JP2012523879A - 超音波キャビテーションを使った腫瘍治療 - Google Patents
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Abstract
身体組織中の増殖は減速され、停止され、あるいは逆行させられる。ある側面では、これは、泡を提供し(S315)、前記増殖の遅延、停止および逆行のうちの少なくとも一つをさせる生理状態における一時的な変化を引き起こすために、増殖部位におけるそれぞれの焦点(213)へのエネルギーの一つまたは複数のパルス(206)の系列を送達することによって達成される。別の側面では、新生物の脈管構造中の過渡的な血管痙攣(216)のような生理状態の一時的な変化が、前記パルスによって引き起こされる流体キャビテーションの機械的、非熱的効果により誘起される。いくつかの実施形態においてキャビテーションを容易にするための泡は、宿主に微小泡剤を投与することによって賄われる。
Description
本発明は、身体組織の増殖制御に、より詳細には増殖を送らせ、停止させ、あるいは逆行させるためにエネルギーを加えることに関する。
あらゆる形態の癌は世界的に主要な死因となっている。既存のおよび予見されている癌療法の著しい限界は、これまでもこれからも、有害な副作用である。
連続波(CW: continuous wave)の集束超音波の加熱効果が、子宮筋腫の治療において細胞を殺すために使われている。残念ながら、組織において発達する温度場に対して循環が強い局所的効果をもつため、治療される領域の範囲を制御することが難しい。
超音波キャビテーション(ultrasonic cavitation)に関わる非加熱手法は、溶血、微小血管系における出血、音穿孔(sonoporation)、血液脳関門の過渡的な開放、アポトーシスおよび細胞死を含む多様な生体効果を引き起こすことが知られている。生体効果の型および重大さは多くの因子に依存する。そういった因子には、超音波パラメータ(周波数、振幅、デューティーサイクルなど)、集中度、微小泡シードが導入される場合そのサイズおよび型ならびにキャビテーション・イベントのミクロ環境(組織の型および血流)が含まれる。
本発明は、従来技術の上記の限界を克服または緩和することに向けられる。
薬物または遺伝子を標的ゾーンに送達するためにキャビテーション効果を活用する提案はこれまでも多かった。超音波媒介薬物および遺伝子送達はいくつかの疾病を治療するための有望な手法である。
しかしながら、これらの方法はいまだ開発段階にあり、未解決の問題の一つは、そのような方法によって放出される薬物または遺伝子が、血流によって治療部位から洗い流されてしまい、局所化された放出が、身体中の薬物分子の理想的な分配につながらないことがありうるということである。同様に、加熱効果との関連で上述したようなHIFU(high-intensity focused ultrasound[高強度集束超音波])技法によって投下される熱エネルギーは、直接伝導および血流対流によって拡散しがちである。
近年の研究は、腫瘍新生血管の独特な詳細を明らかにした。典型的には、腫瘍組織の低酸素症は血管形成を誘起し、これが酸素拡散限界(oxygen diffusion limit)を超えて腫瘍が急速に増殖することを許容する。これら新しい血管は貧弱に組織化されており、正常な組織には見られない多数の欠陥または異常を示す。腫瘍細胞は一般に、資源限界に達するまで増殖するので、たいていの腫瘍は臨界的なレベルで灌流される。
現時点で、腫瘍脈管構造の独特の特性を活用する手法はほとんど存在しない。当業者におなじみの一つのそのようなアプローチは、抗VEGF(vascular endothelial growth factor[血管内皮増殖因子])抗体または他の血管形成抑制薬候補を投与して、新生血管形成を抑制することである。いくつかの血管形成抑制薬が現在、臨床開発中である。もう一つのアプローチは、EPR(enhanced permeability and retention[向上した透過および滞留])効果に基づくもので、通例、リポソーム、ミセルまたは巨大分子/複合体のような薬物担体ナノ粒子の形の血液循環薬剤が腫瘍領域において管外遊出し、脈管構造を出て、腫瘍脈管構造中の内皮細胞間の不完全な結合に起因する開窓を通じて組織間隙空間に移る。このアプローチを活用するいくつかの薬物送達製品が現在入手可能である。最も広く知られているのが、ドキソルビシン・アントラサイクリン抗癌性抗生物質をもつドキシル(Doxil(商標))(シーリクス(Caelyx(商標)))という長循環リポソームである。
本願の発明者は、微小泡によって強化された超音波キャビテーション効果は、長期間にわたって腫瘍生理における変化を誘起でき、したがって腫瘍サイズの縮小とともに、腫瘍増殖の制約またさらには退行さえ引き起こすことができることを発見した。
本発明によれば、新生組織形成を処置するために、血流の急性の(acute)局在化された崩壊〔破断〕が誘起される。この血管痙攣効果は、腫瘍脈管構造において敏感にされ、したがって、治療ゾーンにおける正常組織は差別的に免除される。さらに、腫瘍灌流の臨界的な状態は、血流破断後の虚血のより大きな可能性および重大性を許容する。
キャビテーション・イベントは短寿命で、入射超音波がオフにされたあと典型的には1秒未満しか存続しないので、キャビテーションの直接的な生体効果は、照射ゾーンによく局在化される。
本発明者の試験結果は、血管痙攣効果が超音波処置後数秒以内にトリガーされることを示している。これは、リアルタイムで直接的にモニタリングする可能性を提供する。
本願で提案されるところによれば、音波からの刺激とともに振動することによって超音波場において応答する微小泡が利用される。この振動は、安定(連続的)および不安定(急速な内破)となるよう制御できる。これらの振動は、微小泡の表面の動きの中間的な効果を通じて、超音波場と組織の向上された相互作用を許容する。
手順的には、本発明のあるバージョンによれば、組織増殖を遅らせる、停止させるまたは逆行させることは、増殖の現在部位について泡を提供し、前記増殖を遅らせる、停止させるおよび逆行させるのうちの少なくとも一つを行う生理における一時的な変化を引き起こすために現在部位における現在の焦点にエネルギーのパルスを送達することを含む。現在部位において、送達されるべきパルスの次の焦点が存在する場合、送達は、現在焦点としての該次の焦点に対して実行される。パルスが送達されるべき次の焦点がなくなるまでこれが繰り返され、毎回、次の焦点を現在焦点とする。
上記の拡張として、泡の提供は増殖の次の部位についても泡を提供し、現在部位における焦点にパルスを送達することに続いて、上述した、次の部位における諸焦点に対する、点ごとのパルスの送達が行われる。
本発明のある側面では、現在部位における身体組織は脈管構造をもち、追加的なステップで、脈管構造中の血管痙攣について検査が行われる。
上記のある変形では、脈管構造は、血管痙攣の発生を確認するために、泡の流入について検査される。
上記のある実施形態では、前記検査は、直前のパルスにおいて泡が破壊されたところで実行される。したがって、流入が検査の時点で起こるとすれば、流入は新たな泡の流入である。
さらにもう一つの変形では、前記検査において血管痙攣がみつからず、現在部位における追加的な焦点がパルスを送達されるべきである場合、パルス発生手順はそれらの追加的な点について繰り返される。
さらにもう一つの変形では、生理における一時的な変化は血管痙攣を含み、血管痙攣に起因する血流の崩壊および任意の閉塞は一時的であって、その持続時間は1分より長く8時間より短い。
上記の変形として、前記崩壊および任意の閉塞は、血管痙攣の開始の際、脈管構造中に存在する血液成分の保持につながる。
本発明のあるバージョンでは、現在部位における身体組織は脈管構造をもち、第一のパルスの送達に先行して、脈管構造中の泡の検出が行われる。
本発明のもう一つのバージョンでは、上記手順が、時間を経て繰り返されるべき医療処置のはたらきをしうる。
ある代替バージョンによれば、現在部位における身体組織は脈管構造をもち、パルスは、脈管構造中にキャビテーションを引き起こすのに十分だが、脈管構造中の血管を恒久的に損傷するには不十分な圧力を加える。
もう一つのバージョンでは、送達の結果として現在部位におけるキャビテーションを容易にするための薬剤が、新生物の宿主に投与される。
あるさらなるバージョンでは、パルスは現在の焦点に集束される超音波パルスである。
ある側面では、パルスは少なくとも250kHzの周波数をもつ。
異なる側面では、パルスは1000ミリ秒より短いパルス幅をもつ。
さらに異なる側面では、組織増殖(tissue growth)は新生組織形成(neoplasia)であり、現在部位(current site)は新生物(neoplasm)である。
任意的に、本発明によれば、新生物は長さが10ミリメートルを超える。
あるさらなる側面では、パルスは、0.1メガパスカルより大きな振幅の圧力を現在部位に加える。
ある代替的な側面では、身体組織における増殖に対して制御をはたらかせることは、流体中のキャビテーションの機械的、非熱的な効果を通じて、増殖を遅らせる、停止させるおよび逆行させるのうちの少なくとも一つを行う生理の一時的な変化を誘起するキャビテーション生成器を含む。それはさらに、増殖の宿主に対して、キャビテーションを容易にするための薬剤をリアルタイムで投与するよう構成された薬剤投与器を含む。
上記の代替に関してさらに含まれるのが、いくつかの実施形態では、新生物の脈管構造中の血管痙攣の発生のリアルタイムのモニタリングである。
他の実施形態では、新生物に対して制御をはたらかせることは、前記誘起および該誘起のための泡の送達をシーケンス制御するための制御システムと、泡の存在をモニタリングする泡モニタとに関わる。シーケンス制御は、泡の存在についての前記モニタリングの結果に関連して、前記誘起の実行を、リアルタイムで選択的に引き起こす。
さらなる変形として、シーケンス制御は、前記モニタリングの結果に関連して、キャビテーションを容易にするための前記薬剤の前記投与をリアルタイムで選択的に引き起こす。
本発明の諸実施形態では、新生物増殖に対して制御をはたらかせるための装置が一つまたは複数の集積回路として実装される。
この新たな増殖制御手順の詳細は、図面とともに、以下にさらに記載される。
図1は、例示的な限定しない例として、新生物(neoplasm)、たとえば腫瘍(tumor)に対して増殖制御をはたらかせるための装置100を描いている。装置100は制御システム110、キャビテーション発生器120、血管痙攣モニタ130、泡モニタ140、物質投与器150および撮像システム160を含み、これらは通信および電力バス170に接続されている。
キャビテーション発生器120は、対象の脈管構造中など流体中にキャビテーションを引き起こすためにエネルギーのパルスを放出する。
血管痙攣モニタ130は、パルス照射される脈管構造中の血管痙攣(vasospasm)があるかどうかをモニタリングする。
泡モニタ140は、有効なキャビテーションのために十分な泡、たとえば微小泡の存在についてモニタリングする。
物質投与器150は、パルス照射される脈管構造について泡を提供することによりキャビテーションを容易にする。具体的には、これは、微小泡の懸濁液である微小泡剤を対象、すなわち新生物の宿主に注入することによってなされてもよい。投与は例えば、腕または上腕において、IV(intravenous[静脈注射])医療機器を介してである。
撮像システム160はキャビテーション発生器120と対話し、案内ベースの撮像を提供する。撮像は数ある撮像モダリティの中でも、超音波、MRI(magnetic resonance imaging[磁気共鳴撮像])またはCT(computed tomography[計算機断層撮影])であってもよい。撮像システム160はまた、泡モニタ140によって、泡の存在をモニタリングする際に使われてもよい。撮像システム160はまた、治療前および治療後に血流を検出およびマッピングするための機能を含んでいてもよい。
リアルタイムで他のモジュール120〜160を協調させて、物質およびパルス化されたエネルギーが適切なレベルで同期して送達されるようにすることが制御システム110の機能である。制御システム110は、キャビテーション発生器の療法トランスデューサを適切な圧力に励起することのできる駆動システムを有していてもよい。制御システム110は、微小泡の注入のための最適なレート、超音波パルスのタイミングおよび処置ゾーンにおける微小泡の最適数を決定するよう構成されることができる。
あるバージョンでは、制御システム110は、パルス発生を異なる部位に向けるようキャビテーション発生器120を物理的に動かすモーター・システムを含む。
もう一つのバージョンでは、制御システム110は、パルス発生を異なる部位に電子的に向けることのできる駆動システムを含む。
あるいはまた、装置100は、たとえば、撮像システムとは別個に実現でき、よって、他の点では既存の超音波システムのための一つまたは複数の集積回路として実装されてもよい。
さらに、装置100の基本バージョンは、たとえば、適切な制御論理を含むキャビテーション発生器120および泡モニタ140だけで達成できる。
図2は、例として、宿主204の器官、静脈または動脈202における新生物200の断面と、利用可能なパルス・パラメータ限界を示している。別のまたは次の新生物205も示されている。
宿主204は、人間の医療患者または温血哺乳類のような動物など、医療上の対象である。ただし、本発明はいかなる特定の形の生体にも限定されない。対象は、試験管内または生体外での医療試料であることもできる。
超音波パルス206は、音波とともに振動する泡、すなわち安定した(または非慣性)キャビテーションを生成するよう、あるいは振動が泡の急速な内破または崩壊によって特徴付けられる不安定な(慣性)キャビテーションを生じるよう制御される。
制御をはたらかせるべき増殖の現在部位である新生物200は、血管210からなる脈管構造208をもち、血管210中に微小泡212が導入されうる。微小泡剤の血流中への注入は、血液の流れる動きとともに、微小泡212を生成するのに十分である。
パルス206の焦点213への送達は直接に、図2で拡大図に示した、微小泡振動214を引き起こす。
たいていの時間は、新生物200中のそれぞれの焦点213への一つまたは複数の適切に構成されたパルス206の系列が血管痙攣、すなわち血管210の突然の緊縮をトリガーする。血管痙攣は血流を低下させるまたは破断する。目標とされる度合いの新生組織形成の抑制または退行を達成するためには、散発的に実施されてもよい数回の処置が必要とされることがありうる。
本願で提案される技法によって引き起こされる、超音波照射に起因する生理状態の変化である血管痙攣ならびに血管痙攣に起因する血流の崩壊および任意の閉塞は一時的であり、持続するのはたとえば1分から8時間の間であり、典型的には数分間である。だがこれでも新生組織形成を有効に治療するのに十分な長さである。血管の緊縮した部分216が、拡大図で、後刻血管痙攣から回復した回復部分218として示されている。血流の崩壊およびもし起これば閉塞は、血管痙攣の開始時に脈管構造中に存在する血液成分の保持につながる。新生物200を医療上治療するのに使われる薬物がその時点で血液中にあった場合、ありがたいことに、それらは局所的に保持されて治療を提供する。
下記でさらに詳細に論じる生きた動物の実験は、三つの関係した効果を示した:新生物中の灌流の急性の低下、新生物増殖の遅延またさらには逆行、試験動物の生存の延長。この結果は、幅広い多様な既知の治療法が通常効果がない大型腫瘍、すなわち10mm(ミリメートル)を超える長さの腫瘍について特に顕著である。
一つまたは複数のパルス206の系列が新生物200に、典型的には治療計画に従って、送達され、次いで血管痙攣について検査が行われる。パルス206がxとして示される微小泡220を破棄するので、微小泡221のいかなる流入も、新たな微小泡の流入222である。流入物222の微小泡221は、超音波を散乱して非正反射(または「スペックル」)を生じ、ドップラー超音波では血管からの流れ信号を増すので、検出されることができる。
超音波照射の直後に超音波照射の部位を検査することにより、血管痙攣が起こったかどうかが判定できる。具体的には、治療後数秒以内に、微小泡剤によって高められた血流を撮像することによって、血管痙攣が確認できる。
微小泡220は、直前のパルス206において破壊された。よって、新たな泡221の流入222は、血管痙攣216の欠如を示す。この流入222は簡単に観察できる。
他方、血管痙攣216が起こった場合、その重大さおよび継続時間は、血流撮像によって測定できる。この場合、流入222は、典型的には最後のパルス後数分たつまで見られない。
新生物200のサイズ、たとえば長さを小さくする効果をもった血管痙攣が、一連の小さくなる両矢印223によって示される。
パルス206の圧力は、図2では、曲がった両矢印226によって示されるように回転可能なポインター224によって、概念的に表現されている。ポインター224は、キャビテーションなしのゾーン228、恒久損傷ゾーン230または本発明の諸側面に一致して、中間のキャビテーション・ゾーン232を示すよう概念的に回転できる。圧力は、キャビテーションを引き起こすのに失敗するほど低いべきではない。同様に、圧力は、脈管構造を恒久的に傷つけるには不十分であるべきである。そのようなレベルは、そのような技法に関連する不慮の組織損傷を生じさせる可能性があるからである。新生物に入射してはたらかされるべき典型的な圧力は、5メガパスカルまたはたとえば少なくとも0.1メガパスカルであることができる。
パルス206のピークからピークまでの時間234は2μs(マイクロ秒)または等価だが周波数1/(2μs)=500kHz(キロヘルツ)をもつ。本発明に基づく、パルス206をサポートする最小周波数は、たとえば、250kHzであってもよい。例証の簡単のため5つのピークしか示していないパルス206は典型的な実際のパルスより短いが、パルス幅236はたとえば1000ms(ミリ秒)より短く保たれてもよい。
図3は、新生物増殖を遅らせる、停止させるまたは逆行させるための例示的な手順300および該手順を繰り返すための例示的なタイムラインを示している。
対象204の静脈または動脈202に送達ニードルまたはカテーテルが入れられる(ステップS305)。療法トランスデューサが治療ゾーン上に位置される(ステップS310)。任意的に、撮像システム160による案内が、より正確な位置付けを許容する。ユーザーがスイッチを操作すると、微小泡剤の流れが始まる。微小泡剤は宿主の血流を通じて循環し、増殖の部位200のために微小泡221を提供する(ステップS315)。泡モニタ140が脈管構造208の血管210中に適切な量の微小泡212を検出するとき(ステップS320、S325)、制御システム110は通知される。制御システム110は次いでキャビテーション発生器120に、新生物200における現在焦点213に集束する超音波パルス206を放出させる(ステップS330)。パルス照射されるべき次の焦点が治療計画などに存在すれば(ステップS335、S340)、処理はステップS330に戻る。毎回の現在焦点から次の焦点への移動は、機械的にまたは電子的に操られてもよい。そうでなく、パルス照射されるべき次の焦点が存在しない場合には(ステップS335、S340)、血管痙攣モニタ130が脈管構造208中に血管痙攣216があるかどうかの検査を開始する。血管痙攣216が見出されず、血管痙攣を達成するための努力において追加的な焦点がパルス照射されるべきであれば(ステップS345)、処理は分岐してステップS330に戻る。そうでなく、血管痙攣が検出されるまたは追加的な焦点がパルス照射されるべきでない場合には(ステップS345)、手順は完了する(ステップS350)。
ステップS340からS330に戻る二つの分岐経路のそれぞれが、次の部位、たとえば次の新生物205の処理について、一つまたは複数のそれぞれの焦点の系列についてであってもよいことを注意しておくべきである。これは、次の部位についての微小泡212が、たとえば全体的または局在化された適切な量で、ステップS320において検出された場合に当てはまる。あるいはまた、戻る分岐は、同じ部位220に、より長いまたはより短い継続時間の、より大きなまたはより小さなパワーの、より高いまたはより低い周波数の、などのパルス206を送達してもよい。
仮想的なスケジューリングまたはログ・タイムライン360は、手順300の何回かの反復360a〜360eを示している。タイムライン360は、数時間、数日、数か月などの期間を表していてもよい。時間的に、治療は散発的にスケジュールされるまたは生起するのでもよい。
新生物増殖制御装置100は、非侵襲治療のために体外であってもよいし、あるいは低侵襲治療のためにカテーテルまたはニードルの端に取り付けられてもよい。物質投与器150によって操作される微小泡送達システムはまた、ニードルまたはカテーテル・ベースであってもよい。
試験のために使われた例示的システムは、直径8cm(センチメートル)の8個の環状リング、焦点距離8cm(f数=8/8=1)、中心周波数1.2MHz(メガヘルツ)をもつ超音波療法トランスデューサをもつ。このトランスデューサはパルス波送達を与えることのできる駆動システムによって励起される。励起(すなわち高強度超音波のバースト)を適切に選ぶことによって、治療領域中の血流を一時的に止めることができることが見出された。本システムは、超音波撮像システムを組み込んでおり、これがリアルタイム・モニタリングおよび後続の評価機能を提供した。微小泡剤の注入により、本システムは、非常に低いレベルの灌流に対しても、非常に高い感度をもつ。
図4のAは、進行中の研究、特に治療群402および対照群404における新生物サイズの予備的な結果を示している。縦軸は平方ミリメートル単位の新生物サイズを表す。横軸は日単位の新生物日齢を表す。時間を追っての新生物サイズに対する治療の効果がグラフから見て取れる。
図4のBは第二の研究である。第一の研究と同様に、治療群410は、統計的に有意な腫瘍増殖の遅延を示している。体重測定は、治療群410と対照群420との間で統計的に有意な差は示していない。
両研究のそれぞれにおいて、最終的には制御腫瘍は、人道的な治療の採用された倫理基準によって確立されたサイズ限界を超えた。よって、所定のサイズを超えたところで、対照群420の構成員は安楽死させられた。
超音波による微小泡破壊後の腫瘍脈管構造における血流の低下
マウス・モデルにおける大振幅集束超音波治療後のリアルタイム超音波造影撮像によって腫瘍血流を評価する。
マウス・モデルにおける大振幅集束超音波治療後のリアルタイム超音波造影撮像によって腫瘍血流を評価する。
微小泡はペルフルオロブタン・ガスから用意され、ホスファチジルコリン/ステアリン酸PEGシェルを用いて安定化された。MC38マウス結腸腺癌細胞(J. Schlom、NIH)が皮下的にC57BL/6マウスの後足に投与された。腫瘍が>5〜6mmのサイズに達したのち、麻酔をかけられたマウスが集束超音波トランスデューサのもとに置かれた。0.05〜0.1mlの微小泡の静脈注射投与が実行され、その後すぐ1.2MHz 5MPaの超音波照射が腫瘍に、10個の1 Hz PRF 100Kサイクル・パルスとして送達された(TIPS(商標)システム、フィリップス)。腫瘍サイズの縮小を達成するため、超音波照射は繰り返して、すなわち本質的には日ごとに実行された。超音波照射中および照射後の超音波造影撮像はCL15トランスデューサ(HDI5000)を用いて実行された。リアルタイムの案内機能を達成するため、撮像トランスデューサは療法トランスデューサ上に固定された。組織灌流は、超音波造影微小泡の腫瘍脈管構造を通じた移動として監視された。記載された条件下での腫瘍の超音波治療の結果、組織温度がわずかに上昇した。TIPS(商標)超音波照射中の微小泡の破壊は超音波造影撮像によって腫瘍脈管構造中で観察された。腫瘍脈管構造中の微小泡のTIPS(商標)超音波照射の結果、腫瘍中の血流がすぐ低下したことが、超音波造影撮像によって観察された。この「血管途絶(vascular stunning)」効果は過渡的であり、腫瘍内の血流は数分以内に回復する。微小泡がないときは、腫瘍血流は超音波照射によって変更されなかった。診断超音波撮像による微小泡破壊は途絶を引き起こさなかった。腫瘍脈管構造内の大振幅療法超音波による微小泡の破壊の結果、血流が過渡的に低下した。この効果は、超音波支援による腫瘍薬物送達の成功に決定的である可能性がある:超音波照射開始後に血流が低下する場合、薬物担体システムは腫瘍に到達することができなくなる。他方、この効果を活用して、腫瘍中での放出された薬物の保持を高めることができる。
療法超音波による腫瘍脈管構造中の微小泡破壊の生理的効果は、血流および腫瘍灌流に対して有意な影響をもちうる。
身体組織中の増殖は減速され、停止され、あるいは逆行させられる。ある側面では、これは、泡を提供し、増殖部位におけるそれぞれの焦点へのエネルギーの一つまたは複数のパルスの系列を送達して、前記増殖の遅延、停止および逆行のうちの少なくとも一つをさせる生理状態における一時的な変化を引き起こすことによって達成される。別の側面では、新生物の脈管構造中の過渡的な血管痙攣のような生理状態の一時的な変化が、前記パルスによって引き起こされる流体キャビテーションの機械的、非熱的効果により誘起される。いくつかの実施形態においてキャビテーションを容易にするための泡は、宿主に微小泡剤を投与することによって賄われる。
本発明の諸実施形態は、肝臓、乳房、前立腺、脳、膵臓または超音波によって処置可能な他の器官のような局所化され、新生血管形成された腫瘍の治療のために特に有用である。幅広い癌の治療において適用されることが本発明の意図された範囲内である。
本発明によれば、送達される医療処置は信頼でき、空間的に正確であり、持続時間が短い。悪い生体効果が回避されるか、新生物に局所的に限定される。治療の成功はすぐ検証可能であり、大きな新生物さえ治療可能である。超音波ソリューションとしては、低コストである。
上述の実施形態は、本発明を限定するというよりは例解するものであること、当業者は付属の請求項の範囲から外れることなく数多くの代替的な実施形態を設計できるであろうことを注意しておくべきである。たとえば、図3のステップS320ないしS350はすべて手動で、あるいはユーザー介入の必要なしに自動的に実行されることができる。あるいは、ステップの一部は手動であり、残りが自動的でもよい。請求項では、括弧内に入れられた参照符号があったとしても、その請求項を限定するものと解釈してはならない。「有する」「含む」という動詞およびその活用形の使用は、請求項に記載される以外の要素やステップの存在を排除するものではない。要素の単数形の表現はそのような要素の複数の存在を排除するものではない。本発明は、いくつかの相異なる要素を有するハードウェアによって、およびコンピュータ可読媒体をもつ好適にプログラムされたコンピュータによって実装されてもよい。ある種の施策が互いに異なる従属請求項に記載されているというだけの事実がそれらの施策の組み合わせが有利に使用できないことを示すことはない。
Claims (24)
- 組織増殖を遅らせる、停止させるまたは逆行させる方法であって:
a)前記増殖の現在部位のために泡を提供する段階と;
b)前記増殖を遅らせる、停止させるおよび逆行させるのうちの少なくとも一つを行う生理状態における一時的な変化を引き起こすために、前記現在部位における現在の焦点にエネルギーのパルスを送達する段階と;
c)前記現在部位において、送達されるべきパルスの次の焦点が存在する場合(S340)、前記現在焦点としての前記次の焦点に対して前記段階b)およびc)を反復する段階とを含む、
方法。 - 請求項1記載の方法であって、前記段階a)が前記増殖の次の部位について泡を提供することを含み、当該方法がさらに、前記段階c)後に、前記現在部位としての前記次の部位に対して前記段階b)およびc)を反復する(S345)ことを含む、方法。
- 請求項1記載の方法であって、前記現在部位における身体組織は脈管構造をもち、当該方法はさらに:
d)前記脈管構造中の血管痙攣があるかどうかを検査する段階を含む、
方法。 - 請求項3記載の方法であって、前記段階d)は、血管痙攣の発生を確認するために、泡の流入があるかどうかについて前記脈管構造を検査することを含む、方法。
- 請求項4記載の方法であって、前記検査は、前記段階b)の直前のパルスにおいて泡が破壊されたところで実行され、前記流入が前記検査の時点で起こるとすれば、前記流入は新たな泡の流入である、方法。
- 請求項3記載の方法であって、さらに:
e)前記段階d)において血管痙攣がみつからず、前記現在部位における追加的な焦点が前記段階b)においてパルスを送達されるべきである場合(S345)、前記段階b)ないしd)をそれらの追加的な点について反復する段階を含む、
方法。 - 請求項3記載の方法であって、生理状態における前記一時的な変化は前記血管痙攣を含み、前記血管痙攣に起因する血流の崩壊および任意の閉塞は一時的であって、その持続時間は1分より長く8時間より短い、方法。
- 前記崩壊および任意の閉塞は、前記血管痙攣の開始の際、前記脈管構造中に存在する血液成分の保持につながる、請求項7記載の方法。
- 前記現在部位における身体組織は脈管構造をもち、当該方法はさらに、前記段階b)の前に、前記脈管構造中の泡を検出することを含む、請求項1記載の方法。
- 時間を追って繰り返される医療処置としての請求項1記載の方法。
- 請求項1記載の方法であって、前記現在部位における身体組織は脈管構造をもち、前記脈管構造は前記段階b)において前記パルスが送達される血管を含み、前記段階b)における前記パルスは、前記脈管構造中にキャビテーションを引き起こすのに十分だが、前記血管を恒久的に損傷するには不十分な圧力をはたらかせる、方法。
- 請求項1記載の方法であって、さらに、前記送達の結果として前記現在部位におけるキャビテーションを容易にするためのエージェントを、前記増殖の宿主に投与する段階を含む、方法。
- 前記段階b)における前記パルスが前記現在の焦点に集束される超音波パルスである、請求項1記載の方法。
- 前記段階b)における前記パルスが少なくとも250kHzの周波数をもつ、請求項1記載の方法。
- 前記段階b)における前記パルスが1000ミリ秒より短いパルス幅をもつ、請求項1記載の方法。
- 前記組織増殖は新生組織形成であり、前記現在部位は新生物である、請求項1記載の方法。
- 前記新生物は長さが10ミリメートルを超える、請求項16記載の方法。
- 前記段階b)における前記パルスが、0.1メガパスカルより大きな振幅の圧力を前記現在部位にはたらかせる、請求項1記載の方法。
- 身体組織における増殖に対して制御をはたらかせる装置であって:
流体中のキャビテーションの機械的、非熱的な効果を通じて、前記増殖を遅らせる、停止させるおよび逆行させるのうちの少なくとも一つを行う生理状態の一時的な変化を誘起するよう構成されたキャビテーション発生器と;
前記増殖の宿主に対して、前記キャビテーションを容易にするための物質をリアルタイムで投与するよう構成された物質投与器とを有する、
装置。 - 請求項19記載の装置であって、新生物の脈管構造中の血管痙攣の発生をリアルタイム・モニタリングするよう構成された血管痙攣モニタをさらに有する、装置。
- 請求項20記載の装置であって、前記誘起および該誘起のための泡の送達をシーケンス制御するための制御システムと、泡の存在をモニタリングする泡モニタとをさらに有しており、前記シーケンス制御は、泡の存在についての前記モニタリングの結果に関連して、前記誘起の実行をリアルタイムで選択的に引き起こす、装置。
- 請求項21記載の装置であって、前記シーケンス制御は、前記モニタリングの結果に関連して、前記投与をリアルタイムで選択的に引き起こす、装置。
- 一つまたは複数の集積回路として実装された、請求項19記載の装置。
- 組織増殖を遅らせる、停止させるまたは逆行させるためのコンピュータ・プログラムであって:
a)前記増殖の現在部位のために泡を提供する段階と;
b)前記現在部位における現在の焦点にエネルギーのパルスを送達する段階と;
c)前記現在部位において、送達されるべきパルスの次の焦点が存在する場合、前記現在焦点としての前記次の焦点に対して前記段階b)およびc)を反復する段階とを行うためにプロセッサによって実行可能な命令を含む、コンピュータ・プログラム。
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