JP2013015203A - ボルト - Google Patents

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Abstract

【課題】締付けに要する工数を削減し、量産性を高める。
【解決手段】本発明は、軽合金製の被締結部材2を締結するためのボルト1であって、被締結部材2より引張り強さが大きく且つ線膨張係数が小さい材質により形成され、首下部分にフランジ部4が一体に形成され、フランジ部4の座面側には、被締結部材2の締結時に被締結部材2のボルト穴7の周囲の角部9を塑性変形可能なように、軸部5の付け根の周囲にテーパ部6が形成されていることを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、アルミニウム合金やマグネシウム合金等の被締結部材を締結するためのボルトであって、特に、車両用構造部材の締結に使用する呼び径がM20サイズ以下のボルトに関する。
近年、自動車の燃費の向上を図るため、軽量化のニーズが高まり、アルミニウム合金やマグネシウム合金等の鋼材よりも軽量な合金(軽合金)の採用が増えてきている。
しかしながら、これらの軽合金は、耐熱性が低いため、高温環境下で使用する際に問題があり、特に、ボルトで締結する場合に深刻な問題が生じる場合がある。すなわち、高温環境下において、アルミニウム合金製やマグネシウム合金製の被締結部材を、一般に用いられる鋼製のボルトで締結した場合、線膨張係数の高いアルミニウム合金製やマグネシウム合金製の被締結部材が大きく熱膨張するのに対し、線膨張係数の低い鋼製のボルトの熱膨張が小さいため、被締結部材の座面圧が大きく上昇する。そして、この状態が長く続くと、被締結部材の座面は、耐力の低下やクリープ変形により塑性変形を起こし、後に常温に戻った際にボルトの締付軸力が大きく低下してしまい、ボルトが緩むといった問題が生じるおそれがある。
そこで、従来、この種の問題を解決するため、初期締付工程において、ボルトの弾性域内で締め付けることにより被締結部材の座面を予め塑性変形させて被締結部材の弾性限度を高め、前記初期締付工程後の最終締付工程において、ボルトを緩めてボルト及び被締結部材を弾性域内で締付け、最終締付工程後に熱応力負荷が作用しても、被締付部材の塑性変形の進行を抑制しようとするボルト締結方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特開2009−78314号公報
しかしながら、上記した従来のボルト締付方法では、予め座面を塑性変形させる初期締付工程と、該初期締付程後にボルトを緩めてボルトと被締結部材を弾性域内で締付ける最終締付工程とを必要とするため、締付けに要する工数が増加し、量産性に欠けるといった問題がある。
本発明は上記した課題を解決すべくなされたものであり、締付けに要する工数を削減し、量産性を高めることのできるボルトを提供することを目的とする。
上記した目的を達成するため、本発明は、軽合金製の被締結部材を締結するためのボルトであって、前記被締結部材より引張り強さが大きく且つ線膨張係数が小さい材質により形成され、首下部分にフランジ部が一体に形成され、該フランジ部の座面側には、前記被締結部材の締結時に該被締結部材のボルト穴の周囲の角部を塑性変形可能なように、軸部の付け根の周囲にテーパ部が形成されていることを特徴とする。
また、本発明に係るボルトは、車両用構造部材の締結に使用する呼び径がM20サイズ以下のボルトであって、前記テーパ部の外径が前記ボルト穴の内径より1〜4mm大きく且つ前記テーパ部の軸方向の長さが1.0〜3.5mmとなるように形成されているのが好ましい。
本発明によれば、高温環境下の締結時における軸力の低下を確実に防止することができると共に、締付けに要する工数を削減し、量産性を高めることができる等、種々の優れた効果を得ることができる。
本発明の実施の形態に係るボルトを示す側面図である。 本発明の実施の形態に係るボルトにより締結される被締結部材を示す断面図である。 本発明の実施の形態に係るボルトにより被締結部材を締結した状態を示す断面図である。 比較例のボルトを示す側面図である。 比較例のボルトにより被締結部材を締結した状態を示す断面図である。 ボルトの軸力低下率の測定結果について本発明の実施例1の場合と比較例の場合とを比較して示す図である。 ボルトの軸力低下率の測定結果について本発明の実施例2の場合と比較例の場合とを比較して示す図である。 ボルトの軸力低下率の測定結果について本発明の実施例3の場合と比較例の場合とを比較して示す図である。 ボルトの軸力低下率の測定結果について本発明の実施例4の場合と比較例の場合とを比較して示す図である。 ボルトの軸力低下率の測定結果について本発明の実施例6の場合と比較例の場合とを比較して示す図である。 ボルトの軸力低下率の測定結果について本発明の実施例7の場合と比較例の場合とを比較して示す図である。
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。ここで、図1は本発明の実施の形態に係るボルト1を示す側面図、図2はボルト1により締結される被締結部材2を示す断面図、図3はボルト1により被締結部材2を締結した状態を示す断面図である。なお、以下の説明では、本発明を、車両用構造部材の締結に使用する呼び径がM20サイズ以下のボルトに適用した場合について説明する。
本発明の実施の形態に係るボルト1は、被締結部材2より引張り強さが大きく且つ線膨張係数が小さい材質により形成されており、例えば、鋼材により形成されている。
図1に示されているように、ボルト1は、頭部3と、頭部3の首下部分に一体に形成されたフランジ部4と、フランジ部4の座面側に一体に形成された軸部5とを備えて構成されている。軸部5には雄ネジが螺刻され、軸部5の付け根の周囲にはテーパ部6が形成されている。
また、被締結部材2は、例えば、ボルト1のフランジ部4の外径より十分に大きい円筒形状または形状のアルミニウム合金やマグネシウム合金により形成されており、被締結部材2には、図2に示されているように、ボルト1が挿通可能なボルト穴7が形成されている。
図3に示されているように、このような構成を備えたボルト1を被締結部材2のボルト穴7に挿通させ、ボルト1の先端部分を雌ネジが螺刻されたナット等の雌ネジ部材8に螺合すると、ボルト1のテーパ部6がボルト穴7の周囲の角部9を押圧し、角部9は局所的に塑性変形する。
これにより、ボルト1の締結時に高い応力が生じるボルト穴7の角部9周りの耐力を向上させ、高温に曝された後のボルト1の軸力低下を防止することができる。また、ボルト1の締結工程のみで被締結部材2の座面を塑性変形させることができ、予め被締結部材2の座面を塑性変形させる加工工程を必要としないため、締付けに要する工数を削減し、量産性を高めることができる。
Figure 2013015203
表1及び図1〜3に示されているように、ボルト1の呼び径をd、テーパ部6の外径をd、テーパ部6の軸方向の長さをL、フランジ部4の外径をd、被締結部材2のボルト穴7の内径をd、被締結部材2の外径をD、被締結部材2の被締結長さをL、雌ネジ部材8の外径をDとした場合、テーパ部6の外径dがボルト穴7の内径dより1〜4mm大きくなるように形成するのが好ましい。
これにより、ボルト1の締結工程のみでボルト1の軸力の低下防止に必要な塑性変形領域を容易に被締結部材2のボルト穴7の角部9周りに与えることができる。仮に、テーパ部6の外径dがボルト穴7の内径d+1mm未満であるとすると、ボルト1の軸力低下を防止するために必要な被締結部材2の座面径方向の塑性変形が十分に得られない。また、テーパ部6の外径dがボルト穴7の内径d+4mm超の場合には、塑性変形領域が大きくなり、締付軸力ではフランジ部4と被締結部材2の座面とが接触できず、座面積が低下して面圧が大きくなり、高環境下での使用によりボルト1の軸力が大幅に低下してしまう。
また、ボルト1のテーパ部6の軸方向の長さLが1.0〜3.5mmとなるように形成するのが好ましく、さらに、ボルト1のフランジ部4の外径dは、テーパ部6の外径d+d/2超となるように形成するのが好ましい。
これにより、ボルト1の締結工程のみで、ボルト1の軸力低下の防止に必要な塑性変形領域を容易に被締結部材2のボルト穴7の角部9周りに与えることができる。
また、被締結部材2の外径Dがd超となるように形成するのが好ましい。
これにより、ボルト1と被締結部材2との座面積を確保し、高温環境下における使用時に座面圧の上昇によるボルト1の軸力低下を防止することができる。仮に、被締結部材2の外径Dがd未満であるとすると、ボルト1と被締結部材2との座面積が小さく、高温環境下では、面圧が高くなるため、塑性変形領域があってもボルト1の軸力が大幅に低下してしまう。
また、被締結部材2の被締結長さLがテーパ部6の軸方向の長さL+1.5mm超となるように形成するのが好ましい。
これにより、ボルト1のテーパ部6と雌ネジ部材8との接触を防止すことができる。仮に、被締結長さLがテーパ部6の軸方向の長さL+1.5mm未満であるとすると、締結時の被締結部材2の変形によりボルト1のテーパ部6と雌ネジ部材8とが接触し、締結トルクや角度を増してもボルト1の軸力が上がらなくなる。
Figure 2013015203
次に、表2に示すような機械的性質を有するボルトと被締結部材を使用して、比較例と各実施例1〜6とについてそれぞれボルトの軸力低下率を測定した結果について説明する。
図4は比較例のボルトを示す側面図、図5は比較例のボルトにより被締結部材を締結した状態を示す断面図である。比較例では、呼び径M14×1.5でフランジ部4の外径dが29mmのテーパ部のない機械構造用合金鋼材(SCM435)製のボルト11と、外径Dが50mmの雌ネジ部材8とによって、外径Dが90mm(d+61mm)、被締結長さLが25mm、ボルト穴7の内径dが15.5mm(1.1dmm)で、フランジ部4の外径dより十分に大きい円筒形状のアルミニウム合金製の被締結部材2を、軸力40kNで締結し、リラクゼーション試験(ボルト11で被締結部材2を締結した状態において100℃で100時間保持後、常温まで冷却し、軸力を測定する試験)により熱履歴前後のボルト11の軸力変化を測定した。その結果、図6に示すように、被締結部材2のクリープ変形により、ボルト11の軸力低下率は△12.2%と大きかった。
これに対して、実施例1では、図1に示すように、外径dが17mm(d+1.5mm)で長さLが1.8mmのテーパ部6を有するボルト1を使用し、雌ネジ部材8及び被締結部材2については比較例と同じ形状及び材質のものを使用し、比較例と同一条件で前記リラクゼーション試験を実施し、ボルト1の軸力変化を測定した。
その結果、図6に示すように、被締結部材2のクリープ変形により、ボルトの軸力低下率は△1.9%となり、比較例よりも軸力低下率は大幅に改善した。
また、実施例2では、テーパ部6の外径dをそれぞれ16.5mm(d+1.0mm)、18.0mm(d+2.5mm)、19.5mm(d+4.0mm)、20.5mm(d+5.0mm)とした4種類のボルト1を使用し、その他のボルト1と被締結部材2及び雌ネジ部材8については実施例1と同じ形状及び材質のものを使用し、比較例と同一条件で前記リラクゼーション試験を実施し、ボルト1の軸力変化をそれぞれ測定した。
その結果、図7に示すように、軸力低下率は、d=16.5mmの時が△9%、d=18.0mmの時が△6%、d=19.5mmの時が△10%、d=20.5mmの時はボルト1の締結時に被締結部材2のボルト穴7の角部9周りに亀裂が生じたため、測定は不可能であった。これらの結果から、ボルト1のテーパ部6の外径dは、ボルト穴7の内径d+1〜4mmの範囲において、比較例よりも軸力低下の防止効果があることが分かる。
また、実施例3では、テーパ部6の長さLをそれぞれ1mm、3mm、4mm、5mmとした4種類のボルト1を使用し、その他のボルト1と被締結部材2及び雌ネジ部材8については実施例1と同じ形状及び材質のものを使用し、比較例と同一条件で前記リラクゼーション試験を実施し、ボルト1の軸力変化をそれぞれ測定した。
その結果、図8に示すように、軸力低下率は、L=1mmの時が△5%、L=3mmの時が△7%、L=4mmの時が△16%、L=5mmの時はボルト1の締結時に被締結部材2のボルト穴7の角部9周りに亀裂が生じたため、測定は不可能であった。これらの結果から、ボルト1のテーパ部6の長さLは、1〜3.5mmの範囲において、比較例よりも軸力低下の防止効果があることが分かる。
また、実施例4では、フランジ部4の外径dをそれぞれ18mm(d+d/14mm)、23mm(d+6d/14mm)、33mm(d+16d/14mm)とした3種類のボルト1を使用し、その他のボルト1と被締結部材2及び雌ネジ部材8については実施例1と同じ形状及び材質のものを使用し、比較例と同一条件で前記リラクゼーション試験を実施し、ボルト1の軸力変化をそれぞれ測定した。
その結果、図9に示すように、軸力低下率は、d=18mmの時が△22%、d=23mmの時が△16%、d=33mmの時が△2%であった。これらの結果から、ボルト1のフランジ部4の外径dは、テーパ部6の外径d+d/2超(d+7d/14超)において、比較例よりも軸力低下の防止効果があることが分かる。
また、実施例5では、被締結部材2の外径Dをそれぞれ20mm(d−9mm)、25mm(d−4mm)、35mm(d+6mm)、60mm(d+31mm)とした4種類のボルト1を使用し、その他のボルト1と被締結部材2及び雌ネジ部材8については実施例1と同じ形状及び材質のものを使用し、比較例と同一条件で前記リラクゼーション試験を実施し、ボルト1の軸力変化をそれぞれ測定した。
その結果、図10に示すように、軸力低下率は、D=20mmの時が△28%、D=25mmの時が△20%、D=35mmの時が△3%、D=60mmの時が△5%であった。これらの結果から、被締結部材2の外径Dは、ボルト1のフランジ部4の外径d超において、比較例よりも軸力低下の防止効果があることが分かる。
また、実施例6では、被締結部材2の長さLをそれぞれ1.8mm(L+0mm)、3.0mm(L+1.2mm)、15mm(L+13.2mm)とした3種類のボルト1を使用し、その他のボルト1と被締結部材2及び雌ネジ部材8については実施例1と同じ形状及び材質のものを使用し、比較例と同一条件で前記リラクゼーション試験を実施し、ボルト1の軸力変化をそれぞれ測定した。
その結果、図11に示すように、軸力低下率は、L=3.0mmの時が△10%、L=15mmの時が△3%、L=1.8mmの時はボルト1のテーパ部6と雌ネジ部材8とが接触し、締結トルクや角度が増しても軸力が上がらず、測定は不可能であった。これらの結果から、被締結部材2の被締結長さLは、L+1.5mm超において、比較例よりも軸力低下の防止効果があることが分かる。
なお、上記した実施の形態では、本発明を、車両用構造部材の締結に使用する呼び径がM20サイズ以下のボルトに適用した場合について説明したが、これは本発明の用途をこの場合に限定する趣旨ではなく、本発明は、車両用構造部材以外の用途や、呼び径がM20サイズを超えるボルトについても適用可能である。
また、上記したボルト1や被締結部材2の材質及び形状は単なる例示に過ぎず、例えば、被締結部材2の材質を線膨張係数が大きな亜鉛合金や亜鉛合金ダイカストとしたり、或いは被締結部材2の形状を四角柱や平板にしたりする等、特許請求の範囲及び明細書全体から読み取ることのできる発明の要旨又は思想に反しない範囲で適宜変更が可能であり、そのような変更を伴う発明もまた本発明の技術思想に含まれることは言う迄もない。
1 ボルト
2 被締結部材
4 フランジ部
5 軸部
6 テーパ部
7 ボルト穴
9 角部

Claims (2)

  1. 軽合金製の被締結部材を締結するためのボルトであって、
    前記被締結部材より引張り強さが大きく且つ線膨張係数が小さい材質により形成され、首下部分にフランジ部が一体に形成され、該フランジ部の座面側には、前記被締結部材の締結時に該被締結部材のボルト穴の周囲の角部を塑性変形可能なように、軸部の付け根の周囲にテーパ部が形成されていることを特徴とするボルト。
  2. 車両用構造部材の締結に使用する呼び径がM20サイズ以下のボルトであって、前記テーパ部の外径が前記ボルト穴の内径より1〜4mm大きく且つ前記テーパ部の軸方向の長さが1.0〜3.5mmとなるように形成されていることを特徴とする請求項1に記載のボルト。
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