JP2013026581A - 素子及び太陽電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】シリコンを含む基板上に形成された抵抗率の低い電極と、タブ線とが低い接触抵抗で接続された素子、及びこれを用いて形成される太陽電池を提供する。
【解決手段】素子を、シリコンを含む基板8と、前記基板8上に配置され、リン含有銅合金粒子、ガラス粒子、溶剤及び樹脂を含む電極用ペースト組成物の焼成物である電極11,13と、前記電極11,13上に電気的に接続されたタブ線とを有し、前記電極と前記タブ線との剥離接着強さが0.2N/mm〜2.0N/mmとなるように構成する。
【選択図】図1

Description

本発明は、素子及び太陽電池に関する。
一般にシリコン系太陽電池には表面電極が設けられており、この表面電極の配線抵抗や接触抵抗は変換効率に関連する電圧損失に関連し、また配線幅や形状は太陽光の入射量に影響を与える。
太陽電池の表面電極は通常以下のようにして形成される。すなわち、p型シリコン基板の受光面側にリン等を高温で熱的に拡散させることにより形成されたn型半導体層上に、導電性組成物をスクリーン印刷等により塗布し、これを800〜900℃で焼成することで表面電極が形成される。この表面電極を形成する導電性組成物には、導電性金属粉末、ガラス粒子、及び種々の添加剤等が含まれる。
前記導電性金属粉末としては、銀粉末が一般的に用いられているが、種々の理由から銀粉末以外の金属粉末を用いることが検討されている。例えば、銀とアルミニウムを含む太陽電池用電極を形成可能な導電性組成物が開示されている(例えば、特許文献1参照)。また銀を含む金属ナノ粒子と銀以外の金属粒子を含む電極形成用組成物が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
特開2006−313744号公報 特開2008−226816号公報
一般に電極形成に用いられる銀は貴金属であり、資源の問題からも、また地金自体が高価であることから銀含有導電性組成物(銀含有ペースト)に代わるペースト材料の提案が望まれている。銀に代わる有望な材料としては、半導体配線材料に適用されている銅が挙げられる。銅は資源的にも豊富で、地金コストも銀の約100分の1と安価である。しかしながら、銅は200℃以上の高温で酸化されやすい材料であり、例えば、特許文献2に記載の電極形成用組成物では、導電性金属として銅を含む場合、これを焼成して電極を形成するために、窒素等の雰囲気下で焼成するという特殊な工程が必要であった。
本発明は、シリコンを含む基板上に形成された抵抗率の低い電極とタブ線とが低い接触抵抗で接続された素子、及びこれを用いて形成される太陽電池を提供することを課題とする。
前記課題を解決するための具体的手段は以下の通りである。
<1> シリコンを含む基板と、前記基板上に配置され、リン含有銅合金粒子、ガラス粒子、溶剤及び樹脂を含む電極用ペースト組成物の焼成物である電極と、前記電極上に電気的に接続されたタブ線とを有し、前記電極と前記タブ線との剥離接着強さが0.2N/mm〜2.0N/mmである素子。
<2> 前記リン含有銅合金粒子のリン含有率が、6質量%以上8質量%以下である前記<1>に記載の素子。
<3> 前記電極用ペースト組成物が、錫含有粒子をさらに含む前記<1>又は<2>に記載の素子。
<4> 前記錫含有粒子は、錫粒子及び錫含有率が1質量%以上である錫合金粒子から選ばれる少なくとも1種である前記<3>に記載の素子。
<5> 前記ガラス粒子は、ガラス軟化点が600℃以下であり、結晶化開始温度が600℃を超える前記<1>〜<4>のいずれか1項に記載の素子。
<6> 前記電極用ペースト組成物は、前記リン含有銅合金粒子と前記錫含有粒子の総含有率を100質量%としたときの前記錫含有粒子の含有率が、5質量%以上70質量%以下である前記<3>〜<5>のいずれか1項に記載の素子。
<7> 前記電極用ペースト組成物は、銀粒子を更に含む前記<1>〜<6>のいずれか1項に記載の素子。
<8> 前記電極用ペースト組成物は、前記リン含有銅合金粒子、前記錫含有粒子及び前記銀粒子の総含有率を100質量%としたときの前記銀粒子の含有率が0.1質量%以上10質量%以下である前記<7>に記載の素子。
<9> 前記電極用ペースト組成物は、前記リン含有銅合金粒子、錫含有粒子及び銀粒子の総含有率が70質量%以上94質量%以下であり、前記ガラス粒子の含有率が0.1質量%以上10質量%以下であり、前記溶剤及び樹脂の総含有率が3質量%以上29.9質量%以下である請求項7又は請求項8に記載の素子。
<10> 前記シリコンを含む基板はpn接合を有し、太陽電池に用いる前記<1>〜<9>のいずれか1項に記載の素子。
<11> 前記<10>に記載の太陽電池に用いる素子と、前記素子を封止する封止材とを備える太陽電池。
本発明によれば、シリコンを含む基板上に形成された抵抗率の低い電極とタブ線とが低い接触抵抗で接続された素子、及びこれを用いて形成される太陽電池を提供することができる。
本発明にかかる太陽電池の概略断面図である。 本発明にかかる太陽電池の受光面側を示す概略平面図である。 本発明にかかる太陽電池の裏面側を示す概略平面図である。 (a)本発明にかかるバックコンタクト型太陽電池のAA断面構成を示す概略斜視図である。(b)本発明にかかるバックコンタクト型太陽電池の裏面側電極構造を示す概略平面図である。
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。また本明細書において「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。さらに本明細書において組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
<素子>
本発明の素子は、シリコンを含む基板と、前記基板上に配置され、リン含有銅合金粒子、ガラス粒子、溶剤及び樹脂を含む電極用ペースト組成物の焼成物である電極と、前記電極上に電気的に接続されたタブ線とを有し、前記電極と前記タブ線との剥離接着強さが0.2N/mm〜2.0N/mmである。
電極が前記電極用ペースト組成物の焼成物であり、電極とタブ線の剥離接着強さが所定の範囲であることで抵抗率の低い電極とタブ線とが低い接触抵抗で接続される。
[基板]
前記基板はシリコン(ケイ素)を含むものであれば特に制限されない。中でもp型又はn型の不純物を含むシリコン基板であることが好ましく、pn接合を有し、太陽電池に用いるシリコン基板であることがより好ましく、pn接合を有し電極が形成される面に反射防止膜が設けられている太陽電池用であることがさらに好ましい。
[電極用ペースト組成物]
前記電極用ペースト組成物は、リン含有銅合金粒子と、ガラス粒子の少なくとも1種と、溶剤の少なくとも1種と、樹脂の少なくとも1種とを含む。かかる構成であることにより、焼成時における銅の酸化が抑制され、抵抗率の低い電極が形成可能である。
(リン含有銅合金粒子)
前記電極用ペースト組成物は、リン含有銅合金粒子の少なくとも1種を含む。
前記リン含有銅合金に含まれるリン含有率は特に制限されない。耐酸化性と低抵抗率の観点から、リン含有率が6質量%以上8質量%以下であることが好ましく、6.3質量%以上7.8質量%以下であることがより好ましく、6.5質量%以上7.5質量%以下であることがさらに好ましい。リン含有銅合金に含まれるリン含有率が8質量%以下であることで、より低い抵抗率を達成可能であり、また、リン含有銅合金の生産性に優れる。また6質量%以上であることで、より優れた耐酸化性を達成できる。
さらにリン含有銅合金に含まれるリン含有率が6質量%以上であることで、電極を形成した場合にタブ線との接着性が向上し、電極とタブ線の剥離接着強さを所望の範囲とすることができる。これは例えば、電極表面の酸化被膜の形成を抑えることができるためと考えることができる。
リン含有銅合金としては、リン銅ろう(リン濃度:通常7質量%程度以下)と呼ばれるろう付け材料が知られている。リン銅ろうは、銅と銅との接合剤としても用いられるものである。本発明の電極用ペースト組成物においてリン含有銅合金粒子を用いることで、リンの銅酸化物に対する還元性を利用し、耐酸化性に優れ、抵抗率の低い電極を形成することができる。さらに電極の低温焼成が可能となり、プロセスコストを削減できるという効果を得ることができる。
前記リン含有銅合金粒子は、銅とリンを含む合金であるが、他の原子をさらに含んでいてもよい。他の原子としては、例えば、Ag、Mn、Sb、Si、K、Na、Li、Ba、Sr、Ca、Mg、Be、Zn、Pb、Cd、Tl、V、Sn、Al、Zr、W、Mo、Ti、Co、Ni、及びAu等を挙げることができる。
また前記リン含有銅合金粒子に含まれる他の原子の含有率は、例えば、前記リン含有銅合金粒子中に3質量%以下とすることができ、耐酸化性と低抵抗率の観点から、1質量%以下であることが好ましい。
また前記リン含有銅合金粒子は、1種単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
前記リン含有銅合金粒子の粒子径としては特に制限はないが、小径側から積算した重量が50%の場合における粒子径(以下、「D50%」と略記することがある)として、0.4μm〜10μmであることが好ましく、1μm〜7μmであることがより好ましい。0.4μm以上とすることで耐酸化性がより効果的に向上する。また10μm以下であることで電極中におけるリン含有銅合金粒子どうしの接触面積が大きくなり、抵抗率がより効果的に低下する。尚、リン含有銅合金粒子の粒子径は、マイクロトラック粒度分布測定装置(日機装社製、MT3300型)によって測定される。
また前記リン含有銅合金粒子の形状としては特に制限はなく、略球状、扁平状、ブロック状、板状、及び鱗片状等のいずれであってもよい。前記リン含有銅合金粒子の形状は、耐酸化性と低抵抗率の観点から、略球状、扁平状、又は板状であることが好ましい。
前記電極用ペースト組成物に含まれる前記リン含有銅合金粒子の含有率、また後述する銀粒子を含む場合のリン含有銅合金粒子と銀粒子の総含有率としては、例えば、70質量%〜94質量%とすることができ、耐酸化性と低抵抗率の観点から、72質量%〜90質量%であることが好ましく、74質量%〜88質量%であることがより好ましい。
リン銅合金は、通常用いられる方法で製造することができる。また、リン含有銅合金粒子は、所望のリン含有率となるように調製したリン含有銅合金を用いて、金属粉末を調製する通常の方法を用いて調製することができ、例えば、水アトマイズ法を用いて定法により製造することができる。尚、水アトマイズ法の詳細は金属便覧(丸善(株)出版事業部)等に記載されている。
具体的には例えば、リン含有銅合金を溶解し、これをノズル噴霧によって粉末化した後、得られた粉末を乾燥、分級することで、所望のリン含有銅合金粒子を製造することができる。また、分級条件を適宜選択することで所望の粒子径を有するリン含有銅合金粒子を製造することができる。
(ガラス粒子)
前記電極用ペースト組成物は、ガラス粒子の少なくとも1種を含む。電極用ペースト組成物がガラス粒子を含むことにより、焼成時に電極部と基板との密着性が向上する。また。電極形成温度において、いわゆるファイアースルーによって反射防止膜である窒化ケイ素膜が取り除かれ、電極とシリコン基板とのオーミックコンタクトが形成される。
前記ガラス粒子は、電極形成温度で軟化・溶融し、接触した窒化ケイ素膜を酸化し、酸化された二酸化ケイ素を取り込むことで、反射防止膜を除去可能なものであれば、当該技術分野において通常用いられるガラス粒子を特に制限なく用いることができる。
ガラス粒子としては、耐酸化性と電極の低抵抗率の観点から、ガラス軟化点が600℃以下であって、結晶化開始温度が600℃を超えるガラスを含むガラス粒子であることが好ましい。尚、前記ガラス軟化点は、熱機械分析装置(TMA)を用いて通常の方法によって測定され、また前記結晶化開始温度は、示差熱−熱重量分析装置(TG−DTA)を用いて通常の方法によって測定される。
一般に電極用ペースト組成物に含まれるガラス粒子は、二酸化ケイ素を効率よく取り込み可能であることから鉛を含むガラスから構成されることが好ましい。このような鉛を含むガラスとしては、例えば、特許第03050064号公報等に記載のものを挙げることができ、本発明においてもこれらを好適に使用することができる。
また本発明においては、環境に対する影響を考慮すると、鉛を実質的に含まない鉛フリーガラスを用いることが好ましい。鉛フリーガラスとしては、例えば、特開2006−313744号公報の段落番号0024〜0025に記載の鉛フリーガラスや、特開2009−188281号公報等に記載の鉛フリーガラスを挙げることができ、これらの鉛フリーガラスから適宜選択して本発明に適用することもまた好ましい。
前記電極用ペースト組成物に用いられるガラス成分としては例えば、二酸化ケイ素(SiO)、酸化リン(P)、酸化アルミニウム(Al)、酸化ホウ素(B)、酸化バナジウム(V)、酸化カリウム(KO)、酸化ビスマス(Bi)、酸化ナトリウム(NaO)、酸化リチウム(LiO)、酸化バリウム(BaO)、酸化ストロンチウム(SrO)、酸化カルシウム(CaO)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化ベリリウム(BeO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化鉛(PbO)、酸化カドミウム(CdO)、酸化スズ(SnO)、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化タングステン(WO3)、酸化モリブデン(MoO)、酸化ランタン(La)、酸化ニオブ(Nb2O5)、酸化タンタル(Ta)、酸化イットリウム(Y)、酸化チタン(TiO)、酸化ゲルマニウム(GeO)、酸化テルル(TeO)、酸化ルテチウム(Lu)、酸化アンチモン(Sb)、酸化銅(CuO)、酸化鉄(FeO)、酸化銀(AgO)及び酸化マンガン(MnO)が挙げられる。
中でも、SiO、P、Al、B、V、Bi2、ZnO、及びPbOから選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。具体的には、ガラス成分として、SiO、PbO、B、Bi及びAlを含むものが好ましく挙げられる。このようなガラス粒子の場合には、軟化点が効果的に低下し、さらにリン含有銅合金粒子及び必要に応じて添加された銀粒子との濡れ性が向上するため,焼成過程での前記粒子間の焼結が進み,抵抗率の低い電極を形成することができる。
他方、低接触抵抗率の観点からは、五酸化二リンを含むガラス粒子(リン酸ガラス、P系ガラス粒子)であることが好ましく、五酸化二リンに加えて五酸化二バナジウムを更に含むガラス粒子(P−V系ガラス粒子)であることがより好ましい。五酸化二バナジウムを更に含むことで、耐酸化性がより向上し、電極の抵抗率がより低下する。これは、例えば、五酸化二バナジウムを更に含むことでガラスの軟化点が低下することに起因すると考えることができる。五酸化二リン−五酸化二バナジウム系ガラス粒子(P−V系ガラス粒子)を用いる場合、五酸化二バナジウムの含有率としては、ガラスの全質量中に1質量%以上であることが好ましく、1質量%〜70質量%であることがより好ましい。
前記ガラス粒子の粒子径としては特に制限はない。例えば小粒径側から積算した重量が50%の場合における粒子径(以下、「D50%」と略記することがある)として、0.5μm以上10μm以下であることが好ましく、0.8μm以上8μm以下であることがより好ましい。0.5μm以上とすることで電極用ペースト組成物作製時の作業性が向上する。また10μm以下であることで。電極用ペースト組成物中に均一に分散し、焼成工程で効率よくファイアースルーを生じることができ、さらにシリコンを含む基板との密着性も向上する。
前記ガラス粒子の含有率としては電極用ペースト組成物の全質量中に0.1質量%〜10質量%であることが好ましく、0.5質量%〜8質量%であることがより好ましく、1質量%〜7質量%であることがさらに好ましい。かかる範囲の含有率でガラス粒子を含むことにより、より効果的に耐酸化性、電極の低抵抗率化、及び低接触抵抗化が達成される。
(溶剤及び樹脂)
前記電極用ペースト組成物は、溶剤の少なくとも1種と樹脂の少なくとも1種とを含む。これにより本発明の電極用ペースト組成物の液物性(例えば、粘度、表面張力、焼成後の電極のアスペクト比)を、シリコン基板に付与する際の付与方法に応じて必要とされる液物性に調整することができる。
前記溶剤としては特に制限はない。例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエンなどの炭化水素系溶剤;ジクロロエチレン、ジクロロエタン、ジクロロベンゼンなどの塩素化炭化水素系溶剤;テトラヒドロフラン、フラン、テトラヒドロピラン、ピラン、ジオキサン、1,3−ジオキソラン、トリオキサンなどの環状エーテル系溶剤;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどのアミド系溶剤;ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシドなどのスルホキシド系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶剤;エタノール、2−プロパノール、1−ブタノール、ジアセトンアルコールなどのアルコール系化合物;2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノアセテート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノプロピオレート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノブチレート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート、2,2,4−トリエチル−1,3−ペンタンジオールモノアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートなどの多価アルコールのエステル系溶剤;ブチルセロソルブ、ジエチレングリコールジエチルエーテルなとの多価アルコールのエーテル系溶剤;α−テルピネン、α−テルピネオール、ミルセン、アロオシメン、リモネン、ジペンテン、α−ピネン、β−ピネン、ターピネオール、カルボン、オシメン、フェランドレンなどのテルペン系溶剤、及びこれらの混合物が挙げられる。
前記溶剤としては、電極用ペースト組成物をシリコン基板に形成する際の塗布性、印刷性の観点から、多価アルコールのエステル系溶剤、テルペン系溶剤、及び多価アルコールのエーテル系溶剤から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、多価アルコールのエステル系溶剤及びテルペン系溶剤から選ばれる少なくとも1種であることがより好ましい。
前記溶剤は1種単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また前記樹脂としては焼成工程において熱分解されうる樹脂であれば、当該技術分野において通常用いられる樹脂を特に制限なく用いることができる。具体的には例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ニトロセルロースなどのセルロース系樹脂;ポリビニルアルコール類;ポリビニルピロリドン類;アクリル樹脂;酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体;ポリビニルブチラール等のブチラール樹脂;フェノール変性アルキド樹脂、ひまし油脂肪酸変性アルキド樹脂のようなアルキド樹脂;エポキシ樹脂;フェノール樹脂;ロジンエステル樹脂等を挙げることができる。
前記樹脂としては、焼成時における消失性の観点から、セルロース系樹脂、及びアクリル樹脂から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、セルロース系樹脂から選ばれる少なくとも1種であることがより好ましい。
前記樹脂は1種単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また前記樹脂の重量平均分子量は特に制限されない。中でも重量平均分子量は5000以上500000以上が好ましく、10000以上300000以下であることがより好ましい。前記樹脂の重量平均分子量が5000以上の場合には、電極用ペースト組成物の粘度の増加を抑えることができる。これは例えばリン含有銅合金粒子に吸着させたときの立体的な反発作用が不足して粒子同士が凝集するという現象が抑制されるためと考えることができる。一方樹脂の重量平均分子量が500000以下の場合には、樹脂同士が溶剤中で凝集し、結果として電極用ペースト組成物の粘度が増加するという現象が抑えられる。これに加え樹脂の重量平均分子量を適度な大きさに抑えると、樹脂の燃焼温度が高くなるのが抑えられ、電極用ペースト組成物を焼成する際に樹脂が完全に燃焼されず異物として残存することが抑えられ、電極の低抵抗化が図られる。
前記電極用ペースト組成物において、前記溶剤と前記樹脂の含有量は、所望の液物性と使用する溶剤及び樹脂の種類に応じて適宜選択することができる。例えば、溶剤と樹脂の総含有率が、電極用ペースト組成物の全質量中に3質量%以上29.9質量%以下であることが好ましく、5質量%以上25質量%以下であることがより好ましく、7質量%以上20質量%以下であることがさらに好ましい。
溶剤と樹脂の総含有率が前記範囲内であることにより、電極用ペースト組成物をシリコン基板に付与する際の付与適性が良好になり、所望の形状を有する電極をより容易に形成することができる。
(錫含有粒子)
前記電極用ペースト組成物は、錫含有粒子の少なくとも1種を含むことが好ましい。リン含有銅合金粒子に加えて、錫含有粒子を含むことにより、後述する焼成工程において、抵抗率の低い電極を形成できる。
これは例えば以下のように考えることができる。リン含有銅合金粒子と錫含有粒子とが、焼成工程で互いに反応して、Cu−Sn合金相とSn−P−Oガラス相からなる電極を形成する。ここで前記Cu−Sn合金相は、電極内で緻密なバルク体を形成し、これが導電層として機能することで抵抗率の低い電極を形成できると考えられる。
尚、ここでいう緻密なバルク体とは、塊状のCu−Sn合金相が互いに密に接触し、三次元的に連続している構造を形成していることを意味する。
また錫含有粒子を含む電極用ペースト組成物を用いてシリコンを含む基板(以下、単に「シリコン基板」ともいう)上に電極を形成する場合、シリコン基板に対する密着性が高い電極を形成することができ、さらに電極とシリコン基板との良好なオーミックコンタクトを達成することができる。
これは例えば以下のように考えることができる。リン含有銅合金粒子と錫含有粒子とが、焼成工程で互いに反応して、Cu−Sn合金相とSn−P−Oガラス相からなる電極を形成する。上記Cu−Sn合金相が緻密なバルク体であるために、このSn−P−Oガラス相は、Cu−Sn合金相とシリコン基板との間に形成される。これによりCu−Sn合金相のシリコン基板に対する密着性が向上すると考えることができる。またSn−P−Oガラス相が、銅とシリコンとの相互拡散を防止するためのバリア層として機能することで、焼成して形成される電極とシリコン基板との良好なオーミックコンタクトが達成できると考えることができる。すなわち銅を含む電極とシリコンを直に接触して加熱したときに形成される反応相(CuSi)の形成を抑制し、半導体性能(例えば、pn接合特性)を劣化することなくシリコン基板との密着性を保ちながら、良好なオーミックコンタクトを発現することができると考えられる。
このような効果は、シリコンを含む基板上に前記電極用ペースト組成物を用いて電極を形成する場合であれば、一般的に発現するものであり、シリコンを含む基板の種類は特に制限されるものではない。シリコンを含む基板としては、例えば太陽電池形成用のシリコン基板、太陽電池以外の半導体デバイスの製造に用いるシリコン基板等を挙げることができる。
すなわち、電極用ペースト組成物中にリン含有銅合金粒子と錫含有粒子を組み合わせることで、まずリン含有銅合金粒子中のリン原子の銅酸化物に対する還元性を利用し、耐酸化性に優れ、体積抵抗率の低い電極が形成される。次いでリン含有銅合金粒子と錫含有粒子との反応により、体積抵抗率を低く保ったままCu−Sn合金相からなる導電層とSn−P−Oガラス相とが形成される。そして例えば、Sn−P−Oガラス相が銅とシリコンの相互拡散を防止するためのバリア層として機能することで電極とシリコン基板との間に反応物相が形成されることを抑制し、銅電極との良好なオーミックコンタクトが形成されるという2つの特徴的な機構を、焼成工程で同時に実現できると考えることができる。
前記錫含有粒子としては、錫を含む粒子であれば特に制限はない。中でも、錫粒子及び錫合金粒子から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、錫粒子及び錫含有率が1質量%以上である錫合金粒子から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
錫粒子における錫の純度は特に制限されない。例えば錫粒子の純度は、95質量%以上とすることができ、97質量%以上であることが好ましく、99質量%以上であることが好ましい。
また錫合金粒子は、錫を含む合金粒子であれば合金の種類は特に制限されない。中でも、錫合金粒子の融点、及びリン含有銅合金粒子との反応性の観点から、錫の含有率が1質量%以上である錫合金粒子であることが好ましく、錫の含有率が3質量%以上である錫合金粒子であることがより好ましく、錫の含有率が5質量%以上である錫合金粒子であることがさらに好ましく、錫の含有率が10質量%以上である錫合金粒子であることが特に好ましい。
錫合金粒子としては、例えば、Sn−Ag系合金、Sn−Cu系合金、Sn−Ag−Cu系合金、Sn−Ag−Sb系合金、Sn−Ag−Sb−Zn系合金、Sn−Ag−Cu−Zn系合金、Sn−Ag−Cu−Sb系合金、Sn−Ag−Bi系合金、Sn−Bi系合金、Sn−Ag−Cu−Bi系合金、Sn−Ag−In−Bi系合金、Sn−Sb系合金、Sn−Bi−Cu系合金、Sn−Bi−Cu−Zn系合金、Sn−Bi−Zn系合金、Sn−Bi−Sb−Zn系合金、Sn−Zn系合金、Sn−In系合金、Sn−Zn−In系合金、Sn−Pb系合金等が挙げられる。
前記錫合金粒子のうち、特に、Sn−3.5Ag、Sn−0.7Cu、Sn−3.2Ag−0.5Cu、Sn−4Ag−0.5Cu、Sn−2.5Ag−0.8Cu−0.5Sb、Sn−2Ag−7.5Bi、Sn−3Ag−5Bi、Sn−58Bi、Sn−3.5Ag−3In−0.5Bi、Sn−3Bi−8Zn、Sn−9Zn、Sn−52In、Sn−40Pb等の錫合金粒子は、Snのもつ融点(232℃)と同じ、もしくはより低い融点をもつ。そのため、これら錫合金粒子は焼成の初期段階で溶融することで、リン含有銅合金粒子の表面を覆い、リン含有銅合金粒子と均一に反応することができるという点で、好適に用いることができる。尚、錫合金粒子における表記は、例えばSn−AX−BY−CZの場合は、錫合金粒子の中に、元素XがA質量%、元素YがB質量%、元素ZがC質量%含まれていることを示す。
これらの錫含有粒子は1種単独で使用してもよく、又2種類以上を組み合わせて使用することもできる。
前記錫含有粒子は、不可避的に混入する他の原子をさらに含んでいてもよい。不可避的に混入する他の原子としては、例えば、Ag、Mn、Sb、Si、K、Na、Li、Ba、Sr、Ca、Mg、Be、Zn、Pb、Cd、Tl、V、Al、Zr、W、Mo、Ti、Co、Ni、及びAu等を挙げることができる。
また前記錫含有粒子に含まれる他の原子の含有率は、例えば前記錫含有粒子中に3質量%以下とすることができ、融点及びリン含有銅合金粒子との反応性の観点から、1質量%以下であることが好ましい。
前記錫含有粒子の粒子径としては特に制限はないが、小粒径側から積算した重量が50%の場合における粒子径(以下、「D50%」と略記することがある)として、0.5μm〜20μmであることが好ましく、1μm〜15μmであることがより好ましく、5μm〜15μmであることがさらに好ましい。0.5μm以上とすることで錫含有粒子自身の耐酸化性が向上する。また20μm以下であることで電極中におけるリン含有銅合金粒子との接触面積が大きくなり、リン含有銅合金粒子との反応が効果的に進む。
また前記錫含有粒子の形状としては特に制限はなく、略球状、扁平状、ブロック状、板状、及び鱗片状等のいずれであってもよいが、耐酸化性と低抵抗率の観点から、略球状、扁平状、又は板状であることが好ましい。
また本発明の電極用ペースト組成物における錫含有粒子の含有率は特に制限されない。中でも、前記リン含有銅合金粒子と前記錫含有粒子及びの総含有率を100質量%としたときの錫含有粒子の含有率が、5質量%以上70質量%以下であることが好ましく、7質量%以上65質量%以下であることがより好ましく、9質量%以上60質量%以下であることがさらに好ましく、電極とタブ線の剥離接着強さの観点から、9質量%以上55質量%であることが特に好ましい。
錫含有粒子の含有率を5質量%以上とすることで、リン含有銅合金粒子との反応をより均一に生じさせることができる。また錫含有粒子を70質量%以下とすることで、充分な体積のCu−Sn合金相を形成することができ、電極の体積抵抗率がより低下する。
(銀粒子)
前記電極用ペースト組成物は、銀粒子を更に含むことが好ましい。銀粒子を含むことで耐酸化性がより向上し、電極としての抵抗率がより低下する。また、前記リン含有銅合金粒子と前記錫含有粒子との反応によって生成したSn−P−O系ガラス相の中にAg粒子が析出することで、電極層の中のCu−Sn合金相とシリコン基板間のオーミックコンタクト性がより向上する。さらに太陽電池モジュールとした場合のはんだ接続性が向上するという効果も得られる。
前記銀粒子を構成する銀は、不可避的に混入する他の原子を含んでいてもよい。不可避的に混入する他の原子としては、例えば、Sb、Si、K、Na、Li、Ba、Sr、Ca、Mg、Be、Zn、Pb、Cd、Tl、V、Sn、Al、Zr、W、Mo、Ti、Co、Ni、及びAu等を挙げることができる。
また前記銀粒子に含まれる他の原子の含有率は、例えば銀粒子中に3質量%以下とすることができ、融点及び電極の低抵抗率化の観点から、1質量%以下であることが好ましい。
前記銀粒子の粒子径としては特に制限はないが、小粒径側から積算した重量が50%である場合における粒子径(D50%)が、0.4μm以上10μm以下であることが好ましく、1μm以上7μm以下であることがより好ましい。0.4μm以上とすることでより効果的に耐酸化性が向上する。また10μm以下であることで電極中における銀粒子及びリン含有銅合金粒子等の金属粒子どうしの接触面積が大きくなり、抵抗率がより効果的に低下する。
また前記銀粒子の形状としては特に制限はなく、略球状、扁平状、ブロック状、板状、及び鱗片状等のいずれであってもよいが、耐酸化性と低抵抗率の観点から、略球状、扁平状、又は板状であることが好ましい。
また前記電極用ペースト組成物が銀粒子を含む場合、銀粒子の含有率としては、前記リン含有銅合金粒子と前記錫含有粒子及び前記銀粒子の総含有率を100質量%としたときの銀粒子の含有率が0.1質量%以上10質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上8質量%以下であることがより好ましい。
また本発明の電極用ペースト組成物においては、耐酸化性、電極の低抵抗率化、シリコン基板への塗布性の観点から、電極用ペースト組成物は、リン含有銅合金粒子、錫含有粒子及び銀粒子の総含有率が70質量%以上94質量%以下であることが好ましく、74質量%以上88質量%以下であることがより好ましい。リン含有銅合金粒子、錫含有粒子及び銀粒子の総含有率が70質量%以上であることで、電極用ペースト組成物を付与する際に好適な粘度を容易に達成することができる。またリン含有銅合金粒子、錫含有粒子及び銀粒子の総含有率が94質量%以下であることで、電極用ペースト組成物を付与する際のかすれの発生をより効果的に抑制することができる。
さらに前記電極用ペースト組成物が錫含有粒子及び銀粒子を更に含む場合においては、耐酸化性と電極の低抵抗率の観点から、リン含有銅合金粒子、錫含有粒子及び銀粒子の総含有率が70質量%以上94質量%以下であって、ガラス粒子の含有率が0.1質量%以上10質量%以下であって、溶剤及び樹脂の総含有率が3質量%以上29.9質量%以下であることが好ましく、リン含有銅合金粒子、錫含有粒子及び銀粒子の総含有率が74質量%以上88質量%以下であって、ガラス粒子の含有率が0.5質量%以上8質量%以下であって、溶剤及び樹脂の総含有率が7質量%以上20質量%以下であることがより好ましく、リン含有銅合金粒子、錫含有粒子及び銀粒子の総含有率が74質量%以上88質量%以下であって、ガラス粒子の含有率が1質量%以上8質量%以下であって、溶剤及び樹脂の総含有率が7質量%以上20質量%以下であることがさらに好ましい。
(フラックス)
前記電極用ペースト組成物は、フラックスの少なくとも1種をさらに含むことができる。フラックスを含むことで耐酸化性がより向上し、形成される電極の抵抗率がより低下する。さらに電極材とシリコン基板の密着性が向上するという効果も得られる。
前記フラックスとしては、リン含有銅合金粒子の表面に形成された酸化膜を除去可能なものであれば特に制限はない。具体的には例えば、脂肪酸、ホウ酸化合物、フッ化化合物、及びホウフッ化化合物等を好ましいフラックスとして挙げることができる。
より具体的には、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ソルビン酸、ステアロール酸、酸化ホウ素、ホウ酸カリウム、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸リチウム、ホウフッ化カリウム、ホウフッ化ナトリウム、ホウフッ化リチウム、酸性フッ化カリウム、酸性フッ化ナトリウム、酸性フッ化リチウム、フッ化カリウム、フッ化ナトリウム、フッ化リチウム等が挙げられる。
中でも、電極材焼成時の耐熱性(フラックスが焼成の低温時に揮発しない特性)及びリン含有銅合金粒子の耐酸化性補完の観点から、ホウ酸カリウム及びホウフッ化カリウムが特に好ましいフラックスとして挙げられる。
これらのフラックスは、それぞれ1種単独で使用してもよく、2種類以上を組み合わせて使用することもできる。
また前記電極用ペースト組成物におけるフラックスの含有率としては、リン含有銅合金粒子の耐酸化性を効果的に発現させる観点及び電極材の焼成完了時にフラックスが除去された部分の空隙率低減の観点から、電極用ペースト組成物の全質量中に、0.1質量%〜5質量%であることが好ましく、0.3質量%〜4質量%であることがより好ましく、0.5質量%〜3.5質量%であることがさらに好ましく、0.7質量%〜3質量%であることが特に好ましく、1質量%〜2.5質量%であることが極めて好ましい。
(その他の成分)
さらに前記電極用ペースト組成物は、上述した成分に加え、必要に応じて、当該技術分野で通常用いられるその他の成分をさらに含むことができる。その他の成分としては、例えば、可塑剤、分散剤、界面活性剤、無機結合剤、金属酸化物、セラミック、有機金属化合物等を挙げることができる。
前記電極用ペースト組成物の製造方法としては特に制限はない。前記リン含有銅合金粒子、ガラス粒子、溶剤、樹脂、及び必要に応じて含まれる銀粒子等を、通常用いられる分散・混合方法を用いて、分散・混合することで製造することができる。
[電極用ペースト組成物を用いた電極の製造方法]
前記電極用ペースト組成物を用いて電極を製造する方法としては、前記電極用ペースト組成物を、シリコン基板上の電極を形成する領域に付与し、乾燥後に、焼成することで所望の領域に電極を形成する方法を挙げることができる。前記電極用ペースト組成物を用いることで、酸素の存在下(例えば、大気中)で焼成処理を行っても、抵抗率の低い電極を形成することができる。
具体的には例えば、前記電極用ペースト組成物を用いて太陽電池用電極を形成する場合、電極用ペースト組成物はシリコン基板上に所望の形状となるように付与され、乾燥後に、焼成されることで、抵抗率の低い太陽電池用電極を所望の形状に形成することができる。また前記電極用ペースト組成物を用いることで、酸素の存在下(例えば、大気中)で焼成処理を行っても、抵抗率の低い電極を形成することができる。
電極用ペースト組成物をシリコン基板上に付与する方法としては、例えば、スクリーン印刷、インクジェット法、ディスペンサー法等を挙げることができるが、生産性の観点から、スクリーン印刷による塗布であることが好ましい。
電極用ペースト組成物をスクリーン印刷によって塗布する場合、電極用ペースト組成物は、20Pa・s〜1000Pa・sの範囲の粘度を有することが好ましい。尚、電極用ペースト組成物の粘度は、ブルックフィールドHBT粘度計を用いて25℃で測定される。
前記電極用ペースト組成物の付与量は、形成する電極の大きさに応じて適宜選択することができる。例えば、電極用ペースト組成物付与量として2g/m〜10g/mとすることができ、4g/m〜8g/mであることが好ましい。
また前記電極用ペースト組成物を用いて電極を形成する際の熱処理条件(焼成条件)としては、当該技術分野で通常用いられる熱処理条件を適用することができる。
一般に、熱処理温度(焼成温度)としては800℃〜900℃であるが、本発明の電極用ペースト組成物を用いる場合には、より低温での熱処理条件を適用することができ、例えば、600℃〜850℃の熱処理温度で良好な特性を有する電極を形成することができる。
また熱処理時間は、熱処理温度等に応じて適宜選択することができ、例えば、1秒〜20秒とすることができる。
熱処理装置としては、上記温度に加熱できるものであれば適宜採用することができ、例えば、赤外線加熱炉、トンネル炉、などを挙げることができる。赤外線加熱炉は、電気エネルギーを電磁波の形で加熱材料に直接投入し、熱エネルギーに変換されるため高効率であり、また短時間での急速加熱が可能である。更に、燃焼による生成物がなく、また非接触加熱であるため、生成する電極の汚染を抑えることが可能である。トンネル炉は、試料を自動で連続的に入り口から出口へ搬送し、焼成するため、炉体の区分けと搬送スピードの制御により、均一に焼成することが可能である。太陽電池セルの発電性能の観点からは、トンネル炉により熱処理することが好適である。
前記シリコン基板上に電極を形成する方法の具体例として太陽電池素子の製造方法について図面を参照しながら説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
代表的な太陽電池素子の一例を示す断面図、受光面及び裏面の概要を、それぞれ図1、図2及び図3に示す。
通常、太陽電池素子の半導体基板8には、単結晶又は多結晶Siなどが使用される。この半導体基板8には、ホウ素などが含有され、p型半導体を構成している。受光面側は、太陽光の反射を抑制するために、エッチングにより凹凸(テクスチャー、図示せず)が形成されている。その受光面側にはリンなどがドーピングされ、n型半導体の拡散層9がサブミクロンオーダーの厚みで設けられているとともに、p型バルク部分との境界にpn接合部が形成されている。さらに受光面側には、拡散層9上に窒化シリコンなどの反射防止層10が蒸着法などによって膜厚100nm前後で設けられている。
次に受光面側に設けられた受光面電極11と、裏面に形成される集電電極12及び出力取出し電極13について説明する。受光面電極11と出力取出し電極13は、前記電極用ペースト組成物から形成されている。また集電電極12はガラス粉末を含むアルミニウム電極用ペースト組成物から形成されている。
受光面電極11と出力取出し電極13は、前記電極用ペースト組成物をスクリーン印刷等にて所望のパターンに塗布した後、乾燥後に、大気中600℃〜850℃程度で焼成されて形成される。前記電極用ペースト組成物を用いることで、比較的低温で焼成しても、抵抗率及び接触抵抗率に優れる電極を形成することができる。
その際に、受光面側では、受光面電極11を形成する前記電極用ペースト組成物に含まれるガラス粒子と、反射防止層10とが反応(ファイアースルー)して、受光面電極11と拡散層9とが電気的に接続(オーミックコンタクト)される。
前記電極用ペースト組成物を用いて受光面電極11が形成されることで、導電性金属として銅を含みながら、銅の酸化が抑制され、低抵抗率の受光面電極11が、良好な生産性で形成される。
また、裏面側では、焼成の際に集電電極12を形成するアルミニウム電極ペースト組成物中のアルミニウムが半導体基板8の裏面に拡散して、電極成分拡散層14を形成することによって、半導体基板8と集電電極12、出力取出し電極13との間にオーミックコンタクトを得ることができる。
また図4として、本発明の別の態様である太陽電池素子の一例である受光面及びAA断面構造の斜視図を図4(a)に、裏面側電極構造の平面図を図4(b)に示す。
図4(a)の斜視図に示すようにp型半導体のシリコン基板からなるセルウェハ1には、レーザドリル又はエッチング等によって、受光面側及び裏面側の両面を貫通したスルーホールが形成されている。また受光面側には光入射効率を向上させるテクスチャー(図示せず)が形成されている。さらに受光面側にはn型化拡散処理によるn型半導体層3と、n型半導体層3上に反射防止膜(図示せず)が形成されている。これらは従来のシリコン型太陽電池素子と同一の工程により製造される。
次に、先に形成されたスルーホール内部に、本発明の電極用ペースト組成物が印刷法やインクジェット法により充填され、さらに受光面側には同じく本発明の電極用ペースト組成物がグリッド状に印刷され、スルーホール電極4及び集電用グリッド電極2を形成する組成物層が形成される。
ここで、充填用と印刷用に用いるペーストでは、粘度を始めとして、それぞれのプロセスに最適な組成のペーストを使用するのが望ましいが、同じ組成のペーストで充填、印刷を一括で行ってもよい。
一方、受光面の反対側(裏面側)には、キャリア再結合を防止するための高濃度ドープ層5が形成される。ここで高濃度ドープ層5を形成する不純物元素として、ボロン(B)やアルミニウム(Al)が用いられ、p型拡散層が形成されている。この高濃度ドープ層5は、例えばBを拡散源とした熱拡散処理が、前記反射防止膜形成前のセル製造工程において実施されることで形成されていてもよく、あるいは、Alを用いる場合には、前記印刷工程において、反対面側にAlペーストを印刷することで形成されていてもよい。
その後、650から850℃において焼成され、前記スルーホール内部と受光面側に形成された反射防止膜上に充填、印刷された前記電極用ペースト組成物は、ファイアースルー効果により、下部n型層とのオーミックコンタクトが達成される。
また反対面側には、図4(b)の平面図で示すように、本発明による電極用ペースト組成物をそれぞれn型拡散層上と、p型拡散層上とにそれぞれストライプ状に印刷、焼成することによって、裏面電極6、7が形成されている。
本発明においては、前記電極用ペースト組成物を用いて、スルーホール電極4、集電用グリッド電極2、裏面電極6及び裏面電極7が形成されることで、導電性金属として銅を含みながら、銅の酸化が抑制され、低抵抗率のスルーホール電極4、集電用グリッド電極2、裏面電極6及び裏面電極7が、優れた生産性で形成される。
(タブ線)
本発明の素子は、上記のようにしてシリコン基板上に形成された前記電極用ペースト組成物の焼成物である電極上に、電気的に接続されたタブ線を有する。
タブ線としては当業界で通常用いられるものから適宜選択することができる。例えば、銅線などの導電材の周りをはんだで被覆した構造を持つものを好適に用いることができる。タブ線の断面形状は特に制限されず、長方形、もしくは楕円形のものが使用できる。
前記素子における電極とタブ線との剥離接着強さは、0.2N/mm〜2.0N/mmであるが、0.5N/mm〜2.0N/mmであることが好ましい。 剥離接着強さが0.2N/mm未満では、タブ線接続後の素子(好ましくは太陽電池素子)の製造工程において、タブ線の剥離などにより製造効率が低下する場合がある。一方、シリコン基板上の電極に接続したタブ線は、2.0N/mmを超える力で剥がそうとすると大部分の基板は破損するため、これ以上の値の測定は事実上困難なものである。
なお、タブ線の剥離接着強さは、JIS−K−6854に準拠して測定を行うことで得られる。
前記タブ線と電極の接続方法は、タブ線と電極が電気的に接続され、剥離接着強さが0.2N/mm〜2.0N/mmとなるように接続可能であれば特に制限されない。具体的には、タブ線に形成されているはんだを加熱溶融して接続する方法、CF(Conductive Film;導電膜)を用いて接続する方法、及びはんだペーストなどを付加的に電極に塗布し、これをタブ線で挟んで加熱・加圧硬化させることでタブ線を接続する方法などから選択することができる。
上記のうちタブ線に形成されているはんだを加熱溶融して接続する方法、及びはんだペーストを用いてタブ線を接続する方法等のはんだ溶融による接続の際は、加熱によるシリコンとタブ線内の銅線などの導電材との熱膨脹差を低減するために、できるだけ低温で接続させることが好ましい。例えば180℃〜350℃の温度で行われることがより好ましい。
なお、タブ線の加熱方法は通常用いられる方法から適宜選択することができる。具体的には、はんだごてをタブ線に押し当てる方法、及び熱圧着機などにより自動的に行う方法等を挙げることができる。
またタブ線加熱時の圧着圧力としては、例えば0.1〜1.2MPaとすることができ、0.3〜1.0MPaであることが好ましい。
またタブ線と電極とをはんだを用いて接続する場合、電極を構成する電極用ペースト組成物はリン含有銅合金粒子のリン含有率が6質量%以上8質量%以下であって、前記リン含有銅合金粒子と前記錫含有粒子及びの総含有率を100質量%としたときの錫含有粒子の含有率が9質量%以上60質量%以下であることが好ましく、リン含有銅合金粒子のリン含有率が6.3質量%以上7.8質量%以下であって、前記リン含有銅合金粒子と前記錫含有粒子及びの総含有率を100質量%としたときの錫含有粒子の含有率が9質量%以上55質量%以下であることがより好ましい。リン含有銅合金粒子のリン含有率と錫含有粒子の含有率が前記範囲内であることで、所望の剥離接着強さを容易に達成することができる。
前記CFは、例えば金属粒子と熱硬化性樹脂とを含んで構成される。またCFは市販のものから適宜選択して用いることができる。
タブ線と電極とをCFを介して積層し、加熱加圧処理することでCFに含まれる金属粒子が凝集してタブ線と電極とを電気的に接続される。また同時に熱硬化性樹脂が硬化することで所望の剥離接着強さを達成することができる。
またこの場合の加熱加圧処理の条件は、CFの構成に応じて適宜選択される。例えば加熱温度150℃〜220℃、圧力0.6MPa〜3.0MPaとすることができ、加熱温度160℃〜200℃、圧力0.8MPa〜2.6MPaであることが好ましい。
上記では本発明の素子を太陽電池用の素子として構成する場合について説明したが、前記電極が形成された素子の用途は太陽電池用に限定されず、例えば、プラズマディスプレイの電極配線及びシールド配線、セラミックスコンデンサ、アンテナ回路、各種センサー回路、半導体デバイスの放熱材料等の用途にも好適に使用することができる。
<太陽電池>
本発明の太陽電池は、前記太陽電池用の素子と、前記素子を封止する封止材とを少なくとも備え、必要に応じてその他の構成要素を備えて構成される。
前記太陽電池は、前記太陽電池用の素子と、前記素子の受光面側に配置されるガラス及び光透過性プラスチックなどの表面保護材と、前記素子の受光面とは反対側の面に配置される裏面保護材と、前記表面保護材と裏面保護材の間に配置された封止材とを備えて構成されることが好ましい。
前記表面保護材、裏面保護材、及び封止材は、太陽電池製造用途で使用されているものであれば特に制限なく使用できる。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、特に断りのない限り、「部」及び「%」は質量基準である。
<実施例1>
(a)電極用ペースト組成物の調製
7質量%のリンを含むリン含有銅合金粒子を調製し、これを溶解して水アトマイズ法により粉末化した後、乾燥、分級した。分級した粉末をブレンドして、脱酸素・脱水分処理し、7質量%のリンを含むリン含有銅合金粒子を作製した。尚、リン含有銅合金粒子の粒子径(D50%)は1.5μmであった。
二酸化ケイ素(SiO)3部、酸化鉛(PbO)60部、酸化ホウ素(B)18部、酸化ビスマス(Bi)5部、酸化アルミニウム(Al)5部、酸化亜鉛(ZnO)9部からなるガラス(以下、「G1」と略記することがある)を調製した。得られたガラスG1の軟化点は420℃であり、結晶化温度は600℃を超えていた。
得られたガラスG1を用いて、粒子径(D50%)が1.7μmであるガラス粒子G1を得た。
上記で得られたリン含有銅合金粒子を85.1部、ガラス粒子G1を1.7部、及び3質量%のエチルセルロース(EC、重量平均分子量190000)を含むテルピネオール(異性混合体)溶液13.2部を混ぜ合わせ、メノウ乳鉢の中で20分間かき混ぜ、電極用ペースト組成物1を調製した。
(b)太陽電池素子の作製
受光面にn型半導体層、テクスチャー及び反射防止膜(窒化珪素膜)が形成された膜厚190μmのp型半導体基板を用意し、125mm×125mmの大きさに切り出した。その受光面にスクリーン印刷法を用い、上記で得られた電極用ペースト組成物1を図2に示すような電極パターンとなるように印刷した。電極のパターンは150μm幅のフィンガーラインと1.5mm幅の取出し電極で構成され、焼成後の電極の厚さが20μmとなるよう、印刷条件(スクリーン版のメッシュ、印刷速度、印圧)を適宜調整した。これを150℃に加熱したオーブンの中に15分間入れ、溶剤を蒸散により取り除いた。
続いて、裏面にアルミニウム電極ペースト及び電極用ペースト組成物1を図3に示す形状となるように、スクリーン印刷法により印刷した。焼成後の膜厚が40μmとなるように、印刷条件は適宜調整した。これを150℃に加熱したオーブンの中に15分間入れ、溶剤を蒸散により取り除いた。
続いてトンネル炉(ノリタケ社製、1列搬送W/Bトンネル炉)を用いて大気雰囲気下、焼成最高温度850℃で保持時間10秒間の加熱処理(焼成)を行って、所望の電極が形成された太陽電池素子1を作製した。
上記で作製した太陽電池素子1の受光面及び裏面の取出し電極に、タブ線を接続した。なお、タブ線は太陽電池用鉛フリーはんだめっき平角タブを使用し、熱圧着装置MB−200WH(Nikka Equipment&Engineering社製)を用い、0.5MPaの圧力で、最高温度である240℃で15秒間熱圧着することで、タブ線を接続した。
タブ線を接続した太陽電池素子1において、タブ線の先端に端子を取り付け、後述する方法で発電性能を評価した。
その後、ピール試験機を用いてタブ線の90°ピール試験をJIS−K−6854に準拠して実施したところ、タブ線の剥離接着強さは1.2N/mmであった。なお、ピール試験機にはEZ−S(島津製作所製)を用いた。
<実施例2>
実施例1において、電極用ペースト組成物の組成を以下のように変更した。すなわちリン含有銅合金粒子(リン含有量;7質量%、D50%は1.5μm)を56.1部、錫粒子(Sn;粒子径(D50%)は10.0μm;純度99.9%)を29.0部、ガラス粒子G1を1.7部、及び3質量%のエチルセルロース(EC、重量平均分子量190000)を含むテルピネオール(異性混合体)溶液13.2部を混ぜ合わせ、メノウ乳鉢の中で20分間かき混ぜ、電極用ペースト組成物2を調製した。
上記電極用ペースト組成物2を用いたこと以外は、実施例1と同様にして太陽電池素子2を作製し、タブ線を接続した。
このときタブ線の剥離接着強さは1.4N/mmであった。
<実施例3>
実施例1において、電極用ペースト組成物の組成を以下のように変更した。すなわちリン含有銅合金粒子(リン含有量;7質量%、D50%は1.5μm)を45.6部、錫粒子(Sn;粒子径(D50%)は10.0μm;純度99.9%)を35.5部、銀粒子(Ag;粒子径(D50%)3μm;純度99.5%)を4.0部、ガラスG1粒子を1.7部、及び3質量%のエチルセルロース(EC、重量平均分子量190000)を含むテルピネオール(異性混合体)溶液13.2部を混ぜ合わせ、メノウ乳鉢の中で20分間かき混ぜ、電極用ペースト組成物3を調製した。
上記電極用ペースト組成物2を用いたこと以外は、実施例1と同様にして太陽電池素子3を作製し、タブ線を接続した。
このときタブ線の剥離接着強さは1.5N/mmであった。
<実施例4〜10>
実施例1において、リン含有銅合金粒子のリン含有率、粒子径(D50%)及び含有量、錫含有粒子の種類及び含有量、銀粒子の含有量、ガラス粒子の種類及び含有量、3%のエチルセルロース(EC)を含むテルピネオール溶液の含有量を表1に示したように変更したこと以外は、実施例1と同様にして電極用ペースト組成物4〜10を調製した。
尚、ガラス粒子G2は酸化バナジウム(V)45部、酸化リン(P)24.2部、酸化バリウム(BaO)20.8部、酸化アンチモン(Sb)5部、酸化タングステン(WO)5部からなり、粒子径(D50%)が1.7μmであった。またこのガラスの軟化点は492℃であり、結晶化温度は600℃を超えていた。
次いで、得られた電極用ペースト組成物4〜10をそれぞれ用い、加熱処理の温度及び処理時間を表1に示したようにそれぞれ変更したこと以外は、実施例1と同様にして所望の電極が形成された太陽電池素子4〜10をそれぞれ作製した。
さらに作製した太陽電池素子4〜10について、受光面及び裏面の取出し電極に、実施例1と同様にしてタブ線を取り付けた。
このときタブ線のピール試験を実施したところ、表1に示す剥離接着強さが得られた。
<比較例1>
実施例1における電極用ペースト組成物の調製において、リン含有銅合金粒子を用いずに、銀粒子のみを用いて表1に示した組成となるように各成分を変更したこと以外は、実施例1と同様にして電極用ペースト組成物C1を調製した。
リン含有銅合金粒子を含まない電極用ペースト組成物C1を用いたこと以外は、実施例1と同様にして太陽電池素子C1を作製した。また受光面及び裏面の取出し電極に、実施例1と同様にしてタブ線を取り付け、タブ線のピール試験を実施したところ、1.7N/mmの剥離接着強さが得られた。
<比較例2>
実施例1において、リンを含有しない純銅(リン含有率が0%)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして電極用ペースト組成物C2を調製した。
電極用ペースト組成物C5を用いたこと以外は、実施例1と同様にして太陽電池素子C2を作製した。また受光面及び裏面の取出し電極に、実施例1と同様にしてタブ線を取り付け、タブ線のピール試験を実施したところ、0.1N/mmの剥離接着強さが得られた。
<評価>
作製した太陽電池素子の評価は、擬似太陽光として(株)ワコム電創製WXS−155S−10、電流−電圧(I-V)評価測定器としてI−V CURVE TRACER MP−160(EKO INSTRUMENT社製)の測定装置を組み合わせて行った。太陽電池としての発電性能を示すEff(変換効率)、FF(フィルファクター)、Voc(開放電圧)及びJsc(短絡電流)は、それぞれJIS−C−8912、JIS−C−8913及びJIS−C−8914に準拠して測定を行なうことで得られたものである。得られた各測定値を、比較例1の測定値を100.0とした相対値に換算して表2に示した。
なお、比較例2においては、銅粒子の酸化によって電極の抵抗率が大きくなったことと、電極表面に酸化被膜を形成したために、タブ線接続時におけるはんだの濡れ性が著しく低下し、発電した電力を効率よく取り出せなかったため、評価不能であった。
実施例1〜10で作製した太陽電池素子の性能は、比較例1の測定値と比べほぼ同等又はそれ以上であった。
また太陽電池素子1及び太陽電池素子7の受光面電極について、CuKα線を用いてX線回折法で回折X線を測定した結果、回折角度(2θ、CuKα線)の少なくとも43.4°、50.6°、74.2°に、銅の特徴的な回折ピークを示した。このように受光面電極から銅が検出された理由として、以下の原理が挙げられる。
まず、電極用ペースト組成物1及び7中のリン含有銅合金粒子は、リン含有率が6質量%以上8質量%以下である。この部分の組成は、Cu−P系状態図から、α−Cu相とCuP相からなる。焼成初期段階では、α−Cu相が酸化され、CuOに変わる。このCuOが再びα−Cuに還元されていると考えられる。尚、この還元反応にはリン含有銅合金粒子に含まれていたCuP相もしくはこの酸化物由来のリンが寄与しているものと考えられる。
よって、リン含有率が6質量%以上8質量%以下のリン含有銅合金粒子を用いた電極用ペースト組成物では、実施例1〜10に示されるように、最高温度の保持時間を10秒〜15秒としても、焼成時における銅の酸化が抑制され、抵抗率の低い電極が形成されたものと考えられる。また、焼成時間を長くすることにより、リン含有銅合金粒子の焼結が進むため、より緻密で抵抗率の低い電極を形成できる他、ファイアースルーをより効果的に行うことができるため、電極と半導体基板とのオーミックコンタクト性が向上するという効果を得ることができる。
<実施例11>
上記で得られた電極用ペースト組成物1を用いて、図4に示したような構造を有する太陽電池素子11を作製した。なお、加熱処理は850℃、10秒間で行った。得られた太陽電池素子について上記と同様にしてタブ線を接続した。タブ線のピール試験を実施したところ、1.2N/mmの剥離接着強さが得られた。
また、発電性能について評価したところ、上記と同様に良好な特性を示すことが分かった。
1 p型シリコン基板からなるセルウェハ
2 集電用グリッド電極
3 p型半導体層
4 スルーホール電極
5 高濃度ドープ層(p型拡散層)
6 裏面電極
7 裏面電極
8 p型シリコン基板
9 n型拡散層
10 反射防止膜
11 受光面集電用電極及び出力取出し電極
12 裏面集電用電極
13 裏面出力取出し電極
14 p型拡散層

Claims (11)

  1. シリコンを含む基板と、
    前記基板上に配置され、リン含有銅合金粒子、ガラス粒子、溶剤及び樹脂を含む電極用ペースト組成物の焼成物である電極と、
    前記電極上に電気的に接続されたタブ線と、を有し、
    前記電極と前記タブ線との剥離接着強さが0.2N/mm〜2.0N/mmである素子。
  2. 前記リン含有銅合金粒子のリン含有率が、6質量%以上8質量%以下である請求項1に記載の素子。
  3. 前記電極用ペースト組成物は、錫含有粒子をさらに含む請求項1又は請求項2に記載の素子。
  4. 前記錫含有粒子は、錫粒子及び錫含有率が1質量%以上である錫合金粒子から選ばれる少なくとも1種である請求項3に記載の素子。
  5. 前記ガラス粒子は、ガラス軟化点が600℃以下であり、結晶化開始温度が600℃
    を超える請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の素子。
  6. 前記電極用ペースト組成物は、前記リン含有銅合金粒子と前記錫含有粒子の総含有率を100質量%としたときの前記錫含有粒子の含有率が、5質量%以上70質量%以下である請求項3〜請求項5のいずれか1項に記載の素子。
  7. 前記電極用ペースト組成物は、銀粒子を更に含む請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の素子。
  8. 前記電極用ペースト組成物は、前記リン含有銅合金粒子、前記錫含有粒子及び前記銀粒子の総含有率を100質量%としたときの前記銀粒子の含有率が0.1質量%以上10質量%以下である請求項7に記載の素子。
  9. 前記電極用ペースト組成物は、前記リン含有銅合金粒子、錫含有粒子及び銀粒子の総含有率が70質量%以上94質量%以下であり、前記ガラス粒子の含有率が0.1質量%以上10質量%以下であり、前記溶剤及び樹脂の総含有率が3質量%以上29.9質量%以下である請求項7又は請求項8に記載の素子。
  10. 前記シリコンを含む基板はpn接合を有し、太陽電池に用いる請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の素子。
  11. 請求項10に記載の太陽電池に用いる素子と、前記素子を封止する封止材とを備える太陽電池。
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