JP2013036741A - 燃料集合体および燃料棒 - Google Patents

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昌幸 山倉
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Abstract

【課題】標準燃料棒と、短尺燃料棒とを有する燃料集合体において、短尺燃料棒のプレナム部の空間体積をあまり減らすことなくかつ発生する出力スパイクの抑制効果を高め、燃料健全性を向上させる。
【解決手段】短尺燃料棒3は、円筒状の金属製被覆管15内に積層充填されて核燃料物質を含む複数の燃料ペレット9と、被覆管15の上部を密封する上部端栓12との間に配置された、プレナムスプリング11とを有する。プレナムスプリング11の最下端の密着巻きコイル部16の表面に中性子吸収物質(たとえば、ハフニウム、ボロンまたはガドリニア)の皮膜14を有する。
【選択図】図4

Description

本発明は、原子炉に装荷される燃料集合体および燃料棒の健全性向上に関する。
従来の通常の発電用の沸騰水型原子炉の燃料集合体は、細長い円筒状の金属製被覆管内に燃料ペレットの形状で核燃料物質を積層充填した燃料棒が多数格子状に配列され、上部及び下部をそれぞれ上部タイプレート、下部タイプレートで互いに結束され、燃料棒の間隔は燃料スペーサにより保持されている。
また、燃料集合体は、その周囲を角筒状のチャンネルボックスで包まれている。
9×9格子の燃料集合体の場合は、8×8格子の燃料集合体よりも燃料棒のぬれぶち長さが大きくなるので、炉心の圧力損失が増加する。
この対策として多数の燃料棒のうちの何本かを短尺燃料棒とし、ボイド率の高い炉心上部で燃料棒数を減少させることにより冷却材の流路面積を広くし、圧力損失の増大を抑制している(特許文献1参照)。
短尺燃料棒の被覆管内の上部は、燃料ペレットの充填がされていないため、燃料ペレットによる熱中性子の吸収が無く熱中性子の量が多くなり、短尺燃料棒中の積層された燃料ペレット充填部の上端部では出力が高くなる出力スパイクが発生する。
この出力スパイクを抑制する方法として、燃料ペレット充填部上方での厚肉ばね受け部材の装着(特許文献2)、密着巻き構造のプレナムスプリングの配置(特許文献3)及び中性子吸収物質の配置(特許文献4)等の技術が開示されている。
上記の出力スパイク抑制方法の厚肉ばね受け部材の装着(特許文献2)及び燃料ペレット充填部上方への中性子吸収物質の配置(特許文献4)の場合、ばね受け部材や中性子吸収物質材によりプレナム部の空間体積が減少し、燃料棒内圧が増加する傾向となる。
また、密着巻き構造のプレナムスプリングの配置(特許文献3)の場合、燃料集合体内の短尺燃料棒の配置箇所によっては出力スパイクを十分に抑制できない可能性がある。
特開昭63−235889号公報 特許第2878530号公報 特許第3064812号公報 特開2005−172746号公報
上述のように、短尺燃料棒の被覆管内上部には燃料ペレットが無く、燃料ペレットによる熱中性子の吸収が無いため熱中性子の量が多くなり、短尺燃料棒の燃料ペレット充填部上端で出力スパイクが発生する。
出力スパイクの程度が大きい場合、出力スパイクが発生する被覆管部分で、ペレット−被覆管相互作用による応力が大きくなり燃料健全性が損なわれる恐れがある。
そこで本発明は、燃料集合体内の短尺燃料棒において、プレナム部の空間体積をあまり減らすことなくかつ発生する出力スパイクの抑制効果を高め、燃料健全性を向上させることを目的とする。
上述の目的を達成するため、本発明は、格子状に配列された複数の燃料棒と、前記燃料棒の相互の間隔を保持する複数の燃料スペーサと、前記燃料棒の下部を互いに結束する下部タイプレートと、前記燃料棒の一部の燃料棒の上部を互いに結束する上部タイプレートとを備える燃料集合体において、前記燃料棒はそれぞれ、円筒状の金属製被覆管と、前記被覆管内に積層充填されて核燃料物質を含む複数の燃料ペレットと、前記被覆管の上部を密封する上部端栓と、前記被覆管の下部を密封する下部端栓と、前記被覆管内で、前記燃料ペレットの上端と前記上部端栓との間に配置されたプレナムスプリングと、を有し、前記燃料棒は、所定長さの核燃料物質長尺充填部を備えて上端部が前記上部タイプレートに支持された標準燃料棒と、前記核燃料物質長尺充填部よりも短い核燃料物質短尺充填部を備え、該核燃料物質短尺充填部の上端が鉛直方向に前記核燃料物質長尺充填部より低い位置にある短尺燃料棒と、を含み、前記短尺燃料棒の前記プレナムスプリングは、該プレナムスプリングの少なくとも最下端のコイル部分表面に中性子吸収物質の皮膜を有する、ことを特徴とする。
また、本発明は、円筒状の金属製被覆管と、前記被覆管内に積層充填されて核燃料物質を含む複数の燃料ペレットと、前記被覆管の上部を密封する上部端栓と、前記被覆管の下部を密封する下部端栓と、前記被覆管内で、前記燃料ペレットの上端と前記上部端栓との間に配置されたプレナムスプリングと、を有する燃料棒において、前記プレナムスプリングは、該プレナムスプリングの少なくとも最下端のコイル部分表面に中性子吸収物質の皮膜を有する、ことを特徴とする。
本発明によれば、燃料集合体内の短尺燃料棒において、プレナム部の空間体積をあまり減らすことなくかつ発生する出力スパイクの抑制効果を高め、燃料健全性を向上させることができる。
本発明に係る燃料集合体の一実施形態の立断面図である。 本発明に係る燃料集合体の一実施形態の標準燃料棒を示す一部切欠立面図である。 本発明に係る燃料集合体の一実施形態の短尺燃料棒を示す一部切欠立面図である。 本発明に係る燃料集合体の一実施形態における短尺燃料棒内のプレナムスプリングを含む上部切欠立面図である。 本発明に係る燃料集合体の一実施形態におけるプレナムスプリングの拡大図である。 ハフニウム皮膜厚さと出力スパイク(相対値)の関係図である。 ハフニウム皮膜厚さとプレナム部の空間体積の減少割合の関係図である。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
〔第1の実施形態〕
図1は、本発明に係る燃料集合体の一実施形態の立断面図である。
この燃料集合体は、標準燃料棒2のみの場合もあるが、本実施形態は、複数の短尺燃料棒3が含まれる燃料集合体1を対象とする。
燃料集合体1は、格子状に配列された複数の標準燃料棒2および短尺燃料棒3が、複数の燃料スペーサ4により相互の間隔を保持され、また、標準燃料棒2および短尺燃料棒3の他にウォータロッド5が組み込まれている。
標準燃料棒2および短尺燃料棒3とウォータロッド5の横方向の間隔を保つために、燃料スペーサ4が軸方向に複数個配置されている。
標準燃料棒2は、所定長さの核燃料物質の充填部を備えており、標準燃料棒2およびウォータロッド5の上端および下端はそれぞれ、上部タイプレート6、下部タイプレート7で結束されている。
短尺燃料棒3は標準燃料棒2よりも短く、下端は下部タイプレート7で結束されているが、上端は上部タイプレート6よりも下方にある。燃料集合体1には角筒状のチャンネルボックス8が被せられている。
短尺燃料棒3は、標準燃料棒2よりも、燃料ペレット9充填部が短く、また、該核燃料充填部の上端が、鉛直方向に、標準燃料棒2の燃料ペレット9充填部より低い位置にあり、短尺燃料棒3の各下部は、下部タイプレート7で結束されている。
図2は、本発明に係る燃料集合体の一実施形態の標準燃料棒を示す一部切欠立面図である。
標準燃料棒2は、円筒状の金属製被覆管15と、被覆管15内に積層充填されて核燃料物質を含む燃料ペレット9を有し、被覆管15の上端は上部端栓12で、下端は下部端栓13で密封されている。
被覆管15内の燃料ペレット9充填部の上方には、核分裂によって発生する気体状の核分裂生成物を溜め、原子炉内での照射期間中の被覆管15内の圧力上昇を緩和するプレナム部10が設けられている。
プレナム部10には燃料輸送時に燃料ペレット9の移動を防止するためプレナムスプリング11が配されている。
図3は、本発明に係る燃料集合体の一実施形態の短尺燃料棒を示す一部切欠立面図である。
短尺燃料棒3は、図3に示すように、標準燃料棒2とほぼ同様の構成である。
前記のように、短尺燃料棒3は、標準燃料棒2よりも、燃料ペレット9充填部が短く、その全長は標準燃料棒2に比べ短い。そのため、燃料ペレット9充填部の上端が、鉛直方向に、標準燃料棒2の燃料ペレット9充填部の上端より下方に位置している。
このため、短尺燃料棒は、標準燃料棒2と異なり上部を上部タイプレート6で結束されていないので、上部端栓12より上部の形状は、標準燃料棒2と異なる。
図4は、本発明に係る燃料集合体の一実施形態における短尺燃料棒内のプレナムスプリングを含む上部切欠立面図である。
図4に示すように、短尺燃料棒3のプレナム部10には、プレナムスプリング11が配されているが、プレナムスプリング11は、その下部が燃料ペレット9充填部の最上面と接している。
具体的には、プレナムスプリング11の下端が、密着巻きコイル部16を形成しており、この部分が、燃料ペレット9充填部の最上面と接している。
図5は、本発明に係る燃料集合体の一実施形態におけるプレナムスプリング11の拡大図である。
プレナムスプリング11の下端の密着巻きコイル部16に中性子吸収物質の皮膜14を設けている。
ここで、中性子吸収物質の皮膜14としては、例えばハフニウム皮膜である。
上述のように、短尺燃料棒3の燃料ペレット9充填部の上端では出力スパイクが発生しやすいが、プレナムスプリング11下部の密着巻きコイル部16に設けた中性子吸収物質の皮膜14がより効果的に熱中性子を吸収するので、燃料ペレット9充填部の上端での出力スパイクを抑制できる。
例えば、ハフニウムの熱中性子吸収断面積は105バーンで、例えばステンレス鋼の主成分の鉄の熱中性子吸収断面積2.5バーンよりはるかに大きく効果的である。なお、ハフニウムの融点は約2200℃で沸騰水型原子炉燃料の通常運転時におけるペレットの使用温度に比べ十分大きい。また、プレナムスプリング11下部の密着巻きコイル部16のハフニウムの皮膜は、メッキ及び蒸着により設けることができる。
図6は、短尺燃料棒3のプレナムスプリング11下部の密着巻きコイル部16に中性子吸収物質の皮膜14としてハフニウムを使用した場合の皮膜厚さと短尺燃料棒3の燃料ペレット9充填部上端での出力スパイクとの関係を、密着巻きコイル部16の密着巻き数が、約4巻の場合と約7巻の場合について示したものである。
短尺燃料棒3の燃料ペレット9充填部上端の出力スパイクは、ハフニウム皮膜厚さの増加に伴い減少していき、密着巻き数が約7巻の場合は、ハフニウム皮膜厚さ0.18mmでほぼゼロに、密着巻き数約4巻では0.2mmで約20分の1となり、燃料ペレット9充填部上端の出力スパイクは、ほぼなくなる。
また、図7は、上記の場合におけるハフニウム皮膜厚さとハフニウム皮膜によるプレナム部10の空間体積の減少割合の関係を示したものである。短尺燃料棒3のプレナム部10の空間体積は、密着巻き数が約7巻の場合でも、ハフニウム皮膜厚さ0.2mmで0.6%とわずかであり、燃料棒内圧の増加量も小さい。
以上のように、短尺燃料棒3において、プレナムスプリング11下部の密着巻きコイル部16に設けた中性子吸収物質の皮膜14による体積増加はわずかであり、プレナム部10の空間体積をあまり減らすことなく、かつ発生する出力スパイクの抑制効果を高め、燃料健全性を向上させることができる。
〔第2の実施形態〕
プレナムスプリング11下部の密着巻きコイル部16に設ける中性子吸収物質の皮膜14として、ハフニウムの他に、ハフニウムより熱中性子吸収断面積の大きいボロン(熱中性子吸収断面積750バーン)が考えられる。なお、ボロンの融点は約2080℃であり、沸騰水型原子炉燃料の通常運転時におけるペレットの使用温度に比べ十分大きい。また、プレナムスプリング11下部の密着巻きコイル部16のボロンの皮膜は、メッキ及び蒸着により設けることができる。
ボロンの場合は、ハフニウムより熱中性子吸収断面積が数倍大きいことから、第1の実施形態の場合より、密着巻きコイル部16に設ける皮膜厚さは薄くて済み、従って、プレナム部10の空間体積内の占有体積もさらに小さくなり、プレナム部10の空間体積をあまり減らすことなく、かつ発生する出力スパイクの抑制効果を高め、燃料健全性を向上させることができる。
〔第3の実施形態〕
プレナムスプリング11下部の密着巻きコイル部16に設ける中性子吸収物質の皮膜14の他の例として、ボロンよりさらに熱中性子吸収断面積の大きいガドリニウム(熱中性子吸収断面積46000バーン)の酸化物である酸化ガドリニウム(ガドリニア)が考えられる。なお、ガドリニアの融点は約2330℃と沸騰水型原子炉燃料の通常運転時におけるペレットの使用温度に比べ十分大きい。また、プレナムスプリング11下部の密着巻きコイル部16のガドリニアの皮膜は、メッキ及び蒸着により設けることができる。
ガドリニウムの場合は、ハフニウムより熱中性子吸収断面積が数百倍大きいことから、第2の実施形態の場合より、密着巻きコイル部16に設ける皮膜厚さはさらに薄くて済み、従って、プレナム部10の空間体積内の占有体積もさらに小さくなり、プレナム部10の空間体積をあまり減らすことなく、かつ発生する出力スパイクの抑制効果を高め、燃料健全性を向上させることができる。
〔その他の実施形態〕
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。
たとえば、実施形態1〜3においては、プレナムスプリング11下部の密着巻きコイル部16に中性子吸収物質の皮膜14を設ける範囲を限定したが、プレナムスプリング11の密着巻きコイル部16より上部まで中性子吸収物質の皮膜14を設けてもよい。
また、逆に、プレナムスプリング11下部の密着巻きコイル部16の全体ではなくて一部のみに設けてもよい。
さらに、一つのスプリングコイルに複数の種類の中性子吸収物質の皮膜14を設けてもよい。また、異なる種類の中性子吸収物質の皮膜14を異なる範囲に設けた複数のスプリングを一つの短尺燃料棒3に設けてもよい。
以上の実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形には、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。また、各実施形態の特徴を組み合わせてもよい。
1 ・・・燃料集合体
2 ・・・標準燃料棒
3 ・・・短尺燃料棒
4 ・・・燃料スペーサ
5 ・・・ウォータロッド
6 ・・・上部タイプレート
7 ・・・下部タイプレート
8 ・・・チャンネルボックス
9 ・・・燃料ペレット(核燃料充填部)
10 ・・・プレナム部
11 ・・・プレナムスプリング
12 ・・・上部端栓
13 ・・・下部端栓
14 ・・・中性子吸収物質の皮膜
15 ・・・被覆管
16 ・・・密着巻きコイル部

Claims (5)

  1. 格子状に配列された複数の燃料棒と、
    前記燃料棒の相互の間隔を保持する複数の燃料スペーサと、
    前記燃料棒の下部を互いに結束する下部タイプレートと、
    前記燃料棒の一部の燃料棒の上部を互いに結束する上部タイプレートと、
    を備える燃料集合体において、
    前記燃料棒はそれぞれ、
    円筒状の金属製被覆管と、
    前記被覆管内に積層充填されて核燃料物質を含む複数の燃料ペレットと、
    前記被覆管の上部を密封する上部端栓と、
    前記被覆管の下部を密封する下部端栓と、
    前記被覆管内で、前記燃料ペレットの上端と前記上部端栓との間に配置されたプレナムスプリングと、
    を有し、
    前記燃料棒は、
    所定長さの核燃料物質長尺充填部を備えて上端部が前記上部タイプレートに支持された標準燃料棒と、
    前記核燃料物質長尺充填部よりも短い核燃料物質短尺充填部を備え、該核燃料物質短尺充填部の上端が鉛直方向に前記核燃料物質長尺充填部より低い位置にある短尺燃料棒と、
    を含み、
    前記短尺燃料棒の前記プレナムスプリングは、該プレナムスプリングの少なくとも最下端のコイル部分表面に中性子吸収物質の皮膜を有する、
    ことを特徴とした燃料集合体。
  2. 前記中性子吸収物質は、ハフニウムを含むことを特徴とする請求項1に記載の燃料集合体。
  3. 前記中性子吸収物質は、ボロンを含むことを特徴とする請求項1に記載の燃料集合体。
  4. 前記中性子吸収物質は、ガドリニアを含むことを特徴とする請求項1に記載の燃料集合体。
  5. 円筒状の金属製被覆管と、
    前記被覆管内に積層充填されて核燃料物質を含む複数の燃料ペレットと、
    前記被覆管の上部を密封する上部端栓と、
    前記被覆管の下部を密封する下部端栓と、
    前記被覆管内で、前記燃料ペレットの上端と前記上部端栓との間に配置されたプレナムスプリングと、
    を有する燃料棒において、
    前記プレナムスプリングは、該プレナムスプリングの少なくとも最下端のコイル部分表面に中性子吸収物質の皮膜を有する、
    ことを特徴とした燃料棒。
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