JP2013058657A - 電子装置の寿命予測方法およびそれを用いた電子装置の設計方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】従来の方法に比べて寿命予測精度が向上した電子装置の寿命予測方法およびそれに基づく電子装置の設計方法を確立することにある。
【解決手段】高温放置によるはんだ接合部の物性値の変化またははんだの疲労寿命の変化のどちらかを寿命予測に取り入れることによって寿命予測を行なうものである。前記はんだ接合部の物性値の変化またははんだの疲労寿命の変化は、熱処理温度及び熱処理時間との関係により求められるものである。そして、これらの変化を定式化して前記寿命予測に取り入れるものである。
【選択図】図17
【解決手段】高温放置によるはんだ接合部の物性値の変化またははんだの疲労寿命の変化のどちらかを寿命予測に取り入れることによって寿命予測を行なうものである。前記はんだ接合部の物性値の変化またははんだの疲労寿命の変化は、熱処理温度及び熱処理時間との関係により求められるものである。そして、これらの変化を定式化して前記寿命予測に取り入れるものである。
【選択図】図17
Description
本発明は、半導体装置など電子部品の寿命予測方法に関し、例えば、はんだ接合部の寿命予測方法およびそれを用いた半導体装置などの電子部品の設計方法に適用して有効な技術である。
BGA(Ball Grid Array)型半導体装置のはんだボール(バンプ)接合部の寿命予測が特許文献1、特許文献2に示されるように従来検討された。
また、半導体装置の設計支援方法として、特許文献3に示されるような方法が従来検討された。
特許文献1は、2次元モデルを設定し、このモデルに基づく有限要素法解析により塑性ひずみを算出し、実際の温度サイクル試験の結果との関係に基づきはんだ接合部の疲労寿命を予測するものである。
特許文献2は、半導体装置の実装構造の寸法と物性値とに基づいてはんだ接合部のダメージを見積もる簡易なはんだ部ひずみ算出式により、疲労寿命を予測するものである。
特許文献3は、CAE(Computer Aided Engineering)データと実際の測定で蓄積されるデータとをトータルなデータとして用いて不良発生メカニズムにかかわる統計モデルを同定するというものである。
前記のような従来技術(特許文献1)では、製品設計に対して十分な予測精度が得られない。従来(特許文献1)のような有限要素法でのシミュレーションによる寿命予測は精度良い寿命予測とはなっていない。
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
本願において開示される課題を解決するための手段のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば下記の通りである。
すなわち、一実施の形態による方法は、はんだ接合部の物性値の変化またははんだの疲労寿命の変化のどちらかを寿命予測に取り入れることによって寿命予測を行なうものである。
本願において開示される実施の形態によれば、電子装置の寿命予測の精度が向上する。
1.実施の形態の概要
先ず、本願において開示される代表的な実施の形態について概要を説明する。
(a)疲労寿命の高温放置による劣化挙動を実験により評価し、任意の温度、時間での疲労寿命曲線を定式化(Coffin−Manson則を使用)する。
(b)降伏応力についても同様に、高温放置による劣化挙動を実験により評価し、任意の温度、時間における予測式を作成(定式化)する。
(c)(b)の定式を用いてはんだに発生する相当塑性ひずみ範囲の変化を有限要素法によるシミュレーションにより算出する。
(d)相当塑性ひずみ範囲の変化(物性値の変化)または疲労延性係数の変化(疲労寿命の変化)を関数で近似し(a)の定式を用いて任意のサイクルの損傷率を算出する。
(e)線形累積損傷則を用いて寿命を予測する。
先ず、本願において開示される代表的な実施の形態について概要を説明する。
(a)疲労寿命の高温放置による劣化挙動を実験により評価し、任意の温度、時間での疲労寿命曲線を定式化(Coffin−Manson則を使用)する。
(b)降伏応力についても同様に、高温放置による劣化挙動を実験により評価し、任意の温度、時間における予測式を作成(定式化)する。
(c)(b)の定式を用いてはんだに発生する相当塑性ひずみ範囲の変化を有限要素法によるシミュレーションにより算出する。
(d)相当塑性ひずみ範囲の変化(物性値の変化)または疲労延性係数の変化(疲労寿命の変化)を関数で近似し(a)の定式を用いて任意のサイクルの損傷率を算出する。
(e)線形累積損傷則を用いて寿命を予測する。
2.実施の形態の詳細
以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションに分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、応用例、詳細説明、補足説明等の関係にある。また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でもよい。
以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションに分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、応用例、詳細説明、補足説明等の関係にある。また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でもよい。
さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではない。同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数等(個数、数値、量、範囲等を含む)についても同様である。
なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一または関連する符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、以下の実施の形態では、特に必要なとき以外は同一または同様な部分の説明を原則として繰り返さない。
(実施の形態)以下、図面を参照しながら本実施の形態に係わる半導体装置のはんだ接合部寿命予測方法およびそれを用いた半導体装置の設計方法について詳細に説明する。
(A)疲労寿命曲線の定式化
図1に疲労寿命曲線作成評価用の試験片1を示す。(a)はこの試験片1の平面を示す図(平面図)であり、(b)はこの試験片の断面を示す図(断面図)である。試験片はBGA型半導体装置を模擬して,厚さ1mmのFR−4基板2で24個のはんだボール3を挟んだ構造とした、使用したはんだ材は鉛フリーであるSn−3Ag−0.5Cuの組成とし,ボール径はΦ0.6mm、基板2との接続径はΦ0.5mmとした。
図1に疲労寿命曲線作成評価用の試験片1を示す。(a)はこの試験片1の平面を示す図(平面図)であり、(b)はこの試験片の断面を示す図(断面図)である。試験片はBGA型半導体装置を模擬して,厚さ1mmのFR−4基板2で24個のはんだボール3を挟んだ構造とした、使用したはんだ材は鉛フリーであるSn−3Ag−0.5Cuの組成とし,ボール径はΦ0.6mm、基板2との接続径はΦ0.5mmとした。
検討した試験片1の熱処理条件を図2に示す。熱処理温度はエンジンルーム内相当での使用温度(環境温度)を想定して125℃、150℃および175℃の3条件とした。熱処理時間は温度サイクル試験1000回に相当する35日を中心に7日と60日を加え125℃についてはより詳細に検討するため20日と90日を追加した。また、熱処理を施していない初期状態の試験片1も用意した。
試験は、前記熱処理された試験片1および熱処理されない初期状態の試験片1それぞれを図3に示すように、前記試験片1の上側基板2を上側治具4に固定し、下側治具5により下側基板3にせん断方向(図3に示される矢印の方向)の変位を繰返し与えて実施した。試験温度は室温(23度)、試験周波数は1Hz、1条件における試験数は10とした。
変位量と寿命の関係をこの試験片1で評価する。変位量を変えて実験を行う。変位量を変えるごとに発生するはんだバンプ(はんだボール)の相当塑性ひずみを有限要素法解析により求める。変位を与えたときに増加する相当塑性ひずみ量である相当塑性ひずみ範囲Δεを計算する。
図4に熱処理温度125℃での疲労寿命曲線を示す。熱処理時間は、同図の右側に示すように、初期(initial)、7日(7days)、20日(20days)、35日(35days)、60日(60days)、90日(90days)である。
縦軸ははんだハンプに生ずる相当塑性ひずみ範囲(ε)、横軸は寿命すなわち疲労寿命までの繰り返し数(Nf)である。熱処理温度125℃の場合において熱処理時間が長くなると、疲労寿命が劣化する(相当塑性ひずみ範囲Δεを同一とすると疲労寿命までの繰り返し数が減少する)傾向にあることがわかる。
次に処理温度150℃および175℃で熱処理したときの疲労寿命曲線をそれぞれ図5、図6に示す。図4と同様、熱処理時間が長くなると、疲労寿命が劣化することがわかる。
疲労寿命曲線は、下記する式(1)(Coffin−Manson則)によって表すことができる。
次に疲労延性係数(Cp)の変化を疲労強度低下率(rSD)として式(2)にて定義する。
疲労強度低下率(rSD)の熱処理時間による変化を図7に示す。図7からわかるように、いずれの温度においても,熱処理時間の増加とともに疲労強度低下率(rSD)が大きくなり、低下率60〜70%で飽和する。
上記劣化挙動を定式化するために、疲労強度低下率(rSD)と熱処理温度、熱処理時間との相関を関数として式(3)のような形で定義する。
eは指数関数(exponential)である(以下同様である)。
式(3)の飽和係数(S)および式(3)の加速係数(D)それぞれの温度依存性を図8に示す。
また、飽和係数(S)は下記する式(4)にて定式化した。
さらに、加速係数(D)は式(5)にて定式化した。
以上により、定式化した式(1)〜(5)を用いて、任意の熱処理温度、熱処理時間後の疲労寿命曲線が得られる。
(B)降伏応力およびその他の物性値の定式化
図9に降伏応力低下率測定のための試験片6を示す。この試験片6は、中央破断部の直径が0.5mmであり、BGAはんだボール(バンプ)の接続径と同等である。中央部の評点間距離は2mm、試験機への取り付け部(両端部)の寸法は約Φ1mm×2mmである。使用したはんだは鉛フリーであるSn−3Ag−0.5Cuの組成とし、熱処理条件(高温保持条件)は図10に示す通りである。
図9に降伏応力低下率測定のための試験片6を示す。この試験片6は、中央破断部の直径が0.5mmであり、BGAはんだボール(バンプ)の接続径と同等である。中央部の評点間距離は2mm、試験機への取り付け部(両端部)の寸法は約Φ1mm×2mmである。使用したはんだは鉛フリーであるSn−3Ag−0.5Cuの組成とし、熱処理条件(高温保持条件)は図10に示す通りである。
熱処理温度は125℃、150℃および175℃の3条件とし、熱処理時間は温度サイクル試験における1サイクルあたりの熱処理時間(保持時間)が20分とした場合の1000回分に相当する35日を中心に7日と60日を加え、125℃についてはより詳細に検討するため20日と90日を追加した。また、比較対象として熱処理を施していない初期状態の試験片も用意した。
測定温度は室温(23度)、ひずみ速度は1.0%/secとし、ひずみ範囲が10%もしくは破断するまで引張変位を加えた。
図11は、試験片6に熱処理を施さない時(初期状態)の応力−ひずみ線図測定結果例を示す。図11では、2直線で近似を行なった。ひずみ0.5〜2%の範囲を直線近似(最小二乗近似)し、縦弾性係数との交点を降伏応力とした。この2直線モデルは式(6)および式(7)にて表現できる(二直線近似でのモデル化)。
次に、試験片6に熱処理を施す熱処理温度125℃、150℃、175℃の3条件それぞれにおいて応力−ひずみ線図を作成し(図示せず)、降伏応力の劣化挙動を調査した。応力−ひずみ線図測定温度は前記と同様に室温(23度)とした。ひずみ速度は1.0%/secとし、ひずみ範囲が10%もしくは破断するまで引張変位を加えた。
降伏応力低下率(rYD)を式(8)で定義する。
降伏応力低下率(rYD)の熱処理温度、熱処理時間依存性を図12に示す。同図からわかるように降伏応力低下率(rYD)は熱処理時間に比例して増加する。よって、降伏応力低下率(rYD)を式(9)で定式化して低下率係数(Dy)の温度依存性を調査した。
図13に低下率係数(Dy)の温度依存性を示す。同図に示す黒四角形の部分は、左から熱処理時間175℃、150℃、125℃それぞれの場合の低下率係数(Dy)を表す。
低下率係数(Dy)を式(10)で定式化し、その係数をグラフから求めた。この初期の係数(Dyo)および活性化エネルギー(Qy)の値を図13中に記載した。
同様の作業を、応力−ひずみ線図測定温度を変えて実施した。測定温度は−55℃、−15℃、75℃、125℃とした。
先に述べた測定温度が室温(23度)のデータを合わせて初期状態の降伏応力(σy)の温度依存性を求めた結果を図14に示す。
図14において黒丸部分は、左から測定温度が−55℃、−15℃、室温(23度)、75℃、125℃のものである。
図14の降伏応力(σy)の温度依存性は式(11)にて定式化できる。
以上定式化された式(6)〜(11)を用いて、任意の測定温度で、任意の熱処理温度、熱処理時間後の降伏応力を計算することができる。
次にその他の物性値の定式化について下記する。
図15に縦弾性係数(E)の測定温度依存性を示す。同図中黒丸部分は、左から測定温度が−55℃、−15℃、室温(23度)、75℃、125℃のものである。
縦弾性係数(E)の測定温度依存性も式(12)で定式化した。
図16には加工硬化係数(K)の温度依存性を示す。加工硬化係数(K)も同様に式(13)で定式化した。
以上、定式化された式(6)〜(13)を用いることにより、任意の測定温度における任意の熱処理温度、熱処理時間後の応力−ひずみ曲線の二直線近似を得ることができる。
(C)寿命予測方法(はんだ物性変化による予測方法)
図17にはんだ物性の変化を用いた寿命予測のフローを示す。同図からわかるように、シミュレーションモデルを作成し、この作成したシミュレーションモデルの初期物性値および任意サイクル後の物性値を用いて相当塑性ひずみ範囲Δεi peqをシミュレーションにより算出する。任意サイクル後の物性値は一点又は複数点あれば良く、一点でも初期の物性値と合わせて複数の物性値を算出することになる。尚、本明細書においてシミュレーションによりひずみ範囲を算出したり、後述するように、はんだ接合部を有する電子装置の前記はんだの物性値変化および前記はんだ接合部の疲労寿命の変化のいずれか一方に基づき前記電子装置の寿命を予測するための処理はワークステーションやパーソナルコンピュータなどのコンピュータ装置を用いたデータ処理によって行うことは言うまでもない。
図17にはんだ物性の変化を用いた寿命予測のフローを示す。同図からわかるように、シミュレーションモデルを作成し、この作成したシミュレーションモデルの初期物性値および任意サイクル後の物性値を用いて相当塑性ひずみ範囲Δεi peqをシミュレーションにより算出する。任意サイクル後の物性値は一点又は複数点あれば良く、一点でも初期の物性値と合わせて複数の物性値を算出することになる。尚、本明細書においてシミュレーションによりひずみ範囲を算出したり、後述するように、はんだ接合部を有する電子装置の前記はんだの物性値変化および前記はんだ接合部の疲労寿命の変化のいずれか一方に基づき前記電子装置の寿命を予測するための処理はワークステーションやパーソナルコンピュータなどのコンピュータ装置を用いたデータ処理によって行うことは言うまでもない。
シミュレーションモデルはA、B、Cの三つのモデルを用い、これら三つそれぞれの相当塑性ひずみ範囲をシミュレーションにより算出する。
そして、この相当塑性ひずみ範囲の変化を関数式で近似し、式(14)で損傷率を求め線形累積損傷則に基づく式(18)により寿命予測を行なう。
本実施の形態では、三つのモデルを用いたがこれに限定されるものではない。
次に、はんだ物性の変化による予測方法をより具体的に記載する。
図18に有限要素法によるシミュレーション解析モデルであるBGA型の半導体パッケージ7の外形図を示す。
パッケージ7の外形は17mm(縦)×17mm(横)×0.9mm(厚さ)で、はんだボール(はんだバンプ)9の配列は周辺4列の256ピン、ボール(バンプ)ピッチは0.8mmである。使用したボール(バンプ)9の径は0.5mmであり、接続高さは0.4mmである。
パッケージ7に内蔵される半導体チップ8のサイズは7mm(縦)×7mm(横)×0.28mm(厚さ)であり、接着材(Agペースト、図20の接着剤13)で基板(図19の絶縁性配線基板11)に接続されている。
このパッケージ7を樹脂製の評価ボード10にリフロー加熱で実装した。
図19は半導体パッケージ7が評価ボード10に実装された状態の一部断面を示すシミュレーションモデルの断面構造図である。同図からわかるように、絶縁性配線基板11の一主面のランド(図示せず)に複数のはんだボール9が設けられ、前記基板11の他の主面に半導体チップ8が搭載され、前記半導体チップ(半導体素子)8を封止樹脂(レジン)12で覆っている。
また、図20に、前記図19に示すシミュレーションモデルの実線で囲む領域Aの拡大断面を示す。同図からわかるように、絶縁性配線基板11は基板コア15とその両面(一主面と他の主面)に設けられた基板レジスト(レジスト)14を有し、前記基板11の一主面には図示しないランドを介してはんだボール9が設けられ、前記基板11の他の主面には接着材13により半導体チップ(半導体素子・チップ)8を接着している。
前記したシミュレーションモデルは図21に示すように、Aモデル、Bモデル、Cモデルの3種類のモデルを用い、さらに同図からわかるように、異なる3つの温度サイクル条件にて試験を行った。なお、図21における左向きの矢印「←」は左の欄の記載と同じということを表している(図22、図25および図27においても同じ)。
Aモデルは温度範囲−55〜80℃で、高温(80℃)および低温(−55℃)での保持時間は各10分とした。Bモデルは前処理として125℃で14日間の熱処理を加えた後にAモデルと同様に温度範囲−55〜80℃で、高温(80℃)および低温(−55℃)での保持時間は各10分とした。また、Cモデルは温度範囲−10〜125℃で、高温(125℃)および低温(−10℃)での保持時間は各10分である。
前記した3つのモデルそれぞれの温度サイクル試験における温度幅は135℃でありそれぞれ同じ温度幅である。
なお、シミュレーションははんだボール9の材料であるSn−3Ag−0.5Cuを弾塑性モデル、それ以外の材料を弾性モデルとした。
図22はシミュレーションに用いたSn−3Ag−0.5Cuの降伏応力(σy)の値を示す。降伏応力(σy)の値は、初期値(試験前の値)および各モデルの任意サイクル時の物性値である。降伏応力(σy)は先に示した式(6)〜(13)を用いて計算した値である。
図23は降伏応力(σy)以外のはんだボール9の材料であるSn−3Ag−0.5Cuの物性値である縦弾性係数(E)、加工硬化係数(K)、ポアソン比(ν)および線膨張係数(α)である。これらの物性値は初期および任意サイクル時で変化は無く一定である。
また、図24にはんだボール9の材料であるSn−3Ag−0.5Cu以外の材料の物性値(縦弾性係数(E)、ポアソン比(ν)、線膨張係数(α))を示す。
寿命予測は線形累積損傷則を用いる。Sn−3Ag−0.5Cuの降伏応力(σy)は温度サイクル試験が進むと変化してくる。この変化を関数として式(1)に取り込む。任意の温度サイクル数(Ni)の時における損傷率(1/Ni f)は式(14)にて表せる。ここで、「Ni」、「εi」および「Ci」の上付きのiはべき乗を表すものではない。
例えば、式(14)の関数f(Ni)を直線近似するとA、B、C各モデルの相当塑性ひずみ範囲の変化は以下の関数にて近似できる。
求めたい寿命は線形累積損傷則に基づく式(18)を満たす最大サイクル数となる。
式(15)、(16)、(17)はそれぞれAモデル、Bモデル、Cモデルの相当塑性ひずみ範囲変化の近似式である。これら近似式と任意のサイクルNiの時における損傷率の式(14)および式(18)を用いて寿命を予測した結果を図28に示す。
次に検証用の温度サイクル試験を行なう、検証用モデルは、前記したシミュレーションで用いた3つのモデルA、B、Cと同様なものとする。
次に検証用の温度サイクル試験条件を図25に示す。これは先に述べた図21と同じ条件である。
図26は、図25の3つのモデルに係わる試験結果のワイブルプロットである。Aモデルが最も寿命が長く、次にBモデル、最も短寿命であったのがCモデルである。
図27は、図26のワイブルプロットで累積不良率が50%となるサイクル数すなわち平均寿命を計算した結果である。
次に、本実施の形態での寿命予測と検証用温度サイクル試験結果(平均寿命)との比較を行った。
図28に示すのは、本実施の形態に示す予測方法での寿命予測と前記した検証用の温度サイクル試験結果およびSn−3Ag−0.5Cuの降伏応力(σy)が初期値から変化しない手法(従来手法)での予測との比較を行ったものである。
同図からわかるように、比較の結果、Aモデル、Bモデル、Cモデルともに従来手法に比べて試験(実験)値に近い寿命を予測できている。
なお、初期の疲労延性係数(Cp0)はランド面積が図1の試験片に比べて小さくなっていることから疲労延性係数のランド面積依存性を考慮し、0.96を用いている。
図28の比較の結果、従来手法に比べて試験(実験)値に近い寿命を予測できている。
(D)寿命予測方法(疲労寿命の変化による予測方法)
図29に疲労寿命の変化を用いた寿命予測方法のフローを示す。同図からわかるように、シミュレーションモデルを作成し、作成したシミュレーションモデルの初期物性値を用いて相当塑性ひずみ範囲をシミュレーションにより算出する。
図29に疲労寿命の変化を用いた寿命予測方法のフローを示す。同図からわかるように、シミュレーションモデルを作成し、作成したシミュレーションモデルの初期物性値を用いて相当塑性ひずみ範囲をシミュレーションにより算出する。
シミュレーションモデルは前記(C)のはんだ物性変化による予測方法と同様にA、B、Cの三つのモデルを用い、これら三つそれぞれの相当塑性ひずみ範囲をシミュレーションにより算出する。
そして、疲労寿命曲線を表す式(1)の要素である疲労延性係数(Cp)の変化を関数式で近似し、下記する式(19)で損傷率を求め式(18)に基づき寿命予測を行なう。
本実施形態では、三つのモデルを用いたがこれに限定されるものではなく、モデル数は複数あればよい。
前記した(C)の寿命予測方法と異なるのは、全てのモデルでSn−3Ag−0.5Cuの物性値は初期値を用いることである。初期物性値を用いたシミュレーションにて算出された相当塑性ひずみ範囲(Δεpeq)を使うと、任意のサイクルNiの時における損傷率(1/Ni f)は(19)式にて表せる。ここで、「Ni」の上付きのiはべき乗を表すものではない。
ここで、疲労延性係数(Cp(Ni))を関数で近似する。例えば指数関数で近似した場合、各モデルの疲労延性係数(Cp(Ni))はそれぞれ次式にてあらわせる。
式(20)、(21)、(22)はそれぞれAモデル、Bモデル、Cモデルの疲労延性係数の変化を表す近似式である。
これら近似式で求めた疲労延性係数を基に式(19)から任意の温度サイクルNiの時における損傷率(1/Ni f)を求め、そして前記した線形累積損傷則に基づく式(18)から寿命を求める。求めたい寿命は式(18)を満たす最大サイクル数となる。
前記のように近似式や式(18)を用いて寿命を予測した結果、Aモデルでは4119サイクル、Bモデルでは3222サイクル、Cモデルでは2540サイクルとなった。
いずれも図28に示した従来手法での予測に比べて実際の試験結果に近い値となっている。
(E)本実施の形態に係る寿命予測方法の効果
以上述べた(C)、(D)いずれの予測方法も従来方法に比べて精度の高い寿命予測が可能となる。
以上述べた(C)、(D)いずれの予測方法も従来方法に比べて精度の高い寿命予測が可能となる。
(D)の疲労寿命の変化を用いた寿命予測方法の方が、(C)のはんだ物性の変化を用いた寿命予測方法よりもシミュレーション回数が少なく簡便である。
また、本実施の形態において(C)のはんだ物性の変化を用いた寿命予測方法が(D)の疲労寿命の変化を用いた寿命予測方法より試験値(実験データ)に近い値を予測した。高温にさらされる素子は、その物性値や疲労寿命が変化する、これら変化のどちらかを寿命予測に取り入れることにより、半導体装置の高温環境下での精度良い寿命予測技術を確立できる。
はんだボール有する半導体装置などはんだ接合部を有する電子装置が車載用として適用が進んでいる。これに伴い電子装置の環境温度が150℃前後あるいはそれ以上となるエンジンルーム内への搭載要求が高まっている。エンジルーム内での使用は、高温環境下での長期使用となるため、高温環境下での高温耐性の解決が必要である。また、有害物質使用規制よりはんだボールへの鉛フリーはんだの適用要求が高まっている。鉛フリーはんだの融点は従来のはんだよりも高い。すなわち、初期の加熱温度が従来よりも高い。このような高温環境下での使用が可能な、鉛フリーはんだボールを用いる半導体装置などはんだ接合部を有する電子装置についても、本実施の形態によって高い精度の寿命予測ができる。シミュレーションによる寿命予測は半導体パッケージの設計効率向上および製品化のスピードアップに必須の技術であるため、予測精度向上が必要となる。
特に車載用半導体装置は予想よりも寿命が短いと信頼性が大きくそこなわれる。しかし、本実施の形態によって高い制度の寿命予測ができるため信頼性が大きくそこなわれることはない。
(F)半導体装置の設計方法
次に前記前記(C)または(D)の寿命予測方法に基づく半導体装置の設計方法を従来の設計方法と比較して述べる。
次に前記前記(C)または(D)の寿命予測方法に基づく半導体装置の設計方法を従来の設計方法と比較して述べる。
図30は本願実施形態の新規設計フローを示し、図31は従来の設計フローを示す。
従来フローと新規フローでは寿命予測の部分が異なる。新規設計フローでは前記(C)または(D)の寿命予測方法を用いるため、寿命予測精度が高く、信頼性評価でNG(NoGood)判定(図30の破線の矢印)となる回数が減り、製品開発の効率が向上する。これにより製品化のスピードアップが達成できる。特に車載向け製品では信頼性評価に3〜6ヶ月と長期にわたる評価が必要であるため、信頼性評価のやり直しは開発効率の大幅な低下をまねく。しかし、本実施の形態の設計方法により前記開発効率の大幅な低下を回避することができる。
さらに、両フローで完成した製品を比較すると、新規設計フローの方がより予測精度が高いため、開発目標に対してよりマージンを確保した設計とすることができる。
以上本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは言うまでもない。
例えば、鉛フリーはんだは、Sn−3Ag−0.5Cuにかぎらず、他の鉛フリーはんだでもよい。また、はんだバンプは鉛入りはんだでもよい。
さらに、BGA型半導体装置に限らず、はんだボールを有する半導体装置、はんだボールを有する半導体装置などを基板に実装した電子装置およびQFP(Quad Flat Package)などのリード型半導体装置を基板にはんだを用いて実装した電子装置への適用も可能である。また、はんだ以外の材料についても適用可能である。
また、現在自他社で開発が行われている亀裂進展シミュレーションへの適用が可能である。従来手法の延長としての亀裂進展シミュレーションでは、材料物性値が初期から最後まで同じ値となるため、材料特性(降伏応力や疲労寿命曲線)の変化を考慮できず、精度の高い寿命予測は不可能である。本発明を亀裂進展シミュレーションに適用すれば、亀裂形状による亀裂進展速度の変化だけでなく、材料特性変化による亀裂進展速度の変化を考慮できるため、より高い精度での亀裂進展を予測することが可能となる。
1 疲労寿命曲線作成評価用の試験片
2 絶縁性基板
3 はんだボール
4 上側治具
5 下側治具
6 降伏応力低下率測定のための試験片
7 シミュレーション用モデルの半導体パッケージ
8 半導体チップ
9 はんだボール(はんだバンプ)
10 評価ボード
11 絶縁性配線基板
12 封止樹脂
13 接着材
14 基板レジスト
15 基板コア
2 絶縁性基板
3 はんだボール
4 上側治具
5 下側治具
6 降伏応力低下率測定のための試験片
7 シミュレーション用モデルの半導体パッケージ
8 半導体チップ
9 はんだボール(はんだバンプ)
10 評価ボード
11 絶縁性配線基板
12 封止樹脂
13 接着材
14 基板レジスト
15 基板コア
Claims (13)
- はんだ接合部を有する電子装置の前記はんだの物性値変化および前記はんだ接合部の疲労寿命の変化のいずれか一方に基づき前記電子装置の寿命を予測する方法。
- 前記はんだの物性値変化またははんだ接合部の疲労寿命の変化は、熱処理温度及び熱処理時間との関係により求められたものである請求項1記載の方法。
- 前記はんだの物性値変化またははんだ接合部の疲労寿命の変化を定式化して前記寿命予測に取り入れる請求項2記載の方法。
- シミュレーションモデルの初期物性値及び任意サイクル後の物性値を用いて相当塑性ひずみ範囲を算出し、この相当塑性ひずみ範囲の変化を関数で近似し、損傷率を求め、これらを基に寿命予測を行なう請求項3記載の方法。
- 前記寿命予測は線形累積損傷則に基づく式により求められる請求項4記載の方法。
- シミュレーションモデルの初期物性値を用いて相当塑性ひずみ範囲を算出し、疲労延性係数の変化を関数で近似し、損傷率を求めこれらを基に寿命予測を行なう請求項3記載の方法。
- 前記寿命予測は線形累積損傷則に基づく式により求められる請求項6記載の方法。
- 前記電子装置は、BGA型半導体装置である請求項5記載の方法。
- 前記電子装置は、BGA型半導体装置である請求項7記載の方法。
- 請求項5記載の電子装置の寿命予測方法に基づき前記電子装置の寿命を予測し、この予測結果に基づき前記電子装置の設計を行なう方法。
- 前記予測結果に基づき材料の選定、評価サンプル試作、信頼性評価を行なう請求項10記載の方法。
- 請求項7記載の電子装置の寿命予測方法に基づき前記電子装置の寿命を予測し、この予測結果に基づき前記電子装置の設計を行なう方法。
- 前記予測結果に基づき材料の選定、評価サンプル試作、信頼性評価を行なう請求項12記載の方法。
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