JP2012528068A - 高温でのガラスのレーザ・スコアリング - Google Patents

高温でのガラスのレーザ・スコアリング Download PDF

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Abstract

高温での個々の板ガラス(45、112)および帯状ガラス(27)のレーザ・スコアリングが開示される。レーザビーム(113)でガラス表面(114)を、下限(11)がベントを形成するために最初の傷(111)の伝搬を維持するのに必要な応力によって定められ且つ上限が(13)ガラスの歪み点以下である範囲内の温度まで加熱することにより、意図されるスコア線(31、115)に沿って均一なベントを形成できる。特定の実施形態では、スコア線(31、115)に沿ってガラスの温度勾配と逆に変化するレーザ出力プロファイルをレーザ(37)に生じさせるコントローラ(35)によって提供される柔軟なレーザ出力制御の使用により、レーザビーム(113)下のガラス温度は、ガラスの背景温度に関わらずこれらの限度内に留まる。ガラスの温度勾配は、例えば、検出器(33)(例えば、赤外線カメラ)を用いてリアルタイムで検出できる。このようにレーザビーム出力を制御することにより、ガラス温度の大きなばらつきを示す個々の板ガラス(45、112)および帯状ガラス(27)のスコアリングにおけるプロセスの余裕を大きく増加させることができる。

Description

優先権の主張
本願は、合衆国法典第35巻第119条(e)に基づき、2009年5月27日に出願された米国特許仮出願第61/181,473号による優先権を主張する。
本開示は、板ガラスおよび帯状ガラスのレーザ・スコアリングに関し、具体的には、スコア線の一部または全部が、高温、即ち、室温より高い温度のガラスを通るレーザ・スコアリングに関する。
従来、ガラスのスコアリングは機械的な道具を用いて達成されている。しかし、レーザ放射(例えば、波長が10.6μmのCOレーザ放射)を用いてガラスを加熱し、温度勾配によって引張応力を生じさせる代替手段が存在する。ガラスのスコアリングのためのレーザの使用は、同一出願人による「脆性材料を切断する方法および装置(Method and apparatus for breaking brittle materials)」という名称の特許文献1および「レーザ・スコアリングにおける分離用の割れ目の深さの制御(Control of median crack depth in laser scoring)」という名称の特許文献2で述べられており、それらの全体を参照して本願明細書に組み込む。
図9に示されるように、レーザ・スコアリングにおいては、板ガラス112の主要な表面114に、スコア線115に沿った分離用の割れ目(部分ベント、または単にベントとも呼ばれる)が形成される。ベントを形成するために、ガラス表面の一方の縁部付近に小さい最初の傷111が形成され、ビーム113状のレーザ光121をガラスの表面にわたって伝搬させて、次に冷却ノズル119によって生じる冷却領域で冷却することにより、この傷をベントにする。レーザビームによるガラスの加熱およびその直後の冷却剤によるガラスの急冷により、熱勾配およびそれに対応する応力場が生じ、これが最初の傷を伝搬させてベントを形成する。
図10には、レーザビーム113と冷却領域(急冷ゾーン)との関係がより詳細に示されており、ガラス表面に対するビームおよび冷却領域の伝搬方向が参照番号17で示されている。この図では、ガラス表面におけるレーザビームの長さは「b」であり、レーザビームの後端と冷却領域15の先端との間の離間は「L」である。
レーザ・スコアリングに関連する課題には、板ガラスの残留応力の問題がある。そのような応力は、表示装置の基体として用いられる板ガラスの場合には特に大きな問題である。TFT−LCDパネルや有機発光ダイオード(OLED)パネル等の多くの表示装置は、ガラス基体上に直接作られる。製造速度を高め且つコストを低減するために、一般的なパネル製造プロセスでは、単一の基体または基体の部分片上に複数のパネルが同時に製造される。そのようなプロセスの様々な時点で、基体は機械的手段により切断線に沿って複数の部分に分割される。
そのような機械的分割により、ガラス内部の応力分布(具体的には、ガラスが真空で平坦にされたときに見られる面内応力分布)が変わる。より具体的には、分割により、切り口に牽引力がかからなくなるので、板ガラス内の残留応力が切断線で解放される。そのような応力解放は、一般的に、真空で平坦にされたガラスの部分片の形状に変化(ディスプレイ製造業者が「歪み」と称する現象)を生じる。
一般的に、応力解放によって生じる形状変化の量は極めて小さいものであるが、最新のディスプレイで用いられる画素構造の観点からは、大きな板ガラスから個々のパネルを機械的に分割することによって生じるこの歪みは、かなりの数の欠陥(不合格)ディスプレイが生じるほど大きいものとなり得る。従って、この歪みの問題はディスプレイ製造業者にとって重大な懸念であり、許容可能な歪みに関する仕様は2マイクロメートル以下という低いものであり得る。
そのような機械的分割が行われた際に生じる歪みの量は、板ガラス内の残留応力によって異なり、残留応力のレベルが低いほど、生じる歪みは小さくなる。レーザ・スコアリングは、ガラスを加熱して応力場を生じることに依存するので、再現性のあるベント形成を達成する十分な応力を生じるために十分な熱を加えることと、スコアリングされる板ガラス内の残留応力を大きく増加させるほどの熱を加えないこととの間に、固有の矛盾がある。
歪みの問題に加えて、残留応力は、レーザ-スコアリングされた板ガラスが2つの部分片に分割された際に生じるエッジの品質に関しても重要である。高レベルの残留応力は、比較的強度が低く品質が悪いエッジ(例えば、破片や微小亀裂)と関連付けられている。また、ガラスのエッジ付近に高い残留応力があると、エッジの品質が徐々に劣化する(即ち、欠けや剥がれが生じる)ことがわかっており、これはスコアリング後に現れることもあれば、外的衝撃によって誘発されることもある。
ガラスのレーザ・スコアリングは、多大な研究開発の努力の主題であるが、今日まで、それらの努力は、板ガラスが室温である場合の個々の板ガラスのスコアリングに限られていた。更に、板ガラスの温度分布は均一なものであった。従って、この技術は、高温および/または不均一な温度分布を有する板ガラスを、レーザを用いて良好にスコアリングできるか否かについては、何も述べていない。実際、高温でスコアリングを行う際に、レーザビームの出力を増加させるべきか、減少させるべきか、または同じままにすべきか、という基本的な疑問にさえ、答えが与えられていない。
この定性的な疑問の先には、スコアリングされる板ガラスが高温である場合に、室温でのレーザ・スコアリングに対して行うべき修正に関する定量的な情報が無い。高温でのレーザ・スコアリングは、帯状ガラスからの個々の板ガラスの分離および/または分離された個々の板ガラスの縁部(ビード)のトリミング等の用途において重要であるので、この定量的な情報の欠如は、ディスプレイ用途の基体として用いられる板ガラス等の板ガラスの製造におけるレーザ・スコアリングの使用を制限してきた。
米国特許第5,776,220号明細書 米国特許第6,327,875号明細書
本開示は、当該技術分野における上記の不足に対処するものであり、とりわけ、スコアリング速度、スコアリング装置(例えば、レーザ波長、レーザビームのサイズ、レーザビームの形状、冷却領域のサイズ、冷却領域の形状、冷却領域の温度、レーザビームと冷却領域との離間等)、ガラス特性(例えば、厚さ、CTE、ヤング率、化学的組成等)、並びにガラス温度および温度分布(例えば、均一、線形、非線形、およびそれらの組み合わせ)の任意の特定の組み合わせに対するレーザビームの出力レベルを選択するための、容易に用いることができる定量的技術を提供する。
レーザビーム(113)を用いてスコア線(31、115)に沿って板ガラス(27、45、112)をスコアリングする方法であって、レーザビーム(113)の照射前に、スコア線(31、115)の少なくとも一部において、ガラス温度が室温より高い板ガラス(27、45、112)をスコアリングする方法が開示される。該方法は、(a)レーザビーム(113)をスコア線(31、115)に沿って平行移動させる工程と、(b)レーザビーム(113)と並行して、冷却領域(15)をスコア線(31、115)にわたって平行移動させる工程とを備え、レーザビーム(113)による加熱が、板ガラス(27、45、112)におけるベントの形成に寄与し、レーザビームの出力の選択が、(i)レーザビーム(113)下におけるガラスの表面(114)の温度がガラスの歪み点以下であり、且つ(ii)レーザビーム(113)の出力が
0.85(α−βTprior(x))≦P(x)≦1.10(α−βTprior(x))
(式中、xはスコア線(31、115)に沿った距離を表わし、P(x)はスコア線(31、115)に沿ったレーザビームの出力であり、Tprior(x)はレーザビーム(113)の照射前のスコア線(31、115)に沿ったガラスの摂氏温度であり、xの少なくとも1つの値についてTprior(x)>25℃であり、αおよびβは正の定数である)の関係を満たすように行われる。
また、スコア線(31、115)に沿って板ガラス(27、45、112)をスコアリングする装置が開示される。該装置は、(a)レーザビーム(113)を生じるレーザ(37)と、(b)少なくとも1つの位置において板ガラス(27、45、112)の表面(114)の温度を検出する検出器(33)と、(c)レーザ(37)および検出器(33)に動作的に接続(39、41)されたコントローラ(35)であって、検出器(33)によって少なくとも1つの位置において検出された板ガラス(27、45、112)の表面(114)の温度に基づいてレーザビーム(113)の出力Pを調節するコントローラ(35)とを備える。
更に、スコア線(31、115)に沿って板ガラス(27、45、112)をスコアリングする装置が開示される。該装置は、(a)レーザビーム(113)を生じるレーザ(37)と、(b)レーザ(37)に動作的に接続(41)されたコントローラ(35)とを備え、(i)コントローラ(35)はスコア線(31、115)を複数のセグメントに分割し、(ii)コントローラ(35)は、レーザビーム(113)の目標(指定された)出力を、該目標出力が各セグメントについて一定となるよう調節する。
上記の本開示の様々な態様の概要で用いた参照番号は、単に読者の便宜のためのものであり、本発明の範囲を限定することは意図されず、そのように解釈されるべきではない。より一般的には、上記の概要説明および以下の詳細な説明は、単に本発明を例示するものであり、本発明の性質および特徴を理解するための概観および枠組みの提供を意図したものであることを理解されたい。
説明を容易にするために、本明細書の記載および特許請求の範囲においては、特に断り無き限り、「板ガラス」は一般的に個々の板ガラスおよび帯状ガラスの両方を意味する。
本発明の更なる特徴および長所は、以下の詳細な説明で述べられ、部分的には、その説明から当業者に自明であり、または本明細書に記載されたように本発明を実施することによって認識される。添付の図面は、本発明の更なる理解を提供するために含まれるものであり、本明細書に組み込まれてその一部を構成する。本明細書および図面に開示される本発明の様々な特徴は、任意のあらゆる組み合わせで用いられ得ることを理解されたい。
本発明を限定しない例として、複数の実施形態の様々な特徴を、以下の態様で述べるように組み合わせてもよい。
第1の態様によれば、レーザビームを用いてスコア線に沿って板ガラスをスコアリングする方法であって、レーザビームの照射前に、スコア線の少なくとも一部において、ガラスの温度が室温より高い板ガラスをスコアリングする方法が提供され、当該方法は、(a)レーザビームをスコア線に沿って平行移動させる工程と、(b)レーザビームと並行して、冷却領域をスコア線にわたって平行移動させる工程とを備え、レーザビームによる加熱が、板ガラスにおけるベントの形成に寄与し、レーザビームの出力が、(i)レーザビーム下におけるガラスの表面の温度がガラスの歪み点以下であり、且つ(ii)レーザビームの出力が
0.85(α−βTprior(x))≦P(x)≦1.10(α−βTprior(x))
(式中、xはスコア線に沿った距離を表わし、P(x)はスコア線に沿ったレーザビームの出力であり、Tprior(x)はレーザビームの照射前のスコア線に沿ったガラスの摂氏温度であり、xの少なくとも1つの値についてTprior(x)>25℃であり、αおよびβは正の定数である)の関係を満たすように選択される。
第2の態様によれば、レーザビームの出力が
0.90(α−βTprior(x))≦P(x)≦1.05(α−βTprior(x))
の関係を満たす、態様1の方法が提供される。
第3の態様によれば、再現性のあるスコアリングを生じる最小レーザ出力を複数のガラス温度において測定し、該測定されたレーザ出力を線形関数にフィッティングすることによってαおよびβが決定される、態様1の方法が提供される。
第4の態様によれば、複数のガラス温度が、室温と、少なくとも2つの室温より高い温度とを含む態様3の方法が提供される。
第5の態様によれば、Tprior(x)が一定である、態様1の方法が提供される。
第6の態様によれば、Tprior(x)がxの線形関数である、態様1の方法が提供される。
第7の態様によれば、Tprior(x)がxの非線形関数である、態様1の方法が提供される。
第8の態様によれば、(i)Tprior(x)が一定ではなく、(ii)レーザビーム下におけるガラス表面の温度が略一定である、態様1の方法が提供される。
第9の態様によれば、全てのxについて、Tprior(x)が
strain−Tprior(x)≧100℃、
(式中、Tstrainはガラスの摂氏温度の歪み点である)の関係を満たす、態様1の方法が提供される。
第10の態様によれば、全てのxについて、レーザビーム下におけるガラスの表面の温度Tbeam(x)が
beam(x)−Tprior(x)≧80℃
(式中、Tbeam(x)は摂氏温度である)の関係を満たす、態様1の方法が提供される。
第11の態様によれば、(i)スコア線が複数のセグメントに分割され、(ii)各セグメントに平均温度値が割り当てられ、(iii)P(x)が各セグメントにわたって一定となることが目標とされる、態様1の方法が提供される。
第12の態様によれば、(i)少なくとも1つのxの値についてのTprior(x)が時間をかけてモニタリングされ、(ii)少なくとも1つのxの値についてのP(x)の値が、モニタリングされたTprior(x)の値に基づいて制御される、態様1の方法が提供される。
第13の態様によれば、スコア線に沿って板ガラスをスコアリングする装置が提供され、該装置は、(a)レーザビームを生じるレーザと、(b)少なくとも1つの位置において板ガラスの表面の温度を検出する検出器と、(c)レーザおよび検出器に動作的に接続されたコントローラであって、検出器によって少なくとも1つの位置において検出された板ガラスの表面の温度に基づいてレーザビームの出力Pを調節するコントローラとを備える。
第14の態様によれば、コントローラが、レーザビームの出力を、
0.85(α−βTprior)≦P≦1.10(α−βTprior
(式中、Tpriorは検出器によって少なくとも1つの位置において検出されたガラスの摂氏温度であり、αおよびβは正の定数である)の関係を満たすように調節する、態様13の装置が提供される。
第15の態様によれば、再現性のあるスコアリングを生じる最小レーザ出力を複数のガラス温度において測定し、該測定されたレーザ出力を線形関数にフィッティングすることによってαおよびβが決定される、態様14の装置が提供される。
第16の態様によれば、複数のガラス温度が、室温と、少なくとも2つの室温より高い温度とを含む、態様15の装置が提供される。
第17の態様によれば、(i)コントローラがスコア線を複数のセグメントに分割し、(ii)検出器が各セグメントについて少なくとも1つの温度を検出し、(iii)コントローラが、各セグメントについて、そのセグメントについて検出器によって検出された少なくとも1つの温度に基づいてレーザビームの目標出力を調節し、目標のレーザビーム出力がそのセグメントにわたって一定である、態様13の装置が提供される。
第18の態様によれば、複数のセグメントが等しい長さを有する、態様17の装置が提供される。
第19の態様によれば、スコア線に沿って板ガラスをスコアリングする装置が提供され、該装置は、(a)レーザビームを生じるレーザと、(b)レーザと動作的に接続されたコントローラとを備え、(i)コントローラがスコア線を複数のセグメントに分割し、(ii)コントローラが、レーザビームの目標出力を、該目標出力が各セグメントについて一定となるよう調節する。
第20の態様によれば、複数のセグメントが等しい長さを有する、態様19の装置が提供される。
第21の態様によれば、板ガラスを製造する方法が提供され、該方法は、帯状ガラスを製造する工程と、態様1の方法に従って帯状ガラスをスコアリング工程とを備える。
平均レーザビーム出力(縦軸;ワット)対Tprior値(横軸;℃)のプロット(四角形のデータ点はオフラインの実験値であり、円形のデータ点はフュージョン・ドロー装置(FDM)を用いてオンラインで得られたものである) 最大Tbeam値(縦軸;℃)対レーザビーム出力(横軸;ワット)のプロット(データ点はモデリングされた値である) 最大Tbeam値(縦軸;℃)対Tprior値(横軸;℃)のプロット(データ点はモデリングされた値である) 均一な背景ガラス温度(明るい陰影を付した棒)での、レーザ・スコアリング中のガラス表面温度(縦軸;任意の単位)対スコア線に沿った距離(横軸;任意の単位)を示す図(ガラス表面温度に対するレーザビームの寄与は暗い陰影を付した棒で示されている。この図では、レーザビームの寄与は一定である) 勾配のある背景ガラス温度(明るい陰影を付した棒)での、レーザ・スコアリング中のガラス表面温度(縦軸;任意の単位)対スコア線に沿った距離(横軸;任意の単位)を示す図(ガラス表面温度に対するレーザビームの寄与は暗い陰影を付した棒で示されている。この図では、レーザビームの寄与は一定である) 勾配のある背景ガラス温度(明るい陰影を付した棒)での、レーザ・スコアリング中のガラス表面温度(縦軸;任意の単位)対スコア線に沿った距離(横軸;任意の単位)を示す図(ガラス表面温度に対するレーザビームの寄与は暗い陰影を付した棒で示されている。この図では、レーザビームの寄与は、背景ガラス温度の局所値に基づいて制御されている) 任意の背景ガラス温度(明るい陰影を付した棒)での、レーザ・スコアリング中のガラス表面温度(縦軸;任意の単位)対スコア線に沿った距離(横軸;任意の単位)を示す図(ガラス表面温度に対するレーザビームの寄与は暗い陰影を付した棒で示されている。この図では、レーザビームの寄与は、背景ガラス温度の局所値に基づいて制御されている) ガラス表面温度の検出およびレーザビーム出力値の調節に用いられ得る制御システムを示す概略図 板ガラスのレーザビームスコアリングを示す概略図 ガラス表面におけるレーザビーム113とそれに関連付けられた冷却領域15との関係を示す概略図。
実験による研究に基づき、板ガラスの温度が、レーザビーム出力、急冷効率およびスコアリング速度を含むレーザ・スコアリング・プロセスの基本的なプロセス変数に影響することがわかった。更に、ガラスが高温である場合、その温度分布は一般的に不均一であり、時間と共に分布が変化する。
具体的には、とりわけ、ガラスの周囲の空気の流れやガラスの異なる厚さ(例えば、オーバーフロー・フュージョン・ドロー法で製造される帯状ガラスの場合には、帯状ガラスの縁部(ビード)は中心領域(品質領域)よりも厚い)等の環境的なファクターの結果として、ガラスが冷えると、その温度は不均一に降下する。これらの不均一質量分布によって生じる温度勾配は、引っ張り領域と圧縮領域との複雑な組み合わせであり得る応力パターンをガラス内に生じ、この応力パターンは時間と共に変化して、最後には、ガラスが最終的に室温に達した際に残留応力を生じる。
例えば、オーバーフロー・フュージョン・ドロー法で製造される帯状ガラスは、一般的に、約1000℃の範囲の温度で形成され、個々の板ガラスのスコアリングおよび分離が行われる延伸の底部(BOD)に帯状ガラスが達する時までに、この温度は、例えば約700℃降下して約300℃になる。個々の板ガラスからのビード部の除去でさえも、ガラスの基準温度(base temperature)と、板ガラスの上部の温度が底部の温度より高いという事実とから、室温より高い問題を伴う。
当業者は認識するように、レーザ・スコアリングにおいて役割を果たすプロセス変数は多数あるので、室温条件で開発されたスコアリング・プロセスを、高温で用いるために修正するのは困難である。しかし、本開示によれば、単一の主要変数、具体的にはレーザビーム出力を用いて、室温でのスコアリングを高温でのスコアリングに移行できることが発見された。
更に、任意の特定のガラス温度に対して用いられるレーザビーム出力の値を、レーザ・スコアリング装置および高温でスコアリングされるタイプの板ガラスを用いて行われる限られた数の実験から容易に決定できる。なお、実験で用いる装置および板ガラスは、高温で用いるものと必ずしも同一でなくてもよいが、高温での装置および板ガラスの代表となるものであるべきである。また、実験で用いるスコアリング速度は、高温で用いる速度(1または複数の速度)に近いべきである(例えば、実験における速度は、高温で用いる速度の±20%とすべきである)。
スコアリング速度に関して、スコアリング・プロセスのこの変数は、一般的に、レーザ・スコアリングが行われる状況によって決定されることを更に留意すべきである。例えば、帯状ガラスからの個々の板ガラスの分離に関連してレーザ・スコアリングを用いる場合には、帯状ガラスの幅および個々の板ガラスの所望の製造速度に適合する速度でスコアリングを行わなければならない。そのような用途では、スコアリング速度は、例えば、750ミリメートル/秒程度であり得る。高いガラス温度によって課される課題に対処することに関しては、スコアリング速度は本質的に固定パラメータであり、これらの課題に対処するに際して、スコアリング速度はたとえ可能であっても僅かに修正できるのみである。
驚くことに、レーザビーム出力を修正するだけで、高温の板ガラスの良好なレーザ・スコアリングをリアルタイムで提供できることが発見された。一般的に、高温でのスコアリングでは、冷却剤の流量を増加させるべきであることがわかった。しかし、一旦これを行ったら、流量を一定に保つことができるので、流量を制御変数として用いる必要はない。なお、好ましい実施形態では、レーザビーム出力を唯一の修正される変数として用いるが、所望であれば、他の変数(例えば、レーザビームの長さ(例えば、図10の「b」)、レーザビームの形状(例えば、トランケートの有無)、冷却剤の流量、冷却領域、および/またはレーザビームと冷却領域との離間(例えば、図10の「L」))を、レーザビーム出力と組み合わせて用いることもできる。別の見方をすれば、レーザビーム出力に加えて、スコアリング速度と、レーザビームの長さと、レーザビームの形状とを組み合わせた効果に基づくレーザビームの滞留時間を用いて、高温での良好なスコアリングを達成できる。しかし、レーザビーム出力が好ましい修正可能変数であることには変わりはない。
例えば、スコア線の長さにわたって変化する板ガラスの温度に対応するための、レーザ・スコアリング・プロセスに対するリアルタイムの調節に関して、レーザビーム出力は、電子的に容易に変更可能であり、その応答時間は他の利用可能なプロセス変数(例えば、冷却剤の流量)の応答時間より短いという長所を有する。そのより速い応答時間をもってしても、スコア線に沿って達成可能な空間分解能には依然として限度がある。しかし、実際には、スコア線を複数のセグメントに分割し、各セグメントにわたって、目標のレーザビーム出力を一定に保つことによって、高温での良好なスコアリングを達成できることがわかった。これらのセグメントの長さは一定であってもよく、または、スコア線の長さにわたって変化してもよい。例えば、これらのセグメントの長さは、スコア線に沿った温度プロファイルは最も速く変化するところ(例えば、帯状ガラスのビードの近傍)では短く、温度プロファイルの変化がより遅いところ(例えば、帯状ガラスの品質部分にわたって)では長くてもよい。
このセグメントの手法を用いれば、レーザビーム出力がその目標(指定された)値に到達できることを確実にするセグメント長の下限(例えば、1つのセグメントの最初の10%以内)を設定することにより、レーザの応答時間を容易に調節できる。レーザの応答時間の調節に加えて、このセグメントの手法は、レーザの出力を制御するための回路を簡素化するものである。
レーザビーム出力の調節に関して、レーザビームの照射前のガラスの温度Tprior(x)に基づき、スコア線の長さ「x」に沿って、出力P(x)が以下の関係を満たすように出力を調節することによって、高温の板ガラスの良好なスコアリングを達成できることがわかった。
0.85(α−βTprior(x))≦P(x)≦1.10(α−βTprior(x)) …式(1)
式中、αおよびβは正の定数である。特定の実施形態では、出力は以下の関係を満たす。
0.90(α−βTprior(x))≦P(x)≦1.05(α−βTprior(x)) …式(2)
式(1)および/または式(2)を満たすことに加えて、レーザビーム出力は、レーザビーム下のガラス表面の温度がガラスの歪み点(例えば、コーニング社(Corning Incorporated)のEagleXG(商標)ガラスの場合には666℃)を超えて上昇するレベルより低く留まる必要がある。このようにして、ガラス表面の過熱が防止される。そのような過熱は、ガラスをアブレートしてエッジ付近に高い残留応力を生じ得るものであり、エッジ強度の低下、エッジ欠陥の形成、並びにエッジの波打ちおよび粗さの増加を引き起こし得るので望ましくない。
αおよびβは、実際のレーザ・スコアリングが行われる際に用いられるものに対応するスコアリング装置、スコアリング速度、およびガラスを用いた実験によって予め決定されるのが好ましい。しかし、所望であれば、この目的で、モデリングを単独でまたは実験による研究と組み合わせて用いることができる。或いは、αおよびβは、レーザ・スコアリング装置および/またはスコアリングされたガラスから得られた先行経験に基づくものであってもよい。なお、式(1)または式(2)を含む後述の特許請求の範囲は、用いられるレーザ出力レベルがα値およびβ値を用いて選択されたか否かに関わらず、これらの式を満たす、高温でのレーザ・スコアリングを包含することが意図される。即ち、これらの特許請求の範囲は、α値およびβ値がスコアリングの前に決定されるかまたは後に決定されるかに関わらず、これらの式を満たす、高温でのレーザ・スコアリングを包含することが意図される。
図1は、α値およびβ値を決定するための実験の手法を示している。この図では、横軸はTpriorを摂氏温度でプロットし、縦軸はレーザビーム出力をワットでプロットしている。四角形のデータ点は、スコアリング前の温度がそれぞれ20℃、205℃、270℃および315℃である各板ガラスに対して行われた実験室でのレーザ・スコアリング実験の結果を表している。これらの温度のそれぞれについて、再現性のあるスコアリングを生じた最小レーザ出力を実験で決定し、それらの出力(それぞれ590ワット、450ワット、405ワットおよび345ワット)を図1の縦軸に沿ってプロットした。このデータに直線(即ち、図1の点線)をフィッティングすることにより、609.4ワットのα値および0.8ワット/℃のβ値を決定した。
任意の特定のTprior値に対して用いられるレーザビーム出力を予測する際の式(1)および式(2)の有効性を、工業規模のオーバーフロー・フュージョン・ドロー装置(FDM)用いた実験で確認した。この装置にレーザ・スコアリング・システムを設置して、帯状ガラスから個々の板ガラスを分離するために用いた。レーザ・スコアリング・システムおよびスコアリングされたガラス(コーニング社の0.7mmの「EagleXG」ガラス)は、図1の実験室での実験で用いたものに対応する。このFDM試験で用いたスコアリング速度(750mm/秒)は、実験室での実験で用いたものと同じである。FDMによって製造された帯状ガラスのスコア線の位置における温度は300℃〜320℃であった。これらの温度と、上記のα値およびβ値とを式(1)で用いると、以下の式が与えられる。
prior=300℃について、314ワット≦P(x)≦406ワット
prior=320℃について、300ワット≦P(x)≦389ワット …式(3)
一方、式(2)では、以下の式が与えられる。
prior=300℃について、332ワット≦P(x)≦388ワット
prior=320℃について、318ワット≦P(x)≦371ワット …式(4)
図1の丸いデータ点(ボックス21を参照)は、延伸の底部(BOD)において信頼性の高いスコアリングを生じることがわかった代表的なレーザビーム出力を示している。ボックス21の中心は、350ワットの出力および310℃の温度に対応する。このデータを式(3)および式(4)の範囲と比較することにより、高いTprior値に対するレーザビーム出力レベルを特定するための式(1)および式(2)の有効性が示される。
更に、FDMによって製造された帯状ガラスから分離された個々の板ガラスの縁部(ビード)をトリミングするためにレーザ・スコアリングを用いた実験を行った。これらの試験におけるガラス温度は、帯状ガラス分離試験のガラス温度より低いが、依然として室温より高いものであった。例えば、帯状ガラスからの個々の板ガラスの分離の際の一般的な温度範囲は300〜400℃であり、一方、ビードのトリミングでは、個々の板ガラスは一般的に60〜140℃の範囲の温度を有する。更に、ビードのトリミングの際のスコア線に沿った温度は、一般的に個々の板ガラスの最上部から底部まで50〜100℃の降下を示す。この温度降下に加えて、ビード領域は、この領域におけるガラスの不均一な厚さの結果として、比較的高いレベルの残留応力を示すことが知られている。そのような高いレベルの残留応力は、スコアリング・プロセスを更に複雑にする。それにもかかわらず、ここでも、式(1)および式(2)はトリミング手順において確実に作用するレーザビーム出力を正確に予測することがわかった。
全体的に、この実験は、帯状ガラスからの個々の板ガラスの分離および個々の板ガラスのビードのトリミングの両方において、式(1)および式(2)が、高い収率、良好なエッジ品質、および低い残留応力を伴う一貫した高速のレーザ・スコアリングを生じるビーム出力レベルを正確に括ったことを示した。
上述したように、モデリングは、α値およびβ値を決定するためのもう1つの手法である。一般論として、レーザ・スコアリング・プロセスにおけるレーザビーム下のガラス温度(Tbeam)は、背景(固有)ガラス温度(Tprior)とレーザビームによる露光によって生じるガラス温度の変化(ΔTlaser)との合計として次式のように定義できる。
beam=Tprior+ΔTlaser
priorは、ガラス環境の温度、板ガラス成形温度、板ガラス成形後の時間、冷却速度および冷却効率、ガラスの冷却の均一性、および板厚に依存し、一方、ΔTlaserは、レーザビームの出力密度、ビームモードプロファイル、ビーム滞留時間(即ち、ビームサイズとスコアリング速度との組み合わせ)、およびガラスの内部特性(レーザ波長における光吸収およびガラス表面の反射率を含む)に依存する。スコアリングを達成するには、レーザビームは、Tbeamを、ベントを形成するために最初の傷の伝搬を維持するのに十分な応力をガラスに生じる値(Tbeamの最小値)まで上昇させる必要があり、ここで、応力は、ビームによって生じる加熱およびそれに続く急冷の結果である。最小応力レベルは、急冷効率およびガラスの特性(即ち、高温でのガラスの熱膨張係数および弾性係数)に依存する。ガラスとレーザビーム/冷却剤の組み合わせとの相互作用は、ガラスの熱伝導率および熱容量にも依存する。Tbeamは、Tbeamの最小値より高いことに加えて、上述の過熱によって生じる様々な悪影響を回避するために、ガラスの歪み点より低く保たれることが必要である。
図2は、レーザビーム出力(横軸;ワット)の関数として最大Tbeam値(縦軸;℃)を予測するためにこれらの様々なファクターをモデリングした結果を示している。図3は、モデリングされたデータを、最大Tbeam値(縦軸;℃)vs.Tprior値(横軸;℃)として再プロットしたものを示している。図2において、丸、x字、三角形、四角形および菱形のデータ点は、ぞれぞれ、650℃、550℃、450℃、350℃および250℃のTprior値についてのものであり、一方、図3において、四角形、菱形、三角形、丸およびアスタリスクのデータ点は、それぞれ400ワット、300ワット、200ワット、100ワットおよび0ワットのレーザビーム出力についてのものである。更に、図2において、水平方向の点線13はガラスの歪み点(例えば、666℃)を表わし、垂直方向の点線19は340ワットのレーザビーム出力(即ち、図1のFDM試験で用いたものとほぼ等しい出力レベル)を表わす。モデリングされたデータは、市販のANSYSプログラム(米国ペンシルバニア州キャノンズバーグ所在のアンシス社(ANSYS, Inc.))を用いて得られたものであるが、所望により、他の市販のソフトウェアおよび/またはカスタムソフトウェアを用いることもできる。
図2および図3(または他の類似のプロット)のデータから、レーザビーム出力の動作範囲(α値およびβ値)を決定できる。この際、以下のガイドラインに従うことができる。
beam(x)−Tprior(x)≧80℃
strain−Tprior(x)≧100℃
ここで、第1のガイドラインは、レーザビームが、スコア線に沿ってベントを形成するために最初の傷を伝搬させるのに十分なエネルギーを与えることを確実にするものであり、第2のガイドラインは、ガラスの歪み点(Tstrain)を超えずに第1のガイドラインを満たすことができることを確実にするものである。
α値およびβ値を取得するためのモデリングデータの使用の一例として、高温で用いられるものに対応する板ガラス、スコアリング装置およびスコアリング速度を用いて室温で行われた実験室での研究に基づいて、Tbeamの最小値を特定できる。このTbeamの最小値と、図2または図3のモデリングデータとを用いて、一連のTprior値に対する一連のレーザビーム出力を特定できる(例えば、Tbeamの最小値とTstrainとの間にあるTbeam値に対するレーザビーム出力を決定できる)。次に、これらのレーザビーム出力値を、対応するTprior値に対してプロットして、図1に示されているタイプのプロットされたデータ(この場合にはモデリングされたデータ)を生成できる。このデータに対して線形フィッティングを行うことにより、式(1)および式(2)で用いるα値およびβ値が与えられる。
αおよびβがどのように決定されても、それらが一部をなす高温でのスコアリングは、2つの主要なカテゴリの一方に含まれるものとみることができる。第1のカテゴリは、板ガラスにわたる温度のばらつきが小さい、高温であるが均一な温度でのガラスのスコアリングである。これは、一般的に、幅が比較的小さい延伸部(例えば、第5世代または第5世代の板ガラスを生じる延伸部)における帯状ガラスのスコアリングに当てはまる。第2のカテゴリは、大きな温度勾配を有するガラスのスコアリングを含み、これは、より低い温度(例えば、ビードの除去時)、または幅が大きい延伸部において高温で若しくはスコア線にわたって不均一なガラス温度を有する特殊な延伸部において生じ得る。これらの2つのカテゴリでは、一般的に、レーザ・スコアリング・プロセスの設定手法が異なる。
従って、背景ガラス温度のばらつきが比較的小さい場合には、一定のレーザビーム出力でスコアリング・プロセスを行うことができる。しかし、ガラス内にベントを形成するために最初の傷を伝搬させるのに十分な応力が冷却剤によって生じる点まで、ガラスのより低音の部分を加熱するのに十分に高い出力が選択されなければならない。一方、出力は、ガラスのより高温の部分が過熱されてガラスの歪み温度を超えるほどには高くないべきである。この一定のレーザビーム出力の手法は、ガラス温度が高々400〜500℃であり温度勾配が100℃を超えない大半の用途で良好に作用する。これらの具体的な温度値は、当然ながら例示的なものであり、ガラスの特性および具体的なスコアリング条件に応じて異なる値が適用され得る。
図4および図5は、レーザビーム出力が一定であるカテゴリの2つの例を示している。図4では背景ガラス温度(Tprior)は一定であり、一方、図5では、背景ガラス温度(Tprior)は板ガラスの幅(横軸)にわたってゆっくりと上昇している。両方の図において、確実なスコアリングのためのレーザビーム下の最低ガラス温度(Tbeamの最小値)が線11で示されており、ガラスの歪み点が線13で示されている。図からわかるように、両方のケースにおいて、垂直方向の棒の暗い部分で現されている一定のレーザビーム出力は、線11と線13の間に含まれるレーザ下の最高ガラス温度(縦軸)を達成し、従ってスコアリングに適している。
背景ガラス温度の勾配が大き過ぎる(例えば、100℃を超える)場合には、一定のレーザビーム出力は適さなくなり、Tpriorのばらつきを軽減するために柔軟なレーザ出力調節が重要となる。柔軟なレーザ出力は様々な方法で実施可能であり、その1つが図8に示されている。この図では、レーザ37はレーザ光121を生じ、レーザ光121は帯状ガラス27に当たって、スコア線31に沿って帯状ガラス27をスコアリングすることにより、帯状ガラスからの個々の板ガラス45の分離を可能にする。説明の目的で、図8にはオーバーフロー・フュージョン・ドロー法が示されているが、レーザ・スコアリングされる帯状ガラス(板ガラス)は任意のガラス成形法で製造され得ることを理解されたい。図8に示されるように、オーバーフロー・フュージョン・ドロー法は、トラフ23内に溶融ガラスを受容する成形構造体(アイソパイプ)25を用いる。溶融ガラスはトラフの最上部から流れ出て越流し、アイソパイプの両側を流れ下って、アイソパイプの根底部43において帯状ガラス27を形成する。引張りローラ29は、設定された速度で根底部から離れる方向に帯状ガラスを延伸し、これによって帯状ガラスの厚さを決定する。
図8の線41で模式的に示されるように、レーザ37は、レーザビームの出力レベルを制御するコントローラ35(例えば、マイクロプロセッサ)に動作的に接続されている。図8の線39で示されるように、コントローラ35は、スコア線31に沿った1以上の位置における温度に関する情報をコントローラに供給する検出器33(例えば、IRカメラ)にも動作的に接続されている。スコア線全体に沿った温度分布に関する情報が所望される場合には、検出器は帯状ガラスの幅にわたって走査してもよく、または、検出器は帯状ガラスの幅に沿った複数の位置から同時に温度を検出するよう設計されてもよい。
上述のように、ガラスサンプルの幅(即ちスコアリング距離)を複数のセグメント(1、2…N)に分割する複数のセグメントを用いて、柔軟なレーザ出力制御を実施できる。この場合には、コントローラ35は、各セグメント内のレーザビームの位置を、レーザ放出電流に関与するコマンド電圧とリンクさせる。セグメントの数Nおよびそれらの長さΔL(または、時間領域におけるそれらの持続時間でも同じことである)は、コマンド信号の変化およびガラス温度プロファイルが示す温度のばらつきに対するレーザの応答速度に基づいて選択される変数である。
ガラス温度が一定である場合またはガラスの温度勾配が小さい場合(例えば、図4および図5のケース)には、柔軟な出力制御は必要ないので、コントローラは、単に、全てのセグメントにおいて出力が一定であり且つ等しい通常のレーザ動作を提供する。(説明の目的で、図4および図5、並びに後述する図6および図7では、板ガラスの幅は21個のセグメントに分割されているものとする。)
サンプルの長さにわたるガラス温度プロファイルが大きな温度勾配を有する場合には、一定のレーザ出力では、板ガラスに沿ったどこにおいてもガラス表面温度をプロセスウインドウ内(即ち、図4〜図7の線11と線13との間)に保つということはできない。この場合には、コントローラ35は、ガラスの背景温度に関する情報(例えば、検出器33からの情報)に基づいてレーザ出力を変える。なお、他の理由で(例えば、装置の以前の使用の結果として)温度プロファイルが既知である幾つかのケースでは、検出器33からの情報は必ずしも必要ではない。そのような場合には、コントローラを、検出器からのリアルタイムの情報を必要とせずに、既知の温度プロファイルを補償するようレーザ出力を変えるようにプログラムできる。
図6および図7は、スコア線に沿った温度プロファイルの大きなばらつきを補償するための可変レーザ出力の使用の2つの例を示している。図6では、ガラス温度は線形に上昇しており、上昇の速度は、一定のレーザ出力を用いた場合に、プロファイルの最も低温の部分を線11より高くするのに十分に大きいもので、高温の試験部分は線13より高くなる。この場合には、コントローラは、ビームがスコア線をわたって走査するにつれ、表面に照射されるレーザビーム出力の量を減少させ、これにより、レーザビーム下のガラス温度を線11で表される温度と線13で表される温度との間に保つ(この図では略一定である)。(なお、多くの用途では略一定の温度が望ましいが、温度が線11で表される温度と線13で表される温度との間に留まる限り、略一定の温度は一般的に必須ではない。)
図7は、複雑な背景ガラス温度プロファイルを有する板ガラスにレーザ・スコアリング・プロセスが適用される一般的なケースを表している。そのようなプロファイルは、帯状ガラスの両側(ビード)に向かってガラスが厚くなり、従って温度がより高くなっている帯状ガラスの水平方向のスコアリングで典型的である。このタイプのプロファイルについては、コントローラ35は、最終的な温度プロファイルが、例えば、帯状ガラスの幅にわって略一定になるように、各セグメントに対して異なる出力レベルを提供する。
上記からわかるように、本明細書に開示された方法および装置を用いて、スコアリング方向に沿った任意の温度および応力勾配を有する広い温度範囲内の高温のガラスのレーザ・スコアリングをガラスをアブレートすることなく達成できる。この方法および装置は、意図されたスコア線に沿った均一なベントの生成を達成でき、ベントを形成するために最初の傷の伝搬を維持するのに必要な応力によって下限が定められ且つ上限がガラスの歪み点に等しい(好ましくはガラスの歪み点より低い)範囲内の温度まで、レーザビームでガラス表面を加熱することに基づくものである。特定の実施形態では、スコア線に沿ってガラスの温度勾配と逆に変化するレーザ出力プロファイルを生じる柔軟なレーザ出力制御の使用により、レーザビーム下のガラス温度は、ガラスの背景温度に関わらずこれらの限度内に留まる。この勾配は、例えば、赤外線カメラを用いてリアルタイムで検出できる。このようにして、ガラス温度の大きなばらつきを示す板ガラスのスコアリングにおけるプロセスの余裕を大きく増加させることができる。
当業者には、上述の開示から、本発明の範囲および精神から逸脱しない様々な修正が自明である。添付の特許請求の範囲は、本明細書で述べた具体的な実施形態と共に、それらの実施形態の修正、変形および均等物も包含することが意図される。
15 冷却領域
27、45、112 板ガラス
31、115 スコア線
33 検出器
35 コントローラ
37 レーザ
113 レーザビーム
114 ガラスの表面

Claims (5)

  1. レーザビームを用いてスコア線に沿って板ガラスをスコアリングする方法であって、前記レーザビームの照射前に、前記スコア線の少なくとも一部において、前記ガラスの温度が室温より高く、当該方法が、
    (a)前記レーザビームを前記スコア線に沿って平行移動させる工程と、
    (b)前記レーザビームと並行して、冷却領域を前記スコア線にわたって平行移動させる工程と、
    を備え、
    前記レーザビームによる加熱が、前記板ガラスにおけるベントの形成に寄与し、前記レーザビームの出力の選択が、
    (i)前記レーザビーム下における前記ガラスの表面の温度が前記ガラスの歪み点以下であり、且つ
    (ii)前記レーザビームの出力が
    0.85(α−βTprior(x))≦P(x)≦1.10(α−βTprior(x))
    (式中、xは前記スコア線に沿った距離を表わし、P(x)は前記スコア線に沿った前記レーザビームの出力であり、Tprior(x)は前記レーザビームの照射前の前記スコア線に沿った前記ガラスの摂氏温度であり、xの少なくとも1つの値についてTprior(x)>25℃であり、αおよびβは正の定数である)の関係を満たす
    ように行われることを特徴とする方法。
  2. 全てのxについて、Tprior(x)が
    strain−Tprior(x)≧100℃
    (式中、Tstrainは前記ガラスの摂氏温度の前記歪み点である)の関係を満たすことを特徴とする請求項1記載の方法。
  3. 全てのxについて、前記レーザビーム下における前記ガラスの表面の温度Tbeam(x)が
    beam(x)−Tprior(x)≧80℃
    (式中、Tbeam(x)は摂氏温度である)の関係を満たすことを特徴とする請求項1または2記載の方法。
  4. スコア線に沿って板ガラスをスコアリングする装置であって、
    (a)レーザビームを生じるレーザと、
    (b)少なくとも1つの位置において前記板ガラスの表面の温度を検出する検出器と、
    (c)前記レーザおよび前記検出器に動作的に接続されたコントローラであって、前記検出器によって前記少なくとも1つの位置において検出された前記板ガラスの前記表面の温度に基づいて前記レーザビームの出力Pを調節するコントローラと、
    を備えることを特徴とする装置。
  5. 前記コントローラが、前記レーザビームの出力を、
    0.85(α−βTprior)≦P≦1.10(α−βTprior
    (式中、Tpriorは前記検出器によって前記少なくとも1つの位置において検出された前記ガラスの摂氏温度であり、αおよびβは正の定数である)の関係を満たすように調節することを特徴とする請求項4記載の装置。
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