JP2012524712A - メソラクチドのリサイクルを伴うラクチドを製造する方法 - Google Patents

メソラクチドのリサイクルを伴うラクチドを製造する方法 Download PDF

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Abstract

低分子量ポリ乳酸を製造し、低分子量ポリ乳酸を解重合して、S,S−ラクチド、R,R−ラクチド及びメソラクチドの混合物を生成し、この混合物からメソラクチドを分離して、S,S−及びR,R−ラクチド流を生成することにより、重合に適するS,S−及びR,R−ラクチド流を調製する。メソラクチドを該工程にリサイクルし、生成するラクチド混合物中の各ラクチドのモル分率を変化させる。

Description

本出願は、2009年3月13日に出願した米国仮特許出願第61/159,938号の恩典を主張するものである。
本発明は、ラクチド及びポリラクチド(PLA)を製造する方法に関する。
ポリラクチド樹脂は、乳酸をラクチドに変換し、次にそれを重合することによって工業的に製造されている。乳酸は、1つのキラル中心を有する分子であり、したがって、いわゆるR−(又はD−)及びS−(又はL−)鏡像異性体の2つの鏡像異性体形として存在する。乳酸の2個の分子は、水の2個の分子の脱離により縮合して、一般的に「ラクチド」と呼ばれている3,6−ジメチル−1,4−ジオキサン−2,5−ジオンを形成することができる。ラクチドは、それぞれが以下の構造

を有する2つの「乳酸単位」で構成されていると考えることができる。ラクチド分子における各乳酸単位は、1つのキラル中心を含み、R又はS体として存在する。ラクチド分子は、次の3つの形のうちの1つの形をとり得る:3S,6S−3,6−ジメチル1,4−ジオキサン−2,5−ジオン(S,S−ラクチド)、3R,6R−3,6−ジメチル1,4−ジオキサン−2,5−ジオン(R,R−ラクチド)及び3R,6S−ジメチル−1,4−ジオキサン−2,5−ジオン(R,S−ラクチド又はメソラクチド)。これらは、以下の構造

を有する。S,S−ラクチド及びR,R−ラクチドは、鏡像異性体の対であるが、メソラクチドは、立体異性体である。
ポリラクチドは、ラクチドを重合させることにより形成される。ポリラクチドは、ラクチドと同様に、乳酸単位で構成されている。S,S−ラクチド分子がポリラクチドポリマー鎖に組み込まれるとき、それは、2つの隣接するS−乳酸単位を加える。R,R−ラクチドは、2つの隣接するR−乳酸単位を持ち込み、メソラクチドは、1つのS−乳酸単位及び隣接するR−乳酸単位を持ち込む。
ポリラクチドにおけるR−及びS−乳酸単位の比率及び分布は、その結晶挙動及び物理的特性に影響を及ぼす。R−乳酸単位もS−乳酸単位も大幅に過剰でない場合、仮にあったとしても、ポリラクチドは、徐々に結晶化し得る非晶性物質である。乳酸単位の1つの型がより優勢である場合、ポリラクチド樹脂は、半結晶になり得る。半結晶性物質は、2つの鏡像異性体形の比率が約90:10を超える場合に通常形成される。鏡像異性体型比率が85:15から100:0に増加するとき、ポリラクチドは、特性がより結晶性になる傾向を示す。すなわち、より容易に結晶化し、より多くの量の結晶性を発現することができる。優勢であるのがR体であるか又はS体であるかは重要ではない。しかし、ほとんどの工業的方法で乳酸が発酵法で製造され、発酵法に用いられているほとんどの微生物がS−鏡像異性体を産生するので、S−乳酸単位が通常優勢である。
したがって、市販のポリラクチドの製品の品質等級は、それらが含むR−乳酸単位とS−乳酸単位の相対的な割合によってしばしば互いに区別される。1つの形が非常に大幅に優勢であるポリラクチドは、高度に結晶性の材料が必要である(一般的にその熱的特性のため)、又は加工上の制約のため、製品がその結晶性を速やかに発生させることが重要である、適用分野で一般的に用いられている。それらの場合において、乳酸の優勢な形(R又はS体)は、通常、ポリマーにおける乳酸単位の少なくとも98%を構成する。85:15〜98:2の比率の2つの形の乳酸単位を含むポリラクチドは、中等度の量の結晶性のみが必要である、又はより遅い結晶化が許容できる、適用分野で用いられている。85%以下のいずれかの形の乳酸単位を含むポリラクチドは、仮にあったとしても、せいぜい少量の結晶性を発現し、非常にゆっくりと結晶化する、主として非晶性物質である傾向がある。
したがって、ポリラクチドの製造方法においてR及びS形の乳酸単位の比率を制御することが非常に重要である。
乳酸からのポリマーグレードのラクチドの大規模製造に適する方法は、例えば、米国特許第5,247,058号、第5,258,488号、第5,357,035号、第5,338,822号、第6,005,067号、第6,277,951号及び第6,326,458号に記載されている。これらの特許に記載されている方法は、一般的に、低分子量ポリ乳酸を生成し、次に低分子量ポリ乳酸を解重合することを含む。解重合ステップで、ラクチドが生成する。次にラクチドを精製して、それを水、残留乳酸、線状乳酸オリゴマー及び存在し得る他の不純物から分離する。これは、蒸留により、又は溶媒若しくは融解物からの再結晶化などの他の方法により行うことができる。
出発乳酸は、通常、非常に高い光学純度のものである。しかし、出発物質は、低分子量ポリ乳酸ポリマーに変換され、その後に解重合されるときに高温にさらされる。ある程度のラセミ化(すなわち、1つの鏡像異性体形から他への変換)がそれらの条件下で起こる。さらに、ラクチドを精製すると、起こる可能性のあるラセミ化は、はるかにより少量となる。出発物質中の乳酸単位のおそらく1〜10%は、このような形でラセミ化された状態になって他の鏡像異性体を形成する可能性がある(この量は、任意の所定の製造方法で実質的にかなり変化し得るが)。このラセミ化が起こるため、該方法により得られるラクチドは、S,S−ラクチド、R,R−ラクチド及びメソラクチドの混合物となる。
ほとんどの商業規模の方法において、出発物質はS−鏡像異性体形であり、そのためラセミ化の正味の効果はS−乳酸単位の一部をR−乳酸単位に変換することである。その場合、ラクチド生成物の優勢な形は、S,S−ラクチドである。R−乳酸単位のそれぞれが、他のR−乳酸単位よりはむしろS−乳酸単位と対になる可能性が最も高いので、次の最も一般的な形は、メソラクチドである。多少の「R,R−ラクチド」が2つのR−乳酸単位から形成され得るが、システムにおけるR−乳酸単位の濃度が小さいため、形成されるR,R−ラクチドの量は、一般的に非常に少ない。
そのようなラクチド混合物を重合させる場合、得られるポリマーにおけるS−及びR−乳酸単位の比率は、混合物中のメソラクチドの量によってほぼ完全に決定される。S−乳酸単位とR−乳酸単位との比率は、ポリラクチドの結晶特性に大きい役割を果たしており、したがって、重合に供されるラクチド流中のこの比率を制御することは重要である。
上述のように製造されるラクチド混合物が、下流重合ステップで必要とされるより多くのメソラクチド(及びしたがって、より多くのR−乳酸単位)を含むことはよくあることである。そのような場合には、メソラクチドの一部又はすべてをラクチド混合物から除去しなければならない。残りの流れは、出発ラクチド混合物と比べてメソラクチドが激減している。したがって、残りのラクチドの光学純度及びそれから製造されるポリラクチドの光学純度は、メソラクチドが除去された程度によって主として支配される。非常に高い光学純度が必要である場合、メソラクチドのすべて又はほぼすべてを重合に供されるラクチド流から除去することができる。特に半結晶性のポリラクチドグレードを製造すべき場合には、ラクチド流に一部のメソラクチドを残すことがより一般的である。
メソラクチドをS,S−(又はR,R−)ラクチドから分離することができる2つの方法が利用可能である。米国特許第6,326,458号に記載されているように、メソラクチドは、S,S−及びR,R−ラクチドより揮発性が高く、したがって、分別蒸留によりS,S−及びR,R−ラクチドから分離することができる。米国特許第4,883,745号、第4,983,747号、第5,463,086号及び第6,310,219号に記載されているように、溶融結晶化法によりメソラクチドをS,S−及びR,R−ラクチドから分離することも可能である。溶媒再結晶化は、他の有用な方法である。
少なくとも原理上は、後の時点により高い割合のR−鏡像異性体(又は場合によってはS−鏡像異性体)を有するより非晶性のポリラクチドグレードを製造することが望ましい場合、ラクチド混合物から除去されるメソラクチドを貯蔵し、主としてS,S−ラクチド(又は主としてR,R−ラクチド)流に戻すことができる。しかし、実際には、このメソラクチド流は、不純物によって非常に汚染されている可能性がある。メソラクチドの分離中、不純物は、メソラクチド流中でより濃縮された状態になり、残りのラクチド中ではさほど濃縮されない傾向がある。重合に供されるラクチド流はより清浄であるので、これは有益である。しかし、メソラクチド流中のより高い不純物レベルは、当メソラクチド流を重合に不適切なものにする傾向がある。現実の実務において、メソラクチドから不純物を除去する困難さ及び費用は、メソラクチドが通常廃棄されるか、又は他の価値がより低い用途に使用されるようなものであった。これは、全体的な収量を減少させ、工程の全費用を増加させるものである。
これらの不純物のサブセットは、本明細書で中沸点不純物と呼ぶこともある。中沸点不純物は、S,S−ラクチド及びメソラクチドのそれに非常に近い揮発度を有し、したがって、特に蒸留法により除去することが困難である。中沸点不純物は、所定の一連の蒸留条件でのラクチドマトリックスにおけるそれらの相対揮発度により特徴づけることができ、ラクチドマトリックスから留出させるとき、S,S−ラクチドと比べて1.001〜1.5の相対揮発度を有する傾向がある。中沸点不純物は、一般的にメソラクチドの沸点のわずか下からS,S−ラクチド沸点のわずか上までの範囲、すなわち、50トルの圧力で約155〜約180℃の沸点を有する。
流れの相対的質量(メソラクチド流は一般的にはるかにより小さい容積である)のため、またほとんどの場合にメソラクチドは完全には分離されないため、メソラクチドが除去された後に残存するラクチド流にかなりの量の不純物が依然として存在する。一般的に言えば、残存するメソラクチドが多いほど、多くの不純物、特に厄介な中沸点不純物が重合に供される流れに残存することになる。これは、ラクチド流を重合させるときに、重合速度がより遅いなどの問題を引き起こし得る。重合を行わせる前又は後に追加の精製ステップが必要である可能性がある。
したがって、これらの収率損失を減らし、重合性ラクチド流を生成するより効率のよい方法を提供することが望ましいと思われる。半結晶性グレードのポリラクチドを調製するのに有用である高度に精製されたラクチド流を生成する効果的な方法を提供することも望ましいと思われる。
本発明は、重合性ラクチド流を生成する方法であって、
a)低分子量ポリ乳酸を生成するステップと、
b)低分子量ポリ乳酸を解重合して、S,S−ラクチド又はR,R−ラクチドが非優勢ラクチドである、メソラクチド、S,S−ラクチド及びR,R−ラクチドを含む粗ラクチドを生成するステップと、
c)1)メソラクチドのモル分率が少なくとも0.8であるメソラクチドを多く含む流れが形成され、且つ
2)精製S,S−及びR,R−ラクチド流が形成されるように、
1つ又は複数のステップでメソラクチドを粗ラクチドから分離するステップと、
d)メソラクチド流の少なくとも一部をステップa)又はステップb)に直接的又は間接的にリサイクルし、それにより、リサイクルされたメソラクチド流中のメソラクチドの少なくとも一部をS,S−ラクチド、メソラクチド及びR,R−ラクチドの混合物に変換し、ステップb)で生成した粗ラクチド中の非優勢ラクチド(下で述べるような)のモル分率を、ステップd)が実施されない場合と比べて増加させるステップと
を含む上記方法である。
粗ラクチド中の非優勢ラクチドのモル分率は、メソラクチドのリサイクルにより0.002(すなわち、0.2%)以上増加する可能性がある。一般的に、当モル分率は、0.005〜0.1(0.5〜10%)、0.005〜0.05(0.5〜5%)又は0.005〜0.03(0.5〜3%)増加する。
本方法においてより高いモル分率で存在する乳酸単位の鏡像異性体形(S−又はR−)は、本明細書で「優勢」乳酸単位又は「優勢」鏡像異性体と呼ぶ。逆に、該方法においてより低いモル分率で存在する乳酸単位は、本明細書で「非優勢」若しくは「優位性の低い(less predominant)」乳酸単位又は「非優勢」若しくは「優位性の低い」鏡像異性体と呼ぶ。ラクチドの場合、「優勢」ラクチドは、より大きいモル分率で存在するものによって、各場合にS,S−又はR,R−ラクチドである。より小さいモル分率で存在するものは、それに対応して「非優勢」若しくは「優位性の低い」ラクチドである。メソラクチドは、そのモル分率にかかわりなく、「優勢」ラクチド形でも「非優勢」ラクチド形でもない。モル分率は、文脈によって示される全体としてのシステム又は特定の工程の流れにおける乳酸単位若しくはラクチドそれぞれの総数若しくはモルで割った、各場合における想定される乳酸単位若しくはラクチドのモル数である。
メソラクチド流をリサイクルすることの1つの効果は、粗ラクチド流中のS,S−ラクチド、メソラクチド及びR,R−ラクチドのモル分率が変化することである。粗ラクチド中のメソラクチドのモル分率は、増加する。S鏡像異性体がシステムにおける優勢な鏡像異性体である場合、S,S−ラクチドのより低いモル分率を犠牲にしたR,R−ラクチド及びメソラクチドの増加により、R,R−ラクチドのモル分率が増加する。その代わりとして優勢であるのがR鏡像異性体である場合、R,R−ラクチドのより低いモル分率を犠牲にして起こるS,S−ラクチド及びメソラクチドの増加により、粗ラクチド中のS,S−ラクチドのモル分率が増加する。
驚くべきことに、様々な形のラクチドにおけるこのモル分率の変化、特に非優勢成分(S,S−又はR,R−ラクチド)のモル分率の増加が、許容され得るだけでなく、実際に該方法に重要な利点をももたらし得ることが発見された。
本発明の方法の他の利点は、所定の品質等級のポリラクチドを製造するのに重合に供されるS,S−及びR,R−ラクチド流中で必要とされるメソラクチドがより少ないことである。特定の品質等級のポリラクチドポリマーを製造するのに必要な非優勢乳酸単位の追加のものは、その代わりに非優勢ラクチド(S,S−ラクチド又はR,R−ラクチド)により供給される。より少ないメソラクチドが必要であるため、S,S−及びR,R−ラクチド流からメソラクチドをより完全に分離することができる。分離がより完全であるため、より大きい割合の不純物、特に中沸点不純物がメソラクチドとともに除去される。その結果は、より純粋なS,S−及びR,R−ラクチド流である。したがって、本方法は、メソラクチドリサイクルステップを除外したほかの同様な方法より、流れ中、所定のS−乳酸単位とR−乳酸単位の比率でより純粋なS,S−及びR,R−ラクチド流を生成することができる。より純粋なS,S−及びR,R−ラクチド流は、しばしばより速い速度で重合する。
これらの不純物をより低いレベルで得ることができる(流れ中の優位性の低い乳酸単位が所定の比率で)ので、S,S−及びR,R−ラクチド流からそれを重合する前に、又はそれを重合した後にポリマーからこれらの不純物を除去することに関連する資本及び/又は操業コストを削減又は削除さえもすることができる。
リサイクルされるメソラクチドの量は、システムにより製造されるS,S−及びR,R−ラクチドのモル分率に直接的な影響を及ぼす。リサイクルされるメソラクチドが多いほど、多くの非優勢ラクチドが製造される。リサイクルされるメソラクチドの量を調節すること(他の工程の流れに対して)により、製造されるS,S−ラクチド及びR,R−ラクチドの相対量を既定値に変化させることができる。
メソラクチドのリサイクルにより、重合させるラクチド流の組成が変化するため、それから製造されるポリラクチドの組成も変化する。米国特許第5,536,807号に記載されているように、各メソラクチド分子は、重合してR,Sダイアド、すなわち、R−乳酸単位に隣接したS−乳酸単位を形成する。他方で、S,S−ラクチド及びR,R−ラクチドは、重合してそれぞれS,S−及びR,R−ダイアドを形成する。例えば、S,S−ラクチドとメソラクチドの共重合(S,S−ラクチドが優勢である)により、隣接S−乳酸単位の鎖が主として単一R−乳酸単位により中断されているポリマーが生ずる。他方で、S,S−ラクチドとR,R−ラクチドは、共重合して、単一R−乳酸単位でなく、主として2つのR−乳酸単位により中断されている隣接S−乳酸単位の鎖を主として含むポリラクチドを形成する(再び、S,S−ラクチドが優勢であると仮定する)。米国特許第5,536,807号に述べられているように、S,S−ラクチド/R,R−ラクチドコポリマーはポリマー鎖に2倍多いR−乳酸単位を有するにもかかわらず、XモルのS,S−ラクチドとYモルのR,R−ラクチドとのコポリマー(XがYよりはるかに大きい)は、XモルのS,S−ラクチドとYモルのメソラクチドとのコポリマーと同様な結晶特性を有する傾向がある。この現象は、2つの場合に統計的に同一に非常に近い、ポリマーにおける連続したS−乳酸単位の配列の平均長に起因すると理解される。R−乳酸配列の平均長がS−乳酸単位の平均長に対して小さい限り、R−乳酸配列の長さは、結晶性に対してほとんど影響を及ぼさない。YがXよりはるかに大きい場合に、S,S−及びR,R−ラクチドのコポリマーに同様な状況が存在する。その場合、ポリラクチドは、S,S−ダイアドにより中断されているR−乳酸単位の鎖を主として含む。
したがって、本発明は、本方法が、同等の結晶特性を有するポリラクチドを依然として製造しながら、乳酸単位の優位性の低い形(一般的にR−鏡像異性体)が有意により高いレベルで、機能することを可能にする。本発明はまた、S−及びR−鏡像異性体の比の小さい変化に対する方法への影響をより小さくする。
低分子量のポリ乳酸を生成し、続いて、低分子量のポリ乳酸を解重合して、ラクチドを生成することによりラクチドを製造する一般的な方法は、周知であり、例えば、5,247,058、5,258,488、5,536,807、5,357,035、5,338,822、6,005,067、6,277,951、6,310,218及び6,326,458並びにWO95/09879に記載されている。本明細書で述べるようなメソラクチド流のリサイクルを除いて、それら及び同様な参考文献に記載されている方法は、本発明に関しては、それらの参考文献に記載されている一般的な方法で実施することができ、それらの方法のステップを下で手短に述べることとする。
低分子量ポリ乳酸は、水中又はさほど好ましくないが、他の溶媒中60〜95重量%の乳酸又は乳酸誘導体を含む高濃度の乳酸又は乳酸誘導体流を形成することにより適切に調製された乳酸単位のポリマーである。乳酸誘導体は、例えば、乳酸エステル、乳酸塩、乳酸オリゴマー及び同等のものであってよい。出発乳酸又は乳酸誘導体は、少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも98%、より好ましくは少なくとも99%のS−又はR−鏡像異性体、及び10%以下、好ましくは5%以下、より好ましくは2%以下、より好ましくは1%以下の他の鏡像異性体を含むべきである。この流れは、乳酸又は誘導体が濃縮されるときに生成するいくつかのオリゴマー種を含んでいてよい。この流れは、蒸発器中で水(又は乳酸エステルの場合には低級アルコール)及び溶媒(もしあるとすれば)を除去することによりさらに濃縮される。これが、乳酸又は乳酸誘導体を縮合させ、水又は低級アルコールを縮合副生成物として除去する。これは平衡反応であるので、縮合生成物の除去が、乳酸又は誘導体のさらなる縮合に有利に働く。このようにして生成した低分子量ポリ乳酸は、約5000まで、好ましくは400〜3000の数平均分子量を有する。低分子量ポリ乳酸は、分子量を制御又は固有の加工特性を改善するために場合によって添加される非乳酸化学種も含んでいてよい。
次に低分子量ポリ乳酸を、通常、解重合触媒の存在下で高温及び減圧にさらすことにより解重合する。条件は、(1)そうすることで起こり得るラセミ化の量が減少するので、滞留時間を最小限にし、(2)生成する粗ラクチドを蒸発させるように一般的に選択する。重合反応と同様に、解重合は平衡反応である。生成するときにラクチドを除去することは、さらなるラクチドの生成に有利に働く。したがって、粗ラクチドの連続的な除去が好ましい。WO95/09879に記載されているように、このステップ中に1つ又は複数の安定化剤が存在していてよい。
解重合ステップにおいて生成する粗ラクチドは、S,S−ラクチド、メソラクチド及びR,R−ラクチドの混合物を含む。粗ラクチドは、残存水、若干の乳酸(又はエステルを出発物質として用いる場合、アルコール及びエステル)、若干の乳酸の線状オリゴマー、並びに通常、前述のような若干の中沸点不純物を含む若干の他の反応副生成物などの様々な種類の不純物をしばしば含む。メソラクチドは、粗ラクチドから分離する。これは、溶融結晶化などの方法により行うことができるが、好ましい方法は、1つ又は複数のステップで粗ラクチド流を分別蒸留することである。
粗ラクチドは、この分離の前又はそれと同時に1つ又は複数の精製ステップを受けてよい。例えば、ラクチドを部分的に凝縮させて、それをより揮発性の高い不純物から分離することができる。或いは、粗ラクチドは、米国特許第6,310,218号に記載されている溶融結晶化法により、又は溶媒結晶化法により精製することができる。第3のアプローチは、水、残留乳酸又は乳酸エステル出発物質及び他の小有機化合物などのメソラクチドより著しく揮発性の高い不純物の一部又はすべてを蒸留により除去することである。そのような蒸留ステップは、メソラクチドをS,S−及びR,R−ラクチドから分離する分別蒸留ステップ(複数可)の前又はそれと同時に実施することができる。メソラクチドを分離する前に少なくとも粗ラクチドからより揮発性の高い不純物の大部分を除去することが一般的に好ましい。
1つ又は複数の分離ステップは、少なくとも1つのメソラクチドを多く含む流れ及び少なくとも1つの精製S,S−及びR,R−ラクチド流を生成するのに十分な条件下で行う。精製S,S−及びR,R−ラクチド流は、粗ラクチド中に存在していたS,S−及びR,R−ラクチドの大部分を含む。蒸留アプローチを用いる場合、他の工程流が1つ又は複数の蒸留ステップから持ち込まれる可能性がある。これらは、低沸点物流(それらの物質があらかじめ除去されない場合)及びS,S−又はR,R−ラクチドより揮発性の低い物質を含むボトム流、並びに1つ又は複数の付加的な不純物流を含む可能性がある。
本方法は、メソラクチドが完全には分離されないように運用することができ、その場合、精製S,S−及びR,R−ラクチド流は、若干のメソラクチドを含む。しかし、精製S,S−及びR,R−ラクチド流は、各場合にメソラクチド流と比べてメソラクチドが激減しており、これは、精製S,S−及びR,R−ラクチド流中のメソラクチドのモル分率が、メソラクチド流中より、また粗ラクチド中より低いことを意味する。
さらに、S,S−及びR,R−ラクチド流は、前述のような「中沸点」不純物を好ましくは含む不純物が枯渇している。この場合における「枯渇」は、メソラクチドの分離の直前の粗ラクチド流を基準とするものであり、S,S−及びR,R−ラクチド流のこれらの不純物とラクチド含量との重量比は、粗ラクチド流の不純物とラクチド含量との重量比より低い。この関係は、以下の不等式

により表すことができ、ここで、ISRは、S,S−及びR,R−ラクチド流中の不純物の重量を表し、LSRは、S,S−及びR,R−ラクチド流中のラクチドの重量を表し、Icrudeは、メソラクチドの分離の直前の粗ラクチド流中の不純物の重量を表し、Lcrudeは、メソラクチドの分離の直前の粗ラクチド流中のラクチドの重量を表す。好ましくは、方程式1における比は、0.1未満、より好ましくは0.05未満、より好ましくは0.01未満である。本発明の利点は、非常に低いレベルの不純物を有するS,S−及びR,R−ラクチド流を生成させることができることである。
精製S,S−及びR,R−ラクチド流中の不純物レベルは、メソラクチドをS,S−及びR,R−ラクチド流からいかに完全に分離するかによる影響を受ける。多くの不純物は、若干量が精製S,S−及びR,R−ラクチド流とともに残存するが、メソラクチド流に偏って分配する傾向がある。メソラクチドが精製S,S−及びR,R−ラクチド流から完全に分離されるほど、精製S,S−及びR,R−ラクチド流中の不純物の含量は低くなる。したがって、重合されるように進む精製S,S−及びR,R−ラクチド流の必要な鏡像異性体組成と調和して、当流れ中の不純物のレベルを低下させるために、精製S,S−及びR,R−ラクチド流中のメソラクチドのレベルをできる限り大きく低下させることが好ましい。
好ましくは、分離は、0.05以下のモル分率のメソラクチド(すなわち、約5重量%以下のメソラクチド)を含む精製S,S−及びR,R−ラクチド流を生成する条件下で行う。S,S−及びR,R−ラクチド流は、より好ましくは0.02以下、より好ましくは0.01以下のモル分率のメソラクチドを含む。S,S−及びR,R−ラクチド流は、例えば、0〜0.01、0〜0.005又は0〜0.003のモル分率のメソラクチドを含んでいてよい。
本明細書で述べるすべてのモル分率は、議論中の流れ中のラクチドの総モルに基づいている。
メソラクチド流は、主としてメソラクチドを含む。メソラクチド流は、一般的に少なくとも60重量%のメソラクチドを含み、流れの総重量に基づいて少なくとも80重量%又は少なくとも90重量%のメソラクチドを含んでいてよい。メソラクチド流は、少量のS,S−又はR,R−ラクチドを含んでいてよいが、これらは一緒に一般的に流れのラクチド含量の約15重量%以下、好ましくは10重量%以下、より好ましくは5重量%以下を構成する。この流れ中のメソラクチドのモル分率(全ラクチド種に対する)は、少なくとも0.80であるべきである。したがって、メソラクチド流は、S,S−及びR,R−ラクチド流と比較して、また粗ラクチド流と比較してメソラクチドが多く含まれる。
メソラクチドが粗ラクチド流から分離される場合、中沸点及び他の不純物はメソラクチド流中に濃縮された状態になる傾向があり、したがって、メソラクチド流は、以下の不等式

により表されるように、分離の直前の粗ラクチド流と比べて、それらの不純物が濃縮された状態になる。ここで、Imesoは、メソラクチド流中の不純物の重量を表し、Lmesoは、メソラクチド流中のラクチドの重量を表し、Icrude及びLcrudeは、方程式1に関して定義したとおりである。
下でより十分に述べるように、メソラクチド流の少なくとも一部を本方法のステップa)又はステップb)に直接的又は間接的にリサイクルする。
本発明の方法の実施形態を説明する概略図である。図1で説明する実施形態は、様々な好ましい又は任意選択の特徴を示す。図1は、図示の様々な構成要素の設計を含む、特定の工学的特徴又は詳細を示すことを意図するものではない。さらに、種々の弁、ポンプ、加熱及び冷却装置、分析機器、制御機器などの補助装置は示さないが、もちろん必要に応じて又は望ましいとき用いることができる。
図1において、水、又はさほど好ましくはないが、他の溶媒を含む乳酸又は乳酸誘導体流5がプレポリマー反応器1に供給される。流れ5のような供給原料流中の乳酸又は乳酸誘導体濃度は、好ましくは少なくとも60重量%であり、95重量%の高さ、好ましくは90量%の高さでもよい。図1に示されていない上流工程ステップにおいて前述の範囲内に好ましくは濃縮されている、乳酸を発酵ブロスから得ることができる。出発物質をプレポリマー反応器1中で加熱して、前述のように乳酸又は乳酸エステルを縮合させて低分子量ポリ乳酸を生成させる。水及び溶媒(もしあるならば)の大部分をプレポリマー反応器1から流れ7として除去する。さらに、重合反応で生成する縮合副生成物(乳酸の場合には水、乳酸エステルの場合には低級アルコール)も流れ7の一部として主として除去される。流れ7は、廃棄することができ、或いはそのすべて若しくは任意の部分を工程の初期段階に、又は乳酸若しくは乳酸誘導体を製造するための上流発酵工程にリサイクルすることができる。流れ7の任意のリサイクルされる部分は、リサイクルされる前に精製することができ、また所望の場合、流れ7の一部を工程から不純物を除去するためのパージ流として取り出すことができる。
プレポリマー反応器1は、本質的に反応器及び蒸発器であり、これは、いかなる都合の良い設計であってもよい。乳酸及びその誘導体が高温にさらされる他のすべての工程ステップと同様に、プレポリマー反応器1中でラセミ化が起こり得る。S−乳酸がR−乳酸にラセミ化(逆も同様)し得るので、ラセミ化はランダムである。しかし、1つの鏡像異性体が優勢であるため、ラセミ化の正味の効果は、非優勢鏡像異性体の濃度が優勢鏡像異性体を犠牲にして増加し、光学純度が低下することである。若干のラセミ化は本方法において許容することができるが、プレポリマー反応器中、並びに乳酸及び下流反応生成物の高温への曝露を伴う他のすべての工程ステップにおけるラセミ化を最小限にする条件を用いることが一般的に好ましい。ほとんどの場合に、これらの条件は、物質がそれらの高温に曝露される時間の長さを最小限にすることを含む。したがって、短い接触時間を可能にし、必要とされる操作温度を低下させるために減圧を用いることなどにより、工程温度を最低限にするように、プレポリマー反応器及び他の装置を設計することが好ましい。
低分子量ポリ乳酸流6をプレポリマー反応器1から除去し、ラクチド反応器2に移し、そこで、それを解重合してラクチドを生成する。ラクチド反応器2は、この場合もやはり本質的には蒸発器であり、WO95/09879に記載されているように多くの種類があり得る。適切なラクチド反応器の例としては、例えば、強制循環型、短経路型又は短管型、垂直長管型、水平長管型、下降膜型、撹拌薄膜型及びディスク型蒸発器などがある。膜発生型蒸発器、特にWO95/9879に記載されているような下降膜型及び撹拌下降膜型蒸発器が特に好ましい。様々な種類の多段反応器も適している。ラクチド反応器2は、約1〜約100mmHg、より好ましくは約2〜約60mmHgの圧力で操作することが好ましい。好ましくは約180〜300℃、より好ましくは約180〜250℃の高温を用いる。
ラクチド反応器2中で起こる解重合反応は、通常触媒される。示した実施形態において、触媒は、ラクチド反応器2の上流のプレポリマー流6に触媒流18により導入する。触媒流18をラクチド反応器2に直接導入することも可能である。
粗ラクチド及びボトム混合物がラクチド反応器2中で生成する。ボトムは、高沸点物質及び乳酸の高次オリゴマーを主として含む。ボトムは、ボトム流9として抜き出される。これらは、廃棄するか、又は処理の有無にかかわらず、工程の初期のステップにリサイクルさせることができる。
ラクチド反応器2中で生成する粗ラクチドは、主としてメソラクチド、S,S−ラクチド及びR,R−ラクチド、水、乳酸並びに約6までの重合度を主として有するいくつかの線状乳酸オリゴマーを含む。中沸点不純物を含む他の不純物が存在する可能性がある。粗ラクチド中のラクチド濃度は、一般的に80重量%を超える。
ラクチド反応器2中で生成する粗ラクチドは、流れ8として抜き出され、示した実施形態において、蒸留塔3に移される。粗ラクチド流は、通常蒸気流の形態である。示した実施形態において、粗ラクチドは、それぞれ第1の蒸留塔3、第2の蒸留4及び第3の蒸留塔20で3段階で蒸留される。少なくとも原理上はこの蒸留を1つの搭又は2つの蒸留塔のみで行うことが可能である。図1に示す3段階蒸留法は、各段階で必要な装置を単純化し、工程全体の速度を上げ、各段階における条件を当該個々の段階で起こる1つ又は複数の特異的分離のために最適化することを可能にする利点を有する。特にメソラクチドを図1に示すように分別蒸留により除去する場合にメソラクチドをS,S−及びR,R−ラクチドから分離する前に、水及び乳酸などのより揮発性の高い不純物をラクチド流から除去することが特に好ましい。
粗ラクチド流8は、所望の場合、分離ステップへと前方に送る前に部分的又は完全に凝縮させることができる。示した実施形態において、粗ラクチド流8は、第1の蒸留塔3に導入され、そこで、部分的に精製された粗ラクチド流10とオーバーヘッド流12に分離される。ボトム流(図示せず)も第1の蒸留塔3から抜き出すことができる。オーバーヘッド流12は、粗ラクチド流8に含まれていた水及び乳酸の大部分、並びにラクチドのほんの一部を含む。オーバーヘッド流12の乳酸部分は、ラクチド反応器2から持ち越される乳酸を含む可能性があり、第1の蒸留塔3において再生される若干の乳酸も含む可能性がある。オーバーヘッド流12は、メソラクチドより揮発性の高い他の不純物及び反応副生成物も含み、若干量の中沸点不純物を含む可能性がある。オーバーヘッド流12は、廃棄してよいが、少なくとも乳酸値(lactic acid values)は、工程の初期のステップに、好ましくはステップa)(示した)に直接的若しくは間接的に、又はラクチド反応器にリサイクルすることが好ましい。
部分的に精製された粗ラクチド流10は、S,S−ラクチド、R,R−ラクチド、メソラクチド、中沸点不純物の大部分及び線状乳酸オリゴマーなどのいくつかの高沸点不純物を含む。それは通常、水及び低沸点不純物を実質的に欠いている。
示した実施形態において、部分的に精製された粗ラクチド流10は、第2の蒸留塔4に移され、そこで、ラクチドが線状乳酸オリゴマーなどの高沸点不純物から分離される。これにより、精製粗ラクチド流21及びボトム流11が生ずる。精製粗ラクチド流21は、前述のような中沸点不純物を含み、いくつかのより揮発性の高い不純物を依然として含む可能性がある。いくつかの揮発物(主として水及び乳酸)は、さらに管路22を経て第2の蒸留塔4から除去することができる。ボトム流11は、高沸点物質及びラクチドマトリックス中の乳酸の高次オリゴマーを主として含む。それは、廃棄するか、又は工程の初期段階にリサイクルすることができる。示した実施形態において、ボトム流11及び管路22を経て除去される揮発物は両方とも、それらの流れから乳酸値を回収するために管路19を経てラクチド反応器2にリサイクルされる。
精製粗ラクチド流21は、次に分離されて、メソラクチドを除去し、精製S,S−及びR,R−ラクチド流を形成する。図1に示した実施形態において、精製粗ラクチド流21は、第3の蒸留塔20に移され、そこで、メソラクチドがS,S−及びR,R−ラクチドから分離される。示したように、これにより、第3の蒸留塔20の底部の近く又は底部から抜き出される精製S,S−ラクチド/R,R−ラクチド流13、第3の蒸留塔20の上部の近く又は上部から抜き出されるメソラクチド流14並びに中沸点不純物及びメソラクチドを含む任意選択の中間流15が生ずる。商業規模の操作において、大量のメソラクチドも抜き出さずにかなりの中間流15を抜き出すことは困難である可能性があり、したがって、そのような中間流15を取り出すことは、実際的でないこともあり、省略することができる。ボトム流(図示せず)も第3の蒸留塔20から除去することができる。
精製粗ラクチド流21とともに第3の蒸留塔20に導入される不純物は、メソラクチド流14と精製S,S−及びR,R−ラクチド流13(並びにそのような流れが抜き出される場合には中間流15)の間で分配される。高度な揮発性及び中沸点の不純物は、中間流15を取り出さない場合にはメソラクチド流14中でより濃縮された状態になる。メソラクチド流14の少なくとも一部は、本方法のステップa)及び/又はb)、すなわち、プレポリマー反応器1及び/又はラクチド反応器2に直接的又は間接的にリサイクルされる。図1に示す特定の実施形態において、メソラクチド流14は、流れ14Aとしてラクチド反応器2にリサイクルされる。流れ14Aは、ラクチド反応器2中に直接的に供給されていることが示されているが、この流れは、低分子量ポリ乳酸流6と混ぜ合わせることができ、混ぜ合わされた流れは、一緒にラクチド反応器2中に供給することができる。或いは又はさらに、メソラクチド流14は、流れ14Bとして直接的に又は流れ14Cとして間接的にプレポリマー反応器1にリサイクルすることができる。示した実施形態において、流れ14Cは、乳酸流5と混ぜ合わされ、混ぜ合わされた流れは、一緒にプレポリマー反応器1中に供給される。流れ14Cと乳酸流5は、乳酸溶液を蒸発させて、それを濃縮することなどの1つ又は複数の上流工程の前、上流工程中又は上流工程の後に合わせることができる。
リサイクルされたメソラクチド流中のメソラクチドの少なくとも一部がS,S−ラクチド、メソラクチド及びR,R−ラクチドの混合物に変換されるような条件下でメソラクチド流の少なくとも一部をリサイクルする。リサイクルメソラクチド流は主としてメソラクチド及び少量のS,S−又はR,R−ラクチド(あれば)を含むので、リサイクルメソラクチド流は、S−及びR−乳酸値の両方に富む。それは、一般的に少なくとも40重量%の各型の乳酸単位、より頻繁には45重量%の各型の乳酸単位を含む。したがって、リサイクルメソラクチド流中の非優勢乳酸単位(一般的にR−乳酸単位)の割合は、全体としてのシステム中よりはるかに高い。したがって、リサイクルされたメソラクチド混合物の変換は、メソラクチドのリサイクルを伴わないシステムがもたらすよりも多くの比優勢ラクチドの生成をもたらす。S−鏡像異性体がシステム中で優勢であるより一般的な場合、「非優勢ラクチド形」はR,R−ラクチドである。その場合、メソラクチドリサイクルは、S,S−ラクチドのより小さいモル分率を犠牲にしてメソラクチド及びR,R−ラクチドのモル分率を増加させることとなる。R−鏡像異性体がシステム中で優勢であるまれな場合、「非優勢ラクチド形」はS,S−ラクチドである。そこで、より多くのメソラクチド及びS,S−ラクチドがR,R−ラクチドを犠牲にして生成する。
メソラクチドの変換は、本方法のステップa)及びb)で一般的に優勢である条件下、すなわち、(1)高温、好ましくは100〜300℃;(2)水、乳酸、線状乳酸オリゴマー及び/又はステップb)で生成する低分子量ポリ乳酸などのヒドロキシル含有種の存在;(3)乳酸重合/解重合触媒及び/又はトランスエステル化触媒の存在並びに(4)条件(1)、(2)及び(3)の1つ又は複数の条件下での十分な滞留時間の1つ又は複数の条件下で有利である。ステップa)及びb)において1キログラムの乳酸単位当たり0.2〜10当量のヒドロキシル含有種を供給することが好ましい。条件(1)及び(2)は、本方法のステップa)に一般的に存在する。条件(1)、(2)及び(3)は、本方法のステップb)に一般的に存在する。条件(4)は、ステップa)若しくはステップb)、又は一体としたステップa)及びb)に一般的に存在する。好ましい方法において、ステップa)及びb)の1つ又は両方を100〜300℃、好ましくは150〜250℃の温度で行わせ;ヒドロキシル含有種がステップa)及びステップb)に存在し;乳酸解重合触媒が少なくともステップb)に存在し、ステップa)若しくはステップb)、又は一体としたステップa)及びb)における滞留時間は、少なくとも15分、好ましくは少なくとも30分、より好ましくは少なくとも60分である。本発明の目的のための滞留時間は、工程ステップに入るすべてのフロー流の合算質量流量で割った個々の工程ステップにおけるホールドアップ質量として決定する。少なくとも15分、好ましくは少なくとも30分のステップb)における滞留時間を設定することが好ましい。ステップa)及びb)中の過度の量のラセミ化を防ぐために、滞留時間は、一般的にメソラクチドを変換するのに必要なものより長くない。
ラクチドは、少なくともステップb)の条件下で、またしばしばステップa)の条件下でも揮発し得る。リサイクルメソラクチドが単に揮発する場合、それはほとんど又は全くS,S−ラクチド、メソラクチド及びR,R−ラクチドの混合物に変換されない。メソラクチドがリサイクルされる箇所及び/又はそれがリサイクルされる方法は、リサイクルメソラクチドの揮発を減少又は予防するように選択することができる。
メソラクチド流が蒸気の形で生成する場合、リサイクルの前にメソラクチド流を凝縮させることが一般的に好ましい。
いくつかの実施形態において、メソラクチド流は、ステップa)に直接的に、又は例えば、図1における管路14B若しくは14Cを経るなどによりステップa)の(上流に)間接的にリサイクルされる。本方法におけるそれらの箇所の条件は、一般的にかなりの量のラクチドを揮発させるのに十分でなく、したがって、リサイクルラクチドは、本方法におけるそれらの箇所に存在する液相中に混入することができる。混入したならば、メソラクチドは、プレポリマー反応器1に導入されるときに、速やかに揮発した状態にならない。
図1における管路14Aを経ることなどにより本方法のステップb)にメソラクチド流をリサイクルすることも可能である。ステップb)中のリサイクルメソラクチドの再揮発は、例えば、(1)メソラクチド流をサブクール液体としてステップb)に導入すること、(2)メソラクチド流をステップb)に導入する前にメソラクチド流を低分子量ポリ乳酸流と前混合すること、(3)ステップb)における低分子量ポリ乳酸の表面又はその下にメソラクチド流を導入すること、又は(4)それをリサイクルする前にメソラクチド流の独立した加水分解ステップを設けることなどのいくつかの方法により減少又は予防することができる。これらのステップの2つ以上の組合せを用いることができ、また他のアプローチも有用である可能性がある。「サブクール液体」は、当該流れの揮発がステップb)が実施される容器の圧力で起こる温度より低い温度のものである。
ラクチド分子は、線状ポリ乳酸種の1つの末端からの2つの隣接する乳酸単位の除去によって主として生成すると考えられている。メソラクチドのラクチド形の混合物への変換は、メソラクチドの一部が、一緒に離れてそれぞれR,R−及びS,S−ラクチドを形成するR,R−及びS,S−ダイアドを形成するような方法でそのような線状種に組み込まれた状態になっているメソラクチドに依存すると考えられている。リサイクルメソラクチドは、ラクチド分子が再生成した後の1つ又は複数のオリゴマー化及び/又はトランスエステル化反応に関与する。オリゴマー化及び/又はトランスエステル化工程は、メソラクチドにおけるS−及びR−乳酸単位がよりランダムに分布することを可能にし、その結果、S,S−ラクチド、メソラクチド及びR,R−ラクチドは、ラクチドが再生成するときにすべて形成され得る。メソラクチドの直接ラセミ化は、ラクチド混合物の生成に寄与する可能性があるが、これは、せいぜい非常に小さい役割を果たすと考えられる。
ラクチドは、いくつかのメカニズムによりオリゴマー化し得る。本方法のステップb)で生成する低分子量ポリ乳酸は、ヒドロキシル又はカルボキシルが終端となっている。ラクチドは、ヒドロキシル末端基上で重合して、ポリマー鎖を延長させ、それにより、その分子量を増加させ得る。ラクチドはまた、水に曝露したときに加水分解し、或いは開環し、プレポリマー反応器及び/又はラクチド反応器に存在する乳酸又は他の低分子量ヒドロキシル含有種に付加し得る。それはまた、その後にステップb)に存在する低分子量ポリ乳酸との縮合反応を受けるか、又はより多くのラクチドと反応し得る。開環ラクチド分子は、本方法のステップa)及び/又はb)に存在する既存の低分子量ポリ乳酸分子とのトランスエステル化反応に関与し得る。
本発明はいかなる理論にも限定されるものではないが、メソラクチドのリサイクルによる優位性の低いラクチドの割合の増加は、次のように説明することができる(S−鏡像異性体がシステムにおいて優勢であると説明の目的のために仮定する)。2つの隣接するR−乳酸単位が低分子量ポリ乳酸オリゴマー又はポリマーにおいて形成し、次に、鎖から一緒に除去されて、ラクチド分子を形成するときに、R,R−ラクチドが形成される。1つのS−及び1つのR−乳酸単位を有する単一メソラクチド分子は、ポリ乳酸分子に組み込まれた状態になるときに、それ自体で2つの隣接するR−乳酸単位を形成することができない。しかし、メソラクチド分子が、R−乳酸単位で終結しているポリ乳酸鎖の末端上で相対して付加する場合、隣接するR−乳酸単位を次のようにプレポリマーに形成させることができる。

この反応スキームに示す延長されたポリマー鎖が解重合するとき、強調表示された隣接するR−乳酸単位は、一緒にポリマー鎖を短時間離れて、R,R−ラクチドを形成する。
2つのラクチド分子がポリマー又はオリゴマー鎖に次のように相対で連続的に付加するとき、隣接するR−乳酸単位を低分子量ポリ乳酸において形成させることもできる。

前のように、強調表示された隣接するR−乳酸単位は、鎖を短時間離れて、R,R−ラクチドを形成する。
低分子量ポリ乳酸における隣接するR−乳酸単位を形成する第3の方法は、トランスエステル化反応による。これは、例えば、次のように2つのポリマー鎖間で起こり得る。

トランスエステル化ポリマーにおける強調表示された隣接するR−乳酸単位は、再び一緒にポリマー鎖を短時間離れて、R,R−ラクチドを形成する。
低分子量ポリ乳酸分子の直接カップリングもステップa)又はb)における条件下で起こる可能性があり、隣接するR−乳酸単位との鎖の形成に寄与し得る。
S,S−ラクチドは、同様な方法で形成させることができる。
前述の方法のいずれかにおける隣接するR−乳酸単位(及び隣接するS−乳酸単位)の形成は、リサイクルメソラクチドが多かれ少なかれランダム分布をなすことを可能にするのに十分な反応時間が許容されるならば、主として統計的に決定される。そのようなランダム分布を仮定すると、形成されるR,R−、S,S−及びメソラクチドの割合は、以下のように推定することができる:
S,S−ラクチドモル分率≒(F
R,R−ラクチドモル分率≒(F
メソラクチドモル分率≒2F
ここで、Fは、R−乳酸鏡像異性体のモル分率であり、Fは、本方法のステップb)におけるS−乳酸鏡像異性体のモル分率である。したがって、メソラクチドをリサイクルすることによりR−乳酸単位の割合を増加させる(S−乳酸形が優勢であるシステムにおける)場合、より大きいモル分率のR,R−ラクチドが形成される。したがって、そのようなシステムにおけるメソラクチド流をリサイクルすることの結果は、ラクチド反応器から出る粗ラクチド流中のR,R−ラクチドのモル分率が増加することである。R−乳酸単位がシステムにおいて優勢である場合、メソラクチドをリサイクルすることにより、粗ラクチド中のS,S−ラクチドのモル分率が増加する。
したがって、メソラクチド流をリサイクルする効果は、粗ラクチド中のメソラクチド及び非優勢ラクチド形のそれぞれのモル分率が、より低いモル分率の優勢ラクチド形を犠牲にして増加することである。本方法のステップb)で生成するラクチドの各形のモル分率は、(1)リサイクルメソラクチド流及び前重合ステップa)に供給される濃縮乳酸又は乳酸誘導体流の相対的サイズ、(2)ラクチドの形成の箇所までの工程において起こるラセミ化の量、並びに(3)最初の原材料の光学純度に主として依存する。ラクチドの若干のラセミ化は下流操作で起こる可能性があるが、この量は、通常非常に小さく、システムにおいて生成する種々の形のラクチドのモル分率にほとんど影響を及ぼさない。
ステップa)における出発物質として用いられる乳酸又は乳酸誘導体により供給される乳酸単位1モル当たりのメソラクチドリサイクル流中の0.015〜0.5モルの乳酸単位を供給するのに十分なメソラクチドを本発明によりリサイクルすることができる。これらの値の間で、リサイクルされるメソラクチドの量は、出発乳酸又は誘導体の光学純度及びシステムにおいて起こるラセミ化の量を考慮に入れて、粗ラクチド中の所望のモル分率のS,S−ラクチド、メソラクチド及びR,R−ラクチドを生成するように選択する。より大きいリサイクル流は取り扱うのが困難又は非効率である可能性があるので、ステップa)における出発物質として用いられる乳酸又は乳酸誘導体により供給される乳酸単位1モル当たり0.25モルまでの乳酸単位を供給するのに十分なメソラクチドをリサイクルすることが好ましい。好ましい最小量のメソラクチドのリサイクルは、ステップa)における出発物質として用いられる乳酸又は乳酸誘導体により供給される乳酸単位1モル当たり少なくとも0.05モル、より好ましくは少なくとも0.10モルの乳酸単位を供給するのに十分である。
ラセミ化の量が時間の経過とともにほぼ一定であり(又は非常に小さく)、最初の供給原料の光学純度が本質的に一定であるシステムにおいて、リサイクルされるメソラクチドの量は、粗ラクチド中のS,S−、R,R−及びメソラクチドのモル分率が管理される工程管理として用いることができる。より多くのメソラクチドをリサイクルするとき、システムにおける非優勢乳酸単位のレベルが徐々に増加し、より多くの非優勢ラクチド形(S,S−又はR,R−ラクチド)が生成し、S,S−及びR,R−ラクチド流中に取り出される。逆に、より少ないメソラクチドをリサイクルすることにより、システムにおける優位性の低い乳酸単位のレベルが低下し、生成され、S,S−及びR,R−ラクチド流とともに除去される優位性の低いラクチドの量が減少する。
したがって、例えば、高度に光学的に純粋なラクチド流が望まれる場合、メソラクチドリサイクル流を減少させるか、又は全く止めると、それに応じて、より小さいモル分率の優位性の低いラクチド形が生成する。より大きいモル分率の非優勢ラクチドが望まれる場合、より多い量のメソラクチドをリサイクルすることができる。
特定の実施形態において、メソラクチドリサイクル流の量は、ステップb)で生成する非優勢ラクチドのモル分率が、メソラクチド流をリサイクルしない場合に比べて0.01〜0.05増加するように選択する。さらに、本発明によるメソラクチド流のリサイクルは、ラクチドのモル分率が0.50〜0.85S,S−ラクチド、0.145〜0.45メソラクチド及び0.005〜0.05R,R−ラクチド、又は0.50〜0.85R,R−ラクチド、0.145〜0.45メソラクチド及び0.005〜0.05S,S−ラクチドである、ステップb)における粗ラクチド流を形成するように実施することができる。より好ましくは、メソラクチド流のリサイクルは、ラクチドのモル分率が0.60〜0.82S,S−ラクチド、0.16〜0.39メソラクチド及び0.01〜0.04R,R−ラクチド、又は0.60〜0.82R,R−ラクチド、0.16〜0.39メソラクチド及び0.01〜0.04S,S−ラクチドである、粗ラクチド流を形成するように実施する。より好ましくは、ステップb)で生成する粗ラクチド中に含まれるラクチド中のラクチドのモル分率は、0.67〜0.80S,S−ラクチド、0.19〜0.30メソラクチド及び0.01〜0.03R,R−ラクチド、又は0.67〜0.80R,R−ラクチド、0.19〜0.30メソラクチド及び0.01〜0.03S,S−ラクチドである。
本方法は、(1)リサイクルされるメソラクチドの量及び(2)粗ラクチドから除去されるメソラクチドの量を制御することにより、本方法のステップc)で生成する精製S,S−及びR,R−ラクチド流の組成を管理することを可能にする。
S,S−及びR,R−ラクチドは、融点及び沸点を共有し、結晶化法を用いない限り互いから分離することが困難であるため、通常、本方法のステップc)から一緒に除去される。以前の方法におけるように、メソラクチドは、特定の品質等級のポリラクチドを製造するのに適するラクチド重合流を形成する個々の場合に必要であり得るので、S,S−及びR,R−ラクチド流から多かれ少なかれ完全に分離することができる。さらに、S,S−及びR,R−ラクチド流から分離されるメソラクチドは、必要な場合に貯蔵し、より非晶性グレードのポリラクチドを製造するために必要に応じてS,S−及びR,R−ラクチド流に加えることができる。貯蔵されたメソラクチドはまた、より多くの非優勢ラクチドを製造することが所望である場合、後の時点に本方法によりリサイクルするために保存することができる。
本方法において、メソラクチド流中に存在する多くの不純物(特に中沸点不純物)は、リサイクルされる前にメソラクチド流から何らかの形で除去されない限り、メソラクチドとともにリサイクルされる。
メソラクチド流から不純物を除去するいくつかのアプローチが存在する。1つのアプローチは、蒸留アプローチであり、その例は図1に示されており、中間流15が第3の蒸留塔20から除去される。或いは、メソラクチド流14を他の蒸留にかけて、それを不純物のすべて又は一部から分離することができる。しかし、中沸点不純物はメソラクチドの沸点に近い沸点を有するため、蒸留アプローチは、経済的に達成することが困難である可能性がある。
他のアプローチは、メソラクチド流の一部をシステムからパージ流として取り出すことである。図1において、これは、メソラクチド流14から取り出され、システムから除去されるパージ流16として示されている。パージ流は、メソラクチド及び不純物を含む。パージ流が除去される速度は、システムにおける不純物のレベルがある既定の最大量以下に留まるように一般的に選択される。したがって、除去されるパージ流のサイズは、システムにおいて不純物が生成する速度及びメソラクチド流中の不純物の濃度に依存する。システムにおいて不純物の濃度が高すぎるレベルに達する場合、その濃度を低下させるためにより大きいパージ流を除去することができる。一般的に、パージ流は、廃棄されるか、又は低価値適用分野に用いられる。そのようなパージ流の除去は、システムから不釣り合いの量の優位性の低い乳酸単位を除去する効果を持つ。したがって、パージ流を取り出すことは、システムにおける優位性の低い乳酸単位の蓄積を制御する付加的な手段として用いることができる。
メソラクチドから不純物を分離する第3のアプローチは、抽出及び/又は化学処理法である。図において、ボックス17は、そのような抽出又は化学処理法を実施するための単位操作を表す。一般的に、この種の方法は、(a)メソラクチド又は不純物(若しくはそれらのいくつかのサブセット)(ただし、両方ではない)が良好な溶解度を有する、溶媒による抽出;(b)メソラクチド及び/又は不純物(若しくはそれらのいくつかのサブセット)を互いからより容易に分離される異なる化学種に変換し、次に、場合によって不純物又はそれらの反応生成物をメソラクチド又はその反応生成物から分離することを含む。後者の場合に、分離は、もちろん所定の場合に生成する個々の化学種によって、さらなる蒸留、抽出法、吸着法、ろ過法(固体化学種が生成する場合)又は他の分離技術により行うことができる。
さらに他の方法は、メソラクチドを不純物から分離するために溶融又は溶媒結晶化法を用いることである。
無水コハク酸は、しばしば中沸点不純物の重要な成分である。無水コハク酸は、メソラクチド流を弱塩基性水相で洗浄することによりメソラクチドから分離することができる。洗浄溶液の適切なpHは、約7.2〜約11の範囲内にある。これは、無水コハク酸を加水分解してコハク酸を生成すると考えられている。ラクチドの一部も加水分解されて、主として線状オリゴマー及び若干の乳酸を生成する可能性がある。コハク酸は、ラクチド相中より塩基性水相中にはるかに溶けやすく、水相に分配する。次に水相と有機相が分離されて、低いレベルの無水コハク酸及びおそらく他の中沸点不純物を有する洗浄済みメソラクチド流を形成する。洗浄済みメソラクチド流は、前述のようにリサイクルすることができる。
代替抽出法は、優勢ラクチド相中の開環コハク酸を生成する、ラクチドに対する無水コハク酸の加水分解の相対的速度に依拠している。次に、これをアミンベースの抽出剤、又は有機酸を抽出することを目的とした他の抽出剤により、又は吸着剤により抽出することができる。
他の実施形態において、ラクチドをより完全に加水分解して、乳酸及びコハク酸を生成し、乳酸を蒸留により回収し、コハク酸を残留物中に残すことができる。
或いは、中沸点不純物をメソラクチド流とともにリサイクルすることが可能である。このようにしてリサイクルされる中沸点不純物は、管路7、9及び11により図1に示すものを含む、前重合ステップ、ラクチド生成ステップ又は1つ若しくは複数の分離ステップから種々のパージ流を介してシステムから除去することができる。
ほとんどの場合におけるシステムから除去される精製S,S−及びR,R−ラクチド流は、ポリラクチドを製造するためのモノマー源として用いることができる。図1において、精製S,S−及びR,R−ラクチド流は、第3の蒸留塔20から管路13を経て取り出される。この流れは、重合ユニット23中で重合されて、ポリラクチド流13Aを生成する。重合生成物は、液化されて、液化流24を生成する。示されているように、流れ24は、代わりに廃棄するか、又は他所で工程にリサイクルすることができるが、管路19を経てラクチド反応器2にリサイクルされる。
特殊な重合法は必要でない。ポリラクチド樹脂を調製する特に適切な方法は、米国特許第5,247,059号、第5,258,488号及び第5,274,073号に記載されている。それらの特許に記載されている方法において、ラクチドを液体として重合システムに直接供給し、そこで、それを触媒の存在下で高温にて重合させる。分子量が増加するとき、ポリマーと遊離ラクチドとの間の平衡が成立し、それにより、分子量の増加が制限され、特定の量の遊離ラクチドを含むポリマーが生成する。遊離ラクチドは、しばしば望ましくないある程度の可塑化効果を有し、ポリマー加工装置の表面を被覆する傾向もある。これらの理由のため、重合工程は、ポリマーの遊離ラクチド含量が好ましくは1重量%未満、より好ましくは0.3重量%未満に減少する液化ステップを一般的に含む。
重合は、回分式で、半連続式又は連続式で行わせることができる。連続撹拌槽型反応器(CSTR)及び管型又はパイプ型反応器が適切な種類の重合容器である。一連のCSTR又は管型若しくはパイプ型反応器を用いて、重合を段階的に行わせることができる。これは、所望の場合、重合工程における特定の段階で添加物を導入することを可能にし、異なる反応条件を重合の異なる段階で用いることも可能にする。
適切な重合温度は、好ましくは(無溶媒法について)モノマー又はモノマー混合物の溶融温度超、コポリマー生成物の溶融温度超であるが、ポリマーの有意な分解が起こる温度未満である。好ましい温度範囲は、約100℃〜約220℃である。より好ましい温度範囲は、120℃〜約200℃、特に約160℃〜約200℃である。重合温度における滞留時間は、所望の分子量のポリマー及び/又はモノマーの所望の変換をもたらすように選択する。USP6,277,951に記載されているような分子量調節剤を加えて、所望の分子量を得ることもできる。
分子量及び変換は、重合時間及び時間、遊離ラクチドとポリマーとの間の平衡により、また開始剤化合物の使用により制御される。一般的に、モル基準での開始剤化合物の量が増加すると、ポリマー生成物の分子量が低下する傾向がある。重合は、金属含有触媒の存在下で行わせる。これらの触媒の例としては、SnCl、SnBr、SnCl、SnBr、SnO、ビス(2−エチルヘキサン酸)スズ(II)、ブチルスズトリス(2−エチルヘキサノエート)、水和モノブチルスズオキシド、ジラウリン酸ジブチルスズ、テトラフェニルスズ等などの様々なスズ化合物;PbO、亜鉛アルコシキド、ステアリン酸亜鉛、アルミニウムアルコキシドなどの化合物、三酢酸アンチモン及び(2−エチルヘキサン酸)アンチモンなどの化合物、(2−エチルヘキサン酸)ビスマス、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウムなどの化合物、McLainらへの米国特許第5,208,667号に記載されているような特定のイットリウム及び希土類化合物などがある。触媒は、個々の触媒に多少依存するが、通常、約3000〜50000モルのモノマーに対して約1モルの触媒の範囲にある、触媒的に有効な量で用いる。好ましい触媒濃度は、5000モルのモノマー当たり1モル以下の触媒、特に、10000モルのモノマー当たり1モル以下の触媒である。
得られるPLA樹脂は、好ましくはPLA樹脂を不活性化剤と接触させることにより不活性化される、金属触媒残留物を含む。
いくつかの場合に、S,S−及びR,R−ラクチド流(図1における流れ13など)は、ほとんど又は全くメソラクチドを含まない。そのような場合に、該流れ中のすべて又はほぼすべての非優勢乳酸単位は、対応する非優勢ラクチド形(S,S−ラクチド又はより通常はR,R−ラクチド)の形で存在する。そのような流れを重合させる場合、流れ中の非優勢ラクチドモル分率が、ポリラクチド中のS−鏡像異性体とR−鏡像異性体との比率を主として支配する。
しかし、若干のメソラクチドが精製S,S−及びR,R−ラクチド流中に残存するように分離ステップを操作することによってS,S−及びR,R−ラクチド流中のS−乳酸単位とR−乳酸単位との比率を調節することは、本発明の範囲内にある。例えば、S,S−及びR,R−ラクチド流が、所望の品質等級のポリラクチド樹脂を製造するのに十分な優位性の低いラクチド形を含まない場合に、これを行うことができる。S−乳酸単位が優勢である通常の場合、より多くのメソラクチドを残すことにより、結晶度のより低いポリラクチドを生成する傾向がある、流れ中のR−乳酸単位の割合が増加する。S,S−及びR,R−ラクチド流を追加のメソラクチドと混合することによって同じ効果が達成できる。これを重合する前に追加のS,S−ラクチド又はR,R−ラクチドと混合することによって、該流れにおける鏡像異性体比を調節することも可能である。
S,S−及びR,R−ラクチド流は、従来の方法より少ないメソラクチドを含む(優位性の低い鏡像異性体乳酸形が所定のモル分率で)ため、当流れから製造されるポリラクチドは、前と多少異なるポリマー構造を有する。このS,S−ラクチド/R,R−ラクチド混合物を重合させる場合、非優勢乳酸単位は、ポリラクチド生成物中でダイアドを形成する傾向がある。その代わりにS,S−ラクチド/メソラクチド混合物を重合させる場合、これらのダイアドは、ポリラクチド生成物中にほとんど生成しない。したがって、メソラクチドをR,R−ラクチドで置換することは、ポリラクチド中の優位性の低い乳酸単位のセグメントの平均長を増加させる効果を有する。
他方で、メソラクチドを等モルで非優勢ラクチドに置換することは、優勢鏡像異性体のセグメントの平均長に対してせいぜい小さい効果しか有さない。実際、メソラクチドを優位性の低いラクチドで置換することは、優勢乳酸単位のセグメントの長さを有意に変化させずにポリマー中の非優勢乳酸単位の割合を増加させることを可能にする。より一般的には、優位性の低いラクチドが重合混合物中のメソラクチドを置換する場合、優勢乳酸単位のセグメントの長さは、ポリラクチド中の優位性の低い乳酸単位の割合に対する感受性がより低くなる。S,S−ラクチドが、R−鏡像異性体が優勢であるシステムにおけるメソラクチドを置換する場合に、同じ効果が認められる。
ポリラクチド中のS−及びR−乳酸単位の配列の平均長は、例えば、K. Thakurら、「A Quantitative Method for Determination of Lactide composition in Poly(lactide) Using 1H NMR」、Anal. Chem.、1997年、69巻、4303〜4309頁により記載されているようなNMR法を用いて測定することができる。
半結晶性ポリラクチドの結晶特性は、優位性の低い鏡像異性体(再び、一般的にR−乳酸単位)のセグメントの長さにごくわずかに依存するが、それらの特性は、優勢鏡像異性体(一般的にS−乳酸単位)のセグメントの長さにかなり著しく依存する。この傾向は、1つの鏡像異性体が、ポリマーが半結晶性であるのに十分に優勢である場合に当てはまる。これは、約85:15以上、好ましくは92:8以上の鏡像異性体比に相当する。優位性の低い乳酸単位のより高い含量は、所定の一連の結晶特性を達成するのに許容できる。さらに、ポリマー特性は、鏡像異性体比にさほど敏感ではない。したがって、優位性の低い乳酸単位の含量のより大きい変動は、S,S−ラクチド/R,R−ラクチドコポリマーでは許容できる。S−及びR−乳酸単位のモル分率は、本方法においては厳しく制御しなければならないことはない。
ポリラクチドの結晶特性は、樹脂の結晶化溶融温度により、また結晶化の速度の尺度である結晶化ハーフタイムによっても表すことができる。結晶溶融温度は、次のように示差走査熱量測定(DSC)により測定することができる。試料を250℃に加熱し、すべての結晶が溶融するのに十分に長く当温度に保持する。次に試料を50℃/分で又はより速く約110〜130℃に冷却し、次に約110〜130℃に保持して結晶を形成させる。次にそれを50℃/分で加熱し、結晶溶融温度(単数又は複数)を測定する。結晶溶融温度は、溶融中の吸熱ピークの中央の温度と定義される。
「結晶化ハーフタイム」は、DSCにより測定され、ポリラクチド樹脂の結晶化速度の指標を提供する。それは次のように評価することができる。試料をすべての結晶を溶融するのに十分に長い期間250℃で溶融し、次に50℃/分で又はより速く130℃に冷却する。試料を130℃に保持し、さらなる結晶が発生しなくなるまで当温度で結晶化させる。結晶化のエンタルピーを時間の関数として追跡記録する。最終結晶化度の1/2を発生するのに必要な時間が結晶化ハーフタイムである。次に試料を250℃で加熱して微結晶を溶融し、生成した微結晶の溶融温度を測定する。優位性の低い乳酸単位が主として非優勢ラクチドから供給されるポリラクチドは、ほとんどの場合に、優位性の低い乳酸単位が主としてメソラクチドから供給される、優位性の低い乳酸単位の同等の含量を有する同様なポリラクチドと等しいか、又はより短い結晶化ハーフタイムを有することが発見された。多くの場合、従来のポリラクチド樹脂と同等の結晶化ハーフタイムは、優位性の低い鏡像異性体のより高いレベルにおいてさえ得ることができる。したがって、同等の結晶化速度を保持しながら、S,S−ラクチド/メソラクチド又はR,R−ラクチド/メソラクチドコポリマーにおけるより高い割合の優位性の低い鏡像異性体がS,S−ラクチド/R,R−ラクチドコポリマーに存在し得る。
本発明の一実施形態において、本方法のステップc)で得られる精製S,S−及びR,R−ラクチド流中のラクチドのモル分率は、少なくとも0.80S,S−ラクチド、0.005〜0.20R,R−ラクチド及び0〜0.10メソラクチドであり、メソラクチドのモル分率は、R,R−ラクチドのモル分率より低いか、又は等しい。他の実施形態において、それらのモル分率は、少なくとも0.90S,S−ラクチド、0.005〜0.10R,R−ラクチド及び0〜0.05メソラクチドであり、メソラクチドのモル分率は、R,R−ラクチドのモル分率より低いか、又は等しい。他の実施形態において、それらのモル分率は、少なくとも0.95S,S−ラクチド、0.005〜0.05R,R−ラクチド及び0〜0.025メソラクチドであり、メソラクチドのモル分率は、R,R−ラクチドのモル分率より低いか、又は等しい。これらの実施形態のいずれかにおいて、精製S,S−及びR,R−ラクチド流中のメソラクチドのモル分率は、0〜0.05、0〜0.03又は0〜0.01であってよい。それぞれのモル分率は、本発明の方法において主としてリサイクルされるメソラクチドの量、及びメソラクチドが本方法のステップc)で粗ラクチドから除去される程度により制御される。
R−鏡像異性体がシステムにおいて優勢である、他の実施形態において、ステップc)において生成する精製S,S−及びR,R−ラクチド流に含まれるラクチドのモル分率は、少なくとも0.80R,R−ラクチド、0.005〜0.20S,S−ラクチド及び0〜0.10メソラクチドであり、メソラクチドのモル分率は、S,S−ラクチドのモル分率より低いか、又は等しい。それらのモル分率は、少なくとも0.90R,R−ラクチド、0.005〜0.10S,S−ラクチド及び0〜0.05メソラクチドであってもよく、メソラクチドのモル分率は、S,S−ラクチドのモル分率より低いか、又は等しい、或いは、それらは、少なくとも0.95S,S−ラクチド、0.005〜0.05R,R−ラクチド及び0〜0.025メソラクチドであってもよい。これらの実施形態のいずれかにおいて、精製S,S−及びR,R−ラクチド流中のメソラクチドのモル分率は、0〜0.05、0〜0.03又は0〜0.01であってよい。前と同様に、それぞれのモル分率は、本発明の方法において主としてリサイクルされるメソラクチドの量、及びメソラクチドが本方法のステップc)で粗ラクチドから除去される程度により制御される。
本発明の方法は、新規であり、有益な結晶化特性を有する種々のポリラクチドコポリマーの製造を促進する。これらの新規なコポリマーは、S,S−ラクチド、R,R−ラクチド及び場合によってメソラクチドを含むラクチド混合物のコポリマーと一般的に述べることができ、ここでa)S,S−ラクチド又はR,R−ラクチドがラクチド混合物中で優勢であり、他のものが非優勢であり、b)ラクチド混合物が少なくとも80%の優勢ラクチド、0.5〜20%の非優勢ラクチド及び0〜10%のメソラクチドを含み(すべてが混合物中のラクチドの重量に基づいて)、c)存在するメソラクチドの量が非優勢ラクチドの量より少ないか、又は等しい。
特定のコポリマーは、S,S−ラクチド、R,R−ラクチド及び場合によってメソラクチドを含むラクチド混合物のコポリマーであり、ここでa)S,S−ラクチド又はR,R−ラクチドがラクチド混合物中で優勢であり、他のものが非優勢であり、b)ラクチド混合物が少なくとも88〜99.5%の優勢ラクチド、0.5〜12%の非優勢ラクチドを含み、メソラクチドを含まないか、又は非優勢ラクチドの量より少ないか若しくは等しい量のメソラクチドを含む。
他の特定の好ましいコポリマーは、S,S−ラクチド、R,R−ラクチド及び場合によってメソラクチドを含むラクチド混合物のコポリマーであり、ここでa)S,S−ラクチド又はR,R−ラクチドがラクチド混合物中で優勢であり、他のものが非優勢であり、b)ラクチド混合物が90〜99.5%の優勢ラクチド、0.5〜10%の非優勢ラクチドを含み、メソラクチドを含まないか、又は非優勢ラクチドの量より少ないか若しくは等しい量のメソラクチドを含む。
他の特定のコポリマーは、S,S−ラクチド、R,R−ラクチド及び場合によってメソラクチドを含むラクチド混合物のコポリマーであり、ここでa)S,S−ラクチド又はR,R−ラクチドがラクチド混合物中で優勢であり、他のものが非優勢であり、b)ラクチド混合物が92〜99.5%の優勢ラクチド、0.5〜8%の非優勢ラクチドを含み、メソラクチドを含まないか、又は非優勢ラクチドの量より少ないか若しくは等しい量のメソラクチドを含む。
好ましいコポリマーは、S,S−ラクチド、R,R−ラクチド及び場合によってメソラクチドを含むラクチド混合物のコポリマーであり、ここでa)S,S−ラクチド又はR,R−ラクチドがラクチド混合物中で優勢であり、他のものが非優勢であり、b)ラクチド混合物が95〜99.5%の優勢ラクチド、0.5〜5%の非優勢ラクチドを含み、メソラクチドを含まないか、又は非優勢ラクチドの量より少ないか若しくは等しい量のメソラクチドを含む。
好ましいコポリマーは、S,S−ラクチド、R,R−ラクチド及び場合によってメソラクチドを含むラクチド混合物のコポリマーであり、ここでa)S,S−ラクチド又はR,R−ラクチドがラクチド混合物中で優勢であり、他のものが非優勢であり、b)ラクチド混合物が97〜99.5%の優勢ラクチド、0.5〜3%の非優勢ラクチドを含み、メソラクチドを含まないか、又は非優勢ラクチドの量より少ないか若しくは等しい量のメソラクチドを含む。
これらの特定のコポリマーのそれぞれにおいて、メソラクチドの量は、非優勢ラクチドの量の1/2以下、1/4以下又は1/10以下であり得る。非優勢ラクチドは、ほとんどの場合にR,R−ラクチドであるが、これらの特定のコポリマーのそれぞれにおいてS,S−ラクチドであり得る。
以下の実施例は、本発明を例示するために示すが、その範囲を限定するものではない。すべての部及び百分率は、特に示さない限り、重量単位である。
実施例1及び2並びに比較運転A及びB
図1に概略図を示すラクチド/ポリラクチド製造システムを運転する。64%乳酸水溶液の新たな流れを管路5を経てプレポリマー反応器1に供給する。この流れ中の乳酸は、99.8%S−乳酸及び0.2%R−乳酸である。オーバーヘッド流をプレポリマー反応器1から管路7を経て取り出す。プレポリマーを管路6を経てラクチド反応器2に移し、管路18を経て触媒を加える。パージ流をラクチド反応器2から管路9を経て取り出す。粗ラクチドを管路8を経て第1の蒸留塔3に送る。粗ラクチドに含まれる水及び乳酸の大部分、並びに少量のラクチド及び若干の線状乳酸オリゴマーを含むオーバーヘッド流を第1の蒸留塔3から管路12を経て取り出し、当流れの内容物を、管路5を経てプレポリマー反応器1に入る新たな乳酸流と合わせ、そのようにしてリサイクルする。部分的に精製される粗ラクチドを管路10を経て第2の蒸留塔4に移す。オーバーヘッド流を第2の蒸留塔4から管路22を経て取り出し、ボトム流を管路11を経て取り出す。オーバーヘッド流は、主として水、乳酸又は線状乳酸オリゴマー及び若干のラクチドを含む。
精製粗ラクチド流を管路21を経て第3の蒸留塔20に移し、そこで、メソラクチドをS,S−及びR,R−ラクチドから分離する。生成物流を第3の蒸留塔20から管路13を経て取り出す。分離は、生成物流13のR−鏡像異性体含量が1.5%であるように行う。この生成物流を重合ユニット23中で重合させて、ポリラクチド流13Aを生成する。重合生成物を液化させて、液化流24を生成する。流れ24を流れ11及び22と混ぜ合わせ、それらを一緒に管路19を経てラクチド反応器2にリサイクルする。
メソラクチドを第3の蒸留塔20から管路14を経て取り出す。中沸点不純物流15又はパージ流16は取り出さない。
プレポリマー反応器中の条件は、次のとおりである:約80mmHgの圧力;170℃の温度及び約3時間の平均滞留時間。ラクチド反応器中の条件は、220℃、10〜15mmHgの圧力、1500ppmスズ触媒、滞留時間30〜60分である。
比較運転Aにおいて、メソラクチド流をシステムから除去し、廃棄する。この場合におけるシステムを通るフローは、以下のとおりである。
実施例1において、ラクチドがプレポリマーに再組込みされた状態になるように、0.45質量単位/時間のメソラクチド流14を管路14Aを経てラクチド反応器2にリサイクルする。ラクチド反応器中の条件は、プレポリマー中のリサイクルメソラクチドのほぼランダムな分布を得るのに十分なものである。これにより、プレポリマー中のR−鏡像異性体の量が増加し、ひいては粗ラクチド流中のメソラクチド及びR,R−ラクチドのモル分率が増加する。この場合におけるフローは、以下のとおりである。
比較運転A及び実施例1のそれぞれにおいて、重合に供するラクチド生成物流は,1.5%のR−乳酸単位を含む。しかし、ラクチド生成物流の組成は、2つの場合に次のように異なる。
ポリマーへの収率は、実施例1(21.9/25.2=86.9%)のほうが比較運転A(21.8/25.2=86.5%)よりわずかに高い。
比較運転Aにおいて、生成されるメソラクチドの4.4%がラクチド生成物流13中に残存するが、実施例1においては、本質的にいずれの生成したメソラクチドも生成物ラクチド流13とともにシステムから出ない。メソラクチドは実施例1においてより完全に分離されるため、その場合における生成物ラクチド流は、比較運転Aにおけるより少ない中沸点不純物を含む。比較運転Aにおいては、メソラクチド流14とともに除去される中沸点不純物は、当流れが廃棄されるため、システムからパージされる。実施例1の場合、それらの不純物は、メソラクチド流とともにリサイクルされる。システム中のそれらの蓄積は、流れ7、9及び16などのパージ流の容積を調節することによって防ぐことができる。
実施例1において、リサイクルされるメソラクチドの量が第3の蒸留塔20から取り出されるメソラクチド流より小さいことに注意すること。この場合におけるリサイクル流は、メソラクチド流の質量の約20%を構成しており、メソラクチド流からの損失が少なくともその量減少することを意味する。
比較運転B及び実施例2の場合、4.0%のR−鏡像異性体を含むS,S−及びR,R−ラクチド生成物流(13)を得るように分別蒸留塔を操作する。比較運転Bでは、メソラクチドリサイクルは存在しない。実施例2においては、5.5質量単位/時間のメソラクチドを管路14Aを経てラクチド反応器2にリサイクルする。これらの場合のフローは、次のとおりである。
実施例2のラクチド生成物流の組成は、R−鏡像異性体のモル分率が同じであるにもかかわらず、以下のように比較運転Bと異なる。
ポリマーへの収率は、実施例2(25.0/25.2=99.2%)のほうが比較運転B(23.2/25.2=92.1%)よりはるかに高い。
比較運転Bにおいて、生成したメソラクチドの総量の65%がラクチド生成物流13に残存するが、実施例2においては、生成したメソラクチドの約3%のみがラクチド生成物流13とともにシステムから出る。その理由のため、実施例2におけるラクチド生成物流は、比較運転Aにおけるより少ない中沸点不純物を含む。実施例1と同様に、中沸点不純物の蓄積は、流れ7、9及び16などのパージ流の容積を調節することによって実施例1の場合に防ぐことができる。
実施例2において、リサイクルされるメソラクチドの量は、第3の蒸留塔20から取り出されるメソラクチド流より大きい。これは、定常状態運転を続けるためには、メソラクチド流14に追加のメソラクチドを補給する必要があることを意味する。この問題は、プラントが複数の品質等級のポリラクチド樹脂を製造する場合には随時容易に解決することができる。実施例1で示したように、ポリラクチド樹脂のいくつかの品質等級の製造は、当品質等級を製造するときにリサイクルすることができる量を超える過剰のメソラクチドを生成する。実施例1の条件下(又は過剰のメソラクチドを生成する他の条件下)で生成する過剰のメソラクチドは、貯蔵し、実施例2の場合にメソラクチドリサイクルを補給するのに用いることができる。場合によってメソラクチドを貯蔵するためにリサイクル流を全く止めることも可能である。本発明の重要な利点は、高度に結晶性のポリラクチドを製造する場合に生成する過剰なメソラクチドが、過剰なメソラクチドを貯蔵し、多少低い結晶度のポリラクチドを製造する場合にそれを用いることによって、高価値ポリラクチド適用例に用いることができることである。
実施例3及び比較運転C
水中65重量%乳酸の公称組成を有し、>99%のS−異性体からなる乳酸を図に一般的に記述した装置を用いて処理して、ポリマーグレードのラクチドを生成する。条件は、一般的に前の実施例で述べたとおりである。蒸留塔20を各場合に操作して、約4%のR−乳酸単位及び96%のS−乳酸単位を含む生成物ラクチド流を生成する。比較運転Cにおいて、メソラクチド流のリサイクルは実施しない。実施例3において、メソラクチドを管路14Aを経てラクチド反応器にリサイクルする(方法のステップb)。典型的なワンススループロセス値(質量単位/時間)を表3に示す。重合のために取り出された生成物ラクチド流(流れ13)の鏡像異性体組成に対するメソリサイクルの効果も当流れ中のコハク酸レベルとともに表3に示す。
前と同様に、メソラクチドをリサイクルすることにより、ラクチドのモル分率がR,R−ラクチドの生成がより高くなる方向に変化する。実施例3において、流れ13中のR−乳酸単位のほぼすべてがR,R−ラクチドにより供給されているが、比較運転Cにおいては、メソラクチドが当流れ中のR−乳酸単位の大部分を供給している。メソラクチドは実施例3においてS,S−及びR,R−ラクチドからよりきれいに分離されるため、コハク酸(重要な中沸点不純物)レベルは、比較運転Cの場合と比較して著しく低下する。
1 プレポリマー反応器
2 ラクチド反応器
3 第1の蒸留塔
4 第2の蒸留塔
5 乳酸又は乳酸誘導体流
6 低分子量ポリ乳酸流
7 流れ
8 粗ラクチド流
9 ボトム流
10 粗ラクチド流
11 ボトム流
12 オーバーヘッド流
13 精製S,S−ラクチド/R,R−ラクチド流
14 メソラクチド流
15 中間流
16 パージ流
17 ボックス
18 触媒流
19 管路
20 第3の蒸留塔
21 精製粗ラクチド流
22 管路
23 重合ユニット
24 液化流

Claims (36)

  1. 重合性ラクチド流を生成する方法であって、
    a)低分子量ポリ乳酸を生成するステップと、
    b)低分子量ポリ乳酸を解重合して、メソラクチド、S,S−ラクチド及びR,R−ラクチドを含み、S,S−ラクチド又はR,R−ラクチドが非優勢ラクチドである粗ラクチドを生成するステップと、
    c)1)メソラクチドのモル分率が少なくとも0.8であるメソラクチドを多く含む流れが形成され、且つ
    2)精製S,S−及びR,R−ラクチド流が形成されるように、
    1つ又は複数のステップでメソラクチドを粗ラクチドから分離するステップと、
    d)メソラクチド流の少なくとも一部をステップa)又はステップb)に直接的又は間接的にリサイクルし、
    それにより、リサイクルされたメソラクチド流中のメソラクチドの少なくとも一部をS,S−ラクチド、メソラクチド及びR,R−ラクチドの混合物に変換し、ステップb)で生成した粗ラクチド中の非優勢ラクチドのモル分率を、ステップd)が実施されない場合と比べて増加させるステップと
    を含む上記方法。
  2. ステップa)又はステップb)又は両方において、リサイクルされたメソラクチド流を、条件(1)が100〜300℃の温度であり、条件(2)がヒドロキシル含有種の存在であり、条件(3)が乳酸重合/解重合触媒又はトランスエステル化触媒の存在である、条件(1)、(2)及び(3)の少なくとも1つに少なくとも30分間さらす、請求項1に記載の方法。
  3. ステップb)において、リサイクルされたメソラクチド流を180〜250℃の温度、ヒドロキシル種の存在及び乳酸重合/解重合触媒の存在にさらし、ステップb)における滞留時間が少なくとも15分である、請求項2に記載の方法。
  4. メソラクチド流をステップa)又はステップa)の上流にリサイクルし、リサイクルされたメソラクチドがステップa)で存在する液相中に混入した状態になる、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
  5. メソラクチド流をステップb)にリサイクルし、(1)メソラクチド流をサブクール液体としてステップb)に導入すること、(2)メソラクチド流をステップa)で生成した低分子量ポリ乳酸と前混合し、それらを一緒にステップb)に導入すること、(3)ステップb)における低分子量ポリ乳酸の表面又はその下にメソラクチド流を導入すること、(4)メソラクチド流をステップb)にリサイクルする前にメソラクチド流の独立した加水分解ステップを設けること、又は(5)これらのいずれか2つ以上の組合せによりメソラクチド流をリサイクルする、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
  6. ステップc)が分別蒸留ステップを含む、請求項1から5のいずれかに記載の方法。
  7. ステップc)が溶融結晶化ステップを含む、請求項1から6のいずれかに記載の方法。
  8. 少なくとも90%のS又はR鏡像異性体及び10%以下の他の鏡像異性体を含む乳酸又は乳酸誘導体を重合させることにより、低分子量ポリ乳酸をステップa)において生成させる、請求項1から7のいずれかに記載の方法。
  9. ステップa)において重合させる乳酸又は乳酸誘導体により供給される乳酸単位1モル当たり0.015〜0.5モルの乳酸単位を供給するのに十分なメソラクチド流をリサイクルする、請求項8に記載の方法。
  10. ステップa)において重合させる乳酸又は乳酸誘導体により供給される乳酸単位1モル当たり少なくとも0.1モルの乳酸単位を供給するのに十分なメソラクチド流をリサイクルする、請求項9に記載の方法。
  11. ステップa)において重合させる乳酸又は乳酸誘導体により供給される乳酸単位1モル当たり0.25モルまでの乳酸単位を供給するのに十分なメソラクチド流をリサイクルする、請求項10に記載の方法。
  12. 乳酸又は乳酸誘導体が少なくとも好ましくは少なくとも99%のS又はR鏡像異性体及び1%以下の他の鏡像異性体を含む、請求項8から11のいずれかに記載の方法。
  13. ステップb)において生成する粗ラクチド中の非優勢ラクチドのモル分率が、ステップd)を実施しない場合と比べて0.005〜0.05増加する、請求項1から12のいずれかに記載の方法。
  14. ステップb)において生成する粗ラクチド中の非優勢ラクチドのモル分率が、ステップd)を実施しない場合と比べて0.01〜0.05増加する、請求項1から13のいずれかに記載の方法。
  15. ステップb)において生成する粗ラクチドに含まれているラクチドのモル分率が0.50〜0.85S,S−ラクチド、0.145〜0.45メソラクチド及び0.005〜0.05R,R−ラクチド、又は0.50〜0.85R,R−ラクチド、0.145〜0.45メソラクチド及び0.005〜0.05S,S−ラクチドである、請求項1から14のいずれかに記載の方法。
  16. ステップb)において生成する粗ラクチドに含まれているラクチドのモル分率が0.60〜0.82S,S−ラクチド、0.16〜0.39メソラクチド及び0.01〜0.04R,R−ラクチド、又は0.60〜0.82R,R−ラクチド、0.16〜0.39メソラクチド及び0.01〜0.04S,S−ラクチドである、請求項15に記載の方法。
  17. ステップb)において生成する粗ラクチドに含まれるラクチドのモル分率が0.67〜0.80S,S−ラクチド、0.19〜0.30メソラクチド及び0.01〜0.03R,R−ラクチド、又は0.67〜0.80R,R−ラクチド、0.19〜0.30メソラクチド及び0.01〜0.03S,S−ラクチドである、請求項15に記載の方法。
  18. ステップc)において生成する精製S,S−及びR,R−ラクチド流に含まれるラクチドのモル分率が少なくとも0.80S,S−ラクチド、0.005〜0.20R,R−ラクチド及び0〜0.10メソラクチドであり、メソラクチドのモル分率がR,R−ラクチドのモル分率より低いか、又は等しい、請求項1から17のいずれかに記載の方法。
  19. 精製S,S−及びR,R−ラクチド流中のメソラクチドのモル分率が0〜0.01である、請求項18に記載の方法。
  20. ステップc)において生成する精製S,S−及びR,R−ラクチド流に含まれるラクチドのモル分率が少なくとも0.90S,S−ラクチド、0.005〜0.1R,R−ラクチド及び0〜0.05メソラクチドであり、メソラクチドのモル分率がR,R−ラクチドのモル分率より低いか、又は等しい、請求項1から17のいずれかに記載の方法。
  21. 精製S,S−及びR,R−ラクチド流中のメソラクチドのモル分率が0〜0.01である、請求項20に記載の方法。
  22. ステップc)において生成する精製S,S−及びR,R−ラクチド流に含まれるラクチドのモル分率が少なくとも0.95S,S−ラクチド、0.005〜0.05R,R−ラクチド及び0〜0.025メソラクチドであり、メソラクチドのモル分率がR,R−ラクチドのモル分率より低いか、又は等しい、請求項1から17のいずれかに記載の方法。
  23. 精製S,S−及びR,R−ラクチド流中のメソラクチドのモル分率が0〜0.01である、請求項22に記載の方法。
  24. ステップc)において生成する精製S,S−及びR,R−ラクチド流に含まれるラクチドのモル分率が少なくとも0.80R,R−ラクチド、0.005〜0.20S,S−ラクチド及び0〜0.10メソラクチドであり、メソラクチドのモル分率がS,S−ラクチドのモル分率より低いか、又は等しい、請求項1から17のいずれかに記載の方法。
  25. 精製S,S−及びR,R−ラクチド流中のメソラクチドのモル分率が0〜0.01である、請求項24に記載の方法。
  26. ステップc)において生成する精製S,S−及びR,R−ラクチド流に含まれるラクチドのモル分率が少なくとも0.90R,R−ラクチド、0.005〜0.10S,S−ラクチド及び0〜0.05メソラクチドであり、メソラクチドのモル分率がS,S−ラクチドのモル分率より低いか、又は等しい、請求項1から17のいずれかに記載の方法。
  27. 精製S,S−及びR,R−ラクチド流中のメソラクチドのモル分率が0〜0.01である、請求項26に記載の方法。
  28. ステップc)において生成する精製S,S−及びR,R−ラクチド流に含まれるラクチドのモル分率が少なくとも0.95R,R−ラクチド、0.005〜0.05S,S−ラクチド及び0〜0.025メソラクチドであり、メソラクチドのモル分率がS,S−ラクチドのモル分率より低いか、又は等しい、請求項1から17のいずれかに記載の方法。
  29. 精製S,S−及びR,R−ラクチド流中のメソラクチドのモル分率が0〜0.01である、請求項28に記載の方法。
  30. ステップc)において、中沸点不純物が、メソラクチドを多く含む流れ中で濃縮された状態になる、請求項1から29のいずれかに記載の方法。
  31. メソラクチドを多く含む流れが無水コハク酸を含み、無水コハク酸をステップd)の前にメソラクチドから分離する、請求項1から30のいずれかに記載の方法。
  32. ステップc)において生成する精製S,S−及びR,R−ラクチド流を重合させるステップをさらに含む、請求項1から31のいずれかに記載の方法。
  33. S,S−ラクチド、R,R−ラクチド及び場合によってメソラクチドを含むラクチド混合物のコポリマーであって、a)S,S−ラクチド又はR,R−ラクチドがラクチド混合物中で優勢であり、他のものが非優勢であり、b)ラクチド混合物が、混合物中のラクチドの重量に基づいて80〜99.5%の優勢ラクチド、混合物中のラクチドの重量に基づいて0.5〜20%の非優勢ラクチドを含み、メソラクチドを含まないか、又は非優勢ラクチドの量より少ないか若しくは等しい量のメソラクチドを含む、コポリマー。
  34. S,S−ラクチド、R,R−ラクチド及び場合によってメソラクチドを含むラクチド混合物のコポリマーであって、a)S,S−ラクチド又はR,R−ラクチドがラクチド混合物中で優勢であり、他のものが非優勢であり、b)ラクチド混合物が、混合物中のラクチドの重量に基づいて90〜99.5%の優勢ラクチド、混合物中のラクチドの重量に基づいて0.5〜10%の非優勢ラクチドを含み、メソラクチドを含まないか、又は非優勢ラクチドの量より少ないか若しくは等しい量のメソラクチドを含む、コポリマー。
  35. S,S−ラクチド、R,R−ラクチド及び場合によってメソラクチドを含むラクチド混合物のコポリマーであって、a)S,S−ラクチド又はR,R−ラクチドがラクチド混合物中で優勢であり、他のものが非優勢であり、b)ラクチド混合物が、混合物中のラクチドの重量に基づいて95〜99.5%の優勢ラクチド、混合物中のラクチドの重量に基づいて0.5〜5%の非優勢ラクチドを含み、メソラクチドを含まないか、又は非優勢ラクチドの量より少ないか若しくは等しい量のメソラクチドを含む、コポリマー。
  36. a)無水コハク酸を加水分解してコハク酸を生成し、次に有機相及び水相を分離して、低いレベルの無水コハク酸を有する洗浄済みメソラクチドを得るステップ、b)無水コハク酸を加水分解してコハク酸を生成し、次にコハク酸を抽出するステップ、並びにc)メソラクチド及び無水コハク酸を加水分解して乳酸及びコハク酸の両方を生成し、蒸留によりコハク酸から乳酸を回収するステップの少なくとも1つを実施することを含む、メソラクチド流から無水コハク酸を分離する方法。
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