JP2013052569A - 水蒸気バリアフィルムの製造方法、水蒸気バリアフィルム及び電子機器 - Google Patents

水蒸気バリアフィルムの製造方法、水蒸気バリアフィルム及び電子機器 Download PDF

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Abstract

【課題】水蒸気バリアフィルムにおいて、基板の光取り出し性能の低下を防止しつつ、フィルムからのガスバリア層の剥離等の欠陥の発生を最小限に抑制しうる手段を提供する。
【解決手段】第1の表面にマイクロレンズ構造を有する基板と、前記基板の前記第1の表面上に形成された水蒸気バリア層とを備えた水蒸気バリアフィルムにおいて、前記水蒸気バリア層を、ポリシラザンを含有する溶液を塗布して得られた塗膜に紫外線を照射して前記ポリシラザンを改質することにより形成されたポリシラザン改質層とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、水蒸気バリアフィルムの製造方法、水蒸気バリアフィルム及び電子機器に関する。
従来、プラスチック基板やフィルムの表面に、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化珪素等の金属酸化物を含む薄膜(ガスバリア層)を形成したガスバリアフィルムが、水蒸気や酸素等の各種ガスによる変質を防止するため、各種ガスの遮断を必要とする物品を包装する用途で用いられている。また、上記包装用途以外にも、各種ガスによる変質を防止するために、太陽電池、液晶表示素子、有機EL素子等の電子デバイスを封止する用途にも使用されている。ガスバリアフィルムは、ガラス基材と比べてフレキシブル性に優れており、ロール式での生産適性や、電子デバイスの軽量化及び取り扱い性の点において優位である。
このようなガスバリアフィルムを製造する方法としては、主に、プラズマCVD法(Chemical Vapor Deposition:化学気相成長法、化学蒸着法)によってフィルムなどの基材上にガスバリア層を形成する方法や、ポリシラザンを主成分とする塗布液を基材上に塗布した後に表面処理を施してガスバリア層を形成する方法、あるいはそれらを併用する方法が知られている。
しかしながら、これらの製造方法で形成されたガスバリアフィルムでは、フィルムの膨張・収縮、取り扱い時の折り曲げに起因し、フィルムからのガスバリア層の剥離等の欠陥が生じてしまうことがある。このような欠陥箇所が生じたガスバリア層では、その欠陥箇所を通じて水蒸気等のガスが透過してしまう問題がある。
ガスバリア層の強度を向上させるための試みとして、例えば特許文献1では、高いガスバリア性を有する酸化シリコン薄膜をポリエチレンテレフタレート(PET)等の柔軟性を有するプラスチック基板に形成した際のひび割れを防止するため、基材側ほど膜内に含まれる炭素割合を増やして、基材側ほど膜の硬度を低くした応力緩和設計を行っている。
ところで、半導体発光素子分野や液晶パネル分野においては、素子内部で生じた光を効率良く外部に取出すことが求められている。光を取り出す方法として、マイクロレンズの使用が知られている。しかしながら現状では、洗浄工程によりレンズが傷つき光学特性が保てないという問題が生じる可能性があった。またレンズ上に層を積層してしまうと、経時によりレンズ上層から染み出た不純物によりレンズが汚染されてしまい、屈折率が変化して性能を維持できないという問題もあった。これらの問題に対し、特許文献2では、レンズ上に空間を設けた後、表層を作製することでレンズの保護を行っている。
特開2008−56967号公報 特開2011−81229号公報
特許文献1に記載の方法では確かにひび割れを防止できるものの、本発明者らの検討の結果、ガスバリア性能が経時で劣化することが判明した。その理由は明らかではないが、含有される炭素が膜欠陥として働いてしまい、膜構造の堅牢性が少なからず阻害され、その結果として経時で劣化が起こるものと考えられる。また、元素比率の変化を急激に行ってしまうと、界面に応力が集中し剥離が発生してしまうため、元素比率を徐々に変化さえる必要があり、全体膜厚が厚くなってしまうという欠点も有している。また、特許文献2に記載の方法によっても空間が必要とされることから、同様に素子が大型化してしまうという問題がある。
本願発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、水蒸気バリアフィルムにおいて、基板の光取り出し性能の低下を防止しつつ、フィルムからのガスバリア層の剥離等の欠陥の発生を最小限に抑制しうる手段を提供することを目的とする。
本発明の上記課題は以下の手段により達成される。
1.第1の表面にマイクロレンズ構造を有する基板と、
前記基板の前記第1の表面上に形成された水蒸気バリア層と、
を備え、
前記水蒸気バリア層が、ポリシラザンを含有する溶液を塗布して得られた塗膜に第1の紫外線を照射して前記ポリシラザンを改質することにより形成されたポリシラザン改質層である、水蒸気バリアフィルム;
2.前記水蒸気バリア層が、その前記基板とは反対側の表面にマイクロレンズ構造を有する、上記1.に記載の水蒸気バリアフィルム;
3.前記水蒸気バリア層の膜厚が50〜1000nmである、上記1.または2.に記載の水蒸気バリアフィルム;
4.前記第1の紫外線が真空紫外線である、上記1.から3.のいずれか1つに記載の水蒸気バリアフィルム;
5.前記ポリシラザン改質層を形成する際の前記第1の紫外線の積算光量が1000〜10000mJ/cm2である、上記1.から4.のいずれか1つに記載の水蒸気バリアフィルム;
6.前記水蒸気バリア層の前記基板とは反対側の表面上に形成された保護層をさらに有する、上記1.から5.のいずれか1つに記載の水蒸気バリアフィルム;
7.前記保護層が、ポリシロキサンを含有する溶液を塗布して得られた塗膜に第2の紫外線を照射して前記ポリシロキサンを改質することにより形成されたポリシロキサン改質層である、上記6.に記載の水蒸気バリアフィルム;
8.前記保護層の膜厚が100〜10000nmである、上記6.または7.に記載の水蒸気バリアフィルム;
9.前記第2の紫外線が真空紫外線である、上記7.または8.に記載の水蒸気バリアフィルム;
10.前記ポリシロキサン改質層を形成する際の前記第2の紫外線の積算光量が200〜10000mJ/cm2である、上記7.から9.のいずれか1つに記載の水蒸気バリアフィルム;
11.第1の表面にマイクロレンズ構造を有する基板の前記第1の表面上に、ポリシラザンを含有する溶液を塗布して得られた塗膜に第1の紫外線を照射して前記ポリシラザンを改質することによりポリシラザン改質層からなる水蒸気バリア層を形成する工程を含む、水蒸気バリアフィルムの製造方法;並びに、
12.上記1.から10.のいずれか1つに記載の水蒸気バリアフィルムまたは上記11.に記載の製造方法によって製造された水蒸気バリアフィルムと、
前記水蒸気バリアフィルムによって封止された電子デバイスと、
を備える、電子機器。
本発明によれば、水蒸気バリアフィルムにおいて、基板の光取り出し性能の低下を防止しつつ、フィルムからのガスバリア層の剥離等の欠陥の発生を最小限に抑制しうる手段が提供されうる。
本発明に係る水蒸気バリアフィルムの一例を示す説明図である。 水蒸気バリアフィルムを用いて有機EL素子を封止した有機ELパネルの一例を示す断面図である。
本発明の一形態によれば、第1の表面にマイクロレンズ構造を有する基板と、当該基板の前記第1の表面上に形成された水蒸気バリア層とを備える水蒸気バリアフィルムが提供される。
以下に、本発明を実施するための好ましい形態について図面を用いて説明する。なお、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
図1は、本発明に係る水蒸気バリアフィルムの一例を示す説明図である。図1に示す水蒸気バリアフィルム10は、樹脂フィルムなどのガス透過性を有する基板1を有する。この基板1は、一方の表面にマイクロレンズ構造1aを有している。そして、この基板1のマイクロレンズ構造1aが存在する側の表面上には、水蒸気バリア層2が形成されている。なお、図1に示す実施形態において、水蒸気バリア層2の膜厚は均一であり、水蒸気バリア層2の両表面の形状は同様なものとなっている。その結果、図1に示す水蒸気バリア層2の断面形状は、蛇腹状である。水蒸気バリア層2の基板1とは反対側の表面には、保護層3が形成されている。ここで、保護層3は、水蒸気バリア層2を保護してこれに傷や汚れが付着するのを防止するための層である。また、保護層3の存在により、水蒸気バリア層2のひび割れに対する耐性も向上しうる。さらに、図1に示す実施形態においては、基板1の水蒸気バリア層2とは反対側の表面に、ブリードアウト防止層4が形成されている。ここで、ブリードアウト防止層4は、基板1からのブリードアウト(基板1が加熱された際に内部から表面へモノマー、オリゴマー等の低分子量成分が析出すること)を防止するための層である。なお、図1に示す以外の従来公知の層がさらに設けられてもよい。
図1に示す形態の水蒸気バリアフィルム10において、水蒸気バリア層2は、ポリシラザンを含有する溶液を塗布して得られた塗膜に紫外線(水蒸気バリア層を形成する際に照射する紫外線を「第1の紫外線」とも称する)を照射して前記ポリシラザンを改質することにより形成されたポリシラザン改質層である点に特徴がある。
以下、本実施形態の水蒸気バリアフィルム10の構成について詳細に説明する。
(基板)
本実施形態の水蒸気バリアフィルム10における基板1は、ガス透過性を有し、可撓性を有する折り曲げ可能なフィルム基板である。この基板1は、水蒸気バリア性を有するポリシラザン改質層(水蒸気バリア層)を保持することができるフィルム材料であれば特に限定されない。
ここで、本発明におけるガス透過性を有する基材1とは、モコン法に従いMOCON社製PERMATRAN−W3/33を用いて、JIS規格のK7129法(温度40℃、湿度90%RH)に基づいて測定した水蒸気透過率が、モコン法の測定で0.5g/m2/日以上であるものと定義される。
なお、本発明に用いられる基板は、実質的に水蒸気バリア性を有さない後述の樹脂基板単体でもよく、また、樹脂基板にアンカーコート層、平滑層、ブリードアウト防止層4などの各種機能層を積層した基材1であってもよい。
基板1に用いられうる樹脂基板としては、例えば、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、ポリアリレート、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ナイロン(Ny)、芳香族ポリアミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ポリエーテルイミド等の樹脂材料からなる樹脂フィルム、有機無機ハイブリッド構造を有するシルセスキオキサンを基本骨格とした耐熱透明フィルム(製品名シルプラス、新日鐵化学株式会社製)、さらには上記したフィルム材料が2層以上積層されてなる樹脂フィルム等が挙げられる。
これら樹脂フィルムのうち、コストや入手の容易性の点では、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)等のフィルムが好ましく用いられる。
また、デバイスを封止する加工工程で高温処理が必要な場合には、耐熱性と透明性を両立した透明ポリイミドのフィルム、例えば東洋紡株式会社製、透明ポリイミド系フィルム・タイプHMや、三菱瓦斯化学株式会社製、透明ポリイミド系フィルム・ネオプリムL L−3430などが好ましく用いられる。
この樹脂基板の厚さは5〜500μm程度が好ましく、さらに好ましくは25〜250μmである。
また、樹脂基板(基板1)は透明であることが好ましい。樹脂基板が透明であって基板1上に形成する各種層も透明にすれば、光透過性を有する水蒸気バリアフィルムとすることが可能となる。基板1が光透過性を有すれば、有機EL素子からの発光光を透過させたり、太陽電池へ向かう太陽光を通過させたりすることが可能になることから、有機EL素子や太陽電池を封止する封止フィルム(透明基板)として好適に用いることができる。
また、上記の樹脂材料を用いた樹脂基板は、未延伸フィルムでもよく、延伸フィルムでもよい。上記の樹脂材料からなる樹脂基板は、従来公知の一般的な製法により製造することが可能である。例えば、材料となる樹脂を押し出し機により溶融し、環状ダイやTダイにより押し出して急冷することにより、実質的に無定形で配向していない未延伸の基板を製造することができる。また、未延伸の基板を一軸延伸、テンター式逐次二軸延伸、テンター式同時二軸延伸、チューブラー式同時二軸延伸等の公知の方法により、基板の流れ(縦軸)方向、または基板の流れ方向と直角(横軸)方向に延伸することにより延伸基板を製造することができる。この場合の延伸倍率は、基板の原料となる樹脂に合わせて適宜選択することできるが、縦軸方向及び横軸方向にそれぞれ2〜10倍であることが好ましい。
(マイクロレンズ構造)
上述したように、図1に示す実施形態において、基板1は、その一方の表面にマイクロレンズ構造1aを有している。かような構成を有することにより、例えば有機EL素子からの発光光が水蒸気バリアフィルムを透過して出射側へと出射する際の光取り出し効率が向上しうる。ここで、「マイクロレンズ構造」とは、微小なレンズ様構造体が規則的かつ周期的に配置されてなる構造をいう。マイクロレンズ構造を構成する個々のレンズ構造体の具体的な構成については、上述した機能を発揮することができるものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択すればよい。例えば、レンズ構造体の形状、構造、大きさ等は特に制限されず、例えば、凸レンズ、凹レンズなどが用いられうる。また、基板自体に凹凸形状を付与し、レンズの代替としてもよい。なお、光取り出し効率が高いという観点からは、凸レンズが好ましく用いられる。また、レンズ構造体は、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
凸レンズとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択すればよく、球面レンズ、非球面レンズが挙げられる。凸レンズの形状としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択すればよく、例えば立方体、四角錘、球体を半分に割った半球レンズ、円柱を半分に割った蒲鉾型レンズなどが挙げられる。凸レンズの大きさとしては特に制限はなく目的に応じて適宜選択すればよく、凸部の高さは10nm〜10μm程度であり、凸部のピッチは0.1μm〜1mm程度である。
レンズ構造体の構成材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択すればよく、エポキシ樹脂、アクリル樹脂などの紫外線硬化樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂などの熱硬化性樹脂、ポリエチレン、ポリカーボネートなどの熱可塑性樹脂、ポリシロキサンなどの紫外線硬化素材等が挙げられる。レンズ構造体の屈折率についても特に制限はなく、目的に応じて適宜選択すればよいが、光取り出し効率の点、色味の点で1.4〜2.1であることが好ましい。1.4以上であれば、光取り出し効率が十分に確保され、2.1以下であれば、波長分散の増大に伴う色味の低下が防止されうる。
レンズ構造体の作製方法について特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばインクジェット法、インプリント法、フォトリソグラフィー法等が挙げられる。インプリント法では、例えば、レンズ構造体形成用の塗料をスピンコート法、スクリーン印刷法、ディスペンサ法などの公知の塗布方法により塗布した後、この塗料に、石英、ガラス、樹脂などの材料からなる所定の形状のレンズ構造体用モールドを押圧し、さらに必要に応じて紫外線などを照射して塗料を硬化させて、多数の微小なレンズ構造体からなるマイクロレンズ構造を形成することができる。また、所定の形状のレンズ構造体用モールドを押圧する前に、離型性を考慮して、公知の離型剤をモールドの表面に塗布しておいてもよい。
レンズ構造体の形成に用いるレンズ構造体形成用モールドの形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、電子ビーム(EB)リソグラフィー、エッチング、レーザー描画等が挙げられる。レンズ構造体形成用モールドを形成する方法の一例としては、例えば、石英基板に感光性レジストを用いたフォトリソ工程によって、所定位置の石英基板面を開口させ、ドライエッチングによって、所定深さまでエッチングする方法であってもよい。また、適当なマスクを用いて、電子ビームを照射する方法であってもよい。
(水蒸気バリア層)
上述したように、本実施形態における水蒸気バリア層2は、ポリシラザンを含有する溶液(以下、「ポリシラザン含有塗布液」とも称する)を塗布して得られた塗膜に第1の紫外線を照射して前記ポリシラザンを改質することにより形成されたポリシラザン改質層である点に特徴がある。以下、このようにして水蒸気バリア層2を形成する具体的な形態について、詳細に説明する。
本発明で用いられる「ポリシラザン」とは、珪素−窒素結合を持つポリマーで、Si−N、Si−H、N−H等の結合を有するSiO2、Si34及び両方の中間固溶体SiOxy等のセラミック前駆体無機ポリマーである。
そのポリシラザンを含む液体を塗布する塗布方法としては、従来公知の適切な方法が採用されうる。具体例としては、スピンコート法、ロールコート法、フローコート法、インクジェット法、スプレーコート法、プリント法、ディップコート法、流延成膜法、バーコート法、グラビア印刷法等が挙げられる。塗布厚さは、目的に応じて適切に設定されうる。例えば、塗布厚さは、乾燥後の厚さが1nm〜100μm程度であることが好ましく、さらに好ましくは10nm〜10μm程度、最も好ましくは10nm〜1μm程度である。
ここで、ポリシラザンとしては、基板1の性状を損なわないように塗布するために、比較的低温でセラミック化してシリカへと改質されうる化合物が好ましく、例えば、特開平8−112879号公報に記載の下記一般式(1)で表される単位からなる主骨格を有する化合物が好ましい。
Figure 2013052569
上記一般式(1)において、R1、R2及びR3は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルシリル基、アルキルアミノ基またはアルコキシ基を表す。
本発明では、得られる水蒸気バリア層2としての緻密性の観点から、R1、R2、及びR3の全てが水素原子であるパーヒドロポリシラザンが特に好ましい。
また、そのSiと結合する水素原子部分の一部がアルキル基等で置換されたオルガノポリシラザンは、メチル基等のアルキル基を有することにより下地である基板1との接着性が改善され、かつ硬くてもろいポリシラザンによるセラミック膜に靭性を持たせることができ、より膜厚(平均膜厚)を厚くした場合でもクラックの発生が抑えられるという利点がある。そこで用途に応じて適宜、パーヒドロポリシラザンとオルガノポリシラザンを選択すればよく、これらを混合して使用することもできる。
パーヒドロポリシラザンは、直鎖構造と、6員環及び8員環を中心とする環構造が存在した構造と推定されている。その分子量は数平均分子量(Mn)で約600〜2000程度(ポリスチレン換算)で、液体または固体の物質があり、その状態は分子量により異なる。これらは有機溶媒に溶解した溶液状態で市販されており、市販品をそのままポリシラザン含有塗布液として使用することができる。
低温でセラミック化するポリシラザンの他の例としては、上記一般式(1)で表される単位からなる主骨格を有するポリシラザンに、珪素アルコキシドを反応させて得られる珪素アルコキシド付加ポリシラザン(例えば、特開平5−238827号公報参照)、グリシドールを反応させて得られるグリシドール付加ポリシラザン(例えば、特開平6−122852号公報参照)、アルコールを反応させて得られるアルコール付加ポリシラザン(例えば、特開平6−240208号公報参照)、金属カルボン酸塩を反応させて得られる金属カルボン酸塩付加ポリシラザン(例えば、特開平6−299118号公報参照)、金属を含むアセチルアセトナート錯体を反応させて得られるアセチルアセトナート錯体付加ポリシラザン(例えば、特開平6−306329号公報参照)、金属微粒子を添加して得られる金属微粒子添加ポリシラザン(例えば、特開平7−196986号公報参照)等が挙げられる。
ポリシラザンを含有する塗布液を調製する有機溶媒としては、ポリシラザンと容易に反応するようなアルコール系溶媒や水分を含有するものを用いることは好ましくない。従って、具体的には、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素等の炭化水素溶媒、ハロゲン化炭化水素溶媒や、脂肪族エーテル、脂環式エーテル等のエーテル類が使用できる。詳しくは、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、ソルベッソ、ターベン等の炭化水素、塩化メチレン、トリクロロエタン等のハロゲン炭化水素、ジブチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類等がある。これらの有機溶媒は、ポリシラザンの溶解度や有機溶媒の蒸発速度等の特性にあわせて選択し、複数の有機溶媒を混合してもよい。
ポリシラザン含有塗布液中におけるポリシラザン濃度は、目的とするポリシラザン改質層の膜厚や塗布液のポットライフによっても異なるが、0.2〜35質量%程度であることが好ましい。
ポリシラザン含有塗布液中には、酸化珪素化合物への転化を促進するため、アミンや金属の触媒を添加することもできる。具体的には、AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製のアクアミカ(登録商標) NAX120−20、NN110、NN310、NN320、NL110A、NL120A、NL150A、NP110、NP140、SP140等が挙げられる。
ポリシラザン含有塗布液を基板1の表面に塗布するための具体的な手法について特に制限はなく、従来公知の知見が適宜参照されうる。一例を挙げると、スピンコート、ディッピング、ローラーブレード、ワイヤレスバー、スプレー法などが挙げられる。
上述したポリシラザン含有塗布液を用いて形成されたポリシラザン改質層は、改質処理前または改質処理中に含まれる水分の量が制御されていることが好ましい。
改質処理前または改質処理中にポリシラザン改質層中に入りうる水分の混入源としては、例えば塗布基板表面からの移行や、雰囲気中の水蒸気の吸収がある。基板側からポリシラザン改質層中に移行する水分の制御は、ポリシラザン含有塗布液を塗布する前に基板を一定の温度湿度環境下で保存して、含水量を所望の値に制御することができる。所望の値は、後述の雰囲気中の湿度によって異なるが、通常、重量として1000ppm以下、好ましくは、300ppm以下である。
ポリシラザン含有塗布液を基板上に塗布した後には、通常は乾燥工程を行うことが好ましく、この乾燥工程においては、主に有機溶媒を取り除くため、乾燥条件を熱処理等の方法で適宜決めることができる。熱処理温度は迅速処理の観点から高い温度であることが好ましいが、特に基板1が樹脂フィルムからなる場合には、当該樹脂フィルムに対する熱ダメージを考慮して、温度と処理時間を適宜決定することが好ましい。例えば、基板1としてガラス転位温度(Tg)が70℃のポリエチレンテレフタレート基板を用いる場合には、熱処理温度は150℃以下に設定することができる。処理時間は溶媒が除去され、かつ基板1への熱ダメージが少なくなるように短時間に設定することが好ましく、熱処理温度が150℃程度であれば30分以内に設定することができる。
ポリシラザン含有塗布液を基板上に塗布する工程(及び乾燥工程を行う場合の当該乾燥工程)における雰囲気は、比較的低湿に制御されていることが好ましいが、低湿度環境における湿度は温度により変化するので、温度と湿度との関係は露点の規定により好ましい形態が示される。好ましい露点は4℃以下(温度25℃/湿度25%)で、より好ましい露点は−8℃(温度25℃/湿度10%)以下、さらに好ましい露点は−31℃(温度25℃/湿度1%)以下である。また、水分を取り除きやすくするため、減圧乾燥してもよい。減圧乾燥における圧力は常圧〜1Paを選ぶことができる。
(紫外線の照射によるポリシラザンの改質処理)
本発明における水蒸気バリア層2を構成するポリシラザン改質層を形成するための改質処理は、ポリシラザン含有塗布液を塗布して得られた塗膜に紫外線(第1の紫外線)を照射することにより行われる。紫外線の照射により、ポリシラザンの一部または全部が、酸化珪素(SiO)または酸化窒化珪素(SiON)へ転化する。このような処理を「改質処理」と称しているのである。
この改質処理は、ポリシラザンの転化反応に基づく公知の方法を選ぶことができる。ポリシラザンの置換反応による酸化珪素膜または酸化窒化珪素膜の形成には450℃以上の高温が必要であり、樹脂フィルムを基板1に用いたフレキシブル基板においては、適用が難しい。従って、本発明の水蒸気バリアフィルムを作製するに際しては、プラスチック基板への適用という観点から、より低温で転化反応(改質処理)が可能な紫外線を利用することを必須としているのである。
本発明の水蒸気バリアフィルムの製造において、水分が取り除かれたポリシラザン塗膜は紫外線照射による処理で改質される。紫外線(紫外光と同義)によって生成されるオゾンや活性酸素原子は高い酸化能力を有しており、低温で高い緻密性及び絶縁性を有する酸化珪素膜または酸化窒化珪素膜を形成することが可能である。
この紫外線照射により、セラミックス化に寄与するO2及びH2Oや、紫外線吸収剤、ポリシラザン自身が励起、活性化される。そして、励起したポリシラザンのセラミックス化が促進され、得られるセラミックス膜が緻密になる。紫外線照射は、塗膜形成後であればいずれの時点で実施しても有効である。
本発明での紫外線照射処理には、常用されているいずれの紫外線発生装置を使用してもよい。なお、本発明でいう紫外線とは、一般に「真空紫外線」とよばれる10〜200nmの波長を有する電磁波を含む紫外線をいう。特に、本発明においては、紫外線として真空紫外線を用いることが好ましい。これにより、緻密性及び絶縁性により優れた水蒸気バリア層2が形成されうるのである。
紫外線の照射条件については、紫外線照射前のポリシラザン塗膜を担持している基板1がダメージを受けない範囲で、照射強度や照射時間を設定することが好ましい。
基板1に樹脂フィルム等のプラスチックフィルムを用いた場合を例に挙げると、例えば、2kW(80W/cm×25cm)のランプを用い、基板表面の強度が20〜300mW/cm2、好ましくは50〜200mW/cm2になるように基材−紫外線照射ランプ間の距離を設定し、0.1秒〜10分間の照射を行うことができる。
一般に、紫外線照射処理時の基板温度が150℃以上になると、プラスチックフィルム等の場合には、基板1が変形したりその強度が劣化したりするなど、基板1の特性が損なわれることになる。しかしながら、ポリイミド等の耐熱性の高いフィルムなどの場合には、より高温での改質処理が可能である。従って、この紫外線照射時の基板の温度としては、一般的な上限はなく、基板1の種類によって当業者が適宜設定することができる。
このような紫外線の発生手段としては、例えば、メタルハライドランプ、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、キセノンアークランプ、カーボンアークランプ、エキシマランプ、紫外線レーザー等が挙げられるが、特に限定されない。また、発生させた紫外線を改質前のポリシラザン塗膜に照射する際には、効率向上と均一な照射を達成する観点から、発生源からの紫外線を反射板で反射させてから改質前のポリシラザン塗膜に当てることが好ましい。
紫外線照射は、バッチ処理にも連続処理にも適合可能であり、使用する基板1の形状によって適宜選定することができる。ポリシラザン改質層を有する基板1が長尺フィルム状である場合には、これを搬送させながら上記のような紫外線発生源を具備した乾燥ゾーンで連続的に紫外線を照射することによりセラミックス化することができる。紫外線照射に要する時間は、使用する基板1やポリシラザン改質層の組成、濃度にもよるが、一般に0.1秒〜10分であり、好ましくは0.5秒〜3分である。
また、真空紫外線(VUV)を照射する際の雰囲気中の酸素濃度は300ppm〜10000ppm(1%)とすることが好ましく、さらに好ましくは500ppm〜5000ppmである。このような酸素濃度の範囲に調整することにより、酸素過多の水蒸気バリア層2の生成を防止してバリア性の劣化を防止することができる。
真空紫外線(VUV)照射時の雰囲気中の酸素以外のガスとしては乾燥不活性ガスを用いることが好ましく、特にコストの観点から乾燥窒素ガスを用いることが好ましい。
酸素濃度の調整は照射庫内へ導入する酸素ガス、不活性ガスの流量を計測し、流量比を変えることで調整可能である。
真空紫外線照射による処理は、ポリシラザンの分子内の原子間結合力より大きい100〜200nmの波長の光エネルギーを用い、好ましくは100〜180nmの波長の光エネルギーを用い、原子の結合を光量子プロセスと呼ばれる光子のみの作用により、直接切断しながら活性酸素やオゾンによる酸化反応を進行させることで、比較的低温で酸化珪素膜の形成を行う方法である。これに必要な真空紫外線源としては、希ガスエキシマランプが好ましく用いられる。
なお、Xe、Kr、Ar、Ne等の希ガスの原子は化学的に結合して分子を作らないため、不活性ガスと呼ばれる。しかし、放電等によりエネルギーを得た希ガスの原子(励起原子)は他の原子と結合して分子を作ることができる。希ガスがキセノン(Xe)の場合には、
Figure 2013052569
となり、励起されたエキシマ分子であるXe2 *が基底状態に遷移するときに172nmのエキシマ光(真空紫外線)を発光する。
エキシマランプの特徴としては、放射が一つの波長に集中し、必要な光以外がほとんど放射されないので効率が高いことが挙げられる。また、余分な光が放射されないので、対象物の温度を低く保つことができる。さらには始動・再始動に時間を要さないので、瞬時の点灯点滅が可能である。
エキシマ発光を得るには、誘電体バリア放電を用いる方法が知られている。誘電体バリア放電とは、両電極間に誘電体(エキシマランプの場合は透明石英)を介してガス空間を配し、電極に数10kHzの高周波高電圧を印加することによりガス空間に生じる雷に似た非常に細いmicro dischargeと呼ばれる放電である。
また、効率よくエキシマ発光を得る方法としては、誘電体バリア放電以外には無電極電界放電も知られている。無電極電界放電とは、容量性結合による放電であり、別名RF放電とも呼ばれる。ランプと電極との配置は、基本的には誘電体バリア放電と同じでよいが、両極間に印加される高周波は数MHzで点灯される。無電極電界放電はこのように空間的にまた時間的に一様な放電が得られる。
そして、Xeエキシマランプは、波長の短い172nmの紫外線を単一波長で放射することから発光効率に優れている。この光は、酸素の吸収係数が大きいため、微量な酸素でラジカル状態の酸素原子種やオゾンを高濃度で発生することができる。また、有機物の結合を解離させる波長の短い172nmの光エネルギーは能力が高いことが知られている。この活性酸素やオゾンと紫外線放射が持つ高いエネルギーによって、短時間でポリシラザン塗膜の改質を実現できる。従って、波長185nm、254nmの紫外線を発する低圧水銀ランプやプラズマ洗浄と比べて、高スループットに伴うプロセス時間の短縮や設備面積の縮小、熱によるダメージを受けやすい有機材料やプラスチック基板、樹脂フィルム等への照射を可能としている。
また、エキシマランプは光の発生効率が高いため、低い電力の投入で点灯させることが可能である。また、光による温度上昇の要因となる波長の長い光は発せず、紫外線領域で単一波長のエネルギーを照射するため、照射対象物の表面温度の上昇が抑えられるという特徴を有する。このため、熱の影響を受けやすいとされるポリエチレンテレフタレート等の樹脂フィルムを基板1とする水蒸気バリアフィルム10への照射に適している。
なお、上述の手法によりポリシラザン改質層を形成する際の第1の紫外線の積算光量は、好ましくは1000〜10000mJ/cm2であり、より好ましくは2000〜6000mJ/cm2であり、特に好ましくは2000〜4000mJ/cm2である。積算光量が1000mJ/cm2以上であれば十分なバリア性が確保されうる。一方、積算光量が10000mJ/cm2以下であれば、ポリシラザン改質層の柔軟性の低下に伴うひび割れの発生やバリア性の低下が防止されうる。
上述の手法により得られた水蒸気バリア層2の膜厚は、好ましくは50〜1000nmであり、より好ましくは100〜800nmであり、特に好ましくは100〜600nmである。水蒸気バリア層2の膜厚が50nm以上であれば、十分な水蒸気バリア性が発揮されうる。一方、水蒸気バリア層2の膜厚が1000nm以下であれば、塗布液の塗布性や水蒸気バリア層2の透過度が十分なレベルに維持されうる。
本実施形態において、水蒸気バリア層2は、基板1のマイクロレンズ構造を有する表面上に形成されていることから、基板1との界面はこれに対応したマイクロレンズ構造を有している。一方、本実施形態において、水蒸気バリア層2は、全面にわたって均一な膜厚で形成されていることにより、その基板1とは反対側の表面にもまた、同様のマイクロレンズ構造を有している。つまり、水蒸気バリア層2の図1に示す断面形状は、蛇腹状となっている。かような構成によれば、水蒸気バリア層2のひび割れ耐性が向上するという利点が得られるため、好ましい。このような構成の水蒸気バリア層2は、ポリシラザン含有塗布液の塗布手法としてスピンコートやディップコート法、スプレー法などを採用することで、形成することが可能である。
なお、水蒸気バリア層2の基板1とは反対側の表面がマイクロレンズ構造を有する場合、その形状は基板1側の形状と対応していなくてもよい。言い換えれば、水蒸気バリア層2が均一な膜厚で形成されることなく、水蒸気バリア層2の両表面が互いに無関係な形状のマイクロレンズ構造を有していてもよい。このような構成の水蒸気バリア層2は、例えば、いったん形成された水蒸気バリア層2の表面に所望の形状を有するシートを型押しすることによって、形成することができる。さらに、水蒸気バリア層2の基板1とは反対側の表面は、平坦であってもよい。このような構成の水蒸気バリア層2は、ポリシラザン含有塗布液の塗布手法としてワイヤレスバーやスリットコート法、ロール塗布法などを採用することで、形成することが可能である。
なお、水蒸気バリア層2の両表面が互いに無関係な形状のマイクロレンズ構造を有している場合や、水蒸気バリア層2の基板1とは反対側の表面が平坦である場合において、水蒸気バリア層2の「膜厚」とは、水蒸気バリア層2の積層方向の厚みのうち最も厚い部分の長さを意味する。
以上のように形成された水蒸気バリア層2は極めて低い水蒸気透過率を達成できることから、優れた水蒸気バリア性を発揮することができる。上記と同様の手法により平坦な基板表面に形成された水蒸気バリア層は柔軟性に乏しいことから、ひび割れを生じたり、密着性の低下に起因して膜剥がれを起こしたりするという問題がある。これに対し、本発明の水蒸気バリアフィルム10において水蒸気バリア層は基板1表面のマイクロレンズ構造の上に形成されているため、フィルムの屈曲や伸縮に追従することができ、バリア性を維持することが可能となる。また、基板1と水蒸気バリア層2との接触面積も増加することから、水蒸気バリア層2と基板1との密着性も向上する。さらには、水蒸気バリア層2がマイクロレンズ構造1aを保護する機能をも有することから、マイクロレンズ構造の劣化も防止され、光取り出し効率も十分なレベルに維持することができる。
一方、上述した手法以外の手法(例えば、ポリシラザン含有塗布液の塗膜の熱処理など)により形成された水蒸気バリア層については、もともと柔軟性をある程度有していることから、本発明の構成とすることによるメリットがあまりない。それどころか、かような水蒸気バリア層は電子デバイスのバリアに用いられる場合に要求される水蒸気透過に対する十分なバリア性を発揮することができない。かような観点からも、上述した本発明の構成とすることによる優位性は明らかである。
(保護層)
上述したように、保護層3は、水蒸気バリア層2を保護してこれに傷や汚れが付着するのを防止するための層である。また、保護層3の存在により、水蒸気バリア層2のひび割れに対する耐性も向上しうる。保護層3の具体的な形態については、上述した機能を発揮できるものであれば特に制限はない。
保護層3を形成するための手法の一例について説明すると、保護層3は、上述した水蒸気バリア層2の形成方法に類似した方法(溶液からなる塗膜への紫外線の照射)を用いて形成されうる。水蒸気バリア層2の形成との相違点は、水蒸気バリア層2の形成にはポリシラザン含有塗布液を用いたのに対し、保護層3の形成にはポリシロキサンを含有する塗布液(以下、「ポリシロキサン含有塗布液」とも称する)が用いられる点にある。
保護層3を形成するためのポリシロキサン含有塗布液は、ポリシロキサン及び有機溶媒を含む。
ポリシロキサンとしては、特に制限はないが、好ましい一例として、例えば、下記一般式(2)で表されるオルガノポリシロキサンが挙げられる。
Figure 2013052569
一般式(2)において、R4〜R9は、同一又は異なる炭素数1〜8の有機基を表す。R4〜R9は、アルコキシ基及び水酸基のいずれかを含む。mは1以上である。
4〜R9で表される炭素数1〜8の有機基としては、例えば、γ−クロロプロピル基、3,3,3−トリフロロプロピル基等のハロゲン化アルキル基、ビニル基、フェニル基、γ−メタクリルオキシプロピル基等の(メタ)アクリル酸エステル基、γ−グリシドキシプロピル基等のエポキシ含有アルキル基、γ−メルカプトプロピル基等のメルカプト含有アルキル基、γ−アミノプロピル基等のアミノアルキル基、γ−イソシアネートプロピル基等のイソシアネート含有アルキル基、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基等の直鎖状もしくは分岐状アルキル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基等の脂環状アルキル基、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基等の直鎖状もしくは分岐状アルコキシ基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、バレリル基、カプロイル基等のアシル基等が挙げられる。
前記オルガノポリシロキサンは、得られる保護層の強度に優れる点で、加水分解物、部分縮合物等として用いるのが好ましい。加水分解物又は部分縮合物を得る場合、その加水分解又は縮合における反応性の点で、一般式(2)においては、mが1以上で、かつ、ポリスチレン換算の重量平均分子量が150〜10,000であるオルガノポリシロキサンが好ましい。該オルガノポリシロキサンにおけるポリスチレン換算の重量平均分子量としては、200〜8,000であるのがより好ましい。前記ポリスチレン換算の重量平均分子量が、150以上であれば、形成される保護層に亀裂が生じる虞が低減され、保護層としての機能が十分に発揮されうる。一方、当該重量平均分子量が10,000以下であれば、形成される保護層の硬化が十分に行なわれて保護層の硬度が十分に確保されうる。
上述したオルガノポリシロキサンを含有するポリシロキサン含有塗布液から保護層を形成するには、当該塗布液を塗布して得られた塗膜に紫外線(保護層を形成する際に照射する紫外線を「第2の紫外線」とも称する)を照射して前記ポリシロキサンを改質することによりポリシロキサン改質層からなる保護層3を得ることができる。なお、第2の紫外線の照射によってポリシロキサン改質層からなる保護層3を得る際の具体的な手法については、第1の紫外線の照射によってポリシラザン改質層からなる水蒸気バリア層2を得る際の形態として上述した形態が同様に採用されうるため、ここでは詳細な説明を省略する。ただし、ポリシロキサン改質層を形成する際の第2の紫外線の積算光量は、好ましくは200〜10000mJ/cm2であり、より好ましくは400〜5000mJ/cm2であり、特に好ましくは800〜3000mJ/cm2である。積算光量が200mJ/cm2以上であれば十分なバリア性が確保されうる。一方、積算光量が10000mJ/cm2以下であれば、ポリシロキサン改質層の柔軟性の低下に伴うひび割れの発生やバリア性の低下が防止されうる。
あるいは、上述したオルガノポリシロキサンに代えて、他のポリシロキサンを用いてもよい。具体的には、下記一般式(3)で表される化合物(以下、「化合物(3)」とも称する)、下記一般式(4)で表される化合物(以下、「化合物(4)」とも称する)及び下記一般式(5)で表される化合物(以下、「化合物(5)」とも称する)からなる群から選ばれる少なくとも1種のシラン化合物を加水分解・縮合した加水分解縮合物を、ポリシロキサンとして用いて保護層を形成してもよい。
Figure 2013052569
一般式(3)において、R10は水素原子、フッ素原子または1価の有機基を示し、R11は1価の有機基を示し、aは1〜2の整数を示す。
Figure 2013052569
一般式(4)において、R12は1価の有機基を示す。
Figure 2013052569
一般式(5)において、R13〜R16は同一又は異なる1価の有機基を示し、b及びcは同一又は異なる0〜2の数を示し、R17は酸素原子、フェニレン基または−(CH2n−で表される基(ここで、nは1〜6の整数である)を示し、dは0又は1である。
本明細書において「加水分解物」とは、上記化合物(3)〜(5)から選ばれる少なくとも1種のシラン化合物に含まれるアルコキシ基のすべてが加水分解されている必要はなく、例えば、1個だけが加水分解されているもの、2個以上が加水分解されているもの、あるいはこれらの混合物であってもよい。また、本明細書において「縮合物」とは、上記化合物(3)〜(5)の加水分解物のシラノール基が縮合してSi−O−Si結合を形成したものであるが、本発明では、シラノール基がすべて縮合している必要はなく、わずかな一部のシラノール基が縮合したもの、縮合の程度が異なっているものの混合物等をも包含する概念である。
化合物(3);上記一般式(3)において、R10及びR11の1価の有機基としては、アルキル基、アリール基、アリル基、グリシジル基などを挙げることができる。なかでも、一般式(3)において、R10は1価の有機基、特にアルキル基またはフェニル基であることが好ましい。ここで、アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などが挙げられ、好ましくは炭素数1〜5であり、これらのアルキル基は鎖状でも、分岐していてもよく、さらに水素原子がフッ素原子などに置換されていてもよい。一般式(3)において、アリール基としては、フェニル基、ナフチル基、メチルフェニル基、エチルフェニル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、フルオロフェニル基などを挙げることができる。化合物(3)として好ましい化合物は、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリ−n−プロポキシシラン、メチルトリ−iso−プロポキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシランなどである。これらは、1種あるいは2種以上を同時に使用してもよい。
化合物(4);上記一般式(4)において、R12で表される1価の有機基としては、先の一般式(3)において示したものと同様の有機基を挙げることができる。化合物(4)の具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−iso−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン、テトラ−tert−ブトキシシラン、テトラフェノキシシランなどが挙げられる。
化合物(5);上記一般式(5)において、R13〜R16で表される1価の有機基としては、先の一般式(3)において示したものと同様の有機基を挙げることができる。化合物(5)のうち一般式(5)におけるR17が酸素原子の化合物としては、ヘキサメトキシジシロキサン、ヘキサエトキシジシロキサン、1,1,3,3−テトラメトキシ−1,3−ジメチルジシロキサン、1,1,3,3−テトラエトキシ−1,3−ジメチルジシロキサン、1,1,3,3−テトラメトキシ−1,3−ジフェニルジシロキサン、1,3−ジメトキシ−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3−ジエトキシ−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3−ジメトキシ−1,1,3,3−テトラフェニルジシロキサン、1,3−ジエトキシ−1,1,3,3−テトラフェニルジシロキサンなどを、好ましい例として挙げることができる。一般式(5)においてd=0の化合物としては、ヘキサメトキシジシラン、ヘキサエトキシジシラン、1,1,2,2−テトラメトキシ−1,2−ジメチルジシラン、1,1,2,2−テトラエトキシ−1,2−ジメチルジシラン、1,1,2,2−テトラメトキシ−1,2−ジフェニルジシラン、1,2−ジメトキシ−1,1,2,2−テトラメチルジシラン、1,2−ジエトキシ−1,1,2,2−テトラメチルジシラン、1,2−ジメトキシ−1,1,2,2−テトラフェニルジシラン、1,2−ジエトキシ−1,1,2,2−テトラフェニルジシランなどを好ましい例として挙げることができる。
さらに、一般式(5)において、R17が−(CH2n−で表される基である化合物としては、ビス(トリメトキシシリル)メタン、ビス(トリエトキシシリル)メタン、1,2−ビス(トリメトキシシリル)エタン、1,2−ビス(トリエトキシシリル)エタン、1−(ジメトキシメチルシリル)−1−(トリメトキシシリル)メタン、1−(ジエトキシメチルシリル)−1−(トリエトキシシリル)メタン、1−(ジメトキシメチルシリル)−2−(トリメトキシシリル)エタン、1−(ジエトキシメチルシリル)−2−(トリエトキシシリル)エタン、ビス(ジメトキシメチルシリル)メタン、ビス(ジエトキシメチルシリル)メタン、1,2−ビス(ジメトキシメチルシリル)エタン、1,2−ビス(ジエトキシメチルシリル)エタン、1,2−ビス(トリメトキシシリル)ベンゼン、1,2−ビス(トリエトキシシリル)ベンゼン、1,3−ビス(トリメトキシシリル)ベンゼン、1,3−ビス(トリエトキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(トリメトキシシリル)ベンゼン、1,4−ビス(トリエトキシシリル)ベンゼンなどを好ましい例として挙げることができる。
本発明において、化合物(3)〜(5)としては、上記化合物(3)、(4)及び(5)の1種又は2種以上を用いることができる。化合物(3)〜(5)を加水分解・縮合させてポリシロキサンを得る際には、触媒を使用してもよい。この際に使用する触媒としては、金属キレート化合物、有機酸、無機酸、有機塩基、無機塩基などが挙げられる。
金属キレート化合物としては、例えば、トリエトキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、トリ−n−プロポキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、トリ−iso−プロポキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、トリ−n−ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、トリ−sec−ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、トリ−tert−ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)チタン、ジエトキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、ジ−n−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、ジ−iso−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、ジ−n−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、ジ−sec−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、ジ−tert−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタン、モノエトキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、モノ−n−プロポキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、モノ−iso−プロポキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、モノ−n−ブトキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、モノ−sec−ブトキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、モノ−tert−ブトキシ・トリス(アセチルアセトナート)チタン、テトラキス(アセチルアセトナート)チタン、トリエトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリ−n−プロポキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリ−iso−プロポキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリ−n−ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリ−sec−ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、トリ−tert−ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)チタン、ジエトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジ−n−プロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジ−iso−プロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジ−n−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジ−sec−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジ−tert−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタン、モノエトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ−n−プロポキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ−iso−プロポキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ−n−ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ−sec−ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ−tert−ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)チタン、テトラキス(エチルアセトアセテート)チタン、モノ(アセチルアセトナート)トリス(エチルアセトアセテート)チタン、ビス(アセチルアセトナート)ビス(エチルアセトアセテート)チタン、トリス(アセチルアセトナート)モノ(エチルアセトアセテート)チタンなどのチタンキレート化合物;
トリエトキシ・モノ(アセチルアセトナート)ジルコニウム、トリ−n−プロポキシ・モノ(アセチルアセトナート)ジルコニウム、トリ−iso−プロポキシ・モノ(アセチルアセトナート)ジルコニウム、トリ−n−ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)ジルコニウム、トリ−sec−ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)ジルコニウム、トリ−tert−ブトキシ・モノ(アセチルアセトナート)ジルコニウム、ジエトキシ・ビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、ジ−n−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、ジ−iso−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、ジ−n−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、ジ−sec−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、ジ−tert−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、モノエトキシ・トリス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、モノ−n−プロポキシ・トリス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、モノ−iso−プロポキシ・トリス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、モノ−n−ブトキシ・トリス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、モノ−sec−ブトキシ・トリス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、モノ−tert−ブトキシ・トリス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、テトラキス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、トリエトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、トリ−n−プロポキシ・モノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、トリ−iso−プロポキシ・モノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、トリ−n−ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、トリ−sec−ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、トリ−tert−ブトキシ・モノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ジエトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ジ−n−プロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ジ−iso−プロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ジ−n−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ジ−sec−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ジ−tert−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、モノエトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、モノ−n−プロポキシ・トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、モノ−iso−プロポキシ・トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、モノ−n−ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、モノ−sec−ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、モノ−tert−ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、モノ(アセチルアセトナート)トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ビス(アセチルアセトナート)ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、トリス(アセチルアセトナート)モノ(エチルアセトアセテート)ジルコニウムなどのジルコニウムキレート化合物;
トリス(アセチルアセトナート)アルミニウム、トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウムなどのアルミニウムキレート化合物;などを挙げることができる。
有機酸としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、シュウ酸、マレイン酸、メチルマロン酸、アジピン酸、セバシン酸、没食子酸、酪酸、メリット酸、アラキドン酸、シキミ酸、2−エチルヘキサン酸、オレイン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレイン酸、サリチル酸、安息香酸、p−アミノ安息香酸、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、モノクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、ギ酸、マロン酸、スルホン酸、フタル酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸などを挙げることができる。無機酸としては、例えば、塩酸、硝酸、硫酸、フッ酸、リン酸などを挙げることができる。
有機塩基としては、例えば、ピリジン、ピロール、ピペラジン、ピロリジン、ピペリジン、ピコリン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジメチルモノエタノールアミン、モノメチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジアザビシクロオクラン、ジアザビシクロノナン、ジアザビシクロウンデセン、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、尿素、クレアチニンなどを挙げることができる。無機塩基としては、例えば、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム、水酸化カルシウムなどを挙げることができる。
これら触媒のうち、金属キレート化合物、有機酸、無機酸が好ましく、より好ましくは、有機酸を挙げることができる。有機酸としては、特に酢酸、シュウ酸、マレイン酸、マロン酸が好ましい。触媒として有機酸を用いる場合、加水分解及び縮合反応中のポリマーの析出やゲル化のおそれが少なく好ましい。これらの触媒は、1種又は2種以上を同時に使用してもよい。上記触媒の使用量は、化合物(3)〜(5)中のRO基の総量1モルに対して、通常、0.00001〜0.05モル、好ましくは0.00001〜0.01モルである。ポリシロキサンが化合物(3)〜(5)の縮合物である場合には、その分子量は、ポリスチレン換算の重量平均分子量で、通常、500〜300,000、好ましくは、700〜200,000、さらに好ましくは1,000〜100,000程度である。
各成分を完全加水分解縮合物に換算したときに、化合物(5)が化合物(3)、化合物(4)及び化合物(5)の総量に対して5〜60重量%、好ましくは5〜50重量%、さらに好ましくは5〜40重量%であり、かつ〔化合物(3)の重量〕<〔化合物(4)の重量〕であることが好ましい。完全加水分解縮合物に換算した各成分の割合で、化合物(5)が化合物(3)〜化合物(5)の総量の5重量%以上であれば、得られる塗膜の機械的強度が十分なものとなり、一方、60重量%以下であれば、吸水性の上昇に伴う電気的特性の低下が防止される。また、化合物(3)の重量が化合物(4)の重量未満であれば、得られる塗膜の強度が十分なものとなる。なお、本発明において、完全加水分解縮合物とは、化合物(3)〜(5)のSiOR基が100%加水分解してSiOH基となり、さらに完全に縮合してシロキサン構造となったものをいう。
化合物(3)〜(5)の加水分解、縮合物を有機溶媒に溶解させて得られたポリシロキサン含有塗布液を塗布して塗膜を形成し、この塗膜に対して第2の紫外線を照射することで、ポリシロキサン改質層からなる保護層3を同様に形成することができる。ポリシロキサン含有塗布液を調製するのに用いる有機溶媒や、塗布の手法、第2の紫外線の照射形態などの詳細については、上述したのと同様である。
上述の手法により得られた保護層3の膜厚は、好ましくは100〜10000nmであり、より好ましくは500〜5000nmであり、特に好ましくは500〜2000nmである。水蒸気バリア層2の膜厚が100nm以上であれば、十分な保護性能や水蒸気バリア性、ひび割れ耐性が発揮されうる。一方、保護層3の膜厚が10000nm以下であれば、塗布液の塗布性や保護層3の透過度が十分なレベルに維持されうる。
本実施形態において、保護層3は、水蒸気バリア層2のマイクロレンズ構造を有する表面上に形成されていることから、水蒸気バリア層2との界面はこれに対応したマイクロレンズ構造を有している。一方、本実施形態において、保護層3は、全面にわたって均一な膜厚で形成されていることにより、その水蒸気バリア層2とは反対側の表面にもまた、同様のマイクロレンズ構造を有している。つまり、保護層3の図1に示す断面形状は、蛇腹状となっている。かような構成によれば、保護層に使用する材料の屈折率によらず、下層のマイクロレンズの光取り出し効果を十分に発揮できるという利点が得られるため、好ましい。このような構成の保護層3は、ポリシロキサン含有塗布液の塗布手法としてスピンコートやディップコート法、スプレー法などを採用することで、形成することが可能である。
なお、保護層3の水蒸気バリア層2とは反対側の表面は、平坦であってもよい。当該表面が平坦であると、得られる水蒸気バリアフィルムの上に各種の素子を積層等により組み立てる際に欠陥が生じにくいという利点がある。このような構成の保護層3は、ポリシロキサン含有塗布液の塗布手法としてワイヤレスバーやスリットコート法、ロール塗布法などを採用することで、形成することが可能である。なお、上述したようにポリシロキサン含有塗布液の塗布により形成された保護層3は比較的柔軟性が高いことから、上述した水蒸気バリア層2のように全体形状が蛇腹状となっていない場合であっても、ひび割れが生じる虞はほとんどない。保護層3の形状を蛇腹状とするか、水蒸気バリア層2とは反対側の表面を平坦とするかは、保護層3を形成するためのポリシロキサン含有塗布液の塗布条件(塗布時間など)を調節することにより、適宜制御することができる。
ここで、保護層3の水蒸気バリア層2とは反対側の表面が平坦である場合において、保護層3の「膜厚」とは、保護層3の積層方向の厚みのうち最も厚い部分の長さを意味する。
(ブリードアウト防止層)
ブリードアウト防止層4は、基板1が樹脂フィルムからなる場合に、基板1の中から表面に未反応のオリゴマー等が移行して、フィルム表面を汚染する現象を抑制する目的で、基板1の水蒸気バリア層2とは反対側の表面に設けられる。ブリードアウト防止層4の具体的な構成は、この機能を有していれば特に制限されず、例えば、ハードコート剤及び重合性不飽和基を有する不飽和有機化合物を含みうる。
ブリードアウト防止層4に含ませることが可能な重合性不飽和基を有する不飽和有機化合物としては、分子中に2個以上の重合性不飽和基を有する多価不飽和有機化合物、又は分子中に1個の重合性不飽和基を有する単価不飽和有機化合物等を挙げることができる。
その他の添加剤として、ブリードアウト防止層4は、マット剤を含有してもよい。マット剤としては、平均粒子径が0.1〜5μm程度の無機粒子が好ましい。このような無機粒子としては、シリカ、アルミナ、タルク、クレイ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化ジルコニウム等の1種又は2種以上を併せて使用することができる。なお、無機粒子からなるマット剤は、ハードコート剤の固形分100質量部に対して2質量部以上、好ましくは4質量部以上、より好ましくは6質量部以上、20質量部以下、好ましくは18質量部以下、より好ましくは16質量部以下の割合で混合されていることが好ましい。
また、ブリードアウト防止層5には、ハードコート剤及びマット剤の他の成分として熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂、光重合開始剤等を含有させてもよい。
熱可塑性樹脂としては、アセチルセルロース、ニトロセルロース、アセチルブチルセルロース、エチルセルロース、メチルセルロース等のセルロース誘導体、酢酸ビニル及びその共重合体、塩化ビニル及びその共重合体、塩化ビニリデン及びその共重合体等のビニル系樹脂、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール等のアセタール系樹脂、アクリル樹脂及びその共重合体、メタクリル樹脂及びその共重合体等のアクリル系樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、線状ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。
熱硬化性樹脂としては、アクリルポリオールとイソシアネートプレポリマーとからなる熱硬化性ウレタン樹脂、フェノール樹脂、尿素メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコン樹脂等が挙げられる。
電離放射線硬化性樹脂としては、光重合性プレポリマーもしくは光重合性モノマー等の1種または2種以上を混合した電離放射線硬化塗料に、電離放射線(紫外線又は電子線)を照射することで硬化するものを使用することができる。ここで光重合性プレポリマーとしては、1分子中に2個以上のアクリロイル基を有し、架橋硬化することにより3次元網目構造となるアクリル系プレポリマーが特に好ましく使用される。このアクリル系プレポリマーとしては、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート、メラミンアクリレート等が使用できる。また光重合性モノマーとしては、上記に記載した多価不飽和有機化合物等が使用できる。
光重合開始剤としては、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾイン、ベンジルメチルケタール、ベンゾインベンゾエート、ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−(4−モルフォリニル)−1−プロパン、α−アシロキシムエステル、チオキサンソン類等が挙げられる。
以上のようなブリードアウト防止層4は、ハードコート剤、マット剤及び必要に応じて添加される他の成分を配合して、所定の希釈溶剤を加えて塗布液として調製し、その塗布液を基板1の表面に従来公知の塗布方法によって塗布した後、電離放射線を照射して硬化させることにより形成することができる。なお、電離放射線を照射する方法としては、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、メタルハライドランプ等から発せられる100〜400nm、好ましくは200〜400nmの波長領域の紫外線を照射する手法、または走査型やカーテン型の電子線加速器から発せられる100nm以下の波長領域の電子線を照射する手法により行うことができる。
本実施形態におけるブリードアウト防止層4の厚さとしては、1〜10μm、好ましくは2〜7μmであることが望ましい。1μm以上にすることにより、水蒸気バリアフィルムとしての耐熱性を十分なものにし易くなり、10μm以下にすることにより、水蒸気バリアフィルムの光学特性のバランスを調整し易くなると共に、平滑層2を水蒸気バリアフィルムの一方の面に設けた場合におけるその水蒸気バリアフィルムのカールを抑え易くすることができるようになる。
(電子機器としての有機ELパネル)
本発明に係る水蒸気バリアフィルム10は、太陽電池、液晶表示素子、有機EL素子等の電子デバイスを封止する封止フィルムとして用いることができる。
この水蒸気バリアフィルム10を封止フィルムとして用いた電子機器である有機ELパネル20の一例を図2に示す。
有機ELパネル20は、図2に示すように、水蒸気バリアフィルム10と、水蒸気バリアフィルム10上に形成されたITOなどの透明電極6と、透明電極6を介して水蒸気バリアフィルム10上に形成された有機EL素子7と、その有機EL素子7を覆うように接着剤層8を介して配設された対向フィルム9等を備えている。なお、透明電極6は、有機EL素子7の一部をなすともいえる。
この水蒸気バリアフィルム10における保護層3が形成された面に、透明電極6及び有機EL素子7がこの順に形成されるようになっている。
また、対向フィルム9は、アルミ箔などの金属フィルムのほか、本発明に係る水蒸気バリアフィルムを用いてもよい。対向フィルム9に水蒸気バリアフィルムを用いる場合、保護層3が形成された面を有機EL素子7に向けて、接着剤層8によって貼付するようにすればよい。
(有機EL素子)
有機ELパネル20において、水蒸気バリアフィルム10で封止される有機EL素子7について簡単に説明する。まず、有機EL素子7の層構成の好ましい具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されない。
(1)陽極/発光層/陰極
(2)陽極/正孔輸送層/発光層/陰極
(3)陽極/発光層/電子輸送層/陰極
(4)陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極
(5)陽極/陽極バッファー層(正孔注入層)/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極バッファー層(電子注入層)/陰極
(陽極)
有機EL素子7における陽極(透明電極6)としては、仕事関数の大きい(4eV以上)金属、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが好ましく用いられる。このような電極物質の具体例としては、Au等の金属、CuI、インジウムチンオキシド(ITO)、SnO2、ZnO等の導電性透明材料が挙げられる。また、IDIXO(In23−ZnO)等非晶質で透明導電膜を作製可能な材料を用いてもよい。
陽極は、これらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜として形成し、その薄膜をフォトリソグラフィー法で所望の形状のパターンを形成してもよく、あるいはパターン精度をあまり必要としない場合は(100μm以上程度)、上記電極物質の蒸着やスパッタリング時に所望の形状のマスクを介してパターンを形成してもよい。
この陽極より発光を取り出す場合には、透過率を10%より大きくすることが好ましい。また、陽極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましい。また、陽極の膜厚は材料にもよるが、通常10〜1000nm、好ましくは10〜200nmの範囲で選ばれる。
(陰極)
有機EL素子7における陰極としては、仕事関数の小さい(4eV以下)金属(電子注入性金属と称する)、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが用いられる。このような電極物質の具体例としては、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al23)混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属等が挙げられる。これらの中で、電子注入性及び酸化等に対する耐久性の点から、電子注入性金属とこれより仕事関数の値が大きく安定な金属である第二金属との混合物、例えば、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al23)混合物、リチウム/アルミニウム混合物、アルミニウム等が陰極として好適である。
陰極は、これらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成させることにより作製することができる。また、陰極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましい。また、陰極の膜厚は通常10nm〜5μm、好ましくは50〜200nmの範囲で選ばれる。なお、発光した光を透過させるため、有機EL素子7の陽極または陰極のいずれか一方が透明または半透明であれば、発光輝度が向上し好都合である。
また、陰極の説明で挙げた上記金属を1〜20nmの膜厚で作製した後に、陽極の説明で挙げた導電性透明材料をその上に作製することで、透明または半透明の陰極を作製することができ、これを応用することで陽極と陰極の両方が透過性を有する素子を作製することができる。
(注入層:電子注入層、正孔注入層)
注入層には電子注入層と正孔注入層があり、電子注入層と正孔注入層を必要に応じて設け、陽極と発光層または正孔輸送層の間、及び陰極と発光層または電子輸送層との間に存在させる。
注入層とは、駆動電圧低下や発光輝度向上のために電極と有機層間に設けられる層のことで、「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日エヌ・ティー・エス社発行)」の第2編第2章「電極材料」(123〜166頁)に詳細に記載されており、正孔注入層(陽極バッファー層)と電子注入層(陰極バッファー層)とがある。
陽極バッファー層(正孔注入層)は、特開平9−45479号公報、特開平9−260062号公報、特開平8−288069号公報等にもその詳細が記載されており、具体例として、銅フタロシアニンに代表されるフタロシアニンバッファー層、酸化バナジウムに代表される酸化物バッファー層、アモルファスカーボンバッファー層、ポリアニリン(エメラルディン)やポリチオフェン等の導電性高分子を用いた高分子バッファー層等が挙げられる。
陰極バッファー層(電子注入層)は、特開平6−325871号公報、特開平9−17574号公報、特開平10−74586号公報等にもその詳細が記載されており、具体的には、ストロンチウムやアルミニウム等に代表される金属バッファー層、フッ化リチウムに代表されるアルカリ金属化合物バッファー層、フッ化マグネシウムに代表されるアルカリ土類金属化合物バッファー層、酸化アルミニウムに代表される酸化物バッファー層等が挙げられる。上記バッファー層(注入層)はごく薄い膜であることが望ましく、素材にもよるが、その膜厚は0.1nm〜5μmの範囲が好ましい。
(発光層)
有機EL素子7における発光層は、電極(陰極、陽極)または電子輸送層、正孔輸送層から注入されてくる電子及び正孔が再結合して発光する層であり、発光する部分は発光層の層内であっても発光層と隣接層との界面であってもよい。
有機EL素子7の発光層には、以下に示すドーパント化合物(発光ドーパント)とホスト化合物(発光ホスト)が含有されることが好ましい。これにより、より一層発光効率を高くすることができる。
(発光ドーパント)
発光ドーパントは、大きく分けて蛍光を発光する蛍光性ドーパントとリン光を発光するリン光性ドーパントの2種類がある。
蛍光性ドーパントの代表例としては、クマリン系色素、ピラン系色素、シアニン系色素、クロコニウム系色素、スクアリウム系色素、オキソベンツアントラセン系色素、フルオレセイン系色素、ローダミン系色素、ピリリウム系色素、ペリレン系色素、スチルベン系色素、ポリチオフェン系色素、または希土類錯体系蛍光体等が挙げられる。
リン光性ドーパントの代表例としては、好ましくは元素の周期表で8属、9属、10属の金属を含有する錯体系化合物であり、更に好ましくはイリジウム化合物、オスミウム化合物であり、中でも最も好ましいのはイリジウム化合物である。
発光ドーパントは複数種の化合物を混合して用いてもよい。
(発光ホスト)
発光ホスト(単に「ホスト」とも称する)とは、2種以上の化合物で構成される発光層中にて混合比(質量)の最も多い化合物のことを意味し、それ以外の化合物については「ドーパント化合物(単に、「ドーパント」とも称する)」という。例えば、発光層を化合物A、化合物Bという2種で構成し、その混合比がA:B=10:90であれば化合物Aがドーパント化合物であり、化合物Bがホスト化合物である。更に発光層を化合物A、化合物B、化合物Cの3種から構成し、その混合比がA:B:C=5:10:85であれば、化合物A、化合物Bがドーパント化合物であり、化合物Cがホスト化合物である。
発光ホストとしては構造的には特に制限はないが、代表的にはカルバゾール誘導体、トリアリールアミン誘導体、芳香族ボラン誘導体、含窒素複素環化合物、チオフェン誘導体、フラン誘導体、オリゴアリーレン化合物等の基本骨格を有するもの、またはカルボリン誘導体やジアザカルバゾール誘導体(ここで、ジアザカルバゾール誘導体とは、カルボリン誘導体のカルボリン環を構成する炭化水素環の少なくとも一つの炭素原子が窒素原子で置換されているものを表す。)等が挙げられる。中でも、カルボリン誘導体、ジアザカルバゾール誘導体等が好ましく用いられる。
そして、発光層は上記化合物を、例えば、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB法、インクジェット法等の公知の薄膜化法により成膜して形成することができる。発光層としての膜厚は特に制限はないが、通常は5nm〜5μm、好ましくは5〜200nmの範囲で選ばれる。この発光層はドーパント化合物やホスト化合物が1種または2種以上からなる一層構造であってもよいし、あるいは同一組成または異種組成の複数層からなる積層構造であってもよい。
(正孔輸送層)
正孔輸送層とは正孔を輸送する機能を有する正孔輸送材料からなり、広い意味で正孔注入層、電子阻止層も正孔輸送層に含まれる。正孔輸送層は単層または複数層設けることができる。
正孔輸送材料としては、正孔の注入または輸送、電子の障壁性のいずれかを有するものであり、有機物、無機物のいずれであってもよい。例えば、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体及びピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、アニリン系共重合体、また導電性高分子オリゴマー、特にチオフェンオリゴマー等が挙げられる。正孔輸送材料としては上記のものを使用することができるが、ポルフィリン化合物、芳香族第3級アミン化合物及びスチリルアミン化合物、特に芳香族第3級アミン化合物を用いることが好ましい。更にこれらの材料を高分子鎖に導入した、またはこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。また、p型−Si、p型−SiC等の無機化合物も正孔注入材料、正孔輸送材料として使用することができる。
正孔輸送層は上記正孔輸送材料を、例えば、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、インクジェット法を含む印刷法、LB法等の公知の方法により、薄膜化することにより形成することができる。正孔輸送層の膜厚については特に制限はないが、通常は5nm〜5μm程度、好ましくは5〜200nmである。この正孔輸送層は上記材料の1種または2種以上からなる一層構造であってもよい。
(電子輸送層)
電子輸送層とは電子を輸送する機能を有する電子輸送材料からなり、広い意味で電子注入層、正孔阻止層も電子輸送層に含まれる。電子輸送層は単層または複数層設けることができる。
電子輸送材料としては、陰極より注入された電子を発光層に伝達する機能を有していればよく、その材料としては従来公知の化合物の中から任意のものを選択して用いることができ、例えば、ニトロ置換フルオレン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド、フレオレニリデンメタン誘導体、アントラキノジメタン及びアントロン誘導体、オキサジアゾール誘導体等が挙げられる。さらに、上記オキサジアゾール誘導体において、オキサジアゾール環の酸素原子を硫黄原子に置換したチアジアゾール誘導体、電子吸引基として知られているキノキサリン環を有するキノキサリン誘導体も、電子輸送材料として用いることができる。さらにこれらの材料を高分子鎖に導入した、またはこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。また、8−キノリノール誘導体の金属錯体、例えば、トリス(8−キノリノール)アルミニウム(Alq)、トリス(5,7−ジクロロ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5,7−ジブロモ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(2−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、ビス(8−キノリノール)亜鉛(Znq)等、及びこれらの金属錯体の中心金属がIn、Mg、Cu、Ca、Sn、GaまたはPbに置き替わった金属錯体も、電子輸送材料として用いることができる。その他、メタルフリーもしくはメタルフタロシアニン、またはそれらの末端がアルキル基やスルホン酸基等で置換されているものも、電子輸送材料として好ましく用いることができる。また、正孔注入層、正孔輸送層と同様に、n型−Si、n型−SiC等の無機半導体も電子輸送材料として用いることができる。
電子輸送層は上記電子輸送材料を、例えば、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、インクジェット法を含む印刷法、LB法等の公知の方法により、薄膜化することにより形成することができる。電子輸送層の膜厚については特に制限はないが、通常は5nm〜5μm程度、好ましくは5〜200nmである。電子輸送層は上記材料の1種または2種以上からなる一層構造であってもよい。
(有機EL素子の作製方法)
次いで、有機EL素子7の作製方法について説明する。
ここでは有機EL素子7の一例として、陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極からなる有機EL素子の作製方法について説明する。
まず、水蒸気バリアフィルム10上に所望の電極物質、例えば、陽極用物質からなる薄膜を1μm以下、好ましくは10〜200nmの膜厚になるように、例えば、蒸着やスパッタリング、プラズマCVD等の方法により形成させ、陽極を作製する。
次に、その上に有機EL素子材料である正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層の有機化合物薄膜を形成させる。この有機化合物薄膜の成膜方法としては、蒸着法、ウェットプロセス(スピンコート法、キャスト法、インクジェット法、印刷法)等があるが、均質な膜が得られやすく、且つピンホールが生成しにくい等の点から、真空蒸着法、スピンコート法、インクジェット法、印刷法が特に好ましい。さらに層毎に異なる成膜法を適用してもよい。成膜に蒸着法を採用する場合、その蒸着条件は使用する化合物の種類等により異なるが、一般にボート加熱温度50〜450℃、真空度10-6〜10-2Pa、蒸着速度0.01〜50nm/秒、基板温度−50〜300℃、膜厚0.1nm〜5μm、好ましくは5〜200nmの範囲で適宜選ぶことが好ましい。
これらの層を形成後、その上に陰極用物質からなる薄膜を1μm以下、好ましくは50〜200nmの範囲の膜厚になるように、例えば、蒸着やスパッタリング等の方法により形成させ、陰極を設けることにより所望の有機EL素子が得られる。
この有機EL素子7の作製は、一回の真空引きで一貫して陽極、正孔注入層から陰極まで作製するのが好ましいが、途中で取り出して異なる成膜法を施しても構わない。その際、作業を乾燥不活性ガス雰囲気下で行う等の配慮が必要となる。また、作製順序を逆にして、陰極、電子注入層、電子輸送層、発光層、正孔輸送層、正孔注入層、陽極の順に作製することも可能である。
このようにして得られた有機EL素子7を備える多色の表示装置(有機ELパネル20)に、直流電圧を印加する場合には、陽極をプラス、陰極をマイナスの極性として電圧2〜40V程度を印加すると発光が観測できる。また、交流電圧を印加してもよい。なお、印加する交流の波形は任意でよい。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
[実施例1]
《基板1の作製》
基材として、両面に易接着加工が施された200μm厚みの透明ポリイミド系フィルム(三菱瓦斯化学株式会社製、ネオプリムL)に、レンズ形成用塗料としてPAK−01−500(東洋合成工業株式会社製)を塗布した後、紫外線照射を行い、基板1を作製した。
《基板2の作製》
基材として、両面に易接着加工が施された200μm厚みの透明ポリイミド系フィルム(三菱瓦斯化学株式会社製、ネオプリムL)に、レンズ形成用塗料としてPAK−01−500(東洋合成工業株式会社製)を塗布した後、得られた塗膜に、所定の寸法を有する転写ロールを押しあて、その後に紫外線照射を行って、基材の一方の表面に球面レンズ(凸部高さ300nm、ピッチ10μm)が形成されてなる基板2を作製した。
《スパッタバリア層の形成方法》
対象とする基材上に、スパッタ装置(ULVAC株式会社製「SPW−020S」)を用い、酸窒化珪素からなる100nmのガスバリア層を成膜した。具体的な成膜条件として、10-4Pa台まで真空引きを行った後、アルゴンガス、窒素ガス及び酸素ガスを導入してSiターゲットを用いて反応性スパッタリングを実施した。
《塗布バリア層の形成方法》
(スピンコートによるポリシラザン層の形成方法)
対象とする基材上に、下記の手法により調製したポリシラザン含有塗布液を、スピンコーターを用いて、5000rpm60秒の条件で塗布した。乾燥条件は、80℃で1分とした。なお、スピンコートによりこの条件でポリシラザン層を形成すると、塗膜の膜厚は均一となり、塗膜の表面は下地層の表面と同様の形状を有するようになる。
(バー塗布によるポリシラザン層の形成方法)
対象とする基材上に、下記の手法により調製したポリシラザン含有塗布液を、ワイヤレスバーを用いて塗布した。乾燥条件は、80℃で1分とした。なお、バー塗布によりこの条件でポリシラザン層を形成すると、塗膜の表面は平坦となる。この場合、塗膜の膜厚は部位により変動しうるが、上述した「乾燥後の膜厚」は、乾燥後の膜厚の最大値である。
〈ポリシラザン含有塗布液の調製〉
無触媒のパーヒドロポリシラザンを20質量%含むジブチルエーテル溶液(AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製、アクアミカ(登録商標) NN120−20)と、アミン触媒を固形分で5質量%含有するパーヒドロポリシラザンの20質量%ジブチルエーテル溶液(AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製、アクアミカ(登録商標) NAX120−20)を混合して用い、アミン触媒を固形分として1質量%になるように調整した後、さらに必要があればジブチルエーテルで希釈することにより、総固形分量が2質量%〜20質量%のジブチルエーテル溶液として、ポリシラザン含有塗布液を調製した。これらをポリシラザン層の設定膜厚に応じて適宜用いた。
(真空紫外線照射処理)
上記の手法によりポリシラザン層塗膜を形成した後、下記の方法に従って、真空紫外線照射処理を施して、各ガスバリア層を形成した。なお、各処理条件の詳細を表1に示す。
(真空紫外光処理工程)
・改質処理装置
(株)エム・ディ・コム製エキシマ照射装置MODEL:MECL−M−1−200
波長:172nm
ランプ封入ガス:Xe
・改質処理条件
真空紫外光強度 :130mW/cm2(172nm)
試料と光源の距離 :2mm
ステージ加熱温度 :95℃
照射装置内の酸素濃度:0.3%
真空紫外光照射時のステージ搬送速度:10mm/秒
真空紫外光照射時のステージ搬送回数:設定積算光量により調整
《保護層の形成方法》
(ポリシロキサン層の形成)
対象とする下層となる水蒸気バリア層上に、下記の手法により調製したポリシロキサン含有塗布液を、スピンコーターを用いて、3000rpm3秒の条件で塗布した。乾燥条件は、120℃で2分とした。
〈ポリシロキサン含有塗布液の調製〉
ポリシロキサン溶液であるグラスカHPC7003(JSR株式会社製)を、ブタノールで設定膜厚に応じ希釈し、さらに、その希釈液に対して5質量%のブチルセロソルブを添加して、ポリシロキサン含有塗布液を調製した。
(真空紫外線照射処理)
上記の手法によりポリシロキサン層塗膜を形成した後、上記と同様の手法により、真空紫外線照射処理を施して、保護層を形成した。なお、保護層を形成する際に照射した真空紫外線の積算光量は、1000mJ/cm2とした。
《有機EL素子の作製方法》
厚さ150nmのITO(インジウムチンオキシド)をスパッタ法により成膜し、フォトリソグラフィー法によりパターニングを行い、第1電極層を形成した。なお、パターンは発光面積が50mm2になるようなパターンとした。
《水蒸気バリアフィルム1−1の作製》
上記の基板2の球面レンズが形成された側の表面に、上記のスパッタバリア層の形成方法に従って水蒸気バリア層を形成し、水蒸気バリアフィルム1−1を得た。
《水蒸気バリアフィルム1−2の作製》
上記の基板1のPAK−01−500を塗布した側の表面に、上記のスピンコートによるポリシラザン層の形成方法に従って水蒸気バリア層を形成し、水蒸気バリアフィルム1−2を得た。AFM(原子間力電子顕微鏡)による表面観察の結果、水蒸気バリア層の露出表面は、下地層である基板の表面と同様の形状を有していることが確認された。
《水蒸気バリアフィルム1−3〜1−6、1−8の作製》
基板、塗布面、照射した真空紫外線の積算光量、保護層の有無を、それぞれ下記の表1に示すように変更したこと以外は、上述した水蒸気バリアフィルム1−2の作製と同様の手法により、水蒸気バリアフィルム1−3〜1−6、1−8を得た。AFM(原子間力電子顕微鏡)による表面観察の結果、いずれのフィルムにおいても、水蒸気バリア層の露出表面は、下地層である基板の表面と同様の形状を有していることが確認された。また、水蒸気バリアフィルム1−5において、基板2の表面に形成された水蒸気バリア層の露出表面の平均凹凸高さ(Rc)をAFMによる表面観察から求めたところ、280nmであった。
《水蒸気バリアフィルム1−7の作製》
上記の基板2の球面レンズが形成された側の表面に、上記のバー塗布によるポリシラザン層の形成方法に従って水蒸気バリア層を形成し、水蒸気バリアフィルム1−7を得た。水蒸気バリアフィルム1−7において、基板2の表面に形成された水蒸気バリア層の露出表面の平均凹凸高さ(Rc)をAFMによる表面観察から求めたところ10nmであり、ほぼ平坦な露出表面を有する水蒸気バリア層が形成されたことが確認された。
Figure 2013052569
《有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子としての評価》
上記で作製した水蒸気バリアフィルム1−1〜1−8を用いて有機EL素子を作製し、各種の評価を行った。結果を下記の表2に示す。
《評価1:耐久性の評価》
〈有機EL素子(即評価素子)の作製〉
上記で作製した水蒸気バリアフィルム1−1〜1−8を用い、上記の有機EL素子の作製方法に従って有機EL素子を作製し、即評価素子1−1〜1−8を得た。なお、「即評価素子」とは、作製直後の水蒸気バリアフィルムを使用して作製した素子を意味する。
〈劣化有機EL素子の作製〉
上記で作製した水蒸気バリアフィルム1−1〜1−8を100℃のサーモ機に投入して24時間放置した後、25℃の純水に24時間浸漬した。その後、100℃のサーモ機に投入してさらに24時間放置して、劣化水蒸気バリアフィルムを得た。この劣化水蒸気バリアフィルムを用い、上記の有機EL素子の作製方法に従って有機EL素子を作製し、劣化素子1−1〜1−8を得た。
(1)効率変化評価
上記で作製した即評価素子1−1〜1−8について、100mW時の輝度(cd/m2)をコニカミノルタセンシング株式会社製の分光放射輝度計 CS−2000Aを用いて計測した。なお、評価の安定のため10点測定の平均値を求めた。
初期発光特性としての輝度を測定し、性能の経時的低下の度合いを温度60℃、湿度90%RH環境で100時間保存した加速試験後の輝度残存率により効率変化を評価した。
加速試験後の輝度/初期の輝度の比(輝度残存率)について以下の評価を行った。
○:95%以上
△:30%以上95%未満
×:30%未満
(2)ひび割れ評価
上記で作製した即評価素子1−1〜1−8及び劣化素子1−1〜1−8について、温度60℃、湿度90%RH環境で100時間保存した後、素子を発光させて目視にてひび割れの観察を行った。
○:即評価素子及び劣化素子に発光部位にひび状の未発光部位なし
△:劣化素子にのみ発光部位にひび状の未発光部位あり
×:即評価素子及び劣化素子に発光部位にひび状の未発光部位あり
(3)密着性評価
上記で作製した即評価素子1−1〜1−8及び劣化素子1−1〜1−8について、温度60℃、湿度90%RH環境で100時間保存した後、素子を発光させて目視にて密着性の観察を行った。
○:即評価素子及び劣化素子にバリアフィルム剥離起因の未発光部位なし
△:劣化素子にのみバリアフィルム剥離起因の未発光部位あり
×:即評価素子及び劣化素子にバリアフィルム剥離起因の未発光部位あり
Figure 2013052569
表2に示すように、マイクロレンズ構造の上にスパッタ法で水蒸気バリア層を形成した水蒸気バリアフィルム1−1では、ひび割れ耐性がよく、密着性もある程度確保されているが、マイクロレンズ構造の凹凸に起因して均一なスパッタ製膜ができていないことから、バリア性が維持できずに効率が大きく低下する結果となった。また、平面状の水蒸気バリア層を形成した水蒸気バリアフィルム1−2及び1−3では、紫外線を照射していないために膜が柔らかくひび割れ耐性は優れていた。しかしながら、バリア性が低いために効率変化が大きく、密着性も低いものであった。真空紫外線を照射した水蒸気バリアフィルム1−4では、バリア性(効率変化の防止効果)が向上して効率の低下は抑制されたものの、膜が固くなることでひび割れが発生した。
一方、マイクロレンズ構造の上に塗布により水蒸気バリア層を形成した水蒸気バリアフィルム1−6では、水蒸気バリア層が蛇腹状になることにより伸縮性を獲得したと考えられ、ひび割れ、密着性、バリア性(効率変化の防止効果)のすべてが十分な性能を示した。なお、紫外線の照射を行わなかった水蒸気バリアフィルム1−5では、バリア性に低いために効率変化が大きかった。
また、水蒸気バリアフィルム1−7では、水蒸気バリア層の露出表面が平坦な構造を有しており、ひび割れ耐性がやや劣化していた。これは、水蒸気バリア層が蛇腹構造ではなくなり、劣化試験中のフィルムの伸縮に水蒸気バリア層の伸縮が追従できなかったことによるものと推測される。一方、さらに保護層を有する水蒸気バリアフィルム1−8では、密着性及びバリア性(効率変化の防止効果)がよりいっそう向上していた。
[実施例2]
《水蒸気バリアフィルム2−1〜2−8の作製》
水蒸気バリア層の膜厚、照射した真空紫外線の積算光量を下記の表3に示すように変更したこと以外は、上述した水蒸気バリアフィルム1−6の作製と同様の手法により、水蒸気バリアフィルム2−1〜2−8を作製した。
《水蒸気バリアフィルム2−9〜2−15の作製》
保護層の膜厚、照射した真空紫外線の積算光量を下記の表3に示すように変更したこと以外は、上述した水蒸気バリアフィルム1−8の作製と同様の手法により、水蒸気バリアフィルム2−9〜2−15を作製した。
Figure 2013052569
《水蒸気バリアフィルムの評価》
上記で作製した水蒸気バリアフィルム2−1〜2−15について、以下に示すような各種の評価を行った。結果を下記の表4に示す。
《評価1:水蒸気バリア性の評価》
(水蒸気バリア性評価試料の作製装置)
蒸着装置:日本電子(株)製真空蒸着装置JEE−400
恒温恒湿度オーブン:Yamato Humidic ChamberIG47M
(原材料)
水分と反応して腐食する金属:カルシウム(粒状)
水蒸気不透過性の金属:アルミニウム(φ3〜5mm、粒状)
(水蒸気バリア性評価試料の作製)
真空蒸着装置(日本電子株式会社製、真空蒸着装置 JEE−400)を用い、作製したガスバリアフィルムのガスバリア層表面に、マスクを通して12mm×12mmのサイズで金属カルシウムを蒸着させた。
その後、真空状態のままマスクを取り去り、シート片側全面にアルミニウムを蒸着させて仮封止をした。次いで、真空状態を解除し、速やかに乾燥窒素ガス雰囲気下に移して、アルミニウム蒸着面に封止用紫外線硬化樹脂(ナガセケムテックス株式会社製)を介して厚さ0.2mmの石英ガラスを張り合わせ、紫外線を照射して樹脂を硬化接着させて本封止することで、水蒸気バリア性評価試料を作製した。
得られた試料を85℃、90%RHの高温高湿下で50時間保存し、12mm×12mmの金属カルシウム蒸着面積に対する金属カルシウムが腐食した面積を%表示で算出し、下記の基準に従って水蒸気バリア性を評価した。
5:金属カルシウムが腐食した面積が1.0%未満である
4:金属カルシウムが腐食した面積が1.0%以上、5.0%未満である
3:金属カルシウムが腐食した面積が5.0%以上、10%未満である
2:金属カルシウムが腐食した面積が10%以上、50%未満である
1:金属カルシウムが腐食した面積が50%以上、100%未満である
《評価2:密着性の評価》
上述した水蒸気バリア性の評価の間に、目視により基材と水蒸気バリア層との剥離状態を観察し、下記の基準に従って密着性を評価した。
○:50時間経過後に剥離がない
△:10時間経過後に剥離がない
×:10時間未満で剥離が発生した
《評価3:ひび割れの評価》
各水蒸気バリアフィルムについて、下記の基準に従って、目視によりひび割れの評価を行った。
○:ひび割れが観察できない
△:水蒸気バリア性の評価の間にCa腐食によりひび割れが明確になった
×:フィルムを目視しただけでひび割れが観察された
《評価4:耐水性の評価》
各水蒸気バリアフィルムを100℃のサーモ機に投入して24時間放置した後、25℃の純水に24時間浸漬した。その後、100℃のサーモ機に投入してさらに24時間放置した。次いで、上記評価1〜3の評価と同様にして、水蒸気バリア性、ひび割れ、密着性の評価を行った。
《評価5:耐熱性の評価》
各水蒸気バリアフィルムに対して、大気雰囲気下、150℃にて10分間の加熱処理を施した。この際、水蒸気バリアフィルムの水蒸気バリア層表面には部材が接触しないように保持した。加熱処理後、室温の大気中に取り出し、そのまま室温まで冷却した。次いで、上記評価1〜3の評価と同様にして、水蒸気バリア性、ひび割れ、密着性の評価を行った。
Figure 2013052569
表4に示すように、本発明の水蒸気バリアフィルムは、評価4や評価5に示す条件に曝された後であっても高い水蒸気バリア性、ひび割れ耐性、密着性を示すことから、耐水性及び耐熱性に優れたものであることがわかる。これは、本発明の構成とすることで水蒸気バリア層と基板との密着性が向上したためであると考えられる。また、保護層をさらに有する水蒸気バリアフィルム2−9〜2−15では、評価4や評価5に示す条件に曝された後であってもより高い水蒸気バリア性を示しており、耐水性及び耐熱性によりいっそう優れた水蒸気バリアフィルムであることがわかる。
1 基板、
1a マイクロレンズ構造、
2 水蒸気バリア層、
3 保護層、
4 ブリードアウト防止層、
6 透明電極、
7 有機EL素子(電子デバイス)、
8 接着剤層、
9 対向フィルム、
10 水蒸気バリアフィルム、
20 有機ELパネル(電子機器)。

Claims (12)

  1. 第1の表面にマイクロレンズ構造を有する基板と、
    前記基板の前記第1の表面上に形成された水蒸気バリア層と、
    を備え、
    前記水蒸気バリア層が、ポリシラザンを含有する溶液を塗布して得られた塗膜に第1の紫外線を照射して前記ポリシラザンを改質することにより形成されたポリシラザン改質層である、水蒸気バリアフィルム。
  2. 前記水蒸気バリア層が、その前記基板とは反対側の表面にマイクロレンズ構造を有する、請求項1に記載の水蒸気バリアフィルム。
  3. 前記水蒸気バリア層の膜厚が50〜1000nmである、請求項1または2に記載の水蒸気バリアフィルム。
  4. 前記第1の紫外線が真空紫外線である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の水蒸気バリアフィルム。
  5. 前記ポリシラザン改質層を形成する際の前記第1の紫外線の積算光量が1000〜10000mJ/cm2である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の水蒸気バリアフィルム。
  6. 前記水蒸気バリア層の前記基板とは反対側の表面上に形成された保護層をさらに有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の水蒸気バリアフィルム。
  7. 前記保護層が、ポリシロキサンを含有する溶液を塗布して得られた塗膜に第2の紫外線を照射して前記ポリシロキサンを改質することにより形成されたポリシロキサン改質層である、請求項6に記載の水蒸気バリアフィルム。
  8. 前記保護層の膜厚が100〜10000nmである、請求項6または7に記載の水蒸気バリアフィルム。
  9. 前記第2の紫外線が真空紫外線である、請求項7または8に記載の水蒸気バリアフィルム。
  10. 前記ポリシロキサン改質層を形成する際の前記第2の紫外線の積算光量が200〜10000mJ/cm2である、請求項7〜9のいずれか1項に記載の水蒸気バリアフィルム。
  11. 第1の表面にマイクロレンズ構造を有する基板の前記第1の表面上に、ポリシラザンを含有する溶液を塗布して得られた塗膜に第1の紫外線を照射して前記ポリシラザンを改質することによりポリシラザン改質層からなる水蒸気バリア層を形成する工程を含む、水蒸気バリアフィルムの製造方法。
  12. 請求項1〜10のいずれか1項に記載の水蒸気バリアフィルムまたは請求項11に記載の製造方法によって製造された水蒸気バリアフィルムと、
    前記水蒸気バリアフィルムによって封止された電子デバイスと、
    を備える、電子機器。
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