JP2013079210A - 治療剤、遺伝子治療剤及び好酸球の浸潤抑制方法 - Google Patents

治療剤、遺伝子治療剤及び好酸球の浸潤抑制方法 Download PDF

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Abstract

【課題】好酸球性副鼻腔炎、好酸球性中耳炎の治療剤、遺伝子治療剤、並びに、好酸球の浸潤抑制方法の提供。
【解決手段】 STAT−6遺伝子の発現を抑えるsiRNA、GATA−3遺伝子の発現を抑えるsiRNA及び/又はIL−5遺伝子の発現を抑えるsiRNAを有効成分として含有し、好酸球性副鼻腔炎及び/又は好酸球性中耳炎の治療に用いる治療剤。
【選択図】図2

Description

本発明は、STAT−6遺伝子、GATA−3遺伝子及び/又はインターロイキン5(以下、IL−5とも称する。)遺伝子のノックダウンを利用する、好酸球性副鼻腔炎、好酸球性中耳炎の治療、並びに好酸球の浸潤抑制方法に関する。
副鼻腔炎とは、副鼻腔に炎症が生じる疾患である。慢性副鼻腔炎に対する治療としては(1)薬物療法と(2)手術療法がある。薬物療法における近年のマクロライド療法の発見は、好中球等によってひきおこされた副鼻腔炎の制御に著しい効果を示した。また手術療法における内視鏡下副鼻腔手術の普及によって手術の安全性や有効性が向上した。しかし、マクロライド療法を含む薬物療法に抵抗性で、手術をしても易再発性の難治性副鼻腔炎も数多く存在する。その難治性副鼻腔炎の代表的な一つが好酸球が関与する副鼻腔炎である(好酸球性副鼻腔炎と最近呼ばれている)。多くの好酸球が副鼻腔組織に浸潤し、活性化した好酸球が副鼻腔組織を障害すると言われている。術後再発は5年間で50%以上と言われている。好酸球性副鼻腔炎の多くは好酸球性中耳炎を合併している。好酸球性中耳炎も治療に対して抵抗性を示し、臨床上問題となっている。好酸球性副鼻腔炎、好酸球性中耳炎ともにTh2細胞、Th2サイトカインが誘導され、病態の形成に関与していると言われている。
薬物療法や手術療法の他、臨床応用が進められている治療手法の一つにRNA干渉(以下、RNAiとも称する。)がある。RNA干渉は二重鎖RNAと相補的な塩基配列をもつmRNAが分解される現象で、これを利用して特定の遺伝子発現を抑制することが可能となる。
当該RNAiを引き起こす二重鎖RNA(以下、dsRNAとも称する。)の導入の検討がなされ、二重鎖RNAを哺乳類の細胞や生体に導入する場合、短い干渉RNAであるsiRNAが好適であることが突き止められた。
また、遺伝子治療としてベクターにsiRNAを形成しうる遺伝子を組み込み、当該ベクターを投与する技術の臨床応用も進められている。
国際公開WO2005/030960号 上記特許文献1には、ステイプル型オリゴヌクレオチドおよびそれを有効成分とする医薬が開示されている。具体的には転写因子阻害剤、アンチセンスオリゴヌクレオチドまたはsiRNAであり、さらに具体的には関節炎、皮膚炎、腎炎、肝炎、腎不全、膀胱炎、前立腺炎、尿道炎、潰瘍性大腸炎またはクローン病、慢性関節リウマチまたは変形性関節症、アトピー性皮膚炎、接触性皮膚炎、乾癬、皮膚潰瘍または褥そうの予防・治療・改善剤を開示する。 国際公開WO2008/029493号 上記特許文献2にはsiRNAを有効成分として含む神経線維変性を抑制する薬剤の開示がある。 国際公開WO2005/113014号 上記特許文献3には、JCウィルス感染症の治療のための医薬組成物であって、siRNAを形成しうる遺伝子を組み込んだベクターを含む医薬組成物を開示する。
副鼻腔炎に対する治療法としては、従来、薬物療法や手術療法が中心となってきた。しかし、当該治療法では治療後再発する症例も多く、本願発明者は更に有効な副鼻腔炎の治療について検討した。
第一に、従来の副鼻腔炎の治療法では、発症機序の根本から治療できていなかった。本願発明者は、発症機序の根本に働きかけない治療ゆえに、治療後再発する症例が多くなると考えた。
難治性副鼻腔炎の発症機序には好酸球が関与していることが報告されているが、難治性副鼻腔炎の発症機序の根本からの治療を目指し鋭意研究を重ねた結果、本願発明者はSTAT−6、GATA−3、IL−5遺伝子の発現を抑えることが有効であることを見出した。更には、STAT−6、GATA−3、IL−5遺伝子の発現を抑えるsiRNAを利用することが有効であることを見出した。
IL−5は好酸球の分化、増殖、誘導に関与するサイトカインである。鋭意研究の結果、本願発明者は上記各siRNAはIL−5産生を抑制する効果を有するという知見を得た。よって、上記各siRNAを利用することで、好酸球の浸潤を認める好酸球性疾患の治療が可能であると合理的に推測された。
以上の知見に基づき、本願発明者は本発明を完成させた。有用な好酸球性副鼻腔炎、好酸球性中耳炎の治療剤、遺伝子治療剤、並びに、好酸球の浸潤抑制方法を提供することを本発明が解決すべき課題とする。
(第1発明)
上記課題を解決するための本願第1発明は、
STAT−6遺伝子の発現を抑えるsiRNA、GATA−3遺伝子の発現を抑えるsiRNA及び/又はIL−5遺伝子の発現を抑えるsiRNAを有効成分として含有し、好酸球性副鼻腔炎及び/又は好酸球性中耳炎の治療に用いる治療剤である。
(第2発明)
上記課題を解決するための本願第2発明は、
前記有効成分であるSTAT−6遺伝子の発現を抑えるsiRNAが、配列番号1又は配列番号14に記載の鎖を有するsiRNAと80%以上の相同性があるsiRNAである第1発明に記載の治療剤である。
(第3発明)
上記課題を解決するための本願第3発明は、
前記有効成分であるGATA−3遺伝子の発現を抑えるsiRNAが、配列番号2、配列番号3、配列番号15、配列番号16、配列番号17又は配列番号18に記載の鎖を有するsiRNAと80%以上の相同性があるsiRNAである第1発明又は第2発明に記載の治療剤である。
(第4発明)
上記課題を解決するための本願第4発明は、
前記有効成分であるIL−5遺伝子の発現を抑えるsiRNAが、配列番号4に記載の鎖を有するsiRNAと80%以上の相同性があるsiRNAである第1発明〜第3発明のいずれかに記載の治療剤である。
(第5発明)
上記課題を解決するための本願第5発明は、
第1発明〜第4発明のいずれかに記載のsiRNAを形成しうる遺伝子を組み込んだベクターを有効成分として含有し、好酸球性副鼻腔炎及び/又は好酸球性中耳炎の治療に用いる遺伝子治療剤である。
(第6発明)
上記課題を解決するための本願第6発明は、
STAT−6遺伝子、GATA−3遺伝子及び/又はIL−5遺伝子をノックダウンする非治療的な好酸球の浸潤抑制方法である。
(第1発明〜第4発明)
本願第1発明〜第4発明により、有用な好酸球性副鼻腔炎、好酸球性中耳炎の治療剤が提供される。
従来の好酸球性副鼻腔炎の薬物療法や手術療法では、治療後5〜6年程度で副鼻腔炎が再発することが多かった。また、従来の好酸球性中耳炎の治療は根本的な治療でないという課題があった。本願発明によれば、好酸球性副鼻腔炎、好酸球性中耳炎の発症機序の根本からの治療が可能であると考えられる。
本願第1発明はsiRNAを有効成分として含むものであり、遺伝子レベルでの治療が可能となる。即ち、好酸球性副鼻腔炎、好酸球性中耳炎の発症機序の根本からの治療が可能であると考えられる。好酸球性副鼻腔炎や好酸球性中耳炎の症状や病態を軽減、初発の予防、悪化の予防、又は再発症例の予防・軽減をすることができると考えられる。更には、好酸球性副鼻腔炎、好酸球性中耳炎が根治治療できると期待できる。
また、本発明の治療剤は、デコイを含む治療剤と比べて安全性の高い治療剤であると考えられる。siRNAが細胞質で作用するのに対しデコイはDNAと結合する、即ち、核内において作用するため危険性が高くなると考えられる。
(第5発明)
本願第5発明により、有用な遺伝子治療剤が提供される。遺伝子治療の態様として、ベクターを利用する態様がある。よって、STAT−6遺伝子の発現を抑えるsiRNA、GATA−3遺伝子の発現を抑えるsiRNA、IL−5遺伝子の発現を抑えるsiRNAを形成しうる遺伝子を組み込んだベクターを有効成分とする遺伝子治療剤は有用である。当該遺伝子治療剤は上記した治療剤と同様のメリットがあると考えられる。
(第6発明)
本願第6発明により、有用な浸潤抑制方法が提供される。本発明の浸潤抑制方法は、例えば、STAT−6遺伝子、GATA−3遺伝子及び/又はIL−5遺伝子のノックダウンと、好酸球の浸潤との関係を解明するツールとして有用である。本発明の浸潤抑制方法を利用することで好酸球の動態の解明、浸潤を受ける細胞・組織等の動態の解明が進むことが期待される。
特に、好酸球副鼻腔炎、好酸球性中耳炎は症状が重度であり、難治療性の疾患であるので、当該疾患の治療だけでなく予防の要望もある。好酸球と副鼻腔や中耳における細胞・組織等の相互関係が解明されれば、他の観点からの治療薬の開発や、疾患を予防する生活態度の解明が進むと考えられる。
STAT−6siRNAによる、STAT−6遺伝子の発現抑制を示すグラフである。 STAT−6siRNAによる、IL−5の産生抑制を示すグラフである。 STAT−6siRNAによる、RANTESの産生抑制を示すグラフである。 GATA−3siRNAによる、IL−5の産生抑制を示すグラフである。 IL‐5siRNAによる、IL−5の産生抑制を示すグラフである。 STAT−6siRNAによる、副鼻腔好酸球数の抑制を示すグラフである。
以下に、本発明の実施形態を、最良の形態を含めて説明する。
好酸球性副鼻腔炎とは好酸球の浸潤を認める副鼻腔炎である。好酸球性中耳炎とは好酸球の浸潤を認める中耳炎である。
〔治療剤〕
本発明の治療剤は、STAT−6遺伝子の発現を抑えるsiRNA、GATA−3遺伝子の発現を抑えるsiRNA、及び/又はIL−5遺伝子の発現を抑えるsiRNAを有効成分として含有する。本発明の治療剤は、好酸球性副鼻腔炎及び/又は好酸球性中耳炎の治療に用いる。
Statとは、シグナル伝達兼転写活性化因子であり、複数のファミリーを有する。STAT−6遺伝子はSTATファミリーに属する遺伝子である。STAT−6はTh2細胞の分化に必須の転写因子と考えられている。STAT−6遺伝子のsiRNAとして、例えば、「Darcan-Nicolaisen Y, Meinicke H, Gabriele Fels G, et al. Small interfering RNA against transcription factor STAT6 inhibits allergic airway inflammation and hyperreactivity in mice The Journal of Immunology, 2009, 182: 7501-7508.」に記載のsiRNAがある。
GATA−3はGATAファミリーに属し、IL−4、IL−5、IL−13を産生するTh2細胞への制御因子である。GATA−3遺伝子のsiRNAとして、例えば、「Xin Y, Yan Y, Hai-yan HE, et al. GATA3 siRNA inhibits the binding of NFAT1 to interleukin-13promoter in human T cells Chin Med J 2010;123(6):739-744」に記載のsiRNAがある。
IL−5は好酸球の分化、増殖、誘導に関与するサイトカインである。また、IL−5はTh2細胞が産生するTh2サイトカインの一種である。IL−5遺伝子は、当該IL−5をコードする遺伝子である。
STAT−6遺伝子、GATA−3遺伝子、IL−5遺伝子は多数公知となっており、遺伝子の全長の塩基配列は種々の論文やデータベース等から得ることができる。例えば、NCBIのデータベースを利用することができる。STAT−6遺伝子の一例は「http://www.ncbi.nlm.nih.gov/nuccore/NM_001178078.1」、GATA−3遺伝子の一例は「http://www.ncbi.nlm.nih.gov/nuccore/50541957」、IL−5遺伝子の一例は「http://www.ncbi.nlm.nih.gov/nuccore/NM_000879.2」に開示されている。
遺伝子の発現とは、遺伝子からmRNAへの転写、mRNAから蛋白質への翻訳という流れを指す。遺伝子の発現を抑えるとは、大別して、mRNAの分解による発現抑制と、蛋白質の分解による発現抑制がある。本発明の治療剤はsiRNAを有効成分として含むので、本発明の治療剤を使用すると、上記標的遺伝子のmRNAの分解によって遺伝子の発現が抑えられると考えられる。
本発明の治療剤において、有効成分であるsiRNAとは、生体内や細胞内等に導入されたとき、上記標的遺伝子のmRNAの分解により遺伝子の転写後発現を抑制する機能を持つ短鎖の二重鎖RNAをいう。siRNAは標的遺伝子をノックダウンする目的で使用する。当該ノックダウンの程度は、部分的な治療効果を奏するノックダウンの程度でもよい。例えば、好酸球性副鼻腔炎や好酸球性中耳炎の症状や病態を軽減、初発の予防、悪化の予防、再発症例の予防・軽減をすることができればよい。好酸球性副鼻腔炎、好酸球性中耳炎が根治治療できることが好ましい。
上記siRNAは、上記標的遺伝子のmRNAと相同な配列からなるセンス鎖と、これと相補的な配列からなるアンチセンス鎖からなる。本発明の治療剤においては、上記標的遺伝子のノックダウンをすることができれば「相同」、「相補」配列である。即ち、標的遺伝子のmRNAと配列が一致・対応しない場合であっても、本発明のsiRNAに該当する場合がある。更に、当該siRNAを含む形態としても良い。本発明の治療剤の効果を奏する限り、当該センス鎖、アンチセンス鎖は3’末端側及び/又は5’末端側に二重鎖を形成しない突出部位を有していても良い。また、一方の端が閉じた構造であるsiRNA、例えば、ヘアピン構造を有するsiRNA(shRNA)としてもよい。また、本発明の治療剤の効果を奏する限り、核酸分子鎖、ペプチド、糖、リン酸、リポゾーム、蛋白質、ポリマー等によって修飾されても良い。これらの修飾により、ノックダウンをより強力にしたり、生体や細胞へのsiRNAの導入効率を上げたり、副作用を減少させたりすること等ができると考えられる。上記siRNAのセンス鎖、アンチセンス鎖の長さは本発明の治療剤の効果を奏する限り特に限定されないが、10〜30塩基であることが好ましく、15〜25塩基であることがより好ましく、19〜23塩基であることが更に好ましい。
本発明のsiRNAは全てのヌクレオチドがリボヌクレオチドでなくても良い。本発明の効果を奏する限り、リボヌクレオチドは対応するデオキシリボヌクレオチドであっても良い。上記対応するとは、糖部分の構造は異なるものの、同一の塩基種(アデニン、グアニン、シトシン)であることを指す。ウラシルの場合は、チミンが対応する。
本発明のsiRNAは公知の手法により適宜調製することができる。例えば、長鎖の二重鎖RNAを用意し、Dicer等によりsiRNAを調製しても良いし、核酸鎖を伸長する反応を利用して調製することも可能である。
STAT−6遺伝子の発現を抑えるsiRNA、GATA−3遺伝子の発現を抑えるsiRNA、IL−5遺伝子の発現を抑えるsiRNAは、各標的遺伝子をノックダウンできる限り特段に限定されないが、以下のsiRNAとすることが好ましい。
STAT−6遺伝子の発現を抑えるsiRNAについては後述する配列番号1に記載の鎖、又は下記配列番号14に記載の鎖を有する(即ち、更に相補的な配列を備えている。)siRNA、
GATA−3遺伝子の発現を抑えるsiRNAについては後述する配列番号2に記載の鎖、配列番号3に記載の鎖、又は下記配列番号15〜18(当該配列番号15〜18の候補配列は論文で開示されていない。)に記載の鎖を有するsiRNA、
IL−5遺伝子の発現を抑えるsiRNAについては後述する配列番号4(当該配列番号4に記載の配列は論文に開示されていない。)に記載の鎖を有するsiRNA、
と80%以上の相同性があることが好ましく、90%以上の相同性があることがより好ましく、95%以上の相同性があることがより好ましく、97%以上の相同性があることが更に好ましく、100%の相同性があることが特に好ましい。相同性については、BLASTを利用して計算可能である。当該相同性の範囲内であれば、塩基数は増減しても良い。本発明において、相同性は、センス鎖又はアンチセンス鎖の一方を用いて計算することとする。
配列番号14:5’-AAGCAGGAAGAACUCAAGUUU-3’
配列番号15:5’-CUACAAGCUUCACAAUAUU-3’
配列番号16:5’-GCUUCACAAUAUUAACAGA-3’
配列番号17:5’-ACCGAAAAAUGUCUAGCAA-3’
配列番号18:5’-CUGGAGGACUUCCCCAAGA-3’
本発明のsiRNAには、各配列番号に記載の鎖において数塩基が置換、欠失、付加されたものを有する物であっても良い。当該置換、欠失、付加される塩基数は6以下であることが好ましく、4以下であることがより好ましく、2以下であることが更に好ましい。
本発明の治療剤に含有する有効成分であるsiRNAがSTAT−6遺伝子、GATA−3遺伝子、及びIL−5遺伝子でない他の遺伝子と相同であるか調べることが好ましい。STAT−6遺伝子、GATA−3遺伝子、IL−5遺伝子のみならず、他の遺伝子とも相同である場合、当該他の遺伝子までノックダウンするおそれがある。
本発明の治療剤には、異なる配列からなる複数のsiRNAを含んでも良い。
本発明の治療剤は、有効成分であるsiRNAの他、生体や細胞等への当該siRNAの吸収を促進する物質や薬学的に許容される担体等を用いて組成物とすることができる。ここで、薬学的に許容される担体とは、製剤素材として慣用の各種有機あるいは無機担体物質含み、固形製剤における賦形剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤;液状製剤における溶剤、溶解補助剤、懸濁化剤、等張化剤、緩衝剤、無痛化剤などを含む。また必要に応じて、防腐剤、抗酸化剤、着色剤、甘味剤などの製剤添加物を用いることもできる。
賦形剤の好適な例としては、乳糖、白糖、D−マンニトール、D−ソルビトール、デンプン、α化デンプン、デキストリン、結晶セルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、アラビアゴム、プルラン、軽質無水ケイ酸、合成ケイ酸アルミニウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムなどが挙げられる。
滑沢剤の好適な例としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク、コロイドシリカなどが挙げられる。
結合剤の好適な例としては、α化デンプン、ショ糖、ゼラチン、アラビアゴム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、結晶セルロース、白糖、D−マンニトール、トレハロース、デキストリン、プルラン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドンなどが挙げられる。
崩壊剤の好適な例としては、乳糖、白糖、デンプン、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、軽質無水ケイ酸、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースなどが挙げられる。
溶剤の好適な例としては、注射用水、生理的食塩水、リンゲル液、アルコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ゴマ油、トウモロコシ油、オリーブ油、綿実油などが挙げられる。
溶解補助剤の好適な例としては、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、D−マンニトール、トレハロース、安息香酸ベンジル、エタノール、トリスアミノメタン、コレステロール、トリエタノールアミン、炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、サリチル酸ナトリウム、酢酸ナトリウムなどが挙げられる。
懸濁化剤の好適な例としては、ステアリルトリエタノールアミン、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリルアミノプロピオン酸、レシチン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、モノステアリン酸グリセリンなどの界面活性剤;例えばポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどの親水性高分子;ポリソルベート類、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油などが挙げられる。
等張化剤の好適な例としては、塩化ナトリウム、グリセリン、D−マンニトール、D−ソルビトール、ブドウ糖などが挙げられる。
緩衝剤の好適な例としては、リン酸塩、酢酸塩、炭酸塩、クエン酸塩などの緩衝液などが挙げられる。
無痛化剤の好適な例としては、ベンジルアルコールなどが挙げられる。
防腐剤の好適な例としては、パラオキシ安息香酸エステル類、クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール、デヒドロ酢酸、ソルビン酸などが挙げられる。
抗酸化剤の好適な例としては、亜硫酸塩、アスコルビン酸塩などが挙げられる。
着色剤の好適な例としては、水溶性食用タール色素(例、食用赤色2号および3号、食用黄色4号および5号、食用青色1号および2号などの食用色素、水不溶性レーキ色素(例、前記水溶性食用タール色素のアルミニウム塩など)、天然色素(例、β−カロチン、クロロフィル、ベンガラなど)などが挙げられる。
甘味剤の好適な例としては、サッカリンナトリウム、グリチルリチン酸二カリウム、アスパルテーム、ステビアなどが挙げられる。
また、組成物は、製剤技術分野において慣用の方法、例えば日本薬局方に記載の方法等により製造することができる。
本発明の治療剤の剤型は特に限定されないが、液状、乳化物、ゲル状、粉状、又は軟膏状が好ましい。また、リポソーム等を利用して、ドラッグデリバリーシステムを構築した剤型とすることも好ましい。本発明の治療剤は、点鼻剤、静脈注射や局所投与に用いる液剤を含む注射剤、塗布剤とすることが好ましい。本発明の治療剤は、患部に直接投与することも好ましい。
本発明の治療剤の投与方法・投与量・投与期間・投与間隔等の投与スケジュールは、症状や健康状態を加味し、医師により決定される。本発明の治療剤と他の薬剤を併用することもできる。従来の手術治療と、本発明の治療剤の投与を併用しても良い。例えば、手術中もしくは直後に本発明の治療剤を投与しても良いし、手術後一定の時間が経過してから治療剤を投与しても良い。
〔遺伝子治療剤〕
本発明の遺伝子治療剤は、上記した有効成分であるsiRNAを形成しうる遺伝子を組み込んだベクターを有効成分として含有する。
当該ベクターは本発明の遺伝子治療剤の効果を奏する限り特に限定されないが、アデノウィルスベクター、ヘルペスウィルスベクター、ワクシニアウィルスベクター、レトロウィルスベクター、レンチウィルスベクター、ウィルス以外のベクター及びこれらの改変ベクター等を利用することができる。
当該ベクターに組み込まれる遺伝子は、上記した有効成分であるsiRNAを形成しうる遺伝子である。例えば、当該siRNAのセンス鎖及びアンチセンス鎖をコードする遺伝子を組み込むことができる。また、shRNAをコードする遺伝子を組み込むこともできる。本発明の効果を奏するのであれば、例えば、Dicerの働きにより本発明のsiRNAを生成し得るdsRNAの遺伝子をベクターに組み込んでも良い。場合により、Dicerをコードする遺伝子を組み込むこともできる。
ベクターへの遺伝子の組み込みは、公知の手法を適宜採用することができる。例えば、制限酵素とリガーゼを利用する方法等を利用しても良い。
本発明の遺伝子治療剤におけるsiRNAの構造、製剤、用途、投与、治療効果に関しては、上記治療剤と同様である。
〔浸潤抑制方法〕
本発明の浸潤抑制方法は、STAT−6遺伝子、GATA−3遺伝子及び/又はIL−5遺伝子をノックダウンすることにより、好酸球の浸潤を抑制する。
即ち、本発明の浸潤抑制方法は好酸球性副鼻腔炎、好酸球性中耳炎の治療方法を提供する。これらの治療方法においては上記した有効成分であるsiRNAを用いてノックダウンを行うことが好ましい。よって、疾患の治療に上記した治療剤、遺伝子治療剤を用いることが好ましい。
また、本発明の浸潤抑制方法は非治療的な用途においても有用である。リサーチツールとしての活用が好ましい。例えば、STAT−6遺伝子、GATA−3遺伝子及び/又はIL−5遺伝子のノックダウンと、好酸球の浸潤との関係を解明するツールとして有用である。本発明の浸潤抑制方法を利用することで好酸球の動態の解明、浸潤を受ける細胞・組織等の動態の解明が進むことが期待される。
本発明の非治療的な浸潤抑制方法において遺伝子のノックダウンを受ける対象は器官、組織、細胞、であって良いし、疾患モデル動物であって良いし、In vitroで疾患を再現した系であっても良い。特に、副鼻腔炎患者由来の鼻ポリープ、当該鼻ポリープを形成する鼻茸、副鼻腔組織、中耳組織が対象になる。
〔その他〕
本願発明者の知見に基づけば、例えば好酸球の遊走、活性化に関与したり、好酸球が遊離する物質を抑制する手段によっても、好酸球性副鼻腔炎、好酸球性中耳炎の治療ができると考えられる。当該物質として、例えば、サイトカイン(IL−2,IL−3,IL−4,IL−6,IL−8,IL−10,IL−12,IL−13,IL−16,IL−18,TGF−α,TGF−β,GM−CSF,TNF−α,TNF−β)、脂質メディエーター(ロイコトリエン、PGE2、PAF)、接着分子(ICAM−1、VLA−4、LFA−1)、ケモカイン受容体(CCR3、CCR−1)、顆粒蛋白(major basic protein(MBP),eosinophilic cationic protein(ECP),eosinophil−derived neurotoxin(EDN),eosinophil peroxidase)、ケモカイン(eotaxin)等を挙げることができる。
また、本願発明者の知見に基づけば、好中球が関与する副鼻腔炎、中耳炎の治療においても、siRNAの利用が有効であると考えられる。例えば、IL−6遺伝子の発現を抑えるsiRNAを利用することで、好中球を抑制し、副鼻腔炎や中耳炎の治療ができると考えられる。
以下に、本発明の実施例を説明する。本発明の技術的範囲は下記の実施例に限定されない。
〔鼻茸細胞の準備〕
鼻茸細胞は以前から報告されている方法(「Draheim, R., U. Egerland, and C. Rundfeldt. 2004. Anti-inflammatory potential of the selective phosphodiesterase 4 inhibitor N-(3,5-dichloro-pyrid-4-yl)-[1-(4-fluorobenzyl)-5-hydroxy-indole-3-yl]-gly oxylic acid amide (AWD 12-281), in human cell preparations. J Pharmacol Exp Ther 308(2):555-63.」、「Okano, M., T. Fujiwara, T. Haruna, S. Kariya, S. Makihara, T. Higaki, and K. Nishizaki. 2009. Prostaglandin E(2) suppresses staphylococcal enterotoxin-induced eosinophilia-associated cellular responses dominantly through an E-prostanoid 2-mediated pathway in nasal polyps. J Allergy Clin Immunol 123(4):868-74 e13.」)を用いて、好酸球性副鼻腔炎患者の鼻茸より準備した。
患者より鼻茸を採取後、鼻茸を細かく切った。当該細かく切った鼻茸1gを4mlの培養ミディウムA(当該培養ミディウムAの組成は、2mg/ml protease、1.5mg/ml collagenase、0.75mg/ml hyaluronidase、0.05mg/ml DNaseを含むRPMI1640培地)に入れ、37℃の状態で2時間培養した。次いで、70μm cell strainerを用いて培養した細胞懸濁液をろ過した後、ミディウムB(当該ミディウムBの組成は、2% FCS、2mmol/L glutamine、100U/ml penicillin、100μg/ml streptomycinを含むRPMI1640培地)を用いて2回、ろ過した細胞を洗浄した。その後、培養ミディウムC(当該培養ミディウムCの組成は、10% FCS、2mmol/L glutamine、100U/ml penicillin、100μg/ml streptomycinを含むRPMI1640培地)で細胞を懸濁状態にした。
〔siRNAの感作〕
下記配列番号1に記載の鎖を有するSTAT−6遺伝子に特異的なsiRNA(以下、STAT−6siRNAとも称する。)、下記配列番号2及び配列番号3に記載の鎖を有するGATA−3遺伝子に対して特異的なsiRNA(以下、配列番号2に記載の鎖を有するsiRNAをGATA−3siRNA−1、配列番号3に記載の鎖を有するsiRNAをGATA−3siRNA−2とも称する。)、下記配列番号4に記載の鎖を有するIL−5遺伝子に特異的なsiRNA(以下、IL−5siRNAとも称する。)、下記配列番号5に記載の鎖を有するコントロールであるsiRNA(以下、コントロールsiRNAとも称する。)を用いて試験した。また、もう一つのコントロールとしてsiRNAを使用しないコントロール(No siRNA)も作製した。
配列番号1:5’-AGACCUGUCCAUUCGCUCA-3’
配列番号2:5’-ACAGACCCCUGACUAUGAA-3’(Position1609)
配列番号3:5’-AAUCCAGACCAGAAACCGAAA-3’
配列番号4:5’-CAAGUGCAUUGGUGAAAGA-3’(Position121)
配列番号5:5’-UUCUCCGAACGUGUCACGU-3’
siRNA(2μg)、GeneSilencer reagent(20μl)を50μlのRPMI1640培地に混ぜ30分間、室温にて留置した。留置後、この混合液を12穴プレート中にある400μlの鼻茸細胞の懸濁液に加えた(当該鼻茸細胞を懸濁した培地はRPMI1640培地である。)。4時間後、同量のミディアムD(当該ミディアムDの組成は、20% FBS, 20 ng/ml GM-CSF (PeproTech)、20 ng/ml IL-4を含んだRPMI1640培地)を鼻茸細胞懸濁液に加えた。
〔培養〕
48ウェルプレートを用いてsiRNAを感作させた鼻茸細胞を培養した。
1×10個/mlの鼻茸細胞にStapylococcal enterotoxinB(SEB、100ng/ml)、抗HLA抗体、抗ICAM−1抗体を加え、37℃、5%CO/air mixtureの状態で培養した。
〔Real−time PCR〕
TRIzol(Invitrogen)を用いて、鼻茸細胞よりTotal RNAを抽出した(「Suzuki, M., X. Zheng, X. Zhang, M. Li, C. Vladau, T. E. Ichim, H. Sun, L. R. Min, B. Garcia, and W. P. Min. 2008. Novel vaccination for allergy through gene silencing of CD40 using small interfering RNA. J Immunol 180(12):8461-9.」に記載の手法を採用した。)。
10 U of DNase I を用いて20μgRNAを分解(37℃下で30分間)、次いでphenol:chloroform(3:1)で抽出、次いでethanolで凝結、70%ethanolで洗浄した。その後、20μlの水(RNaseが存在しない水)を用いて溶解した。
SuperScript Preamplification System(Invitrogen)を用いてFirst−strand cDNAを作製した。
Real−time PCRはSYBR Green PCR Master mix(Stratagene)と100nMの遺伝子特異的プライマーを用いて施行した。PCRのコンディションは95℃10分、95℃30秒、58℃1分、72℃30秒(40サイクル)とした。コントロールとしてはGAPDHプライマーを使用した。以下、本実施例で使用したプライマーの配列を示す。
配列番号6:STAT-6 forward: 5’-CCTCGTCACCAGTTGCTT-3’
配列番号7:STAT-6 reverse: 5’-TCCAGTGCTTTCTGCTCC-3’
配列番号8:GATA-3 forward: 5’-GCGGGCTCTATCACAAAATGA-3’
配列番号9:GATA-3 reverse:5’-GCTCTCCTGGCTGCAGACAGC-3’
配列番号10:IL-5 forward:5’-GCTTCTGCATTTGAGTTTGCTAGCT-3’
配列番号11:IL-5 reverse: 5’-TGGCCGTCAATGTATTTCTTTATTAAG-3’
配列番号12:GAPDH forward: 5’-TGATGACATCAAGAAGGTGGTGAA-3’
配列番号13:GAPDH reverse: 5’-TCCTTGGAGGCCATGTAGGCCAT-3’
〔IL−5、RANTESの測定〕
培養上清中のIL−5、RANTESをEIAにて測定した。IL−5はOpt EIA sets(BD Biosciences)を用いて測定した。RANTESはDuoSet ELISA development kit (R&D Systems)を用いて測定した。
〔感作、免疫と治療〕
8週齢の雄BALB/cマウスを用いて以下の試験を行った。10μg卵白アルブミン(ovalbumin、以下、OVAとも称する。)と2mgのAl(OH)を試験開始時(以下、試験開始日をDay0とも称する。試験開始から経た日数も同様に記載する。)とDay14の2回腹腔内に投与した。Day21からDay27まで毎日OVA(600μg)を点鼻投与した。治療としてDay21からDay27まで毎日、上記OVA点鼻の5時間前に100μgのStat−6siRNA、もしくはコントロールsiRNAを投与した。
〔病理〕
上記「感作、免疫と治療」の手順で処置したマウスの頭部を切り離して10%formalinで固定した後、脱灰して、薄片に切り分けた。鼻組織を3μMの厚さで切った後、Luna染色で染めた。鼻中隔に存在する好酸球の数をカウントした。強拡(10×40)で認められる好酸球数を測定した。
〔統計学的解析〕
One-way ANOVA(Newman-Keuls Test)を用いて解析した。p < 0.05の場合、統計学的に有意と判断した。
〔結果〕
好酸球性副鼻腔炎、鼻ポリープを認める患者より鼻ポリープを採取、鼻ポリープより鼻茸細胞を分離、培養した。鼻茸細胞にSTAT−6siRNA、GATA−3siRNA、又はIL−5siRNAを導入してその効果を検討した。コントロール群としてコントロールsiRNA導入群とsiRNA非導入群(No siRNA)を作製した。
STAT−6siRNAを導入した鼻茸細胞において、STAT−6遺伝子の発現は有意に低下(コントロールsiRNA群、No siRNA群に対して12.2%であった。)していた。(図1)。また、GATA−3siRNAを導入した鼻茸細胞において、GATA−3遺伝子の発現は有意に低下(コントロールsiRNA群、No siRNA群に対してGATA−3siRNA−1群は10.4%、GATA−3siRNA−2は21.2%であった。)していた。また、IL−5siRNAを導入した鼻茸細胞において、IL−5遺伝子の発現は有意に低下(コントロールsiRNA群に対して12.8%、No siRNA群に対して13.1%であった。)していた。これらの試験は各5連行い、平均値にて各試験結果を記載した。STAT−6siRNA試験の結果は図1に示した。一方、GATA−3siRNA及びIL−5siRNAの試験結果の図示は省略する。
コントロール群と比較して、STAT−6siRNA、GATA−3siRNA−1、GATA−3siRNA−2及びIL−5siRNAは有意に鼻茸細胞より産生されるIL−5、及び/又は、RANTESを抑制した(図2〜図5)。
STAT−6siRNAによって、IL−5の産生量は35pg/mlまで抑制された(no siRNA群は289pg/ml、control siRNA群は311pg/mlであった。)。以上の結果は図2に示す。STAT−6siRNAによって、RANTESの産生量は82pg/mlまで抑制された(no siRNA群は1350pg/ml、control siRNA群は 1476pg/mlであった。)。以上の結果は図3に示す。
GATA−3siRNA−1によって、IL−5の産生量は29pg/mlまで抑制された。また、GATA−3siRNA−2によって、IL−5の産生量は59pg/mlまで抑制された。(no siRNA試験は272pg/ml、control siRNA試験は282pg/mlであった。)。以上の結果は図4に示す。
IL−5siRNAによって、IL−5の産生量は56pg/mlまで抑制された。(no siRNA群は312pg/ml、control siRNA試験は336pg/mlであった。)。以上の結果は図5に示す。これらの試験は各5連行い、平均値にて各試験結果を記載、並びに図2〜図5を作成した。
OVAを感作、点鼻したマウスにおいて副鼻腔に好酸球浸潤を認めた。STAT−6siRNAの投与は有意に副鼻腔の好酸球浸潤を抑制した(図6)。STAT−6siRNA投与では6個、no siRNAでは26個、control siRNAでは28個であった。これらの試験は各5連行い、平均値にて各試験結果を記載、並びに図6を作成した。
ヘルパーT細胞は大きくTh1とTh2に分類される。好酸球が関与する副鼻腔炎では、Th2も関与している。STAT−6はTh2細胞の分化に必須の転写因子と考えられている。実際STAT−6欠損マウスでは,Th2細胞への分化が抑制され,好酸球浸潤がほとんどみられない。
IL−5は好酸球の分化、増殖、誘導に深く関与するサイトカインである。上述の試験結果より、GATA−3遺伝子の発現を抑えるsiRNA、及びIL−5遺伝子の発現を抑えるsiRNAもSTAT−6遺伝子の発現を抑えるsiRNA同様に副鼻腔の好酸球浸潤を抑制すると考えられる。また、これらのsiRNAが好酸球性中耳炎の治療に有用であることが合理的に推測される。RANTES(regulated upon activation normal Tcell expressed and secreted)も好酸球遊走に関与するケモカインであるが、上述の試験結果よりSTAT‐6遺伝子の発現を抑えるsiRNAは副鼻腔の好酸球浸潤を抑制すると考えられる。
本発明により、有用な好酸球性副鼻腔炎、好酸球性中耳炎の治療剤、遺伝子治療剤、並びに、好酸球の浸潤抑制方法が提供される。

Claims (6)

  1. STAT−6遺伝子の発現を抑えるsiRNA、GATA−3遺伝子の発現を抑えるsiRNA及び/又はIL−5遺伝子の発現を抑えるsiRNAを有効成分として含有し、
    好酸球性副鼻腔炎及び/又は好酸球性中耳炎の治療に用いることを特徴とする治療剤。
  2. 前記有効成分であるSTAT−6遺伝子の発現を抑えるsiRNAが、配列番号1又は配列番号14に記載の鎖を有するsiRNAと80%以上の相同性があるsiRNAであることを特徴する請求項1に記載の治療剤。
  3. 前記有効成分であるGATA−3遺伝子の発現を抑えるsiRNAが、配列番号2、配列番号3、配列番号15、配列番号16、配列番号17又は配列番号18に記載の鎖を有するsiRNAと80%以上の相同性があるsiRNAであることを特徴する請求項1又は請求項2に記載の治療剤。
  4. 前記有効成分であるIL−5遺伝子の発現を抑えるsiRNAが、配列番号4に記載の鎖を有するsiRNAと80%以上の相同性があるsiRNAであることを特徴する請求項1〜請求項3のいずれかに記載の治療剤。
  5. 請求項1〜請求項4のいずれかに記載のsiRNAを形成しうる遺伝子を組み込んだベクターを有効成分として含有し、
    好酸球性副鼻腔炎及び/又は好酸球性中耳炎の治療に用いることを特徴とする遺伝子治療剤。
  6. STAT−6遺伝子、GATA−3遺伝子及び/又はIL−5遺伝子をノックダウンすることを特徴とする非治療的な好酸球の浸潤抑制方法。
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