JP2013066881A - 膜蒸留太陽光造水システム - Google Patents

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Abstract

【課題】簡易な構造からなる簡易な設備で、動力源としての電源や煩雑な操作も必要とせずに、海水等の原水(処理水)から浄水を回収でき、従って、設置コストも低く、かつ運転コストも低い膜蒸留太陽光造水システムを提供する。
【解決手段】水の出口が水の入口より上方となるように傾いて設けられた水路を有しかつ太陽光を受光して前記水路中の水を加熱する太陽光受光部、水蒸気のみを透過し水及び塩類を透過しない疎水性多孔質膜により隔てられた温水貯留部と気相部を有する蒸発部、前記温水貯留部の下部と前記水の入口を連結する循環水路、及び、前記水の入口に原水を供給する原水供給路を有し、前記温水貯留部は、その上部で前記水の出口と連結しており、前記気相部には、前記疎水性多孔質膜に対向して冷却板が設けられていることを特徴とする膜蒸留太陽光造水システム。
【選択図】図3

Description

本発明は、膜蒸留により、海水や汚水等から飲用等に利用が可能な浄水を取り出すための膜蒸留太陽光造水システムに関する。
近年、生活に必要な水資源を確保する必要性から、海水、使用済みの生活排水、人体に毒性のある成分を含む井戸水等、飲用等に適さない水(以下、「原水」又は「処理水」と言うことがある。)から、利用可能な状態の水(浄水、淡水)を分離回収するための造水技術が検討されている。この造水技術として、水蒸気は透過するが塩分や水は透過しない疎水性多孔質膜の一方の面に加熱した原水を接触させ、膜を透過してくる水蒸気を他方の面側で凝結・回収する膜蒸留法が知られている。例えば、特許文献1には、「海水または黒みを帯びた水または工程水から脱塩水を生じさせる目的である、液体を膜蒸留で浄化する方法」が記載されている。
膜蒸留法は、水から発生させた水蒸気を凝結して回収する蒸発法の1種であるが、設備をコンパクトにすることが比較的容易であり、蒸発法の問題として指摘されている設備の大型化の問題は緩和されている。さらに、膜蒸留法は、他の蒸発法に比して比較的低温の水、例えば80℃以下の水でも処理できるので、熱源の問題もクリアしやすく太陽光の利用も容易である。
そこで、近年、太陽光のエネルギーを熱に変換して温水を製造する太陽熱温水装置と、膜蒸留法とを組合せた太陽光造水システム、造水方法の検討が盛んに行われている。例えば、特許文献2には、熱源として太陽光を利用した膜蒸留による海水浄水化装置が記載されている。この海水浄水化装置は、「上部の海水より塩分濃度の高い海水を下部に溜めると共に太陽光を受けて下部の海水の温度を上昇させて温海水とする蓄熱池と、疎水性膜を壁面として前記蓄熱池の温海水を流す温水通路、及び温海水より温度の低い冷海水を冷却水として流す冷水通路を内蔵し、且つ、温水通路内から疎水性膜を通過した水蒸気を冷水通路内の冷海水で冷却する膜モジュール(蒸発部)」を含むものである。特許文献2には、膜モジュールに送り込む温海水をさらに加熱するための、太陽エネルギーによる集熱器も記載されている。
特表2003−519001号公報(請求項1) 特開平9−1143号公報(請求項1、図1)
太陽熱温水装置と膜蒸留法とを組合せた従来の太陽光造水システムでは、蒸発部への温水の供給は、ポンプ等の水循環装置を使用して水を循環させて行っていた。又は、高所に置いた原水のタンクから、重力により、太陽光の受光部(水の加熱部)を通して水を一方向に流して蒸発部へ温水を供給するとともに、蒸発部から流出する冷えた原水はそのまま排出する方法により行っていた。
例えば、特許文献2に記載のシステムでは、蓄熱池からポンプを使用して温海水を膜モジュールに供給している。従って、ポンプの設置費用等を要し造水システムの価格を押し上げている。又、ポンプを使わずに、重力による高所から低所への流れを利用した場合には、太陽光のエネルギー量と受光部を水が流れる量を連動して制御することは難しく、膜蒸留に送られる水の温度を一定に保つことは困難であった。従って、膜蒸留に適した温度条件で蒸発部に温水を供給するのが困難な上に、蒸気の発生が不十分のまま、すなわち冷え切らない高温のままで温水が蒸発部から排出されてしまうなど、太陽光のエネルギーを効率的に使用することができない問題点があった。
一方、海水や汚染された井戸水等からの膜蒸留による淡水の回収は、特に途上国で潜在需要が多いと考えられるが、途上国では、設置が簡単、安価であって、設置後の操作や保守も容易な造水システムが求められている。しかし、前記のように、従来の膜蒸留を利用した太陽光造水システムは、その価格やその効率等の点でこれらの要望を満たすものではなかった。又、その運転や保守に煩雑な操作を要する問題もあった。そこで、膜蒸留を利用した効率的な太陽光造水システムであって、より低コストで製造可能であり、設置場所等の制限も小さく、さらに簡易な操作で使用や保守が可能である膜蒸留太陽光造水システムの開発が望まれていた。
本発明は、従来の膜蒸留太陽光造水システムの前記の問題を解決することを目的とし、簡易な構造からなる簡易な設備で、動力源としての電源や煩雑な操作も必要とせずに、太陽光エネルギーを効率的に使用して海水等の原水から浄水を回収でき、従って設置コストも低く、かつ運転コストも低い膜蒸留太陽光造水システムを提供することを課題とする。
本発明者らは、前記のような従来技術の問題点について鋭意検討をした結果、太陽熱受光部で加熱された温水が水路を上昇する性質を利用することにより、ポンプ等の温水循環装置を設けなくても、疎水性多孔質膜を有する蒸発部に温水を供給できるとともに、蒸発部において気化熱で冷やされた水を太陽熱受光部の底部に戻すことができること、すなわち、自然熱対流を利用した無電源・ポンプレスの膜蒸留が可能であることを見出した。その結果、簡易な構造からなる簡易な設備で、動力源としての電源や煩雑な操作も必要とせずに、海水等の原水から浄水を回収できる膜蒸留太陽光造水システムが得られることを見出し、本発明を完成した。
請求項1に記載の発明は、水の出口が水の入口より上方となるように傾いて設けられた水路を有しかつ太陽光を受光して前記水路中の水を加熱する太陽光受光部、水蒸気のみを透過し水及び塩類を透過しない疎水性多孔質膜及び前記疎水性多孔質膜により隔てられた温水貯留部(液相部)と気相部を有する蒸発部、前記温水貯留部の下部と前記水の入口を連結する循環水路、並びに、前記水の入口に原水を供給する原水供給路を有し、前記水の出口は、前記温水貯留部の上部と連結しており、前記気相部には、前記疎水性多孔質膜に対向して冷却板が設けられていることを特徴とする膜蒸留太陽光造水システムである。
太陽光受光部は、水が通過する水路を有するとともに、太陽光を受光して熱に変える機能を有し、この熱により水路中の水を加熱する。水路は、水の出口が水の入口より上方となるように傾いて設けられている。その結果、太陽光による加熱された水はこの水路を上昇し水の出口方向に流れる。
水の出口は、蒸発部の温水貯留部(液相部)の上部と連結しているので、加熱された水(温水)は、温水貯留部に自然に集まるようになっている。温水貯留部と気相部は疎水性多孔質膜により隔てられているので、温水貯留部の温水より生じた水蒸気は疎水性多孔質膜を通過して気相部に向けて移動する。
気相部には、疎水性多孔質膜に対向して冷却板が設けられている。冷却板とは、水蒸気を凝結できる温度まで冷やされている板を言う。気相部に移動した水蒸気は、冷却板により冷やされて凝結する。凝結により生じた水は、塩類や不純物を含まない浄水であり、気相部の下方に移動して、気相部の下部より取り出され、飲用等の利用に供せられる。すなわち、本発明の膜蒸留太陽光造水システムでは、気相部側に面している疎水性多孔質膜の表面及び冷却板の表面が、それぞれ蒸発面及び凝結面となっている。
凝結により生じた水が、気相部の下方に円滑に移動し、外部への取り出しを容易にするため、又、後述の原水タンクのような冷却槽を使用する場合はその構造を単純にするために、冷却板は鉛直に設けられることが好ましい。鉛直に設けるとは、水平面に対して90°又はそれに近い角度で設けることを意味する。疎水性多孔質膜は冷却板に対向しているので、冷却板が鉛直に設けられる場合は疎水性多孔質膜も鉛直に設けられることが好ましい。
温水貯留部の水は、水蒸気の発生に伴い気化熱を奪われて冷えるので、温水貯留部の下方に移動する。温水貯留部の下部は、前記水の入口と循環水路により連結されているので、冷えた水は、循環水路を通り、水路の水の入口(太陽光受光部の底部)に戻る。すなわち、この膜蒸留太陽光造水システムでは、太陽光による加熱及び疎水性多孔質膜における気化熱による冷却の2つの熱移動を利用した熱対流システムにより、温水の供給、水の循環を行っており、無電源・ポンプレスで駆動することができる。
請求項2に記載の発明は、前記水路と前記温水貯留部との連結部分が、温水貯留部の高さの中間より上部にあり、かつ前記循環水路と前記温水貯留部との連結部分は、温水貯留部の高さの中間より下部にあることを特徴とする請求項1に記載の膜蒸留太陽光造水システムである。
前記のように温水貯留部では、その上部に温水が供給され、温水は気化熱により冷やされて下部より流出する。そこで、太陽光受光部の水路と温水貯留部との連結部分すなわち温水貯留部へ温水が供給される部分は、温水貯留部の全体高さの半分(中間)より上にあり、一方、循環水路と温水貯留部との連結部分すなわち温水貯留部より水が流出する部分は、温水貯留部の全体高さの半分(中間)より下にあることが好ましい。より好ましくは、温水が供給される部分は温水貯留部の最上部に設けられ、温水が流出する部分は温水貯留部の最下部に設けられる場合であり、前記の熱対流をより効率的に行うことができる。
請求項3に記載の発明は、前記循環水路を、前記太陽光受光部の水路の受光側の裏背面に接して設けることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の膜蒸留太陽光造水システムである。
本発明の膜蒸留太陽光造水システムでは、太陽光受光部の水路で熱せられた温水(原水)が水路を移動する際に、周囲への放熱が少ないほどエネルギー効率が高い。従って、エネルギー効率の向上のために、水路の保温、断熱による放熱の低減が望まれる。水路の太陽光受光面側は、後述するように、空気層を隔ててガラスやアクリル樹脂等の透明のカバーで覆った温室構造であり保温、断熱されている。そこで、水路の受光側の裏背面(すなわち受光面とは反対側の面)も保温、断熱して放熱をより低減することが好ましいが、前記循環水路を、前記裏背面に接して設けることにより、水路からの放熱を低減することができる。
すなわち、循環水路を降下していく循環水は、液相部通過中の水蒸気の放散による気化熱により多少冷えているものの、スタート時を除けば周囲の大気よりも十分温かい。従って循環水路を水路と接して設けることにより太陽光受光部の水路を保温する効果が得られる。又、このようにすれば、太陽光受光部の水路から裏背面に放散される熱を循環水に再吸収させることが可能となる。その結果、循環水を太陽光受光部に入る前に予熱することができるので、液相部へ入る水の温度を上げ、浄水の生成速度を上げることができ、非常に合理的になる。
循環水路を、太陽光受光部の水路の裏背面に接して設けるとは、前記裏背面と循環水路間に、外気等の水路中の温水の熱が放散されるものが存在しないように設けることを意味する。例えば、循環水路と太陽光受光部の水路の裏背面を隔壁で覆い、その隔壁に循環水路を接して設ける方法を挙げることができる。
請求項4に記載の発明は、前記原水供給路と連結し、前記冷却板をその一側面とする原水タンクを有することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の膜蒸留太陽光造水システムである。
前記冷却板は、気相部の水蒸気を凝結できる温度に冷却する必要がある。冷却板を冷却する方法としては、例えば、冷却板を冷媒と接する方法等を挙げることができる。中でも、冷却板を冷却水槽の一側面とし冷却水槽中の冷却水により冷却する方法は、冷却効率が優れるので好ましい。
特に、処理の対象となる原水のタンク(原水タンク)を冷却水槽として利用する方法、すなわち、冷却板をその一側面とする原水タンクを設け、原水を冷却水として利用する方法によれば、冷却効率を高くできるだけでなく、他の冷却のための設備を設ける必要がなく簡易な設備のシステムとすることができるので好ましい。
なお、冷却板は凝結熱により熱せられ、タンク中の原水も熱せられて温度が上昇する。そこで、原水タンク内の原水の温度を低く保つためには、浄水の生成により生じる凝結熱に対応する充分な熱容量となる量の原水をタンク中に貯留することが好ましい。
本発明の膜蒸留太陽光造水システムでは、原水は、水路の水の入口と連結している原水供給路により、水の入口に供給される。従って、前記冷却板をその一側面に有する原水タンクは、原水供給路に連結している。
請求項5に記載の発明は、前記原水供給路が、前記原水タンクの上部と連結していることを特徴とする請求項4に記載の膜蒸留太陽光造水システムである。
前記のように、冷却板は凝結熱により熱せられ、この凝結熱は凝結面の裏面に伝達されるのでタンク中の原水も熱せられて温度が上昇する。このとき熱せられた原水は熱対流によりタンクの上方に移動するので、タンクの上部を原水供給路と連結すれば、この原水供給路を通してより温度の高い原水を水の入口に供給することができる。すると、温水貯留部(蒸発部の液相部)に、より温度の高い温水を供給することができ、浄水の生成速度が向上するので好ましい。
請求項6に記載の発明は、前記冷却板及び疎水性多孔質膜が鉛直に設けられており、かつ前記疎水性多孔質膜が、前記原水タンクの下部に相当する高さに設けられていることを特徴とする請求項5に記載の膜蒸留太陽光造水システムである。
請求項5に記載の発明において、凝結熱により熱せられた原水が、熱対流によりタンクの上方に移動して原水供給路(さらには水路の入口)に供給されれば、タンクの下部は比較的温度の低い水となる。そこで、疎水性多孔質膜を、原水タンクの下部に相当する高さに設ければ、冷却板の疎水性多孔質膜に対向する部分は、比較的温度の低い水により冷却される部分でありその温度は低いので、凝結速度が向上し浄水の生成速度が向上する。従って、冷却板及び疎水性多孔質膜を鉛直に設け、かつ疎水性多孔質膜を原水タンクの下部に設けることが好ましい。具体的には、原水タンクの全体の高さの半分より下部に設けることが好ましい。又、この効果が特に大きくするためには、原水を原水タンクの下方より供給することが好ましく、特に原水タンクの最下部より原水を供給することが好ましい。
請求項7に記載の発明は、前記冷却板が、前記疎水性多孔膜と対向している面の裏面が外気と接するように設けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の膜蒸留太陽光造水システムである。
冷却板を冷却する方法としては、冷却板を温度の低い外気と接する方法も挙げることができる。前記のように、冷却効率の点では、冷却水により冷却板を冷却する方法が好ましい。しかし、水蒸気の発生の効率すなわち蒸発効率を上げるためには、前記冷却板を外気により冷却する方法が好ましい場合もある。
図7は水温と蒸気圧との関係を示すグラフであるが、図7に示すように、50〜60℃辺りを越えて水温が高くなると蒸気圧は加速度的に上昇する。従って、蒸発効率を高くするためには原水の温度を十分に高くすること、具体的には蒸発が起こる温水貯留部の原水温を、60℃以上望ましくは80℃以上にすることが望まれる。冷却板を外気により冷却する構造のシステムは、装置の表面積を小さくしやすく装置周囲の外気への放熱量を低減しやすい場合もあり、その結果原水の温度を高くして蒸発効率を向上できる場合もある。なお、90℃を超えると気泡が発生しやすくなり気泡により蒸発効率が低下する場合があるので、温水貯留部の原水温は90℃以下が望ましい。
太陽光から冷却板に至る熱の流れを効率的にするためには、蒸発と冷却(凝結)のバランスを取ることが重要である。従って、周囲の気温、太陽光の量、周囲への熱ロス等環境および設備構造の条件に応じて、蒸発が起こる温水貯留部の原水温が上記の範囲内になるように、冷却板の最適な冷却方法を選択することが望ましい。
請求項8に記載の発明は、前記冷却板の、前記疎水性多孔膜と対向している面とは裏面に、外気との接触面積増大手段が設けられていることを特徴とする請求項7に記載の膜蒸留太陽光造水システムである。外気との接触面積増大手段とは、冷却板の外気と接触する表面積を増大させる手段を言う。例えば、凹凸構造、突起構造、多数の羽からなるフィン構造、外気と繋がる空腔からなる多孔構造を挙げることができ、又これらの構造を組合せた構造を挙げることもできる。
外気との接触面積増大手段を設けることにより、周囲の外気への熱伝導が促進され、より冷却しやすい構造となり冷却効率を向上させることができる。すなわち、冷却板を冷却水により冷却する方法よりは劣るものの、冷却板の裏面が平面であって外気との接触面積増大手段を設けていない場合より、優れた冷却効率を得ることができる。
請求項9に記載の発明は、前記冷却板と前記疎水性多孔質膜間の距離が3mm以上、20mm以下であることを特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載の膜蒸留太陽光造水システムである。
図4のグラフに示されるように、蒸発面と凝結面間の距離(気相部の厚さ)、すなわち前記冷却板と前記疎水性多孔質膜間の距離が大きくなると造水速度が急激に低下する。そこで、造水速度を確保するために、この距離を20mm以下とすることが好ましい。一方、蒸発面と凝結面間の距離が小さ過ぎると、凝結水が両面間に挟まれて落下せずに水層となり伝熱ロスを招く場合がある。又、凝結水が蒸発面と接するので蒸発面による凝結水(浄水)の汚染が生じる場合がある。特に両面間の距離が1mm未満になるとこの傾向が顕著になるが、冷却面の表面性状にもよるが凝結水が垂れ落ちるまでに水滴が厚み3mm程度になる場合もあるため、この距離は3mm以上が好ましい。さらに好ましくは5mm以上である。
請求項10に記載の発明は、前記冷却板と前記疎水性多孔質膜間にスペーサーが設けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載の膜蒸留太陽光造水システムである。
疎水性多孔質膜は水蒸気の透過を妨げないように薄い膜厚で高気孔率の膜であることが好ましい。このような膜は非常に柔軟である。一方、温水貯留部では、気相部の空気が温水貯留部に逆流しないように原水を陽圧の状態で維持する必要があり、そのため疎水性多孔質膜は冷却板方向に水圧で押されており、冷却板と柔軟な疎水性多孔質膜との間隔を所定の厚さに保つことが困難な場合がある。そこで、疎水性多孔質膜と冷却板にスペーサーを設け両者の間隔を所定の厚さに保つことが好ましい。
請求項11に記載の発明は、前記水路が、表面を黒色とした複数の管よりなることを特徴とする請求項1ないし請求項10のいずれか1項に記載の膜蒸留太陽光造水システムである。太陽光受光部の水路の形態は、水が循環できる中空部を有する限り特に限定されないが、表面を黒色とした複数の管より水路を形成することにより、太陽光による水の加熱、水の循環を円滑に行うことができるので好ましい。管を形成する材質としては、金属、プラスチックが挙げられる。金属としては、機械的強度及び耐腐食性に優れた金属、例えばステンレスが好ましい。
請求項12に記載の発明は、前記冷却板が、金属板であることを特徴とする請求項1ないし請求項11のいずれか1項に記載の膜蒸留太陽光造水システムである。冷却板としては、熱伝導に優れた材質が好ましく用いられる。従って、金属板が好ましく用いられる。金属板としては、耐腐食性に優れ機械的強度も優れるステンレスが好ましく用いられる。
本発明の膜蒸留太陽光造水システムは、ポンプレスの簡易な構造からなる簡易な設備である。又、本発明の太陽光造水システムによれば、動力源としての電源や煩雑な操作も必要とせずに海水等の原水(処理水)から浄水を回収でき、かつ運転コストも低い。
本発明の太陽光造水システムの一例を模式的に示す平面図である。 本発明の太陽光造水システムの一例を模式的に示す断面図である。 本発明の太陽光造水システムの一例を示す一部切り欠き斜視図である。 蒸発面−凝結面間距離と造水速度の関係を示すグラフである。 本発明の太陽光造水システムの他の一例を模式的に示す断面図である。 本発明の太陽光造水システムの他の一例を模式的に示す断面図である。 温度に対する水の水蒸気圧を示すグラフである。
次に、本発明を実施するための形態を具体的に説明する。なお、本発明はこの形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を損なわない限り、他の形態へ変更することができる。
蒸発部に設けられる疎水性多孔質膜は、水蒸気を透過させるための微細な貫通孔(気孔)を有する膜である。一方、この膜には、水や塩類を透過させない性質が必要であるので、水をはじく疎水性の材質からなりかつ前記気孔の径は水を透過させない大きさである。すなわち、疎水性の材質の種類及び気孔の孔径は、気体である水蒸気を透過し、液体である原水を透過しない範囲で選択される。水蒸気の透過量(浄水の生成速度)を上げるためには、孔径は大きい方が好ましいが、孔径が大きいと原水の透過(漏出)が生じやすくなるので、両者を考慮して最適な孔径が選択される。
又、水蒸気の透過しやすさの点からは膜の体積に占める気孔の体積の割合、すなわち気孔率は高い方が好ましく又膜も薄い方が好ましい。しかし、膜には、操業中に原水から受ける圧力に十分耐える機械的強度が求められるので、両者を考慮して最適な気孔率や膜の厚みが選択される。
疎水性多孔質膜の材質としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、クロロトリフルオエチレン・エチレン共重合体(ECTFE)、及びその混合物又は変性樹脂等の疎水性の樹脂を挙げることができる。
中でも、PTFEやPVDF(溶媒相転移法)は容易に多孔質膜を得られる点で、本発明の太陽光造水システムを構成する疎水性多孔質膜の主材料として適している。特に、PTFEは、疎水性、機械的強度、化学的耐久性(耐薬品性)に優れるとともに、PTFE微粒子の融着体を延伸する方法(延伸法)により、容易に均一孔径を有するPTFEの延伸多孔質膜を製造することができるので好適であり、この延伸法により製造されたPTFEの延伸膜が疎水性多孔質膜として好適に用いられる。
本発明の太陽光造水システムを構成する疎水性多孔質膜として好適であるPTFEからなる延伸多孔質体は、例えば次にようにして得ることができる。
PTFEファインパウダーに灯油を20〜30重量部助剤として加え、容器を回転させる等の方法によりなるべく剪断力を加えないようにして混合し、ラム押出によってシート状あるいは中空糸状など所望の形状に成形する。この押出時の加圧、変形の際に加わる剪断力によってファインパウダーの粒子の表面で分子の絡みによる結合が生まれる。
次に該押出品を60〜80℃の熱風循環炉などで助剤が除去されるまで乾燥させ、その後加熱しながら延伸する。このとき、押出で生じたPTFE微粒子間の結合が延伸方向に張力を受けて、PTFE微粒子の結晶から繊維が引き出される。延伸後のPTFE成形品はこの引き出された繊維とその隙間の空間からなる多孔質構造となる。その後、PTFEの融点以上に加熱することで繊維の一部が融けて、延伸と垂直方向に接着して塊状となった結節という構造が生まれ、これが冷えて固定されることで、繊維と結節から構成され全体として力学的強度を持ったPTFE多孔質体(PTFEの延伸膜)となる。
PTFEからなる疎水性多孔質膜の孔径としては、実質的に2〜3μmが上限と考えられる。10μmの孔径でも水をはじき常圧では水を通さないが、圧がかかると簡単に漏れる。一方、気孔率は高いほど浄水の生成速度が優れるが、延伸法による多孔質体の場合、原理的に、延伸率が高ければ気孔率が上がるが同時に孔径も大きくなる。従って、一般に孔径が小さいと気孔率も小さくなり、耐水圧が高いものほど水の生成速度は低くなる。
なお、原水から浄水への汚染を防止する観点からは、孔径は0.2μm以下とすることが望ましい。0.2μmは一般に液体の滅菌目的に使用されるフィルターの孔径であり、本発明の膜蒸留では水を含め液体が膜を透過することは原理的には無いが、万一、膜の疎水性が低下して液体の水が膜を通過する状況となった場合でも、孔径が0.2μmであれば雑菌が原水から浄水に移動することが防止できる。従って、浄水を飲料水として使用することを想定している場合は、孔径は0.2μm以下とすることが好適である。
前記のように気相部では、気相部側に面している疎水性多孔質膜の表面及び冷却板の表面が、それぞれ蒸発面及び凝結面となっている。この気相部は、蒸発面より放出した水蒸気が、凝結面で凝結せずに外部に逃げないように、気密状態に保たれていることが好ましい。
図4は、温水温度を80℃、冷却板温度を5℃とし、疎水性多孔質膜が孔径0.45μmの延伸PTFE膜である場合の蒸発面−凝結面間距離と造水速度の関係を示すグラフである。このグラフが示すように、蒸発面と凝結面間の距離(気相部の厚さ)が大きくなると拡散律速となり造水速度が急激に低下する。このグラフより、蒸発面と凝結面間の距離は数cm以下が好ましく、より好ましくは20mm以下であることが示されている。
本発明の太陽光造水システムにより処理される原水(処理水)としては、ミネラル分や塩分、又はヒ素等の重金属、藻類や大腸菌等のバクテリア、ウィルス等の人体に不要及び有害な成分、を含み飲用や生活用水に適さないような、井戸や河川、海からの取水、又は生活排水等を挙げることができる。例えば、本発明の太陽光造水システムは、海水浄水化やバングラディッシュにおけるヒ素汚染井戸水やエジプトの沙漠における塩分を含む井戸水の浄化・飲用水化等に適用できる。
次に、本発明の膜蒸留太陽光造水システムを、その一例を示す図により説明する。ただし、本発明はこの一例に限定されるものではない。
図1は、本発明の太陽光造水システムの一例を模式的に示す平面図である。図1で表されるシステムは、請求項4の太陽光造水システムの一例である。又、図2は、図1と同じ太陽光造水システムを模式的に示す図であり、図1における実線矢印側より見た断面図である。図3は、図1と同じ太陽光造水システムを模式的に示す斜視図であり、その内部を示すために太陽光受光部の左半分を切取った部分切欠き図である。
図1〜3中、1は水路を示し、(図2、3中の)2は、水路1の保温、保護のために設けられる透明なカバーであり、この例ではアクリル樹脂板である。3は処理水貯留部であり、水路1、アクリル樹脂板2及び処理水貯留部3により、太陽光受光部が形成されている。図1に示されているように、この例では、15本の管により水路1が形成されており、それぞれの管は、表面が黒色の金属製の管である。
4は温水貯留部(液相部)であり、5は疎水性多孔質膜であり、6は気相部であり、7は冷却板である。温水貯留部4、疎水性多孔質膜5、気相部6及び冷却板7により、蒸発部が形成されている。図1〜3に示されているように、水路1の一端は処理水貯留部3に連結し、他端は温水貯留部4の上部に連結しており、それぞれ水の入口1a、水の出口1bとなっている。
図1又は2に示されているように、蒸発部は、疎水性多孔質膜5により温水貯留部4及び気相部6に区切られている。又、疎水性多孔質膜5および冷却板7は鉛直方向に設けられている。図1〜3の例では、疎水性多孔質膜5は延伸PTFE膜よりなり、冷却板7はステンレス板よりなる。
8は循環水路であり、図2又は3に示されているように、温水貯留部4の下部(底部)と処理水貯留部3に連結している。循環水路8は、図1中では破線で表される部分であり、図1に示されているように、この例では4本の循環水路8が設けられている。
9は原水タンクである。10は原水供給路である。図1〜3に示されているように、原水供給路10の一端は原水タンク9に連結し、他端は処理水貯留部3に連結しており、それぞれ原水供給口10a、原水流入口10bとなっている。図1又は2に示されているように、原水タンク9の一側面は、冷却板7である。又、図2又は3に示されているように、温水貯留部4は原水タンク9の下部(全体の高さの半分より下)に設けられている。
図2中の11は、生成した浄水を示す。又、図2、3中の12は、浄水タンクを示す。
次に、この膜蒸留太陽光造水システムの使用について説明する。
処理対象の原水は、原水供給路10から原水流入口10bを通り、処理水貯留部3に流入する。処理水貯留部3は、水路1と連結しているので、原水は水の入口1aから太陽光受光部の水路1に流入する。水路1の表面は黒色であり又水路1の表面はアクリル樹脂板2によりカバーされ保温されているので、太陽光を受光して温度が上昇し水路1中の水(原水)が加熱される。
図2、3に示されているように、水路1は、水の入口1aより水の出口1bが上方になるように傾いて設けられている。そのため、加熱された水は水路1中を上方に移動し、水の出口1bから温水貯留部4に流入する。水路1の傾きが不十分であると、水の上方への移動が円滑に行われなくなるので、水の移動が円滑に行われるように十分な傾きとする必要がある。又、水路1の傾きは、太陽光の受光量が最大となるようにすることが好ましい。従って、水の移動しやすさと太陽光の受光量を考慮して最適な傾きが選択される。
温水貯留部4は疎水性多孔質膜5に接しているので、水路1中で太陽光により加熱され温水貯留部4に流入した温水から、水蒸気が、疎水性多孔質膜5の微細孔を通して気相部6内に発生する。又水蒸気の発生に伴う気化熱により温水は冷やされ、温水貯留部4の下部に移動し、さらに循環水路8を通り、処理水貯留部3に流入する。このように、太陽光による加熱、水蒸気の発生に伴う気化熱により、自然に熱対流が起こり、ポンプ等の装置を設けなくても、太陽光により加熱された温水を温水貯留部4に供給し、水蒸気を気相部6内に発生することができる。
気相部6内に発生した水蒸気は冷却板7により冷やされて凝結し、気相部6の下部に貯留する。浄水11は、このようにして駐留した凝結水である。従って、塩類や不純物を含有しないので飲用等に利用可能な水である。浄水11は、気相部6の底部に設けられた管により気相部6より流出され、浄水タンク12に貯留され、適宜取出されて利用に供せられる。
水蒸気が気相部6内に発生することにより、太陽光受光部と温水貯留部4における熱循環経路では蒸気の発生によって水量が失われる。この水量は、原水タンク9より原水供給路10を通り、処理水貯留部3に原水を供給することにより補われる。
水蒸気は冷却板7により冷やされて凝結するので、冷却板7の表面では凝結熱が発生しその裏側の原水タンク9中の原水が加熱され温度が上昇する。温度が上昇した原水は、熱対流により、原水タンク9の上部に移動する。図2及び3に示されているように、原水タンク9の上部は原水供給路10の一端に連結されているので、温度が上昇した原水は、原水供給口10aより原水供給路10に流入し、原水流入口10bより処理水貯留部3に供給される。その結果、処理水貯留部3に供給される原水の温度を高めることができ、さらには温水貯留部4に流入する温水の温度も高めることができるので、造水速度を向上させることができる。
原水タンク9の上部から温度が上昇した原水が流出するので、原水タンク9の下部の原水の温度は比較的低く保たれる。従って、この部分に接する冷却板7の部分の温度も比較的低く保たれる。図2に示されているように、この例では、温水貯留部4、疎水性多孔質膜5は、原水タンク9の下部に接して設けられている、すなわち冷却板7の比較的温度が低い部分に対向するように設けられているので、凝結速度が大きく、浄水11の生成速度を高めることができる。
なお、前記の例のように、原水タンク9を冷却板の冷却水槽として使用する膜蒸留太陽光造水システム(請求項3のシステム)では、凝結面において発生する凝結熱により、原水タンク9(冷却水槽)内の原水の水温は徐々に上昇し、冷却板7と温水貯留部4との温度差がつきにくくなることがある。そこで、この問題を抑制し原水の熱容量により冷却板の冷却を十分するためには、生成する浄水11よりも十分多量の原水を原水タンク9内に貯水しておくことが望ましい。以下、12Lの造水を行う場合を例として、各部の大きさや容量の規模を計算した結果を示す。
12Lの造水を行う場合、水の凝結熱を500cal/gとすると6Mcalの熱が凝結により発生し、冷却板を通して原水タンクに移動する。造水量の10倍の120Lの浄水が原水タンク内に貯水されている場合は、熱が周囲に逃げないと仮定すれば、6×10cal/(120×10g×1cal/g・℃)=50℃の水温上昇が起こるため、システムの運転開始前の原水の水温を25℃とすると最終的に原水の水温は75℃となる。太陽光受光部で得られる温水の温度は75〜80℃程度なので、最終的に温度差は0になり、凝結が起こらず12L造水したところで造水は停止することになる。したがって、原水タンク内に蓄積した熱が周囲に逃げないと仮定すれば、造水量の数10倍の貯水量が最低限必要となる。
しかし、原水タンク内に移動した熱は、膜蒸留中も周囲の大気に逃げるし、夜間などの時間を利用して装置の周囲から自然冷却で放熱することができる。例えば、太陽光によって原水を加熱する場合、膜蒸留は太陽高度が高い昼間にもっぱら行われる。工場の廃熱利用の場合も同様に工場が主として稼働する昼間に膜蒸留が行われる。従って、膜蒸留を行わない夜間は熱の増加はなく、例えば昼は暑くても夜間は急激に低温になる砂漠等では、原水タンクの水温は自然放熱だけで25℃程度の室温まで冷却が可能である。
図2中の10cは、原水タンク9への原水補給口を表わす。原水タンク9の上部の原水供給口10aより熱せられた原水が太陽光受光部に流出されるが、対応する量の低温の原水を原水補給口10cより原水タンク9に加えることにより、原水タンク9内の温度上昇を低減することができる。すなわち、上記のような放熱や原水タンク9内の温度上昇低減手段を利用することにより、原水タンク9内に貯水する水量を低減することができる。
図5及び図6は、本発明の太陽光造水システムの他の一例を模式的に示す断面図である。図5で表されるシステムは、請求項7の太陽光造水システムの一例である。図6で表されるシステムは、請求項3、請求項8及び請求項10に記載の発明に該当する太陽光造水システムの一例である。
図5及び図6において、図中の符号1〜12は、図1〜3において同じ符号で表される部分と、同様な部分を示す。すなわち、1は水路であり、1a及び1bはそれぞれ水の入口及び出口であり、2はアクリル樹脂板であり、3は処理水貯留部であり、4は温水貯留部(液相部)であり、5は疎水性多孔質膜であり、6は気相部であり、7は冷却板であり、8は循環水路であり、9は原水タンクであり、10は原水供給路であり、10a及び10bはそれぞれ水の原水供給口及び原水流入口であり、11は浄水であり、12は浄水タンクである。
図1〜3で表される太陽光造水システムでは原水タンク9は、冷却板7を槽壁の一部として接して設けられていたが、図5で表される太陽光造水システムでは、原水タンク9は冷却板7と分離して設けられており、冷却板7の疎水性多孔質膜5と相対する面の裏面は周囲の外気と接している。
そのため図5で表される太陽光造水システムでは、水蒸気の凝結により発生する凝結熱はほとんど冷却板7の裏面のみより外気中に放散されるので、凝結熱が原水タンク9内に放散されさらにタンクや配管等から放散される図1〜3の太陽光造水システムと比べ凝結熱が逃げにくい。そのため、太陽光によってシステム全体の原水の平均温度が上がる速度が早く、又温水貯留部4中の水温が高くなりより高温での蒸発をさせることができ、蒸発効率を上げることができる。
原水タンクの1面が冷却板である図1〜3のようなシステムの場合は、原水タンクの温度が低くないと温水との温度差が出ないため、前述のように膜蒸留をスタートする前に夜間等を利用して原水タンクの熱を外気に逃がす必要がある。一方、図5〜6のように外気に熱を直接逃がして造水するシステムの場合は、このような冷却水の放熱は不要であり、システムの保温を十分に行うことで外気に逃げる熱のほぼ全てを冷却板からの凝結熱だけとすることが可能である。又、太陽が沈んだ夜間の間でも結果として水温が熱いままであれば膜蒸留をそのまま続けて運用することが可能である。このシステムでは原水による熱回収はしないが連続運用を考えた場合、総合的には高い造水効率が期待できる。
図6で表される太陽光造水システムでも、図5で表される太陽光造水システムと同様に、原水タンク9は冷却板7と分離して設けられているが、冷却板7の疎水性多孔質膜5と相対する面の裏面は周囲の外気と接しているが、冷却板7の裏面には、請求項8における外気との接触面積増大手段としての冷却フィン14が設けられている。図6で表される太陽光造水システムでも、図5のシステムと同様に、水蒸気の凝結により発生する凝結熱はほとんど冷却板7の裏面のみより外気中に放散されるが、冷却板7の裏面に冷却フィン14が設けられているため、外気との接触面積が大きく図5の太陽光造水システムよりも冷却効率は優れている。
図6中の符号13は、水路1と循環水路8の間を隔てる隔壁であり、隔壁13を隔てて水路1と循環水路8が接している。すなわち、水路1と循環水路8の間の位置関係が、請求項3で規定される関係となっている、
本発明の膜蒸留太陽光造水システムでは、太陽光の熱エネルギーをいかに他に逃がさないで水蒸気を発生するための蒸発熱として利用できるかが効率を上げるために重要である。図6で表される太陽光造水システムでは、水路1と周囲の外気との接触が少なく循環水路8による保温効果があるので、システム内から周囲への熱の放散が少なく、太陽光の熱エネルギーをより効率よく利用可能である。
より具体的には、太陽光受光部の水路1から裏面へ逃げる熱は隔壁13から循環水路8に伝わり大気には逃げない。循環水路8は大気よりも温度が高いため水路1からの熱の移動量は少なくなる上に、伝わった熱は循環水路8を予熱し再利用される。同様に循環水路8の上部においても(外気に接している場合は熱の逃げが生じるが)隔壁13を通してより高温の太陽光受光部の水路1があるためこの方向に熱が移動することもない。すなわち、図6で表されるような請求項3記載の構造は、蓄熱の観点から有効な構造である。
図6の符号15は、冷却板7と疎水性多孔質膜5間(すなわち気相部6内)に設けられたスペーサーを表わす。すなわち、この太陽光造水システムは、請求項10に記載の発明にも該当し、疎水性多孔質膜5と冷却板7の間隔は、このスペーサー15により所定の厚さに保たれている。
スペーサー15としては、単にステンレス等の金属網を両者間に設置したものでも良い。又、面に垂直な方向の耐圧縮性に優れた樹脂製の多孔質体や立体編物(例えば、旭化成せんい社製フュージョン等)を両者間に設置したものも挙げることもできる。樹脂製の多孔質体や立体編物を用いることにより、装置の重量を低減して安価な構造を簡便に構成することが可能となる。
1 水路
1a 水の入口
1b 水の出口
2 アクリル樹脂板
3 処理水貯留部
4 温水貯留部(液相部)
5 疎水性多孔質膜
6 気相部
7 冷却板
8 循環水路
9 原水タンク
10 原水供給路
10a 原水供給口
10b 原水流入口
10c 原水補給口
11 浄水
12 浄水タンク
13 隔壁
14 冷却フィン
15 スペーサー

Claims (12)

  1. 水の出口が水の入口より上方となるように傾いて設けられた水路を有しかつ太陽光を受光して前記水路中の水を加熱する太陽光受光部、水蒸気のみを透過し水及び塩類を透過しない疎水性多孔質膜及び前記疎水性多孔質膜により隔てられた温水貯留部(液相部)と気相部を有する蒸発部、前記温水貯留部の下部と前記水の入口を連結する循環水路、並びに、前記水の入口に原水(処理水)を供給する原水供給路を有し、前記水の出口は、前記温水貯留部の上部と連結しており、前記気相部には、前記疎水性多孔質膜に対向して冷却板が設けられていることを特徴とする膜蒸留太陽光造水システム。
  2. 前記水路と前記温水貯留部との連結部分が、温水貯留部の高さの中間より上部にあり、かつ前記循環水路と前記温水貯留部との連結部分は、温水貯留部の高さの中間より下部にあることを特徴とする請求項1に記載の膜蒸留太陽光造水システム。
  3. 前記循環水路を、前記太陽光受光部の水路の受光側の裏背面に接して設けることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の膜蒸留太陽光造水システム。
  4. 前記原水供給路と連結し、前記冷却板をその一側面とする原水タンクを有することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の膜蒸留太陽光造水システム。
  5. 前記原水供給路が、前記原水タンクの上部と連結していることを特徴とする請求項4に記載の膜蒸留太陽光造水システム。
  6. 前記冷却板及び疎水性多孔質膜が鉛直に設けられており、かつ前記疎水性多孔質膜が、前記原水タンクの下部に相当する高さに設けられていることを特徴とする請求項5に記載の膜蒸留太陽光造水システム。
  7. 前記冷却板が、前記疎水性多孔膜と対向している面の裏面が外気と接するように設けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の膜蒸留太陽光造水システム。
  8. 前記冷却板の、前記疎水性多孔膜と対向している面とは裏面に、外気との接触面積増大手段が設けられていることを特徴とする請求項7に記載の膜蒸留太陽光造水システム。
  9. 前記冷却板と前記疎水性多孔質膜間の距離が3mm以上、20mm以下であることを特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載の膜蒸留太陽光造水システム。
  10. 前記冷却板と前記疎水性多孔質膜間にスペーサーが設けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載の膜蒸留太陽光造水システム。
  11. 前記水路が、表面を黒色とした複数の管よりなることを特徴とする請求項1ないし請求項10のいずれか1項に記載の膜蒸留太陽光造水システム。
  12. 前記冷却板が、金属板であることを特徴とする請求項1ないし請求項11のいずれか1項に記載の膜蒸留太陽光造水システム。
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