他の断面形状も考えられる。外部シェル20は、気体を含有することができる内部容積50の境界を画定する壁30と2つの端部40とを含むことができる。開示された実施例は、外部シェル20がカソード部分として作用することを示すが、その他の部分を存在させかつカソードとして作用させることができることを理解すべきである。例えば中性子検出器は、内部容積50内に1つまたは複数のインサート(例えば、フィン、プロジェクションなど)を含んで、外部シェル20に電気接続されていてもよい。絶縁体52を外部シェル20の2つの端部40に位置付けて、中心構造54を所定位置に保持し、かつ電荷が直接接触を通して中心構造54と外部シェル20との間を通過しないようにすることができる。中心構造54は、外部シェル20の中心軸付近に一般に位置付けることができる。中心構造54は、ワイヤーに類似した大きさのものにすることができ、電気回路のアノードとして働くことができる。ホウ素コーティング60は、壁30の内面を覆う。中性子検出器10は、中心構造54により収集された信号を送信するために、絶縁体52の1つに取り付けられた電気コネクター62も含む。
図2を参照すると、ホウ素コーティング60は、熱拡散プロセスによって、外部シェル20の壁30の内面に付着させることができる。当然ながら、その他の部分が存在する場合(例えば、1つまたは複数のインサート)、そのような(1つまたは複数の)その他の部分は、そこに付着されたホウ素コーティングを有することができる。熱拡散プロセスは、ホウ素コーティング60を、内部容積50に面する壁30の面に配置するのに使用することができる。図2に示されるホウ素コーティング60を構成する粒子は、単なる例示を目的とし、実際の粒度またはスケールサイズを表すものではなく、したがって相対的な寸法決めに使用すべきではないことが理解されよう。さらに、粒子形状は、ホウ素含有粉末粒子を単に表しているだけである。ホウ素含有粉末の粒子は、規則的および不規則な形状およびプロファイルを含むことができる。
熱拡散は、材料の構成分子のランダムな運動による、高濃度領域から低濃度領域への材料の移送である。ホウ素は、基板の周りに高温を与えることによって基板材料内に拡散することができ、それと共にホウ素は、基板と緊密に接触する。熱拡散は、基板のアニーリング温度付近で開始することができる。基板の例には、ニッケル、アルミニウム、ステンレス鋼、およびチタンが含まれるが、これらに限定するものではない。
ホウ素含有粉末のいくつかの熱拡散付着は、融剤の使用を含むことができる。融剤は、基板表面に存在し得る酸化金属層を除去するのに使用することができる。融剤は、基板表面へのホウ素分子の浸透を容易にするために、熱拡散プロセスの前に、任意の酸化金属を除去するのに使用することができる。例えば、ホウ素含有粉末のスラリーは、熱拡散プロセス中にホウ素分子が基板表面に浸透するのを阻害する可能性のあるアルミニウムの酸化物をアルミニウム基板の表面から除去するために、塩酸(HCl)を含んでいてもよい。
基板は、粉末および基板を高温に曝す前に、ホウ素含有粉末で冶金学的に処理することができる。ホウ素含有粉末は、いくつかの方法によって基板表面に付着させることができる。例えば、基板表面に乾燥粉末を充填して、乾燥粉末が基板表面に緊密に接触するようにすることができる。別の実施例では、ホウ素含有粉末を、ブラシで塗布されるスラリーまたはペーストに含めることができる。ペーストは、ホウ素含有粉末と、10%HClおよび90%脱イオン水(H2O)の溶液とを含むことができる。別の実施例では、ホウ素含有粉末は、イソプロピルアルコールと共にスラリーに含めることができる。さらに別の実施例では、ホウ素含有粉末は、静電スプレー操作により基板表面に付着させることができる。前述の事項は、ホウ素含有粉末付着の単なる例であり、その他の付着方法が考えられる。
熱拡散プロセスは、金属基板内にホウ素原子を拡散させ、基板のベース金属の表面に金属間化合物を形成する。中性子検出のため、ホウ素を基板表面に拡散させることが望ましいが、ホウ素と基板材料との間に必ずしも合金を生成する必要はない。均一な拡散深さは、拡散プロセスの時間の長さおよび拡散プロセスの温度などのプロセス変数によって制御される。例えば、基板内へのホウ素拡散の量は、熱拡散プロセスの時間の長さに直接関係する。熱拡散プロセスの時間が長くなるにつれ、より多くのホウ素が基板内に拡散する。同様に、基板内へのホウ素の拡散速度は、熱拡散プロセスの温度に直接関係する。したがって、より高い温度では、基板内へのより速い拡散速度が典型的には誘発される。しかし、熱拡散プロセスの温度が高くなるにつれ、拡散は、ますます増大する拡散領域で引き起こされる可能性もあり、基板の一部の表面領域ではホウ素コーティング60内に空隙を有するようになる。したがって、できる限り広い基板表面積を覆う高濃度のホウ素コーティング60を促進させるため、より低い熱拡散温度およびより長い熱拡散プロセス時間を含むようにプロセス変数を選択することが望ましい場合もある。一実施例では、ホウ素コーティング60の全てが外部シェル20の壁30内に拡散する。しかし典型的には、ホウ素コーティング60は、基板表面内に拡散されたホウ素分子と、基板表面に残るホウ素層とを含む。熱拡散プロセスの後、超音波の適用または過剰なホウ素含有粉末を除去するその他の公知の方法によって、過剰なホウ素含有粉末全てを基板表面から除去することができるが、これは必ずしも必要なステップではない。
中性子検出器10の効率に影響を及ぼす1つの変数は、ホウ素コーティング60で覆われた基板表面積のパーセンテージである。例えば、中性子検出器10に進入する中性子は、ホウ素コーティング60によって吸収され、次いで粒子の相互作用のカスケードを引き起こすことができるその他の荷電粒子を放出し、次いで中性子検出器10の中心構造54のアノード部分と相互に作用する。典型的な中性子検出器10は、これらの放出された荷電粒子と、その他得られた粒子の相互作用のカスケードとに依拠して、検出された中性子または中性子の群を表す信号を発する。中性子検出器10を通過する中性子が、ホウ素コーティング60のない領域を通過する場合、典型的な分子の相互作用は引き起こされず、検出された中性子または中性子の群を表す信号は中心構造54のアノードで生成されない。したがって、その他の変数が等しいままの状態では、作用するホウ素コーティング60によって覆われる基板表面積の比率は、中性子検出器10の有効性にほぼ等しい。例えば、ホウ素コーティング60が基板表面積の92%を覆う場合、中性子検出器10は92%の有効性になる。したがって、実現可能に達成できるようなできる限り広い基板表面積を覆う、ホウ素コーティング60を生成することが望ましい。中性子検出器10を最低限有効にするために、ホウ素コーティング60は、基板表面の少なくとも約85%を覆う。
ホウ素含有粉末は、純粋なホウ素、ホウ素化合物、またはホウ素を含有する混合物を含むことができることが、理解されよう。ホウ素含有粉末は、天然に生じるホウ素の同位体を特定の比率で含むこともできる。例えば、全ホウ素含量は、最低で約97重量%にすることができ、全ホウ素含量に対する10B同位体の比率は、最低で約98重量%にすることができる。ホウ素は、2種の天然に生ずる同位体、10Bおよび11Bを有し、典型的には10B約20%および11B約80%という比率で見出される。平均的な状況では、2種の同位体は、自由中性子と相互に作用する場合、全く異なる状態で反応する。
中性子検出器10に進入する中性子は、10Bによって吸収され、次いで粒子の相互作用のカスケードを引き起こすことができるその他の荷電粒子を放出し、次いで中性子検出器10の中心構造54のアノード部分(図1に最も良く示される。)と相互に作用する。典型的な中性子検出器10は、これらの放出された荷電粒子と、その他得られた粒子の相互作用のカスケードとに依拠して、検出された中性子または中性子の群を表す信号を発する。しかし、11B同位体は、その他の荷電粒子を放出することなく中性子を吸収するだけであり、中性子検出の適用例で使用するのに11Bを効果のないものにする。天然に生ずる2種のホウ素同位体の間での、中性子吸収挙動におけるこの相違は、その他の変数が等しいままのとき、10B同位体と全ホウ素含量との比率が中性子検出器10の有効性にほぼ等しいことを意味する。例えば、その他全ての変数が等しいままの状態で、ホウ素コーティング60が10Bを92%および11Bを8%含有する場合、中性子検出器10は、コーティングされた面積上での有効性が92%になる(コーティング中の少量の不純物は無視する。)。したがって、ホウ素含有粉末中の全ホウ素含量に対する10B同位体の比率は、実現可能に達成できるよう高くすることが望ましい。
ホウ素含有粉末の熱拡散付着の1つの利点は、付着の際、ホウ素含有粉末を基板に接着するのに結合剤をごく僅かしかまたは全く必要としないことである。このプロセスは、結合剤に対するホウ素の比率が非常に高い状態で、様々な基板へのホウ素コーティング60の接着を比較的高くすることが可能である。中性子検出の適用例に関するホウ素含有粉末の一例において、ホウ素粉末に混合される可溶性残渣は、ホウ素1グラム当たりの可溶性残渣が7.00×10-4グラム未満である。可溶性残渣の一例は、有機汚染物質である。有機という用語は、広く拡大された分類であることが理解されよう。一部では、この分類には、炭素成分を含有する材料が含まれる。有機汚染物質は、空気圧縮機用油、ジェットミルの内部で使用されるポリマーライナー材料の粒子、ポリマーライナー材料をジェットミルの内壁に接着させるのに使用される接着材料、および結合剤材料などの供給源から、ジェットミリング操作中にホウ素粉末に導入される可能性がある。ホウ素含有粉末の熱拡散は、粉末を導電性の表面に接着するのに必ずしも結合剤とを必要としない。その結果、ホウ素含有粉末の熱拡散付着は、ゴム結合剤ベースの分散液による油中のホウ素粉末など、いくつかの以前から公知のホウ素付着プロセスに比べ、完成したホウ素コーティング60中の可溶性残渣の量を低減させることができる。
最適な中性子検出器10の性能は、一部では、中性子検出器10の壁30に付着されたホウ素粉末中の可溶性残渣の最低レベルに左右される。有機汚染物質などの可溶性残渣は、ガスを抜いて、有機化合物を中性子検出器10の内部容積50に導入する可能性がある。製造プロセス中、内部容積50は、中性子検出器10を有効に動作させるため、気体の特定の配合物で満たされる。ガス抜きから生ずる有機化合物は、気体のこの特定の配合物を汚し、中性子検出器10の有効動作を低下させる可能性がある。したがって、結合剤を比較的少ししかまたは全く含まずに、中性子検出の適用例に関してホウ素1グラム当たり可溶性残渣7.00×10-4グラム未満のレベルで汚染物質を維持するのに役立つホウ素含有粉末を有することが特に望ましい。
一実施例では、ホウ素含有粉末は、指定された粒度にホウ素供給原料をジェットミリングすることによって生成された、結晶質ホウ素粒子を含むことができる。例えば、粒子の約75%超は、その直径が約1ミクロン未満であり、粒子の約95%超は、その直径が約3ミクロン未満であり、粒子の本質的に全ては、その粒径が約15ミクロン未満である。最適な中性子検出器10の性能は、一部では、中性子検出器10の壁30に付着された比較的薄いホウ素コーティング60に左右される。理想的には、中性子検出器10に進入する中性子はホウ素コーティング60によって吸収され、次いで内部容積50内で粒子の相互作用のカスケードを引き起こすことができるその他の荷電粒子を放出し、次いで中性子検出器10の中心構造54のアノード部分と相互に作用する。しかし、熱拡散されたホウ素コーティング60が比較的厚い場合、ホウ素は、その他の荷電粒子を放出することなく中性子を吸収するだけになり、「自己束縛」状態になり、中性子検出器10を無効にする。したがって、中性子検出器の壁30上に比較的薄いコーティングが可能になるように、直径が約1ミクロンの粒度のホウ素含有粉末を利用することが望ましい。約1ミクロンのホウ素粒子のサイジングは、熱拡散付着および中性子検出用にホウ素を堆積する様々なその他の方法にも、特に有効である。基板内への所望のホウ素拡散深さは、約1ミクロンにすることができる。中性子検出器10における所望のホウ素コーティング60の厚さは、2〜5ミクロンの厚さ、あるいは3〜4ミクロンの厚さにすることができる。
中性子検出器10で使用される基板内へのホウ素含有粉末の熱拡散には、基板のミクロフィーチャーに順応したホウ素コーティング60が生成されるという利益がある。基板の面の凹凸などのミクロフィーチャーは、典型的なホウ素コーティング付着によって不適切に覆われる可能性がある。例えば、ホウ素コーティング付着の1つの方法は、導電性表面を、ホウ素またはホウ素化合物の水をベースにした分散液に浸漬するステップを含む。水分子の毛管作用は、ホウ素またはホウ素化合物が、導電性表面のミクロフィーチャーを完全に覆わないようにすることができる。中性子検出器10に関するホウ素コーティングのいくつかの適用例では、円筒状の本体の内側にホウ素コーティングをスラリー塗布することができる。後続の乾燥操作中、重力がホウ素コーティング60の厚さに影響を及ぼす可能性があるが、それはスラリーが完全に乾燥する前に流れる可能性があるからである。
静電スプレーおよびほとんどの蒸着技法など、その他のコーティング技法には、見通し線上での制限がある。これらの制限は、ホウ素含有粉末の点源に対するミクロフィーチャーの隆起によって投射された影により、基板の表面を覆うホウ素含有粉末の均一な付着を妨げる可能性がある。静電スプレーおよびほとんどの蒸着技法は、得られるホウ素コーティング60に「シャドーギャップ」または空隙を含むことが見出されている。空隙は、基板表面の一部の領域がホウ素含有粉末の点源から十分に隠されているので生じる。したがってホウ素含有粉末は、基板の急な勾配の表面に、または表面のミクロフィーチャーの隆起の影に隠された表面に、効果的に堆積または接着しない。この結果、部分的なホウ素コーティング60の空隙と領域とからなるシャドーギャップが形成される。前述のように、ホウ素コーティング面積と全基板表面積との比率が低下することにより、中性子検出器10の有効性が低下する。したがって、見通し線堆積技法が行われずかつシャドーギャップが生じない、ホウ素含有粉末堆積技法を利用することが望ましい。
熱拡散されたホウ素コーティング60を備える例示的なニッケル基板の写真を、図3に示す。基板は、約400ミクロンの支柱高さを有する突出した支柱を有する。黒い染みのような点または針先のような点は、ニッケル基板の表面に熱拡散されたホウ素粒子である。これらの点は、カラー写真では褐色または褐色がかった黒として見られると考えられる。図3の明るい領域は、ニッケルが目に見える領域であり、カラー写真では白色として見られると考えられる。
中性子検出器10の導電性表面にホウ素コーティング60を熱拡散させる例示的な方法を、図4に概略的に示す。この方法は、図1に示される例示的な中性子検出器10と、図2に示される熱拡散したホウ素含有粉末の付着と関連させて行うことができる。この方法は、導電性基板を提供するステップ110を含む。導電性基板は、ニッケル、アルミニウム、およびチタンなどの金属から製造することができるが、金属化された表面を備えた非金属を含むその他の材料も考えられる。導電性基板は、中空円筒の形をとることができるが、その他の中空幾何形状も考えられる。例えば、単純なシートを使用することができ、このシートを引き続き任意の所望の形状に形成することができる。
この方法は、ホウ素含有粉末を導電性基板に接触させて配置するステップ120も含む。ホウ素含有粉末は、いくつかの方法によって基板表面に付着させることができる。例えば、基板表面には乾燥粉末を充填して、乾燥粉末が基板表面に緊密に接触するようにすることができる。別の実施例では、ホウ素含有粉末を、ブラシで塗布されるスラリーまたはペーストに含めることができる。ペーストは、ホウ素含有粉末と、HClおよび脱イオン水H2Oの溶液とを含むことができる。別の実施例では、ホウ素含有粉末を、イソプロピルアルコールと共にスラリーに含めることができる。さらに別の実施例では、ホウ素含有粉末を、静電スプレー操作により基板表面に付着させることができる。前述の事項は、ホウ素含有粉末付着の単なる例であり、その他の付着方法が考えられる。ホウ素含有粉末を基板表面に付着させた後、超音波の適用または過剰なホウ素含有粉末を除去するその他の方法によって、過剰なホウ素含有粉末を全て基板表面から除去することができる。
この方法は、ホウ素含有粉末および導電性基板を高温に曝すステップ130も含む。高温は熱拡散プロセスを促進させ、材料の構成分子のランダムな動きを通して材料を高濃度領域から低濃度領域に移送する。熱拡散プロセスは、ホウ素原子を金属基板内に拡散し、表面ベース金属で金属間化合物を形成する。中性子検出のため、ホウ素を基板表面に拡散させることが望ましいが、ホウ素と基板材料との間で合金を形成することは必ずしも必要ではない。一実施例では、ホウ素コーティング60全体が外部シェル20の壁30内に拡散する。しかし典型的には、ホウ素コーティング60は、基板表面に拡散しているホウ素分子と、基板表面に残るホウ素層とを含む。
この方法は、導電性基板およびホウ素コーティング60を中性子検出器10に組み込むステップ140も含む。導電性基板は、中性子検出器10の外部シェル20の壁30として使用することができる。中性子検出器10に進入する中性子は、ホウ素コーティング60によって吸収され、次いで粒子の相互作用のカスケードを引き起こすことができるその他の荷電粒子を放出し、次いで中性子検出器10の中心構造54のアノード部分と相互に作用する。典型的な中性子検出器10は、これらの放出された荷電粒子と、その他得られた粒子の相互作用のカスケードとに依拠して、検出された中性子または中性子の群を表す信号を発する。
他の実施例では、方法は、基板表面の少なくとも85%を覆うホウ素コーティング60を含む。その他の変数が等しいままのとき、作用するホウ素コーティング60によって覆われた基板表面積の比率は、中性子検出器10の有効性にほぼ等しい。例えば、ホウ素コーティング60が基板表面積の92%を覆う場合、中性子検出器10の有効性は92%になる。したがって、実現可能に達成できるようなできる限り広い基板表面積を覆う、ホウ素コーティング60を生成することが望ましい。
他の実施例では、方法は、天然に生ずるホウ素の同位体を特定の比率で含むこともできるホウ素含有粉末を含むことができる。例えば、全ホウ素含量は、最低で約97重量%にすることができ、全ホウ素含量に対する10B同位体の比率を最小で約98重量%にすることができる。中性子検出器10に進入する中性子は10Bによって吸収され、次いで粒子の相互作用のカスケードを引き起こすことができるその他の荷電粒子を放出し、次いで中性子検出器10の中心構造54のアノード部分(図1に最も良く示される。)と相互に作用する。典型的な中性子検出器10は、これらの放出された荷電粒子と、その他得られた粒子の相互作用のカスケードとに依拠して、検出された中性子または中性子の群を表す信号を発する。その他の変数が等しいままのとき、全ホウ素含量に対する10B同位体の比率は、中性子検出器10の有効性にほぼ等しい。したがって、ホウ素含有粉末中の全ホウ素含量に対する10B同位体の比率は、実現可能に達成できるよう高くすることが望ましい。
さらに他の実施例では、方法は、汚染物質レベルが低下したホウ素含有粉末を含むことができる。最適な中性子検出器10の性能は、一部では、中性子検出器10の表面に付着されたホウ素含有粉末中の可溶性残渣の最低レベルに左右される。有機汚染物質などの可溶性残渣は、ガスを抜いて、有機化合物を中性子検出器10の内部容積50に導入する可能性がある。製造プロセス中、内部容積50は、中性子検出器10を有効に動作させるため、気体の特定の配合物で満たされる。ガス抜きから生ずる有機化合物は、気体のこの特定の配合物を汚し、中性子検出器10の有効動作を低下させる可能性がある。したがって、中性子検出の適用例に関してホウ素1グラム当たり可溶性残渣7.00×10-4グラム未満のレベルで汚染物質を含むホウ素含有粉末を有することが、特に望ましい。
[実施例1]
ニッケル基板を、熱拡散プロセスを使用してホウ化した。ニッケル基板にホウ素粉末を充填し、プロパノールを使用して、ホウ素含有粉末とニッケル基板表面との緊密な接触および濡れを促進させた。プロパノールを乾燥炉内で蒸発させた。次いでホウ素含有粉末が充填されたニッケル基板を、75%の窒素および25%の水素のカバーガスを含有する炉内で、580℃で5時間加熱した。あるいは、ホウ素含有粉末が充填されたニッケル基板を、同じカバーガスを含有する炉内で、960℃で20分間加熱した。次いで過剰なホウ素含有粉末を、超音波処理によってニッケル基板の表面から除去した。
[実施例2]
チタン基板を、熱拡散プロセスを使用してホウ化した。チタン基板にホウ素粉末を充填し、プロパノールを使用して、ホウ素含有粉末とチタン基板表面との緊密な接触および濡れを促進させた。プロパノールを乾燥炉内で蒸発させた。次いでホウ素含有粉末が充填されたチタン基板を、高周波(RF)コイル内で真空条件下で、910℃に10分間加熱した。
[実施例3]
アルミニウム基板を、熱拡散プロセスを使用してホウ化した。アルミニウム基板をホウ素含有スラリーでコーティングした。スラリーの液体成分は、融剤として作用する10%のHClと、90%のH2Oとを含んでいた。スラリーをアルミニウムのクーポンに塗布し、ホットプレート上で約320℃に加熱した。次いでアルミニウムのクーポンを超音波処理して、緩く接着した材料を除去し、永続的な褐色の染みがアルミニウム表面に付けられた。アルミニウムクーポン上の永続的な褐色の染みは、ホウ素の存在を示す。
[実施例1]
ニッケル基板を、熱拡散プロセスを使用してホウ化した。ニッケル基板にホウ素粉末を充填し、プロパノールを使用して、ホウ素含有粉末とニッケル基板表面との緊密な接触および濡れを促進させた。プロパノールを乾燥炉内で蒸発させた。次いでホウ素含有粉末が充填されたニッケル基板を、75%の窒素および25%の水素のカバーガスを含有する炉内で、580℃で5時間加熱した。あるいは、ホウ素含有粉末が充填されたニッケル基板を、同じカバーガスを含有する炉内で、960℃で20分間加熱した。次いで過剰なホウ素含有粉末を、超音波処理によってニッケル基板の表面から除去した。
[実施例2]
チタン基板を、熱拡散プロセスを使用してホウ化した。チタン基板にホウ素粉末を充填し、プロパノールを使用して、ホウ素含有粉末とチタン基板表面との緊密な接触および濡れを促進させた。プロパノールを乾燥炉内で蒸発させた。次いでホウ素含有粉末が充填されたチタン基板を、高周波(RF)コイル内で真空条件下で、910℃に10分間加熱した。
[実施例3]
アルミニウム基板を、熱拡散プロセスを使用してホウ化した。アルミニウム基板をホウ素含有スラリーでコーティングした。スラリーの液体成分は、融剤として作用する10%のHClと、90%のH2Oとを含んでいた。スラリーをアルミニウムのクーポンに塗布し、ホットプレート上で約320℃に加熱した。次いでアルミニウムのクーポンを超音波処理して、緩く接着した材料を除去し、永続的な褐色の染みがアルミニウム表面に付けられた。アルミニウムクーポン上の永続的な褐色の染みは、ホウ素の存在を示す。
本発明について、上述の例示的な実施形態を参照しながら述べてきた。本明細書を読むことにより、修正例および変更例を他者も思い浮かべるであろう。本発明の1つまたは複数の態様を組み込む例示的な実施形態は、それらが添付される特許請求の範囲内に含まれる限り、そのような修正例および変更例の全てを含むものとする。
10 中性子検出器
20 外部シェル
30 壁
40 端部
50 内部容積
52 絶縁体
54 中心構造
60 ホウ素コーティング
20 外部シェル
30 壁
40 端部
50 内部容積
52 絶縁体
54 中心構造
60 ホウ素コーティング
Claims (14)
- 内部容積の境界を画定するシェルと;
カソードとして働く部分と;
内部容積の中に位置付けられかつアノードとして働く中心構造と;
カソード部分にあるホウ素コーティングであって、中性子に対して感受性のあるホウ素コーティングが形成されるように、ホウ素コーティングの少なくとも一部がホウ素含有粉末からカソード部分に熱拡散されるホウ素コーティングと;
中心構造により収集された信号を送信するために、中心構造に動作可能に接続された電気コネクターと
を含む中性子検出器。 - ホウ素コーティングの全てがカソード部分に拡散される、請求項1記載の中性子検出器。
- シェルが、境界を画定する壁を含み、カソード部分が壁の少なくとも一部である、請求項1記載の中性子検出器。
- 壁の表面の少なくとも85%がホウ素コーティングにより覆われている、請求項3記載の中性子検出器。
- 壁が円筒である、請求項3記載の中性子検出器。
- ホウ素コーティングが、最小全ホウ素含量約97重量%と、全ホウ素含量に対する10B同位体の最低比率約98重量%とを含む、請求項1記載の中性子検出器。
- ホウ素コーティングが、ホウ素1グラム当たりの可溶性残渣を7.00×10-4グラム未満含む、請求項1記載の中性子検出器。
- 導電性基板を提供するステップと;
ホウ素含有粉末を導電性基板に接触させて配置するステップと;
ある量のホウ素含有粉末を導電性基板内に熱拡散させて、中性子に対して感受性のあるホウ素コーティングが形成されるように、ホウ素含有粉末および導電性基板を高温に曝すステップと;
導電性基板およびホウ素コーティングを、外部シェルの少なくとも一部として中性子検出器に組み込むステップと
を含む、中性子検出器用の中性子捕獲層を生成するためにホウ素含有粉末を基板表面に拡散させる方法。 - ホウ素コーティングの全てが導電性基板内に拡散される、請求項8記載の方法。
- 導電性基板を提供するステップが、内部容積の境界を画定するシェルの壁の少なくとも一部として基板を提供するステップを含む、請求項8記載の方法。
- 壁の表面の少なくとも85%がホウ素コーティングにより覆われている、請求項8記載の方法。
- 壁が円筒である、請求項8記載の方法。
- ホウ素コーティングが、最小全ホウ素含量約97重量%と、全ホウ素含量に対する10B同位体の最低比率約98重量%とを含む、請求項8記載の方法。
- ホウ素コーティングが、ホウ素1グラム当たりの可溶性残渣を7.00×10-4グラム未満含む、請求項8記載の方法。
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