JP2013063879A - 低温劣化の抑制された安定化ジルコニア - Google Patents

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Abstract

【課題】LTD現象を有意に抑制する安定化ジルコニアを提供する
【解決手段】分極処理を施すことにより、相対的に正帯電性を有する側の表面で黒色または茶色、相対的に負帯電性を有する側の表面では白色を呈していることを特徴とするような安定化ジルコニアにおいて、低温劣化が有意に抑制される。
【選択図】図2

Description

本発明は、性状改良された無機材料の技術分野に属し、詳細には、低温劣化の抑制された安定化ジルコニアに関する。
安定化ジルコニアとは、ジルコニア(二酸化ジルコニウム;ZrO2)中に安定化剤(酸化イットリウムや酸化カルシウム等の金属酸化物)を添加して形成された化合物である。安定化剤の添加によって、ジルコニアの構造中に酸化物イオン空孔 (Vacancy) が形成され、立方晶および正方晶が室温でも安定または準安定な状態となり、ジルコニアの強度および硬度が向上する。
安定化ジルコニア[特に、イットリア安定化正方晶ジルコニア(Y-TZP; yttria stabilized tetragonal zirconia polycrystal)]は、上記の酸化物イオン空孔を介したO2-イオンの移動が可能であることから、その優れたイオン導電性や強度によって、燃料電池や酸素センサーなどの電気化学デバイス用材料として利用されている。さらに近年では、その生体親和性により、人工股関節などの生体材料としても幅広く利用されており、今後も益々需要が拡大していくことが予想されている。
しかし、安定化ジルコニアを比較的低温(〜400℃)の湿潤環境下で保持した場合においては、亀裂が発生して破壊に至るという現象が生じてしまうことから、安定化ジルコニアの信頼性(特に、埋入期間が数十年という長期にわたるようなインプラント用材料として)は、現在のところ低い。
この現象は低温劣化(LTD;low temperature degradation)と呼ばれており、正方晶(tetragonal)から単斜晶(monoclinic)に相転移することに起因することは分かっているが、そのメカニズムは未だ完全には解明されていない。事実、低温劣化耐性は、原料組成が同じ場合であっても、製造工程や加工工程が異なれば、様々に変化することが知られている。さらに、この現象は孤立不均質領域(安定化剤の欠乏部分や応力残留部分、異常酸化物イオン濃度部分といった局所表面欠陥領域)における複雑な要素による影響も無視できないことが知られており、現状ではLTDに対する汎用的かつ包括的な抑制技術の確立には至っていない。
LTD抑制を目的とする従来技術としては、例えば、所望の形状となるよう研磨や切削などの機械加工処理したジルコニア焼結体から成る生体用部材(安定化ジルコニア材料)に対してアニール処理を行い、表面孤立不均質領域を低減化させる方法(特許文献1参照)や、安定化ジルコニア材料に対して異種元素ドープを行うことによって正方晶相の状態を安定化させる方法(特許文献2,3参照)、安定化ジルコニア材料に対して異種化合物を添加することによってその微構造を制御させる方法(特許文献4参照)などがある。
特開2007−252417号公報 特開2005−97094号公報 特開平9−227228号公報 特開2001−302345号公報
しかし、加工後の安定化ジルコニア部材に対してアニール処理を行う場合には、加工時に発生した単斜晶相のみを対象としていることから、その対象はLTD現象の一部分のみに限定されるという課題がある。また、その他の従来技術についても、安定化ジルコニアに窒素を固溶体の形態で含有させることや複合セラミック材料としての安定化ジルコニアを作成するという、安定化ジルコニア材料の化合物組成または材料組成の変化(変質)を伴う対症的な手法であり、LTD現象を根本的に抑制する安定化ジルコニア材料はこれまでのところ見当らない。
本発明者らは、前記した課題を解決すべく鋭意研究を行なった結果、分極処理を用いることによって、安定化ジルコニア表面の欠陥構造や局所電位を制御することができ、この制御によって、LTD現象を抑制する安定化ジルコニアが得られることを見出した。
かくして、本発明に従えば、分極処理を施されることにより、相対的に正帯電性を有する側の表面では黒色または茶色を呈しており、相対的に負帯電性を有する側の表面では白色を呈しており、白色を呈する負帯電性表面で顕著に低温劣化の抑制された安定化ジルコニアが提供される。
このように本発明に従えば、相対的に負帯電性を有する表面において顕著なLTD抑制を有する安定化ジルコニアが得られる。これは、分極処理により、安定化ジルコニア結晶内の負電荷を持つO2-イオンが陽極側に、正電荷を持つ酸化物イオン空孔(Vacancy)が陰極側に、各々移動することで、O2-イオンと酸化物イオン空孔の電気的中性バランスを乱した帯電表面が形成されるとともに、局在化した過剰な表面O2-イオンや酸化物イオン空孔が、分極処理時に電極より注入された逆電荷(正孔や電子)によって局所的に安定化されるような特定の分極状態に至ることで発現する現象であると考えられる。
このように、本発明によって得られる、従来よりも耐低温劣化の特性に優れる表面を利用することで、特に生体材料(例えば、湿潤環境下で埋入期間が数十年という長期にわたるようなインプラント用材料)として有用な、これまでに無い安定化ジルコニアが提供される。
本発明に係る安定化ジルコニアの熱刺激脱分極電流(TSDC)測定スペクトルの説明図を例示する。 本発明に係る安定化ジルコニアの正帯電性面(Pw面)および負帯電性面(Nw面)の色を対照例(分極処理を行っていない安定化ジルコニア(0面)および相対的に正帯電性を有する側の表面と相対的に負帯電性を有する側の表面が共に黒色を呈している分極安定化ジルコニア(それぞれPs面およびNs面))とともに例示する。 本発明に係る安定化ジルコニアを100℃の水に14日間保持した際の、保持時間に対するPw面およびNw面における単斜晶相転移率変化を対照例(0面、Ps面およびNs面)とともに例示する。 本発明に係る安定化ジルコニアのPw面と、Nw面における可視光線の吸収係数(吸光度)を対照例(Ps面およびNs面)とともに例示する。 本発明に係る安定化ジルコニアの熱刺激脱分極電流(TSDC)スペクトルを対照例(相対的に正帯電性を有する側の表面と相対的に負帯電性を有する側の表面が共に黒色を呈している分極安定化ジルコニア)とともに例示する。 本発明に係る各種安定化ジルコニアの熱刺激脱分極電流(TSDC)スペクトルを示す。
本発明に従えば、分極処理が施されることにより、相対的に正帯電性を有する側の表面では黒色または茶色を呈しており、相対的に負帯電性を有する側の表面では白色を呈していることを特徴とする、白色を呈する負帯電性表面で顕著に耐低温劣化性の向上した安定化ジルコニアが提供される。
安定化ジルコニアにおける低温劣化の度合いを検証する方法については、低温劣化の際に起きる事象として、上述したように正方晶から単斜晶への相転移が知られていることから、定量的には、安定化ジルコニア中の単斜晶相転移率(Monoclinic ratio)(%)を指標値として用いることで判断することが可能である。すなわち、単斜晶相転移率(%)が上昇した場合には、単斜晶への相転移が進んでいる状況であることから、低温劣化が進行していると判断することができる。また、単斜晶相転移率(%)が低い値に抑えられている場合には、単斜晶への相転移が抑制されている状況であることから、低温劣化が抑制されていると判断することができる。単斜晶相転移率(%)は、Torayaの式やGarvie-Nicholsonの式等の公知の算出方法を用いて算出することができ、例えば、以下のTorayaの式より算出した単斜晶相転移率Vm(mol%)を用いることができる。
また、LTDの経時的な進行の度合いは、例えば、以下に示すジョンソン・メール・アブラミの式(Johnson-Mehl-Avrami Equation)から得られる固相変態の変態率によって確認することも可能である。
(上記式中、fは固相変態の変態率を示し、kおよびnは各相変態固有の時間に依存しない定数を示す)
本発明に係る安定化ジルコニアは、分光学的に定量測定して得られる色調の観点からは例えば、相対的に正帯電性を有する側の表面と、相対的に負帯電性を有する側の表面との600〜800 nmの可視光線の吸収係数(吸光度)の差が、0.1以上となっていることを特徴とする。
本発明に係る安定化ジルコニアは、上記とは別に、分極緩和挙動の観点において、熱刺激脱分極電流(TSDC;Thermally Stimulated Depolarization Current)測定またはこれに類する熱的分極緩和電流測定によって得られる熱刺激放電電流スペクトルが、図1に示すように、相対的に低温側の急峻なピーク群(P)と、当該ピークよりも高温側に現れるブロードなピーク群(P)を含み、Pの最大強度ピーク(h)に対するPの最大強度ピーク(h)の比率(h/h)が0以上3/4以下であり、かつ、ピーク強度3/4×hを有するスペクトルの幅(w)とピーク強度3/4×hを有するスペクトルの幅(w)との比率(w/w)が2以上となっていることを特徴とする。ここで、熱刺激脱分極電流(TSDC)測定法とは、電極を配した分極試料を短絡回路に接続することで電極内に十分な静電誘導を誘起した後、これを昇温させることにより、分極の熱緩和に伴って外部回路に流れる電流を計測する方法である。この方法により測定対象物の種々の緩和過程を詳細に解析することができる。また、これに類する熱的分極緩和電流測定法とは、当該TSDC測定法のように、脱分極の状態を電流値の変化として観測するような広く一般に使用されている測定法を意味する。この測定は、例えば、昇温速度を5℃/分と設定して行うことができる。
このように、本発明に係る安定化ジルコニアの熱刺激放電電流スペクトルが、相対的に低温側の急峻なピーク群(P)と、当該ピークよりも高温側に現れるブロードなピーク群(P)から構成されるという特徴的なピーク形状を有するのは、黒色または茶色を呈している相対的に正帯電性を有する側の表面において、局在化した過剰なO2-イオンの近傍に電極より注入された逆電荷(電子)が束縛され、また、白色を呈している相対的に負帯電性を有する側の表面においては、局在化した過剰な酸化物イオン空孔の近傍に電極より注入された逆電荷(正孔)が束縛されていることで、O2-イオンや酸化物イオン空孔の固体内拡散を伴う熱的分極緩和に要するエネルギーレベルが複雑に分散化しているためであると推察される。
上記の色調および緩和挙動のいずれの観点からであっても、上記に示した特性を有する本発明に係る安定化ジルコニアは、白色を呈する負帯電性表面で顕著な耐低温劣化特性を有していることが加速劣化試験後の単斜晶相転移率算出結果より示されている(後述の実施例参照)。
本発明における分極処理には、基本的には、従来より知られた各種の手法が適用でき、例えば、直流電界印加、放電処理(エレクトロエレクトレット化処理)、電磁波もしくは電子線照射(ラジオエレクトレット化処理)、またはイオン注入によって行われることができる。このうち、本発明では、取扱いの容易性から、直流電界印加によって行なわれることが好ましい。その電極としては非接触または接触電極を用いることができ、例えば、金属電極、カーボン電極、各種無機化合物電極、有機伝導体電極、または液体電極を用いることができる。直流電界印加の際には、分極処理を円滑に進めるためにも、加熱を同時に行なうことが好ましい。その加熱温度は、好ましくは50℃〜500℃、より好ましくは150〜300℃であり、例えば、200℃とすることができる。その加熱時間(分極時間)は、直流電圧や加熱温度等の複数の条件と組み合わせることで所望の分極状態となるように適宜設定することができ、例えば、50Vの直流電界下で加熱温度(保持温度)200℃の場合に、加熱時間(分極時間)を120分と設定することができる。当該印加後の安定化ジルコニアは、陽極に面した表面が相対的に負、陰極側に面した表面が相対的に正に帯電する。
また、特殊な例として、複雑形状の安定化ジルコニア材料を対象とする際には、電磁波照射や電子線照射、イオン注入など、非接触状態での直流電界印加によって分極処理を行うほうが好ましいが、これらなどの手法により所望の分極状態を作成することが困難な場合、電極ペーストを焼付けて分極処理を行った後に電極層をはがす方法や、薄膜状あるいはフェルト状等のフレキシブルな電極を密着させて分極処理する方法、ポリマー導電体を表面に形成して分極処理を行った後にこれを溶解除去する方法、安定化ジルコニアの形状に合わせて成形したセパラブル電極を用いる方法などを用いるとよい。
本発明は、分極処理時に陽極側に対向している、相対的に負帯電性を有する表面において顕著なLTD抑制を有する安定化ジルコニアを提供することから、陰極面積を極力小さくし、または、湿潤環境に暴露しない部分に陰極を配し、湿潤環境に暴露する部分に対しては広く陽極を配するような電極形態を用いることが好ましい。例えば人工股関節骨董として利用される安定化ジルコニアの場合には、コバルトクロム合金やチタン合金などの金属から成るステム部分を陰極として利用し、安定化ジルコニア製の骨董表面に陽極を配することによって、湿潤環境に露出する骨董表面全体に負帯電性を付与することができる。
本発明は、正方晶を主要な結晶構造とする安定化ジルコニアに適用され、好ましくは、イットリアを含有するイットリア安定化正方晶ジルコニアに適用される。また、本発明の対象として、特に好ましいのは、生体材料等に用いられる2〜4モル%のイットリアを含有する正方晶ジルコニアである。
本発明は、一般に、粉末状のジルコニア原料を所定の形状に成形した後、焼結(焼成)したジルコニア焼結体(ジルコニアセラミックス)に対して適用される。焼成温度は、例えば、生体用2〜4mol%イットリア含有正方晶ジルコニアの場合、1200℃〜1500℃である。このように、本発明に係る安定化ジルコニアは、人工骨、人工関節(股関節骨頭)、骨固定材、光ファイバーコネクター、電池・センサー用固体電解質等の様々な材料として、その優れたLTD抑制によって各種用途に応じた機能を存分に発揮することができる。また、本発明に係る安定化ジルコニアにおいて顕著なLTD抑制を示す相対的に負帯電性を有する表面の色調は白色であることから、本発明は人工歯(人工歯根・補綴物)などの色調制御が求められる材料用途においても十分に適用することができる。
このように、本発明はこれまでにない包括的なLTD抑制技術に基づく安定化ジルコニアを提供するものである。本発明に係る安定化ジルコニアは、安定化ジルコニア以外の元素や化合物を構成要素として必要としないことから、安定化ジルコニア固有の化学的性質を損なう虞はない。また本発明に係る安定化ジルコニアは、各種加工後の最終工程において分極処理されて形成されることも可能なことから、既存の製品にも広く適用可能な汎用的LTD抑制技術であり、これらの点においても従来の技術と比べて極めて有利である。
本発明の特徴を更に具体的に示すため以下に図2〜図6に従い実施例を記すが、本発明はこれらの実施例によって制限されるものではない。
(実施例1)
イットリア安定化正方晶ジルコニア(Y−TZP)として、3mol%のY−ZrO粉末(東ソー株式会社製、TZ−3Y)を180MPaの一軸加圧および470MPaの冷間等方加圧により圧粉体に加圧成形した後、大気中にて1450℃で2時間焼結し、焼結体ディスク(φ8mm×2mm)を作成した。この焼結体を白金板で挟み、50Vの直流電界下で、保持温度200℃かつ分極時間120分で作成したサンプル(サンプルAという)と、保持温度300℃かつ分極時間720分(サンプルBという)の2つのケースに対して分極処理を行なった。分極時に、電極の陰・陽極と接していた表面をそれぞれP面、N面、未分極の表面を0面と表記する。サンプルAのP面、N面をそれぞれPw面、Nw面、サンプルBのP面、N面をそれぞれPs面、Ns面とする。LTD挙動については、上記分極後、バフ研磨(1μmアルミナスラリーを使用)によって金属電極層を完全に除去した各サンプルを100℃の沸騰状態にある純水中に14日間浸漬し、XRD測定結果を用いて、Torayaの式から算出した単斜晶相転移率を用いて評価した。
外観
図2に示すように、分極処理後に各面の色を確認したところ、サンプルAのPw面およびNw面は各々黒色および白色を呈していた。これに対して、サンプルB(対照例)のPs面およびNs面は共に黒色を呈していた。
LTD抑制
図3は、本発明に係る安定化ジルコニアを100℃の沸騰状態にある純水中に14日間保持した0面、P面およびN面の単斜晶相転移率を示す。サンプルAおよびサンプルBのいずれのケースでも、相転移率の時間変化は、ジョンソン・メール・アブラミの式に適合したことから、程度の度合いが異なるものの、分極の有無に依らずにLTDが進行していることが示唆された。
しかし、サンプルAについては、図3(a)に示すように、Nw面では経過時間に依らず安定的に相転移が抑制されていた。これに対して、サンプルB(対照例)は、図3(b)に示すように、共に黒色を呈していたPs面およびNs面の両者において、LTDの進行が抑制されなかった。
可視光吸収スペクトル測定
分光光度計(日立製作所製、U3300)に拡散反射ユニット(日立製作所製、U 3300型分光光度計用150φ積分球付属装置)を取り付け、酸化アルミニウム圧紛体[白板セット(日立計測サービス社製、210-0740)]をリファレンスとして、本研究に係る安定化ジルコニアの可視光吸収スペクトルを測定した。図4に、上記のサンプルAとサンプルBについて、400〜800 nmの可視光線に対する吸光度の測定結果を示す。上記の安定化ジルコニアに対して、相対的に正帯電性を有する側の表面であるP面と、相対的に負帯電性を有する側の表面であるN面との600〜800 nmの可視光線の吸収係数(吸光度)の差が、LTD抑制を示したサンプルAは、0.16を示し、0.1以上となっていた。これに対して、サンプルB(対照例)は、0.06を示し、0.1未満であった。
TSDC測定
TSDC測定用治具[(株)和泉テック製、IZU-KU-140]に本研究に係る安定化ジルコニアを設置し、縦型無誘導炉[島津金属(株)製]にて昇温速度5℃/分で加熱しながら、ポテンショ/ガルバノスタット(プリンストンアプライドリサーチ社製、VERSASTAT)にて熱刺激脱分極電流(TSDC)測定を行った。図5に、上記のサンプルAとサンプルBのTSDCスペクトルを示す。N面で顕著なLTD抑制を示したサンプルAは、TSDCスペクトルが、相対的に低温側の急峻なピーク群(P)と、当該ピークよりも高温側に現れるブロードなピーク群(P)を含み、Pの最大強度ピーク(h)に対するPの最大強度ピーク(h)の比率(h/h)が0.49(0以上3/4以下)であり、かつ、ピーク強度3/4×hを有するスペクトルの幅(w)とピーク強度3/4×hを有するスペクトルの幅(w)との比率(w/w)が4.4(2以上)であった。これに対して、サンプルB(対照例)は、h/hが-0.7(0未満)であり、かつ、w/wが0.69(2未満)であった。
(実施例2)
その他のケースのTSDC測定
上記実施例1と同様の手順にて、保持温度および分極時間を以下条件で作成したサンプル(a)〜(h)を作成した。これらのサンプルは全て、上記実施例1と同様の確認手順にて、サンプルAと同様に、P面(分極処理時に陰極と接していた表面)およびN面(分極処理時に陽極と接していた表面)が、各々黒色(もしくは茶色)および白色を呈しており、有意なLTD特性を示した。これらのTSDC測定の結果を図6に示す。
(a)保持温度200℃かつ分極時間30分で作成したサンプル
(b)保持温度200℃かつ分極時間60分で作成したサンプル
(c)保持温度200℃かつ分極時間120分で作成したサンプル
(d)保持温度200℃かつ分極時間480分で作成したサンプル
(e)保持温度200℃かつ分極時間720分で作成したサンプル
(f)保持温度250℃かつ分極時間120分で作成したサンプル
(g)保持温度300℃かつ分極時間5分で作成したサンプル
(h)保持温度300℃かつ分極時間30分で作成したサンプル
図6に示された結果から、P面(分極処理時に陰極と接していた表面)およびN面(分極処理時に陽極と接していた表面)が、各々黒色(もしくは茶色)および白色を呈していて、N面において有意なLTD特性を示す本発明に係る安定化ジルコニアは、h/hが0以上3/4以下であり、かつ、w/wが2以上の範囲に含まれるような形状を有するTSDCスペクトルを成すことがわかった。

Claims (7)

  1. 低温劣化の抑制された安定化ジルコニアであって、分極処理を施されることにより、相対的に正帯電性を有する側の表面では黒色または茶色を呈しており、相対的に負帯電性を有する側の表面では白色を呈していることを特徴とする安定化ジルコニア。
  2. 前記分極処理を施されることにより、熱刺激脱分極電流(TSDC)測定法またはこれに類する熱的分極緩和電流測定法における熱刺激放電電流スペクトルが、相対的に低温側の急峻なピーク群(P)と、当該ピークよりも高温側に現れるブロードなピーク群(P)を含み、
    Pの最大強度ピーク(h)に対するPの最大強度ピーク(h)の比率(h/h)が0以上3/4以下であり、かつ、ピーク強度3/4×hを有するスペクトルの幅(w)とピーク強度3/4×hを有するスペクトルの幅(w)との比率(w/w)が2以上であることを特徴とする請求項1に記載の安定化ジルコニア。
  3. 前記分極処理を施されることにより、相対的に正帯電性を有する側の表面と、相対的に負帯電性を有する側の表面との600〜800 nmの可視光線の吸収係数の差が、0.1以上であることを特徴とする請求項1に記載の安定化ジルコニア。
  4. ジルコニアが、イットリア安定化正方晶ジルコニアであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の安定化ジルコニア。
  5. ジルコニアが、2〜4モル%のイットリアを含有する正方晶ジルコニアであることを特徴とする請求項4に記載の安定化ジルコニア。
  6. 前記分極処理が、直流電界印加、放電処理(エレクトロエレクトレット化処理)、電磁波もしくは電子線照射(ラジオエレクトレット化処理)、またはイオン注入によって行われることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の安定化ジルコニア。
  7. 前記分極処理が、直流電界印加によって行われることを特徴とする請求項6に記載の安定化ジルコニア。
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