以下に、本発明の好ましい形態について図面を参照して説明する。なお、以下の説明に用いる各図においては、各構成要素を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各構成要素毎に縮尺を異ならせてあるものであり、本発明は、これらの図に記載された構成要素の数量、構成要素の形状、構成要素の大きさの比率、及び各構成要素の相対的な位置関係のみに限定されるものではない。
(第1の実施形態)
以下に、本発明の実施形態の一例としての第1の実施形態を説明する。図1に示す本実施形態の超音波観察装置1は、概略的には、被検体内に対して超音波ビームを電子的に走査することによって、被検体内の所定の部位の超音波断層像(Bモード画像)を得るための装置である。本実施形態では一例として、超音波観察装置1は、被検体内において超音波ビームの走査を行う、いわゆる超音波内視鏡の形態を有している。なお、超音波観察装置1の形態は超音波内視鏡に限られるものではなく、内視鏡の管路を介して被検体内に導入される超音波プローブと称される形態であってもよいし、被検体外から被検体内に向かって超音波ビームの走査を行う形態であってもよい。
超音波観察装置1の全体の構成は周知であるため詳細な説明は省略するものとするが、以下に、超音波観察装置1の概略的な構成を説明する。超音波観察装置1は、被検体の体内に導入可能な挿入部2と、挿入部2の基端に位置する操作部3と、操作部3の側部から延出するユニバーサルコード4とを有して主に構成されている。
挿入部2は、先端に配設される先端部10、先端部10の基端側に配設される湾曲自在な湾曲部11、及び湾曲部11の基端側に配設され操作部3の先端側に接続される可撓性を有する可撓管部12が連設されて構成されている。なお、超音波観察装置1は、挿入部2に可撓性を有する部位を具備しない、いわゆる硬性鏡と称される形態のものであってもよい。
挿入部2の先端部10には、超音波を送受信するための詳しくは後述する超音波送受部20の他に、図示しないが、光学像を撮像するための撮像装置及び照明装置、及び処置具を突出させるための処置具挿通口等が設けられている。
操作部3には、湾曲部11の湾曲を操作するためのアングル操作ノブ13が設けられている。また操作部3には、先端部10に設けられた開口部からの流体の送出動作や吸引動作の制御を行うためのスイッチ等が設けられている。
ユニバーサルコード4の基端部には図示しない光源装置に接続される内視鏡コネクタ4aが設けられている。光源装置から発せられた光は、ユニバーサルコード4、操作部3及び挿入部2に挿通された光ファイバケーブルを伝わって、先端部10の照明装置から出射される。なお、超音波観察装置1は、先端部10に配設された照明装置にLED等の光源装置が設けられる構成であってもよい。
内視鏡コネクタ4aからは、電気ケーブル5及び超音波ケーブル6が延出している。電気ケーブル5は、図示しないカメラコントロールユニットに電気コネクタ5aを介して着脱自在に接続される。カメラコントロールユニットは、先端部10に設けられた撮像装置によって撮像された画像を、画像表示装置8に出力する装置である。
また、超音波ケーブル6は、超音波観察制御装置7に超音波コネクタ6aを介して着脱自在に接続される。超音波観察制御装置7は、超音波送受部20による超音波の送受信動作の制御、及び超音波断層像の生成を行い、超音波断層像を画像表示装置8に出力する装置である。なお、超音波観察装置1は、超音波観察制御装置7及び画像表示装置8を具備しない構成であってもよい。
次に、超音波観察装置1の超音波送受部20が配設された部位の構成について説明する。超音波送受部20は、保持部30によって保持されており、保持部30を介して先端部10に固定されている。
超音波送受部20は、超音波送受面20a内の所定の領域である超音波送受領域20bにおいて超音波を送受信するように構成されている。超音波送受面20aは、超音波送受部20の表面の一部である。超音波送受面20aの形状は特に限定されるものではないが、本実施形態では一例として、図2に示すように、超音波送受部20は、外側に向かって凸形状の曲面からなる超音波送受面20aを有して構成されている。
図3は、超音波送受面20a及び超音波送受領域20bをわかりやすくするために、超音波送受面20a上に配設される詳しくは後述する音響レンズ部25及び保護部26を取り外した状態を示している。
なお以下において、超音波送受面20aの法線に沿う方向について、超音波送受面20aが面する方向を外側と称し、超音波送受面20aが面する方向とは反対側の方向を内側と称する。
具体的には、超音波送受面20aは、略円筒面状の形状を有している。そして、超音波送受領域20bは、略円筒面状の超音波送受面20a内における、周方向に所定の角度の範囲の領域である。超音波送受領域20bは、超音波送受面20aよりも小さく、かつ超音波送受面20aの端部と重ならないように設定されている。言い換えれば、超音波送受面20a上において、超音波送受領域20bの周囲には、超音波の送受信が行われない領域が設けられている。
超音波送受部20は、超音波送受領域20b内において超音波送受面20aの法線に沿う方向(径方向)に超音波ビームを送信可能であり、かつ超音波送受面20aの周方向に超音波ビームの走査が可能なように構成されている。すなわち本実施形態の超音波送受信部20は、略円弧状に超音波ビームの走査を行う構成を有している。このような超音波ビームの走査形式は、一般に電子コンベックス走査と称される。
なお、超音波送受面20aの形状は、異なる曲率を有する複数の曲面により構成されるものであってもよいし、1つ又は複数の平面により構成されるものであってもよい。また、超音波送受部20による超音波ビームの走査形式は本実施形態に限られるものではない。
より詳細には、超音波送受部20は、電気音響変換部21、バッキング材23及び音響整合層22を有して構成されている。
電気音響変換部21は、電気信号と超音波とを相互に変換する構成を有している。電気音響変換部21の構成は、電気信号と超音波とを相互に変換可能なものであれば特に限定されるものではないが、例えば圧電セラミクス等の圧電素子や電歪素子、又はマイクロマシン技術による超音波トランスデューサ(MUT;Micromachined Ultrasonic Transducer)等が適用され得る。
本実施形態では一例として、電気音響変換部21は、超音波送受面20aよりも内側において、超音波送受面20aに沿って略円弧状に配列された複数の圧電素子によって構成されている。複数の圧電素子は、それぞれ超音波送受面20aの法線方向(径方向)に振動するように配設されている。電気音響変換部21は、超音波送受面20aよりも狭い範囲内に配設されている。なお、電気音響変換部21を構成する複数の圧電素子には、それぞれに電気配線が接続されるが、周知の構成であるため図示していない。
電気音響変換部21の内側には、バッキング材23が配設されている。バッキング材23は、電気音響変換部21から内側に向かって放射される超音波、及び内側から電気音響変換部21に向かう超音波を吸収する部材である。このため、本実施形態において、電気音響変換部21による超音波の送受信は、超音波送受面20aの法線方向外側に向かってのみ行われる。
音響整合層22は、電気音響変換部21の外側に配設された略板状の部材であり、電気音響変換部21が送受する超音波を透過する。音響整合層22は、電気音響変換部21と、後述するレンズ部25との音響インピーダンスの差を小さくするためのものである。なお、音響整合層22は、異なる密度を有する複数の層が積層される構成であってもよい。
音響整合層22は、少なくとも電気音響変換部21の外側全体を覆うように配設されている。本実施形態では、超音波送受部20を超音波送受面20aの法線方向外側から見た場合に、音響整合層22は、電気音響変換部21の外縁よりも外周方向に延出するように配設されている。
音響整合層22は、本実施形態の超音波送受部20の最も外側に配設される部材である。すなわち、超音波送受部20の超音波送受面20aは、音響整合層22の外側の主面である。また、超音波送受領域20bは、音響整合層22の外側の面内において、電気音響変換部21が送受信する超音波が通過する領域である。具体的には、超音波送受領域20bは、超音波送受面20aに、電気音響変換部21の外形を外側に向かって投影した形状と略一致する。
以上のような構成を有する超音波送受部20の超音波送受面20a上には、音響レンズ部25が配設されている。音響レンズ部25は、超音波送受部20が送信する超音波ビームを収束させるためのものである。
音響レンズ部25を構成する材料は特に限定されるものではなく、被検体との音響インピーダンスマッチングに適した密度や耐薬品性等を考慮決められる。本実施形態では、被検体が人体等の生体であることから、音響レンズ部25は、一例としてシリコーン樹脂によって構成されている。
なお、音響レンズ部25の断面形状は、音響レンズ部25を構成する材料の密度、超音波送受部20が送信する超音波の波長、超音波送受面20aの幅、及び収束させる距離等に応じて定められるものであり、特に限定されるものではない。
音響レンズ部25は、超音波送受面20aの法線方向外側から見た場合に、少なくとも超音波送受領域20bの全体を覆い、かつ超音波送受面20aの内側に収まる外形を有する。本実施形態では一例として、超音波送受面20aの法線方向外側から見た場合に、音響レンズ部25は、超音波送受領域20bの周囲に延出しており、かつ、超音波送受面20aは、音響レンズ部25の周囲に延出している。なお、音響レンズ部25は、超音波送受面20aの法線方向外側から見た場合に、超音波送受領域20bと略一致する外形であってもよい。
なお、超音波送受面20aの法線方向外側から見た場合に、音響レンズ部25によって覆われていない超音波送受面20aの領域を、外周部20cと称するものとする。本実施形態では、音響整合層22の両端部22aは、音響レンズ部25の両端部25aよりも外周方向に延出しており、この両端部22aの外側の面が、外周部20cに相当する。
音響レンズ部25は、音響整合層22の外表面である超音波送受面20a上に、第1の接着剤により固定されている。第1の接着剤の種類は特に限定されるものではないが、例えばシリコーン系の接着剤が用いられる。
音響整合層22の両端部22aの外側の面上には、一対の保護部26が配設されている。また、一対の保護部26は、音響レンズ部25の両端部25aに接し、かつ超音波送受面20aの法線方向外側から見た場合に、音響整合層22の端部22aよりも外側に向かって延出している。すなわち、保護部26は、超音波送受面20aの音響レンズ部25によって覆われていない領域である外周部20cを覆い、かつ超音波送受面20aよりも外周方向に延出するように配設されている。
保護部26は、外周部20c及び音響レンズ部25の端部25aの双方に第2の接着剤により接着されている。ここで、音響整合層22と音響レンズ部25との間の第1の接着剤による単位面積あたりの接着強度よりも、音響整合層22と保護部26との間の第2の接着剤による単位面積あたりの接着強度の方が高くなるように、保護部25を構成する材料及び第2の接着剤の種類が選ばれている。
上述したように本実施形態においては、一例として、音響レンズ部25はシリコーン樹脂からなり、音響整合層22と音響レンズ部25とを接着する第1の接着剤はシリコーン系の接着剤が用いられている。そこで保護部25を、例えばポリイミド、ポリアミド又はポリサルフォン等のいわゆるエンジニアリングプラスチックにより構成し、第2の接着剤を、エポキシ系の接着剤とすれば、音響整合層22と保護部26との間の第2の接着剤による単位面積あたりの接着強度の方が、音響レンズ部25と音響整合層22との間の第1の接着剤による単位面積あたりの接着強度よりも高くなる。
また、音響レンズ部25の、保護部26と接着される端部25aの表面は、化学処理によって、第2の接着剤との親和性が高められている。ここで、音響レンズ部25と第2の接着剤との接着の親和性を高める化学処理の方法は特に限定されるものではないが、例えばプラズマ処理、イオンビーム処理又は酸による処理等の周知の技術が適用され得る。
音響レンズ部25を構成するシリコーン樹脂は、一般的に接着剤との親和性が低く接着強度が比較的低い部材であるが、音響レンズ部25と第2の接着剤との接着の親和性を高める処理を行うことによって、音響レンズ部25と保護部26との接着の強度を高めることができ、音響レンズ部25と保護部26との剥離を防止することができる。
以上に説明した構成を有する超音波送受部20、音響レンズ部25及び保護部26は、保持部30によって保持されている。保持部30は、先端部10に固定された部材である。
保持部30は、図4に示すように、超音波送受部20、音響レンズ部25及び保護部26を収容する凹部を有している。保持部30の凹部は、奥に向かって1段階開口が狭くなる段付き状であって、外表面側に設けられ開口が広い第2凹部32と、第2凹部32の底面32aに凹設され、第2凹部32よりも開口が狭い第1凹部31とによって構成されている。なお、電気音響変換部21に接続される電気配線は、保持部30を貫通し第1凹部31内に開口する孔40、及び先端部10を貫通し湾曲部11と孔40とを連通する孔41の内部に挿通される。超音波送受部20の電気音響変換部21は、孔40及び孔41内に挿通された電気配線を介して、超音波観察制御装置7に電気的に接続可能に構成されている。
第1凹部31は、少なくとも超音波送受面20aが開口部から露出するように超音波送受部20を保持する形状を有している。図3に示すように、第1凹部31内に超音波送受部20を収容した状態において、超音波送受部20の音響整合層22の外表面と、第1凹部31が開口する面である第2凹部32の底面32aとの間に段差が生じないように、第1凹部31は形成されている。
言い換えれば、第2凹部32の底面32aと超音波送受面20aとの間に段差が生じないように、超音波送受部20は第1凹部31内に収容される。超音波送受部20は、第1凹部31内に接着剤により固定される。
また、第2凹部32は、超音波送受部20の音響整合層22の両端部22aよりも外側に向かって延出している一対の保護部26が嵌合する開口形状を有している。第2凹部32内に保護部26が嵌合した状態において、保護部26の内側の面は、第2凹部32の底面32aに当接する。
このように、本実施形態では、超音波送受部20の音響整合層22の外表面に、超音波送受部20から外側に延出する保護部26が接着されている。そして、保護部26の超音波送受部20の外側に延出した部分は、保持部30に設けられた第2凹部32内に嵌合する。
したがって、図4に示すように、超音波送受部20に予め音響レンズ部25及び保護部26を接着したものを、保持部30の第1凹部31及び第2凹部32内に収容する場合には、超音波送受部20と保持部30との位置決めは、保護部26と第2凹部32との嵌合によって行われる。
保護部26は、超音波送受面20a(音響整合層22の外表面)上に接着される部材であることから、本実施形態のように保護部26と第2凹部32との嵌合によって超音波送受部20と保持部30との位置決めを行うことにより、超音波送受領域20bを保持部30に対して所定の位置に正確に位置決めすることができる。
保持部30と、保持部30の第2凹部32内に嵌合される保護部26とは、第2の接着剤によって接着されている。より詳しくは、保護部26の端面及び内側の面と、第2凹部32の側面32b及び底面32aとは、第2の接着剤によって接着されている。
以上のように、保護部26は、超音波送受面20aの外周部20cを覆い、かつ外周部20c及び保持部30にかけて、第2の接着剤により接着されている。より詳しくは、保護部26は、音響整合層22の端部22a及び保持部30が接着される領域の外側を覆うように配設され、かつ保護部26は、音響整合層22の端部22a及び保持部30に接着されている。
以上に説明した本実施形態の超音波観察装置1は、超音波送受面20aにおいて超音波を送受信する超音波送受部20と、超音波送受面20aが露出するように超音波送受部20を保持する保持部30と、超音波送受領域20bを覆うように超音波送受面20a上に接着された音響レンズ部25とを有している。そして、超音波観察装置1は、超音波送受面20aの音響レンズ部25により覆われていない外周部20cを覆い、超音波送受面20aよりも外周方向に延出するように配設され、音響レンズ部25、外周部20c及び保持部30に接着された保護部26をさらに有して構成されている。
そして本実施形態においては、保護部26が、超音波送受面20aの外周部20cから、保持部30の第2凹部32の底面部32aにかけて接着剤により接着される。すなわち、保護部26は、音響整合層22の端部22a及び保持部30が接着される領域の外側を覆うように配設され、音響整合層22及び保持部30の双方に接着されている。
このような構成を有する本実施形態の超音波観察装置においては、音響整合層22及び保持部30の境界部分の外側に、双方に接着される保護部材26が配設されていることから、保持部30内へ液体が浸入するための経路が長くなり、振動子の防水性がより向上する。
また、例えば音響レンズ25が、想定を超える過大な外力が加えられ音響整合層22及び保護部26との接着剤によるレンズ保持力が低下した場合においても、保持部30の内部の水密性は、保護部26と、音響整合層22及び保持部30との接着によって保たれるため、保持部30内への液体の浸入を防止することができる。
また、保護部26と、音響整合層22及び保持部30と間の第2の接着剤による単位面積あたりの接着強度は、音響レンズ部25と音響整合層22との第1の接着剤による単位面積あたりの接着強度よりも、高い。このため、仮に音響レンズ部25が、音響整合層22から剥離してしまうような想定外の過大な外力が加えられたとしても、保護部26が音響整合層22及び保持部30から剥離を抑制することができる。
以上のように、本実施形態の超音波観察装置は、音響レンズ部25が接着された超音波送受部20を保持する保持部30内への液体の浸入をより確実に防止することができる。
また、本実施形態では、超音波を透過する音響レンズ部25と音響整合層22との接着にはシリコーン系の第1の接着剤を用い、接着強度が必要な保護部26と、音響整合層22及び保持部30との接着にはエポキシ系の第2の接着剤を用いている。シリコーン系の第1の接着剤は、音響レンズ部25との密度が近いため、超音波送受領域20b上に音響レンズ部25を接着するための接着剤として好ましい性質を有する。一方、エポキシ系の第2の接着剤は、接着強度が高く、また硬化時の硬度が高いため、保護部26と、音響整合層22及び保持部30とを接着するための接着剤として好ましい性質を有する。
本実施形態では、音響レンズ部25と音響整合層22とを接着する接着剤として音響特性上好ましい性質を有する第1の接着剤を用いる場合、シリコーン系接着剤を第1の接着剤とすることが多い。この第1の接着剤の接着強度は、材質上接着強度がエポキシ系の接着剤に対して低いことが一般的に言われている。このような第1の接着剤をレンズ保持に用いる場合でも、本実施形態では、保護部26と、音響整合層22及び保持部30との第2の接着剤によるより強固な接着によって保持部30内の水密が確実に保たれる。これにより、超音波観察装置1により得られる超音波断層像の感度や画質の向上を図ることができる。
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。本実施形態は、第1の実施形態に対して、保護部の構成のみが異なる。よって以下ではこの相違点のみを説明するものとし、第1の実施形態と同様の構成要素については同一の符号を付し、その説明を適宜に省略するものとする。
上述した第1実施形態においては、保護部26は、音響レンズ部25、音響整合層22及び保持部30に第2の接着剤によって接着され、かつ音響整合層22及び保持部30の境界部分を覆うように配設される構成を有している。
一方、本実施形態の保護部126は、図5に示すように、音響レンズ部25、音響整合層22及び保持部30に第2の接着剤により接着されることは、第1の実施形態と同様であるが、保護部126の一部が、音響整合層22及び保持部30の間に配設されることが第1の実施形態と異なる。
具体的には、本実施形態の保護部126は、内側に延出する凸部126aを有している。この凸部126aは、音響整合層22の端部22aと、保持部30の第2凹部32の側面32bとの間に介在する。なお、保護部126が、保持部30の第2凹部32内に嵌合することは、第1の実施形態と同様である。
保護部126は、音響整合層22及び保持部30に第2の接着剤により接着される。より具体的には、保護部126は、超音波送受面20aの外周部20cと、音響整合層22の端部22aと、第2凹部32の側面32b及び底面32aとに、第2接着剤により接着される。
本実施形態のように、保護部126に、音響整合層22の端部22aの外周を回り込むように内側に延出する凸部126aを設ける構成によれば、第1の実施形態よりも、保護部126と音響整合層22との接着面積及び保護部126と保持部30との接着面積を広くすることができる。このため、本実施形態によれば、保護部126と、音響整合層22及び保持部30との接着強度をより強くすることができ、より確実に保持部30内への液体の浸入を防止することができる。なお、その他の効果については、第1の実施形態と同様である。
なお、保護部126の形状は図5に示すものに限られるものではない。たとえば、図6に示す第1の変形例のように、保護部126の凸部126aは、音響整合層22の内側に回り込む形状であってもよい。この場合、保護部126と音響整合層22との接着面積及び保護部126と保持部30との接着面積をより広くすることができる。
また、図7に示す第2の変形例のように、保護部126の凸部126aは、外周方向外側に突出するフランジ部126bを有する形状であってもよい。第2の変形例では、フランジ部126bを内側に向かって押さえた状態で保持部30に接着される、押圧部材33が配設されている。押圧部材33は、保持部30に接着された状態において、保持部30の外形を構成する部材となる。
このような第2の変形例であれば、保護部126と音響整合層22との接着面積及び保護部126と保持部30との接着面積をより広くすることができるだけでなく、保護部126を押圧部材33によって押さえることによって、より強固に保護部126及び音響整合層22を保持部30に対して固定することができる。したがって、第2の変形例によれば、より確実に保持部30内への液体の浸入を防止することができる。
また、図8に示す第3の変形例のように、保護部126は、音響レンズ部25の端部25aを覆う形状であってもよい。保護部126は、超音波送受領域20bよりも外側において、音響レンズ部25を覆う。この場合、音響レンズ25の端部25aを保護することができる。
このような第3の変形例であれば、音響レンズ25の端部25aに外力が加わることを防止することができ、音響レンズ25端部の超音波送受面20aとの保持固定力がより向上する。また、保護部126と、音響レンズ25との接着面積を広くすることができる。したがって、第3の変形例によれば、より確実に保持部30内への液体の浸入を防止することができる。
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。なお、以下では第1及び第2の実施形態と同様の構成要素については、その説明を適宜に省略するものとする。
上述した第1及び第2の実施形態における超音波観察装置は、いわゆる電子コンベックス走査形式により超音波ビームの走査を行う超音波送受部を有するものであるが、本発明は他の超音波ビームの走査形式を有する超音波観察装置にも適用可能である。
本実施形態では一例として、超音波観察装置は、電子ラジアル走査形式による超音波ビームの走査を行う超音波送受部220を有して構成されている。図9に示すように、超音波送受部220は、保持部230によって保持されており、保持部230を介して先端部10に固定されている。超音波送受部220は、電気音響変換部221、バッキング材223及び音響整合層222を有して構成されている。
超音波送受部220は、複数の圧電素子が円周方向に所定の間隔で配列されてなる電気音響変換部221を有して構成されている。電気音響変換部221を構成する複数の圧電素子は、径方向に振動するように配設されている。なお、電気音響変換部221を構成する複数の圧電素子には、それぞれに電気配線が接続されるが、周知の構成であるため図9では省略している。
電気音響変換部221の径方向内側には、略円筒状のバッキング材223が配設されている。したがって、電気音響変換部221による超音波の送受信は、径方向外側に向かってのみ行われる。
音響整合層222は、電気音響変換部221の外側に配設された略円筒状の部材であり、電気音響変換部21が送受する超音波を透過する。音響整合層222は、超音波送受部220の最も外側に配設される部材である。すなわち、超音波送受部220の超音波送受面220aは、略円筒状の音響整合層222の外周面である。また、超音波送受領域220bは、超音波送受面220aに、電気音響変換部221の外形を外側に向かって投影した形状と略一致する。
以上のような構成を有する超音波送受部220の超音波送受面220a上には、音響レンズ部225が配設されている。音響レンズ部225を構成する材料は特に限定されるものではなく、被検体との音響インピーダンスマッチングに適した密度や耐薬品性等を考慮決められる。本実施形態では、被検体が人体等の生体であることから、音響レンズ部225は、一例としてシリコーン樹脂によって構成されている。
音響レンズ部225は、超音波送受面220aの法線方向外側から見た場合に、少なくとも超音波送受領域220bの全体を覆い、かつ超音波送受面220aの内側に収まる外形を有する。
本実施形態では一例として、超音波送受面220aの法線方向外側から見た場合に、音響レンズ部225は、超音波送受領域220bの周囲に延出しており、かつ、超音波送受面220aは、音響レンズ部225の周囲に延出している。なお、音響レンズ部225は、超音波送受面220aの法線方向外側から見た場合に、超音波送受領域220bと略一致する外形であってもよい。
なお、超音波送受面220aの法線方向外側から見た場合に、音響レンズ部225によって覆われていない超音波送受面220aの周囲に設けられた領域を、外周部220cと称するものとする。すなわち本実施形態では、音響整合層222の軸方向両端部222aは、音響レンズ部225の両端部25aよりも外周方向に延出しており、この音響整合層222の両端部222aの外側の面が、外周部220cである。
音響レンズ部225は、音響整合層222の外表面である超音波送受面220a上に、第1の接着剤により固定されている。第1の接着剤の種類は特に限定されるものではないが、例えばシリコーン系の接着剤が用いられる。
音響整合層222の軸方向両端部222aには、一対の略円筒状の保護部226が配設されている。一対の保護部226は、音響レンズ部225の両端部225aに接し、かつ超音波送受面220aを法線方向外側から見た場合に、音響整合層222の端部222aよりも軸方向外側に向かって延出している。また、保護部226の音響整合層222の端部222aよりも軸方向外側に向かって延出した部位には、端部222aに沿って径方向内側に突出するフランジ状の凸部226aが設けられている。
すなわち、保護部226は、超音波送受面220aの音響レンズ部225によって覆われていない領域である外周部220cを覆い、かつ超音波送受面220aよりも軸方向外側に延出するように配設されている。
保護部226は、音響レンズ225の端部225a、外周部220c、音響整合層222の端部222aに第2の接着剤により接着されている。ここで、音響レンズ部225と音響整合層222との間の第1の接着剤による単位面積あたりの接着強度よりも、音響整合層222と保護部226との間の第2の接着剤による単位面積あたりの接着強度の方が高くなるように、保護部225を構成する材料及び第2の接着剤の種類が選ばれている。
上述したように本実施形態においては、一例として、音響レンズ部225はシリコーン樹脂からなり、音響整合層222と音響レンズ部225とを接着する第1の接着剤はシリコーン系の接着剤が用いられている。そこで保護部225を、例えばポリイミド、ポリアミド又はポリサルフォン等のいわゆるエンジニアリングプラスチックにより構成し、第2の接着剤を、エポキシ系の接着剤とすれば、音響整合層222と保護部226との間の第の接着剤による単位面積あたりの接着強度の方が、音響レンズ部225と音響整合層222との間の第1の接着剤による単位面積あたりの接着強度よりも高くなる。
また、音響レンズ部225の、保護部226と接着される端部225aの表面は、化学処理によって、第2の接着剤との親和性が高められている。ここで、音響レンズ部225と第2の接着剤との接着の親和性を高める化学処理の方法は特に限定されるものではないが、例えばプラズマ処理、イオンビーム処理又は酸による処理等の周知の技術が適用され得る。
音響レンズ部225を構成するシリコーン樹脂は、一般的に接着剤との親和性が低く接着強度が比較的低い部材であるが、音響レンズ部225と第2の接着剤との接着の親和性を高める処理を行うことによって、音響レンズ部225と保護部226との接着の強度を高めることができ、音響レンズ部225と保護部226との接合強度がより向上する。
以上に説明した構成を有する超音波送受部220、音響レンズ部225及び保護部226は、保持部230によって保持されている。保持部230は、先端部10に固定された部材である。
保持部230は、超音波送受部220を超音波送受領域220bが露出するように保持する。保持部230には、超音波送受部220の基端側に接着された略円筒状の保護部226の内側に嵌合する嵌合部230aが設けられている。嵌合部230aに嵌合した保護部226は、嵌合部230aと第2の接着剤により接着される。
すなわち、超音波送受部220は、軸方向基端側に接着された保護部226が、保持部230に接着されることによって、保持部230に対して固定される。またこのとき、保持部230が嵌合部230aに嵌合することによって、超音波送受部220と保持部230との位置決めがなされる。したがって本実施形態では、超音波送受領域220bを保持部230に対して所定の位置に正確に位置決めすることができる。
また、超音波送受部220の先端側には、キャップ部240が固定される。キャップ部240は、超音波送受部220の先端側を封止するための部材である。キャップ部240には、超音波送受部220の先端側に接着された略円筒状の保護部226の内側に嵌合する嵌合部240aが設けられている。キャップ部240と、保護部226とは、第2の接着剤により接着される。
キャップ部240が超音波送受部220の先端側に接着されることによって、キャップ部240、超音波送受部220及び保持部230によって囲まれる空間が水密に封止される。
以上に説明した本実施形態の超音波観察装置は、超音波送受面220aにおいて超音波を送受信する超音波送受部220と、超音波送受面220aが露出するように超音波送受部220を保持する保持部230と、超音波送受領域220bを覆うように超音波送受面220a上に接着された音響レンズ部225とを有している。そして、超音波観察装置は、超音波送受面220aの音響レンズ部225により覆われていない外周部220cを覆い、超音波送受面220aよりも外周方向に延出するように配設され、音響レンズ部225、外周部220c及び保持部230に接着された保護部26をさらに有して構成されている。
そして本実施形態においては、保護部226が、超音波送受面220aの外周部220cから、保持部230の嵌合部230aにかけて接着剤により接着される。また同様に、本実施形態においては、保護部226が、超音波送受面220aの外周部220cから、キャップ部240の嵌合部240aにかけて接着剤により接着される。
すなわち、保護部230は、音響整合層222の端部222aと、略円筒状の超音波送受部220の基端側及び先端側を封止する保持部230及びキャップ部240の間に介装された状態で、双方に接着される。
このような本実施形態では、想定を超えた強い外力を加えられた場合でも、超音波送受部220、保持部230及びキャップ部240で囲まれる内部空間の水密性は、保護部226と、音響整合層222、保持部230及びキャップ部240との接着によって保たれる。
また、保護部226と、音響整合層222、保持部230及びキャップ部240と間の第2の接着剤による単位面積あたりの接着強度は、音響レンズ部225と音響整合層222との第1の接着剤による単位面積あたりの接着強度よりも高い。このため、音響レンズ部225を接着する第1の接着剤によるこれら部分の固定よりも保護部226と音響整合層222、キャップ部240との固定が強固に行われる。
以上のように、本実施形態の超音波観察装置は、音響レンズ部225が接着された超音波送受部220を保持する保持部230内への液体の浸入をより確実に防止することができる。
また、本実施形態では、超音波を透過する音響レンズ部225と音響整合層222との接着にはシリコーン系の第1の接着剤を用い、接着強度が必要な保護部226と、音響整合層222、保持部230及びキャップ部240との接着にはエポキシ系の第2の接着剤を用いている。
シリコーン系の第1の接着剤は、音響レンズ部225との密度が近いため、超音波送受面220a上に音響レンズ部225を接着するための接着剤として好ましい性質を有する。一方、エポキシ系の第2の接着剤は、接着強度が高く、また硬化時の硬度が高いため、保護部226と、音響整合層222、保持部230及びキャップ部240とを接着するための接着剤として好ましい性質を有する。
本実施形態では、音響レンズ部225と音響整合層222とを接着する接着剤として音響特性上好ましい性質を有する第1の接着剤を用いることによって接着強度が若干落ちたとしたとしても、保護部226と、音響整合層222、保持部230及びキャップ部240との第2の接着剤によるより強固な接着によって超音波送受部220及び保持部230内の水密が確実に保たれる。これにより、超音波観察装置により得られる超音波断層像の感度や画質の向上を図ることができる。
以上に説明した本実施形態の超音波観察装置について、超音波送受信部220を保持部230に固定する組み立て手順の一例を以下に説明する。まず、図10に示すように、超音波送受信部220の基端側に、保護部226を、第2の接着剤を用いて接着する。
次に、図11に示すように、音響整合層222の先端側の端部222aに、例えばマスキングテープ241を貼り付けることによって、マスキングを施す。ここで、マスキングを施す領域は、後ほど先端側の保護部226が接着される領域である。なお、図11に示すマスキングを施す行程は、図10に示す行程より先に行われてもよい。
次に、図12に示すように、音響整合層222の外周面上、すなわち超音波送受信面220a上に、第1の接着剤を用いて音響レンズ部225を接着する。このとき、後ほど先端側の保護部226が第2の接着剤により接着される領域は、マスキングテープ241によってマスキングされているため、第1の接着剤がこの領域に付着してしまうことはない。第1の接着剤が、後に先端側の保護部226が接着される領域に付着することを防止することによって、第2の接着剤による先端側の保護部226と音響整合層222との接着強度を安定させることができる。
次に、マスキングテープ241を剥がし、マスキングテープ241が貼り付けられていた領域を洗浄する。これは、マスキングテープ241を貼り付けていた接着剤又は粘着剤が、先端側の保護部226が接着される領域に残留することを防止するためである。
次に、図13に示すように、超音波送受信部220の先端側に、保護部226を、第2の接着剤を用いて接着する。超音波送受信部220の先端側及び基端側に一対の保護部226が接着されることによって、略円筒形状の超音波送受部220の強度が向上する。このため、後の行程において超音波送受部220が損傷することを防止することができ、また、超音波送受部220の取り扱いが容易となる。
次に図14に示すように、基端側の保護部226を、保持部230に第2の接着剤を用いて接着する。そして、先端側の保護部226に、キャップ部240を第2の接着剤を用いて接着する。以上に説明した手順で組み立てることによって、超音波観察装置の先端部10に超音波送受部220が固定される。
(第4の実施形態)
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。本実施形態は、第3の実施形態に対して、保護部の形状のみが異なる。よって以下ではこの相違点のみを説明するものとし、第3の実施形態と同様の構成要素については同一の符号を付し、その説明を適宜に省略するものとする。
図15に示すように、本実施形態の保護部226は、音響レンズ部225を、超音波送受領域220bよりも外側において覆う、被覆部226bを有している。
音響整合層222に第2の接着剤により比較的強固に固定された保護部226から延出する被覆部226bによって、音響レンズ部225の端部225aを覆うことによって、音響レンズ部225の端部225aに外力が加わることを防止することができる。また、保護部226と、音響レンズ225との接着面積を広くすることができる。したがって、第4の実施形態によれば、第3の実施形態と同様に超音波送受部220及び保持部230の内部への液体の浸入を防止することができるとともに、音響レンズ部225の端部も保護することができる。
(第5の実施形態)
次に、本発明の第5の実施形態について説明する。本実施形態は、第3の実施形態に対して、保護部の構成のみが異なる。よって以下ではこの相違点のみを説明するものとし、第3の実施形態と同様の構成要素については同一の符号を付し、その説明を適宜に省略するものとする。
図16に示すように、本実施形態では、超音波送受部220の基端側に接着される保護部226は保持部230と一体であり、超音波送受部220の基端側に接着される保護部226はキャップ部240と一体である。
本実施形態では、超音波送受部220は、保持部230と一体に形成された略円筒状の保護部226内に嵌合することによって、保持部230に対して位置決めされ、固定される。このため本実施形態では、超音波送受部220を、保持部230に対して正確な位置に固定することができる。
また本実施形態では、一対の保護部226が保持部230及びキャップ部240と一体であることから、保持部230に対しする超音波送受部220の固定を強固に行うことができる。また、部品点数を減らすことができ、より安価に作成することができる。
(第6の実施形態)
次に、本発明の第6の実施形態について説明する。本実施形態は、第3の実施形態又は第4の実施形態に対して、主に保護部の形態が異なる。よって以下では上述した第3の実施形態又は第4の実施形態と本実施形態との相違点を主に説明するものとし、第3の実施形態又は第4の実施形態と同様の構成要素については同一の符号を付し、その説明を適宜に省略するものとする。
図17に示すように、本実施形態の超音波観察装置は、電子ラジアル走査形式による超音波ビームの走査を行う超音波送受部220を有して構成されている。
超音波送受部220は、保持部230によって保持されており、保持部230を介して先端部10に固定されている。超音波送受部220は、電気音響変換部221、バッキング材223及び音響整合層222を有して構成されている。
超音波送受部220は、複数の圧電素子221aが円周方向に所定の間隔で配列されてなる電気音響変換部221を有して構成されている。電気音響変換部221を構成する複数の圧電素子221aは、径方向に振動するように配設されている。
圧電素子221aの径方向外側の面上には接地電極221bが形成されており、圧電素子221aの径方向内側の面上には信号電極221cが形成されている。接地電極221bは、後述する構成を介して接地される電極である。すなわち、接地電極221bは、超音波観察装置の基準電位である接地電位となる電極である。複数の圧電素子221aにおけるそれぞれの接地電極221bは、電気的に接続されている。一方、信号電極221cは、図示しない電気配線を介して超音波観察制御装置7に電気的に接続可能に構成されており、圧電素子221aの電圧信号の入出力を行うための電極である。複数の圧電素子221aのそれぞれに設けられた信号電極221cは、それぞれが電気的に絶縁された状態である。
電気音響変換部221の径方向内側、すなわち信号電極221cが設けられた面の外側には、略円筒状のバッキング材223が配設されている。バッキング材223は、電気音響変換部221から内側に向かって放射される超音波、及び内側から電気音響変換部221に向かう超音波を吸収する部材である。
また、電気音響変換部221の径方向外側、すなわち接地電極221bが設けられた面の外側には、略円筒状の音響整合層222が配設されている。音響整合層222は、電気音響変換部221が送受する超音波を透過する部材であって、電気音響変換部221と、レンズ部225との音響インピーダンスの差を小さくするためのものである。なお、音響整合層222は、異なる密度を有する複数の層が積層される構成であってもよい。
略円筒状の音響整合層222の内側の面上には、導電性の材料からなる膜状もしくは板状の導電性層228が配設されている。すなわち、導電性層228は、電気音響変換部221の外周面上を覆うように設けられている。言い換えるならば、先端部10を径方向外側から見た場合に、電気音響変換部221は、導電性層228によって覆われている。導電性層228は、電気音響変換部221を構成する全ての複数の圧電素子221aの径方向外側の面上に設けられた接地電極221bと接触しており電気的に接続されている。
なお、導電性層228は、所定の導電性を有する材料からなるものであればよく、その形態は特に限定されるものではない。例えば、導電性層228は、カーボン粒子や金属粒子等の導電性のフィラーが混合された、いわゆる導電性樹脂からなるものであってもよいし、物理蒸着法や化学蒸着法等によって形成される銅箔等の金属薄膜からなるものであってもよい。
また、超音波送受部220の径方向外側には、音響レンズ部225が配設されている。音響レンズ部225は、超音波送受部220が送信する超音波ビームを収束させるためのものである。
超音波送受部220の径方向内側には、ケーブル収容部231が配設されている。ケーブル収容部231は、基端が例えば保持部230に固定された中空の略円筒状の部材である。ケーブル収容部231内には、後述する接地配線232及び233と、圧電素子221aの信号電極221cに電気的に接続される図示しない複数の電気配線が束ねられて挿通されている。
ケーブル収容部231の、電気音響変換部221よりも先端側の位置及び電気音響変換部221よりも基端側の位置には、円板状に径方向外側に延出するフランジ部231a及び231bが形成されている。
ケーブル収容部231に形成された基端側のフランジ部231bは、音響整合層222の内側の面上に設けられた導電性層228に接する外径を有している。フランジ部231bの基端側に向く面上及び外周面上には、導電性の材料からなる膜状もしくは板状の導電性層229が配設されている。すなわち、導電性層229は、電気音響変換部221の外径と略同一の外径を有している。したがって、先端部10を基端側から見た場合に、電気音響変換部221は、導電性層229によって覆われている。
導電性層229は、電気音響変換部221の外周面上を覆うように設けられた導電性層228と電気的に接続されている。そして、導電性層229は、ケーブル収容部231内に挿通された接地配線233に電気的に接続されている。導電性層229は、接地配線233を介して接地される。したがって、導電性層229に電気的に接続されている導電性層228及び接地電極221bも、接地配線233を介して接地される。
なお、導電性層229は、所定の導電性を有する材料からなるものであればよく、その形態は特に限定されるものではない。例えば、導電性層229は、カーボン粒子や金属粒子等の導電性のフィラーが混合された、いわゆる導電性樹脂からなるものであってもよいし、蒸着法等によって形成される銅箔等の金属薄膜からなるものであってもよい。また、導電性層229は、円板状の金属板であって、接着剤や、ケーブル収容部231の成型時における埋め込みによって、ケーブル収容部231に固定される形態であってもよい。
また、保持部230の超音波送受部220よりも基端側の外周部には、周方向に沿って凹設された溝状のバルーン係止部230bが設けられている。バルーン係止部230bは、超音波送受部220よりも先端側に設けられた後述するバルーン係止部240bとともに、超音波送受部220の周囲を被覆する図示しない超音波バルーンを係止するための部位である。本実施形態のようなラジアル走査形式の超音波送受部220を有する超音波観察装置において使用される超音波バルーンは、音響レンズ225と被検体との間に液体等の超音波伝達媒体を介在させるためのものであり、周知のものである。
以上のように構成された電子ラジアル走査形式の超音波送受部220を有する超音波観察装置において、音響整合層222の軸方向両端部222aには、一対の保護部226が配設されている。
本実施形態の保護部226は、一例として第4の実施形態と同様に、音響レンズ225の先端部及び基端部を超音波送受領域220bよりも外側において覆う、被覆部226bを有している。なお、保護部226は、第3の実施形態のように、被覆部を有していない形態であってもよい。
音響レンズ225の先端側に設けられた保護部226の先端側には、キャップ部240が固定されている。キャップ部240は、超音波送受部220の先端側を水密に封止するための部材である。キャップ部240の外周部には、周方向に沿って凹設された溝状のバルーン係止部240bが設けられている。バルーン係止部240bは、超音波送受部220よりも基端側に設けられた上述のバルーン係止部230bとともに、超音波送受部220の周囲を被覆する図示しない超音波バルーンを係止するための部位である。
上述した第3の実施形態又は第4の実施形態では、音響レンズ225の先端側に設けられた保護部226と、保護部226の先端側に設けられたキャップ部240とが、接着によって固定されている。本実施形態では、保護部226とキャップ部240とを固定する形態が、第3の実施形態又は第4の実施形態と異なる。
本実施形態では、保護部226とキャップ部240とは、接着による結合に加えて、機械的な係合によって結合されている。保護部226とキャップ部240との機械的な係合の形態は特に限定されるものではないが、本実施形態では一例として、図17及び図18に示すように、保護部226とキャップ部240とはネジ構造によって結合されている。
音響レンズ225の先端側に設けられた保護部226には、径方向内側に延出する板状の円板状部226cが設けられている。円板状部226cの略中心部には所定の内径の貫通孔226gが形成されている。すなわち、円板状部226cは、先端部10を先端側から見た場合に、外径が保護部226の外径であり、内径が所定の内径である環状の部位である。
ここで、円板状部226cの内径は、略円筒状の電気音響変換部221の内径と略同一又は電気音響変換部221の内径よりも小さくなるように設定されている。本実施形態では一例として、円板状部226cの内径は、電気音響変換部221の内側に配設された筒状のケーブル収容部231の内径よりも小さい。
円板状部226cの先端側の面の中央部には、雄ネジ部226fが先端側に向かって突出するように設けられている。貫通孔226gは、雄ネジ部226fを貫通している。
一方、キャップ部240の基端側の面には、雄ネジ部226fに螺合する雌ネジ部240fが形成されている。キャップ部240の最も基端側の着座面240dが円板状部226cの先端側の面に当接するまで、雌ネジ部240fを雄ネジ部226fに螺合することによって、保護部226とキャップ部240とが機械的な係合により結合される。
なお、保護部226とキャップ部240とを結合するための雄ネジ及び雌ネジの配置の関係は本実施形態に限られるものではなく、保護部226に雌ネジ部が設けられ、キャップ部240に雄ネジ部が設けられる形態であってもよい。
円板状部226の先端側の面の外縁部近傍には、先端側に向かって突出する嵌合部226dが形成されている。嵌合部226dは、雄ネジ部226fと中心を略同一とした円環状の凸部である。嵌合部226dの内径は、先端側から見た場合に、電気音響変換部221の外径と略同一又は電気音響変換部221の外径よりも大きくなるように設定されている。
一方、キャップ部240の着座面240dには、円板状部226に設けられた嵌合部226dが嵌合する溝部である嵌合部240cが形成されている。嵌合部240cは、雌ネジ部240fと中心を略同一とした円環状の凹部である。
キャップ部240の着座面240dが円板状部226cの先端側の面に当接するまで、雌ネジ部240fを雄ネジ部226fに螺合することによって、保護部226の凸形状の嵌合部226dとキャップ部240の凹形状の嵌合部240cとが嵌合する。この保護部226の嵌合部226dとキャップ部240の嵌合部240cとの嵌合によって、保護部226に対するキャップ部240の径方向の位置決めがなされる。
また、保護部226の凸形状の嵌合部226dとキャップ部240の凹形状の嵌合部240cとの嵌合によって、保護部226とキャップ部240との間の水密が実現される。嵌合部226dと嵌合部240cとの間には、ガスケットやOリング等が配設されてもよい。
なお、保護部226及びキャップ部240の径方向の位置決めが、両者に設けられた嵌合部226d及び嵌合部240cによって確実に行われるように、雌ネジ部240f及び雄ネジ部226fの間の隙間が定められている。言い換えれば、嵌合部226d及び嵌合部240cの嵌め合いと、雌ネジ部240f及び雄ネジ部226fの嵌め合いとがいわゆる二重嵌合となることを防止するため、雌ネジ部240f及び雄ネジ部226fの嵌め合いの遊びを大きくしてある。
本実施形態では、保護部226に凸形状の嵌合部226dを設け、キャップ部240に凹形状の嵌合部240cを設けているが、保護部226及びキャップ部240に設けられる嵌合部の凹凸の関係は逆であってもよく、保護部226の嵌合部が凹形状であり、キャップ部240の嵌合部が凸形状であってもよい。
以上に説明したように、本実施形態では、保護部226とキャップ部240とはネジ構造と接着によって強固に結合される。そして、保護部226及びキャップ部240に設けられた嵌合部226d及び嵌合部240cが嵌合することによって、両者の位置決めと両者間の水密の確保が実現される。このような本実施形態は、上述した第3の実施形態又は第4の実施形態のように、接着剤のみによって保護部226とキャップ部240とを固定する形態に比して、保護部226とキャップ部240とを、正確な位置関係でより強固に固定することが可能である。また、保護部226とキャップ部240とを、嵌合部及びネジ部に塗布された接着剤によって固定することによって、保護部226とキャップ部240とを強固に固定するとともに、両者間の水密性を高くすることができる。
また、本実施形態では、保護部226の円板状部226cの先端側の面上に、導電性の材料からなる膜状もしくは板状の導電性層227が配設されている。導電性層227は、先端側から見た場合に、嵌合部226dよりも内側であって、かつ電気音響変換部221の外径と略同一の径又は電気音響変換部221の外径よりも大きい径よりも内側の領域において、保護部226を覆うように配設されている。
具体的に本実施形態では、導電性層227は、貫通孔226gの先端側の内面と、雄ネジ部226fの先端面及び外周面(ネジ形成部)上を覆うように配設されており、さらに雄ネジ部226fから径方向外側に向かって嵌合部226dの内壁面に至るまでの円板状部226cの先端側の面上を覆うように配設されている。したがって、先端部10を先端側から見た場合に、電気音響変換部221は、導電性層227によって覆われている。また、導電性層227は、外部に露出せず、保護部226とキャップ部240との間の水密に保たれた領域に配設されている。
導線性層227は、ケーブル収容部231内に挿通された接地配線232に電気的に接続されている。具体的には、導電性層227の雄ネジ部226fの先端面を覆う部位に、ケーブル収容部231及び貫通孔226gに挿通されて保護部226の先端側に延出する接地配線233が、半田付けや導電性接着剤等によって接続されている。したがって、導電性層227は、接地配線232を介して接地される。
なお、導電性層227は、所定の導電性を有する材料からなるものであればよく、その形態は特に限定されるものではない。例えば、導電性層227は、カーボン粒子や金属粒子等の導電性のフィラーが混合された、いわゆる導電性樹脂からなるものであってもよいし、物理蒸着法や化学蒸着法等によって形成される銅箔等の金属薄膜からなるものであってもよい。導電性層227が金属からなる場合には、導電性層227は、例えば金、銀、銅、ニッケル、スズ、又はアルミニウム等の純金属又はこれらを含む合金によって構成される。
また、導電性層227は、金属板であって、接着剤や、成型時における埋め込みによって、保護部226に固定される形態であってもよい。導電性層227が金属板である場合には、雄ネジ部226fは金属板に形成される形態であってもよい。
以上に説明した本実施形態では、電気音響変換部221の信号電極221cの先端側、径方向外側及び基端側が、導電性層227、228及び229によって覆われている。このように本実施形態では、電気信号が加えられる部位である信号電極221cの周囲を、接地された導電性層227、228及び229によって囲む、いわゆる保護接地構造が実現される。保護接地構造により、使用時にメスのような鋭利な金属片が強い力によって先端部10に刺さるといった事態が発生した場合であっても、接地された導電性層227、228及び229が外部に露出するため、漏電を防止することができる。
以上に説明した本実施形態は、上述した効果の他に、第3の実施形態又は第4の実施形態と同様の効果を有する。
なお、以上に述べた本実施形態では、保護部226とキャップ部240との機械的に結合する構成としてネジ構造を用いているが、保護部226とキャップ部240との機械的に結合の構成は本実施形態に限られるものではない。保護部226とキャップ部240との機械的な結合の変形例を以下に説明する。
本変形例では、図19に示すように、保護部226の円板形状部226cの中央から先端側に突出する軸部226iの先端部に、径方向外側に鉤状に延出する係合爪部226kが形成されている。一方、キャップ部240の基端側の面には、係合爪部226k及び軸部226iを挿入可能な係合穴部240gが形成されている。
係合穴部240gは、図20及び図21に示すように、奥において内径が広がっている。係合爪部226k及び軸部226iを係合穴部240g内に挿入した状態で、保護部226とキャップ部240とを軸部226i周りに相対的に回動させることによって、係合爪部226k及び軸部226iが係合穴部240gから抜けなくなり、保護部226とキャップ部240とが機械的に結合される。
(第7の実施形態)
次に、本発明の第7の実施形態について説明する。本実施形態は、第6の実施形態に対して、保護部の形態が異なる。よって以下では上述した第6の実施形態と本実施形態との相違点を主に説明するものとし、第6の実施形態と同様の構成要素については同一の符号を付し、その説明を適宜に省略するものとする。
図22及び図23に示すように、本実施形態の保護部226の円板状部226cが外側円板状部226caと内側円板状部226cbの2つに分割されており、外側円板状部226caと内側円板状部226cbとは接着剤234によって固定されている。
具体的には、図17に示す第6の実施形態における円板状部226cと同様の機能を有する部材は2体に分割され、被覆部226bと一体であり嵌合部226dが形成された略円環状の外側円板状部226caと、外側円板状部226caの内側に配設され、雄ネジ部226fが形成された内側円板状部226cbとによって構成されている。内側円板状部226caの外縁部近傍には、接着剤234が充填される貫通孔226hが周方向に複数穿設されている。
本実施形態において、先端側の保護部226を先端部10に組み付ける方法を以下に説明する。まず、図24に示すように、外側円板状部226caを、接着剤により、超音波送受部220の先端側に固定する。そして、外側円板状部226caの内周面に、接着剤234を塗布する。本実施形態では、ケーブル収容部231の先端側のフランジ部231aの先端面にも接着剤234を塗布する。
そして、図25に示すように、位置決め治具235によって、外側円板状部226caの所定の位置に内側円板状部226cbを配置し、接着剤234を硬化させる。具体的には、位置決め治具235は、内側円板状部226cbの雄ネジ部226fが螺合する雌ネジ部235aと、内側円板状部226cbに当接して内側円板状部226cbの軸方向の位置決めをする突き当て部235bと、外側円板状部226caの嵌合部226dと嵌合する凹形状の嵌合部235cと、を有して構成されている。
すなわち、位置決め治具235は、嵌合部235cが嵌合部226dと嵌合することによって、外側円板状部226caに対して所定の位置に位置決めされる。また、位置決め治具235は、内側円板状部226cbが突き当て部235bに突き当たるまで、雌ネジ部235aと雄ネジ部226fを螺合することによって、内側円板状部226cbを所定の位置に保持することが可能に構成されている。
このような位置決め治具235によって、外側円板状部226caの所定の位置に内側円板状部226cbを保持することによって、外側円板状部226caの内側及びフランジ部231aの先端面に塗布されていた接着剤234は、外側円板状部226caと内側円板状部226cbとの間や、貫通孔226h内に充填される。
接着剤234の硬化後、位置決め治具235を取り外すことによって、先端側の保護部226が、先端部10に組み付けられた状態となる。位置決め治具235を取り外した後に、接地配線232の先端部を導電性層227に半田付けによって固定する。そして、第6の実施形態と同様に、キャップ部240を螺合及び接着により保護部226に結合する。
以上に説明した本実施形態は、第6の実施形態と同様の効果を有する。
なお、本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う超音波観察装置もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。