JP2013026580A - 素子及び太陽電池 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】シリコン基板と、リン含有銅合金粒子、錫含有粒子、ガラス粒子、溶剤及び樹脂を含み錫の含有率が1質量%以上である電極用ペースト組成物Aの焼成物である電極層Aと、リン含有銅合金粒子、ガラス粒子、溶剤及び樹脂を含み錫の含有率が0.1質量%以下である電極用ペースト組成物Bの焼成物である電極層Bと、がこの順に積層された素子である。
【選択図】なし
Description
ほかに、銅の酸化を抑えるために、導電性金属粉末に銅を用いた導電性組成物を、窒素等の雰囲気下で焼成するという特殊な工程も開発されている。
<2> 前記電極用ペースト組成物Aに含まれるリン含有銅合金粒子、及び前記電極用ペースト組成物Bに含まれるリン含有銅合金粒子は、リン含有率が6質量%以上8質量%以下である、前記<1>に記載の素子。
<3> 前記電極用ペースト組成物Aに含まれる錫含有粒子は、錫粒子及び錫含有率が1質量%以上である錫合金粒子から選ばれる少なくとも1種である、前記<1>又は<2>に記載の素子。
<4> 前記電極用ペースト組成物Aに含まれるガラス粒子、及び前記電極用ペースト組成物Bに含まれるガラス粒子は、軟化温度が650℃以下であって、結晶化開始温度が650℃を超える、前記<1>〜<3>のいずれか1項に記載の素子。
<5> 前記電極用ペースト組成物Aは、前記リン含有銅合金粒子と前記錫含有粒子の総含有率を100質量%としたときの前記錫含有粒子の含有率が5質量%以上70質量%以下である、前記<1>〜<4>のいずれか1項に記載の素子。
<6> 前記電極用ペースト組成物Aは、前記リン含有銅合金粒子及び前記錫含有粒子の総含有率が70質量%以上94質量%以下であって、前記ガラス粒子の含有率が0.1質量%以上10質量%以下であって、前記溶剤及び前記樹脂の総含有率が3質量%以上29.9質量%以下である、前記<1>〜<5>のいずれか1項に記載の素子。
<7> 前記電極用ペースト組成物Bは、前記リン含有銅合金粒子の含有率が70質量%以上94質量%以下であって、前記ガラス粒子の含有率が0.1質量%以上10質量%以下であって、前記溶剤及び前記樹脂の総含有率が3質量%以上29.9質量%以下である、前記<1>〜<6>のいずれか1項に記載の素子。
<8> 前記電極層Aは、Cu−Sn合金相及びSn−P−Oガラス相を含む、前記<1>〜<7>のいずれか1項に記載の素子。
<9> 前記Sn−P−Oガラス相が、前記Cu−Sn合金相と前記シリコン基板との間に配置されている、<8>に記載の素子。
<10> 前記電極用ペースト組成物Aと前記電極用ペースト組成物Bとを同時に焼成して、前記電極層Aと前記電極層Bとが形成された、又は、前記電極用ペースト組成物Aを焼成して前記電極層Aが形成され、その後に前記電極用ペースト組成物Bを焼成して前記電極層Bが形成された、前記<1>〜<9>のいずれか1項に記載の素子。
<11> 前記シリコン基板がpn接合を有し、太陽電池に用いられる、前記<1>〜<10>のいずれか1項に記載の素子。
<12> 前記<11>に記載の素子を含み、前記素子の電極上にタブ線が配置された、太陽電池。
本明細書において「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
本明細書において組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
本発明の素子は、シリコン基板と、
リン含有銅合金粒子、錫含有粒子、ガラス粒子、溶剤及び樹脂を含み錫の含有率が1質量%以上である電極用ペースト組成物Aの焼成物である電極層Aと、
リン含有銅合金粒子、ガラス粒子、溶剤及び樹脂を含み錫の含有率が0.1質量%以下である電極用ペースト組成物Bの焼成物である電極層Bと、
がこの順に積層された素子である。
かかる構成の素子は、大気中での焼成時における銅の酸化が抑制されており、電極の抵抗率が低い。また銅とシリコン基板との反応物相の形成が抑制され、電極とシリコン基板とが良好なオーミックコンタクトを形成している。さらに電極表面のはんだに対する濡れ性がよく、電極上にはんだによるタブ線接続を接続性よく行うことができ、接続部の接触抵抗が低い。したがって、かかる構成の素子は、太陽電池としたときに発電性能に優れる。
図1は、本発明の素子の一例を示す概略断面図である。素子100は、シリコン基板101の上に、電極111を備える。電極111は、シリコン基板101の上に配置された電極層A112と、電極層A112の上に配置された電極層B113とを有する、二層構造の電極である。
前記電極層Aは、シリコン基板の上に配置され、電極の一部をなす。前記電極層Aは、リン含有銅合金粒子、錫含有粒子、ガラス粒子、溶剤及び樹脂を含み錫の含有率が1質量%以上である電極用ペースト組成物Aを焼成して形成される。
前記電極層Aは、前記電極用ペースト組成物Aにおいて銅を含む粒子がリン含有銅合金粒子であることにより、大気中での焼成時における銅の酸化が抑制されており、抵抗率が低い。
また前記電極層Aは、錫を1質量%以上含有する前記電極用ペースト組成物Aを焼成して形成されることにより、銅とシリコン基板との反応物相の形成が抑制され、シリコン基板と良好なオーミックコンタクトを形成している。
前記電極層Bは、前記電極層Aの上に配置され、電極の一部をなす。前記電極層Bは、リン含有銅合金粒子、ガラス粒子、溶剤及び樹脂を含み錫の含有率が0.1質量%以下である電極用ペースト組成物Bを焼成して形成される。
前記電極層Bは、前記電極用ペースト組成物Bにおいて銅を含む粒子がリン含有銅合金粒子であることにより、大気中での焼成時における銅の酸化が抑制されており、抵抗率が低い。
また前記電極層Bは、錫の含有率が0.1質量%以下である前記電極用ペースト組成物Bを焼成して形成されることにより、はんだに対する濡れ性がよく、結果、はんだによるタブ線接続の接続性がよく、接続部の接触抵抗が低い。
前記電極層A及び前記電極層Bの厚さの上限は、それぞれ特に制限されないが、発電効率の観点から、前記電極層Aと前記電極層Bの厚さの合計が50μm以下であることが好ましく、30μm以下であることがより好ましい。
前記電極層Aと前記電極層Bの厚さの比(電極層A:電極層B)は、特に制限されないが、10:1〜1:5の範囲にあることが好ましい。
前記電極用ペースト組成物Aは、リン含有銅合金粒子の少なくとも1種と、錫含有粒子の少なくとも1種と、ガラス粒子の少なくとも1種と、溶剤の少なくとも1種と、樹脂の少なくとも1種とを含み、錫の含有率が1質量%以上である。錫の含有率が1質量%以上であることにより、前記電極用ペースト組成物Aを用いて形成される前記電極層Aは、銅とシリコン基板との反応物相の形成が抑制され、シリコン基板と良好なオーミックコンタクトを形成する。
前記電極用ペースト組成物Aにおける錫の含有率は、上記の観点から、3質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましく、7質量%以上であることが更に好ましく、8質量%以上であることが特に好ましい。
前記電極用ペースト組成物Aにおける錫の含有率は、その上限に特に制限はないが、充分な体積のCu−Sn合金相を形成することができ、電極の体積抵抗率がより低下する観点から、60質量%以下であることが好ましく、55質量%以下であることがより好ましく、50質量%以下であることが更に好ましく、45質量%以下であることが特に好ましい。
前記電極用ペースト組成物Bは、リン含有銅合金粒子の少なくとも1種と、ガラス粒子の少なくとも1種と、溶剤の少なくとも1種と、樹脂の少なくとも1種とを含み、錫の含有率が0.1質量%以下である。錫の含有率が0.1質量%以下であることにより、前記電極用ペースト組成物Bを用いて形成される前記電極層Bは、はんだに対する濡れ性がよく、その結果、はんだによるタブ線接続の接続性がよく、接続部の接触抵抗が低い。
前記電極用ペースト組成物Bにおける錫の含有率は、上記の観点から、0.05質量%以下であることがより好ましく、0.01質量%以下である(錫は実質的に含まれない)ことが更に好ましく、0質量%である(錫は含まれない)ことが特に好ましい。
以下、前記電極用ペースト組成物Aと前記電極用ペースト組成物Bとを合わせて「電極用ペースト組成物」と称し、電極用ペースト組成物に含まれる成分について説明する。また、前記電極用ペースト組成物Aに含まれる錫含有粒子について説明する。
前記電極用ペースト組成物は、リン含有銅合金粒子の少なくとも1種を含む。リン含有銅合金としては、リン銅ろう(リン濃度:7質量%程度以下)と呼ばれるろう付け材料が知られている。リン銅ろうは、銅と銅の接合材としても知られているものであるが、前記電極用ペースト組成物にリン含有銅合金粒子を用いることで、リンの銅酸化物に対する還元性を利用し、耐酸化性に優れ、体積抵抗率の低い電極を形成することができる。さらに電極の低温焼成が可能となり、プロセスコストを削減できるという効果を得ることができる。
前記リン含有銅合金粒子に含まれる他の原子の含有率は、例えば、前記リン含有銅合金粒子中に3質量%以下とすることができ、耐酸化性と低抵抗率の観点から、1質量%以下であることが好ましい。
前記リン含有銅合金粒子の形状としては特に制限はなく、略球状、扁平状、ブロック状、板状、及び鱗片状等のいずれであってもよいが、耐酸化性と低抵抗率の観点から、略球状、扁平状、または板状であることが好ましい。
前記電極用ペースト組成物Bにおけるリン含有銅合金粒子の含有率は特に制限されない。耐酸化性と電極の低抵抗率の観点から、前記含有率は70質量%〜94質量%であることが好ましく、74質量%〜88質量%であることがより好ましい。
具体的には、リン含有銅合金を溶融し、これをノズル噴霧によって粉末化した後、得られた粉末を乾燥、分級することで、所望のリン含有銅合金粒子を製造することができる。
また、分級条件を適宜選択することで所望の粒子径を有するリン含有銅合金粒子を製造することができる。
前記電極用ペースト組成物Aは、錫含有粒子の少なくとも1種を含む。リン含有銅合金粒子に加えて、錫含有粒子を含むことにより、後述する焼成工程において、抵抗率の低い電極を形成できる。
これは例えば以下のように考えることができる。リン含有銅合金粒子と錫含有粒子とが、焼成工程で互いに反応して、Cu−Sn合金相とSn−P−Oガラス相からなる電極を形成する。ここで前記Cu−Sn合金相は、電極内で緻密なバルク体を形成し、これが導電層として機能することで抵抗率の低い電極を形成できると考えられる。
尚、ここでいう緻密なバルク体とは、塊状のCu−Sn合金相が互いに密に接触し、三次元的に連続している構造を形成していることを意味する。
これは例えば以下のように考えることができる。リン含有銅合金粒子と錫含有粒子とが、焼成工程で互いに反応して、Cu−Sn合金相とSn−P−Oガラス相からなる電極を形成する。上記Cu−Sn合金相が緻密なバルク体であるために、このSn−P−Oガラス相は、Cu−Sn合金相とシリコン基板との間に形成される。これによりCu−Sn合金相のシリコン基板に対する密着性が向上すると考えることができる。またSn−P−Oガラス相が、銅とシリコンとの相互拡散を防止するためのバリア層として機能することで、焼成して形成される電極とシリコン基板との良好なオーミックコンタクトが達成できると考えることができる。すなわち銅を含む電極とシリコンを直に接触して過熱したときに形成される反応相(Cu3Si)の形成を抑制し、半導体性能(例えば、pn接合特性)を劣化することなくシリコン基板との密着性を保ちながら、良好なオーミックコンタクトを発現することができると考えられる。
錫粒子における錫の純度は特に制限されない。例えば錫粒子の純度は、95質量%以上とすることができ、97質量%以上であることが好ましく、99質量%以上であることがより好ましい。
本発明において、これらの錫含有粒子は1種単独で使用してもよく、又2種類以上を組み合わせて使用することもできる。
前記錫含有粒子に含まれる他の原子の含有率は、例えば前記錫含有粒子中に3質量%以下とすることができ、融点及びリン含有銅合金粒子との反応性の観点から、1質量%以下であることが好ましい。
前記錫含有粒子の形状としては特に制限はなく、略球状、扁平状、ブロック状、板状、及び鱗片状等のいずれであってもよいが、耐酸化性と低抵抗率の観点から、略球状、扁平状、または板状であることが好ましい。
前記電極用ペースト組成物は、ガラス粒子の少なくとも1種を含む。電極用ペースト組成物がガラス粒子を含むことにより、焼成時に電極部と基板との密着性が向上する。また太陽電池受光面側の電極形成において、焼成時にいわゆるファイアースルーによって反射防止膜である窒化ケイ素膜が取り除かれ、電極とシリコン基板とのオーミックコンタクトが形成される。
本発明においては、環境に対する影響を考慮すると、鉛を実質的に含まない鉛フリーガラスを用いることが好ましい。鉛フリーガラスとしては、例えば、特開2006−313744号公報の段落番号0024〜0025に記載の鉛フリーガラスや、特開2009−188281号公報等に記載の鉛フリーガラスを挙げることができ、これらの鉛フリーガラスから適宜選択して本発明に適用することもまた好ましい。
前記ガラス粒子の形状としては特に制限はなく、略球状、扁平状、ブロック状、板状、及び鱗片状等のいずれであってもよいが、耐酸化性と低抵抗率の観点から、略球状、扁平状、または板状であることが好ましい。
前記電極用ペースト組成物は、溶剤の少なくとも1種と樹脂の少なくとも1種とを含む。これにより前記電極用ペースト組成物の液物性(例えば、粘度、表面張力等)を、シリコン基板等に付与する際の付与方法に応じて必要とされる液物性に調整することができる。
本発明において前記溶剤は1種単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
前記樹脂は1種単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記に加え樹脂の重量平均分子量が500000以下であると、樹脂の燃焼温度が高くなることが抑制され、電極用ペースト組成物を焼成する際に樹脂が完全に燃焼されず異物として残存することが抑制され、電極をより低抵抗に構成することができる。
前記溶剤と前記樹脂の総含有率が前記範囲内であることにより、所望の幅及び高さを有する電極をより容易に形成することができる。
前記電極用ペースト組成物は、銀粒子を含むことが好ましい。銀粒子を含むことで耐酸化性がより向上し、電極としての抵抗率がより低下する。また前記電極層Aにおいては、前記リン含有銅合金粒子と前記錫含有粒子との反応によって生成したSn−P−O系ガラス相の中にAg粒子が析出することで、電極層の中のCu−Sn合金相とシリコン基板間のオーミックコンタクト性がより向上する。さらに前記電極層Bにおいては、太陽電池モジュールとした場合のはんだ接続性が向上するという効果も得られる。
前記銀粒子に含まれる他の原子の含有率は、例えば銀粒子中に3質量%以下とすることができ、融点及び電極の低抵抗率化の観点から、1質量%以下であることが好ましい。
前記銀粒子の形状としては特に制限はなく、略球状、扁平状、ブロック状、板状、及び鱗片状等のいずれであってもよいが、耐酸化性と低抵抗率の観点から、略球状、扁平状、または板状であることが好ましい。
前記電極用ペースト組成物Bが銀粒子を含む場合、銀粒子の含有率としては、前記リン含有銅合金粒子及び前記銀粒子の総含有率を100質量%としたときの銀粒子の含有率が0.1質量%〜10質量%であることが好ましく、0.5質量%〜8質量%以下であることがより好ましい。
前記電極用ペースト組成物Bは、耐酸化性、電極の低抵抗率化、シリコン基板への塗布性、はんだに対する濡れ性の観点から、リン含有銅合金粒子及び銀粒子の総含有率が70質量%〜94質量%であることが好ましく、74質量%〜88質量%であることがより好ましい。
前記電極用ペースト組成物Bが銀粒子を含む場合においては、耐酸化性と電極の低抵抗率の観点から、リン含有銅合金粒子及び銀粒子の総含有率が70質量%〜94質量%であって、ガラス粒子の含有率が0.1質量%〜10質量%であって、溶剤及び樹脂の総含有率が3質量%〜29.9質量%であることが好ましい。より好ましくは、リン含有銅合金粒子及び銀粒子の総含有率が74質量%〜88質量%であって、ガラス粒子の含有率が0.5質量%〜8質量%であって、溶剤及び樹脂の総含有率が5質量%〜25質量%である。更に好ましくは、リン含有銅合金粒子及び銀粒子の総含有率が74質量%〜88質量%であって、ガラス粒子の含有率が1質量%〜8質量%であって、溶剤及び樹脂の総含有率が7質量%〜20質量%である。
前記電極用ペースト組成物は、フラックスの少なくとも1種をさらに含むことができる。フラックスを含むことでリン含有銅合金粒子の表面に形成された酸化膜を除去し、焼成中のリン含有銅合金粒子の還元反応を促進させることができる。また焼成中の錫含有粒子の溶融も進むためリン含有銅合金粒子との反応が進み、結果として耐酸化性がより向上し、形成される電極の抵抗率がより低下する。さらに電極材とシリコン基板の密着性が向上するという効果も得られる。
中でも、電極材焼成時の耐熱性(フラックスが焼成の低温時に揮発しない特性)及びリン含有銅合金粒子の耐酸化性補完の観点から、ホウ酸カリウム及びホウフッ化カリウムが特に好ましいフラックスとして挙げられる。
これらのフラックスは、それぞれ1種単独で使用してもよく、2種類以上を組み合わせて使用することもできる。
前記電極用ペースト組成物は、上述した成分に加え、必要に応じて、当該技術分野で通常用いられるその他の成分をさらに含むことができる。その他の成分としては、例えば、可塑剤、分散剤、界面活性剤、無機結合剤、金属酸化物、セラミック、有機金属化合物等を挙げることができる。
分散・混合方法は特に制限されず、通常用いられる分散・混合方法から適宜選択して適用することができる。
前記電極用ペースト組成物を用いて電極を製造する方法としては、前記電極用ペースト組成物を、電極を形成する領域に付与し、乾燥後に、焼成することで所望の領域に電極を形成することができる。前記電極用ペースト組成物を用いることで、酸素の存在下(例えば大気中)で焼成処理を行っても、抵抗率の低い電極を形成することができる。
一般に、熱処理温度(焼成温度)は800℃〜900℃であるが、前記電極用ペースト組成物を用いる場合には、より低温での熱処理条件を適用することができ、例えば、450℃〜850℃の熱処理温度で良好な特性を有する電極を形成することができる。熱処理時間は、熱処理温度等に応じて適宜選択することができ、例えば、1秒〜20秒とすることができる。
本方法での電極用ペースト組成物の付与方法としては、例えば、スクリーン印刷、インクジェット法、ディスペンサー法等を挙げることができるが、生産性の観点から、スクリーン印刷による塗布であることが好ましい。
本発明の素子は、シリコン基板上に付与された前記電極用ペースト組成物を焼成して形成された電極を有する。これにより、太陽電池としたときに発電性能に優れる素子が得られ、素子の生産性に優れる。
本発明の素子は、太陽電池に用いられる太陽電池素子として好適である。尚、本明細書において太陽電池素子とは、pn接合が形成されたシリコン基板と、シリコン基板上に形成された電極とを有するものを意味する。また太陽電池とは、太陽電池素子の電極上にタブ線が設けられ、必要に応じて複数の太陽電池素子がタブ線を介して接続されて構成され、封止樹脂等で封止された状態のものを意味する。
代表的な太陽電池素子の一例を示す断面図、受光面及び裏面の概要を図2、図3及び図4に示す。
図2に概略を示すように、通常、太陽電池素子の半導体基板1には、単結晶または多結晶シリコンなどが使用される。この半導体基板1には、ホウ素などが含有され、p型半導体を構成している。受光面側は太陽光の反射を抑制するために、NaOHとIPA(イソプロピルアルコール)からなるエッチング溶液により凹凸(テクスチャともいう。図示せず)が形成されている。その受光面側にはリンなどがドーピングされ、n+拡散層2がサブミクロンオーダーの厚さで設けられているとともに、p型バルク部分との境界にpn接合部が形成されている。さらに受光面側には、n+拡散層2上に窒化ケイ素などの反射防止膜3が、PECVDなどによって膜厚90nm前後で設けられている。
受光面電極4と裏面出力取出し電極6は、前記電極用ペースト組成物から形成される。また裏面集電用電極5はガラス粉末を含むアルミニウム電極ペースト組成物から形成される。受光面電極4と、裏面集電用電極5及び裏面出力取出し電極6を形成する第一の方法として、各ペースト組成物をスクリーン印刷等にて所望のパターンに塗布した後、乾燥後に、大気中450℃〜850℃程度で同時に焼成して形成することが挙げられる。本発明においては前記電極用ペースト組成物A及び前記電極用ペースト組成物Bを用いることで、比較的低温で焼成しても、抵抗率及び接触抵抗率に優れる電極を形成することができる。
本発明においては、前記電極用ペースト組成物を用いて受光面電極4が形成されることで、導電性金属として銅を含みながら、銅の酸化が抑制され、低抵抗率の受光面電極4が、良好な生産性で形成される。
さらに本発明においてはシリコン基板側に形成される電極層AがCu−Sn合金相とSn−P−Oガラス相とを含んで構成されることが好ましく、Sn−P−Oガラス相がCu−Sn合金相とシリコン基板との間に配置されること(不図示)がより好ましい。これにより銅とシリコン基板との反応が抑制され、低抵抗で密着性に優れる電極を形成することができる。
ここで、充填用と印刷用に用いるペーストでは、粘度をはじめとして、それぞれのプロセスに最適な組成のペーストを使用するのが望ましいが、同じ組成のペーストで充填、印刷を一括で行ってもよい。
本発明の太陽電池は、前記太陽電池素子の少なくとも1つを含み、太陽電池素子の電極上にタブ線が配置されて構成される。太陽電池はさらに必要に応じて、タブ線を介して複数の太陽電池素子が連結され、さらに封止材で封止されて構成されていてもよい。
前記タブ線及び封止材としては特に制限されず、当業界で通常用いられているものから適宜選択することができる。
(a)電極用ペースト組成物Aの調製
7質量%のリンを含むリン含有銅合金粒子を定法により調製し、これを溶解して水アトマイズ法により粉末化した後、乾燥、分級した。分級した粉末をブレンドして、脱酸素・脱水処理し、7質量%のリンを含むリン含有銅合金粒子を作製した。尚、リン含有銅合金粒子の粒子径(D50%)は5.0μmであり、その形状は略球状であった。
ガラスG01を用いて、粒子径(D50%)が2.5μmであるガラスG01粒子を得た。その形状は略球状であった。
上記で得たリン含有銅合金粒子を81.4部、ガラスG01粒子を4.1部、テルピネオール(Ter)を14.1部、エチルセルロース(EC)を0.4部混ぜ合わせ、メノウ乳鉢の中で20分間かき混ぜ、電極用ペースト組成物B1を調製した。
受光面にテクスチャ、n+拡散層及び反射防止膜(窒化ケイ素膜)が形成された膜厚190μmのp型半導体基板を用意し、125mm×125mmの大きさに切り出した。その受光面にスクリーン印刷により、図1及び図3に示すような電極パターンとなるように、まず電極用ペースト組成物A1を付与し、続いて基板上の電極用ペースト組成物A1の上に電極用ペースト組成物B1を付与した。電極のパターンは150μm幅のフィンガーラインと1.5mm幅のバスバーで構成され、焼成後の膜厚が20μm〔電極層Aの厚さと電極層Bの厚さの合計。両者の比(電極層A:電極層B)は1:1〕となるように、印刷条件(スクリーン版のメッシュ、印刷速度、印圧)を適宜調整した。これを150℃に加熱したオーブンの中に15分間収容し、溶剤を蒸散により取り除いた。
実施例1において、電極形成時の焼成条件を最高温度800℃で10秒間から、最高温度850℃で8秒間に変更したこと以外は、実施例1と同様にして太陽電池素子2を作製し、タブ線を接続した。
実施例1において、電極用ペースト組成物A1及び電極用ペースト組成物B1におけるリン含有銅合金粒子のリン含有量を7質量%から6質量%に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、電極用ペースト組成物A3及び電極用ペースト組成物B3を調製し、太陽電池素子3を作製し、タブ線を接続した。
実施例1において、電極用ペースト組成物A1及び電極用ペースト組成物B1におけるリン含有銅合金粒子の粒子径(D50%)を5.0μmから1.5μmに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、電極用ペースト組成物A4及び電極用ペースト組成物B4を調製し、太陽電池素子4を作製し、タブ線を接続した。
実施例1において、電極用ペースト組成物A1におけるリン含有銅合金粒子と錫含有粒子の含有量を変更して、リン含有銅合金粒子を56.3部、錫含有粒子を25.1部としたこと以外は、実施例1と同様にして、電極用ペースト組成物A5を調製し、太陽電池素子5を作製し、タブ線を接続した。
実施例1において、電極用ペースト組成物A1におけるリン含有銅合金粒子と錫含有粒子の含有量を変更して、リン含有銅合金粒子を73.0部、錫含有粒子を8.4部としたこと以外は、実施例1と同様にして、電極用ペースト組成物A6を調製し、太陽電池素子6を作製し、タブ線を接続した。
実施例1において、電極用ペースト組成物A1における錫含有粒子として錫粒子(Sn)の代わりにSn−58Bi(Snを42質量%及びBiを58質量%を含む合金)からなる錫合金粒子を用い、その粒子径(D50%)を15μmとしたこと以外は、実施例1と同様にして、電極用ペースト組成物A7を調製し、太陽電池素子7を作製し、タブ線を接続した。
実施例1において、電極用ペースト組成物A1における錫含有粒子の粒子径(D50%)を5μmから10μmに変更したこと以外は、実施例1と同様にして、電極用ペースト組成物A8を調製し、太陽電池素子8を作製し、タブ線を接続した。
実施例1において、電極用ペースト組成物B1におけるガラスG01粒子の含有量を変更した。具体的には各成分の含有量を、リン含有銅合金粒子78.3部、ガラスG01粒子7.8部、テルピネオール13.5部、エチルセルロース0.4部に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、電極用ペースト組成物B9を調製し、太陽電池素子9を作製し、タブ線を接続した。
実施例1において、電極用ペースト組成物A1におけるガラス粒子をガラスG01から以下に示すガラスG02に代えて電極用ペースト組成物A10を調製し、電極形成時の焼成条件を最高温度800℃で10秒間から、最高温度850℃で8秒間に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、太陽電池素子10を作製し、タブ線を接続した。
ガラスG02は、酸化バナジウム(V2O5)45部、酸化リン(P2O5)24.2部、酸化バリウム(BaO)20.8部、酸化アンチモン(Sb2O3)5部、酸化タングステン(WO3)5部からなるように調製した。ガラスG02は、軟化温度が492℃で、結晶化開始温度が650℃を超えていた。
ガラスG02を用いて、粒子径(D50%)が2.5μmであるガラスG02粒子を得た。その形状は略球状であった。
実施例1において、電極用ペースト組成物A1及び電極用ペースト組成物B1における樹脂を、テルピネオールからジエチレングリコールモノブチルエーテル(BC)に、またエチルセルロースからポリアクリル酸エチル(EPA)にそれぞれ変更した。具体的には、電極用ペースト組成物A1の各成分の含有量を、リン含有銅合金粒子46.0部、錫粒子36.0部、ガラスG01粒子3.5部、ジエチレングリコールモノブチルエーテル12.3部、ポリアクリル酸エチル2.2部に変更し、電極用ペースト組成物A11を調製した。また、電極用ペースト組成物B1の各成分の含有量を、リン含有銅合金粒子82.0部、ガラスG01粒子3.5部、ジエチレングリコールモノブチルエーテル12.3部、ポリアクリル酸エチル2.2部に変更し、電極用ペースト組成物B11を調製した。そして、電極用ペースト組成物A11及び電極用ペースト組成物B11を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、太陽電池素子11を作製し、タブ線を接続した。
実施例1において、電極用ペースト組成物A1及び電極用ペースト組成物B1におけるリン含有銅合金粒子のリン含有量、粒子径(D50%)及びその含有量、錫含有粒子の組成、粒子径(D50%)及びその含有量、ガラス粒子の種類及びその含有量、溶剤の種類及びその含有量を表1に示したように変更したこと以外は、実施例1と同様にして、電極用ペースト組成物A12〜A18及び電極用ペースト組成物B12〜B18をそれぞれ作製した。
尚、表1に示す「Sn−4Ag−0.5Cu」は、Snを95.5質量%、Agを4質量%、及びCuを0.5質量%含む合金を意味する。
実施例1において、電極用ペースト組成物A1の調製にリン含有銅合金粒子及び錫含有粒子の代わりに銀粒子(純度99.5%、粒子径(D50%)3.0μm)を用いて、表1に示した組成となるように各成分を変更したこと以外は、実施例1と同様にして、電極用ペースト組成物CA1を調製した。尚、電極用ペースト組成物B1に相当する電極用ペースト組成物は調製しなかった。そして、電極用ペースト組成物CA1を用い、1回のスクリーン印刷で焼成後の電極の膜厚が20μmとなるように印刷条件を調整したこと以外は、実施例1と同様にして、太陽電池素子C1を作製し、タブ線を接続した。
実施例1において、電極用ペースト組成物A1及び電極用ペースト組成物B1におけるリン含有銅合金粒子の代わりに銅粒子(純度99.5%、粒子径(D50%)5.0μm)を用いて、表1に示した組成となるように各成分を変更したこと以外は、実施例1と同様にして、電極用ペースト組成物CA2及び電極用ペースト組成物CB2を調製した。そして、電極用ペースト組成物CA2及び電極用ペースト組成物CB2を用いたこと以外は、比較例1と同様にして、太陽電池素子C2を作製し、タブ線を接続した。
作製した太陽電池素子の評価は、擬似太陽光として(株)ワコム電創製WXS−155S−10、電流―電圧(I−V)評価測定器としてI−V CURVE TRACER MP−160(EKO INSTRUMENT社製)の測定装置を組み合わせて行った。太陽電池としての発電性能を示すJsc(短絡電流)、Voc(開放電圧)、FF(フィルファクター)、Eff(変換効率)は、それぞれJIS−C−8912、JIS−C−8913及びJIS−C−8914に準拠して測定を行うことで得られたものである。実施例1〜18及び比較例2の各測定値を、比較例1(太陽電池素子C1)の測定値を100.0とした相対値に換算して表2に示した。
実施例1〜18の各太陽電池素子の電極の組織観察の結果、シリコン基板側の電極層AにはCu−Sn合金相とSn−P−Oガラス相が存在し、Sn−P−Oガラス相がCu−Sn合金相とシリコン基板との間に形成されていた。
実施例1において、電極用ペースト組成物A1と電極用ペースト組成物B1とを別々に焼成し、電極層A及び電極層Bをそれぞれ形成した。まず電極用ペースト組成物A1とアルミニウム電極ペーストとを用いて、受光面側及び裏面側にそれぞれ電極パターンを印刷し、一度目の焼成で、電極層Aと、裏面集電用電極とを形成した。続いて、電極層Aの上に電極用ペースト組成物B1を印刷し、二度目の焼成で電極層Bを形成し、受光面集電用電極及び出力取出し電極と裏面出力取出し電極とを完成させた。
いずれの焼成においても、トンネル炉(ノリタケ社製、1列搬送W/Bトンネル炉)を用いて大気雰囲気下、焼成最高温度800℃で保持時間10秒の加熱処理を行って、太陽電池素子19を作製した。
上記で得た太陽電池素子19に実施例1と同様にしてタブ線を接続し、上記評価項目について評価したところ、実施例1と同程度に優れた特性を示すことが分かった。
実施例1で作製した電極用ペースト組成物A1及び電極用ペースト組成物B1を用いて、図6に示したような構造を有する太陽電池素子20を、以下の方法で作製した。
まずp型シリコン基板に、レーザードリルによって、受光面側及び裏面側の両面を貫通した直径100μmのスルーホールを形成した。次いで受光面側にテクスチャ、n+拡散層及び反射防止膜を形成した。尚、n+拡散層は、スルーホール内部、及び裏面の一部にもそれぞれ形成した。次に、スルーホール内部に電極用ペースト組成物A1をインクジェット方により充填した。続いて、電極用ペースト組成物A1及び電極用ペースト組成物B1を用い、受光面側に受光面集電用電極及び出力取出し電極をグリッド状にスクリーン印刷した。
上記で得た太陽電池素子20に実施例1と同様にしてタブ線を接続し、上記評価項目について評価したところ、優れた発電性能を示すことが分かった。
101 シリコン基板
111 電極
112 電極層A
113 電極層B
1 p型シリコン基板
2 n+拡散層
3 反射防止膜
4 受光面集電用電極及び出力取出し電極
5 裏面集電用電極
6 裏面出力取出し電極
7 p+拡散層
8 受光面集電用電極
9 スルーホール電極
10 裏面電極
11 裏面電極
12 n型シリコン基板
Claims (12)
- シリコン基板と、
リン含有銅合金粒子、錫含有粒子、ガラス粒子、溶剤及び樹脂を含み錫の含有率が1質量%以上である電極用ペースト組成物Aの焼成物である電極層Aと、
リン含有銅合金粒子、ガラス粒子、溶剤及び樹脂を含み錫の含有率が0.1質量%以下である電極用ペースト組成物Bの焼成物である電極層Bと、
がこの順に積層された素子。 - 前記電極用ペースト組成物Aに含まれるリン含有銅合金粒子、及び前記電極用ペースト組成物Bに含まれるリン含有銅合金粒子は、リン含有率が6質量%以上8質量%以下である、請求項1に記載の素子。
- 前記電極用ペースト組成物Aに含まれる錫含有粒子は、錫粒子及び錫含有率が1質量%以上である錫合金粒子から選ばれる少なくとも1種である、請求項1又は請求項2に記載の素子。
- 前記電極用ペースト組成物Aに含まれるガラス粒子、及び前記電極用ペースト組成物Bに含まれるガラス粒子は、軟化温度が650℃以下であって、結晶化開始温度が650℃を超える、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の素子。
- 前記電極用ペースト組成物Aは、前記リン含有銅合金粒子と前記錫含有粒子の総含有率を100質量%としたときの前記錫含有粒子の含有率が5質量%以上70質量%以下である、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の素子。
- 前記電極用ペースト組成物Aは、前記リン含有銅合金粒子及び前記錫含有粒子の総含有率が70質量%以上94質量%以下であって、前記ガラス粒子の含有率が0.1質量%以上10質量%以下であって、前記溶剤及び前記樹脂の総含有率が3質量%以上29.9質量%以下である、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の素子。
- 前記電極用ペースト組成物Bは、前記リン含有銅合金粒子の含有率が70質量%以上94質量%以下であって、前記ガラス粒子の含有率が0.1質量%以上10質量%以下であって、前記溶剤及び前記樹脂の総含有率が3質量%以上29.9質量%以下である、請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の素子。
- 前記電極層Aは、Cu−Sn合金相及びSn−P−Oガラス相を含む、請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の素子。
- 前記Sn−P−Oガラス相が、前記Cu−Sn合金相と前記シリコン基板との間に配置されている、請求項8に記載の素子。
- 前記電極用ペースト組成物Aと前記電極用ペースト組成物Bとを同時に焼成して、前記電極層Aと前記電極層Bとが形成された、又は、
前記電極用ペースト組成物Aを焼成して前記電極層Aが形成され、その後に前記電極用ペースト組成物Bを焼成して前記電極層Bが形成された、
請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の素子。 - 前記シリコン基板がpn接合を有し、太陽電池に用いられる、請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載の素子。
- 請求項11に記載の素子を含み、前記素子の電極上にタブ線が配置された、太陽電池。
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