JP2013004181A - リチウムイオン二次電池用正極活物質およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】典型元素を構成元素とし、安価であり、かつ、熱安定性に優れ、しかも高い電子伝導性を有する正極活物質を提供すること。
【解決手段】酸化リチウム、酸化鉄、および無水ケイ酸から構成され、組成がLixFeSiO4(0.4≦x≦1.4)である複合酸化物からなることを特徴とするリチウムイオン二次電池用正極活物質。
【選択図】 図4
【解決手段】酸化リチウム、酸化鉄、および無水ケイ酸から構成され、組成がLixFeSiO4(0.4≦x≦1.4)である複合酸化物からなることを特徴とするリチウムイオン二次電池用正極活物質。
【選択図】 図4
Description
本発明は、リチウムイオン二次電池用正極活物質およびその製造方法に関する。詳細には、酸化リチウム、酸化鉄、無水ケイ酸から構成される複合酸化物からなる正極活物質を提供する。
リチウムイオン二次電池は、軽量で高エネルギー密度であることから、小型電子機器のみならず、ハイブリッド自動車、電気自動車等の電力貯蔵デバイスとして注目されている。リチウムイオン二次電池の構成部材のうち、正極活物質については、種々の遷移金属酸化物が用いられている。中でも、コバルト酸リチウムやマンガン酸リチウム等の層状酸化物やスピネル構造酸化物は、電子伝導性に優れており10−6Scm−1以上の伝導度を有する実用的な材料である。しかしながら、このように電子伝導性に富む材料ほど、遷移金属酸化物ユニットとリチウム酸化物ユニット間の結合が弱く、そのため、不可逆な劣化が起こり易いという問題がある。
たとえば、コバルト酸リチウムやマンガン酸リチウムは熱的安定性が悪く、そのため、高温にさらすと結晶構造が破壊され、酸素を放出してしまう。また、マンガン酸リチウムにおいては、充電状態によって結晶構造が変化するため、充電−放電のサイクルを繰り返すことで、マンガンサイトとリチウムサイトの置換が発生してしまう。そのため、コバルト酸リチウムやマンガン酸リチウムは、これらの不可逆な劣化により十分な安定性が保持できないこと、さらには、コバルトやマンガン等の希少で環境負荷の大きい元素を用いるものであること等から、高い安全性を必要とする用途、特に、電気自動車用のリチウムイオン二次電池の課題となっている。
これに対し、近年、リン酸塩、ケイ酸塩等の典型元素酸化物から構成される新規な正極活物質の検討が行なわれている。中でも、オリビン構造からなるリン酸鉄リチウム(LiFePO4)は、コバルト酸リチウムや、マンガン酸リチウムに比べると電気伝導度が室温で約10−8Scm−1であり、電子伝導性に乏しいものの、導電性炭素をその表面にコートすることにより、起電力3.4V、理論容量170mAh/gの充放電特性を示すものである(たとえば、特許文献1参照)。
このようなリン酸鉄リチウムは、結晶構造中に典型元素であるリン酸を有することにより、化学結合が強く、熱的安定性に優れるとともに、高いサイクル特性が得られている。また、リン酸鉄リチウムは、豊富な資源である鉄を原料とすることから原材料コストの低減にも好適である。しかしながら、鉄の価数状態が+2であること、さらには、電気伝導性が著しく低いことから、微粒化や炭素被覆などの各種処理を必要とすることから、製造プロセスが煩雑となるという課題を有する。
また、ケイ酸鉄リチウム(Li2FeSiO4)は、上述したリン酸鉄リチウムと同様に、微粒化および炭素被覆を行なうことにより、充放電特性を発現する正極材料である(たとえば、非特許文献1参照)。ケイ酸鉄リチウムは、オリビン構造からなるリン酸鉄リチウムと比べて式量中に、2つのリチウムイオンを有し、2つのリチウムイオンを充放電反応に用いることができるため、理論容量の増大に効果的である。しかしその一方で、不可逆容量が大きいことに加え、電気伝導度が10−11Scm−1であり、リン酸鉄リチウムよりもさらに電気伝導性に劣ることから、高速充放電を必要とする用途に用いることができず、実用化には課題がある。
以上のように、現在、リチウムイオン二次電池の正極活物質は、電子伝導性に優れているものの、熱的および化学的に安定性の劣るコバルト酸リチウムやマンガン酸リチウムに代表される材料と、電子伝導性は絶縁体に近いものであるものの、原材料資源が豊富であり、かつ、熱化学安定性に優れるリン酸、ケイ酸塩材料とに大別され、電子伝導性に優れ、しかも、安価であり、かつ、典型元素を構成元素とする熱安定性に優れた両者の優れた点を併せ持つような正極活物質材料は見出されていないのが現状である。
A. Nyten et al., Electrochem. Commun, 7, 156 (2005)
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、典型元素を構成元素とし、安価であり、かつ、熱安定性に優れ、しかも高い電子伝導性を有する正極活物質およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者等は鋭意検討した結果、酸化リチウム、酸化鉄、および無水ケイ酸から構成され、組成がLixFeSiO4(0.4≦x≦1.4)である複合酸化物を正極活物質として用いることにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明として提案するものである。
すなわち、本発明は、酸化リチウム、酸化鉄、および無水ケイ酸から構成され、組成がLixFeSiO4(0.4≦x≦1.4)である複合酸化物からなることを特徴とするリチウムイオン二次電池用正極活物質に関する。
第二に、本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質は、酸化リチウム、酸化鉄、および無水ケイ酸に加えて、酸化バナジウム、酸化マンガン、酸化コバルト、酸化ニッケル、酸化ニオブ、および酸化銅から選ばれる少なくとも1種類を含有し、組成がLixFeyM1−ySiO4(0.4≦x≦1.4、0<y<1、Mは、バナジウム、マンガン、コバルト、ニッケル、ニオブ、および銅から選ばれる少なくとも1種類)である複合酸化物からなることを特徴とする。
第三に、本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質は、前記複合酸化物が、ガラス体、ガラスとスピネル構造とを有する酸化物結晶の複合体、またはスピネル構造を有する酸化物結晶のうちいずれかであることを特徴とする。
第四に、本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質は、前記複合酸化物が、0.25mm以下の厚さの薄片状に成形されてなることを特徴とする。
第五に、本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質は、前記複合酸化物が、粒子径80nm〜100μmの範囲にあり、かつ、前記複合酸化物に、導電助剤を0〜10重量%の割合で添加した複合粉末から構成されることを特徴とする。
第六に、本発明は、Li2O、Li2CO3、LiOHから選択される少なくとも1種のリチウム原料と、FeO、Fe3O4、Fe2O3から選択される少なくとも1種の鉄原料と、無水ケイ酸(SiO2)とからなる原料混合物を熱処理することより、組成がLixFeSiO4(0.4≦x≦1.4)である複合酸化物を得る工程を有することを特徴とするリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法に関する。
第七に、本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法は、Li2O、Li2CO3、LiOHから選択される少なくとも1種のリチウム原料と、FeO、Fe3O4、Fe2O3から選択される少なくとも1種の鉄原料と、無水ケイ酸(SiO2)とに加えて、酸化バナジウム(VO、VO2、V2O3,V2O5から選択される少なくとも1種)、酸化マンガン(MnO2、Mn3O4、MnOから選択される少なくとも1種)、酸化コバルト(Co3O4、CoO、Co2O3から選択される少なくとも1種)、酸化ニッケル(Ni、Ni2O3から選択される少なくとも1種)、酸化ニオブ(Nb2O5)、および酸化銅(CuO)から選ばれる少なくとも1種類とからなる原料混合物を熱処理することより、組成がLixFeyM1−ySiO4(0.4≦x≦1.4、0<y<1、Mは、バナジウム、マンガン、コバルト、ニッケル、ニオブ、および銅から選ばれる少なくとも1種類)である複合酸化物を得る工程を有することを特徴とする。
第八に、本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法は、前記複合酸化物を得る工程が、前記原料混合物を加熱することで融液とし、得られた融液を冷却することで、前記複合酸化物を、ガラス体またはガラス体とスピネル構造とを有する複合体として得る工程、または、前記原料混合物を加熱することで融液とし、得られた融液を緩やかに冷却することで、結晶化を促進し、前記複合酸化物を、スピネル構造を有する酸化物結晶として得る工程であることを特徴とする。
第九に、本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法は、前記ガラス体または前記ガラス体とスピネル構造とを有する複合体を、ガラス転移温度以上の温度で加熱することで結晶化することにより、前記複合酸化物を、スピネル構造を有する酸化物結晶として得る工程をさらに有することを特徴とする。
第十に、本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法は、前記ガラス体または前記ガラス体とスピネル構造とを有する複合体に、還元剤を添加し、不活性雰囲気下または還元性雰囲気下で、ガラス転移温度以上の温度にて加熱することで、遷移金属の価数制御をしながら結晶化することにより、前記複合酸化物を、スピネル構造を有する酸化物結晶として得る工程をさらに有することを特徴とする。
第十一に、本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法は、前記複合酸化物を、0.25mm以下の厚さの薄片状に成形する工程をさらに有することを特徴とする。
本発明によれば、典型元素を構成元素とし、安価であり、かつ、熱安定性に優れ、しかも高い電子伝導性を有する正極活物質およびその製造方法を提供することができる。
本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質は、酸化リチウム、酸化鉄、および無水ケイ酸から構成され、組成がLixFeSiO4(0.4≦x≦1.4)である複合酸化物からなることを特徴とする。
鉄と無水ケイ酸とから構成されるスピネル結晶としてFe2SiO4が報告されている。これは正スピネル型の結晶構造を有し、4面体サイトにFe3+とSi4+、そしてFe3+とFe2+から構成される6面体サイトから構成される。本発明で得られるLi2O−Fe2O3−SiO2系からなるスピネル型酸化物結晶(LixFeSiO4)は、このFe2SiO4に類似した構造と考えられる。正スピネル結晶にリチウムイオンを添加した場合、一般には、リチウム酸化物は6面体サイトに配置するため6配位の鉄サイトを置換し、電荷中性のため原子空孔を形成していると考えられる。リチウム、鉄、ケイ酸の組成比は、スピネル構造を保持できる組成範囲であれば特に限定されないが、鉄とケイ素の比は1近傍であることが好ましく、ケイ素が豊富になると伝導性が乏しくなる。また、リチウムの含有量は、鉄の価数状態に応じて変化するが、組成LixFeSiO4において、xの範囲は0.4〜1.4であり、好ましくは0.6〜1.2、より好ましくは0.9〜1.1、最も好ましくはx=1である。xが1.4を超えると、スピネルとは異なるLi2SiO3相が形成し、正極活物質としての性能が極端に低下するおそれがある。一方、xが0.4を下回ると、正極活物質としての容量が低くなりすぎてしまい、容量を向上させるためには、電池の製造段階でリチウムを電気化学的に挿入してから電池を製造することが必要となり、製造工程が煩雑になってしまう。
酸化リチウムは、リチウムイオン二次電池における伝導イオンとして必須元素であり、揮発の影響を受けにくい原料を選択することが望ましい。酸化リチウムの原料としては、炭酸リチウム(Li2CO3)、酸化リチウム(Li2O)などがあげられる。鉄の原料はFeO、Fe3O4、Fe2O3等の鉄酸化物の他に、シュウ酸鉄等の有機金属、硫酸鉄等があげられる。また、加熱中にリチウムの揮発を抑制するために、酸化リチウムの原料および無水ケイ酸の原料として、リチウムとケイ酸の複合酸化物を用いてもよい。
本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質は、酸化リチウム、酸化鉄、および無水ケイ酸に加えて、酸化バナジウム、酸化マンガン、酸化コバルト、酸化ニッケル、酸化ニオブ、および酸化銅から選ばれる少なくとも1種類を含有し、組成がLixFeyM1−ySiO4(0.4≦x≦1.4、0<y<1、Mは、バナジウム、マンガン、コバルト、ニッケル、ニオブ、および銅から選ばれる少なくとも1種類)である複合酸化物からなるものであってもよい。
4.1Vの起電力を発現する正極活物質として知られるマンガン酸リチウム(LiMn2O4)は、マンガンを一部他の遷移金属酸化物と置換することが可能であり、置換により5V級の高プラトー電位が発生する。これに鑑みて本発明でも、スピネル構造を保持できる組成の範囲内において、鉄の一部を他の遷移金属酸化物で置換することで、酸化還元電位を調整することが可能である。このような遷移金属酸化物としては、たとえば、酸化バナジウム、酸化マンガン、酸化コバルト、酸化ニッケル、酸化ニオブ、および酸化銅から選ばれる少なくとも1種類が挙げられる。特に、これらのなかでも、酸化バナジウム、酸化マンガン、酸化コバルト、酸化ニッケル等で置き換えることで高電位化が期待できる。また、リチウムイオンの占有するサイトは、4配位サイト、6配位サイトのいずれも考えられるが、遷移金属Mの置換量に応じて占有するサイトの割合が変化するものと考えられる。組成LixFeyM1−ySiO4において、xの好ましい範囲は上記と同様とすることができ、また、yの範囲は0<y<1の間で任意に設定することができる。
また、本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質においては、組成LixFeSiO4(または、LixFeyM1−ySiO4)で表される複合酸化物が、ガラス体、ガラスとスピネル構造とを有する酸化物結晶の複合体、またはスピネル構造を有する酸化物結晶のうちいずれかであることが好ましい。
原料粉末を溶融し、ガラス状態とすることにより、通常の固相反応と異なり、短時間できわめて均一な組成分布を有する酸化物を作製することが可能で、電気化学特性を左右する組成の均一性の確保に好適である。また、導電性を飛躍的に向上させるために、組成LixFeSiO4(または、LixFeyM1−ySiO4)で表される複合酸化物を、スピネル構造を有する酸化物結晶とすることが好ましい。あるいは、完全に結晶状態とすることが好ましい。特に、本発明においては、組成LixFeSiO4(または、LixFeyM1−ySiO4)で表される複合酸化物を、原料粉末を溶融し、ガラス状態とした後に、得られたガラス体をガラス転移温度以上の温度で加熱して、スピネル構造を有する酸化物結晶としたものとすることがより好ましい。
なお、本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質においては、組成LixFeSiO4(または、LixFeyM1−ySiO4)で表される複合酸化物の形状としては特に限定されないが、厚さ0.25mm以下に成形された薄片状ものであることが好ましい。ガラス物質を結晶化させて作製した試料は内部に空隙を発生せず、単結晶同様に高い密度を発現する。このことは導電率の向上に有効であり、本発明により得られる複合酸化物の示す高い導電率(たとえば、室温で10−4Scm−1程度)に鑑みると、その厚さを、0.25mm以下の厚みとすることが好ましい。特に、本発明によれば、複合酸化物の厚みを0.25mm以下とすることにより、高速な充放電が可能となる。
あるいは、組成LixFeSiO4(または、LixFeyM1−ySiO4)で表される複合酸化物を、粒子径80〜100nmの粉末形状としてもよい。この場合には、粉末形状の複合酸化物に、導電助剤を0〜10重量%の割合で添加した複合粉末とすることが好ましい。
粒子径を小さくすることにより、リチウムイオンの拡散長を短くすることができる。しかしながら、あまり微粒化しすぎると、タップ密度が低下し、電池を組み立てる工程で技術的な問題を生じる。また、導電性炭素等の導電助剤を添加することで、材料内部の電子伝導性を飛躍的に向上させることができる。なお、導電助剤の添加量を多くしすぎると、複合酸化物の電荷移動に寄与しない導電助剤の割合が多くなってしまい、さらには、成形性も著しく低下してしまうおそれがあるため、導電助剤の配合量は0〜10重量%の割合とすることが好ましい。
本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法は、Li2O、Li2CO3、LiOHから選択される少なくとも1種のリチウム原料と、FeO、Fe3O4、Fe2O3から選択される少なくとも1種の鉄原料と、無水ケイ酸(SiO2)とからなる原料混合物を熱処理することより、組成がLixFeSiO4(0.4≦x≦1.4)である複合酸化物を得る工程を有することを特徴とする。
また、本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法においては、Li2O、Li2CO3、LiOHから選択される少なくとも1種のリチウム原料と、FeO、Fe3O4、Fe2O3から選択される少なくとも1種の鉄原料と、無水ケイ酸(SiO2)とに加えて、酸化バナジウム(VO、VO2、V2O3,V2O5から選択される少なくとも1種)、酸化マンガン(MnO2、Mn3O4、MnOから選択される少なくとも1種)、酸化コバルト(Co3O4、CoO、Co2O3から選択される少なくとも1種)、酸化ニッケル(Ni、Ni2O3から選択される少なくとも1種)、酸化ニオブ(Nb2O5)、および酸化銅(CuO)から選ばれる少なくとも1種類とからなる原料混合物を熱処理することより、組成がLixFeyM1−ySiO4(0.4≦x≦1.4、0<y<1、Mは、バナジウム、マンガン、コバルト、ニッケル、ニオブ、および銅から選ばれる少なくとも1種類)である複合酸化物を得るような構成としてもよい。
また、本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法においては、上述した組成LixFeSiO4(または、LixFeyM1−ySiO4)で表される複合酸化物を得る工程が、上述した原料混合物を加熱することで融液とし、得られた融液を冷却することで、組成LixFeSiO4(または、LixFeyM1−ySiO4)で表される複合酸化物を、ガラス体またはガラス体とスピネル構造とを有する複合体として得る工程、または、上述した原料混合物を加熱することで融液とし、得られた融液を緩やかに冷却することで、結晶化を促進し、組成LixFeSiO4(または、LixFeyM1−ySiO4)で表される複合酸化物を、スピネル構造を有する酸化物結晶として得る工程とすることが好ましい。
上述した原料混合物を溶融することは、短時間において均一な組成分布を有する複合酸化物の合成に効果適である。スピネルの基本組成であるLi1.0FeSiO4の組成では、概ね1400℃で均一な融液を形成し、この融液を水中、あるいは金属板等へ流し出すことで溶融冷却固化体を合成することができる。組成LixFeSiO4(または、LixFeyM1−ySiO4)において、xの値が1.0よりも大きくなるにしたがい、液相温度は1400℃よりも低温側に変化し、逆に、xの値が1.0も小さくなるにしたがい、液相温度は1400℃よりも高温側へ上昇する傾向にある。そのため、融液を得る際の加熱温度は、xの値に応じて適宜設定すればよい。
なお、融液を冷却する際には、融液を熱伝導の優れた金属ドラム内を通過させるか、あるいは、融液を2つの金属板で挟むことで冷却速度を上昇させることができる。これにより融液の固化体をガラス状態にすることが可能となり、固化体の組成均一性は更に向上する。固化体中のガラスの存在は、スピネル化合物のように高電子電導パスが形成されていないため電子伝導性には乏しいが、スピネル結晶に比べて疎な構造を有することからイオン伝導性向上に効果的である。
また、本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法において、上述した方法にしたがい、組成LixFeSiO4(または、LixFeyM1−ySiO4)で表される複合酸化物を、ガラス体またはガラス体とスピネル構造とを有する複合体として得た場合には、得られたガラス体またはガラス体とスピネル構造とを有する複合体を、ガラス転移温度以上の温度で加熱することで結晶化することにより、組成LixFeSiO4(または、LixFeyM1−ySiO4)で表される複合酸化物を、スピネル構造を有する酸化物結晶とすることが好ましい。
ガラス状態の物質をガラス転移温度以上に加熱すると、スピネル構造のLixFeSiO4(または、LixFeyM1−ySiO4)を結晶化させることができる。特に、結晶化の過程においてガラス転移温度に近い比較的低温で長時間熱処理すると、結晶粒径の小さな結晶化ガラス(ガラスと結晶の複合体)を形成することができる。あるいは、低温で長時間熱処理を施した後に、液相温度より低温の任意の温度にて加熱することで結晶の体積分率を向上させることが可能となる。なお、ガラスの結晶化過程では、このように粒子のサイズおよび体積分率を、熱処理条件のみを適宜調整することにより自在に制御可能である。最適な結晶の体積分率は、全体積中の30%以上であることが好ましく、より好ましくは50%以上である。特に、電子伝導性に優れたスピネル結晶が連結する体積分率は、パーコレーションの理論的に3割を超えた組成から急激に増大するため、結晶の体積分率は、全体積中の30%以上とすることが好ましい。
あるいは、上述した方法にしたがい、組成LixFeSiO4(または、LixFeyM1−ySiO4)で表される複合酸化物を、ガラス体またはガラス体とスピネル構造とを有する複合体として得た場合において、得られたガラス体またはガラス体とスピネル構造とを有する複合体に、還元剤を添加し、不活性雰囲気下または還元性雰囲気下で、ガラス転移温度以上の温度にて加熱することで、遷移金属の価数制御をしながら結晶化することにより、組成LixFeSiO4(または、LixFeyM1−ySiO4)で表される複合酸化物を、スピネル構造を有する酸化物結晶としてもよい。
スピネル化合物中における、遷移金属の価数状態は、電池特性に影響を与えるものである。そのため、遷移金属酸化物の価数状態を制御するために、還元雰囲気下、不活性雰囲気下に加えて、還元剤を添加することにより、還元熱処理をすることが効果的である。Fe2SiO4においては、鉄の価数は+2、+3の存在が考えられるが、一般に+3価の鉄イオンは4配位化する傾向にあり、+2価の鉄は6配位価する傾向を有する。またリチウムイオンは4配位サイトに占有した方が脱挿入しやすいことが明らかとなっている。他の遷移金属においても一般には低価数の場合において高い配位数を有することから、このような還元熱処理により、6配位サイトへの遷移金属イオンの優先的な配置が促進され、リチウムイオンの4配位化により高いイオン電導性が期待できる。
なお、還元雰囲気としては特に限定されないが、水素や一酸化炭素を含有する不活性雰囲気が好ましい。また、還元剤としては、その種類は限定される物ではないがカルボン酸、セルロース、界面活性剤等が好ましい。還元剤の添加量としては含有している遷移金属イオンと等モル以上が好ましく、モル比で2倍〜50倍が好適である。還元剤の添加量が多すぎると、電池容量が低下するおそれがある。
また、本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法において、組成LixFeSiO4(または、LixFeyM1−ySiO4)で表される複合酸化物を、0.25mm以下の厚さの薄片状に成形する工程をさらに有することが好ましい。
一般的なリチウムイオン二次電池用正極は、正極活物質粉体に導電剤としてケッチェンブラック、バインダーを混ぜて集電極上に塗布するのが一般的であるが、本発明で得られるスピネル型正極活物質は電子電導性に優れることから、厚さ0.25mm以下の固体状電極として用いることができる。なお、固体状電極とする場合には、上述した方法にしたがって得られたガラス体、ガラス体とスピネル構造とを有する複合体、またはスピネル構造を有する酸化物結晶について、切削、研磨加工を施して薄板状に成形すればよい。
あるいは、本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法においては、組成LixFeSiO4(または、LixFeyM1−ySiO4)で表される複合酸化物を、一般的なリチウムイオン二次電池用正極と同様に、粒子径80〜100nmの粉末形状とし、導電助剤を0〜10重量%の割合で添加した複合粉末としてもよい。
本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質は、酸化リチウム、酸化鉄、および無水ケイ酸等の典型元素を構成元素とするものであるため、安価であり、しかも、本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質は、組成がLixFeSiO4(0.4≦x≦1.4)であり、スピネル構造を有するものであるため、熱安定性に優れ、かつ、高い導電率を有するものである。加えて、本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質は、複雑な製造プロセスを経ることなく製造可能なものである。そのため、本発明のリチウムイオン二次電池用正極活物質は、電気自動車やハイブリッド自動車等への電池材料として好適に用いることができる。
以下、本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明はかかる実施例に限定されるものではない。
(実施例1:複合酸化物の融液の調製)
組成LixFeSiO4(x=0.4〜2.0)となるように、炭酸リチウム(Li2CO3)、酸化第二鉄(Fe2O3)、無水ケイ酸(SiO2)を所定の割合で混合し、得られた混合物を、溶融後の固化体の重量が10gとなるように秤量し、秤量した混合物を、大気中、1400〜1600℃の電気炉中で10分間溶融させた。そして、得られた融液を5リットルの水(温度20℃)の中に投入し、冷却することで固化体を製造した。本実施例においては、この方法により、組成LixFeSiO4において、x=0.4〜2.0の範囲で融液が形成されることを確認した。
組成LixFeSiO4(x=0.4〜2.0)となるように、炭酸リチウム(Li2CO3)、酸化第二鉄(Fe2O3)、無水ケイ酸(SiO2)を所定の割合で混合し、得られた混合物を、溶融後の固化体の重量が10gとなるように秤量し、秤量した混合物を、大気中、1400〜1600℃の電気炉中で10分間溶融させた。そして、得られた融液を5リットルの水(温度20℃)の中に投入し、冷却することで固化体を製造した。本実施例においては、この方法により、組成LixFeSiO4において、x=0.4〜2.0の範囲で融液が形成されることを確認した。
(実施例2:溶融法によるガラスの作製)
組成LixFeSiO4(x=0.4〜1.4)となるように、炭酸リチウム(Li2CO3)、酸化第二鉄(Fe2O3)、無水ケイ酸(SiO2)を所定の割合で混合し、得られた混合物を、溶融後の固化体の重量が10gとなるように秤量し、秤量した混合物を、大気中、1400〜1600℃の電気炉中で10分間溶融させた。次いで、得られた融液を鉄板上に流し出し、もう一方から鉄板で挟むことで急冷し、ガラス体およびガラス−スピネル構造結晶混合体を得た。なお、示差熱分析の結果、組成LixFeSiO4において、x=0.4〜1.4の範囲で、ガラス転移温度および結晶化温度の存在が確認された。
組成LixFeSiO4(x=0.4〜1.4)となるように、炭酸リチウム(Li2CO3)、酸化第二鉄(Fe2O3)、無水ケイ酸(SiO2)を所定の割合で混合し、得られた混合物を、溶融後の固化体の重量が10gとなるように秤量し、秤量した混合物を、大気中、1400〜1600℃の電気炉中で10分間溶融させた。次いで、得られた融液を鉄板上に流し出し、もう一方から鉄板で挟むことで急冷し、ガラス体およびガラス−スピネル構造結晶混合体を得た。なお、示差熱分析の結果、組成LixFeSiO4において、x=0.4〜1.4の範囲で、ガラス転移温度および結晶化温度の存在が確認された。
(実施例3:ガラスの結晶化)
実施例2で得られたガラス体およびガラス−スピネル構造結晶混合体のうち、組成Li1.0FeSiO4とした試料について、微粉砕することで粒径20μmの粒子状とした後に、得られたガラス体10mgについて示差熱分析を行ったところ、図1に示すように490℃にガラス転移温度を、また、560℃に結晶化ピークをそれぞれ確認した。また、実施例2で得られた他のガラス体およびガラス−スピネル構造結晶混合体(すなわち、x=1.0以外のもの)全てについて、同様にして示差熱分析を行ったところ、同様に、ガラス転移温度および結晶化温度の存在を確認した。そして、実施例3では、図1に示す示差熱分析の結果に基づいて、組成Li1.0FeSiO4とした試料について、微粉砕することで粒径20μmの粒子状とした後、大気中、3時間、560℃で加熱することで、結晶化ガラス粉体を得た。
実施例2で得られたガラス体およびガラス−スピネル構造結晶混合体のうち、組成Li1.0FeSiO4とした試料について、微粉砕することで粒径20μmの粒子状とした後に、得られたガラス体10mgについて示差熱分析を行ったところ、図1に示すように490℃にガラス転移温度を、また、560℃に結晶化ピークをそれぞれ確認した。また、実施例2で得られた他のガラス体およびガラス−スピネル構造結晶混合体(すなわち、x=1.0以外のもの)全てについて、同様にして示差熱分析を行ったところ、同様に、ガラス転移温度および結晶化温度の存在を確認した。そして、実施例3では、図1に示す示差熱分析の結果に基づいて、組成Li1.0FeSiO4とした試料について、微粉砕することで粒径20μmの粒子状とした後、大気中、3時間、560℃で加熱することで、結晶化ガラス粉体を得た。
(実施例4:結晶相の同定)
実施例3で作製した組成Li1.0FeSiO4の結晶化ガラス粉体について、粉末X線回折測定を行ったところ、図2に示す結晶質特有の複数の回折が確認された。Li1.0FeSiO4の組成において検出されたピークの回折角2θは、図2に示すように、30.14°、35.68°、43.50°、53.54°、57.18°、63.20°であり、同定の結果、スピネル型Fe2SiO4結晶と類似の構造(空間群Fd3m)であることが明らかとなった。
実施例3で作製した組成Li1.0FeSiO4の結晶化ガラス粉体について、粉末X線回折測定を行ったところ、図2に示す結晶質特有の複数の回折が確認された。Li1.0FeSiO4の組成において検出されたピークの回折角2θは、図2に示すように、30.14°、35.68°、43.50°、53.54°、57.18°、63.20°であり、同定の結果、スピネル型Fe2SiO4結晶と類似の構造(空間群Fd3m)であることが明らかとなった。
(実施例5:電気伝導度測定)
実施例3で作製した組成Li1.0FeSiO4の結晶化ガラス粉体、および結晶化を行なう前の組成Li1.0FeSiO4のガラス体(実施例2で得られたガラス体)について、電気伝導性を交流インピーダンス法により測定した。具体的には、結晶化ガラス粉体、およびガラス体を、一軸加圧成型にて直径13mmφ、厚さ1mmにペレット成型後、6mmφの金電極をスパッタリングにより両面に形成し、周波数5〜1MHzの複素インピーダンスを測定した。なお、測定温度は室温〜200℃とした。その結果、結晶化を行なう前のガラス体は、室温における導電率が約10−10Scm−1であったのに対し、560℃で結晶化した結晶化ガラス粉体は、図3に示すように、室温における導電率が10−4〜10−3Scm−1と高くなる結果となった。スピネル結晶が形成されたことで、試料中のFe2+、Fe3+間のホッピング電導がしやすくなり、その結果、飛躍的に伝導度が向上したことによると考えられる。また、図3に示すように、x=1.2とした組成Li1.2FeSiO4の結晶化ガラス粉体では、室温における導電率は10−6Scm−1であった。x=1.2とした場合には、x=1.0とした場合と比較して、スピネル構造を維持しているものの、鉄サイトに過剰のリチウムイオンが置換されるため、これにより、ホッピング電導が阻害されてしまうことによると考えられる。なお、x=1.2とした組成Li1.2FeSiO4の結晶化ガラス粉体は、実施例2で得られたガラス体を、大気中、3時間、500℃で加熱することより得た。
実施例3で作製した組成Li1.0FeSiO4の結晶化ガラス粉体、および結晶化を行なう前の組成Li1.0FeSiO4のガラス体(実施例2で得られたガラス体)について、電気伝導性を交流インピーダンス法により測定した。具体的には、結晶化ガラス粉体、およびガラス体を、一軸加圧成型にて直径13mmφ、厚さ1mmにペレット成型後、6mmφの金電極をスパッタリングにより両面に形成し、周波数5〜1MHzの複素インピーダンスを測定した。なお、測定温度は室温〜200℃とした。その結果、結晶化を行なう前のガラス体は、室温における導電率が約10−10Scm−1であったのに対し、560℃で結晶化した結晶化ガラス粉体は、図3に示すように、室温における導電率が10−4〜10−3Scm−1と高くなる結果となった。スピネル結晶が形成されたことで、試料中のFe2+、Fe3+間のホッピング電導がしやすくなり、その結果、飛躍的に伝導度が向上したことによると考えられる。また、図3に示すように、x=1.2とした組成Li1.2FeSiO4の結晶化ガラス粉体では、室温における導電率は10−6Scm−1であった。x=1.2とした場合には、x=1.0とした場合と比較して、スピネル構造を維持しているものの、鉄サイトに過剰のリチウムイオンが置換されるため、これにより、ホッピング電導が阻害されてしまうことによると考えられる。なお、x=1.2とした組成Li1.2FeSiO4の結晶化ガラス粉体は、実施例2で得られたガラス体を、大気中、3時間、500℃で加熱することより得た。
(実施例6:正極活物質としての評価)
実施例3で得られた組成Li1.0FeSiO4(分子量154.87g/mol)の結晶化ガラス粉体について、充放電特性の評価を行った。具体的には、結晶化ガラス粉体0.2489gに、ケッチェンブラック0.029gおよびポリフッ化ビニリデン0.024gを添加し、乳鉢で混合し、次いで、溶媒として、N−メチル−2−ピロリジノンを加えることで、スラリーを調製した。そして、得られたスラリーをアルミ箔上に塗布し、溶媒を乾燥し、得られた電極を15mmφにくり抜き、次いで、600kgfの圧力で圧縮することで正極合剤(容量841μAh)を得た。次いで、得られた正極合剤と、電解液(LiPF6のEC:DEC溶液(1mol/L))と、負極としてのリチウム箔を用いて試験電池を作製した。そして、得られた試験電池について、10μA/秒の定電流で充電および放電を行なった結果を図4に示す。図4に示すように、充電時には電圧2.1V近傍に鉄2価と3価との間の平衡によるショルダーが、4.1V近傍に、鉄3価と4価との間の平衡によるショルダーが、それぞれ確認された。また、1.0〜4.6Vの間での初回放電容量は105mAh/gであり、組成中の全リチウムのうち約63%が電池反応に関与していると考えられる。
実施例3で得られた組成Li1.0FeSiO4(分子量154.87g/mol)の結晶化ガラス粉体について、充放電特性の評価を行った。具体的には、結晶化ガラス粉体0.2489gに、ケッチェンブラック0.029gおよびポリフッ化ビニリデン0.024gを添加し、乳鉢で混合し、次いで、溶媒として、N−メチル−2−ピロリジノンを加えることで、スラリーを調製した。そして、得られたスラリーをアルミ箔上に塗布し、溶媒を乾燥し、得られた電極を15mmφにくり抜き、次いで、600kgfの圧力で圧縮することで正極合剤(容量841μAh)を得た。次いで、得られた正極合剤と、電解液(LiPF6のEC:DEC溶液(1mol/L))と、負極としてのリチウム箔を用いて試験電池を作製した。そして、得られた試験電池について、10μA/秒の定電流で充電および放電を行なった結果を図4に示す。図4に示すように、充電時には電圧2.1V近傍に鉄2価と3価との間の平衡によるショルダーが、4.1V近傍に、鉄3価と4価との間の平衡によるショルダーが、それぞれ確認された。また、1.0〜4.6Vの間での初回放電容量は105mAh/gであり、組成中の全リチウムのうち約63%が電池反応に関与していると考えられる。
Claims (11)
- 酸化リチウム、酸化鉄、および無水ケイ酸から構成され、組成がLixFeSiO4(0.4≦x≦1.4)である複合酸化物からなることを特徴とするリチウムイオン二次電池用正極活物質。
- 酸化リチウム、酸化鉄、および無水ケイ酸に加えて、酸化バナジウム、酸化マンガン、酸化コバルト、酸化ニッケル、酸化ニオブ、および酸化銅から選ばれる少なくとも1種類を含有し、組成がLixFeyM1−ySiO4(0.4≦x≦1.4、0<y<1、Mは、バナジウム、マンガン、コバルト、ニッケル、ニオブ、および銅から選ばれる少なくとも1種類)である複合酸化物からなることを特徴とするリチウムイオン二次電池用正極活物質。
- 前記複合酸化物が、ガラス体、ガラスとスピネル構造とを有する酸化物結晶の複合体、またはスピネル構造を有する酸化物結晶のうちいずれかであることを特徴とする請求項1または2に記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質。
- 前記複合酸化物が、0.25mm以下の厚さの薄片状に成形されてなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質。
- 前記複合酸化物が、粒子径80nm〜100μmの範囲にあり、かつ、前記複合酸化物に、導電助剤を0〜10重量%の割合で添加した複合粉末から構成されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質。
- Li2O、Li2CO3、LiOHから選択される少なくとも1種のリチウム原料と、FeO、Fe3O4、Fe2O3から選択される少なくとも1種の鉄原料と、無水ケイ酸(SiO2)とからなる原料混合物を熱処理することより、組成がLixFeSiO4(0.4≦x≦1.4)である複合酸化物を得る工程を有することを特徴とするリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法。
- Li2O、Li2CO3、LiOHから選択される少なくとも1種のリチウム原料と、FeO、Fe3O4、Fe2O3から選択される少なくとも1種の鉄原料と、無水ケイ酸(SiO2)とに加えて、酸化バナジウム(VO、VO2、V2O3,V2O5から選択される少なくとも1種)、酸化マンガン(MnO2、Mn3O4、MnOから選択される少なくとも1種)、酸化コバルト(Co3O4、CoO、Co2O3から選択される少なくとも1種)、酸化ニッケル(Ni、Ni2O3から選択される少なくとも1種)、酸化ニオブ(Nb2O5)、および酸化銅(CuO)から選ばれる少なくとも1種類とからなる原料混合物を熱処理することより、組成がLixFeyM1−ySiO4(0.4≦x≦1.4、0<y<1、Mは、バナジウム、マンガン、コバルト、ニッケル、ニオブ、および銅から選ばれる少なくとも1種類)である複合酸化物を得る工程を有することを特徴とするリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法。
- 前記複合酸化物を得る工程が、
前記原料混合物を加熱することで融液とし、得られた融液を冷却することで、前記複合酸化物を、ガラス体またはガラス体とスピネル構造とを有する複合体として得る工程、または、
前記原料混合物を加熱することで融液とし、得られた融液を緩やかに冷却することで、結晶化を促進し、前記複合酸化物を、スピネル構造を有する酸化物結晶として得る工程であることを特徴とする請求項6または7に記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法。 - 前記ガラス体または前記ガラス体とスピネル構造とを有する複合体を、ガラス転移温度以上の温度で加熱することで結晶化することにより、前記複合酸化物を、スピネル構造を有する酸化物結晶として得る工程をさらに有することを特徴とする請求項8に記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法。
- 前記ガラス体または前記ガラス体とスピネル構造とを有する複合体に、還元剤を添加し、不活性雰囲気下または還元性雰囲気下で、ガラス転移温度以上の温度にて加熱することで、遷移金属の価数制御をしながら結晶化することにより、前記複合酸化物を、スピネル構造を有する酸化物結晶として得る工程をさらに有することを特徴とする請求項8に記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法。
- 前記複合酸化物を、0.25mm以下の厚さの薄片状に成形する工程をさらに有することを特徴とする請求項6〜10のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池用正極活物質の製造方法。
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JP2011130817A JP2013004181A (ja) | 2011-06-13 | 2011-06-13 | リチウムイオン二次電池用正極活物質およびその製造方法 |
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP5886923B1 (ja) * | 2014-09-29 | 2016-03-16 | 太平洋セメント株式会社 | 非晶質構造を有するケイ酸リチウム化合物の製造方法 |
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2011
- 2011-06-13 JP JP2011130817A patent/JP2013004181A/ja not_active Withdrawn
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