JP2013030296A - プラズマディスプレイパネルの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】高精細で高輝度の表示性能を備え、かつ低消費電力のプラズマディスプレイパネルを実現することを目的とする。
【解決手段】前面板2と背面板10とを作製した後、前記前面板2と背面板10とを対向配置させて周辺部を封着部材により封着し、その後パネル内に放電ガスを封入するプラズマディスプレイパネルの製造方法であって、前記前面板2と背面板10とを作製した後、前記放電ガスをパネル内に封入するまでの間に、還元性有機ガスを含むガスをパネル内に導入して前記前面板2の保護膜を還元性有機ガスに曝した後、その還元性有機ガスを含むガスを排出する工程を有することを特徴とする方法である。
【選択図】図6
【解決手段】前面板2と背面板10とを作製した後、前記前面板2と背面板10とを対向配置させて周辺部を封着部材により封着し、その後パネル内に放電ガスを封入するプラズマディスプレイパネルの製造方法であって、前記前面板2と背面板10とを作製した後、前記放電ガスをパネル内に封入するまでの間に、還元性有機ガスを含むガスをパネル内に導入して前記前面板2の保護膜を還元性有機ガスに曝した後、その還元性有機ガスを含むガスを排出する工程を有することを特徴とする方法である。
【選択図】図6
Description
本発明は、表示デバイスなどに用いるプラズマディスプレイパネルの製造方法に関する。
プラズマディスプレイパネル(以下、PDPと呼ぶ)は、高精細化、大画面化の実現が可能であることから、100インチクラスのテレビなどが製品化されている。近年、PDPにおいては、従来のNTSC方式に比べて走査線数が2倍以上の高精細テレビへの適用が進められており、エネルギー問題に対応してさらなる消費電力低減への取り組みや、環境問題に配慮した鉛成分を含まないPDPへの要求なども高まっている。
PDPは、基本的には、前面板と背面板とで構成されている。前面板は、フロート法により製造された硼硅酸ナトリウム系ガラスのガラス基板と、ガラス基板の一方の主面上に形成されたストライプ状の透明電極とバス電極とで構成される表示電極と、表示電極を覆ってコンデンサとしての働きをする誘電体層と、誘電体層上に形成された酸化マグネシウム(MgO)からなる保護膜とで構成されている。
一方、背面板は、ガラス基板と、その一方の主面上に形成されたストライプ状のデータ電極と、データ電極を覆う下地誘電体層と、下地誘電体層上に形成された隔壁と、各隔壁間に形成された赤色、緑色及び青色それぞれに発光する蛍光体層とで構成されている。
前面板と背面板とはその電極形成面側を対向させて気密封着され、隔壁によって仕切られた放電空間にネオン(Ne)−キセノン(Xe)の放電ガスが400Torr〜600Torrの圧力で封入されている。PDPは、表示電極に映像信号電圧を選択的に印加することによって放電させ、その放電によって発生した紫外線が各色蛍光体層を励起して赤色、緑色、青色の発光をさせてカラー画像表示を実現している。
また、このようなPDPの駆動方法としては、書込みをしやすい状態に壁電荷を調整する初期化期間と、入力画像信号に応じて書込み放電を行う書込み期間と、書込みが行われた放電空間で維持放電を生じさせることによって表示を行う維持期間を有する駆動方法が一般的に用いられている。これらの各期間を組み合わせた期間(サブフィールド)が、画像の1コマに相当する期間(1フィールド)内で複数回繰り返されることによってPDPの階調表示を行っている。
このようなPDPにおいて、前面板の誘電体層上に形成される保護膜の役割としては、放電によるイオン衝撃から誘電体層を保護すること、アドレス放電を発生させるための初期電子を放出することなどがあげられる。イオン衝撃から誘電体層を保護することは、放電電圧の上昇を防ぐ重要な役割であり、またアドレス放電を発生させるための初期電子を放出することは、画像のちらつきの原因となるアドレス放電ミスを防ぐ重要な役割である。
保護膜からの初期電子の放出数を増加させて画像のちらつきを低減するために、例えば、MgO保護膜に不純物を添加する例や、MgO粒子をMgO保護膜上に形成した例が開示されている(例えば、特許文献1、2、3、4、5など参照)。
近年、テレビは高精細化が進んでおり、市場では低コスト・低消費電力・高輝度のフルHD(ハイ・ディフィニション)(1920×1080画素:プログレッシブ表示)PDPが要求されている。保護膜からの電子放出特性はPDPの画質を決定するため、電子放出特性を制御することが非常に重要である。
このようにPDPの高精細化や低消費電力化を進めるにあたっては、放電電圧が高くならないようにすることと、さらに、点灯不良を低減して画質を向上させることを、同時に実現させなければならないという課題があった。
本発明はこのような課題に鑑みなされたもので、高輝度の表示性能を備え、かつ低電圧駆動が可能なPDPを実現することを目的としている。
上記の目的を達成するために本発明は、基板上に形成した表示電極を覆うように誘電体層を形成するとともに前記誘電体層上に保護膜を形成した第1基板と、前記第1基板に放電ガスが充填された放電空間を形成するように対向配置されかつ前記第1基板の前記表示電極と交差する方向にデータ電極を形成するとともに前記放電空間を区画する隔壁を設けた第2基板とを有し、前記第1基板と前記第2基板とを作製した後、前記第1基板と前記第2基板とを対向配置させて周辺部を封着部材により封着し、その後パネル内に放電ガスを封入するプラズマディスプレイパネルの製造方法であって、前記第1基板と前記第2基板とを作製した後、前記放電ガスをパネル内に封入するまでの間に、還元性有機ガスを含むガスをパネル内に導入して前記第1基板の保護膜を還元性有機ガスに曝した後、その還元性有機ガスを含むガスを排出する工程を有することを特徴とするプラズマディスプレイパネルの製造方法である。
本発明によれば、保護膜における電子放出特性を向上させ、維持放電電圧を低減することが可能で、高精細画像でも高輝度で低電圧駆動が可能な表示性能に優れたPDPを実現することができる。
以下、本発明の実施の形態におけるPDPの製造方法について図面を用いて説明する。
図1は本発明の実施の形態におけるPDPの構造を示す斜視図である。PDPの基本構造は、一般的な交流面放電型PDPと同様である。図1に示すように、PDP1は前面ガラス基板3などよりなる第1基板としての前面板2と、背面ガラス基板11などよりなる第2基板としての背面板10とが対向して配置され、その前面板2と背面板10の周辺部をガラスフリットなどからなる封着部材によって気密封着することにより構成されている。封着されたPDP1内部の放電空間16には、XeとNeなどの放電ガスが400Torr〜600Torrの圧力で封入されている。
前面板2の前面ガラス基板3上には、走査電極4及び維持電極5よりなる一対の帯状の表示電極6とブラックストライプ(遮光層)7が互いに平行にそれぞれ複数列配置されている。前面ガラス基板3上には表示電極6と遮光層7とを覆うように電荷を保持してコンデンサとしての働きをする誘電体層8が形成され、さらにその上に保護膜9が形成されている。
また、背面板10の背面ガラス基板11上には、前面板2の走査電極4及び維持電極5と直交する方向に、複数の帯状のデータ電極12が互いに平行に配置され、これを下地誘電体層13が被覆している。さらに、データ電極12間の下地誘電体層13上には放電空間16を区切る所定の高さの隔壁14が形成されている。隔壁14間の溝ごとに、紫外線によって赤色、緑色及び青色にそれぞれ発光する蛍光体層15が順次塗布して形成されている。走査電極4及び維持電極5とデータ電極12とが交差する位置に放電空間が形成され、表示電極6方向に並んだ赤色、緑色、青色の蛍光体層15を有する放電空間がカラー表示のための画素になる。
図2は、本発明の実施の形態におけるPDP1の前面板2の詳細な構成を示す断面図であり、図2は図1と上下反転させて示している。図2に示すように、フロート法などにより製造された前面ガラス基板3に、走査電極4と維持電極5よりなる表示電極6と遮光層7がパターン形成されている。走査電極4と維持電極5はそれぞれインジウムスズ酸化物(ITO)や酸化スズ(SnO2)などからなる透明電極4a、5aと、透明電極4a、5a上に形成された金属バス電極4b、5bとにより構成されている。金属バス電極4b、5bは透明電極4a、5aの長手方向に導電性を付与する目的として用いられ、銀(Ag)材料を主成分とする導電性材料によって形成されている。
誘電体層8は、前面ガラス基板3上に形成されたこれらの透明電極4a、5aと金属バス電極4b、5bと遮光層7を覆うように設けられ、誘電体層8上に保護膜9が形成されている。
保護膜9は、誘電体層8に形成した下地膜91と、下地膜91上に酸化マグネシウム(MgO)の結晶粒子92aが複数個凝集させた凝集粒子92とにより構成している。また、保護膜9において、下地膜91は、酸化マグネシウム(MgO)により構成されている。なお、この保護膜9の下地膜91としては、酸化マグネシウム(MgO)、酸化カルシウム(CaO)、酸化ストロンチウム(SrO)、及び酸化バリウム(BaO)から選ばれる金属酸化物により形成してもよく、さらにはこの保護膜9の下地膜91は、酸化マグネシウム(MgO)、酸化カルシウム(CaO)、酸化ストロンチウム(SrO)、及び酸化バリウム(BaO)から選ばれる少なくとも2つ以上の酸化物からなる金属酸化物により形成するのが望ましい。
図3は本発明の実施の形態におけるPDPの電極配列図である。行方向に長いn本の走査電極Y1、Y2、Y3・・・Yn(図1の4)およびn本の維持電極X1、X2、X3・・・Xn(図1の5)が配列され、列方向に長いm本のデータ電極A1・・・Am(図1の12)が配列されている。そして、1対の走査電極Y1および維持電極X1と1つのデータ電極A1とが交差した部分に放電セルが形成され、放電セルは放電空間内にm×n個形成されている。そしてこれらの電極のそれぞれは、前面板、背面板の画像表示領域外の周辺端部に設けられた接続端子それぞれに接続されている。
図4はこのPDPを用いたプラズマディスプレイ装置の回路ブロック図である。このプラズマディスプレイ装置は、上述した構成のPDPのパネル1、画像信号処理回路21、データ電極駆動回路22、走査電極駆動回路23、維持電極駆動回路24、タイミング発生回路25および電源回路(図示せず)を備えている。
画像信号処理回路21は、画像信号sigをサブフィールド毎の画像データに変換する。データ電極駆動回路22はサブフィールド毎の画像データを各データ電極D1〜Dmに対応する信号に変換し、各データ電極D1〜Dmを駆動する。タイミング発生回路25は水平同期信号Hおよび垂直同期信号Vをもとにして各種のタイミング信号を発生し、各駆動回路ブロックに供給している。走査電極駆動回路23はタイミング信号にもとづいて走査電極SC1〜SCnに駆動電圧波形を供給し、維持電極駆動回路24はタイミング信号にもとづいて維持電極SU1〜SUnに駆動電圧波形を供給する。
次に、PDPを駆動するための駆動電圧波形とその動作について図5を用いて説明する。図5はPDPの各電極に印加する駆動電圧波形を示す図である。
本実施の形態によるプラズマディスプレイ装置においては、1フィールドを複数のサブフィールドにより構成し、それぞれのサブフィールドは、放電セルにおいて初期化放電を発生させる初期化期間と、この初期化期間のあと、発光させる放電セルを選択する書込み放電を発生させる書込み期間と、この書込み期間により選択された放電セルにおいて維持放電を発生させる維持期間とを有している。
第1サブフィールドの初期化期間では、データ電極D1〜Dmおよび維持電極SU1〜SUnを0(V)に保持し、走査電極SC1〜SCnに対して放電開始電圧以下となる電圧Vi1(V)から放電開始電圧を超える電圧Vi2(V)に向かって緩やかに上昇するランプ電圧を印加する。すると、全ての放電セルにおいて1回目の微弱な初期化放電を起こし、走査電極SC1〜SCn上に負の壁電圧が蓄えられるとともに維持電極SU1〜SUn上およびデータ電極D1〜Dm上に正の壁電圧が蓄えられる。ここで、電極上の壁電圧とは電極を覆う誘電体層や蛍光体層上等に蓄積した壁電荷により生じる電圧を指す。
その後、維持電極SU1〜SUnを正の電圧Ve1、Ve2(V)に保ち、走査電極SC1〜SCnに電圧Vi3(V)から電圧Vi4(V)に向かって緩やかに下降するランプ電圧を印加する。すると、すべての放電セルにおいて2回目の微弱な初期化放電を起こし、走査電極SC1〜SCn上と維持電極SU1〜SUn上との間の壁電圧が弱められ、データ電極D1〜Dm上の壁電圧も書込み動作に適した値に調整される。
続く書込み期間では、走査電極SC1〜SCnを一旦Vc(V)に保持する。次に、1行目の走査電極SC1に負の走査パルス電圧Va(V)を印加するとともに、データ電極D1〜Dmのうち1行目に表示すべき放電セルのデータ電極Dk(k=1〜m)に正の書込みパルス電圧Vd(V)を印加する。このときデータ電極Dkと走査電極SC1との交差部の電圧は、外部印加電圧(Vd−Va)(V)にデータ電極Dk上の壁電圧と走査電極SC1上の壁電圧とが加算されたものとなり、放電開始電圧を超える。そして、データ電極Dkと走査電極SC1との間および維持電極SU1と走査電極SC1との間に書込み放電が起こり、この放電セルの走査電極SC1上に正の壁電圧が蓄積され、維持電極SU1上に負の壁電圧が蓄積され、データ電極Dk上にも負の壁電圧が蓄積される。
このようにして、1行目に表示すべき放電セルで書込み放電を起こして各電極上に壁電圧を蓄積する書込み動作が行われる。一方、書込みパルス電圧Vd(V)を印加しなかったデータ電極D1〜Dmと走査電極SC1との交差部の電圧は放電開始電圧を超えないので、書込み放電は発生しない。以上の書込み動作をn行目の放電セルに至るまで順次行い、書込み期間が終了する。
続く維持期間では、走査電極SC1〜SCnには第1の電圧として正の維持パルス電圧Vs(V)を、維持電極SU1〜SUnには第2の電圧として接地電位、すなわち0(V)をそれぞれ印加する。このとき書込み放電を起こした放電セルにおいては、走査電極SCi(i=1〜n)上と維持電極SUi(i=1〜n)上との間の電圧は維持パルス電圧Vs(V)に走査電極SCi上の壁電圧と維持電極SUi上の壁電圧とが加算されたものとなり、放電開始電圧を超える。そして、走査電極SCiと維持電極SUiとの間に維持放電が起こり、このとき発生した紫外線により蛍光体層が発光する。そして走査電極SCi上に負の壁電圧が蓄積され、維持電極SUi上に正の壁電圧が蓄積される。このときデータ電極Dk上にも正の壁電圧が蓄積される。
書込み期間において書込み放電が起きなかった放電セルでは、維持放電は発生せず、初期化期間の終了時における壁電圧が保持される。続いて、走査電極SC1〜SCnには第2の電圧である0(V)を、維持電極SU1〜SUnには第1の電圧である維持パルス電圧Vs(V)をそれぞれ印加する。すると、維持放電を起こした放電セルでは、維持電極SUi上と走査電極SCi上との間の電圧が放電開始電圧を超えるので、再び維持電極SUiと走査電極SCiとの間に維持放電が起こり、維持電極SUi上に負の壁電圧が蓄積され走査電極SCi上に正の壁電圧が蓄積される。
以降同様に、走査電極SC1〜SCnと維持電極SU1〜SUnとに交互に輝度重みに応じた数の維持パルスを印加することにより、書込み期間において書込み放電を起こした放電セルで維持放電が継続して行われる。こうして維持期間における維持動作が終了する。
続く第2サブフィールド以降における初期化期間、書込み期間、維持期間の動作も、第1サブフィールドにおける動作とほぼ同様のため、説明を省略する。なお、本実施の形態においては、第2サブフィールド以降のサブフィールドにおいては、維持電極SU1〜SUnを正の電圧Ve1、Ve2(V)に保ち、走査電極SC1〜SCnに電圧Vi3(V)から電圧Vi4(V)に向かって緩やかに下降するランプ電圧を印加することにより、前のサブフィールドにおいて維持放電を起こした放電セルにおいてのみ微弱な初期化放電を起こさせるように駆動している。すなわち、第1サブフィールドにおいては、全ての放電セルで初期化放電を発生させる全セル初期化動作を行い、第2サブフィールド以降においては、前のサブフィールドにおいて維持放電を起こした放電セルのみで選択的に初期化放電を発生させる動作を行うように構成している。なお、この全セル初期化動作と選択的初期化動作について、本実施の形態のように、第1サブフィールドとその他のサブフィールドとの間で使い分ける以外に、全セル初期化動作を第1サブフィールド以外のサブフィールドにおける初期化期間で行ったり、数フィールドに1回の頻度で行ったりしてもよい。
また、書込み期間、維持期間における動作は、上述した第1サブフィールドにおける動作と同様な駆動方法であるが、維持期間における維持放電による発光は、輝度の重み付けに応じた数の維持パルスを印加することにより、サブフィールド毎の輝度重みを制御するように駆動している。
ところで、PDPにおいては、PDPの前面板の保護膜における電子放出を高めることにより、維持放電電圧を下げることができ、従来よりも低電圧で維持放電を発生できることが知られており、そのために、電子放出特性の優れた保護膜材料の検討などが行われている。
本発明者らは、電子放出特性の優れた保護膜の検討を行った結果、前面板2と背面板10とを作製した後、放電ガスをパネルの放電空間内に封入するまでの間に、還元性有機ガスを含むガスをパネルの放電空間内に導入して前面板2の保護膜9を還元性有機ガスに曝した後、その還元性有機ガスを含むガスを排出する工程を設け、その後放電空間内に放電ガスを封入することにより、PDPの維持放電電圧を低下させることができることを見出した。
次に、本発明によるPDPの製造方法について、詳細に説明する。
図6は本発明によるPDPの製造工程を示すフローチャートであり、図6に示すように、前面板作製工程A1及び背面板作製工程B1と、背面板作製工程B1により作製した背面板10の画像表示領域外部に封着部材であるガラスフリットを塗布し、その後ガラスフリットの樹脂成分等を除去するために350℃程度の温度で仮焼成するフリット塗布工程B2と、前面板作製工程A1により作製した前面板2とフリット塗布工程B2を終了した背面板10とを貼付けて封着する封着工程C1と、この後パネル内のガスを1次排気した後、還元性有機ガスをパネル内に導入して前記前面板2の保護膜9を還元性有機ガスに曝す還元性ガス導入工程C2と、その後その還元性有機ガスを含めて放電空間内のガスを排気する排気工程C3と、この後真空排気されたパネル内部にNeおよびXeを主成分とする放電ガスを供給する放電ガス供給工程C4を経てPDPが完成される。
本発明の製造方法において、前面板作製工程A1においては、まず、前面ガラス基板3上に、走査電極4及び維持電極5と遮光層7とを形成する。走査電極4と維持電極5とを構成する透明電極4a、5aと金属バス電極4b、5bは、フォトリソグラフィ法などを用いてパターニングして形成される。透明電極4a、5aは薄膜プロセスなどを用いて形成され、金属バス電極4b、5bは銀(Ag)材料を含むペーストを所定の温度で焼成して固化している。また、遮光層7も同様に、黒色顔料を含むペーストをスクリーン印刷する方法や黒色顔料をガラス基板の全面に形成した後、フォトリソグラフィ法を用いてパターニングし、焼成することにより形成される。
次に、走査電極4、維持電極5及び遮光層7を覆うように前面ガラス基板3上に誘電体ペーストをダイコート法などにより塗布して誘電体ペースト(誘電体材料)層を形成する。誘電体ペーストを塗布した後、所定の時間放置することによって塗布された誘電体ペースト表面がレベリングされて平坦な表面になる。その後、誘電体ペースト層を焼成固化することにより、走査電極4、維持電極5及び遮光層7を覆う誘電体層8が形成される。なお、誘電体ペーストはガラス粉末などの誘電体材料、バインダ及び溶剤を含む塗料である。
ここで、前面板2の誘電体層8を構成する誘電体材料としては、酸化ビスマス(Bi2O3)、酸化カルシウム(CaO)、酸化ストロンチウム(SrO)、酸化バリウム(BaO)から選ばれる少なくとも1種と、酸化モリブデン(MoO3)、酸化タングステン(WO3)、酸化セリウム(CeO2)、二酸化マンガン(MnO2)から選ばれる少なくとも1種とを含んでいる。バインダ成分は、エチルセルロース、またはアクリル樹脂1重量%〜20重量%を含むターピネオール、またはブチルカルビトールアセテートである。また、ペースト中には、必要に応じて可塑剤としてフタル酸ジオクチル、フタル酸ジブチル、リン酸トリフェニル、リン酸トリブチルを添加し、分散剤としてグリセロールモノオレート、ソルビタンセスキオレヘート、ホモゲノール(Kaoコーポレーション社製品名)、アルキルアリル基のリン酸エステルなどを添加してペーストとして印刷特性を向上させてもよい。
次に、誘電体層8上に保護膜9の下地膜91を形成する。本発明の実施の形態においては、下地膜91は、酸化マグネシウム(MgO)により形成している。なお、上述したように、この下地膜91としては、酸化マグネシウム(MgO)、酸化カルシウム(CaO)、酸化ストロンチウム(SrO)、及び酸化バリウム(BaO)から選ばれる少なくとも2つ以上の酸化物からなる金属酸化物により形成してもよく、この金属酸化物は、下地膜91面のX線回折分析において、特定方位面の金属酸化物を構成する酸化物の単体より発生する最小回折角と最大回折角との間にピークが存在するようにしている。
さらに、下地膜91上に酸化マグネシウム(MgO)の結晶粒子92aの凝集粒子92を均一に分散させて付着させることにより保護膜9が形成される。なお、酸化マグネシウム(MgO)の結晶粒子92aは、以下に示す気相合成法または前駆体焼成法のいずれかで製造することができる。気相合成法では、不活性ガスが満たされた雰囲気下で純度が99.9%以上のマグネシウム金属材料を加熱し、さらに、雰囲気に酸素を少量導入することによって、マグネシウムを直接酸化させ、酸化マグネシウム(MgO)の結晶粒子92aを作製することができる。
一方、前駆体焼成法では、以下の方法によって結晶粒子92aを作製することができる。前駆体焼成法では、酸化マグネシウム(MgO)の前駆体を700℃以上の高温で均一に焼成し、これを徐冷して酸化マグネシウム(MgO)の結晶粒子92aを得ることができる。前駆体としては、例えば、マグネシウムアルコキシド(Mg(OR)2)、マグネシウムアセチルアセトン(Mg(acac)2)、水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)、炭酸マグネシウム(MgCO2)、塩化マグネシウム(MgCl2)、硫酸マグネシウム(MgSO4)、硝酸マグネシウム(Mg(NO3) 2)、シュウ酸マグネシウム(MgC2O4)の内のいずれか1種以上の化合物を選ぶことができる。なお選択した化合物によっては、通常、水和物の形態をとることもあるがこのような水和物を用いてもよい。
これらの化合物は、焼成後に得られる酸化マグネシウム(MgO)の純度が99.95%以上、望ましくは99.98%以上になるように調整する。これらの化合物中に、各種アルカリ金属、B、Si、Fe、Alなどの不純物元素が一定量以上混じっていると、熱処理時に不要な粒子間癒着や焼結を生じ、高結晶性の酸化マグネシウム(MgO)の結晶粒子を得にくいためである。このため、不純物元素を除去するなどにより予め前駆体を調整することが必要となる。
上記いずれかの方法で得られた酸化マグネシウム(MgO)の結晶粒子92aを、溶媒に分散させ、その分散液をスプレー法やスクリーン印刷法、静電塗布法などによって下地膜91の表面に分散散布させる。その後、乾燥・焼成工程を経て溶媒除去を図り、酸化マグネシウム(MgO)の結晶粒子92aを下地膜91の表面に定着させることができる。
このような一連の工程により前面ガラス基板3上に所定の構成物(走査電極4、維持電極5、遮光層7、誘電体層8、保護膜9)が形成されて前面板2が完成する。
ここで、下地膜91上に設けた、酸化マグネシウム(MgO)の結晶粒子92aが複数個凝集した凝集粒子92について詳細に説明する。酸化マグネシウム(MgO)の凝集粒子92は、本願発明者の実験により、主として書込み放電における「放電遅れ」を抑制する効果と、「放電遅れ」の温度依存性を改善する効果が確認されている。そこで本発明の実施の形態では、凝集粒子92が下地膜91に比べて高度な初期電子放出特性に優れる性質を利用して、放電パルス立ち上がり時に必要な初期電子供給部として配設している。
「放電遅れ」は、放電開始時において、トリガーとなる初期電子が下地膜91表面から放電空間16中に放出される量が不足することが主原因と考えられる。そこで、放電空間16に対する初期電子の安定供給に寄与するため、酸化マグネシウム(MgO)の凝集粒子92を下地膜91の表面に分散配置する。これによって、放電パルスの立ち上がり時に放電空間16中に電子が豊富に存在し、放電遅れの解消が図られる。したがって、このような初期電子放出特性により、PDP1が高精細の場合などにおいても放電応答性の良い高速駆動ができるようになっている。なお下地膜91の表面に金属酸化物の凝集粒子92を配設する構成では、主として書込み放電における「放電遅れ」を抑制する効果に加え、「放電遅れ」の温度依存性を改善する効果も得られる。
以上のように、本発明の実施の形態におけるPDP1では、低電圧駆動と電荷保持の両立効果を奏する下地膜91と、放電遅れの防止効果を奏する酸化マグネシウム(MgO)の凝集粒子92とにより構成することによって、PDP1全体として、高精細なPDPでも高速駆動を低電圧で駆動でき、且つ、点灯不良を抑制した高品位な画像表示性能を実現できる。
また、本発明の実施の形態では、下地膜91上に、結晶粒子92aが数個凝集した凝集粒子92を離散的に散布させ、全面に亘ってほぼ均一に分布するように複数個付着させることにより構成している。凝集粒子92とは、所定の一次粒径の結晶粒子92aが凝集またはネッキングした状態のものである。すなわち、固体として大きな結合力を持って結合しているのではなく、静電気やファンデルワールス力などによって複数の一次粒子が集合体の体をなしているもので、超音波などの外的刺激により、その一部または全部が一次粒子の状態になる程度で結合しているものである。凝集粒子92の粒径としては、約1μm程度のもので、結晶粒子92aとしては、14面体や12面体などの7面以上の面を持つ多面体形状を有するのが望ましい。
また、結晶粒子92aの一次粒子の粒径は、結晶粒子92aの生成条件によって制御できる。例えば、炭酸マグネシウムや水酸化マグネシウムなどのMgO前駆体を焼成して生成する場合、焼成温度や焼成雰囲気を制御することで粒径を制御することができる。一般的に、焼成温度は700℃から1500℃の範囲で選択できるが、焼成温度を比較的高い1000℃以上にすることで、その粒径を0.3〜2μm程度に制御することが可能である。さらに、結晶粒子92aをMgO前駆体を加熱して得ることにより、その生成過程において、複数個の一次粒子同士が凝集またはネッキングと呼ばれる現象により結合して凝集粒子92を得ることができる。
また、電子放出性能は、大きいほど電子放出量が多いことを示す数値で、表面状態及びガス種とその状態によって定まる初期電子放出量によって表現する。初期電子放出量については表面にイオン、あるいは電子ビームを照射して表面から放出される電子電流量を測定する方法で測定できるが、PDP1の前面板2表面の評価を非破壊で実施することは困難を伴う。そこで、特開2007−48733号公報に記載されている方法を用いた。すなわち、放電時の遅れ時間のうち、統計遅れ時間と呼ばれる放電の発生しやすさの目安となる数値を測定し、その逆数を積分すると初期電子の放出量と線形に対応する数値になる。
そこで、この数値を用いて評価している。放電時の遅れ時間とは、パルスの立ち上がりから放電が遅れて行われる放電遅れの時間を意味し、放電遅れは、放電が開始される際にトリガーとなる初期電子が保護膜9表面から放電空間中に放出されにくいことが主要な要因として考えられている。
次に、本発明の実施の形態における凝集粒子92を有する保護膜9の効果を確認するために行った実験結果について説明する。まず、構成の異なる下地膜91と下地膜91上に設けた凝集粒子92を有するPDPを試作した。試作品1は酸化マグネシウム(MgO)の下地膜91のみの保護膜9を形成したPDP、試作品2は酸化マグネシウム(MgO)にAl、Siなどの不純物をドープした下地膜91のみの保護膜9を形成したPDP、試作品3は酸化マグネシウム(MgO)による下地膜91上に酸化マグネシウム(MgO)の結晶粒子92aの一次粒子のみを散布し付着させた保護膜9を形成したPDPである。
一方、試作品4は本発明の実施の形態におけるPDPであり、保護膜9として、酸化マグネシウム(MgO)で構成した下地膜91と、下地膜91上に結晶粒子92aを凝集させた凝集粒子92を全面に亘ってほぼ均一に分布するように付着させている。
これらのPDPについて、その電子放出性能と電荷保持性能を調べ、その結果を図7に示す。電子放出性能は上述の方法で評価し、電荷保持性能は、その指標として、PDPとして作製した場合に電荷放出現象を抑えるために必要とする走査電極に印加する電圧(以下Vscn点灯電圧と呼称する)の電圧値を用いた。すなわち、Vscn点灯電圧の低い方が電荷保持能力の高いことを示す。このことは、PDPを設計する上で、電源や各電気部品として、耐圧及び容量の小さい部品を使用することが可能となる。現状の製品において、走査電圧を順次パネルに印加するためのMOSFETなどの半導体スイッチング素子には、耐圧150V程度の素子が使用されており、Vscn点灯電圧としては、温度による変動を考慮して120V以下に抑えるのが望ましい。
図7は本発明の実施の形態におけるPDPの電子放出性能と電荷保持性能について調べた結果を示す図である。図7から明らかなように、本発明の実施の形態における下地膜91に酸化マグネシウム(MgO)の単結晶粒子92aを凝集させた凝集粒子92を散布して全面に亘って均一に分布させた試作品4は、電荷保持性能の評価において、Vscn点灯電圧を120V以下にすることができ、なおかつ電子放出性能が酸化マグネシウム(MgO)のみの保護膜の場合の試作品1に比べて格段に良好な特性を得ることができる。
一般的にはPDPの保護膜の電子放出能力と電荷保持能力は相反する。例えば、保護膜の製膜条件を変更することや、保護膜中にAlやSi、Baなどの不純物をドーピングして製膜することにより電子放出性能を向上することは可能であるが、副作用としてVscn点灯電圧も上昇してしまう。
本発明の実施の形態における保護膜9を形成した試作品4のPDPにおいては、電子放出能力としては、酸化マグネシウム(MgO)のみの保護膜を用いた試作品1の場合に比べて8倍以上の特性を有し、電荷保持能力としてはVscn点灯電圧が120V以下のものを得ることができる。したがって、高精細化により走査線数が増加し、かつセルサイズが小さいPDPに対しては有用で、電子放出能力と電荷保持能力の両方を満足させて、放電遅れを低減して良好な画像表示を実現することができる。
次に、背面板作製工程B1について説明する。この背面板作製工程B1においては、まず、背面ガラス基板11上に、銀(Ag)材料を含むペーストをスクリーン印刷する方法や、金属膜を全面に形成した後、フォトリソグラフィ法を用いてパターニングする方法などによりデータ電極12用の構成物となる材料層を形成する。データ電極12を形成するための電極ペーストは、銀(Ag)粒子と、ガラス成分と、感光性ポリマー、感光性モノマー、光重合開始剤、溶剤などを含む感光性有機バインダ成分とよりなる感光性ペーストである。
特に銀(Ag)粒子は、平均粒径が約1.1μmの小粒子を用いることで、緻密に銀粒子が充填され、データ電極の焼成時による断線を防止することができる。
また、電極ペーストの材料として、TiO2などのフィラーを含むことも可能である。フィラーを含まない場合、ガラス成分の焼結と銀(Ag)の焼結とがほぼ同時に行われるので、銀(Ag)の焼結が不十分なままになってしまう。しかし、フィラーを含むことにより、銀(Ag)粒子の焼結開始後にガラス成分の焼結が開始するため、銀(Ag)粒子の焼結が不十分にあることを防ぐ。その結果、銀(Ag)粒子が緻密に充填されたデータ電極が完成する。
次に、データ電極12が形成された背面ガラス基板11上にダイコート法などにより、データ電極12を覆うように誘電体ペーストを塗布して誘電体ペースト層を形成する。その後、誘電体ペースト層を焼成することにより下地誘電体層13を形成する。なお、誘電体ペーストはガラス粉末などの誘電体材料とバインダ及び溶剤を含んだ塗料である。
具体的には、本発明の実施の形態において絶縁体ペーストは、ガラス成分20−50%、絶縁性フィラー10−50%、導電性フィラー0−5%、バインダ10−20%、溶剤20−30%の配合比のものを数種類用いた。
絶縁性フィラーとは、シリカやチタニアのような絶縁性をもった物質で構成されたフィラーであり、導電性フィラーは酸化スズやマンガンといった導電性をもった物質で構成されたフィラーである。
また絶縁性フィラーとガラス成分の比率を変更することで、絶縁体層の空隙率を変更できる。後述する実験結果においてはこれらの配合比を変更して試料を作成し検討した。特に、ガラス成分40−50%、絶縁性フィラー10−20%とすることで、背面ガラス基板11側から厚み0〜50%の深さの空隙率の平均値を0.1〜1%の範囲とする。
ここで空隙率とは、下地誘電体層13の中で下地誘電体層13が存在していない部分の体積の割合であって、以下の方法で測定される。
(1)背面板10を割断し、下地誘電体層13の断面が露出したサンプルを切り出す
(2)下地誘電体層13を二次電子走査型電子顕微鏡(SEM)にて撮像する
(3)撮像された誘電体断面の画像から、空隙率を算出する
また誘電体層の断面は、SEM撮像時のコントラストを上げ、かつ割断時の割れ具合による測定ばらつきを防止するため、空隙部や周辺を樹脂でコートすることが望ましい。本測定は、日立製作所製走査型電子顕微鏡S−3000を用いて行った。算出に用いた撮像は反射電子計測モードで、加速電圧15kV、ワークディスタンス15mmにて行った。
(1)背面板10を割断し、下地誘電体層13の断面が露出したサンプルを切り出す
(2)下地誘電体層13を二次電子走査型電子顕微鏡(SEM)にて撮像する
(3)撮像された誘電体断面の画像から、空隙率を算出する
また誘電体層の断面は、SEM撮像時のコントラストを上げ、かつ割断時の割れ具合による測定ばらつきを防止するため、空隙部や周辺を樹脂でコートすることが望ましい。本測定は、日立製作所製走査型電子顕微鏡S−3000を用いて行った。算出に用いた撮像は反射電子計測モードで、加速電圧15kV、ワークディスタンス15mmにて行った。
下地誘電体層13の厚み0〜50%における空隙率の平均値が1%を越えると、放電ガスが外部に漏れ出し、PDPの品質を損ねる。また、下地誘電体層13の厚み0〜50%における空隙率の平均値が0.1%より小さいと、下地誘電体層13の反射率が著しく小さくなるためPDPの発光輝度が下がることになる。これは、空隙率が小さくなったことによって絶縁体層の空隙の界面において反射する光が少なくなり、全面基板から取り出される光の量が少なくなることに起因する。
次に、下地誘電体層13上に隔壁材料を含む隔壁形成用ペーストを塗布し、所定の形状にパターニングすることにより隔壁材料層を形成する。その後、所定の温度で焼成することにより隔壁14を形成する。ここで、下地誘電体層13上に塗布した隔壁用ペーストをパターニングする方法としては、フォトリソグラフィ法やサンドブラスト法を用いることができる。そして、隣接する隔壁14間の下地誘電体層13上及び隔壁14の側面に蛍光体材料を含む蛍光体ペーストを塗布し、焼成することにより蛍光体層15が形成される。以上の工程により、背面ガラス基板11上に所定の構成部材を有する背面板10が完成する。
その後、背面板10においては、背面板作製工程B1により作製した背面板10の画像表示領域外に封着部材であるガラスフリットを塗布し、その後ガラスフリットの樹脂成分等を除去するために350℃程度の温度で仮焼成するフリット塗布工程B2を行う。
ここで、封着部材としては、酸化ビスマスや酸化バナジウムを主成分としたフリットが望ましい。この酸化ビスマスを主成分とするフリットとしては、例えば、Bi2O3−B2O3−RO−MO系(ここでRは、Ba、Sr、Ca、Mgのいずれかであり、Mは、Cu、Sb、Feのいずれかである。)のガラス材料に、Al2O3、SiO2、コージライト等酸化物からなるフィラーを加えたものを用いることができる。また、酸化バナジウムを主成分とするフリットとしては、例えば、V2O5−BaO−TeO−WO系のガラス材料に、Al2O3、SiO2、コージライト等酸化物からなるフィラーを加えたものを用いることができる。
これらの前面板作製工程A1、背面板作製工程B1及びフリット塗布工程B2を行って前面板2と背面板10とを作製した後、前記前面板2と背面板10とを対向配置させて周辺部を封着部材により封着し、その後パネルの放電空間内に放電ガスを封入するパネルの組み立て工程を行う。
上述したように、本発明は、電子放出特性の優れた保護膜の検討を行った結果、前面板2と背面板10とを作製した後、放電ガスをパネルの放電空間内に封入するまでの間に、還元性有機ガスを含むガスをパネルの放電空間内に導入して前面板2の保護膜9を還元性有機ガスに曝した後、その還元性有機ガスを含むガスを排出する工程を設け、その後放電空間内に放電ガスを封入することにより、PDPの維持放電電圧を低下させることができることを見出したものであり、封着工程C1、排気工程C3と、放電ガス供給工程C4以外に、還元性ガス導入工程C2を設けた点に特徴を有する。
図8〜図10は、本発明の実施の形態に用いる封着工程C1、還元性ガス導入工程C2、排気工程C3と、放電ガス供給工程C4の温度プロファイルの一例を示す図である。図8〜図10において、封着温度とは、封着工程C1において、前面板2と背面板10とが封着部材であるフリットにより密閉される状態となる温度であり、本実施の形態における封着温度は、例えば約490℃程度である。また、排気温度とは、排気工程C3における温度であり、本実施の形態における排気温度は、例えば約400℃程度である。
図8に示す例においては、封着工程C1において、封着温度に維持するa−bの期間経過後、封着温度から排気温度に低下させるb−cの期間において、パネルの放電空間内からガスを排気する排気を行って減圧状態にした後、排気温度に維持しているc−dの期間において、パネルの放電空間内に還元性有機ガスを含むガスを導入して保護膜9を還元性有機ガスを含むガスに曝す還元性ガス導入工程C2を行い、その後d−eの期間において、還元性有機ガスを含めてパネルの放電空間内からガスを排気する排気工程C3を行い、温度が室温程度に下がったe点以降の期間において、放電空間内に放電ガスを供給する放電ガス供給工程C4を行うものである。
図9に示す例においては、封着工程C1において、封着温度に維持するa−bの期間経過後、封着温度から排気温度に低下させたc点から排気温度に維持しているd1の期間において、パネルの放電空間内からガスを排気する排気を行って減圧状態にした後、排気温度に維持した状態でd1−d2の期間において、パネルの放電空間内に還元性有機ガスを含むガスを導入して保護膜9を還元性有機ガスを含むガスに曝す還元性ガス導入工程C2を行い、その後d2−eの期間において、還元性有機ガスを含めてパネルの放電空間内からガスを排気する排気工程C3を行い、温度が室温程度に下がったe点以降の期間において、放電空間内に放電ガスを供給する放電ガス供給工程C4を行うものである。
また、図10に示す例においては、封着工程C1において、封着温度に到達したa点から封着温度に維持している期間中のb1点の間、パネルの放電空間内からガスを排気する排気を行って減圧状態にした後、b1点から、封着温度に維持しているb2の期間を過ぎて、封着温度から排気温度に低下したc点の期間において、パネルの放電空間内に還元性有機ガスを含むガスを導入して保護膜9を還元性有機ガスを含むガスに曝す還元性ガス導入工程C2を行い、その後c−eの期間において、還元性有機ガスを含めてパネルの放電空間内からガスを排気する排気工程C3を行い、温度が室温程度に下がったe点以降の期間において、放電空間内に放電ガスを供給する放電ガス供給工程C4を行うものである。
ここで、本発明において使用する還元性有機ガスとしては、表1に示すように、分子量が58以下の還元力の大きいCH系有機ガスが望ましく、これらの還元性有機ガスの中から選ばれる還元性有機ガスを希ガスや窒素ガスに混合して、還元性有機ガスを含むガスを作製して、還元性ガス導入工程C2を行う。
なお、表1において、それぞれの還元性有機ガスの蒸気圧の項目において、100kPa(0℃)以上のガスに「○」印を付し、100kPa(0℃)より小さいガスに「×」印を付している。さらに、沸点の項目において、0℃以下のガスに「○」印を付し、0℃より大きいガスに「×」印を付している。これは、PDPの製造工程における有機ガスの取扱い易さの観点から考えると、ガスボンベに入れて供給できる還元性有機ガスが望ましく、製造工程における取扱い易さから考えると、蒸気圧が100kPa(0℃)以上の還元性有機ガス、または沸点が0℃以下の還元性有機ガス、または分子量が小さい還元性有機ガスが望ましい。
さらに、本発明においては、パネルの放電空間内に還元性有機ガスを含むガスを導入して保護膜9を還元性有機ガスを含むガスに曝す還元性ガス導入工程C2を行い、その後還元性有機ガスを含めてパネルの放電空間内からガスを排気する排気工程C3を行うが、一部パネル内に残留することを考えると、分解しやすい還元性有機ガスが望ましく、表1に、分解しやすい項目として、分解しやすいガスに「○」印を付している。
以上の製造プロセス上での取扱い易さや、一部残留する場合などの点を考慮すると、還元性有機ガスとしては、アセチレン、エチレン、メチルアセチレン、プロパジエン、プロピレン、及びシクロプロパンの中から選ばれる酸素を含まない炭化水素系ガスが望ましく、これらの還元性有機ガスの中から選ばれる還元性有機ガスを希ガスや窒素ガスに混合して用いればよい。
本発明者らが実験した結果では、例えば化学式でC3H6のプロピレンガス、シクロプロパンガスを使用した場合は、維持電圧を約10V低下させることができ、化学式でC2H2のアセチレンガスを使用した場合は、維持電圧を約20V低下させることができることが分かった。
なお、希ガスや窒素ガスに混合する還元性有機ガスの混合比率は、使用する還元性有機ガスの燃焼範囲に応じて下限の比率を決定すればよく、数%程度の濃度以下で希ガスや窒素ガスに混合して使用する。また、これらの還元性有機ガスについて、混合する濃度が高すぎると、有機成分が重合して高分子となり、そのままパネル内に残留し、パネル特性に影響を与えてしまうため、使用する還元性有機ガス成分に応じて、混合比率を適宜調整することが必要である。
以上説明したように、本発明によれば、前面板2と背面板10とを作製した後、放電ガスをパネルの放電空間内に封入するまでの間に、還元性有機ガスを含むガスをパネルの放電空間内に導入して前面板2の保護膜9を還元性有機ガスに曝した後、その還元性有機ガスを含むガスを排出する工程を設け、その後放電空間内に放電ガスを封入することにより、PDPの維持放電電圧を低下させることができるものである。
なお、以上の説明では、保護膜9として、MgOからなる下地膜91に、MgOの結晶粒子が凝集した凝集粒子92を分散させて付着させた例で説明したが、上述したように、下地膜91としては、酸化マグネシウム(MgO)、酸化カルシウム(CaO)、酸化ストロンチウム(SrO)、及び酸化バリウム(BaO)から選ばれる金属酸化物により構成したものでもよい。
以上のように本発明は、高画質の表示性能を備え、かつ低消費電力のPDPを実現する上で有用な発明である。
1 PDP
2 前面板
3 前面ガラス基板
4 走査電極
4a,5a 透明電極
4b,5b 金属バス電極
5 維持電極
6 表示電極
7 ブラックストライプ(遮光層)
8 誘電体層
9 保護膜
10 背面板
11 背面ガラス基板
12 データ電極
13 下地誘電体層
14 隔壁
15 蛍光体層
16 放電空間
91 下地膜
92 凝集粒子
92a 結晶粒子
2 前面板
3 前面ガラス基板
4 走査電極
4a,5a 透明電極
4b,5b 金属バス電極
5 維持電極
6 表示電極
7 ブラックストライプ(遮光層)
8 誘電体層
9 保護膜
10 背面板
11 背面ガラス基板
12 データ電極
13 下地誘電体層
14 隔壁
15 蛍光体層
16 放電空間
91 下地膜
92 凝集粒子
92a 結晶粒子
Claims (3)
- 基板上に形成した表示電極を覆うように誘電体層を形成するとともに前記誘電体層上に保護膜を形成した第1基板と、前記第1基板に放電ガスが充填された放電空間を形成するように対向配置されかつ前記第1基板の前記表示電極と交差する方向にデータ電極を形成するとともに前記放電空間を区画する隔壁を設けた第2基板とを有し、前記第1基板と前記第2基板とを作製した後、前記第1基板と前記第2基板とを対向配置させて周辺部を封着部材により封着し、その後パネル内に放電ガスを封入するプラズマディスプレイパネルの製造方法であって、前記第1基板と前記第2基板とを作製した後、前記放電ガスをパネル内に封入するまでの間に、還元性有機ガスを含むガスをパネル内に導入して前記第1基板の保護膜を還元性有機ガスに曝した後、その還元性有機ガスを含むガスを排出する工程を有することを特徴とするプラズマディスプレイパネルの製造方法。
- 前記還元性有機ガスは、酸素を含まない炭化水素系ガスであることを特徴とする請求項1に記載のプラズマディスプレイパネルの製造方法。
- 前記還元性有機ガスは、アセチレン、エチレン、メチルアセチレン、プロパジエン、プロピレン、シクロプロパン、プロパン及びブタンの中から選ばれるガスであることを特徴とする請求項2に記載のプラズマディスプレイパネルの製造方法。
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