JP2013014486A - 酸化亜鉛単結晶の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】水熱合成法による酸化亜鉛単結晶の育成に際し、酸化亜鉛単結晶の成長速度を速めることができる酸化亜鉛単結晶の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】育成用溶液と、育成用原料5と、種結晶6とを収容した密閉容器24内で、水熱合成法により酸化亜鉛単結晶を育成する酸化亜鉛単結晶の製造方法において、育成用溶液として、アルカリ金属の水酸化物及びアルカリ金属の炭酸塩からなる群から選択される1種以上の鉱化剤と、酸とを含むアルカリ性の水溶液を用いる。
【選択図】図1
【解決手段】育成用溶液と、育成用原料5と、種結晶6とを収容した密閉容器24内で、水熱合成法により酸化亜鉛単結晶を育成する酸化亜鉛単結晶の製造方法において、育成用溶液として、アルカリ金属の水酸化物及びアルカリ金属の炭酸塩からなる群から選択される1種以上の鉱化剤と、酸とを含むアルカリ性の水溶液を用いる。
【選択図】図1
Description
本発明は、水熱合成法による酸化亜鉛単結晶の製造方法に関する。
従来、酸化亜鉛(ZnO)単結晶は、育成炉(オートクレーブ)を用いて、水熱合成法により育成される。酸化亜鉛単結晶の水熱合成法による育成において、育成炉には、対流制御板を挟んで下側に、育成用原料を収容し、上側に種結晶(酸化亜鉛単結晶の小片)を収容する。さらに、育成炉内には、育成用溶液を充填する。そして、育成炉の内部を密閉し、加熱及び加圧する。この際、育成炉の上側よりも下側が高温となるように加熱し、育成用溶液を育成炉内で自然対流させる。このような自然対流により、育成炉内の下部で育成用原料が溶解した育成用溶液が、育成炉内の上部に達して冷却され、過飽和状態となり、育成用原料が種結晶上に析出成長する。この動作を所定期間連続して行うことにより、所定の大きさの酸化亜鉛単結晶が得られる。
例えば、特許文献1には、水酸化カリウム(KOH)と水酸化ナトリウム(NaOH)とからなるアルカリ溶媒を育成用溶液として用いて、水熱合成法により酸化亜鉛単結晶を育成することが開示されている。
ところで、上記した水熱合成法により酸化亜鉛単結晶を育成する酸化亜鉛単結晶の製造方法においては、生産性を向上させるために、育成用原料が種結晶上に析出成長する際の成長速度(即ち、酸化亜鉛単結晶の成長速度)を速めることが求められている。
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであって、水熱合成法による酸化亜鉛単結晶の育成に際し、酸化亜鉛単結晶の成長速度を速めることができる酸化亜鉛単結晶の製造方法を提供することを目的とする。
本発明に係る酸化亜鉛単結晶の製造方法は、育成用溶液と、育成用原料と、種結晶とを収容した密閉容器内で、水熱合成法により酸化亜鉛単結晶を育成する酸化亜鉛単結晶の製造方法であって、前記育成用溶液として、アルカリ金属の水酸化物及びアルカリ金属の炭酸塩からなる群から選択される1種以上の鉱化剤と、酸とを含むアルカリ性の水溶液を用いることを特徴とする。
この方法によれば、酸化亜鉛単結晶の育成に際し、育成用溶液中の酸により、酸化亜鉛単結晶の成長速度を速めることができる。なお、本発明において、「酸」とは、水溶液中において水素イオンを生じる物質を意味する。
また、本発明に係る酸化亜鉛単結晶の製造方法では、前記酸として、硫酸及び塩酸からなる群から選択される1種以上を用いてもよい。特に、前記酸として、硫酸を用いると、酸化亜鉛単結晶の成長速度をより速めることができる。
また、本発明に係る酸化亜鉛単結晶の製造方法では、前記育成用溶液として、溶液中における硫酸の濃度が0.01〜0.16mol/kgである前記水溶液を用いてもよい。
この場合には、水熱合成法による酸化亜鉛単結晶の育成に際し、酸化亜鉛単結晶の成長速度を確実に速めることができる。なお、本明細書において、上記した育成用溶液(水溶液)中における溶質(即ち、鉱化剤及び酸素供給剤等の水に溶けている物質)の濃度単位「mol/kg」は、溶媒(即ち、水)1kg当たりの溶質の物質量(mol)を表す単位である。
また、本発明に係る酸化亜鉛単結晶の製造方法では、前記育成用原料として、酸化亜鉛単結晶を用いてもよい。
この場合には、水熱合成法による酸化亜鉛単結晶の育成に際し、酸化亜鉛単結晶の成長速度をより速めることができる。
本発明に係る酸化亜鉛単結晶の製造方法によれば、水熱合成法による酸化亜鉛単結晶の育成に際し、酸化亜鉛単結晶の成長速度を速めることができる。
本発明の実施の形態に係る酸化亜鉛単結晶の製造方法では、図1に示す単結晶育成炉(以下、単に育成炉1と呼ぶ)の育成容器24(本発明でいう密閉容器)に、種結晶6としての酸化亜鉛単結晶と、育成用原料5と、育成用溶液とを収容し、内部空間を密閉した育成容器24内にて、水熱合成法により、酸化亜鉛単結晶の育成を行う。このような本実施の形態に係る酸化亜鉛単結晶の製造方法について、以下に詳述する。
−育成炉1の構成−
本実施の形態に係る酸化亜鉛単結晶の製造方法において、酸化亜鉛単結晶の育成を行うための育成炉1は、図1に示すように、炉本体2の外周囲に、炉本体2を加熱及び加圧する電気炉3が配設された構成とされている。
本実施の形態に係る酸化亜鉛単結晶の製造方法において、酸化亜鉛単結晶の育成を行うための育成炉1は、図1に示すように、炉本体2の外周囲に、炉本体2を加熱及び加圧する電気炉3が配設された構成とされている。
炉本体2は、上部が開放された有底円筒状であり、上端開口部21には、炉本体2の内部を密閉するための蓋体22が装着されている。この蓋体22には、炉本体2の内部圧力を計測するための圧力計22aが取り付けられている。更に、炉本体2の内部には、育成容器24が収められる。
育成容器24は、上部が開放された有底円筒状の容器本体241と、蓋体242とから構成されている。これら容器本体241及び蓋体242は、白金からなる。
また、容器本体241の内部空間4の上下方向中間位置には対流制御板23が配設されている。この対流制御板23によって、容器本体241の内部空間4は、下側の原料室41と上側の育成室42とに仕切られている。
上記原料室41は、育成用原料5を収容する空間とされている。また、育成室42は、単結晶育成棚61に支持された複数枚の種結晶6を収容する空間とされている。
このような容器本体241の内部空間4は、育成用溶液が充填され、原料室41に育成用原料5が収容され、育成室42に種結晶6が収容された状態で、容器本体241の上端開口に蓋体242が溶接により接着されることにより密閉される。なお、本実施の形態において、容器本体241の内部空間4は、前述の通り、容器本体241に蓋体242を溶接することにより密閉されるが、容器本体241の内部空間241は、容器本体241と蓋体242とを、パッキン又はガスケット等のシール材を介して接合することにより密閉されてもよい。
−育成用原料5−
また、本実施の形態に係る酸化亜鉛単結晶の製造方法において、育成用原料5には、酸化亜鉛の焼結体(多結晶)を使用する。酸化亜鉛の焼結体としては、例えば、直径1〜10μmの酸化亜鉛粉末を加圧プレス機によって成型し、1000〜1300℃の酸素雰囲気あるいは大気雰囲気で焼成した焼結体を使用することができる。
また、本実施の形態に係る酸化亜鉛単結晶の製造方法において、育成用原料5には、酸化亜鉛の焼結体(多結晶)を使用する。酸化亜鉛の焼結体としては、例えば、直径1〜10μmの酸化亜鉛粉末を加圧プレス機によって成型し、1000〜1300℃の酸素雰囲気あるいは大気雰囲気で焼成した焼結体を使用することができる。
−種結晶6−
また、本実施の形態に係る酸化亜鉛単結晶の製造方法において、種結晶6には、板状の酸化亜鉛単結晶を使用する。
また、本実施の形態に係る酸化亜鉛単結晶の製造方法において、種結晶6には、板状の酸化亜鉛単結晶を使用する。
−育成用溶液−
また、本実施の形態に係る酸化亜鉛単結晶の製造方法において、育成用溶液には、鉱化剤と、酸とを含むアルカリ性の水溶液を用いる。
また、本実施の形態に係る酸化亜鉛単結晶の製造方法において、育成用溶液には、鉱化剤と、酸とを含むアルカリ性の水溶液を用いる。
鉱化剤には、アルカリ金属の水酸化物及びアルカリ金属の炭酸塩からなる群から選択される1種以上を用いる。鉱化剤としての使用に適したアルカリ金属の水酸化物の具体例としては、水酸化カリウム(KOH)、水酸化ナトリウム(NaOH)、及び水酸化リチウム(LiOH)等を挙げることができる。また、鉱化剤の使用に適したアルカリ金属の炭酸塩としては、炭酸ナトリウム(Na2CO3)、及び炭酸カリウム(K2CO3)等を挙げることができる。なお、鉱化剤は1種を単独で使用しても、2種以上を併用して使用してもよい。
また、育成用溶液(水溶液)中の鉱化剤の総濃度は、酸化亜鉛単結晶の成長を好適に促進することができる濃度であれば、特に限定されない。例えば、鉱化剤として、水酸化カリウムと水酸化リチウムとを併用した場合、水酸化カリウムの濃度を2〜4mol/kgとし、水酸化リチウムの濃度を0.5〜1.5mol/kgとすると、酸化亜鉛単結晶の成長を好適に促進することができ、高品質の酸化亜鉛単結晶を得ることができる。
また、酸としては、水溶液中において水素イオンを生じる物質を好適に使用することができる。このような酸の具体例としては、硫酸(H2SO4)、塩酸(HCl)等を挙げることができる。これらの酸の中でも、硫酸及び塩酸が、酸化亜鉛単結晶の成長速度を速める効果に優れており、特に、硫酸が、酸化亜鉛単結晶の成長速度を速める効果に極めて優れる。なお、上記した酸は、1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
また、育成用溶液中(水溶液中)における酸の濃度は、特に限定されないが、例えば、育成用溶液に含有させる酸として、塩酸を単独使用する場合、育成用溶液中の塩酸の濃度を0.01〜0.16mol/kg、より好ましくは、0.01〜0.08mol/kgとすると、酸化亜鉛単結晶の成長速度を速めつつ、結晶性の良い高品質の酸化亜鉛単結晶を得ることができる。また、育成用溶液に含有させる酸として、硫酸を単独使用した場合、育成用溶液中の硫酸の濃度を、0.01〜0.16mol/kgとすると、酸化亜鉛単結晶の成長速度を確実に速めることができ、より好ましくは、0.01〜0.04mol/kgとすると、酸化亜鉛単結晶の成長速度を確実に速めつつ、結晶性の良い高品質の酸化亜鉛単結晶を得ることができる。
また、育成用溶液には、本発明の効果を損なわない範囲内で、上記した鉱化剤及び酸以外の成分が含まれていてもよい。例えば、育成用溶液には、過酸化水素、又は過塩素酸塩(例えば、過塩素酸カリウム、過塩素酸ナトリウム等)が含まれていてもよい。
上記した育成用溶液は、アルカリ性である必要があり、そのpHは、pH12〜pH15であることが好ましい。育成用溶液が中性又は酸性であると、種結晶6上に育成用原料を析出成長させることができない。よって、育成用溶液中における上記鉱化剤及び酸の濃度は、育成用溶液がアルカリ性となるように、適宜調整される。
−単結晶の製造方法−
次に、本実施の形態に係る製造方法において、上記した育成用原料5、種結晶6、及び育成用溶液を用い、育成炉1(図1参照)により酸化亜鉛単結晶を育成する方法について、以下に説明する。
次に、本実施の形態に係る製造方法において、上記した育成用原料5、種結晶6、及び育成用溶液を用い、育成炉1(図1参照)により酸化亜鉛単結晶を育成する方法について、以下に説明する。
容器本体241の原料室41に上記した育成用原料5を収容し、育成室42に、単結晶育成棚61に支持された複数枚の種結晶6を収容する。さらに、容器本体241に育成用溶液を充填する。具体例としては、容器本体241の内部空間4の体積の80%を育成用溶液が占めるように、容器本体241に育成用溶液を充填する。
そして、TIG溶接(Tungsten Inert Gas welding)法により、容器本体241の上端開口に蓋体242を溶接し、育成容器24の内部空間4を密閉する。なお、本実施の形態では、容器本体241の上端開口に蓋体242を溶接する溶接法として、上記の通り、TIG溶接法を適用しているが、TIG溶接法以外の方法、例えば、酸素・水素溶接により、容器本体241の上端開口に蓋体242を溶接してもよい。
育成容器24の内部空間4を密閉後、炉本体2の内部に、育成容器24を収め、さらに、純水を充填する。具体例としては、炉本体2と育成容器24の間の空間25の体積の約80%を純水が占めるように、炉本体2の内部に純水を充填する。その後、炉本体2の上端開口部21に蓋体22を装着し、炉本体2の内部を密閉する。
そして、電気炉3によって、炉本体2を加熱及び加圧する。この際、原料室41の温度が育成室42よりも高温となるように、炉本体2を加熱及び加圧する。具体例としては、育成容器24の内部空間4の圧力が70〜98MPaで、原料室41の温度(溶解域温度)が350〜400℃で、育成室42の温度(成長域温度)が320〜370℃となるように、炉本体2を加熱及び加圧し、この原料室41と育成室42の温度差により、高温高圧下で、原料室41と育成室42との間に育成用溶液を自然対流させる。
このような自然対流により、育成用原料5が溶解した育成用溶液が、原料室41から育成室42に移動し、そして、育成室42において冷却されて、過飽和状態となる。これにより、育成用原料5が種結晶6上に析出成長する。この動作を所定期間連続して行うことにより、所定の大きさの酸化亜鉛単結晶が得られる。
次に、上記した本実施の形態の製造方法によりもたらされる効果を、実施例及び比較例を挙げて以下に説明する。
[実施例1]
上記した製造方法において、水酸化カリウムと、水酸化リチウムと、硫酸とを溶解させた水溶液を育成用溶液に用い、実施例1に係る酸化亜鉛単結晶を製造した。この実施例1に係る酸化亜鉛単結晶の製造に用いた育成用溶液(水溶液)においては、水酸化カリウムの濃度を3mol/kgとし、水酸化リチウムの濃度を1mol/kgとし、硫酸の濃度を0.01mol/kgとした。また、実施例1に係る酸化亜鉛単結晶の製造においては、成長域温度340℃、溶解域温度370℃、及び圧力85MPaの条件下で、酸化亜鉛単結晶の育成を行った。
上記した製造方法において、水酸化カリウムと、水酸化リチウムと、硫酸とを溶解させた水溶液を育成用溶液に用い、実施例1に係る酸化亜鉛単結晶を製造した。この実施例1に係る酸化亜鉛単結晶の製造に用いた育成用溶液(水溶液)においては、水酸化カリウムの濃度を3mol/kgとし、水酸化リチウムの濃度を1mol/kgとし、硫酸の濃度を0.01mol/kgとした。また、実施例1に係る酸化亜鉛単結晶の製造においては、成長域温度340℃、溶解域温度370℃、及び圧力85MPaの条件下で、酸化亜鉛単結晶の育成を行った。
[実施例2]
育成用溶液中における硫酸の濃度を0.02mol/kgとした以外は、実施例1に係る酸化亜鉛単結晶の製造と同一の方法を適用して、実施例2に係る酸化亜鉛単結晶を製造した。
育成用溶液中における硫酸の濃度を0.02mol/kgとした以外は、実施例1に係る酸化亜鉛単結晶の製造と同一の方法を適用して、実施例2に係る酸化亜鉛単結晶を製造した。
[実施例3]
育成用溶液中における硫酸の濃度を0.04mol/kgとした以外は、実施例1に係る酸化亜鉛単結晶の製造と同一の方法を適用して、実施例3に係る酸化亜鉛単結晶を製造した。
育成用溶液中における硫酸の濃度を0.04mol/kgとした以外は、実施例1に係る酸化亜鉛単結晶の製造と同一の方法を適用して、実施例3に係る酸化亜鉛単結晶を製造した。
[実施例4]
育成用溶液中における硫酸の濃度を0.08mol/kgとした以外は、実施例1に係る酸化亜鉛単結晶の製造と同一の方法を適用して、実施例4に係る酸化亜鉛単結晶を製造した。
育成用溶液中における硫酸の濃度を0.08mol/kgとした以外は、実施例1に係る酸化亜鉛単結晶の製造と同一の方法を適用して、実施例4に係る酸化亜鉛単結晶を製造した。
[実施例5]
育成用溶液中における硫酸の濃度を0.16mol/kgとした以外は、実施例1に係る酸化亜鉛単結晶の製造と同一の方法を適用して、実施例5に係る酸化亜鉛単結晶を製造した。
育成用溶液中における硫酸の濃度を0.16mol/kgとした以外は、実施例1に係る酸化亜鉛単結晶の製造と同一の方法を適用して、実施例5に係る酸化亜鉛単結晶を製造した。
[実施例6]
水酸化カリウムと、水酸化リチウムと、塩酸とを溶解させた水溶液を育成用溶液として用いた以外は、実施例1に係る酸化亜鉛単結晶の製造と同一の方法を適用して、実施例6に係る酸化亜鉛単結晶を製造した。なお、この実施例5に係る酸化亜鉛単結晶の製造に用いた育成用溶液(水溶液)においては、水酸化カリウムの濃度を3mol/kgとし、水酸化リチウムの濃度を1mol/kgとし、塩酸の濃度を0.04mol/kgとした。
水酸化カリウムと、水酸化リチウムと、塩酸とを溶解させた水溶液を育成用溶液として用いた以外は、実施例1に係る酸化亜鉛単結晶の製造と同一の方法を適用して、実施例6に係る酸化亜鉛単結晶を製造した。なお、この実施例5に係る酸化亜鉛単結晶の製造に用いた育成用溶液(水溶液)においては、水酸化カリウムの濃度を3mol/kgとし、水酸化リチウムの濃度を1mol/kgとし、塩酸の濃度を0.04mol/kgとした。
[比較例1]
水酸化カリウムと、水酸化リチウムとを溶解させた水溶液を育成用溶液として用いた以外は、実施例1に係る酸化亜鉛単結晶の製造と同一の方法を適用して、比較例1に係る酸化亜鉛単結晶を製造した。
水酸化カリウムと、水酸化リチウムとを溶解させた水溶液を育成用溶液として用いた以外は、実施例1に係る酸化亜鉛単結晶の製造と同一の方法を適用して、比較例1に係る酸化亜鉛単結晶を製造した。
上記した実施例1〜6及び比較例1に係る酸化亜鉛単結晶の育成において種結晶6のC軸方向(+C面及び−C面の垂直方向)に成長する育成用原料5の成長速度(以下、C軸成長速度と称す。)を次に示す方法により求めた。すなわち、育成後の酸化亜鉛単結晶のC軸方向の厚み(μm)から、当該酸化亜鉛単結晶の育成に用いた種結晶6のC軸方向の厚み(μm)を差し引き、この値を育成日数(day)で除して、C軸成長速度(μm/day)を求めた。なお、この方法により求められるC軸成長速度(μm/day)の値、即ち、本明細書中に記載のC軸成長速度(μm/day)は、種結晶6の+C面上に成長する育成用原料5の成長速度と、種結晶6の−C面上に成長する育成用原料5の成長速度の合計である。
また、実施例1〜6及び比較例1に係る酸化亜鉛単結晶について、+C面の(0002)面におけるX線ロッキングカーブ(XRC)を測定し、その半値幅(FWHM)を求めた。なお、X線ロッキングカーブの測定において、測定装置には、ブルカー・エイエックスエス株式会社製のX線回析装置D8Discoverを使用し、光学系として4結晶モノクロメータGe(440)を用いた。
上記した方法により得られた実施例1〜6及び比較例1に係る酸化亜鉛単結晶のC軸成長速度、及び、+C面の(0002)面におけるX線ロッキングカーブの半値幅(FWHM)を、以下表1に示す。加えて、表1には、実施例1〜6及び比較例1に係る酸化亜鉛単結晶の製造で用いた育成用溶液の酸の種類及び濃度、並びに、育成用溶液のpHを示す。
上記表1に示すように、酸(即ち、硫酸又は塩酸)と鉱化剤(水酸化カリウム及び水酸化リチウム)とを含むアルカリ性の水溶液を育成用溶液に用いて、酸化亜鉛単結晶を育成する実施例1〜6に係る酸化亜鉛単結晶の製造において、種結晶6の+C面及び−C面上に育成用原料5が析出成長する際のC軸成長速度は、238〜379μm/dayであることが認められた。また、酸を含まず、鉱化剤のみを含むアルカリ性の水溶液を育成用溶液に用いて、酸化亜鉛単結晶を育成する比較例1に係る酸化亜鉛単結晶の製造において、種結晶6上に育成用原料5が析出成長する際のC軸成長速度は、159μm/dayであることが認められた。すなわち、育成用溶液に、鉱化剤に加えて酸を含有させると、種結晶6の+C面及び−C面上に育成用原料5が析出成長する際の成長速度を速めることができることが認められた。
また、実施例1〜6及び比較例1に係る酸化亜鉛単結晶の製造におけるC軸成長速度の比較より、育成用溶液に含有させる酸として硫酸を使用し、この育成用溶液における硫酸の濃度を0.01mol〜0.08mol/kgとすると、育成用溶液に酸を含有させない場合と比べて、C軸成長速度を極めて速くすることができる、具体的には、C軸成長速度を100μm/day以上速くすることができることが認められた。
また、硫酸を0.01〜0.04mol/kg含む育成用溶液を用いた実施例1〜3に係る酸化亜鉛単結晶の製造におけるC軸成長速度は、塩酸を0.04mol/kg含む育成用溶液を用いた実施例6に係る酸化亜鉛単結晶の製造におけるC軸成長速度よりも速く、硫酸は、塩酸と同一又は塩酸よりも少ない物質量(mol)で、高い成長速度の促進効果を得ることができることが認められた。
また、育成用溶液に酸(塩酸又は硫酸)を含有させて製造した実施例1〜6に係る酸化亜鉛単結晶では、比較例1に係る酸化亜鉛単結晶と同等又は比較例1に係る酸化亜鉛単結晶よりも小さい、(0002)面におけるX線ロッキングカーブの半値幅が得られ、実施例1〜6に係る酸化亜鉛単結晶は、比較例1に係る酸化亜鉛単結晶と同等以上の結晶性を有することが認められた。
特に、硫酸の濃度が0.01〜0.04mol/kgである育成用溶液を用いて製造した実施例1〜3に係る酸化亜鉛単結晶の(0002)面におけるX線ロッキングカーブの半値幅は、24arcsec以下であり、比較例1に係る酸化亜鉛単結晶の(0002)面におけるX線ロッキングカーブの半値幅よりも極めて小さいことが認められた。つまり、育成用溶液に含有させる酸として硫酸を使用する場合、この育成用溶液における硫酸の濃度を0.01〜0.04mol/kgとすると、育成用溶液に酸を含有させない場合と比べて、結晶性のよい高品質の酸化亜鉛単結晶を製造することができることが認められた。また、上記した通り、育成用溶液に含有させる酸として硫酸を使用する場合には、この育成用溶液における硫酸の濃度を0.01〜0.08mol/kgとすると、育成用溶液に酸を含有させない場合と比べて、極めてC軸成長速度を速くすることができることが認められた。これらのことから、育成用溶液に含有させる酸として硫酸を使用する場合、育成用溶液における硫酸の濃度を0.01mol〜0.04mol/kgとすると、C軸成長速度を極めて速くすることができる上に、結晶性のよい高品質の酸化亜鉛単結晶を製造することができることが認められた。
また、塩酸の濃度が0.04mol/kgである育成用溶液を用いて製造した実施例5に係る酸化亜鉛単結晶の(0002)面におけるX線ロッキングカーブの半値幅も、19arcsecと、比較例1に係る酸化亜鉛単結晶の(0002)面におけるX線ロッキングカーブの半値幅よりも極めて小さいことが認められた。つまり、育成用溶液に含有させる酸として塩酸を使用した場合にも、育成用溶液に酸を含有させない場合と比べて、結晶性のよい高品質の酸化亜鉛単結晶を製造することができることが認められた。
以上のように、育成用溶液として、アルカリ金属の水酸化物及びアルカリ金属の炭酸塩からなる群から選択される1種以上の鉱化剤と、酸とを含むアルカリ性の水溶液を用いる本実施の形態の製造方法によれば、育成用溶液中に含有させた酸により、酸化亜鉛単結晶の成長速度を速めることができる。このため、本実施の形態の製造方法によれば、酸化亜鉛単結晶の製造における生産性が向上する。
なお、上記した実施の形態に係る製造方法では、育成用原料5として焼結体を使用するが、育成用原料5には、焼結体に代えて、酸化亜鉛単結晶を使用してもよい。具体例としては、他の製造において酸化亜鉛単結晶を育成した時に、種結晶6上以外の箇所(例えば、育成容器24の壁面、又は、種結晶6を支持するための単結晶育成棚61等)に核を形成して成長した酸化亜鉛単結晶(即ち、雑晶)を育成用原料5として使用してもよい。或いは、他の製造において得られた酸化亜鉛単結晶を切断加工した際に生じた酸化亜鉛単結晶の小片を育成用原料5として使用してもよい。或いは、クラックの発生等により不良品として処理される酸化亜鉛単結晶を育成用原料5として使用してもよい。このような育成用原料5として使用する酸化亜鉛単結晶の大きさは、育成用溶液に溶け易いように、種結晶として使用する酸化亜鉛単結晶よりも小さいことが好ましい。このように、育成用原料5として酸化亜鉛単結晶を使用すると、育成時における雑晶の発生を抑制することができ、これにより、酸化亜鉛単結晶の成長速度を速めることができる。また、他の製造において発生した雑晶、切断加工時に生じる酸化亜鉛単結晶の小片、及び、不良品として処理される酸化亜鉛単結晶等、従来、廃棄物として処理されていた酸化亜鉛単結晶を育成用原料5として有効利用することで、酸化亜鉛単結晶の製造におけるコストを削減することができる。
本発明は、その精神または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、上述の実施例はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
1 育成炉
2 炉本体
21 上端開口
22 蓋体
22a 圧力計
23 対流制御板
24 育成容器
241 容器本体
242 蓋体
25 炉本体と育成容器との間の空間
3 電気炉
4 内部空間
41 原料室
42 育成室
5 育成用原料
6 種結晶
2 炉本体
21 上端開口
22 蓋体
22a 圧力計
23 対流制御板
24 育成容器
241 容器本体
242 蓋体
25 炉本体と育成容器との間の空間
3 電気炉
4 内部空間
41 原料室
42 育成室
5 育成用原料
6 種結晶
Claims (5)
- 育成用溶液と、育成用原料と、種結晶とを収容した密閉容器内で、水熱合成法により酸化亜鉛単結晶を育成する酸化亜鉛単結晶の製造方法であって、
前記育成用溶液として、アルカリ金属の水酸化物及びアルカリ金属の炭酸塩からなる群から選択される1種以上の鉱化剤と、酸とを含むアルカリ性の水溶液を用いることを特徴とする酸化亜鉛単結晶の製造方法。 - 請求項1に記載の酸化亜鉛単結晶の製造方法であって、
前記酸として、硫酸及び塩酸からなる群から選択される1種以上を用いることを特徴とする酸化亜鉛単結晶の製造方法。 - 請求項1に記載の酸化亜鉛単結晶の製造方法であって、
前記酸として、硫酸を用いることを特徴とする酸化亜鉛単結晶の製造方法。 - 請求項3に記載の酸化亜鉛単結晶の製造方法であって、
前記育成用溶液として、溶液中における硫酸の濃度が0.01〜0.16mol/kgである前記水溶液を用いることを特徴とする酸化亜鉛単結晶の製造方法。 - 請求項1〜4のいずれか1つに記載の酸化亜鉛単結晶の製造方法であって、
前記育成用原料として、酸化亜鉛単結晶を用いることを特徴とする酸化亜鉛単結晶の製造方法。
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JP2011149967A JP2013014486A (ja) | 2011-07-06 | 2011-07-06 | 酸化亜鉛単結晶の製造方法 |
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