JP2012519471A - 北米のイヌにおいて広まっているイヌジステンパーウイルスに基づく免疫原性組成物、ワクチンおよび診断法 - Google Patents

北米のイヌにおいて広まっているイヌジステンパーウイルスに基づく免疫原性組成物、ワクチンおよび診断法 Download PDF

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Abstract

地理的地域から収集されたイヌジステンパーウイルス(CDV)の新規に同定された単離体を含有する、免疫原性組成物および広域性ワクチンを提供する。新規に同定された単離体は、ヨーロッパ野生生物系統CDV、ならびに一方または両方の北極およびアメリカ−2系統のCDVの双方の特性を示す。したがって、ワクチンはヨーロッパ野生生物系統CDVおよび北極系統CDVまたはアメリカ−2系統CDVのいずれか、あるいは北極およびアメリカ−2系統CDVの両方での感染に対して広く防御性である。
【選択図】なし

Description

関連出願に対するクロスリファレンス
本出願は、その完全な内容が本明細書に援用される、2009年1月30日出願の米国仮特許出願61/148,791の優先権を請求する。
発明の分野
本発明は、一般的に、イヌジステンパーウイルス(CDV)の新規に同定された単離体に関する。特に、本発明は、これらの新規に発見された単離体を含有するか、または考慮に入れた、改善されたCDV免疫原性組成物、ワクチンおよび診断法を提供し、そして遺伝子構成に基づいて、免疫原性組成物、ワクチンおよび診断法において使用するための広域性単離体を選択するための体系的プロトコルを記載する。
イヌジステンパーウイルス(CDV)は、一本鎖RNAモルビリウイルス属(Morbillivirus)であり、すべての年齢のイヌが罹患する。CDVは、多臓器(multi−systemic)感染を引き起こし、これは目、呼吸器、胃腸、外皮および神経系に関与する可能性もあり、そして通常、迅速に致死性である。該疾患は、イヌにとって壊滅的な問題である一方、他の種もまた該ウイルスに感受性であり、例えば、アライグマ、キツネ、コヨーテ、オオカミ、多様な毛皮産生動物、ならびに大型非飼育ネコ科動物、例えばライオン、ヒョウ、チーター、およびトラが感受性である。過去に、ワクチンがCDV感染の発生率を減少させるのに有効であることが立証されてきている。しかし、完全にワクチン接種された動物においてさえ、CDV発生の復活があるようである。
CDVの赤血球凝集素(H)タンパク質は、宿主細胞−ウイルス結合に関与するウイルス表面タンパク質であり、そして該タンパク質における突然変異は、宿主細胞−ウイルス相互作用に影響を及ぼす。Hタンパク質は、CDVの病原性因子であると見なされる。Hタンパク質は、CDV単離体間で、アミノ酸配列の有意な(例えば約10%の)変異を示し、そしてこの変異の系統発生的分析は、ウイルス単離体を7つの系統:アメリカ−1、アメリカ−2、北極様、アジア−1、アジア−2、ヨーロッパ、およびヨーロッパ野生生物に分ける基礎となる(McCarthy, A.J., M.A. Shaw, およびS.J. Goodman. 2007. Proc. Biol. Sci. 274:3165−3174)。Hタンパク質に対する抗体は、感染に対する防御を提供し、そしてしたがって、ワクチン有効性に関する好ましい基礎である。しかし、抗体は必ずしも系統間で交差反応しない。したがって、特定の単離体に基づくワクチンは、ワクチンレシピエントに、他の単離体の感染に対する防御を提供する可能性もあるし、また提供しない可能性もある。これは、1)CDVなどのRNAウイルスによって高率の突然変異が示されること、および2)1つの国から別の国へとイヌが世界的に輸送されることが増え、以前は知られていなかった地域に新規系統が導入されるのを助長していることを考慮すると、特に問題である。さらに、特定のCDV単離体でワクチン接種されたイヌにとって、遺伝子的に遠いCDVに曝露されることは、入ってくるCDVウイルスが、免疫学的に特権を与えられた部位(例えば脳、神経節、脊髄、中枢、自律神経系、鼻平面(nasal plenum)および膀胱上皮)に隔絶されることにつながり、遺伝子的に遠いCDVが検出されないままに増殖し、そして蔓延することを可能にする可能性もあり、これは、診断試験の感度が欠けており、そして神経学的患者の長期治療の出費のために、獣医師が神経学的症状を見過ごす可能性もあるためである。
不運なことに、現在使用されているCDVワクチンは、約60年間、最新のものにされておらず(Womaら, 2010. Phylogenetic analysis of the hemagglutinin gene of the current wild−type canine distemper viruses from South Africa:Lineage Africa. Vet. Microbiol. doi:10.1016/jvet−mic.2009.11.013)、そしてこれらの変化に対応してきていない。これらの時代遅れのワクチンは、CDVの新規に出現しつつある系統の感染に対する防御を提供しない可能性もあるため、これらのワクチンの使用は、CDV感染の最近の大流行の原因である可能性が高い。さらに、PCR配列決定によって、1つの商業的ワクチン中で用いられているワクチン単離体は誤って同定されていることが明らかになり(Demeterら, 2009: Controversial results of the genetic analysis of a canine distemper vaccine strain. Vet. Microbiol. Published Online)、これによって、CDV感染および伝染を最適に検出し、監視し、そして防止する方法を決定する問題がさらに複雑なものになっている。
McCarthy, A.J., M.A. Shaw, およびS.J. Goodman. 2007. Proc. Biol. Sci. 274:3165-3174 Womaら, 2010. Phylogenetic analysis of the hemagglutinin gene of the current wild-type canine distemper viruses from South Africa:Lineage Africa. Vet. Microbiol. doi:10.1016/jvet-mic.2009.11.013 Demeterら, 2009: Controversial results of the genetic analysis of a canine distemper vaccine strain. Vet. Microbiol. Published Online
明らかに、CDV臨床症例における増加を研究する疫学的な研究が必要であり、CDVの出現しつつある単離体を考慮に入れた、新規免疫学的およびワクチン組成物および診断法の発展もまた必要である。
1つの側面において、本発明は、イヌジステンパーウイルス(CDV)の新規に同定された単離体を提供する。したがって、本発明はさらに、最新の免疫原性組成物およびワクチン組成物を提供する。本発明のワクチン組成物は、CDVの出現しつつある型に対する広域性防御を提供するよう設計される。さらに、本発明は、CDV感染を検出するための最新の診断法およびキットを提供する。診断法およびキットは、ウイルスの新規に発展した型を検出する能力を提供する。本発明の組成物および診断法およびキットは、少なくとも部分的に、以前は未知であったCDV変異体の発見に基づき、そして以前のワクチン配合物および診断法が不向きであったウイルスの突然変異体型の出現を考慮に入れる。さらなる側面において、本発明は、こうした組成物および診断法で使用するための、広域性の抗原、例えば病原性単離体またはその一部、の供給源の遺伝的構成に対応する、抗原、例えば病原性単離体またはその一部を選択するための体系的方法を提供する。
本発明はさらに、CDV 9041474B CDV−EW(ATCC寄託番号PTA−10596)の特性を含む、ヨーロッパ野生生物(EW)系統の単離イヌジステンパーウイルス(CDV)を提供する。別の態様において、本発明は、CDV株CDV 9041474B CDV−EW(ATCC寄託番号PTA−10596)またはその子孫株が増殖している、細胞培養中で単離されたCDVの弱毒化株を提供する。このタイプの特定の態様において、CDVの弱毒化株は、プラーク精製されていてもよい。さらに別の態様において、本発明は、CDV 9041474B CDV−EW(ATCC寄託番号PTA−10596)の特性を含む単離CDVまたはその子孫を含む、免疫原性組成物またはワクチンを提供する。
さらに別の態様において、本発明は、CDV 08021509 CDV−AM−2(ATCC寄託番号PTA−10597)の特性を有する、アメリカ−2(AM−2)系統の単離イヌジステンパーウイルス(CDV)を提供する。さらに別の態様において、本発明は、CDV株CDV 08021509 CDV−AM−2(ATCC寄託番号PTA−10597)またはその子孫株が増殖している、細胞培養中で単離されたCDVの弱毒化株を提供する。このタイプの特定の態様において、CDVの弱毒化株は、プラーク精製されていてもよい。さらなる態様において、本発明は、CDV 08021509 CDV−AM−2(ATCC寄託番号PTA−10597)の特性を有する単離CDVまたはその子孫を含む、免疫原性組成物またはワクチンを提供する。
本発明はまた、イヌジステンパーウイルスに対する免疫反応を誘発する必要がある被験体において、イヌジステンパーウイルスに対する免疫反応を誘発する方法も提供する。1つのこうした方法は、該被験体に、CDV 9041474B CDV−EW(ATCC寄託番号PTA−10596)の特性を含む単離CDVまたはその子孫を含む、免疫原性組成物またはワクチンを投与する工程を含む。別のこうした態様において、該方法は、前記被験体に、CDV 08021509 CDV−AM−2(ATCC寄託番号PTA−10597)の特性を有する単離CDVまたはその子孫を含む、免疫原性組成物またはワクチンを投与する工程を含む。
本発明はまた、診断キットも提供する。1つのこうした態様は、配列番号42に示すヌクレオチド配列を増幅するための特異的オリゴヌクレオチドプライマーを含む。別の態様において、診断キットは、配列番号43に示すヌクレオチド配列を増幅するための特異的オリゴヌクレオチドプライマーを含む。
当業者は、こうしたプライマーが、増幅しようとする関心対象のヌクレオチド配列のヌクレオチド配列(例えばターゲットとされる配列)に基づくことを認識するであろう。いくつかの態様において、プライマーは、ターゲット配列のユニークな配列に相同であるかまたは相補的である。
本発明はさらに、本発明の組換えおよび/または単離核酸分子を提供する。1つのこうした核酸は、配列番号44のアミノ酸配列をコードし、そして/またはその核酸相補体である。別のこうした態様において、核酸分子は、配列番号42のヌクレオチド配列、および/またはその相補体を含む。さらに別のこうした態様において、単離核酸分子は、配列番号42のものに99.5%より高い同一性を有するヌクレオチド配列、および/またはその相補体を含む。
さらに別の態様において、組換えおよび/または単離核酸分子は、配列番号45のアミノ酸配列をコードし、そして/またはその核酸相補体である。さらに別の態様において、核酸分子は、配列番号43のヌクレオチド配列、および/またはその相補体を含む。さらに別のこうした態様において、単離核酸分子は、配列番号43のものに95%より高い同一性を有するヌクレオチド配列、および/またはその相補体を含む。
本発明は、本発明の単離核酸分子のいずれを含んでもよい発現ベクターをさらに提供する。1つのこうした態様において、発現ベクターは、配列番号44のアミノ酸配列をコードする単離核酸分子、および/またはその相補体を含む。さらに別の態様において、本発明は、配列番号45のアミノ酸配列をコードする単離核酸分子、またはその相補体を含む、発現ベクターを提供する。
本発明は、本発明の発現ベクターのいずれを含んでもよい免疫原性組成物およびワクチンをさらに提供する。1つのこうした態様において、免疫原性組成物またはワクチンは、配列番号44のアミノ酸配列をコードする単離核酸分子、および/またはその相補体を含む、発現ベクターを含む。別の態様において、免疫原性組成物またはワクチンは、配列番号43のアミノ酸配列をコードする単離核酸分子、および/またはその相補体を含む、発現ベクターを含む。
本発明は、本発明の単離および/または組換えタンパク質、ポリペプチド、ペプチド、融合タンパク質およびキメラタンパク質すべてをさらに提供する。1つのこうした態様において、ポリペプチドは配列番号44のアミノ酸配列を含む。別のこうした態様において、ポリペプチドは配列番号42のヌクレオチド配列にコードされる。
さらなる態様において、本発明は、赤血球凝集素タンパク質をコードするCDVビリオンを含む免疫原性組成物およびワクチンを提供する。関連態様において、赤血球凝集素は、配列番号1〜33に示すヌクレオチド配列を含む核酸によって部分的にコードされてもよい。さらに他の関連態様において、本発明は、こうした免疫原性組成物またはワクチンの1以上を被験体に投与することによって、イヌジステンパーウイルスに対する免疫反応を誘発する必要がある被験体において、イヌジステンパーウイルスに対する免疫反応を誘発する方法を提供する。
本発明は、免疫原性組成物において使用するための1以上の病原体単離体を選択する方法であって、該単離体(単数または複数)が、関心対象の選択された免疫原性タンパク質、ポリペプチドまたはペプチドをコードするのに最も頻繁に用いられるコドンの1以上を利用する、前記方法をさらに提供する。1つのこうした方法は、1)複数の病原体単離体における、各単離体に関して、関心対象の前記の選択された免疫原性タンパク質、ポリペプチドまたはペプチドをコードするヌクレオチド配列を決定し;2)決定工程で得られたヌクレオチド配列に関して、関心対象の前記免疫原性タンパク質、ポリペプチドまたはペプチドにおける、関心対象の1以上のアミノ酸残基に関してコドン使用頻度データを得て、それによってコドン使用頻度に関するデータを得て;3)コドン使用頻度に関する前記データから、関心対象の免疫原性タンパク質、ポリペプチドまたはペプチドにおける、関心対象の前記アミノ酸残基の各々に関して、最も頻繁に用いられるコドンを同定し;そして4)複数の病原体単離体の中から、関心対象のタンパク質、ポリペプチドまたはペプチドをコードする、最も頻繁に用いられるコドンの1以上を利用する1以上の単離体を選択する工程を含む。本発明の1つの態様において、病原体はイヌジステンパーウイルスである。
さらに別の態様において、本発明は、免疫原性組成物において使用するための核酸用の1以上のヌクレオチド配列(病原体単離体由来であってもよい)を選択する方法を提供する。該核酸は、関心対象の選択された免疫原性タンパク質、ポリペプチドまたはペプチドをコードするのに最も頻繁に用いられるコドンの1以上を利用する。該方法は、1)(例えば、複数の病原体単離体から)関心対象の選択された免疫原性タンパク質、ポリペプチドまたはペプチドをコードする複数のヌクレオチド配列を決定し;2)決定工程で得られたヌクレオチド配列に関して、関心対象の前記免疫原性タンパク質、ポリペプチドまたはペプチドにおける、関心対象の1以上のアミノ酸残基に関してコドン使用頻度データを得て、それによってコドン使用頻度に関するデータを得て;3)コドン使用頻度に関するデータから、関心対象の免疫原性タンパク質、ポリペプチドまたはペプチドにおける、関心対象のアミノ酸残基の各々に関して、最も頻繁に用いられるコドンを同定し;そして4)複数のヌクレオチド配列の中から、関心対象のタンパク質、ポリペプチドまたはペプチドをコードするのに最も頻繁に用いられるコドンの1以上を利用するヌクレオチド配列を選択する工程を含む。
単離体07091030(配列番号1、CDVのH遺伝子のヌクレオチド(nt)438〜1302)。この単離体は、癲癇の病歴を持ち、そして多数の細胞質内封入体を伴う好中球を示すイヌ由来である。このCDV単離体は、イヌシグナル伝達リンパ球活性化分子を発現するVero細胞株(Vero+SLAM)において、巨大な多核合胞体を形成した。Hタンパク質配列に基づいて、これはヨーロッパ野生生物系統単離体である。このCDV単離体は、例えば曝露ウイルスとして特に有用でありうる。 単離体07091031(配列番号2、H遺伝子のnt 440〜1494)。 単離体07091032(配列番号3、H遺伝子のnt 440〜1225)。 単離体07101508(配列番号4、H遺伝子のnt 427〜1335)。この単離体は、ヨーロッパ野生生物(EW)遺伝系統と高い同一性を有するが、Ondersteportワクチン接種歴を持つ、南カリフォルニア出身のイヌ由来である。この単離体は、Vero+SLAM細胞において、巨大合胞体を生じる。該単離体は、レッサーパンダおよびデンマーク・ミンク(Danish mink)由来のCDVと高い同一性を有するが、Ondersteportワクチン単離体とは近い関連にない。 単離体07100609(配列番号5、N遺伝子のnt 833〜1213)。海洋哺乳動物(アザラシ)由来のこのCDV様ウイルスのヌクレオカプシドをコードする遺伝子の配列は、米国由来のイヌ単離体164071(EU716337)とマッチする。 単離体07110098(配列番号6、H遺伝子のnt 439〜1286)。 単離体07111080(配列番号7、H遺伝子のnt 630〜1501)。 単離体08010939(配列番号8、H遺伝子のnt 443〜1343)。 単離体08011277A(配列番号9、H遺伝子のnt 423〜1556)。 単離体08011277B(配列番号10、H遺伝子のnt 1530〜410)。 単離体08011277C(配列番号11、H遺伝子のnt 433〜1230)。 単離体08011277D(配列番号12、ヌクレオカプシド遺伝子のnt 833〜1578)。この単離体のH遺伝子は増幅不能であった。増幅できないことから、プライマー結合配列における遺伝子変異(そしてしたがって相同性の欠如)があることが示される。ヌクレオカプシド遺伝子配列はCDV単離体のものとマッチする。 単離体08011671(配列番号13、H遺伝子のnt 422〜1589)。 単離体08021509(配列番号14、H遺伝子のnt 441〜686)。 単離体08030074(配列番号15、H遺伝子のnt 447〜1282)。 単離体08030776(配列番号16、H遺伝子のnt 422〜1541)。 単離体08030777(配列番号17、H遺伝子のnt 411〜1537)。 単離体08031346(配列番号18、H遺伝子のnt 436〜1059)。 単離体08040383(配列番号19、H遺伝子のnt 1486〜620)。 単離体08050180A(配列番号20、H遺伝子のnt 418〜1552)。 単離体08060351(配列番号21、H遺伝子のnt 412−1536)。 単離体08060352(配列番号22、H遺伝子のnt 408〜1553)。 単離体08080696(配列番号23、H遺伝子のnt 423〜726)。 単離体08080941(配列番号24、H遺伝子のnt 387〜1522)。 単離体08081112(配列番号25、H遺伝子のnt 411〜1207)。 単離体08120827(配列番号26、H遺伝子のnt 413〜1535)。 単離体08120857(配列番号27、H遺伝子のnt 724〜1522)。 単離体09011024(配列番号28、H遺伝子のnt 578〜1613)。 単離体09020504−3(配列番号29、H遺伝子のnt 418〜1549)。 単離体09041289(配列番号30、H遺伝子のnt 889〜1646)。 単離体09041303(配列番号31、H遺伝子のnt 394〜1526)。 単離体09041474A(配列番号32、H遺伝子のnt 410〜1539)。テネシー州の大規模シェルターにおいて、完全にワクチン接種されたイヌ(商業的Ondersteport CDVワクチンで2回ワクチン接種)が、上気道疾患、高熱、緑色の鼻汁、咳、および最終的に神経学的な症状、例えば攣縮を発展させた。55頭のイヌのうち約20頭が死亡し、この中に、4ヶ月齢のメスが含まれ、この個体から単離体09041474Aおよび09041474B(図37を参照されたい)を得た。 単離体09040826(配列番号33、H遺伝子のnt 418〜1546)。 図34A〜F。BioEditプログラムを用いて、CDV−Hワクチンおよび参照株コドン配列と整列させた、野生単離体由来のイヌジステンパーウイルス赤血球凝集素(H)コドン配列を示すコドン表。配列: Ondersteport=CDVワクチン配列; AY964110=参照ヨーロッパ野生生物(EW)株; AF112189=参照アメリカ−2(AM−2)配列; AY962112=参照北極(Ar)株。コドンの相違を陰で示す。 図34A〜F。BioEditプログラムを用いて、CDV−Hワクチンおよび参照株コドン配列と整列させた、野生単離体由来のイヌジステンパーウイルス赤血球凝集素(H)コドン配列を示すコドン表。配列: Ondersteport=CDVワクチン配列; AY964110=参照ヨーロッパ野生生物(EW)株; AF112189=参照アメリカ−2(AM−2)配列; AY962112=参照北極(Ar)株。コドンの相違を陰で示す。 図34A〜F。BioEditプログラムを用いて、CDV−Hワクチンおよび参照株コドン配列と整列させた、野生単離体由来のイヌジステンパーウイルス赤血球凝集素(H)コドン配列を示すコドン表。配列: Ondersteport=CDVワクチン配列; AY964110=参照ヨーロッパ野生生物(EW)株; AF112189=参照アメリカ−2(AM−2)配列; AY962112=参照北極(Ar)株。コドンの相違を陰で示す。 図34A〜F。BioEditプログラムを用いて、CDV−Hワクチンおよび参照株コドン配列と整列させた、野生単離体由来のイヌジステンパーウイルス赤血球凝集素(H)コドン配列を示すコドン表。配列: Ondersteport=CDVワクチン配列; AY964110=参照ヨーロッパ野生生物(EW)株; AF112189=参照アメリカ−2(AM−2)配列; AY962112=参照北極(Ar)株。コドンの相違を陰で示す。 図34A〜F。BioEditプログラムを用いて、CDV−Hワクチンおよび参照株コドン配列と整列させた、野生単離体由来のイヌジステンパーウイルス赤血球凝集素(H)コドン配列を示すコドン表。配列: Ondersteport=CDVワクチン配列; AY964110=参照ヨーロッパ野生生物(EW)株; AF112189=参照アメリカ−2(AM−2)配列; AY962112=参照北極(Ar)株。コドンの相違を陰で示す。 図34A〜F。BioEditプログラムを用いて、CDV−Hワクチンおよび参照株コドン配列と整列させた、野生単離体由来のイヌジステンパーウイルス赤血球凝集素(H)コドン配列を示すコドン表。配列: Ondersteport=CDVワクチン配列; AY964110=参照ヨーロッパ野生生物(EW)株; AF112189=参照アメリカ−2(AM−2)配列; AY962112=参照北極(Ar)株。コドンの相違を陰で示す。 米国およびGenBank参照配列(下線)における、多くの最近の米国CDV単離体の遺伝的関連性を示す系統樹。MEGA4.1プログラム(megasoftware.netに位置するウェブサイトで、無料で入手可能; Tamura K, Dudley J, Nei M & Kumar S(2007) MEGA4: Molecular Evolutionary Genetics Analysis(MEGA) software version 4.0. Molecular Biology and Evolution 24:1596−1599)を用いて系統樹を構築した。 CDV感染イヌ由来のCDVの赤血球封入体を示す血液フィルム(OADDL:07091030)。CDV封入体(矢印)は、好中球およびリンパ球内で可視である(Aqueous Romanowsky株;バー=10ミクロン)。 停止コドンを含む、09041474B由来のH遺伝子の完全配列(配列番号42)。 停止コドンを含む、08021509由来のH遺伝子の完全配列(配列番号43)。 09041474B由来のH遺伝子の完全アミノ酸配列(配列番号44)。 08021509由来のH遺伝子の完全アミノ酸配列(配列番号45)。
本発明は、CDVに対する免疫原性反応を誘発する組成物、CDV感染に対して防御を提供するよう設計されたワクチン組成物、およびCDV診断法を提供する。該組成物は、新規に発見されたCDV変異体を含有する。新規変異体は、CDVの進化的傾向を反映し、そして米国において現在広まっている(circulating)主なCDV株の指標を提供する。変異体は、部分的に、CDVをすでにワクチン接種されているが、にもかかわらずCDVに罹患し、そして発病したイヌから単離されており、すなわちこうしたイヌはワクチンの失敗の犠牲者である。CDV蔓延を停止するかまたは抑えるために、そしてワクチンの失敗を防止するためには、1以上のこれらの新規変異体を新規ワクチンプロトコルに取り込まなければならない。本発明はまた、新規CDV単離体を検出するための新規診断法、ならびにワクチン投与によって引き起こされたイヌジステンパー、およびワクチンに含まれておらず、そしてそれに対してワクチンが防御を提供しない、出現しつつあるウイルスによって引き起こされたイヌジステンパーの間を区別するための新規診断法も提供する。さらに、本発明は、どの単離体が広域性免疫原性組成物およびワクチン組成物中に含めるのに有用である可能性が高いかを決定するため、RNAウイルス野生単離体および出現しつつある病原体を分析する方法を提供する。
新規単離体のいくつかは、ヨーロッパ野生生物CDV系統に属し;他のものはアメリカ−2(AM−2)および北極遺伝系統に属する。34のCDVウイルスが単離され、細胞培養中で増殖されてきており、そしてウイルスのH遺伝子は部分的にまたは完全に配列決定されてきている。これらのウイルスは、米国の多様な州(例えばオクラホマ州、フロリダ州、ジョージア州、カリフォルニア州、ミズーリ州、テキサス州、カンザス州およびテネシー州)に由来した。図1〜33は、単離体由来のH遺伝子に相補的なcDNAの部分配列を示し:図37および38は、停止配列(どちらに関してもTGA)を含む、それぞれ、単離体09041474Bおよび08021509の完全H遺伝子配列を示し;そして図39および40は、それぞれ、単離体09041474Bおよび08021509由来のHタンパク質の対応するアミノ酸配列を示す。該アミノ酸配列中、09041474B由来の配列中の5位のアミノ酸はグルタミンであり、そして08021509由来の配列中の5位のアミノ酸はアルギニンである。
本発明はまた、本発明のHタンパク質のいずれかをコードするが、シグナル配列(Hタンパク質のアミノ末端の最初の12アミノ酸残基)および/または停止コドンを含まず、そして/または別のシグナル配列および/または別の停止コドンを含む、組換えおよび/または単離核酸も提供する。こうした核酸を含む発現ベクターもまた、本発明に含まれ、これらの核酸がコードする、発現された組換えポリペプチド(単離組換えポリペプチドを含む)もまた含まれる。
図34A〜Fは、CDV−Hワクチン配列および参照株とともに整列させた、いくつかの野生単離体由来のCDV赤血球凝集素(H)配列を示す。このデータの分析は、相対的優先コドン使用頻度(RPCU)法の発展/ワクチンで使用するための広域性病原体単離体の分析および選択の概念の基礎として働いた。該方法は、本明細書に開示するような、病原体におけるRPCUの新規に認識されるパターンに基づく。該方法は、多くの病原性生物(以下により詳細に論じる)に広く適用可能であるが、本明細書において、RNAウイルス単離体の分析のための例示的な使用を記載する。本明細書において、「単離体」(例えば病原体、例えばRNAウイルスであってもよい)は、生物学的試料から実質的に単離され、そして精製されてきており、そして適切な細胞培養中での継代および/または増殖に供されてきていてもよい。あるいは、単離体は、純粋な培養、例えばATCC寄託物から得られていてもよい。
RPCU法を実施するため、代表的ないくつかの関心対象の単離体を、関心対象の1以上の集団において得られた、動物被験体(ヒトを含む)の生物学的試料から単離する。関心対象の所定の地理的地域または地区内で、そして/または病原体を宿すると推測される動物被験体から単離体を得てもよい。適切な生物学的試料は、病原体感染の急性期中に収集された最高濃度のウイルスを含むものであり、そして多様な組織試料、体液または排泄物(痰、唾液、血液、尿、糞便、スワブ[試料の多くのタイプに関する包括的な用語]等)が含まれる。RPCUによって分析可能な適切な病原体(例えば出現しつつある病原体)の例には、限定されるわけではないが:RNAウイルス、一本鎖DNAウイルス、インフルエンザウイルス、HIVウイルスなどの多様なウイルス;マイコバクテリウム(Mycobacteria)、エルシニア属(Yersinia)、リケッチア属(Rickettsia)およびバルトネラ属(Bartonella)種などの多様な細菌病原体;多様な真菌;ならびにマラリア(Malaria)、トリパノソーマ属(Trypanosoma)、トキソプラズマ属(Toxoplasma)、エントアメーバ属(Entamoeba)、ジアルジア属(Giardia)、およびクリプトスポリジウム(Cryptosporidia)種等の多様な病原性原虫;が含まれる。当業者は、病原体単離体の「代表的ないくつか」が多様でありうるが、一般的には少なくとも20〜25、通常少なくとも30〜35の範囲であり、そして生物学的試料の入手可能性、この試みに向けられうる資源の利用可能性等に応じて、限定なしに、いかなる数の単離体(または配列)であってもよいであろうことを認識する。
「関心対象の集団」は、一般的に、関心対象の病原体に感受性である個体集団であり、そしてこれには、ウイルスに感染した際に疾患症状を示す個体が含まれてもよく、あるいはほとんどまたはまったく症状を示さないが、にもかかわらず病原体に感染している、ウイルスを宿する「キャリアー」であってもよい。
関心対象の地理的地区または地域は、例えば、地理的および/または法的境界によって境界を付けられた地域または地区、例えば国、大陸、州、群等であってもよいし;あるいは地理的境界、例えば水域(川、湖、海等)、山脈、砂漠等によって分離された地域;あるいは共通の気候または天候パターン、例えば類似の平均温度または降雨量、雪および氷の存在または非存在等を伴う地域/地区であってもよい。
すべての単離体に共通の関心対象の少なくとも1つのタンパク質、ポリペプチドまたはペプチドを、詳細な遺伝子配列分析のために選択する。一般的に、関心対象のこうしたタンパク質、ポリペプチドまたはペプチドは、免疫原性であることが知られるものである。免疫原性によって、該タンパク質、ポリペプチドまたはペプチドが、宿主中に存在する場合(例えば該タンパク質、ポリペプチドまたはペプチドを含む病原体に宿主が感染した場合)、宿主において免疫反応(例えば抗体産生)を誘発することを意味する。回復しており、そして病原体でのさらなる感染から防御される、回復期患者由来の血清のウェスタンブロット分析によるものを含めて、当業者に知られるいくつかの方法のいずれによって、主な免疫原を決定してもよい。当業者は、RPCUを用いて、1つまたは1より多くのこうしたタンパク質、ポリペプチドまたはペプチドを分析してもよいが、少なくとも1つが選択されることを認識するであろう。そうでなければ、より多くを、分析のために体系的に選択してもよいが、例えばウェスタンブロット分析に基づいて主である1つが、出発点として優れている可能性もある。未知の免疫原性タンパク質を、MALDI−TOFFによって配列決定してもよい。これは、配列を増幅するプライマーの設計を補助する。
適切なタンパク質、ポリペプチドまたはペプチドを選択した後、よく確立された、例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)配列決定等の技術を用いて、該タンパク質、ポリペプチドまたはペプチドをコードするヌクレオチド配列を決定する。あるいは、この方法を用いて比較される配列は、ウイルスを単離せずに、生物学的試料から直接得てもよいし、またはこれらはデータベース(例えばGenBankまたは他のもの)から得られる既知の配列であってもよい。
次いで、3つ組コドンを同定し、そして正しい翻訳(リーディング)フレームにコドンを整列させる分析に、ヌクレオチド配列を供する。限定されるわけではないが、BioEditソフトウェアを用いたCLUSTAL W分析、Baylor School of Medicineによって提供される多重配列整列プログラム(MAP)等を含む、多くのヌクレオチド分析プログラムのいずれを用いて配列分析を行ってもよい。通常、分析される配列はcDNA配列であるが、該方法は、cDNAの使用に限定されず、例えば、DNA、RNA等もまた分析してもよい。場合によって、1以上の参照配列由来(例えばRNAウイルス参照株)の対応する配列が分析に含まれる。一般的に、参照株は、例えば、考慮する集団および/または地域において、以前、主であった(例えば高頻度で存在した)病原体タイプ(例えばウイルス系統)に相当するであろう。こうした参照株は、例えば、RNAウイルスでの感染に対するワクチンにおいて用いられてきたRNAウイルスであってもよい。参照配列に関する好ましい候補は、例えばBLASTnおよびBLASTpプログラムを用いて分析した際、病原体(例えば出現しつつある病原体)のヌクレオチドおよびタンパク質配列の両方と、最高レベルの相同性および同一性を示すものである。相同性および/または同一性のレベルは、少なくとも約90%または95%、あるいはさらに少なくとも約99%以上であろう。
単離体(および場合によって1以上の参照配列)由来のアミノ酸を特定する3つ組コドンを、限定されるわけではないが、表形式、例えばExcel表を含む、容易に比較可能な形式で、インフレームで整列させる。当業者は、3つ組コードが重複性であり、そして1より多いコドンが同じアミノ酸をコードしうることをよく知っている。関心対象のタンパク質、ポリペプチドまたはペプチド中のアミノ酸残基に対応する各位に関して、各単離体由来の残基をコードする3ヌクレオチドの同一性に注目し、そしてすべての単離体に渡って比較する。例えば、関心対象の仮説上のタンパク質において、50位がロイシンである場合、この残基に関してありうるコドンには、ttaおよびttgが含まれる。すべての単離体の50位の実際のコドンに注目し、そしてすべての他の単離体に存在するコドンと比較する。この比較から、相対的優先コドン使用頻度(RPCU)を決定可能である。例えば、単離体の75%がLeu残基をコードするのに「tta」を用い、そして単離体の25%が「ttg」を用いる場合、ttaのRPCU値は75%であり、そしてttgのものは25%でしかない。したがって、この残基では、ttaが優先される(すなわち最も頻繁に存在するかまたは用いられる)コドンである。この方式で、関心対象の配列の関心対象の各残基に関する、最も頻繁に用いられるかまたは優先されるコドンが決定される。配列のすべての残基に関して、分析を実行してもよいし、あるいは残基サブセットのみに関して、例えば極めて重大な病原体活性に関与することが知られるか、またはエピトープもしくは抗原性領域の一部であることが知られるか、または病原性と関連する残基に関して、分析を実行してもよい。
RPCU法の目的は、広域性ワクチン調製物で使用するために、高い割合の優先コドンを所持するヌクレオチド配列を持つ単離体を同定することである。いくつかの手段のいずれによって、これを達成してもよい。例えば、最も優先されるコドンのみを含む理論的な「理想の」配列を決定し、そして単離体の実際の配列を理論的配列に比較してもよい。各単離体および理想的な配列の間の相同性のレベルを計算する。理想的な配列に最高レベル(例えば量、割合等)の相同性を示す単離体は、最高数の優先コドンを利用する単離体であろう。この単離体は、理想に最適に「適合」し、そしてワクチン構成要素として選択される。あるいは、理想的な配列を決定しなくてもよく、各位でのコドン使用頻度を、上述のように表にするかまたは計算し、そして当業者に思い浮かぶであろう他の方法によって、例えば単純な視覚的検査によって、配列間で比較を行って、非常に高レベルの、または最高レベルの数の優先コドンを利用する単離体由来の配列を同定する。
理論によって束縛されることなく、この選択は、突然変異が残基をコードする3ヌクレオチド配列中で生じる場合、該突然変異を含有する病原体(例えばRNAウイルス)が突然変異を含有しない病原体よりも何らかの選択上の利点を有する場合にのみ、この突然変異が永続するかまたは広く蔓延するようになる可能性が高いという理解と一致する。例えば、いくつかのコドンは、他のものよりもより迅速にまたはより正確に翻訳され、そしてこうした突然変異を伴う病原体は、非突然変異病原体よりも、複製および新規宿主感染について、より成功する可能性もある。したがって、これらのコドンは、最終的に、天然選択のため、病原体集団において、より頻繁に存在する。頻繁に用いられるコドンの割合が高い単離体は、コドンに関連する累積する利点を所持する可能性が高く、そしてコドンによって提供される好ましい特性を示す可能性が高く、そしてしたがってワクチン調製物中に含まれた場合、広域性防御を提供する可能性が高い。RPCUは、ゲノム核酸と相互作用する、病原体(例えばウイルス)の内部タンパク質エピトープを考慮に入れる(Pepin KM, J Domsic, およびR McKenna. 2008. Genomic evolution in a virus under specific selection for host recognition. Infection, genetics, and evolution.:825−834)。
RPCUは、CDVなどのRNAウイルスの生物学的機能に影響を及ぼす。コドン(ヌクレオチドの3つ組)は、エピトープ(例えば約6〜7アミノ酸)および抗原性領域、または抗原性タンパク質、例えばCDVのHタンパク質に対する宿主免疫反応を誘発する際に直接関与する配列モチーフを含む、タンパク質の機能的単位を形成するアミノ酸をコードするため、最も基本的な生物学的単位である。したがって、RPCUに基づくCDV単離体の選択は、ウイルスの表現型/機能、例えば遺伝子発現、Hタンパク質発現およびウイルス力価を反映する。コドン使用頻度はまた、タンパク質発現の幅にも影響を及ぼす可能性もあり、そしてしたがって、ウイルスまたはタンパク質が発現される組織に影響を及ぼす可能性もある。予備的分析において、CDVによるHタンパク質発現のゲルに基づくPCR分析によって、大部分のアメリカ−2単離体が、大部分のEW単離体に比較して、均一により低い(約8〜10倍低い)H遺伝子PCR産物発現を有することが示された。この結果は、大部分のEW CDV単離体における、頑強でそして生物学的に好ましいH遺伝子コドン組成を反映し、このため、イヌ集団において、EW CDV単離体のより高い頻度が導かれる可能性が高い。CDV RNAウイルスへのこの方法の適用を以下の実施例4に提示する。
当業者は、RPCU法を実行する、コンピュータに実装されたソフトウェア(コンピュータプログラム)を開発可能であることを認識するであろう。こうしたソフトウェアは、コンピュータにRPCU法を実行させるための命令を含むかまたはコードし、そして例えば配列および他の適切なデータ(例えば単離体の名称、コドン整列特徴等)を入力するための手段、入力データをディスプレイするための手段、分析結果を示すための手段(例えば、配列としての、1以上の数字指標(例えば最適な結果として「配列#4」または「#4」)としての、グラフ形式、表形式等での適切な形での結果の、例えばスクリーン上のディスプレイ、またはプリントアウト[「ハードコピー」])を含んでもよい。統計分析のための手段もまたコンピュータプログラム中に含まれてもよく、そして分析は、結果の漸次的変化(gradation)を提供してもよく、すなわちプログラムは最も適している可能性が高いものから最も可能性が低いものに関して、候補配列をランク付けしてもよいし、そして/または単に、1以上の最高にランキングされる(最も適した)配列を提供してもよい。コンピュータプログラムには、分析を実行するのに用いられるアルゴリズムを実行するための命令が含まれてもよい。
したがって、RPFU法は、免疫原性組成物およびワクチンで使用するための病原体単離体を選択し、そして/または得る方法である。関心対象のタンパク質、ポリペプチドまたはペプチド(通常、免疫原)をコードする優先コドンを有する、こうした単離体を、(例えば標準的遺伝子操作技術による修飾を通じて)選択するかまたはそうでなければ得てもよい。
RPFU法には:病原体に感染した複数の異なる動物由来の生物学的試料から、複数の病原体(例えばRNAウイルス)単離体を得て;該RNAウイルスと関連する、関心対象の免疫原性タンパク質、ポリペプチドまたはペプチドを選択し;複数の単離体の各単離体に関して、関心対象の免疫原性タンパク質、ポリペプチドまたはペプチドをコードするヌクレオチド配列を決定し;関心対象の免疫原性タンパク質、ポリペプチドまたはペプチドをコードするヌクレオチド配列各々において、関心対象の免疫原性タンパク質、ポリペプチドまたはペプチド中の、関心対象のアミノ酸残基をコードするコドンを同定し;関心対象の免疫原性タンパク質、ポリペプチドまたはペプチドをコードするヌクレオチド配列を比較することによって、関心対象の免疫原性タンパク質、ポリペプチドまたはペプチド中の関心対象の各アミノ酸残基に関するコドン使用頻度データを決定し;前記コドン使用頻度データから、関心対象の免疫原性タンパク質、ポリペプチドまたはペプチド中の関心対象の各アミノ酸残基に関して、最も頻繁に用いられるコドンを同定し;そして複数の病原体単離体の中から、関心対象のタンパク質、ポリペプチドまたはペプチドをコードするのに最も頻繁に用いられるコドンの1以上を利用する単離体を選択する工程が含まれてもよい。いくつかのRNAウイルスにおいて、RPCUソフトウェアによって、免疫原の擬似集団を分析してもよい。
図35は、H遺伝子配列に基づく、単離体の遺伝的関連性の系統樹を示す。該系統樹において、CDV単離体の非常に密接に関連する集団、ヨーロッパ野生生物系統に属する「主なCDV集団」が出現してきていいる。2つの他の系統、北極およびアメリカの他の少数のCDVウイルス、すなわち「少数のCDV集団」での曝露によって、これらのヨーロッパ野生生物ウイルスをチェックしてもよい。ヨーロッパ野生生物、ならびに北極およびアメリカ−2系統ウイルスの一方または他方(または両方)の両方に対して防御性である、1以上の広く反応性である優勢な(predominant)単離体を用いて、米国または他の適切な場所で現在循環しているすべてのCDV系統に対して有効なワクチンとして使用するための、CDV免疫原性組成物を作製してもよい。言い換えると、免疫原性組成物は、ヨーロッパ野生生物系統ウイルスに対して、そして北極およびアメリカ−2系統ウイルスの一方または両方に対して、免疫反応(例えば抗体産生)を誘発しなければならない。本発明のワクチンは、ヨーロッパ野生生物系統ウイルスに対して、そして北極およびアメリカ−2系統ウイルスの一方または両方に対して防御性でなければならない。こうした免疫原性組成物またはワクチンで用いられるCDVは、以前はヨーロッパ野生生物ウイルスでのみ見られ、そして該ウイルスに特徴的であると考えられていた抗原(抗原性領域、抗原決定基等)とともに、以前は北極またはアメリカ系統ウイルス、あるいは好ましくは北極およびアメリカ−2系統ウイルスの両方でのみ見られ、そして該ウイルスに特徴的であると考えられていた抗原をコードする核酸配列を含有する。
こうしたウイルスの一例は、単離体09041474Bであり、その完全な赤血球凝集素遺伝子配列を配列番号42に示す。ワクチン候補としてこのCDV単離体を選択するために、いくつかの基準を用いた。まず、現在のCDV単離体のパネルを発展させた(歴史的には、公表されている報告に基づくと、いくつかの単離体のみが入手可能であった。さらに、CDVワクチン失敗の問題を研究する報告はほとんどなかった)。第二に、赤血球凝集素配列決定およびCDV遺伝子型決定を行った。BALSTn、CLUSTAL−W、および系統発生分析を用いた包括的なヌクレオチド分析によって、CDV単離体を系統に分けてクラスター形成し、そして特徴付けることが可能になり、そして09041474BがEW系統であることが決定された。次いで、コドン使用頻度表(図34A〜Fに示す)を用いて、上述の相対的優先コドン使用頻度(RPCU)分析法にしたがって、CDVワクチン単離体09041474Bを選択した。
単離体09041474B由来のH遺伝子配列(完全配列、図37)は、いくつかの点で、参照EW配列(図34A〜FのAY964110)とは異なる。まず、AY964110のH遺伝子に関するヌクレオチド配列は、組織試料を用いて得られ、すなわちこの配列を持つCDVウイルスは単離されなかった。対照的に、本明細書に記載するような09041474B由来のH遺伝子配列は、細胞培養において増殖され、そして拡大されている単離CDVから得られた。2つの配列はまた、コドン使用も異なる。09041474Bに関しては、187位のコドンはCGAであり、201位のコドンはCTGであり、236位のコドンはCCTであり、そして303位のコドンはTCAである。AY964110とはさらに対照的に、09041474B配列において、303位のコドンはロイシンではなくセリンをコードする(図34A〜Fを参照されたい)。単離体09041474Bは、細胞培養において頑強な増殖を示し、そして303位のセリンは、この配列を持つビリオンが投与された被験体において免疫反応の誘発に関して利点を与える。09041474B CDV−EW(2〜3回の低継代の完全生存ウイルス)と表示された、09041474B CDV単離体の寄託が、寄託日2010年1月21日に、バージニア州マナサスのアメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC)に、寄託番号PTA−10596で、行われている。関心対象の第二のCDV単離体、08021509(アメリカ−2、08021509 CDV−AM−2と表示)もまた、寄託日2010年1月21日に、ATCCに、寄託番号PTA−19597で寄託された。どちらの寄託も全ウイルス(whole virus)であった。本発明には、寄託された単離体の特徴、例えば;とりわけ、本明細書に開示するようなヌクレオチド配列、病原性および増殖特性;合胞体特性(例えばサイズ、形状、数、外観(例えば明らかに境界が定まった、けばだった)等)、合胞体における核の数等を有するウイルスが含まれる。
本発明のいくつかの態様において、多価CDV免疫原性組成物および/またはワクチン(例えばヨーロッパ野生生物およびアメリカ−2)を使用するであろう。これらの2つのCDV系統を単一調製物中で合わせてもよいし、または例えばCDV免疫の導入に干渉するならば、2つの別個の投薬型として別個に投与してもよい。
本発明は、本明細書に開示するすべての単離体、ならびに該単離体から、そして/または本明細書に記載するような単離体の抗原性部分、例えば配列番号1〜33および42〜43に示すようなヌクレオチド配列を含む核酸および/またはそれによってコードされるタンパク質、ポリペプチド、もしくはペプチドから作製されるワクチンおよび免疫原性組成物を提供する。本発明のワクチンを、限定されるわけではないが、全ウイルス(例えば以下に詳細に記載されるような、死菌または弱毒化)の使用を含めて、任意の適切な方式で配合してもよい。本態様において、本明細書に開示する任意の新規CDウイルスを用いて、ワクチンを調製してもよい。一般的に、CDV感染の症状を持つイヌ、特にCDVに対して以前ワクチン接種されているイヌ由来の組織試料からウイルスを単離し、そして配列決定し、そして既知の配列に対して該ウイルスゲノムを比較することによって(すなわち、本発明の前に単離されたCDV、特にワクチンにおいて現在用いられているCDV単離体に対して比較して)、こうしたウイルスを同定してもよい。特に、こうした新規ウイルス単離体は、単離体09041474B(例示単離体)のものと同一かまたは相同である領域を含有するH遺伝子配列を有してもよい。
一般的に、こうしたウイルスは、本明細書に開示する核酸配列、またはその相補体に対して、少なくとも約75%、好ましくは約80%、より好ましくは約85%、最も好ましくは約90%、あるいはさらに95、96、97、98、99、または100%相同である(そして/または同一である)H遺伝子(またはその一部)を有するであろう。本発明の1つの特定の態様において、CDV単離体は、配列番号42(すなわち単離体09041474Bのもの)と99%より高い相同性(および/または同一性)を持つヌクレオチド配列を含むH遺伝子を含む。関連態様において、CDV単離体は、配列番号42のもの(すなわち単離体09041474Bのもの)と99.5%より高い相同性(および/または同一性)を持つヌクレオチド配列を含むH遺伝子を含む。
さらに別の態様において、CDV単離体は、配列番号43(すなわち単離体08021509のもの)と95%より高い相同性(および/または同一性)を含むヌクレオチド配列を持つH遺伝子を含む。関連態様において、CDV単離体は、配列番号43のもの(すなわち単離体08021509のもの)と99%より高い相同性(および/または同一性)を含むヌクレオチド配列を持つH遺伝子を含む。
あるいは、こうしたウイルスは、本明細書に開示する核酸配列によってコードされるアミノ酸配列に対して、少なくとも約75%、好ましくは約80%、より好ましくは約85%、最も好ましくは約90%、あるいはさらに95、96、97、98、99、または100%同一であるアミノ酸配列を含有するHタンパク質をコードしてもよい。当業者は、相同性%または同一性%を計算する方法をよく知っている。こうした変異体ウイルスは、単離体間の天然変動のため、または例えば遺伝子操作技術によって故意に導入される変化のため、本明細書に開示するものと異なるH遺伝子コーディング配列を有してもよい。言い換えると、ウイルスは、組換え体であってもよい。
他の態様において、本明細書記載のウイルスの抗原性部分のみが、本発明の免疫原性またはワクチン組成物中に存在する。例えば、配列番号1〜33および42〜43に提示するような抗原性ペプチドまたはタンパク質をコードする核酸、あるいはこれらの配列由来のペプチドまたはタンパク質の抗原性エピトープまたは領域を用いて、こうした組成物を配合してもよい。例えば、本発明のワクチン調製物は、本明細書に示すような配列を含む核酸配列、その相補体、および/またはこうした配列によってコードされるタンパク質、ポリペプチドまたはペプチドを含んでもよい。さらに、こうした配列の特定の変異を含むワクチンもまた含まれる。配列は、cDNAに相当するが、本発明にはまた、これらの配列に基づくか、由来するか、または相補体である、対応するssRNA、ssDNA、二本鎖(ds)DNA、dsRNA、相補DNA、および任意の型のRNA(例えばmRNA、RNA/DNAハイブリッド等)も含まれる。こうした配列は、センスまたはアンチセンス配列のいずれであってもよい。さらに、本明細書に開示するCDVの核酸配列に対して、少なくとも約90%の相同性、あるいはさらに約95、96、97、98、または99%以上の相同性を示す配列もまた、ワクチンで使用するために意図される。こうした配列は、例えば、発現を最大にするため、1以上の位で同じアミノ酸をコードする別のコドンを含有することによって異なってもよい。さらに、例えばHタンパク質のエピトープまたは抗原性領域をコードするこれらの配列の部分もまた意図され、こうしたアミノ酸配列に、70%、またはさらに好ましくは約80、90、または95%またはさらにそれより高い同一性(例えば96、97、98または99%同一性)を示す配列も意図される。一般的に、約6〜8アミノ酸がエピトープを構成する。本明細書に記載するように、生じたタンパク質/ペプチドが抗原性である限り、こうした配列は、例えば、保存的または非保存的アミノ酸置換、または欠失(特にアミノまたはカルボキシ末端欠失)、または多様な挿入等を含有することによって異なってもよい。こうした抗原性領域は、好ましくは、長さ少なくとも約10アミノ酸であるが、はるかに長くてもよく、例えばHタンパク質などの全タンパク質を含んでもよい。
さらに、ストリンジェントな条件(特に高ストリンジェンシー条件)下で、本明細書に開示する配列(またはこれらの配列の部分)にハイブリダイズする核酸配列もまた意図される。ストリンジェントな条件は、核酸配列が特定の配列にハイブリダイズすることを可能にする、ハイブリダイゼーション条件を指す。一般的に、高ストリンジェントな条件は、少なくとも50ヌクレオチド、および好ましくは約200ヌクレオチド以上の核酸配列が、約1Mの塩を含む溶液、好ましくは6xSSC、または匹敵するイオン強度を有する任意の他の溶液中、約65℃で、特定の配列にハイブリダイズすることを可能にするハイブリダイゼーション条件、ならびに約0.1M以下の塩を含む溶液、好ましくは0.2xSSC、または匹敵するイオン強度を有する任意の他の溶液中、65℃での洗浄を指す。これらの条件は、約90%以上の配列同一性を有する配列の検出を可能にする。
本発明によって含まれる核酸、例えば配列番号1〜33および42〜43(および本明細書に記載するようなその変異体)に示すヌクレオチド配列を持つものを多様な方式で得てもよい。例えば、天然供給源から、例えばウイルス単離体からこれらを得てもよく;あるいはこれらを合成的に産生してもよい。当業者は、当該技術分野において、非常に大きな配列、例えば全ウイルスまたは細菌ゲノム(例えばマイコプラズマ属(Mycoplasma))を合成的に産生する能力が存在することを理解し、そして本発明は、本明細書に開示する配列、ならびに該配列から発現されるタンパク質、ポリペプチドおよび/またはペプチドを含む任意の起源または製造の配列を含む。
本発明はまた、本明細書記載のタンパク質/ポリペプチド/ペプチド(すなわち配列番号1〜33および42〜43に示す核酸配列によってコードされるアミノ酸配列、またはその変異体)を発現する組換えウイルス、ベクター、および発現ベクターなどの組換え構築物も提供する。こうした構築物には、例えば、本明細書に開示する1以上の配列をベクターまたは宿主(例えばプラスミド、コスミド、ウイルスベクター、例えばアデノウイルスおよびポックスウイルスベクター、または細菌ベクター等)内にクローニングすることによって、産生されているものが含まれる。
1つの態様において、構築物は、先に注目された核酸および/またはその断片を含む発現ベクターである。本発明で用いる組換え発現ベクターは、典型的には、自己複製DNAまたはRNA構築物であり、通常、適合する宿主細胞において、核酸の発現を制御可能な適切な遺伝子調節要素に機能可能であるように連結されている、本発明のCDV赤血球凝集素および/またはその抗原性断片をコードする核酸を含む。遺伝子調節要素には、原核プロモーター系または真核プロモーター発現調節系が含まれてもよく、そして典型的には、転写プロモーター、転写開始を調節する自由選択のオペレーター、mRNA発現レベルを上昇させる転写エンハンサー、適切なリボソーム結合部位をコードする配列、ならびに転写および翻訳を終結させる配列が含まれる。発現ベクターはまた、ベクターが宿主細胞から独立に複製することを可能にする、複製起点も含有してもよい。当業者に知られる任意のいくつかの手段によって、組換え発現ベクターを構築してもよい。例えば、ウイルスなどの起源単離体から関心対象の配列を除去して、そして適切な発現ベクター内に連結する、遺伝子操作技術が知られる。あるいは、発現ベクターの部分または全発現ベクターを合成的に作製してもよいし;あるいは連結および合成プロトコルの組み合わせを使用してもよい。
さらに、他の有用な要素が、本明細書に記載する構築物に含まれてもよい。例えば、構築物は、多様な配列、例えばヒスチジンタグ、またはタンパク質単離を容易にするのに用いられる他のタグ、例えばグルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)、およびマルトース結合タンパク質;多様なリンカーまたはスペーサー配列;多様なアジュバントおよびタンパク質の抗原性を増加させる配列(例えばハプテン);望ましい/好適な制限酵素切断部位を導入するかまたは所望のプロテアーゼ切断部位をコードする配列;蛍光または他の検出可能標識をコードする配列、あるいはタグ化またはマーキング配列(例えば緑色蛍光タンパク質(GFP)、またはその一部);コードされるタンパク質の位置、搬出またはプロセシングを導く多様な配列(例えばリーダー配列);異種シグナル配列(すなわち天然にはCDV Hタンパク質と通常は会合しないシグナル配列)等をコードしてもよい。他の可能性が当業者には思い浮かぶであろうし、そしてまた本発明に含まれるよう意図される。こうした配列が構築物中に含まれる場合、本明細書記載のウイルス配列と隣接するならば、全コード配列が、融合またはキメラタンパク質/ポリペプチド/ペプチドとして翻訳されることも可能であり、そして(配列に応じて)翻訳後修飾に供されてもまたは供されなくてもよい。本発明の発現される組換えタンパク質/ポリペプチド/ペプチド、およびその対応する融合またはキメラタンパク質/ポリペプチド/ペプチドもまた、本発明に提供される。特定の態様において、こうした組換えタンパク質/ポリペプチド/ペプチド、およびその対応する融合またはキメラタンパク質/ポリペプチド/ペプチドもまた、単離される。
さらに、本発明は、こうした発現ベクターを含む宿主細胞を提供する。宿主細胞は、場合によって、原核または真核宿主細胞である。本発明のCDV赤血球凝集素をコードする核酸の発現は、原核または真核細胞のいずれかで、慣用法によって実行可能である。
本発明のワクチンおよび免疫原性組成物は、本明細書記載の配列の任意の供給源、例えばウイルス単離体、弱毒化ウイルス、組換え構築物等を含んでもよい。CDVに対するワクチン接種に適したワクチンを作製するいくつかの方法が当該技術分野に知られる。例えば、各々、適切なワクチン配合戦略の変型を提供する、Appelらに対する米国特許4,193,990および4,193,991、Carmichaelらに対する米国特許4,303,645、Woodらに対する米国特許4,971,793; Valdesらに対する米国特許5,882,652、ならびにParrishらに対する米国特許5,885,585および5,814,510を参照されたい。これらの特許各々の全内容は、本明細書に援用される。一般的に、ワクチンを製造するため、本発明の遺伝子配列(天然、または遺伝子操作のいずれかによる)を含有するウイルスベクターまたは他のベクターを使用する。こうしたウイルスベクターの例には、適切な生理学的キャリアーとともに、投与された動物において、重度の疾患症状を引き起こさないように、「死菌」であるか、不活化されたかまたは別の方式で弱毒化されたウイルスおよびビリオン(例えばCDV)が含まれる。ホルマリン、バイナリーエチレンアミン、ベータ・プロピオラクトンなどの化学薬品を用いて、ガンマ照射または熱を用いることによって、あるいは当該技術分野に知られる他の方法によって、CDVウイルスを不活化(複製不能に)してもよい。例えば適切な宿主細胞においてウイルス単離体を反復して継代し、そして続いて生じたクローン単離体を単離することによって、弱毒化を行ってもよい。いくつかの態様において、弱毒化ウイルスは、宿主内で複製する能力を保持するが、これは厳密に必要なわけではない。好ましくは、投与の結果、疾患症状は生じないであろう。しかし、当業者は、多くの有効なワクチン組成物が、投与に際してまたは投与後に、何らかの不快感または比較的重要でない苦痛を引き起こすことを認識するであろう。しかし、完全に症状が出た疾患に対して防御されるという利点は、この可能性より重要である。弱毒化ウイルスは、天然に本発明の核酸配列(単数または複数)を含有するウイルス(例えばCDV)であってもよいし、または該ウイルスは、遺伝子操作によって、核酸配列がウイルス内に挿入されている組換え体であってもよい。組換えワクチンの場合、核酸配列がCDV以外のウイルス内に取り込まれて、ヘテロタイプ組換えワクチンを形成してもよい。こうしたウイルスの例には、限定されるわけではないが、多様なヘルペスウイルス、アデノウイルス、ポックスウイルス、非病原性「オーファンウイルス」、エンテロウイルスなどの腸内ウイルス、および当該技術分野に周知の他のウイルスが含まれる。さらに、細菌、酵母または寄生虫組換え系において、H遺伝子の発現を達成してもよい。好ましい態様において、ウイルスは生存弱毒化(修飾)高力価CDVであり、そして核酸はssRNAである。さらに、ワクチンの他の型もまた意図される。例えば、「空」のビリオン粒子ワクチン(核酸を含まない)もまた意図され、カプシドに組み立てられない抗原性ビリオンまたは他のCDVタンパク質を含むワクチンもまた意図される。さらに、本発明のワクチンは多価であってもよく、そして多数のウイルスを含んでもよい。あるいは、当業者に知られるように、コーディング領域を交換することによって、新規CDVの2以上に由来するタンパク質をコードする核酸を含有するように遺伝子操作した、単一のウイルスを構築してもよい。
本明細書記載の組成物中で用いられるCDVは、一般的に、弱毒化され、そして安全であり、すなわち適切な宿主動物に投与された際、まったくまたはほとんど疾患症状を生じない。CDVワクチンは、宿主の脳脊髄液において抗体産生を誘発してはならない。しかし、弱毒化CDVの投与はなお、Hタンパク質などのCDV免疫原に対する免疫反応(例えば防御免疫反応)を生じる。弱毒化生菌ウイルスワクチンを産生するために最も頻繁に用いられる方法は、細胞培養においてウイルスを連続継代する方法である。例えば、初代イヌ細胞培養または癌遺伝子を宿していないイヌ細胞株においてウイルスを継代してもよいが、他の細胞株もまた使用可能である(例えば、ニワトリ胚または線維芽細胞、VERO−SLAM細胞、ベビーハムスター腎臓細胞株、ならびに他のハムスター細胞株(Sultan S, NT Lan, T Ueda, R Yamaguchi, K Maeda, およびK Kai. 2009. Propagation of Asian isolates of canine distemper virus(CDV) in hamster cell lines. Acta Veterinaria Scandinavica 51:38 doi:10.1186/1751−0147−51−38)等)。典型的には、最初の継代のため、細胞培養をCDVの選択した接種物に感染させる。ウイルス複製の明らかな証拠(例えば感染細胞におけるウイルス誘導性細胞変性効果[CPE])を得た後、最初の継代の細胞培地アリコットまたは感染細胞、あるいはその両方を用いて、第二の細胞培養を感染させる。ウイルスゲノム中の1以上の突然変異が、十分な弱毒化を引き起こし、したがってウイルスがワクチンとして安全に使用可能になるまで、このプロセスを反復する。継代数は幾分変動する可能性もあり、例えば少なくとも約20回、および通常、約50回の継代が用いられるが、例えば150回もの継代を用いてもよい。それまでにはウイルスは、ワクチン配合物において使用するのに十分に弱毒化される(すなわち病原性または疾患産生能が減少する)。弱毒化の度合いは、通常、天然宿主を次第により高い継代レベルのウイルスに曝露することによって、実験的に決定される。
突然変異誘発化学薬品を伴いまたは伴わずに、減少したインキュベーション温度で継代を反復することによって、CDVウイルスを弱毒化することもまた可能である。通常、CDVウイルスは、37℃で増殖する。しかし、例えば、インキュベーション温度を連続して減少させながら50回を超えて継代すると、例えば、中核体温(37℃)以上で複製する能力をもはや持たないウイルスのクローン株が産生される。こうしたウイルスは、典型的にはより低い温度を示す体の領域、例えば鼻腔では増殖する能力を保持するが、中核体温では複製しない。例えば、1つの態様において、低温適応温度CDVは、約26℃〜約34℃の温度で組織培養細胞において増殖するが、約37℃の非許容性温度では増殖しない(本明細書にその全内容が援用される、米国特許出願2006121521、DowlingおよびYounger)。したがって、これらのウイルスは、野生生物でありそして非常に感受性が高い種、例えば大型ネコ科動物、ミンクおよびフェレットを含む動物のためのCDVワクチンで使用するにも完全に安全である。
他の適切なワクチン構成要素、例えば薬理学的に許容されうるキャリアーが当業者に周知であり、ワクチンとして使用するための組成物の調製も同様である。典型的には、こうした組成物を溶液または懸濁物のいずれかとして調製するが、錠剤、丸剤、粉末等の固体型もまた意図される。投与前に液体中で溶液にするかまたは懸濁物にするのに適した固体型もまた調製してもよい。また、調製物を乳化してもよい。薬学的に許容可能であり、そして活性成分と適合する賦形剤と、活性成分を混合してもよい。適切な賦形剤は、例えば、水、生理食塩水、デキストロース、グリセロール等、またはその組み合わせである。さらに、組成物は、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝剤等の補助物質を少量含有してもよい。組成物の経口型を投与することが望ましい場合、多様な増粘剤、フレーバー剤、希釈剤、乳化剤、分散補助または結合剤等を添加してもよい。本発明の組成物は、投与に適した形で組成物を提供するため、任意のこうしたさらなる成分を含有してもよい。配合物中の翻訳可能核酸の最終量は多様であってもよい。しかし、一般的に、量は約1〜99%であろう。組成物は、アジュバントをさらに含んでもよく、その適切な例には、限定されるわけではないが、Seppic、QuilA、Alhydrogel、水中油エマルジョン、リン酸アルミニウム、carbopol、Emulsigen等が含まれる。
本発明の免疫原性/ワクチン調製物を、当業者に周知の多くの適切な手段のいずれによって投与してもよく、これには、限定されるわけではないが、注射、経口、鼻内、気管内、抗原を含有する食品の摂取によるもの、筋内、皮下、静脈内、経皮、および皮内経路、点眼剤によるもの、あるいは噴霧剤または針不含装置を用いたものなどが含まれる。しかし、好ましい態様において、投与様式は注射による。さらに、組成物を単独で、あるいは他の薬剤または免疫原性組成物と組み合わせて、例えば多構成要素ワクチンの一部として、投与してもよい。特に、免疫原性CDVを、狂犬病ウイルス、ライム病ボレリア(Borrelia burgdorferi)、エーリキア・カニス(Ehrlichia canis)、イヌパルボウイルス、イヌアデノウイルス、イヌパラインフルエンザウイルス、イヌコロナウイルス、バベシア・カニス(Babesia canis)、アナプラズマ・ファゴサイトフィリウム(Anaplasma phagocytophilium)、ジアルジア属(Giardia)種、リーシュマニア属(Leishmania)種、レプトスピラ属(Leptospira)種またはその任意の組み合わせ等と組み合わせてもよい。さらに、投与は単回事象であってもよいし、または多数回のブースター用量(同じまたは異なる株の)を多様な時間間隔で投与して、免疫反応を増大してもよい。さらに、投与は予防的であってもよく、すなわちウイルスに対する曝露が生じるかまたは生じたと推測される前、あるいは事実の後、すなわち曝露したことが知られるかまたは推測された後、あるいは療法的に、例えばウイルス感染に関連する疾患症状が生じた後であってもよい。
本発明はまた、本明細書に開示する核酸配列(または抗原性ペプチドおよび/またはポリペプチドをコードする部分)を含有し、そして発現する、多様なタイプの組換えベクターおよび/または発現ベクターも提供する。こうしたベクターおよび発現系の例には、限定されるわけではないが:多様な細菌(例えば大腸菌(Escherichia coli)またはプロバイオティクスに基づく(例えばラクトバチルス属(Lactobacillus))発現ベクター;アデノウイルスベクター、バキュロウイルス、ピキア属(Pichia)、および他の酵母発現系;ポックスベクター、例えばアライグマ・ポックスベクター等が含まれる。こうした組換えベクターおよび発現系もまた、ワクチン調製物中で使用可能である。あるいは、これらを、他の目的のために、例えば配列の実験室操作のために、あるいは研究または診断目的のために用いてもよい。
本発明は、本発明の組成物を被験体に投与することによって、CDV感染に対して免疫するかまたはその症状を防止する必要がある被験体(例えば哺乳動物)において、CDV感染に対して免疫するかまたはその症状を防止する方法を提供する。一般的に、子犬および/または成犬において、能動免疫を提供するのに十分な量で、CDVワクチンを投与する。好ましくは、免疫反応は、CDVに対する将来の曝露に対して防御性であり、すなわち組成物を投与すると、非ワクチン接種対照と比較した際、CDV感染に関連する疾患の症状が防止される。しかし、すべての症状が排除されなかったとしても、免疫反応が、単に、疾患症状の重症度を弱めるかまたは減少させるならば、また、多くの利点が得られうる。
本発明の好ましい態様において、本発明のワクチンを用いてワクチン接種される動物は、成犬および子犬の両方を含む、飼い犬である。しかし、他の潜在的なCDV宿主のワクチン接種もまた意図される。他の潜在的な宿主には、野生イヌ科(canid)動物(例えばオオカミ、野生犬種等)、ネコのより大型の種(飼育されていてもまたは野生でもいずれでもよい)、ミンク、アカパンダ(red panda)、キツネ、ライオンおよびトラ、フェレット、ウサギ、ヤギ等、ならびに他の肉食動物一般が含まれる。フェレットはCDVに非常に感染しやすい。したがって、非常に弱毒化された修飾生菌ウイルスワクチンまたは組換えCDVワクチンを用いてもよい。アメリカフェレット協会、メリーランド州によれば、8週齢、11週齢、および14週齢の健康な子フェレットに3回のCDVワクチンを投与可能である。ワクチンは、もちろん、飼育動物で使用されるであろうが、野生または部分的に飼育されている動物、例えば動物園または保護区域、公園、研究施設等の動物もまた、こうしたワクチン接種から利益を受ける可能性もある。野生生物は、修飾生存ウイルスワクチンにより感受性であるため、例えばワクチン構成要素を含有する食べられる餌を使用することによって、特に、死菌CDVを用いて野生生物にワクチン接種してもよい。ウイルスが宿主において疾患症状を引き起こしてもまた引き起こさなくても、CDV変異体の宿主となりうるいかなる動物も、本明細書に提供するワクチン調製物によるワクチン接種によって、利益を受けうる。ウイルスに感染した際、無症状である動物(すなわちサイレントキャリアー)にワクチン接種すると、より感受性である集団に対するウイルスの蔓延が抑えられるため、有益であろう。
本発明はまた、本明細書に開示するCDVの抗原決定基または抗原性領域に、特異的にまたは選択的に結合する抗体も提供する。いくつかの態様において、抗体は、ウイルスを中和し、そしてしたがって感染を防止することも可能な、中和抗体である。こうした示差抗体は、ポリクローナルまたはモノクローナル抗体であってもよいが、モノクローナル抗体が、一般的には好ましい。抗体は、イヌ起源であってもよい。ウイルス(例えば死菌ウイルス、タンパク質、またはタンパク質をコードする核酸)を、マウス、あるいはウサギまたはイヌ宿主などの別の適切な宿主に注射することによって、モノクローナル抗体を調製する。3回のブースター後、脾臓を採取し、そして骨髄腫細胞と融合させる。モノクローナル抗体を産生するクローンを、ELISA、HA−HIおよび間接的蛍光抗体試験によってスクリーニングする。本明細書記載のウイルスと、または該ウイルスから単離されたタンパク質と反応するクローンを、CDV診断アッセイの発展のために取っておく。好ましい抗原性ターゲットであるアミノ酸コドンに渡る1以上のペプチド、例えばHタンパク質をウサギに注射することによって、ポリクローナル抗体を調製してもよい。
本発明はまた、本明細書に記載するCDV変異体を検出するための診断法およびキットも提供する。こうしたキットには、例えば、本明細書に開示する核酸配列を増幅する(例えばポリメラーゼ連鎖反応、PCRによって)ための特異的なオリゴヌクレオチドプライマーが含まれる。あるいは、こうしたキットには、新規CDV変異体によって提示されるユニークな抗原決定基に選択的にまたは特異的に結合する抗体(例えばモノクローナルまたはポリクローナル)が含まれてもよい。該キットは、例えばCDVに感受性である任意の動物、特にイヌのCDV状態を監視するのに有用である。該キットは、1つの管轄区域から別の管轄区域に輸出されるかまたは輸送された子犬およびイヌのCDV状態を監視するのに特に有用である。1つの態様において、本発明の診断試験および方法を用いて、完全にワクチン接種されているが、にもかかわらずCDV感染の症状を発展させているイヌ(または他の動物)において、CDVの存在を検出する。本発明の方法を用いると、疾患の病原因子の遺伝子型を決定し、そしてワクチン株によって、またはワクチン接種によって中和されなかった遺伝子変異体での重感染によって、疾患症状が引き起こされたのかどうか、すなわちワクチンが遺伝子変異体に対して防御を提供しなかったかどうかを解明することが可能である。
本発明は、以下の実施例においてさらに例示され、該実施例はいかなる点でも本発明を限定するように意図されない。
実施例1. 7つのCDV単離体の予備的研究
イヌジステンパーウイルス(CDV)は、イヌにおいて、多臓器疾患を引き起こす、非常に伝染性が高いウイルスである。米国由来のイヌにおけるCDVの7つの症例を入手した。これらのCDV単離体は、イヌシグナル伝達リンパ球活性化分子(SLAM)を発現するVero細胞株(以下に記載する)において、巨大多核合胞体を形成した。赤血球凝集素遺伝子配列に基づいて、3つの州(CA、MO、およびOK)由来のCDV単離体は、2つのCDV遺伝子群を形成した:第I群(主要、6/7)は、CDVのヨーロッパ野生生物系統に密接に関連するCDV単離体からなった。第II群(少数、1/7)は、遺伝子的に、CDVの北極様系統に関連した。しかし、どちらのCDV群も、古い(1930〜1950)CDV単離体のアメリカ−1系統に属する、現在のワクチン株とは遺伝子的に異なった。
この研究において、H遺伝子配列を用いて、米国由来の7つのCDV単離体の進化的および遺伝子的分析を行った。in vitro細胞培養系を用いて、H遺伝子配列変異の生物学的効果を調べた。死ぬ前の試料には、目のスワブ、鼻のスワブ、およびEDTAで抗凝固処理された末梢血が含まれた。スワブには、1〜2mlの冷却した生理食塩水が加えられ、収集24時間以内に翌日配達によって、氷上で送付された。尿試料は試験されなかった。死後試料は、扁桃腺、脳、膀胱、および肺由来であった(Kubo, T., Y. Kagawa, H. Taniyama, およびA. Hasegawa. 2007. Distribution of inclusion bodies in tissues from 100 dogs infected with canine distemper virus. J. Vet. Med. Sci. 69:527−529)。各試料およそ2〜5gが、ウイルス学的検査のため、翌日配達によって、氷上で、試験管中、送付された。米国の3つの州から、CDと推測される7つの症例由来の標本を得た(オクラホマ州、4例;ミズーリ州、1例;およびカリフォルニア州、2例)。
直接蛍光抗体試験のため、組織を8μm厚の切片にして、そしてアセトン(75%)−メタノール(25%)混合物で、室温で固定した。Veterinary Medical Research and Development(VMRD)、米国ワシントン州プルマンは、獣医診断適用のための、あらかじめ力価決定されロットごとに証明書がついたコンジュゲートを供給した。品質管理/品質保証の一部として、陰性のおよび既知の陽性CDV対照に対して、使用前にコンジュゲートを試験した。すぐに使用できる、あらかじめ希釈したフルオレセイン・イソチオシアネート標識抗CDVモノクローナル抗体(VMRD、ワシントン州プルマン)またはポリクローナル抗体コンジュゲート(VMRD、ワシントン州プルマン)を添加した後、切片を37℃で30分間インキュベーションした。未結合抗体コンジュゲートを洗浄した後、切片をエバンスブルーで15分間対比染色した。緩衝グリセロール(pH9.4)中でマウントした後、蛍光顕微鏡によって切片を検査した。陽性細胞は、細胞質において、アップルグリーンの蛍光を示し、そして陰性細胞は赤レンガ色であった。
単離のため、CDV感染試料由来の組織を細かく刻み、2回凍結融解してウイルスを放出させ、そして8,000xgで遠心分離した。透明な上清を0.22μmシリンジフィルターでろ過した。Vero細胞株は、日本の正常成体アフリカミドリザル(セロピテカス属(Ceropithecus))の腎臓に由来した。以前、Sekiらによって記載されたように(Seki, F., N. Ono, R. Yamaguchi, およびY. Yanagi. 2003. Efficient isolation of wild strains of canine distemper virus in Vero cells expressing canine SLAM(CD 150) and their adaptability to marmoset B95a cells. J. Virol. 77:9943−9950)、イヌシグナル伝達リンパ球活性化分子(SLAM、CD150としてもまた知られる)でのVero細胞のトランスフェクションによって、組換え細胞株を得た。接種物(25cmフラスコあたり、約1ml)を、20分ごとに振盪しながら37℃で1時間インキュベーションした。イヌSLAMを発現する組換えVero細胞株上に接種した後、5%ウシ胎児血清を含む約3.5mlのダルベッコの修飾イーグル培地(Cellgro、バージニア州ヘンドロン)を添加した。細胞変性効果(多核合胞体形成)に関して、細胞を毎日検査した(Seki、上記)。イヌSLAMを発現するVero細胞は、CDVの初代単離に有用であることが見出されている(Lan, N.T., R. Yamaguchi, K. Uchida, S. Sugano, およびS. Tateyama. 2005. Growth profiles of recent canine distemper isolates on Vero cells expressing canine signaling lymphocyte activation molecule (SLAM). J. Comp. Path. 133:77−81)。
標本から総RNAを抽出するため(宿主およびウイルスRNA)、QIAmpウイルスRNA抽出キットを用いた(Qiagen Inc.、カリフォルニア州)。Nonodrop分光光度計(Nanodrop Technologies、カリフォルニア州)を用いて、A260/A280によって、RNAの品質および量をチェックした。
CDV RNAを検出するため、ヌクレオカプシド(N)遺伝子に基づく逆転写酵素(RT)−PCRを対象とした(Kim, Y. H., K.W. Cho, H.Y. Youn, H.S. Yoo, およびH.R. Han. 2001. Detection of canine distemper virus(CDV) through one step RT−PCR combined with nested PCR. J. Vet. Sci. 2:59−63)。ターゲット遺伝子の入れ子(nested)増幅、N遺伝子の高いコピー数、及びCDV単離体間でN遺伝子の保存された配列のために、このプロトコルは高い感度を提供する。簡潔には第一周期産物を、順方向プライマー(プライマー1: 5’−ATTTGGGATTGCTTAGGA−3’、配列番号34)および逆方向プライマー(プライマー2: 5’−GGCGCTCATCTTGGACAT−3’、配列番号35)によって増幅した。該プロトコルは、45℃1時間、95℃3分間の逆転写; 94℃30秒間の変性、54℃30秒間のアニーリング、および72℃1分間の伸長を伴う、30周期のPCR;ならびに72℃7分間の最終伸長であり、反応混合物を4℃で保持した。ごく少量(1マイクロリットル)の第一の反応の産物を、プライマー3(5’−GTTAGCTAGTTTCATCCT−3’、配列番号36)およびプライマー4(5’−GGTCCTCTGTTGTCTTGG−3’、配列番号37)を用いて、第二周期の増幅に供した。第二周期のプロトコルは、95℃3分間の変性; 94℃30秒間の変性および54℃30秒間のアニーリング; 72℃1分間の伸長を伴う、30周期のPCRであった。最終伸長を72℃7分間行い、そして反応混合物を電気泳動するまで、4℃で保持した。第二の周期のアンプリコンのサイズは419塩基対であり、アガロースゲル分析において、分子サイズ標準を含めることによって、これを検証した。
CDV遺伝子型決定のため、H遺伝子をターゲットとして用いた(Martella, V., G. Elia, M.S. Lucente, N. Decaro, E. Lorusso, K. Banyai, M.Blixenkrone−Moller, N.T. Lan, R. Yamaguchi, F. Cirone, L.E. Carmichael, およびC. Buonavoglia. 2007. Canine distemper virus(CDV) by hemi−nested multiplex PCR provides a rapid approach for investigation of CDV outbreaks. Vet. Microbiol. 122:32−42)。順方向プライマー(プライマー204+、ヌクレオチド388〜409、5’−GAATTCGACTTCCGCGATCTCC−3’、配列番号38)および逆方向プライマー(プライマー232b−、ヌクレオチド1543〜l519、5’−TAGGCAACACCACTAATTTRGACTC−3’、配列番号39)は、1160塩基対のアンプリコンを生じる。H遺伝子RT−PCRプロトコルは、50℃30分間のRTおよび94℃2分間であった。PCRプロトコルは、35周期の94℃1分間、50℃1分間、および72℃3分間、ならびに72℃10分間の最終伸長であり、反応混合物を4℃で保持した。陽性および陰性CDV対照を、検出(N遺伝子)および遺伝子型決定(H遺伝子)RT−PCRプロトコル両方の各々の実行に含めた。H遺伝子配列の系統発生分析のため、Oklahoma Medical Research Foundation、オクラホマ州オクラホマシティーで配列決定した。配列をBasic Local Alignment Search Tool for Nucleotides(BLASTN)分析に供した(Altschul, S.F., T.L. Madden, A.A. Schaffer, J. Zhang, Z. Zhang, W. Miller, およびD.J. Lipman. 1997. Gapped BLAST and PSI−BLAST: a new generation of protein database search programs. Nuc. Acid Res. 25:3389−3402)に供し、そして異なる種および世界中の地理的区域由来のCDV単離体に関するGenBank H遺伝子配列に対して比較した。H遺伝子配列の同一性パーセントを記録した。さらに、H遺伝子配列を系統発生分析およびGenBankに寄託されるワクチンCDV単離体(Ondersteport、Convac、Lederle、およびSnyder Hill CDV単離体)のH遺伝子配列との配列比較に供した。既知の配列との上位100マッチの整列を用い、Jukes−Cantor法(NCBI、メリーランド州)を用いた近隣結合(neighbor-joining)によって、系統発生分析を行った。
CD症例試料のうち2つ(OADDL 07091030およびOADDL 07091031)由来の末梢血フィルムを水性Romanowsky染色で染色し、そして光学顕微鏡によって調べた。どちらの血液フィルムも、好中球およびリンパ球細胞質内に、多くの好酸性構造を示し、これはCDV封入体と一致した(図36)。どちらの症例でも、直接蛍光抗体試験によって、CDV封入体の存在を確認した。
7つのCDV陽性試料のうち6つに関して、イヌSLAM/CD150を含むVero細胞株中での単離に成功した。CDV単離体の細胞変性効果は、接種1〜2日後に形成される多核合胞体によって特徴付けられた。赤血球凝集素遺伝子に関するRT−PCRによって、CDVの存在をさらに検出した。RT−PCRおよびH遺伝子の配列決定のみによって、1つのCDV試料(OADDL 07061535)を試験した;試料は、ウイルス単離には不足していた。
H遺伝子に関するRT−PCR、その後の配列決定に基づいて、CDV単離体(OK−1、OK−2、OK−3、OK−4、CA−1およびCA−2;主要第I群)間の同一性レベルは、ミズーリ州由来のイヌCDV単離体19876とで最高であり、19876は遺伝子的に、デンマーク・ミンクCDV単離体に最も関連している(Pardo, I.D.R., G.C. Johnson, およびS.B. Kleiboeker. 2005. Phylogenetic characterization of canine distemper viruses detected in naturally infected dogs in North America. J. Clin. Microbiol. 43:5009−5017)。したがって、該単離体がこの研究における主なCDV変異体であった(7つの単離体のうち6つ)。これらの6つのCDV単離体はCDV単離体のヨーロッパ野生生物系統に属した。しかし、1つの単離体(MO−1;少数第II群)は、レッサーパンダCDV単離体と密接に関連する、ミズーリ州由来のイヌCDV単離体21260(Pardo、上記)に遺伝的に最も類似であることが見出された。このCDV単離体は、CDV単離体の北極様系統に属する。2007年のOADDL CDV単離体に関する情報を表1に要約し、そしてこれらの単離体のH遺伝子の部分的ヌクレオチド配列を図1〜7に提供する。
Figure 2012519471
赤血球凝集素糖タンパク質は、CDV単離体中でおよそ10%変動し、そしてエンベロープタンパク質Hは、ウイルスの細胞病理および向性を決定する(von Messling, V.G. Zimmer, G. Herrler, L. Haas, およびR. Cattaneo. 2001)。予備的分析において、OADDL CDV単離体を、GenBank中のすべてのH配列と比較し、そしてCDV単離体が地理的に別個の系統においてクラスター形成していることが見出された。例えば、アルゼンチンCDV単離体はすべて、1つの明確なクラスターを形成した。南アメリカCDV単離体は、地理およびH遺伝子系統発生に基づく、CDV単離体の最近の分析には含まれなかった(McCarthy、上記)。しかし、これらは別個の南アメリカクラスターを形成する。最近の論文において、用語、遺伝子型、クラスター、および系統は、異なる研究者らによって、交換可能に用いられてきているが、この分析を含めて、すべての研究(Martella, V., F. Cirone, G. Elia, E. Lorusso, N. Decaro, M. Campolo, C. Desario, M.S. Lucente, A.L. Bellacicco, M. Blixenkrone−Moller, L.E. Carmichael, およびC. Buonavoglia. 2006. Heterogeneity within the hemagglutinin genes of canine distemper virus(CDV) strains in Italy. Vet. Microbiol. 116:301−309; McCarthy、上記; Mochizuki. M., M. Hashimoto, S. Hagiwara, Y. Yoshida, およびS. Ishiguro. 1999. Genotypes of canine distemper virus determined by analysis of the hemagglutinin genes of recent isolates from dogs in Japan. J. Clin. Microbiol. 37:2936−2942)において、CDV系統発生に関する結果は類似であり、これはすべての研究者らがGenBank寄託配列を用いたためである。CDVの特定の遺伝子型メンバーは、H遺伝子配列のヌクレオチド中、95%より高い同一性を有すると提唱されてきており(Mochizuki、上記)、そしてしたがって、遺伝子型内変動は、5%未満である(Martella、上記)。
オクラホマ州出身であり、結膜炎、鼻汁および体重減少の病歴を持つ、ワクチン接種された3ヶ月齢のメス雑種犬から、CDV単離体OK−1(OADDL 07061535)を得た。このイヌは、ワクチン接種の完全なコースを終了しておらず、そして放浪およびゴミあさりの前歴があった。このCDV単離体は、CDV単離体19876(GenBank寄託番号AY964110.1)と最大同一性(98%)を有した。H遺伝子分析に基づくと、CDV単離体19876は、OK−1とともに、CDV単離体のヨーロッパ野生生物系統に属する。
オクラホマ州出身の11ヶ月齢のワクチン接種されていないシベリアンハスキーの組織プールから、CDV単離体OK−2(OADDL 07091030)を得た。剖検時、結膜および気管上皮は、細胞質内に、透明なハロー(halos)に取り巻かれた好酸性封入体を含有した。扁桃腺中、顕著なリンパ枯渇および上皮中の多数の封入体があった。この単離体は、CDV単離体19876(イヌ起源、ミズーリ州)と最大同一性(98%)を有し、そしてハンガリー由来(GenBank寄託番号EF095750.1)、デンマーク・ミンク(Z47759.1)、およびレッサーパンダ(AF178039.1)のCDV単離体、CDV株A75/17(AF164967.1)、およびドイツ・フェレット単離体由来のモルビリウイルス(X84999.1)と94%の同一性を有した。米国由来のCDV単離体A75/17は、野生CDV単離体の病原性プロトタイプと見なされる(Simon−Martinez、上記)。ワクチン単離体(Convac、Lederle、およびOndersteport)とのH遺伝子の同一性レベルは、89%であった。
オクラホマ州のシェルターにいるイヌから、CDV単離体OK−3(OADDL 07091031)を得た。血液チューブが得られたが、この症例では他の履歴は入手不能であった。CDVと一致する封入体が、末梢血フィルム上の白血球で観察され、そしてさらに、直接蛍光抗体試験によって確認された。血液試料は、ウイルス単離によって、CDVに関して陽性であった。H遺伝子を配列決定し、そしてこれは、CDVイヌ単離体19876(GenBank寄託番号AY964110.1)と99%の同一性を有し、そしてハンガリー(EF095750.1)、デンマーク・ミンク(Z47759.1)、およびレッサーパンダ(AF 178039.1)由来のCDV単離体、CDVウイルス株A75/17; CDV単離体01−2641ならびにドイツ・フェレット・モルビリウイルス株(X84999.1)と95%の同一性を有した。
オクラホマ州の動物シェルターから引き取られたイヌ由来の組織プール(膀胱および肺)から、CDV単離体OK−4(OADDL 07091032)を得た。このCDV単離体は、CDV単離体19876(GenBank寄託番号AY964110.1)と最大同一性(96%)を有した。降順で、ハンガリー(EF095750.1)、レッサーパンダ(AFl78039.1)、およびデンマーク・ミンク(Z47759.1)由来のCDV単離体と93%の同一性;ワクチン単離体と84%の同一性;ならびにアザラシ(phocine)ジステンパーウイルスと70%の同一性を有した。
CDで死亡した、カリフォルニア出身のワクチン接種された10週齢のオスのアメリカンブルドッグ由来の組織プールから、CDV単離体CA−1(OADDL 07101508)を得た。4頭の同腹仔のうち3頭が、呼吸器徴候、角質増殖、および癲癇を伴うCDで死亡した。3頭の死亡した同腹仔のうち、1頭の同腹仔に関して、剖検報告が入手可能であった。肺は硬く、そして剖検時点で鬱血していた。4頭の同腹仔のうち1頭の剖検結果は、完全に正常であった。H遺伝子配列は、イヌ起源のCDV単離体19876(GenBank寄託番号AY964110.1)と98%同一であった。該CDV単離体は、ハンガリーCDV単離体、レッサーパンダ単離体(AF178039.1)、およびCDV株A75/17(AF164967)に対して、94%同一であった。該CDV H遺伝子配列は、CDV単離体01−2641(AY526496.1)に対して、93%同一であった。このCDV単離体のH遺伝子は、すべてのワクチンCDV単離体に存在するPstI部位を欠いていた(Demeter, Z., B. Lakatos, E.A. Palade, T. Kozma, P. Forgach, およびM. Rusvai. 2007. Genetic diversity of Hungarian canine distemper virus strains. Vet. Microbiol. 122:258−269)。
CDと適合する臨床徴候を有する10週齢のCDVワクチン接種されたワイマラナー犬の鼻および結膜スワブから、CDV単離体MO−1(OADDL 07110098)を得た。このイヌは、「チューインガム」癲癇、肥厚した足蹠、咳、鼻汁、および鬱血肺を生じていた。安楽死させる前にスワブを収集し、そして細胞培養中でCDVを単離した。CDV単離体H遺伝子は、ミズーリ州由来のCDV単離体21261および18133と最大同一性(98%)、そしてイタリア由来(48/05および179/94)およびハンガリー由来(H06Bpl0S、H06Bp8F、H05Bp7F、H05Bp6F、およびH05BpBp5F)のCDV単離体と97%の同一性を有した。このCDV単離体のH遺伝子配列は、グリーンランドのイヌ由来のCDV単離体と95%同一性を有し、そしてCDV 19876とは、90%の同一性しか持たなかった。該単離体は、ワクチンCDV単離体と89%同一性を有し、そしてアザラシ・ジステンパーウイルスH遺伝子と70%同一性を有した。さらに、このCDV単離体は、すべてのワクチンCDV単離体に存在するPstI制限部位を欠いている(Demeter, supra)。系統発生分析に基づくと、この単離体は、CDV単離体の北極様系統に属する。
去勢され、ワクチン接種された32ヶ月齢のオスのボーダーコリーであって、嘔吐、下痢およびリンパ球減少症の病歴があるイヌの鼻、咽頭、扁桃腺、および結膜スワブの組み合わせから、CDV単離体CA−2(OADDL 07111080)を得た。H遺伝子配列は、CDV単離体19876と最大同一性(96%)を有した。この単離体は、ハンガリーCDV単離体、レッサーパンダCDV単離体、およびデンマーク・ミンクCDV単離体と93%同一性;CDV株A75/17(GenBank寄託番号AF164967.1)と92%同一性;そしてドイツ・フェレットCDV単離体と92%同一性を有した。系統発生分析に基づいて、このCDV単離体は、ヨーロッパ野生生物系統のCDV単離体とクラスター形成する。このイヌは、治療後に回復し、そして最近3ヶ月、臨床的に健康である。ヨーロッパ野生生物系統のCDV単離体に天然に曝露された後、このイヌが生存しているのは、おそらく、年齢、遺伝的耐性、および商業的CDVワクチンでの完全ワクチン接種後の免疫のためであろう。このイヌはCDV感染から回復した3ヶ月後、CDV血清中和によって、1:16のCDV力価を有した。
6つのOADDL 2007年CDV単離体のうち5つが、イヌSLAM受容体を発現するVero細胞株において、多核合胞体を生じることが見出された。合胞体サイズは、CDV単離体の病原性の度合いと相関することが提唱されてきており(Cosby, S.L., C. Lyons, S.P. Fitzgerald, S.J. Martin, S. Pressdee, I.V. Allen. 1981. J. Gen. Virol. 52:345−353)、これは細胞間にCDVが蔓延する能力と相関するためである。細胞培養における侵襲性の蔓延、天然にSLAM/CD150を発現するイヌ・リンパ球において多数の封入体を産生可能であること、およびワクチン接種されたイヌにおいて致死的感染を生じることが可能であることから、ヨーロッパ野生生物系統のこれらのイヌ単離体が、イヌに対して病原性であることが示される。
本実施例は、EW系統が米国において主なCDV単離体として出現しつつあることを示す。
実施例2. さらなるCDV単離体
実施例1に記載した方法を用いて、さらなるCDV単離体を同定し、そしてこれを表2に列挙する。
Figure 2012519471
実施例3.出現しつつあるCDV単離体の連続検査:最近の米国イヌジステンパーウイルス間の細胞病理(CPE)の相違
実施例1および2で得られた結果によって、米国由来のさらなるCDV単離体を単離して、そして特徴付ける努力を続けることが促された。実施例1に関して記載するような研究を行った。CDV試料をVero+SLAM細胞株に接種した。大部分のCDV単離体は、多数の核を持つ巨大合胞体を産生した。より少数のCDV単離体は、少ない細胞核を持つより小さい大きさの合胞体を産生した。いくつかのCDV単離体において、ウイルス試料接種の18〜24時間後、多数の合胞体が出現した(迅速増殖CDV単離体)。いくつかのCDV単離体において、合胞体の縁は明確であり、ほぼ円形の縁であった。他のCDV単離体において、合胞体の縁はそれほど明らかに区切られていなかった。これらの「けばだった」CPE CDV単離体は、母合胞体の隣に、娘合胞体が、迅速に広がる傾向があった。他のCDV単離体において、娘合胞体は、遠く離れて出現し、別のコロニー(単数または複数)のウイルスが増殖したことが示される。要約すると、CDV単離体は多様な細胞病理を示した。米国由来のCDV単離体は、合胞体合成の速度(迅速および緩慢)、広がり(大規模および小規模)、サイズ、形状(丸および不定形)、およびCDV単離体による宿主細胞の侵襲性が異なる。これらの生物学的特性は、現在のワクチンによって提供される防御に影響を及ぼしている可能性もある。例えば、必須ウイルス遺伝子のコドン使用頻度は、実施例11に論じるように、CDVの複製効率に影響を及ぼしうる。
実施例4. CDV単離体配列の比較遺伝子分析:相対的優先コドン使用頻度(RPCU)
10の赤血球凝集素残基(29、178、180、225、386、412、475、530、549、および603)は、CDV系統間で陽性選択下にあることが知られる(McCarthy、上記)。単離体の赤血球凝集素(H)遺伝子を配列決定するかまたは部分的に配列決定し、そして生じた配列を図1〜33に示す。野生型CDV単離体から配列決定した部分的H遺伝子(ほぼヌクレオチド534〜1236赤血球凝集素遺伝子断片)を、Bio−editプログラムとともに提供されたCLUSTAL Wを用いて、GenBank由来の参照CDV配列と整列させた。注のうち、EW株に参照配列を含有するウイルス単離体は、単離されるか、細胞株中で増殖されるか、または特徴付けられたことがない。組織抽出物に対して配列決定することによって、参照EW配列を得た。
図34A〜Fに示す、RPCU分析の結果は以下を示した:
残基180で、コドンは、Galaxy、Proguard、Continuum、およびVanguardなどのOndersteport様ワクチンにおいて、AGTである。しかし、ヨーロッパ野生生物(EW)において、そしてすべての野生型CDV単離体において、このコドンはGGTである。このコドンは、Ondersteport様ワクチンを、米国で広まっている野生型CDV単離体から区別するTaqman RT−PCRを設計する際に有用でありうる。
残基225で、コドンは、すべてのワクチンにおいて、アスパラギン酸(D)をコードするGACである。しかし、アメリカ−2 CDVではAACであり、そしてアライグマ・ジステンパーウイルス(RDV)09050216ではCACである(ヒスチジン、Hをコードする)。
残基386で、すべてのOndersteport様ワクチン(Pfizerワクチンを除いてすべて)では、コドンはACC(スレオニン、T)である。しかし、EW、AM−2およびAR系統CDV野生型ウイルス、ならびにPfizerワクチンにおいては、TACである。このコドンはしたがって、大部分の商業的CDVワクチンおよび野生型CDV単離体を区別するための示差Taqman RT−PCRを開発するのが有用である。
残基412で、コドンは、ワクチンおよび野生型CDVウイルスにおいて、プロリン(P)をコードするCCTである。しかし、単離体07110098において、これは、CAT(ヒスチジン、Hをコードする)であり、CDVの北極系統に関する場合も同様である。
コドン使用頻度比較の分析から、相対的優先コドン使用頻度(RPCU)が発展してきている。RPCU分析の1つの目的は、特定の地理的地域(例えば米国)において広まっている大部分の単離体に対する防御を提供可能な広域性ワクチンを作製するのに適したRNAウイルス単離体(例えばCDV単離体)を同定することである。RFCUはまた、コドン使用頻度に基づいて、関心対象の地域外にある単離体の遺伝的距離の評価も可能にする。RPCUは、部分的に、アミノ酸残基に加えて、コドン自体が進化選択圧下にあるという観察に基づく(Gustavoら, Lost in Translation: Codon Usage and HIV−1 Evolution, AIDS Reviews 2004; 6:54−60)。
RPCU分析を開発し、そして実行するため、各エントリーが単一の3つ組コドンの3つのヌクレオチドを提示する、図34A〜Fに示すコドン使用頻度表を生成した。コドン使用頻度表はまた、コンカテマーアプローチを用いて、例えばMEGA4.1ソフトウェアを伴うExcelプログラムを用いて、生成してもよい。この表を生成するため、まず、BioEditソフトウェアを用いて、すべての配列をCLUSTAL W分析に供した。次いで、コーディング配列とインフレームであるヌクレオチドの3つ組を手動でExcel表に入力した。この方式で、赤血球凝集素タンパク質の155〜428の残基位を分析し、そして関心対象の残基に関するコドンを表に含めた。各残基位に関して、列の一番下に、用いられたコドンを小文字で再度タイピングし、そして一文字の大文字を用いて、コードされるアミノ酸を示した。アミノ酸変化を導かない代替コドン(置換突然変異、S−/−)もまた、示した。例えば、残基位176は2つのコドン(tctおよびtcc、どちらもセリン、Sをコードする)を用いる。Ondersteport配列のみが表中の他のすべてのコドンと異なる(すなわち外れ値である)残基位、例えば残基位180および186もまた、列の一番下に「O」によって示した。いくつかの残基位はすべてのCDV単離体で同一であった。これらの同一残基位は、CDVワクチン単離体の選択に影響を及ぼさないため、コドン使用頻度表には示さない。
各残基で相対的優先コドンを同定するため、表全体を残基ごとに、すなわち列ごとに調べた。例えば、残基位185のコドンに相当する列において、CCAおよびTCAがこの位のアミノ酸をコードするのに用いられる。しかし、CCAが単離体の大部分に存在するため、TCAに比較して、CCAが優先コドンである。同様に、各残基位で、優先コドンを決定した。いくつかの残基に関して、最も優先されないコドンもまた同定した。見て取れるように、最も優先されないコドンの大部分は、アメリカ−2および北極単離体で生じる。相対的優先コドン使用頻度のこのパターンは、AM−2およびAR CDV単離体よりもEWが生物学的に利点を有する大きな理由の1つである可能性もある。イヌジステンパーウイルスは、環境において不安定であるが、非常に伝染性が高く、麻疹ウイルスに似ている。コドン使用が生物学的により適合し、そしてより高い複製力価および脱落(例えば鼻分泌物および犬集団における送達の他の入口において)を有するため、複製上の利点を有する地理的地域におけるCDV単離体は、蔓延し、そしてワクチン接種されたイヌであっても罹患させる能力を有する。したがって、コドン使用頻度は、宿主集団における疫学的、生物学的および疾患転帰に対する影響を伴う、病原性因子(例えばCDVのHタンパク質)の最小の機能単位である。
上述のように、本RPCU分析の主な目的は広域性CDVワクチン開発で使用するための1以上のCDV単離体を同定することである。好ましくは、こうしたCDV単離体を含有するかまたはこうした単離体に基づくワクチン調製物は、米国において現在広まっている大部分のCDV単離体による感染に対する防御を提供するか、または少なくともこうした感染に関連する有害な症状を減少させる。EW単離体09041474Bは、大部分の残基位(例えば、185位、192位、193位、203位、205位等)で好ましいコドンを用いると同定され、そしてしたがって、さらなるワクチン開発のために選択された。
RPCUのアプローチは、部分的に、CDV Hタンパク質の免疫原性に必須の残基が決定されていないために開発されてきている。RPCU分析は、Hタンパク質残基の抗原性特性に関する詳細な知識が存在しなくても、頑強なCDVワクチン候補を同定する方法を提供する。RPCUを用いて、他のタイプのRNAウイルスの単離体の中からもまた、ワクチン候補を分析し、そして選択することも可能であり、そしてRPCUは、新規出現ウイルスがよく研究されていないが、発生しつつある大流行を止めるために、緊急ワクチン接種が求められている場合に、有用であろう。
さらに、本明細書記載の新規変異体AM−2単離体は、より高い単離体特異的コドン使用頻度(RPCUによって決定されるようなもの)を有し、そしてこれによって、広く反応性のCDVワクチンにより適していないものになるが、これらの遺伝子的にユニークな単離体は、改善CDVワクチンの有効性をチェックするための優れた曝露ウイルスとなるであろう。RPCUは、動物およびヒトの出現しつつある病原体が発展するのは、新規宿主に適応するための自己最適化が、1つの基本的な理由であることと一致する。
実施例5. 最近のCDV配列、各CDV遺伝系統に関するGenBank由来の参照CDV配列、およびすべての商業的CDVワクチンの系統発生分析
図35は、商業的CDVワクチン株、および南アメリカ配列を含む、すべての既知のCDV遺伝系統に関するGenBank参照配列に比較した、最近の米国CDV試料由来のいくつかのCDV赤血球凝集素部分的配列の系統発生分析を示す。行いうる観察は以下の通りである:
アメリカ−1(AM−1)遺伝系統:参照配列=AF378705、1950年代のOndersteport株;米国症例由来の現在循環しているCDV単離体はいずれも、このCDV系統のものではない。現在の商業的CDVワクチンの大部分(Continuum DAP、Intervet(n=1ロット); Duramune Max 5、Fort Dodge(n=1ロット); Galaxy DA2PPv、Schering Plough(n=3ロット); Merial(組換えカナリアポックスウイルスベクター化CDV−H遺伝子ワクチン(n=1ロット)はすべて、AM−1系統に基づく。
アメリカ−2(AM−2)遺伝系統:参照配列=AF112189; Z47762; AF259552。系統発生分析に基づくと、3つの参照配列は、下線配列で示すCDVツリー上の3つの位置に分散した。1つを除いてすべてのAM−2 CDV単離体が、AF112189参照配列と、およびその周囲と、クラスターを形成した。総数8のAM−2 CDV単離体がこの研究において単離された。アメリカ−2は、現在米国で広まっているCDVの2番目に大きいクラスターである。この系統由来の単位体は、最新のCDVワクチンに含まれるべきであり、そしてしたがってATCC(バージニア州マナサス)に寄託されている。
北極(AR)遺伝系統: 2つの参照配列(AY964112およびAY964108)がこのクラスターを構成した。本発明者らは、このクラスター中のいくつかの米国試料を同定した。両方(07110098; 08040383)の試料は、米国ミズーリ州由来であった。これは、少数のCDV遺伝子クラスターである。このCDV系統は、米国のいくつかの地域に適切であろう。
アジア−1(AS−1)遺伝系統: 3つの参照配列(AB016776; AB212963; AY378091)がこのクラスターを構成した。米国CDV単離体はいずれもこの系統には関連しない。このタイプのCDV系統は、日本、中国、および韓国で報告されてきている。これらのアジアの国々のCDVワクチンはこの系統を含んでもよい。
アジア−2(AS−2)遺伝系統: 2つの参照配列(AB0470767およびAB252718)がこの遺伝子クラスターを構成する。米国CDV単離体はいずれもこの系統に関連しない。このタイプのCDV系統は、日本、中国、および韓国で報告されてきている。これらのアジアの国々のCDVワクチンはこの系統を含むべきである。
ヨーロッパ野生生物(EW)遺伝系統: この系統の参照配列はAY964110であった。米国由来のEW CDV単離体の大部分(n=14)は、CDVの該参照株周囲にクラスター形成した。しかし、2つのEWは別個に分岐した。CDV単離体のこの主要なクラスターは、米国のイヌで使用するための最新CDVワクチンに含まれなければならない。
ヨーロッパ(E)CDV系統:この系統のクラスターは、2つの参照配列しか含有しなかった(AF478550、DQ494318)。Pfizer CDVワクチンは、このクラスター近傍に分岐した。南アメリカ(SA)CDV系統: 4つの参照CDV配列が、この系統中にクラスター形成した。これらの単離体は、ツリーから、新規の枝として分離され、これらが米国単離体および現在のワクチンとは異なるユニークなものであることを示す。
麻疹ウイルス・エドモントンB配列を、系統発生分析のため、米国ワクチンおよび現在の単離体との比較用の外れ値配列として用いた。
潜在的な新規CDV系統が南アフリカで記載されてきている(Woma、上記)。
実施例6.ワクチン開発
CDVワクチン開発の現在の当該技術分野には、改善されたCDVワクチン開発のための単離体を選択するために克服すべき多くの制限があった。CDVワクチンの現在の制限の1つは、ワクチン失敗症例からのCDV単離体の入手可能性である。CDVワクチン失敗の問題は、完全には認識されておらず、そしてこれらの観察を支持する公表されたデータは多くない。さらに、現在の獣医学的診断技術は、神経学的症状を示す死ぬ前の試料の診断試験の利用可能な方法がなく、そしてコストが高いことから、ワクチン失敗の問題に大規模には適用されてきていない。したがって、本発明の前には、CDVワクチン品質の改善に関する現在のCDV単離体に関するデータは非常に制限されており、主に、ほとんど見落とされてきた単発的な報告、および単一のイヌの報告からなった。これは、死亡したイヌの飼い主の大部分が、さらなる医学的検査のために支払うことを望まず、そして単に動物死体を廃棄するため、明らかである。したがって、さらなる科学的情報は得られない。
商業的に入手可能なOnderstreportイヌジステンパーワクチンで利用されるアメリカ−1 CDV単離体に対する過免疫血清を用いて、本明細書記載の34のCDV単離体を比較する。過免疫血清は、免疫適格である成犬に多重ワクチンを投与することによって調製されるため、有用な試薬である。過免疫血清は、最良のシナリオを提供する。しかし、現場の状況では、大部分のイヌが子犬のときに2回のCDVワクチンを受ける。したがって、過免疫血清は有用な試薬であるが、ワクチン調製のためのCDV単離体を設計し、そして選択するには制限がある。本明細書において、本発明者らは、広域性CDVワクチン開発のため、新規バイオインフォマティクス・アプローチ(RPCU、上記)を提唱する。米国で現在循環しているCDVのすべての入手可能な遺伝子型がこの分析に含まれる。Bio−Editを用いた配列整列に基づいた抗原性比較のため、いくつか(例えば、各CDV遺伝子型の少なくとも3〜5の単離体)を選択する(系統発生分析を用いる)。これによって、現在のCDVワクチンに対して最大抗原距離(antigenic distance)を有するCDV単離体を選択し、そして比較することが可能になる。過免疫血清または2回のワクチンのみを投与されたイヌ由来の血清のいずれかを用いたSN試験において、少なくとも4倍低い、いかなる単離体も、in vivoでのさらなる試験のために選択される。
血清陰性および低い血清陽性の子犬両方(各群に少なくとも5頭の子犬)に、単回注射多価CDVワクチンとして、または2〜3の異なる遺伝子変異体各々を3〜4週間ごとに投与する別個の連続した注射のいずれかで、CDV単離体の選択された(例えば3つの)系統各々を注射する。この実験は、34のCDV単離体すべてに対してより高レベルの力価を誘発するであろう、1以上の広い反応性のCDV単離体を同定する。例えば、RPCU分析によって同定された単離体、例えば09041474Bは、Hタンパク質の共有コドンのため、広く反応性である単離体であることが確認されている。これは、ワクチン力価がより高いこと、曝露実験においてより優れた防御を示すこと、ワクチン接種されたイヌにおいて疾患の臨床的徴候がないこと(あるいは臨床症状が軽度であること)、および免疫期間がより長いことに転換される。さらに、RFCUを用いて選択されるCDV単離体は、他の大陸に存在する他の遺伝的および抗原性変異体に対して、広い防御を提供するであろう。
修飾生菌ウイルスワクチンで使用するためのCDV単離体を選択するために、さらなる基準も用い、これには以下が含まれた:
A)CDV単離体は、Veroおよびイヌ腎臓細胞株などの、認可された非組換え細胞株上で高力価(10以上)に増殖しなければならない。CDV単離体は、組換えVero+SLAM(シグナル伝達リンパ球活性化分子)細胞株において、より高い力価(2〜3logより高い力価)に増殖すると予期される。組換えVero SLAMは、モルビリウイルスの初代単離に適しているが、選択抗生物質、ゲンタマイシンを添加する必要があるため、この中でCDV単離体を増殖させるのは高価である。動物ワクチン産生に関して、USDAによって認可された1以上の非組換えVero細胞株で増殖するCDV単離体を、さらなる増殖のために選択する。
B)CDV単離体の増殖速度が、評価のための別の基準である。大部分のCDV単離体は、3日間で高力価に増殖可能である。しかし、慣用的なVero細胞株またはイヌ腎臓細胞において、増殖はわずかにより遅い。
C)主なEW枝由来のいくつかのCDV単離体(n=5)を、ワクチン抗原としてのさらなる評価のために選択する。二番目に大きいクラスター(AM−2)由来のいくつかの単離体(n=5)もまた、ワクチン抗原として選択される。いくつかの北極DV単離体もまた評価する。
実施例7.広域性CDVワクチンの調製
広く反応性でそして優勢なCDV単離体(例えばRPCUによって同定される候補)を選択し、そしてCDV−血清中和(CDV−SN)および/またはプラーク減少試験によって確認する。いくつかの態様において、これは、完全ワクチン接種された(具体的には2回のCDVワクチン)にもかかわらず死亡した、完全ワクチン接種成犬(約5〜6ヶ月齢)から得た野生型CDV単離体である。
イヌに皮下または鼻内ワクチン接種する。ワクチン接種したイヌ由来の血清を用いて、CDV−SNまたはプラーク減少アッセイによって、ワクチン株に対する抗体力価をチェックする。選択されたCDV株は、米国で広まっているCDV系統すべてに属する米国由来の最近のCDV単離体のパネルと、高い交差反応性を示す。ワクチン接種されたイヌまたはフェレット(CDVに関する実験モデル動物)由来の血清との交差反応性に関して、すべての単離体をチェックする。6〜8週齢の未処置の子犬に1回ワクチン接種した後、≧1:8、好ましくは≧1:16、より好ましくは≧1:32、そして最も好ましくは≧1:64の力価が、CDV−SNアッセイを用いるには十分である。さらに、ワクチンは、CDVに対して、いかなる脳脊髄液(CSF)力価も誘導しないであろう。CSFにおいてCDV力価が存在しないことから、ワクチンウイルスが、血液脳関門を横断せず、そして子犬で使用するのに安全であることが示される。子犬において安全であるワクチンは、成犬において安全である可能性が非常に高い。要約すると、連邦規制基準(CFR)のすべてのガイドラインにしたがって、イヌおよびCDVに感受性である他の種で使用するため、USDAに認可されるであろう、有効で、広域性であり、そして安全なCDVワクチンを開発する。
イヌを広域性CDVワクチンでワクチン接種し、そして次いで、循環している野生型CDV(例えば、08080696 EW; 08081112 AM−2; 09011024 EW)に曝露する、曝露研究を行った。これらのCDVウイルスは、遺伝子的に別個であり、そしてしたがってワクチン構成要素としてよりも曝露ウイルスとして適切である。本発明のワクチン調製物でワクチン接種されたイヌは、疾患症状をほとんどまたはまったく生じない。本明細書に記載するような米国由来の低継代CDV単離体を曝露ウイルスとして用いてもよい。非ワクチン接種対照は、CDVの症状を生じるであろう。
曝露研究結果の評価に関して、診断研究室は、典型的には、神経系に関与するものなどの弱いCDV陽性症例はしばしば検出不能であるような比較的感受性の低い試験を用いる。動物が死亡したかまたは屠殺されたかまたは安楽死させられた後、脳試料の免疫組織化学を用いて、CDVを検出することも可能である。しかし、CSFおよび脳生検は高価で、そして侵襲性の処置であり、そしてルーチンには用いられない。最近の研究において、生存しているイヌにおいて、CDVの検出のため、尿が感受性試料として記載されてきている(Amude, A.M., A.A. Alfieri, およびA.F. Alfieri. 2006. Antemortem diagnosis of CDV infection by RT−PCR in distemper dogs with neurological deficits without the typical clinical presentation. Vet. Res. Comm. 30:679−687)。したがって、ウイルス尿症(尿におけるCDVウイルスまたはRNAの存在)は、ワクチン防御評価研究に含めるべき重要なパラメータである可能性もあり、そしてこれを非侵襲性に用いて、CDVワクチン接種したイヌにおいて、残渣ウイルスを検出してもよい。さらに、徹底的な診断研究後、CDVが過去のCDVワクチン認可プロセスにおいては評価されなかった残渣CDV感染を引き起こしうることが見出されてきている。非常に感受性の高いPCRアッセイを用い、そして改善された広域性CDVワクチンに対して、安全性データが提供される。ウイルス尿症は、CDVワクチン有効性のパラメータの1つとして用いられる。
理想的な候補CDVワクチンは、すべての遺伝子的に多様なCDV単離体に対して防御すべきである。広域性CDVワクチンの広範囲の包含をチェックするため、他の大陸由来のCDV単離体が含まれなければならない。アメリカ−1は、最近20年間、米国で天然に見出されておらず、60年に渡って最新のものにされていないワクチン中にしか存在しないため、チェックされない。
実施例8. フェレットモデルにおけるCDVワクチンの評価
イヌなどの大型動物モデルにおいてワクチンを試験する前に、フェレットモデルにおいて評価してもよい。フェレットは、CDV感染およびCDVワクチンの評価に適したモデルであることが知られる(Pilletら, 2009: Ferrets as a model for morbillivirus pathogenesis, complications, and vaccines. Curr. Top. Microbiol. Immunol. 330:73−87)。フェレットを用いて、多数のCDVワクチン候補をスクリーニングする。フェレットを弱毒化修飾生菌CDV、好ましくはヨーロッパ野生生物タイプ(例えば09041474B)でワクチン接種する。ヨーロッパ野生生物は、これらのCDVウイルスの密接に関連するクラスターが米国のイヌにおいてワクチンの失敗を引き起こしているため、好ましい。ワクチン接種後、CDVに対する血清抗体力価に関して、フェレットをチェックする。採血日は、ワクチン接種の0日、7日、14日および21日後である。次いで、曝露ウイルスとして、低継代CDVウイルス(例えばヨーロッパ野生生物、または北極、またはアメリカ−2)をフェレットに投与する。
フェレットはまた、最近の症例報告に基づいて、CDVワクチン失敗を示すことが立証されてきている(Zehnderら, 2008: An unusual presentation of canine distemper virus infection in a domestic ferret(Mustela putorius furo) DOI: 10.1111/j)。米国出身のこの飼育されていたフェレットは、臨床的CDV問題開始の18ヶ月前、ニワトリ胚修飾生菌ウイルスワクチンを用いて、反復ワクチン接種され、そしてその後、毎年接種されていた。このワクチン接種されたフェレットは、皮膚病変を示す全身CDV感染を生じ、長期の疾患経過を伴ったが、呼吸器および神経学的徴候は完全に存在しなかった。したがって、CDVは、ワクチン接種されたフェレットでは皮膚病変を伴うと推測すべきである(Zehnder、上記)。
実施例9. CDV系統間の陽性選択を経る非常に重要なHタンパク質残基: 診断法への適用
診断依頼者の特定の必要に応じて、非常に重要なH残基(実施例3を参照されたい)周辺の示差RT−PCR実験およびキット(プライマーを含む)を設計して、CDV野生型を示差的に検出し; Pfizerワクチン由来のOndersteport様ワクチンを区別し;そして1時間の回転時間を伴う迅速アッセイを用いて、CDVウイルスを主要CDV系統レベルに分ける。完全H遺伝子配列決定によるCDVウイルスの進行中の監視は、将来生じる新規CDV変異体を同定することによって、これらの迅速CDV識別アッセイをさらに精錬する。
実施例10. 細胞培養における3つの選択したCDV単離体の比較増殖特性:
OADDLの現在のCDV単離体のパネルから、2つのCDV単離体(09041474Bおよび08021509)が、アメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC)に寄託するために選択された。単離体09041474Bは、現在のCDV単離体に対する広域性CDVワクチンを開発するために選択されている。
3つのCDV単離体: 09041474B(ヨーロッパ野生生物); 08021509(アメリカ−2);および07110098(北極)を細胞培養において増殖させ、そして細胞病理に基づいて、その増殖速度に関して観察し、そして大部分の単層(80%を超える)が細胞病変を示したときに、フラスコを凍結した。結果は、これらの選択された単離体の増殖速度が以下の通りであることを示した:EW>>>AM−2>AR。言い換えると、EW 09041474B単離体は、AM−2およびARより有意に迅速に増殖した。09041474の個々のプラークは非常に大きかった。23時間後、細胞の全フラスコは、互いに触れあう(融合した)非常に大きい合胞体に覆われ、合胞体間には空間はほどんどなかった。
単離体08021509(AM−2)は、中程度のサイズのプラークを示し、そして最初は、孤立したプラーク(融合していないプラーク)として増殖した。AM−2単離体増殖速度は、09041474Bのものの少なくとも半分以下であった。この単離体を、接種約96時間後に採取した。
北極単離体07110098は、非常に緩慢に増殖し、そしてプラークサイズは小さかった。少数の孤立した小さなプラークが検出された。この単離体はATCCに寄託されなかった。この単離体は感染7日後に採取された。1週間の時点であっても、単層は約25%の細胞病理しか示さなかった。これらの増殖特性に基づいて、この単離体は、ワクチン調製に適していない。
09041474Bによって示される活性複製のタイプは、高い「相対的優先コドン使用頻度(RPCU)」を示すCDV単離体から予期される、最適(頑強な)増殖の指標である。この単離体は、接種後、より高い力価で複製し、そして主なCDV免疫原である赤血球凝集素タンパク質を比較的より多量で発現するであろうため、ワクチン調製物のために選択されている。09041474BのATCC寄託番号はPTA−10596であり、2010年1月21日に寄託された。08021509のATCC寄託番号はPTA−10597であり、2010年1月21日に寄託された。
実施例11. ATCC、メリーランド州に寄託された2つの例示的/選択されたCDV単離体の全長赤血球凝集素配列
2つの選択されたCDV単離体の全長配列を得るため、新規プライマーを設計した: 5’−TCGAAATCCTATGTGAGATCACT−3’(順方向プライマー、CDVffl、配列番号40)および5’−ATGCTGGAGATGGTTTAATTCAATCG−3’(逆方向プライマー、CDVHS−2、配列番号41)。2010年1月21日にATCCに寄託されたCDV単離体の同じバッチからRNAを抽出した。QlAGENウイルスRNA抽出キットを、製造者の支持にしたがって用いた。全長Hタンパク質に関するプライマーは公表されている(Lan NT, Yamaguchi R, Inomata A, Furuya Y, Uchida K, Sugano S, およびS Tateyama. 2006. Comparative analyses of canine distemper viral isolates from clinical cases of canine distemper in vaccinated dogs. Vet. Microbiol. 115:32−42)が、RT−PCRプロトコルは記載されていなかった。したがって、プライマーの特性に基づいて、新規プロトコルを発展させた。
1工程RT−PCRプロトコルは以下の通りであった:45℃1時間の逆転写、95℃3分間の変性、その後、94℃30秒間、50℃30秒間のアニーリング、72℃2分間の伸長の30周期、72℃7分間で最終伸長し、そして4℃で反応を保持した。
各PCR反応に関して、反応セットアップは以下の通りであった: 12.5ulの2X反応緩衝液(Invitrogen、カタログ番号10928−034)、15uMの各1.7ulの両プライマー、MgSO(50mM)、dNTP(10mM)0.5ul、およびRT/白金−Taq(0.5ul)。1.5%アガロースゲル上の電気泳動によって、PCRアンプリコンを精製した。約2100bpの正しい全長アンプリコンが観察された。Promega Wizardカラム上でアンプリコンを精製した。Noble Research Center、オクラホマ州スティルウォーターで配列決定を行った。両方のCDV単離体の順方向および逆方向配列を配列分析に供した(図37および38)。CDV単離体09041474Bは、ヨーロッパ野生生物CDV単離体と最高のマッチを有した。CDV単離体08021509は、アメリカ−2 CDV単離体と最高のマッチを有した。
本発明は好ましい態様に関して記載されてきているが、当業者は、付随する請求項の精神および範囲内で修飾を加えて、本発明を実施可能であることを認識するであろう。したがって、本発明は、上述のような態様に限定されるべきではなく、本明細書に提供する説明の精神および範囲内のすべての修飾および同等物をさらに含むべきである。

Claims (26)

  1. CDV 9041474B CDV−EW(ATCC寄託番号PTA−10596)の特性を含む、ヨーロッパ野生生物(EW)系統の単離イヌジステンパーウイルス(CDV)。
  2. 請求項1のCDV株またはその子孫株が増殖している、細胞培養中で単離されたCDVの弱毒化株。
  3. 請求項1の単離CDVまたはその子孫
    を含む、免疫原性組成物。
  4. イヌジステンパーウイルスに対する免疫反応を誘発する必要がある被験体において、イヌジステンパーウイルスに対する免疫反応を誘発する方法であって
    請求項3の免疫原性組成物を前記被験体に投与する
    工程を含む、前記方法。
  5. 配列番号42に示すヌクレオチド配列を増幅するための特異的オリゴヌクレオチドプライマーを含む、診断キット。
  6. 配列番号44のアミノ酸配列をコードする単離核酸分子、またはその相補体。
  7. 配列番号42のヌクレオチド配列を含む、請求項6の単離核酸分子、またはその相補体。
  8. 請求項6の単離核酸分子を含む、発現ベクター。
  9. 請求項8の発現ベクターを含む、免疫原性組成物。
  10. 配列番号44のアミノ酸配列を含む、単離ポリペプチド。
  11. 配列番号44のアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードするヨーロッパ野生生物(EW)系統の単離イヌジステンパーウイルス(CDV)。
  12. CDV 08021509 CDV−AM−2(ATCC寄託番号PTA−10597)の特性を有する、アメリカ−2(AM−2)系統の単離イヌジステンパーウイルス(CDV)。
  13. 請求項12のCDV株またはその子孫株が増殖している、細胞培養中で単離されたCDVの弱毒化株。
  14. 請求項12の単離CDVまたはその子孫
    を含む、免疫原性組成物。
  15. イヌジステンパーウイルスに対する免疫反応を誘発する必要がある被験体において、イヌジステンパーウイルスに対する免疫反応を誘発する方法であって
    請求項14の免疫原性組成物を前記被験体に投与する
    工程を含む、前記方法。
  16. 配列番号43に示すようなヌクレオチド配列を増幅するための特異的オリゴヌクレオチドプライマーを含む、診断キット。
  17. 配列番号45のアミノ酸配列をコードする単離核酸分子、またはその相補体。
  18. 配列番号43のヌクレオチド配列を含む、請求項17の単離核酸分子、またはその相補体。
  19. 請求項17の単離核酸分子を含む、発現ベクター。
  20. 請求項19の発現ベクターを含む、免疫原性組成物。
  21. 配列番号45のアミノ酸配列を含む、単離ポリペプチド。
  22. 配列番号45のアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードするヨーロッパ野生生物(EW)系統の単離イヌジステンパーウイルス(CDV)。
  23. 免疫原性組成物であって、
    赤血球凝集素タンパク質をコードするCDVビリオンを含み、前記CDVビリオンが核酸を含み、前記核酸が配列番号1〜33に示す1以上のヌクレオチド配列を含む、前記組成物。
  24. イヌジステンパーウイルスに対する免疫反応を誘発する必要がある被験体において、イヌジステンパーウイルスに対する免疫反応を誘発する方法であって
    赤血球凝集素タンパク質をコードするCDVビリオンを含む組成物を前記被験体に投与する工程を含み、前記CDVビリオンが核酸を含み、前記核酸が配列番号1〜33に示す1以上のヌクレオチド配列を含む、
    前記方法。
  25. 免疫原性組成物において使用するための病原体単離体を選択する方法であって、前記単離体が、関心対象の選択された免疫原性タンパク質、ポリペプチドまたはペプチドをコードするのに最も頻繁に用いられるコドンの1以上を利用し、前記方法が
    複数の病原体単離体における各単離体に関して、関心対象の前記の選択された免疫原性タンパク質、ポリペプチドまたはペプチドをコードするヌクレオチド配列を決定し;
    前記決定工程で得られたヌクレオチド配列に関して、関心対象の前記免疫原性タンパク質、ポリペプチドまたはペプチドにおける、関心対象の1以上のアミノ酸残基に関してコドン使用頻度データを得て、それによってコドン使用頻度に関するデータを得て;
    コドン使用頻度に関する前記データから、関心対象の前記免疫原性タンパク質、ポリペプチドまたはペプチドにおける、関心対象の前記アミノ酸残基の各々に関して、最も頻繁に用いられるコドンを同定し;そして
    前記複数の病原体単離体の中から、関心対象の前記タンパク質、ポリペプチドまたはペプチドをコードするのに前記の最も頻繁に用いられるコドンの1以上を利用する1つの単離体を選択する
    工程を含む、前記方法。
  26. 前記病原体がイヌジステンパーウイルスである、請求項25の方法。
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