JP2013042701A - 2−プロパノールを生産するように操作された微生物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】アセトバクテリウム属の細菌に、(a)アセチル-CoA アセチルトランスフェラーゼ(Acetyl-CoA acetyltransferase)をコードする外来性遺伝子、(b)アセトアセチル-CoA:酢酸/酪酸:CoA-トランスフェラーゼ(Acetoacetyl CoA:acetate/Butyrate:CoA transferase)をコードする外来性遺伝子、(c)アセトアセテート デカルボキシラーゼ(Acetoacetate decarboxylase)をコードする外来性遺伝子、及び(d)二級アルコール デヒドロゲナーゼ(Secondary alcohol dehydrogenase)をコードする外来性遺伝子を導入する。
【選択図】図2
Description
図1はWoods-Ljungdahl経路を示す。この経路の特徴は、2分子のCO2から1分子のアセチル-CoAが生成される点である。図1の左側の反応系ではCO2のメチル基への還元が触媒され、右側の反応系ではCO2の活性型COへの還元が触媒されている。最後にメチル基、活性型CO及びCoAが結合してアセチル-CoAが生成される。アセチル-CoAから最終的に酢酸を生産し、アセチル-CoAのリン酸化によってATPを生産することができる。CO2の活性型COへの還元反応はCOデヒドロゲナーゼにより触媒され、メチル基とCoAを結合する反応はアセチル-CoAシンターゼにより触媒される。左側反応系に示すように水性ガスシフト反応を利用することにより、H2-CO2ガスに代えて合成ガスを用いることができる。また、アセチル-CoA経路をもつ酢酸生産菌の中にはガス基質としてCOを利用できるものも知られている。
図2はH2-CO2ガス基質から2-プロパノールを生産する代謝経路を示す。すなわち、まず、図1のWoods-Ljungdahl経路によりH2-CO2ガス基質からアセチル-CoAが合成される。
4CO2+8H2+2HS-CoA → 2CH3CO-S-CoA+6H2O
ついで、ABE発酵菌がもつ遺伝子群によって2-プロパノールが生産される。
2CH3CO-S-CoA+H2O+H2 → CH3CH(OH)CH3
+CO2+2HS-CoA
3CO2+9H2 → CH3CH(OH)CH3+5H2O
比較としてグルコースからの2-プロパノール合成反応を示すと次のようになる。
C6H12O6+H2O → CH3CH(OH)CH3+3CO2+3H2
図2の代謝経路を構築するためのプラットフォームとなるのは、Woods-Ljungdahl経路を持つ微生物、例えば、中温菌であれば、クロストリジウム属のクロストリジウム・オートエタノゲナム(Clostridium autoethanogenum)、クロストリジウム・リュングダリイ(Clostridium ljungdahlii)、クロストリジウム・カルボキシディボランス(Clostridium carboxidivorans)、アセトバクテリウム属のアセトバクテリウム・ウッディ(Acetobacterium woodii)、その他にオキソバクター・フェニジイ(Oxobacter pfennigii)、ペプトストレプトコッカス・プロダクツス(Peptostreptococcus productus)、ユーバクテリウム・リモーサム(Eubacterium limosum)、ブチリバクテリウム・メチロトロフィカム(Butyribacterium methylotrophicum)、クロストリジウム・アセチクム(Clostridium aceticum)があげられ、好熱性菌であれば、モーレラ属のモーレラ・サーモアセティカ(Moorella thermoacetica)、モーレラ・サーモオートトロフィカ(M.thermoautotrophica)や、デスルホトマクルム・クズネツォビイ(Desulfotomaculum kuznetsovii)などのホモ酢酸菌と呼ばれる微生物群があげられる。
これらの微生物を宿主として、図2に列挙している、アセチル-CoA アセチルトランスフェラーゼ(Acetyl-CoA acetyltransferase)をコードする外来性遺伝子、アセトアセチル-CoA:酢酸/酪酸:CoA-トランスフェラーゼ(Acetoacetyl CoA:acetate/Butyrate:CoA transferase)をコードする外来性遺伝子、アセトアセテート デカルボキシラーゼ(Acetoacetate decarboxylase)をコードする外来性遺伝子、並びに二級アルコールデヒドロゲナーゼ(Secondary alcohol dehydrogenase)をコードする外来性遺伝子の4遺伝子を導入して、たんぱく質発現をさせることにより、H2-CO2ガス又は合成ガスから2-プロパノールを生産する2-プロパノール生産菌が得られる。
アセチル-CoA アセチルトランスフェラーゼをコードする外来性遺伝子として、配列番号1の塩基配列からなるDNAを用い、
アセトアセチル-CoA:酢酸/酪酸:CoA-トランスフェラーゼをコードする外来性遺伝子として、配列番号2の塩基配列からなるDNAを用い、
アセトアセテート デカルボキシラーゼをコードする外来性遺伝子として、配列番号3の塩基配列からなるDNAを用い、
二級アルコール デヒドロゲナーゼをコードする外来性遺伝子として、配列番号4の塩基配列からなるDNAを用いるのが好ましい。
上述の種々の微生物由来の遺伝子の配列をPCR(polymerase chain reaction)法により増幅する。PCR法は、公知のPCR装置、例えばサーマルサイクラーなどを利用することができる。PCRのサイクルは、公知の技術にしたがって行なわれてよく、例えば、変性、アニーリング、伸張を1サイクルとし、通常10〜100サイクル、好ましくは、約20〜50サイクルである。PCRの鋳型として、上述の2-プロパノール代謝経路の酵素活性を示す微生物から単離したDNAを用い、各遺伝子のcDNAを増幅することができる。PCR法によって得られた遺伝子は、適当なクローニングベクターに導入することができる。クローニング法としては、商業的に入手可能なPCRクローニングシステムなどを使用することができる。
各遺伝子のPCR産物を大腸菌等に由来するベクターに組込む。遺伝子を挿入するためのベクターは、宿主中で複製可能なものであれば特に限定されない。PCR産物とベクターとを反応させた後、このPCR産物が組み込まれたベクターを用いて大腸菌を形質転換する。この形質転換にはコンピテントセルによる化学的遺伝子導入法を用いることができる。この形質転換された大腸菌を培養し、培養物からプラスミドDNAを抽出する。このようにして上記4遺伝子各々を単独でもつプラスミドを得た後、これらプラスミドから当該4遺伝子が融合した2-プロパノール生合成遺伝子群オペロンを作成する。このオペロンを大腸菌と宿主微生物とのシャトルベクターに組み込む。
上記4遺伝子を含むシャトルベクターの宿主微生物への導入は、例えば、塩化カルシウム/塩化ルビジウム法、リン酸カルシウム法、DEAE−デキストラン介在トランスフェクション、エレクトロポレーションなどの公知の方法で行うことができる。得られた形質転換体は、微生物の培養に通常使用される培地を用い嫌気条件下で培養すればよい。この培地としては、通常、炭素源、窒素源、無機塩類及びその他の栄養物質等を含有する天然培地または合成培地等を用いることができる。
上記の如くして得られる培養物から回収分離された形質転換体の培養菌体又はその菌体処理物は、嫌気条件下で2-プロパノール生成反応に供せられる。すなわち、有機汚泥、糞尿、厨芥、木材、その他のバイオマスから発酵或いは熱化学的な方法により得た水素−二酸化炭素含有ガス、或いは水素−一酸化炭素含有ガスを原料として2-プロパノールを生産することができる。
[基本培地の調製]
培養にはクロストリジウム・リュングダリイ( Clostridium ljungdahlii)に用いられるATCC 1754 PETC寒天培地を改変したものを基本培地として用いた。改変部分は、還元剤としてNa2S・9H2Oを除き、代わりにCysteine・HCl・H2Oを0.3g/Lとなるように添加した。培地作製においては、還元剤(30g/LのCysteine・HCl・H2O)と基質(フルクトース等)を別に作製した。嫌気的に培地を調製する方法として、Hungateの方法を改変したMillerらの方法を用いた。改変型ATCC 1754 PETC寒天培地の組成を表1に、トレースエレメント溶液(Trace element solution)の組成を表2に、Wolfe's ビタミン溶液(Wolfe's Vitamin solution)の組成を表3に示す。
滅菌水100mLを20分間ボイルして脱気した後、N2を注入しながら氷中で室温まで冷却後、フルクトース10gを添加し、N2雰囲気下、氷中でさらに20分間冷却した。ついで、冷却後の溶液を0.45μmフィルターで濾過滅菌しつつ、N2を注入した滅菌済みバイアル瓶に注入した。
滅菌水100mLを20分間ボイルして脱気した後、N2を注入しながら氷中で室温まで冷却後、L-Cysteine・HCl・H2Oを3.0g添加した。その後、N2を注入しながら、さらに氷中で20分間冷却後、その冷却された溶液を0.45μmフィルターで濾過滅菌し、N2を注入した滅菌済みバイアル瓶に注入した。そして、遮光保存した。
表1の基本培地を20分間湯浴しながら、培地が青から赤に変色するまで脱気した後、CO2を注入しながら氷中で20分間冷却した。その後、予めCO2を注入しておいた125mLのバイアル瓶に基本培地を18mLずつ分注した。ロールチューブ法では、ここでバイアル瓶一本(15mL)につき0.35gの低温培養用寒天(ナカライテスク)を添加後、さらにCO2を3分間注入した。最後にブチルゴム栓とアルミシールで密閉後、オートクレーブ(121℃×15分間)した。
フルクトース(2g/L)を炭素源とした基本培地でOD660=0.6になるまで培養した菌体1mLを基本培地50mLに植菌し、菌体増殖をOD660にて測定したところ、図3に示すように、アセトバクテリウム・ウッディ株は増殖遅延なく対数増殖し、培養開始から28時間後にほぼ増殖停止した。このときのpHの経時変化を測定したところ、酢酸生成によりpHは低下し、培養開始から35時間後にpH5となった。フルクトースは完全に消費されており、さらにフルクトース濃度を上げることにより更なる菌体増殖が見込まれるが、pHの過剰な低下は菌体活性の低下、ひいては継代時の増殖遅延を引き起こす可能性があることから、フルクトース濃度としては2g/L程度で充分と考えられる。
アセトバクテリウム・ウッディ(ATCC 29683)に外来性遺伝子を導入できたことを確認する手段として、アセトバクテリウム・ウッディが感受性を持つ抗生物質に対して耐性を有する遺伝子をマーカーとして、このマーカー遺伝子を目的遺伝子と同時に導入し、抗生物質存在下で増殖する抗生物質耐性株を取得する方法がある。そこで、まず、アセトバクテリウム・ウッディのいくつかの抗生物質に対する感受性を調べた。
菌体を50mLのフルクトース含有基本培地に植菌し、OD660が0.5付近になったところで、その培養液を基本培地を用いて104倍に希釈した。ついで、表4の抗生物質を添加した15mLの基本培地(2%低温培養用寒天入り)と抗生物質を添加していない寒天培地に、上記の希釈菌体液を1mL植菌し、ロールチューブ法を実施し、寒天培地を30℃のインキュベーターで静置培養した。
培養開始から1週間後にコロニー形成を確認したところ、抗生物質を添加していない寒天培地ではコロニー形成が確認された。一方、抗生物質を添加したロールチューブでは全てコロニー形成を確認することができなかった。このことは、表4の抗生物質を当該濃度範囲で使用した場合、抗生物質耐性遺伝子による薬剤選択が可能であることを示している。
アセトバクテリウム・ウッディ(ATCC 29683)は多くの抗生物質に対して感受性を持つことから、それら抗生物質耐性遺伝子をマーカーとして使用できる可能性があることがわかった。そこで、以下の実験方法にてカナマイシン耐性遺伝子を選択マーカーとしたアセトバクテリウム・ウッディの形質転換試験を行なった。同時にエレクトロポレーションによる形質転換効率に対する菌体集菌時の菌体濃度の影響を調べた。
大腸菌の形質転換
2-プロパノール生合成遺伝子のクローニングのために、コンピテントセルであるエシェリヒア コリ(Escherichia coli DH5α)を、ベクターとしてpUC19プラスミド用いた化学的遺伝子導入法によって形質転換した。大腸菌の培養には、表5の基本培地を用いた。基本培地は5N-NaOHでpH7.0に調整後、滅菌水で1000mLにメスアップした。
DNA断片の長さを確認するために表6の緩衝液、表7のアガロースを用いて電気泳動を行なった。泳動後のゲルの染色には表8のエチジウムブロマイド溶液を用いた。また、PCR産物の精製にはMagExtractor-PCR & Gel Clean Up-(TOYOBO)を用いた。
アセトバクテリウム・ウッディの形質転換には、図4に示す大腸菌(E.coli)由来のプラスミドであるpUC9と、クロストリジウム・アセトブチィリカム(Clostridium acetobutylicum)由来のプラスミドであるpIM13とを融合してなる、アセトバクテリウム・ウッディと大腸菌とのシャトルベクターであるpIKM1プラスミドを用いた。
(1) アセトバクテリウム・ウッディ菌体を50mLのフルクトース含有基本培地に植菌し、OD660=0.7付近になったところで菌体1mLを50mLのフルクトース含有基本培地に植え継いだ(前培養)。
(2) 菌体濃度(OD660)が0.3、0.5、0.7の各々になるまで培養した。
(3) 培養液を遠心加速度2200×g×10分間,4℃の条件で遠心して菌体を集菌し、上清を除去し、菌体を回収した。その菌体を予め氷中で冷却しておいた表9のエレクトロポレーション緩衝液(pH6.0)10mLで洗浄した。上記緩衝液を、20分間煮沸して脱気後、N2−CO2ガスを注入しながら氷中で20分間冷却した。この冷却後の緩衝液を、予めN2−CO2ガスを注入しておいた125mLのバイアル瓶に100mLずつ分注後、さらにN2−CO2ガスを3分間注入し嫌気性とした。
(5) 回収された菌体を予め氷中で冷却しておいたエレクトロポレーション緩衝液(塩化マグネシウム無添加)で懸濁した。この時、OD660が1.0となるように調製した。
(6) 0.6mLの懸濁液をエレクトロポレーションキュベット(4mmGap)に添加した。
(7) 上記エレクトロポレーションキュベットにDNA(1μg)を加え、よく混ぜ、1.8kV、600Ω、50μFの条件でエレクトロポレーションを実施した。
(8) 50mLのフルクトース含有基本培地にエレクトロポレーション後の菌体溶液を加え、30℃で24時間培養を行った。
(9) 50μg/mLのカナマイシンを含む15mLのフルクトース含有基本培地(2%低温培養用寒天入り)に培養液を1mL植菌し、ロールチューブ法により培養した。
遺伝子導入実験の結果、選択マーカーとしてカナマイシンを添加したロールチューブ寒天培地上に形質転換株と考えられるコロニーが形成された。その効率は、表10に示すように集菌時菌体濃度によって大きく変化した。集菌時OD660が0.3であるときに、最も高いコロニー形成効率(2.5×101cfu/μgDNA)が得られた。しかし、集菌時の菌体濃度の上昇につれて効率は低下し、OD660が0.7のときには、形質転換株は得られなかった。このことから、形質転換に使用する菌体は対数増殖初期のOD6600.3以下が適当と考えられる。
上記実験で得られたアセトバクテリウム・ウッディ形質転換候補株に実際にプラスミドが導入されていることを確認するため、ランダムに選択したアセトバクテリウム・ウッディ形質転換候補株からTotalDNAを抽出し、pIKM1のカナマイシン耐性遺伝子PCR試験、大腸菌への再形質転換試験を行なった。
[実験方法]
アセトバクテリウム・ウッディ ゲノムDNAの抽出
(1) 上記遺伝子導入試験で得られたコロニーを5mLの基本液体培地(カナマイシン50μg/mL)にて培養した。
(2) 2mLの培養液を遠心加速度14000×gで1分間,4℃の条件で集菌し、上清を除去し、菌体を回収した。回収した菌体に、1mLのTE-bufferに溶解された20mgのアクロモペプチダーゼと、1mLのTE-bufferに溶解された20mgのリゾチームとをそれぞれ90μL入れて混合し、30℃で10分間静置した。
(3) NucleoSpin(登録商標)Tissue (Cat.No. 740 952.50)を用いて、菌体からTotalDNA抽出をした。
形質転換候補株DNAにおいて、形質転換前には存在しないカナマイシン耐性遺伝子を確認するために、表11乃至表13の条件でPCRを行った。
形質転換候補株から得られたTotalDNAに対するカナマイシン耐性遺伝子のPCR増幅結果を図5に示す。同図によれば、カナマイシン耐性遺伝子と考えられる位置にDNAのバンドが検出されており、アセトバクテリウム・ウッディ(A. woodii)形質転換候補株にカナマイシン耐性遺伝子が導入されていることが示唆されている。
ここで、アセトバクテリウム・ウッディ形質転換候補株がpIKM1を持っていればそこから抽出したTotalDNAにより大腸菌は形質転換され、pIKM1がクローニングされるはずである。そこで、上記形質転換候補株から抽出したTotalDNAを用いて大腸菌DH-5αコンピテントセルを形質転換した。具体的には、−80℃のディープフリーザーからコンピテントセルを取り出して掌の温度で融かし、10分間氷冷し、コンピテントセル100μLに表11の反応液を10μL入れてピペッティングし、30分間氷冷し、その後42℃×90秒のヒートショック後、1分間氷冷し、氷冷後の溶液全量を800μLのSOC培地に加え、37℃で45分間保持後、1%のアガロース及び100μg/mLのアンピシリンを含む2×YT培地のプレートに20μLの培養液を植菌し、37℃で14時間の静置培養を行なった。
再形質転換の結果、全てのtotalDNAにおいて、形質転換されたと考えられる大腸菌コロニーが見られた。そこで、コロニーを5mLの2×YT液体培地 (アンピシリン100μg/mL)に植菌し、37℃で一晩静置した後、Quantum Prep(登録商標)Plasmid miniprep kit を用いてプラスミドを抽出し、そのプラスミドをEcoRIで切断し、電気泳動で確認した。その結果、図6に示すように、確かにプラスミドと考えられるDNAバンドが見られ、候補株1,2ではpIKM1標品と同一の高さにバンドが見られた。これは、候補株がpIKM1を菌体内に実際に有していたことを示唆する。一方、候補株3ではpIKM1標品とは異なる位置にDNAバンドが見られた。これは、pIKM1に何らかの挿入変異が起きたことを示唆している。
エレクトロポレーション法によりpIKM1をアセトバクテリウム・ウッディに導入できることがわかったので、さらに形質転換効率を向上させるために、エレクトロポレーション用緩衝液中に含まれるMgCl2濃度の形質転換効率に及ぼす影響を検討した。集菌時OD660を0.3とし、洗浄も含めMgCl2濃度を変更した緩衝液を用い、それ以外は先と同様の方法で形質転換を行なった。結果を図7に示す。MgCl2濃度は形質転換効率に大きな影響を及ぼし、MgCl2濃度35mMのとき、4.0×101cfu/μgDNAの最大形質転換効率が得られた。MgCl2濃度を最適化すると、MgCl2濃度を最適化していない場合と比較して約2倍の形質転換効率が得られる。
(1) アセトバクテリウム・ウッディ(A.Woodii ATCC 29683)株を宿主とし、クロストリジウム・アセトブチィリカム(Clostridium acetobutylicum ATCC 824)株由来のプラスミドであるpIKM1をベクターとするエレクトロポレーション法による遺伝子組換え系を構築した。
(2) 上記宿主-ベクター系において集菌菌体濃度をOD660=0.3とし、エレクトロポレーション緩衝液中のMgCl2濃度を35mMとした時、4.0×101cfu/μgDNAの最大形質転換効率が得られた。
上述の通り、中温性水素-二酸化炭素資化性菌への遺伝子導入が可能であることがわかったので、pIKM1に2-プロパノール生合成遺伝子を組込んだプラスミドの構築を行なった。
4つの2-プロパノール生合成遺伝子を連結してpIKM1に導入するためには、連結すべき遺伝子同士が、連結方向に従って同じ制限酵素サイトを持っていればよい。そこで、4つの遺伝子を上記(1)から(4)の順番で連結することができるように、制限酵素サイトを付加した遺伝子増幅プライマーを以下のように設計し、表11に示す反応液を用い表14に示す条件でPCR増幅後、大腸菌にクローニングした。
クローニングした2-プロパノール生合成遺伝子群を以下の手順で、シャトルベクターpIKM1に導入した。まず、4種類の各遺伝子のPCR産物をMagExtractor-PCR & Gel Clean Up-(TOYOBO)を用いて精製した。ついで、大腸菌用ベクターpUC19に対してSmaI処理(30℃×1時間)を行ない、MagExtractor-PCR & Gel Clean Up- (TOYOBO)を用いて精製した。さらに、SmaI処理後のpUC19をベクターとし、それぞれの遺伝子のPCR産物をインサートとし、1μLのベクター、9μLのインサート、10μLのLigation Mix (TaKaRa)を混合して16℃で1時間ライゲーション反応させたのち、反応後のプラスミドを用いてコンピテントセル(DH−5α)を形質転換し、図8〜図11に示すそれぞれ単独遺伝子を持つ4種類のプラスミドを得た。
上述のpIKM1に2-プロパノール生合成遺伝子群を組込んでなるプラスミドを用いてアセトバクテリウム・ウッディの形質転換を行なった。この形質転換はエレクトロポレーション法により以下の手順で行った。
(1) アセトバクテリウム・ウッディ菌体を50mLのフルクトース含有基本培地に植菌し、OD660が0.7付近になったところで1mLの培養液を50mLのフルクトース含有基本培地に植え継いだ。
(2) 菌体濃度(OD660)が0.3になるまで培養した後、その培養液を遠心加速度2200×gで10分間,4℃の条件で遠心して菌体を集菌し、上清を除去し、菌体を回収した。予め氷中で冷却しておいた表9のエレクトロポレーション緩衝液(pH6.0)10mLで洗浄した。上記緩衝液は、20分間煮沸して脱気後、N2−CO2ガスを注入しながら氷中で20分間冷却、予めN2−CO2ガスを注入しておいた125mLのバイアル瓶に100mLずつ分注後、さらにN2−CO2ガスを3分間を注入し嫌気性とした。
(3) 懸濁液を遠心加速度2200×gで10分間,4℃の条件で遠心して菌体を集菌し、上清を除去し、菌体を回収した。
(4) 回収された菌体を予め氷中で冷却しておいたエレクトロポレーション緩衝液(塩化マグネシウム無添加)で懸濁した。この時、OD660が1.0となるように調製した。
(5) 0.6mLの懸濁液をエレクトロポレーションキュベット(4mmGap)に添加した。
(6) 上記エレクトロポレーションキュベットにプラスミド(1μg)を加え、よく混ぜ、1.8kV、600Ω、50μFの条件でエレクトロポレーションを実施した。
(7) 50mLのフルクトース含有基本培地にエレクトロポレーション後の菌体溶液を加え、30℃で24時間培養を行った。
(8) カナマイシンを50μg/mL含む15mLのフルクトース含有基本培地(2%低温培養用寒天入り)に培養液を1mL植菌し、ロールチューブ法により培養した。
上記の如くして得られたアセトバクテリウム・ウッディ菌株を接種したクロストリジウム・リュングダリイ( Clostridium ljungdahlii)培地(先に説明したATCC 1754 PETC寒天培地を改変したもの)20mLを滅菌済みバイアル瓶125mLに入れ、H2-CO2ガス(H2:CO2=2:1)を封入し、振とうしながら37℃で36時間培養し、培養液を作製した。
Claims (3)
- 二酸化炭素及び水素を含むガス、又は一酸化炭素及び水素を含むガスから2-プロパノールを生産する組換え微生物であって、
上記ガスからアセチル-CoAを生成する経路をもつ宿主微生物に、アセチル-CoAから2-プロパノールを生成する代謝経路を発現させる遺伝子が導入されていることを特徴とする2-プロパノールを生産する組換え微生物。 - アセトバクテリウム属の細菌に、以下の(a)〜(d)の遺伝子が導入されてなる形質転換体。
(a)アセチル-CoA アセチルトランスフェラーゼ(Acetyl-CoA acetyltransferase)をコードする外来性遺伝子
(b)アセトアセチル-CoA:酢酸/酪酸:CoA-トランスフェラーゼ(Acetoacetyl CoA:acetate/Butyrate:CoA transferase)をコードする外来性遺伝子
(c)アセトアセテート デカルボキシラーゼ(Acetoacetate decarboxylase)をコードする外来性遺伝子
(d)二級アルコール デヒドロゲナーゼ(Secondary alcohol dehydrogenase)をコードする外来性遺伝子 - 請求項2において、
アセトバクテリウム属の細菌はアセトバクテリウム・ウッディである形質転換体。
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