JP2013009092A - Tmモード共振器,tmモード共振器の特性調整方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】スプリアス共振周波数を調整可能なTMモード共振器およびTMモード共振器の特性調整方法を提供する。
【解決手段】TM010モード共振器1は、円筒形状に形成された共振素子2と、共振素子2を収納するための矩形状の空洞(キャビティ)を形成するケース3とからなる。共振素子2は、セラミック製の誘電体からなり、その両端面には、端面電極21が形成されている。また、共振素子2には、共振素子2を貫通し両端面に開口を有する内孔2aが形成されており、その内孔2aは、チューナ7を挿入可能な大きさの内径を有し、かつ、両端面付近の内周壁には、端面電極21と導通する内孔電極22が形成されている。そして、共振素子2の外径Bや内孔電極22の寸法Aは、TM010モード共振周波数やスプリアス共振周波数が、予め設定された所望の値となるように調整されている。
【選択図】図1

Description

本発明は、高周波回路で使用されるTMモード共振器、およびその特性調整方法に関する。
近年、マイクロ波やミリ波等を処理する高周波回路(例えば、移動体通信システムの基地局等で使用される高周波フィルタ等)に使用される小型の誘電体共振器としてTM010モード共振器が注目されている。
TM010モード共振器は、円筒状または角筒状に形成された金属製のキャビティと、キャビティの中心軸に沿って配置される円柱状の誘電体素子とからなり、誘電体素子の長手方向の両端をキャビティの両底面の内壁に接触させた状態で使用する(例えば、特許文献1参照)。
また、誘電体素子として、内孔を有する円筒状に形成されたものを使用し、その内孔に導体棒(以下では「チューナ」と称する)を挿入し、その挿入深さにより共振周波数を調整することも行われている(例えば、特許文献2参照)。
特開昭63−250201号公報 特開2002−158514号公報(特に、図9参照。)
ところで、TM010モード共振器の特性は、キャビティや誘電体素子の形状やサイズによって調整されるが、キャビティの形状やサイズは使用する周波数や使用する場所など制約を受けるため、実質上、誘電体素子の寸法によって特性は調整されている。
そして、誘電体素子の寸法のうち、全長はキャビティ高さによって決まり、内孔径はチューナのサイズによって決まる。なお、チューナは、通常、金属製のボルトからなり、ボルトの径が大きいほど調整可能な周波数領域(チューニングレンジ)が大きくなることが知られている。つまり、チューナのサイズは、要求されるチューニングレンジの大きさによって決まることになる。
従って、多くの場合、TM010モード共振器の特性を、誘電体素子の外径という1つのパラメータで調整することになる。
しかし、誘電体素子の外径の調整は、通常、TM010モードの共振周波数を制御するために使用される。そのため、不要波(スプリアス)の共振周波数は誘電体素子の外径のパラメータによって制御することができず、スプリアスの改善が困難であるという問題があった。
本発明は、上記問題点を解決するために、スプリアス共振周波数を調整可能なTMモード共振器およびTMモード共振器の特性調整方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するためになされた請求項1に記載の発明は、キャビティを形成し、該キャビティの内壁が導電性を有するケースと、誘電体により柱状に形成され、柱軸方向に位置する二つの素子端面に端面電極を有すると共に、該端面電極が前記ケースの内壁に接触した状態で前記キャビティ内に保持される共振素子とを備えたTMモード共振器であって、前記共振素子には、前記素子端面にて開口する凹部または内孔が形成され、且つ、該凹部または内孔の内周壁に、前記端面電極と導通する内孔電極が形成されていることを特徴とする。
このように構成された本発明のTMモード共振器では、TM010モード共振周波数の制御に用いるパラメータ(共振素子の外径)とは別のパラメータ(内孔電極の寸法)を用いてスプリアス共振周波数を制御することができる。そのため、TM010モード共振周波数だけでなくスプリアス共振周波数も所望の値に調整すること、即ち、所望の特性を得ることができる。
なお、内孔電極を設けると、スプリアス共振周波数が高くなる一方で、TM010モード共振周波数は低下する。また、内孔電極の寸法(共振素子の軸方向に沿った幅)を大きくするほど、これら共振周波数の変位量も大きくなる。
つまり、本発明のTMモード共振器では、共振素子を径方向に研磨することによって、共振周波数を高くする調整が可能であるだけでなく、内孔電極の寸法を調整することによって、共振周波数を低くする調整も可能となる。
その結果、本発明のTMモード共振器によれば、従来では共振周波数が規定値より高くなってしまったことにより、不良品となっていたものを、内孔電極の寸法の調整によって共振周波数を規定値とする(良品とする)ことができ、製品製造工程における歩留まりを向上させることもできる。
なお、TMモード共振器には、共振周波数を可変調整するための棒状の導体からなるチューナを挿入するために、共振素子に凹部または内孔が元々形成されているものがあるが、その場合には、そのチューナ挿入用の凹部または内孔に内孔電極を形成すればよい(請求項2)。
次に請求項3に記載の発明は、キャビティを形成し、該キャビティの内壁が導電性を有するケースと、誘電体により柱状に形成され、柱軸方向に位置する二つの素子端面に端面電極を有すると共に、該端面電極が前記ケースの内壁に接触した状態で前記キャビティ内に保持される共振素子とを備え、前記共振素子には、前記素子端面にて開口し、棒状の導体からなるチューナを挿入するための凹部または内孔が形成されたTMモード共振器の特性調整方法であって、前記凹部または内孔の内周壁に、前記端面電極と導通する内孔電極を形成することにより、当該TMモード共振器のスプリアス周波数を上昇させる側に調整することを特徴とする。
本発明の特性調整方法によれば、TM010モード共振周波数の調整に用いる共振素子の外径とは異なる内孔電極の寸法をパラメータとして、スプリアス周波数を上昇させる側に調整することができる。
また、請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の発明と同様のTMモード共振器を前提とするTMモード共振器の特性調整方法であって、前記凹部または内孔の内周壁に、前記端面電極と導通する内孔電極を形成し、該内孔電極の前記柱軸方向に沿った幅によって当該TMモード共振器のスプリアス周波数を調整する第1ステップと、前記共振素子の外周を研磨し、該共振素子の外径によって当該TMモード共振器のTM010モード共振周波数を調整する第2ステップとを有することを特徴とする。
本発明の特性調整方法によれば、スプリアス共振周波数およびTM010モード共振周波数をいずれも所望の値に調整とすることができるため、TMモード共振器の特性を向上させることができる。
TM010モード共振器の構成を示す断面図。 内孔電極の寸法とTM010モード共振周波数およびスプリアス共振周波数との関係をシミュレーションによって求めた結果を示す表およびグラフ。 シミュレーションに用いたTM010モード共振器モデルの構成を示す説明図。
以下に本発明の実施形態を図面と共に説明する。
<全体構成>
図1は、TM010モードで共振するTM010モード共振器1の全体構成を示す図であり、(a)が全体構成を示す断面図、(b)がTM010モード共振器1の主要部となる共振素子2の構成を示す斜視図である。
図1に示すように、TM010モード共振器1は、円筒形状に形成された共振素子2と、共振素子2を収納するための矩形状の空洞(キャビティ)を形成するケース3とからなる。
[ケースの構成]
ケース3は、一端に開口部を有する有底角筒状に形成された容器本体4と、容器本体4の開口部を塞ぐ形状に形成された板状の蓋体5とからなる。
このうち、容器本体4は、全体が金属によって構成されている。また、容器本体4の側壁には、キャビティの中心を挟んで対向する位置のそれぞれに、側壁を貫通する取付孔41,42が形成されている。そして、各取付孔41,42には、高周波信号を伝送する同軸ケーブルを接続するためのコネクタ43,44が取り付けられている。これらコネクタ43,44は、一方が入力用、他方が出力用として使用される。
そして、コネクタ43,44のうち、同軸ケーブルの外部導体に接続される部位は、容器本体4の外壁に接続(接地)されている。また、同軸ケーブルの中心導体に接続される端子43a,44aは、キャビティの中心軸を通る断面内でループを形成するように、コの字状に屈曲させた形状を有すると共に、先端部分が容器本体4の内壁にハンダ付けすることで接地されている。
また、端子43a,44aのうち取付孔41,42内に位置する部位は、端子43a,44aが取付孔41,42内の端面と短絡することがないように絶縁体43b,44bで被覆されている。
更に、容器本体4の開口部の周縁には、蓋体5を固定するためのネジ孔(本体側ネジ孔)4aが複数箇所に形成されている。
一方、蓋体5は、金属板からなり、容器本体4の開口部を塞ぐように配置した時に、容器本体4の本体側ネジ孔4aと対向する部位には、ネジ孔(蓋側ネジ孔)5aが形成されていると共に、蓋体5の中心には、金属製のボルトからなるチューナ7を螺合するためのネジ孔(チューナ用ネジ孔)5bが形成されている。
そして、蓋側ネジ孔5aを挿通させたネジ6の先端部を、本体側ネジ孔4aに螺合させることにより、蓋体5は容器本体4に固定される。
[共振素子の構成]
図1(b)は、共振素子2の全体構成を示す斜視図である。
共振素子2は、セラミック製の誘電体からなり、その両端面には、図1(b)に示すように、銀焼付け等により電極(以下「端面電極」という)21が形成されている。
また、共振素子2には、該共振素子2を貫通し両端面に開口を有する内孔2aが形成されている。この内孔2aは、蓋体5のチューナ用ネジ孔5bに螺合されるチューナ7を挿入可能な大きさの内径を有し、かつ、両端面付近の内周壁には、端面電極21と導通する内孔電極22が形成されている。
なお、共振素子2の全長Lは、ケース3が形成するキャビティの大きさに合わせて形成され、チューナ7の外径、ひいては共振素子2の内孔2aの内径は、チューナ7の可動範囲と共振周波数の調整範囲(チューニングレンジ)の大きさに応じて設計されている。
なお、共振素子2の外径Bや内孔電極22の寸法(全長方向に沿った幅)Aは、チューナ7未挿入時のTM010モード共振周波数およびスプリアス共振周波数が、予め設定された所望の値となるように調整されている。
[組立・調整]
共振素子2として、TM010モード共振周波数が所望値より低くなるような外径寸法を有するものを選択し、スプリアス共振周波数が所望値以上となるように、内孔電極22を形成する。但し、内孔電極22を形成すると、TM010モード共振周波数も低下するため、その低下分を見込んだ外径寸法のものを選択する。
この内孔電極22が形成された共振素子2を、端面電極21が形成された両端が、それぞれ容器本体4の底面内壁と、蓋体5の内壁とに接触し、且つ、チューナ用ネジ孔5bの中心と共振素子2の内孔2aの中心とが一致する(キャビティの中心に位置する)ように配置して、蓋体5を容器本体4に固定する。
この状態で、TM010モード共振器1の共振周波数の測定を行い、測定結果が所望の共振周波数より低い場合、ケース3から共振素子2を取り出し、共振素子2の外周を研磨して、外径寸法を小さくすることで、TM010モード共振周波数が高くなるように調整する。
上述の作業を、測定結果が所望のTM010モード共振周波数となるまで繰り返す。
[動作]
このように構成されたTM010モード共振器1では、コネクタ43を入力用、コネクタ44を出力用として用いた場合、コネクタ43に接続された同軸ケーブルを介して給電が行われると、コネクタ43の端子43aが形成するループ部分に電流が流れることにより、ループを通過する磁力線(磁界)が発生し、更に、その磁力線によって電気力線(電界)が発生する。
TM010モードの共振周波数掃引時、磁力線は、共振素子の外周に沿って円形状に形成され、電気力線は共振素子の内部に直線状に形成される。このとき、この磁力線が、コネクタ44の端子44aが形成するループ部分と結合することにより、コネクタ44からは共振素子2の共振周波数を有した高周波信号が出力される。
また、チューナ7の挿入量を変化させると、挿入量を増やすほど共振周波数は低下する。
[効果]
以上説明したように、TM010モード共振器1では、共振素子2の内孔2aに形成する内孔電極22の寸法を調整することによって、スプリアス共振周波数を調整し、共振素子2の外径寸法を調整することによって、TM010モード共振周波数を調整するようにされている。
このように、TM010モード共振器1によれば、TM010モード共振周波数の調整に用いるものとは異なるパラメータを用いてスプリアス共振周波数を調整しているため、TM010モード共振周波数およびスプリアス共振周波数のいずれも、所望の値に容易に調整することができる。
また、内孔電極22を形成するとTM010モード共振周波数は低下するため、内孔電極22の寸法と、共振素子2の外径寸法とにより、TM010モード共振周波数を上昇側、下降側のいずれにも調整することができる。
その結果、従来では共振周波数が規定値より高くなってしまったことにより、不良品となっていた製品を、内孔電極22にてTM010モード共振周波数を低下させるように調整することによって良品とすることができ、製品製造工程における歩留まりを向上させることができる。
更に、あるTM010モード共振周波数を実現する場合、内孔電極22を形成することによって共振周波数が低下するため、共振素子2の外径をより小さなものとすること、即ち、装置の小型化を実現することもできる。
[実験]
図2は、シミュレーションによって、内孔電極22の寸法Aと、TM010モード共振周波数およびスプリアス共振周波数との関係を求めた結果であり、(a)が表、(b)がグラフである。
なお、シミュレーションには、図3に示すような、TM010モード共振器モデルを作成し、共振器両端面から、内孔内部へ向かって伸びる内孔円周状に形成された電極の寸法Aを変化させ、TM010モード共振周波数が一定値になるように外径Bを調整して、スプリアス共振周波数を確認した。但し図3において、(a)は斜視図、(b)は断面図である。
但し、共振素子2の内径Cは4mm、共振素子2の全長Lは39mm、キャビティサイズは、30mm×30mm×39mmである。
図2の表およびグラフに示されているように、内孔電極22の寸法Aおよび共振素子2の外径Bの二つのパラメータを変化させることにより、所望のTM010モード共振周波数を確保した上で、スプリアス共振周波数を高周波側へ移動させることが可能であることがわかる。
[他の実施形態]
以上本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、様々な態様にて実施することが可能である。
上記実施形態では、共振素子2の外形を円柱状としたが、これに限るものではなく多角柱形状であってもよい。また、上記実施形態では、キャビティの形状を直方体状としたが、これに限るものではなく円柱状であってもよい。
上記実施形態では、共振素子2に一方の端面から他方の端面に貫通する内孔2aが形成されているが、この内孔は必ずしも貫通している必要はなく、端面に開口を有する凹部であってもよい。
1…TM010モード共振器 2…共振素子 2a…内孔 3…ケース 4…容器本体 4a…本体側ネジ孔 5…蓋体 5a…蓋側ネジ孔 5b…チューナ用ネジ孔 6…ネジ 7…チューナ 21…端面電極 22…内孔電極 41…取付孔 42…取付孔 43…コネクタ 43a…端子 43b…絶縁体 44…コネクタ 44a…端子 44b…絶縁体

Claims (4)

  1. キャビティを形成し、該キャビティの内壁が導電性を有するケースと、
    誘電体により柱状に形成され、柱軸方向に位置する二つの素子端面に端面電極を有すると共に、該端面電極が前記ケースの内壁に接触した状態で前記キャビティ内に保持される共振素子と、
    を備え、
    前記共振素子には、前記素子端面にて開口する凹部または内孔が形成され、且つ、該凹部または内孔の内周壁に、前記端面電極と導通する内孔電極が形成されていることを特徴とするTMモード共振器。
  2. 前記凹部または内孔は、棒状の導体からなるチューナを挿入するために設けられたものであることを特徴とする請求項1に記載のTMモード共振器。
  3. キャビティを形成し、該キャビティの内壁が導電性を有するケースと、誘電体により柱状に形成され、柱軸方向に位置する二つの素子端面に端面電極を有すると共に、該端面電極が前記ケースの内壁に接触した状態で前記キャビティ内に保持される共振素子とを備え、前記共振素子には、前記素子端面にて開口し、棒状の導体からなるチューナを挿入するための凹部または内孔が形成されたTMモード共振器の特性調整方法であって、
    前記凹部または内孔の内周壁に、前記端面電極と導通する内孔電極を形成することにより、当該TMモード共振器のスプリアス共振周波数を上昇させる側に調整することを特徴とするTMモード共振器の特性調整方法。
  4. キャビティを形成し、該キャビティの内壁が導電性を有するケースと、誘電体により柱状に形成され、柱軸方向に位置する二つの素子端面に端面電極を有すると共に、該端面電極が前記ケースの内壁に接触した状態で前記キャビティ内に保持される共振素子とを備え、前記共振素子には、前記素子端面にて開口し、棒状の導体からなるチューナを挿入するための凹部または内孔が形成されたTMモード共振器の特性調整方法であって、
    前記凹部または内孔の内周壁に、前記端面電極と導通する内孔電極を形成し、該内孔電極の前記柱軸方向に沿った幅によって当該TMモード共振器のスプリアス共振周波数を調整する第1ステップと、
    前記共振素子の外周を研磨し、該共振素子の外径によって当該TMモード共振器の共振周波数を調整する第2ステップと、
    を有することを特徴とするTMモード共振器の特性調整方法。
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