JP2012518258A - 少なくとも1つの燃料電池を備えた燃料電池システム - Google Patents

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Abstract

燃料電池システム(1)は、カソード領域(3)とアノード領域(4)とを有する少なくとも1つの燃料電池を含んでいる。その他に、この燃料電池システム(1)は、少なくとも1つの装置(12、13、22)を有しており、この装置内を、一方でカソード領域(3)へ流れる供給エアフローが通過し、他方ではカソード領域(3)からくる排出ガスフローが通過する。さらに、このシステムは、燃料含有ガスを熱変換するための触媒作用のある材料を有している。本発明に基づき、触媒作用のある材料を備える第1のユニット(18)が、供給エアフローの流れる方向に向かって、少なくとも1つの装置(12、13、22)の手前に配置されている。この第1のユニット(18)には、この場合、アノード領域(4)からの排出ガスが燃料含有ガスとして供給可能である。触媒作用のある材料を備える第2のユニット(19)は、供給エアフローの流れる方向に向かって、少なくとも1つの装置(12、13、22)の後に配置されている。

Description

本発明は、請求項1の前提部分に詳しく定義されている種類の、少なくとも1つの燃料電池を備える燃料電池システムに関する。
特許文献1は、アノード回路を備える燃料電池システムを示している。特許文献1は、この場合、アノードガスの再循環回路において、アノード回路の部分から時々排出しなければならない水素含有ガスの取扱いについて報告している。このために、燃料電池のカソード領域への供給エア部分に水素含有ガスを運び込むことが提案され、それによって、この水素含有ガスは、特に、いずれにせよカソード領域にある触媒の部分で、供給エアの酸素と反応する。
燃料電池のアノード領域から水素含有ガスを供給することは、反応時に上昇する温度に関して、燃料電池のカソード領域への供給エアの調整に不利に作用する。さらに、セル自体に取り付けられている触媒部分において反応が起きるため、燃料電池の急速な劣化が生じる。従って、この構造には、上述の欠点を増大させないために、その使用において、特に、水素含有ガスの変換可能な量に関しても、極めて限定されるという難点がある。そのため、適用には決定的な欠点が伴うため、これらの欠点を最小化するために水素含有ガスが量的に制限されることから、アノード再循環回路を備える構造での使用に限定されている。
さらに、特許文献2から、アノード再循環回路を備える燃料電池システムが公知である。このシステムの場合、アノード回路から排出される排出ガスが、時々、カソード領域からの排出ガス、一般的には排出エアと混合され、触媒作用のあるバーナーで燃焼される。除湿された排出エアとアノード領域の排出ガスとの触媒作用のある燃焼では、燃料電池システムの冷却回路を加熱するために利用できる相応の熱量が生じる。
この作動方法は、この種の燃料電池システムのコールドスタートには相応の利点となるのは確かだが、ノーマルモードにとっては、この廃熱を冷却水に供給することは非常に危険である。というのも、例えば、車両で使用する場合に利用可能な放熱面積では、燃料電池を十分に冷却することができないか、もしくは不十分にしか冷却できないからである。その他に、特許文献2の構造では、触媒作用のあるバーナー部分において発生する廃熱は、コールドスタート以外では積極的に利用されない。
もう1つの従来技術については、特許文献3が参照される。特許文献3の燃料電池システムは、「冷却」と「加湿」の両方の機能を組み合わせた交換装置を含んでいる。特許文献3で機能ユニットと呼ばれているこの交換装置は、燃料電池の排出エアから燃料電池の供給エアへの物質の流れを可能にし、同様に、一方では、圧縮装置によって加熱された供給エアから比較的冷たい排出エアへの熱交換が行われる。特許文献3では、その他に、燃料電池システムのエア供給が、一方ではタービンによって、及び/又は他方では電気モータによって駆動可能なコンプレッサによって実現される構造を示している。燃料電池システムで一般的に知られているこの構造は、エレクトリックターボチャージャとも呼ばれており、タービンによって、少なくともコンプレッサの駆動と、余剰出力がある場合はジェネレータである電気機械の駆動とを補助することができる。
独国特許出願公開第 10115336A1明細書 米国特許出願公開第2005/0019633A1明細書 独国特許出願公開第 102007003144A1明細書
従って、本発明の課題は、燃料電池システム内で有効に使用することができ、上述の欠点を回避する追加の熱の発生と同様に、水素含有ガスの変換が可能となるように、燃料電池システムを改善することである。
本発明に基づき、この課題は、請求項1の表示された部分の特徴によって解決される。
本発明に基づく燃料電池システムでは、触媒作用のある材料が、本発明に従って、2つの異なるユニットに分割されている。触媒作用のある材料を備えるユニットは、この場合、独立した触媒コンポーネントとして形成することができるが、その他のコンポーネント及び配管などに、この触媒作用のある材料を組み込むことも考えられる。この場合、触媒ユニットは、本発明に基づき、第1のユニットが、供給エアフローの流れる方向に向かって、燃料電池の上流に接続されている少なくとも1つの第1の装置の手前に配置されるように分割されている。この第1の触媒ユニットには、アノード領域からの排出ガスが供給され、この排出ガスは、ユニットの中で供給エアフローからの酸素と反応することができる。このとき発生する熱は、場合により燃料電池自体に害を与えるおそれがあるが、第1の触媒ユニットがもう1つの装置の前に配置されていることにより、この装置の中でこの熱を利用するか、もしくは逃がすことができるように、熱は供給エアフローの中に運び込まれる。さらに、燃料電池システムには、第2の触媒ユニットが設けられており、このユニットは、カソード領域からの排出エアフローの中にある。この触媒ユニットは、特に、追加の燃料によって排出エアフローの適切な温度上昇を達成し、例えば、熱エネルギーとしてこの熱を利用するか、又は適切な装置によってこの熱を他のエネルギー形態に変換するために利用することができる。
燃料電池システムの特に有利な実施形態によれば、少なくとも1つの装置が熱交換器として形成されており、その中では、熱が供給エアから排出エアに移行する。少なくとも1つの熱交換器である装置のこの実施形態(この場合はインタクーラとして)により、供給エアにある熱を、第1の触媒ユニットによって入力される熱と一緒に排出エアに伝達することが可能になる。これにより、燃料電池への供給エアが適切に冷やされるため、燃料電池と、ここでは特に燃料電池の部分に配置されている膜とに損傷が生じることはない。
本発明の極めて有利な実施形態では、少なくとも1つの装置が熱交換器として形成されており、その中では、熱が供給エアから排出エアに移行し、水蒸気が排出エアから供給エアに移行するように準備されている。このような交換装置は、冷却及び加湿の機能ユニットとしても冒頭に述べた従来技術から知られており、これによって、燃料電池システムの数に関して、燃料電池システムがさらに単純化される。この交換装置には、インタクーラと同等の機能が組み込まれているため、この種の交換装置を使用する場合、すでに上述したような利点が生じる。
燃料電池システムの極めて適切かつ有利なもう1つの実施形態により、少なくとも1つの装置の上流に配置されているコンプレッサによって、供給エアが供給されるように準備されており、このコンプレッサは、少なくとも1つの最後の装置の下流で排出エアが通過しているタービンによって、少なくとも補助的に駆動可能である。このタービンは、排出エア中にあるエネルギーを利用することができる。通常、今日の燃料電池システムは、周辺に対して僅かな正圧だけで駆動される。タービンによって利用され得る排出エアの一次エネルギー含量は、従って、排出エアフローの廃熱の中にある。第2の触媒ユニットによって、排出エアフローの廃熱を適切に上昇させることができるため、タービンによってこの廃熱がやはり適切に利用可能となる。従って、このタービンにより、システムに生じるエネルギーを最適に利用することが可能となり、例えば、コンプレッサで急激な出力要求があった場合、第2の触媒ユニットの部分における追加燃料の触媒変換とタービンとによって、この出力を供給することができる。
本発明のこれらのバリエーションの極めて適切なもう1つの実施形態では、さらに、コンプレッサが電気機械によって駆動可能であるように準備されており、タービンに余剰出力がある場合、タービンは、この電気機械を、電力を生成するジェネレータとして駆動する。必要に応じて、第2の触媒ユニットにより供給される熱エネルギーは、コンプレッサを駆動するためにタービンによって利用されるばかりでなく、ジェネレータとしての電気機械17も適切に駆動する。従って、発生した熱エネルギーは電気エネルギーに変換され、このエネルギーにより電力要求を満たすことができる。例えば、要求電力が急激に上昇した場合、タービンと電気機械とによって、熱い排出エアから作られる電力が、この種の電力要求に対して比較的鈍い燃料電池の反応を埋め合わせることができる。
従って、本発明に基づく燃料電池システムの、説明されている全ての変更例は、単純で、コンパクトであり、従って低価格の構造を可能にし、寿命及び達成可能な効率にとって最適な形態となっている。従って、本発明に基づく燃料電池システムは、移動手段における使用、ここでは、移動手段の駆動及び/又は電気的な補助負荷のための電力の生成に特によく適している。この場合、本発明の意味における移動手段とは、陸上、水上、空における各種類の移動手段を意味しており、特に、レールを使わない車両に対するこの種の燃料電池システムの利用が特に注目されるが、本発明に基づく燃料電池の使用は、このことに制限されることはないであろう。
本発明に基づく燃料電池システムのその他の有利な実施形態は、残りの従属請求項に示されており、以下に図を用いて詳しく説明される実施例によって明らかになる。
本発明に基づく燃料電池システムの可能な実施形態である。 本発明に基づく燃料電池システムのもう1つの可能な実施形態である。 本発明に基づく燃料電池システムの代替の実施形態である。 本発明に基づく燃料電池システムのもう1つの代替の実施形態である。
以下の図における表示は、それ自体が非常に複雑な燃料電池システムから、本発明の理解に不可欠な構成部品のみを抜き出し、かなり簡略化して図に示したものである。この場合、以下に示された図では考慮されていないが、例えば、冷却回路などのその他のコンポーネントをこの燃料電池システムに設けることも当然あり得るだろう。
図1には、燃料電池2を備える燃料電池システム1が示されている。燃料電池2は、通常の方法で構成された燃料電池2として、個別セルのスタックからなるべきである。燃料電池2には、カソード領域3とアノード領域4とが形成されており、これらの領域は、PE燃料電池2のこの実施例において、ポリマー電解質(PE)からなる膜5によって互いに分離されている。図1に示されている実施例では、カソード領域3に、コンプレッサ6から供給エアフローが供給される。この場合、コンプレッサ6は、燃料電池システムで通常用いられるような、例えばスクリュコンプレッサ又はフローコンプレッサとして実施することができる。しかしながら、基本的に、供給されるエアフローを圧縮するための他の方法、例えば、往復機器などによる方法も考えられる。カソード領域3に送られる供給エアフローは、燃料電池2の中でアノード領域4に送られる水素と反応して水になり、電力が発生する。燃料電池2のこの周知の原理は、本発明にとっては下位の役割でしかないため、詳しい説明は省略する。
ここに示されている実施例では、水素貯蔵装置7、例えば圧縮ガスタンク及び/又は水素化物タンクから水素がアノード領域4に送られる。原則的に、例えば、燃料電池システム2の範囲において、炭素含有の基本材料から生成される水素含有ガスを燃料電池2に供給することも考えられる。図1の実施例において、水素貯蔵装置7の水素は、ここでは略式的にのみ示されている計量投与装置8を介してアノード領域4に送られる。通常、常に比較的大量の水素を含んでいる、アノード領域4から流出する排出ガスは、再循環ライン9及び再循環フィード装置10を介してアノード領域4に戻される。この再循環部分には、この場合、水素貯蔵装置7からくる新鮮な水素が送られるため、アノード領域4では、常に十分な量の水素を使用することができる。再循環ライン9と再循環フィード装置10とを備える燃料電池2のアノード領域4の構造は、この場合、公知であり、一般的である。再循環フィード装置10として、例えば、ガス噴射ポンプを使用することができ、これは、水素貯蔵装置7からくる新鮮な水素によって駆動される。代替の方法では、再循環フィード装置10として再循環ブロワも考えられる。もちろん、これらの異なるフィード装置を組み合わせることも可能であり、これらの組合せも、同様に、本明細書に基づく再循環フィード装置10の定義に該当している。その他に、アノード排出ガスの再循環の使用では、再循環ライン9の部分に、例えば窒素などの不活性ガスが徐々に集まり、この不活性ガスが、PE膜5を通ってカソード領域3からアノード領域4に達することが知られている。アノード領域4において、さらに十分な濃度の水素を使用可能にするためには、アノード領域4の排出ガスを、再循環ライン9において時々排出することが必要である。このために、図1による実施例においては、ドレンバルブ11が設けられており、アノード領域4の排出ガスは、このドレンバルブを介して、時々排出することができる。このプロセスは、しばしば「パージ」とも呼ばれる。排出ガス又はパージガスは、この場合、不活性ガスの他に、該当する量の残留水素も含んでいる。
コンプレッサ6からカソード領域3に流れる供給エアは、図1による燃料電池システム1の構造において、まず、供給エアの状態調整を行う第1の装置としての熱交換器12を通過するが、これによりコンプレッサ6からカソード領域に流れる熱を持った供給エアが冷却される。このために、燃料電池2のカソード領域3からの冷たい排出エアが、熱交換器12の排出エア側を通過する。この熱交換器12は、通常、インタクーラとも呼ばれる。供給エアが熱交換器12を通過すると、供給エアは加湿器13に達し、この中で、乾燥及び冷却された供給エアがカソード領域3の湿った排出エアによって加湿されるが、この湿った排出エアは、燃料電池2の中で生じる水蒸気としての生産水の大部分を伴っている。このために、通常の実施形態での加湿器13には、水蒸気を通す膜が装備されており、一方の側では乾燥した供給エアがこの膜を通り抜け、他方の側では湿った排出エアがこの膜を通り抜ける。その他に、図1には、バルブ装置15を備えるバイパスライン14が示されており、このラインを介して、供給エアは加湿器13を迂回してカソード領域3へ流れることができる。従来技術から知られている、バルブ装置15を備えるこのバイパスライン14の意味は、バルブ装置15が、比例弁としてバイパスライン14の断面積を制御するか、又は時間制御バルブとしてバイパスライン14を通る流れを制御するか、どちらかである。バイパスライン14が完全に閉められている場合、全ての供給エアは、加湿器13を流れ、それによって最大の湿気を吸収する。このことが、燃料電池2の制御戦略の理由から好ましくない場合、例えば、コールドスタート又は燃料電池2への電力要求は低下しているが、依然として排出エアフローの湿度が高い場合などは、供給エアの一部を、加湿器13を迂回してバイパスライン14から送ることができる。燃料電池2のカソード領域3に供給エアが流れ込む前に、バイパスライン14から供給される供給エアは、加湿器13を通って供給される供給エアと再び混ぜられる。カソード領域3に流れ込む供給エア内の湿気は、このように適切に調整することが可能である。従来技術から知られているように、代替の方法として、このバイパスライン14を、排出エア側の加湿器13の周りにも配置することができるだろう。
図1の燃料電池システム1には、その他に、タービン16及び電気機械17が示されている。この電気機械17は、モータとしてコンプレッサ6を駆動することができる。この電気機械17は、例えば、コンプレッサと一緒にシャフト上に配置するか、該当するギヤなどを介して間接的にコンプレッサ6と連結することもできるだろう。これと同様に、電気機械17とコンプレッサ6とは、タービン16と直接又は間接的に連結されている。タービン16では、排出エアが膨張する。その際、排出エアは、熱エネルギーと圧力エネルギーとをタービン16で排出する。タービン16から供給される出力は、少なくとも補助的にコンプレッサ6を駆動するために利用することができる。タービン16に相応の余剰出力がある場合、さらに電気機械17を、ジェネレータとして駆動することが可能である。そうすると、相応の電力が電気機械17によって供給可能となり、この電力は、燃料電池システム1内のその他の用途、又は燃料電池システム1によって供給される電気システム、例えば車両の駆動システムなどにも利用可能である。
これまでに説明した燃料電池システムの構造は、従来技術から知られている燃料電池システムに該当し、この燃料電池システムは、同様の構造をもつ従来技術による燃料電池システム1と同等の機能で作動する。
従来技術に対して、本燃料電池システム1が決定的に異なるのは、燃料電池システム1に2つのユニット18、19が設けられていることであり、これらのユニットは、それぞれ、燃料含有ガスを熱変換するための触媒作用のある材料を有している。ユニット18、19は、従って、以下の文章では触媒ユニット18、19とも呼ばれる。第1の触媒ユニット18は、燃料電池2のカソード領域3への供給エアフローの中に配置されている。第1の触媒ユニット18、又は流れる方向に向かって触媒ユニット18の手前にある供給エアには、アノード領域4からくる排出ガスが供給され、ここに示されている実施例では、この排出ガスは、バルブユニット11を介してアノード回路から時折排出される。第1の触媒ユニット18の部分では、この排出ガス中に含まれている水素が、コンプレッサ6から供給される供給エアの酸素と反応する。このとき、熱と、水蒸気の形で水とが発生する。供給エアフローの追加的加熱は、触媒ユニット18が配置されている場所では、比較的問題がない。なぜなら、流れる方向に向かって第1の触媒ユニット18後において、供給エアは、熱交換器12によって、いずれにせよ排出エアにより冷却されるからである。第1の触媒ユニット18の部分における触媒変換の際に生じる水蒸気は、この場所では有利である。なぜなら、水蒸気が、コンプレッサからの熱く、乾燥した供給エアを加湿するからである。アノード回路を用いる作動では残留水素が非常に少ないため、この加湿は、確実に十分なものではないが、加湿器13で行われる加湿が有利にこれを補助することができる。
第2の触媒ユニット19は、燃料電池2のカソード領域3からの排出エアフローの中、特に排出エアの流れる方向に向かって熱交換器12後に配置されている。この第2の触媒ユニット19又は第2の触媒ユニット19前の部分にある排出エアには、ライン要素20とバルブ装置21によって、同様に燃料としての水素が供給可能である。基本的に、水素の代わりに、例えば炭化水素含有燃料など別の燃料についても、燃料電池システム用の水素含有ガスが、そのような基本材料からガス生成装置によって生成される場合は、本燃料電池システムにおいて使用可能であろう。
追加的に供給される燃料又は水素によって、いずれにせよ熱交換器12の通過後に比較的高い温度を有している排出ガスは、触媒ユニット19によってさらに加熱されることができる。このことは、例えば、液状の生産水が燃料電池システム1から排出されるのを防ぎ、排出エア内にある全ての水分を気化するために利用することができるが、特に、触媒ユニット19による排出エアの追加的な加熱は、タービン16に追加出力を供給するために利用することができる。今日の燃料電池システムの圧力レベルは、周辺圧力を僅かに上回っているだけなので、廃熱の利用は、タービン16によって出力を生み出す場合に、重要な役割を果たす。触媒ユニット19によって追加の熱が排出エアフローに送られる場合、この熱は、タービン16の出力に大きく貢献することができる。特に、特定の作動状況において、例えば、高い電力要求が急激に燃料電池2に求められ、それに応じて、燃料電池が大量の供給エアを必要とする一方で、タービン16を駆動する排出エアの流量はまだ比較的少ない場合、タービン16によってコンプレッサ6の駆動を増強することができる。次に、触媒ユニット19によって熱エネルギーが追加的に入力されることにより、増加した出力要求を、タービンによって供給することが可能となる。また、このような状況において、ジェネレータとして作動する電気機械17が追加的な電力を供給できるように、タービン16から出力を提供することも考えられる。このようなブーストモードは、例えば、燃料電池2の鈍い電気反応を補助するため、もしくは埋め合わせるために利用することができる。燃料電池システム1を移動手段に適用する場合、この追加供給される出力は、電気的駆動による素早い加速を補助するために用いることができるだろう。
以下の図における燃料電池システムの構造は、実質的に、図1の燃料電池システム1の構造と同等又は同一であると理解することができる。従って、以下の図の説明では、同一の構成部品には同一の符号が付けられており、図の説明においては、前述の図に関して異なる点及び本発明に基づく発展形態のみに言及する。
図2の燃料電池システム1の構造は、図1の燃料電池システム1とは反対に、加湿器13がなく、従って、この加湿器周辺のバイパスライン14もない。その他に、図2の燃料電池システム1の燃料電池2のアノード領域4は、アノード回路を用いて作動しているのではなく、水素貯蔵装置7から水素が継続的に流されている。アノード領域4に流れ込む水素の変換をできる限り良好に保つため、この場合、アノード領域4は、段階づけられた構造にすることができる。従来技術から知られているこの構造は、この場合、アノード領域4が様々な活性部分範囲に分割されているように実施され、水素の流れる方向に連続して並ぶ部分領域は、それぞれ、流れる方向に向かって手前に位置している部分領域よりも小さな活性表面を有している。従って、水素が反応によって消散していくにもかかわらず使用可能になっている部分領域の活性面を、それぞれ、まだ残っている水素の流量に合わせることができるため、不要な活性表面を維持する必要がない。燃料電池2のこのようなアノード領域4の構造では、約3〜5%の非常に少ない余剰水素で燃料電池2を作動することが可能となる。この残留水素は、新鮮な水素と同様に、アノード領域4からの排出ガスとして、継続的にアノード領域4に流される。図2の燃料電池システム1では、この排出ガスが、図1のアノード回路からの排出ガスと同様に供給エア、特に、流れる方向に向かって第1の触媒ユニット18の手前に達する。排出ガス又は排出ガスの大部分を占める残留水素は、次に、この第1の触媒ユニット18の部分で、供給エアフローからの酸素と反応することができる。このとき、すでに上述したように、熱と、水蒸気の形で水とが発生する。この熱は、熱交換器12によって冷却され、水蒸気は、燃料電池2のカソード領域3に達し、そこでPE膜5を加湿する。図2の燃料電池システム1においては、第1の触媒ユニット18の部分に継続的に水素が流れるため、この部分においても継続的に水蒸気が発生する。従って、システムが該当する設計になっていている場合は、供給エアフローの追加的な加湿を省略することができる。
第1の触媒ユニット18は、この場合、図2に示されているように、独立したコンポーネントとして形成することができるが、第2の触媒ユニットは、熱交換器12の部分として、特に供給エアの流れる方向に向かって入口側の部分に形成することも考えられるであろう。このことは、触媒ユニット18で発生する熱が、供給エアフローによって熱交換器12から排出エアフローに伝達されるばかりでなく、触媒作用のある材料が熱交換器内において相応に配置されている場合、例えば、熱交換器12がプレート型熱交換器として形成されており、熱交換プレートの層又は部分的な層になっている場合、発生する熱は、直接排出エアフローに伝達することもできるため、排出エアフロー内の使用可能な廃熱が増大し、同時に供給エアフローの温度を低下させることができるという追加の利点があると思われる。
この場合、図2の燃料電池システム1の供給エア側の構造は、図1ですでに説明した構造と同一である。
図3の燃料電池システム1は、再び、アノード再循環回路9及び再循環フィード装置10を有している。アノード領域4からの排出ガスは、この実施例においては、バルブ装置11を介して時々排出される。さらに、図3の燃料電池システム1では、タービン16及び電気機械17の表示が省略されているが、これらは、同様に本発明に基づく燃料電池システム1には必要ないからである。熱交換器12と加湿器13とは、図3の燃料電池システム1では、以下に交換装置22と呼ばれる唯一の機能ユニットにまとめられている。この交換装置22は、この場合、排出エアから供給エアへの水蒸気の物質交換と、コンプレッサ6によって加熱された供給エアから排出エアへの熱伝達との両方を担っている。このような交換装置は、従来技術から原則的に知られており、これについては、冒頭ですでに述べた特許文献3が参照される。
図3の燃料電池システム1には、さらに、第1の触媒ユニット18が交換装置22に組み込まれている。このことは、例えば、交換装置22の供給エア側の、特に部分範囲の層によって行うことができ、すでに上述した熱交換器に組み込む場合と同様に実施することができる。特に有利な実施形態では、交換装置22が、向流で、もしくは少なくとも大部分が向流で作動している。このことは、交換装置22内の湿った冷たい排出エアが、最初に比較的強く冷却されてある程度加湿された供給エアに接触するという利点がある。次に、交換装置22を通過することによって、排出エアは、徐々に乾燥した熱い供給エアと接触するため、排出エアは熱を吸収し、水蒸気を供給エアに与えることができる。排出エアが交換装置22を出る直前に、排出エアは、第1の触媒ユニット18内の触媒作用のある材料によって発生した熱とも接触し、交換装置22を出る前に、比較的高い温度の廃熱を吸収する。触媒作用のある材料の部分、すなわち組み込まれている第1の触媒ユニット18の部分は、この場合比較的小さく形成されており、例えば交換装置22の供給エア側の使用可能な面の約1/16〜1/8であり、それは、ここでの水素の発生が僅かとなるからである。
特に有利な実施形態では、交換装置22がハニカム材料、例えば、排気ガス触媒コンバータに使用されるような、セラミックのハニカムボディからなることができる。このハニカムボディにより、個々に隣接する供給エアと排出エアのチャンネルが、向流で流れるように形成することができる。該当する層により、少なくとも部分範囲においては、水蒸気が排出エア側から供給エア側へ達することでき、少なくとも必要に応じて別の部分範囲においては、物質間の熱交換が行われるようにすることができる。さらに、供給エア側には、例えば部分範囲にのみ、触媒作用のある層を取り付けることができる。アノード領域4からの排出ガスの供給は、この場合、これまでにすでに述べたように、コンプレッサ6後の供給エアの中に直接行われる。しかし、排出ガスを交換装置22に、ここでは特に第1の触媒ユニット18の部分に間接的に運ぶことも考えられるだろう。
図3による実施形態における燃料電池システム1の排出エア側は、これまでに説明した実施例と僅かしか異ならない。この燃料電池システムはタービンを有していないため、第2の触媒ユニット19で発生した熱エネルギーは、排出エア中の生産水の気化にのみ利用されるか、もしくは車内や冷却回路などの加熱に用いる熱エネルギーとして利用することができる。
図4の燃料電池システム1の構造は、再び、コンプレッサ6、電気機械17及びタービン16からなるユニットを有しており、図1の中ですでに説明したように、ブーストモードによる使用に適していると思われる。さらに、図4による実施形態の燃料電池システム1では、熱交換器及び/又は加湿器の場所に、再び交換装置22が示されている。しかしながら、図2と同様に、アノード領域4には、再循環ライン9が取り付けられていない。従って、図4による実施形態の燃料電池システム1の場合も、アノード領域4からの継続的な排出ガスフローがある。この排出ガスフローは、図2の実施形態と同様に、ここでも交換装置22に組み込まれた状態で形成されている第1の触媒ユニット18に供給される。
図4による実施形態の燃料電池システム1の実質的な違いは、排出エア側にある。この場合、第2の触媒ユニット19は、同様に、交換装置22の中に一緒に組み込まれている。この触媒ユニットは、排出エアの流れる方向に向かって、排出エアが交換装置22から流れ出る部分にある。このことは、触媒ユニット19によって排出エアが強く加熱されるという利点を有し、この排出エアは、次に、図4に示されているように、例えばタービン16の中で利用することができる。触媒ユニット19の部分で生じる廃熱は、この配置の場合、排出エア側の出口部分において排出エアの加熱に優先的に利用することができる。従って、供給エア側の部分への熱の移行は、最小限に抑えることができる。このことは、さらに、供給エア部分への熱の移行を防止するか、少なくとも難しくするために、交換装置22の触媒ユニット19の部分に適切な手段を設けることによって補足することが可能である。この種の手段は、例えば、熱伝導の悪い材料による実施形態とするか、もしくは必要に応じて、触媒ユニット19部分の両方の側の間にエアギャプを設けることができるであろう。この種の配置は、排出エアへの熱の直接的な接触及び直接伝達を妨げると考えられるが、この場合、同じくこの交換装置22内に組み込まれている触媒ユニット18によって発生する熱が、再び、供給エアを介して排出エアへ伝達されるかもしれない。しかしながら、通常、触媒ユニット19は、触媒ユニット18よりも明らかに大きく実施されており、従って、アノード領域からの排出ガスの変換と比較して比較的大きな熱量が、供給される燃料と排出エア中の酸素とから生成されるため、このことは許容可能である。
従って、図4の構造により、唯一のコンポーネントユニットによって、すなわち、両方の触媒ユニット18、19を組み込んだ交換装置22によって、アノード領域4からの排出ガスを利用することが可能となり、それによって、不必要に燃料電池2自体に負荷をかけたり、燃料電池の劣化を加速したりすることなく、燃料電池2への供給エアを最適に調整することができる。さらに、第2の触媒ユニット19と、高温の供給エアから排出エアへの熱の伝達とによって、排出エアの中に極めて高い熱量を実現することができ、この排出エアにより、例えばコンプレッサ及び/又はジェネレータを駆動するためのタービン16の作動が推進される。追加の燃料としての水素は、ここで示されている実施例においては、燃料電池2のカソード領域3後の排出エアの中に供給される。しかし、基本的に、この燃料を第2の触媒ユニット19の部分に直接運び込むことも可能であるだろう。しかしながら、交換装置22は、通常、非常に複雑に作られるので、複雑性及びコストの理由から、例えばT型ピース又は2つのラインの接続によって行われる気体供給部に物質を供給することが一般的には好まれる。
この場合、ここに示されている本発明に基づく構造の実施形態のバリエーションは、互いに任意に組み合わせることができるのは当然であり、例えば、熱交換機に触媒ユニットを1つだけ組み込むこと、又は全く組み込まないこと、又は交換装置を組み込むことも可能であるだろう。本燃料電池システムは、アノード領域周辺に水素の回路を付ける場合、もしくは付けない場合と同様に、タービン付き又はタービンなし、及び加湿器付き又は加湿器なしでも作動させることができるであろう。さらに、該当するバルブ装置15を備えるバイパスライン14を、交換装置22周辺の供給エア側又は排出エア側に配置し、ここでも必要に応じて湿気を相応に制御できるようにすることも当然考えられるだろう。
1 燃料電池システム
2 燃料電池
3 カソード領域
4 アノード領域
5 PE膜
6 コンプレッサ
7 水素貯蔵装置
8 計量投与装置
9 再循環ライン
10 再循環フィード装置
11 ドレンバルブ
12 交換装置
13 触媒作用のある材料
14 計量投与装置
15 ライン要素
16 タービン
17 電気機械
18 第1のユニット
19 第2のユニット
20 ライン要素
21 バルブ装置
22 交換装置

Claims (16)

  1. カソード領域とアノード領域とを有する少なくとも1つの燃料電池と、
    一方では前記カソード領域へ流れる供給エアフローが通過し、他方では前記カソード領域から流れる排出エアフローが通過する少なくとも1つの装置と、
    燃料含有ガスの熱変換に用いる触媒作用のある材料と、を備える燃料電池システムであって、
    前記触媒作用のある材料を備える第1のユニット(18)が、前記供給エアフローの流れる方向に向かって、少なくとも1つの装置(12、13、22)の手前に配置され、前記第1のユニット(18)には、前記アノード領域(4)からの排出ガスが燃料含有ガスとして供給可能であり、前記触媒作用のある材料を備える第2のユニット(19)が、前記排出エアフローの流れる方向に向かって、少なくとも1つの装置(12、13、22)の後に配置されていることを特徴とする燃料電池システム。
  2. 少なくとも1つの装置が熱交換器(12)として形成されており、該熱交換器の中では、熱が前記供給エアから前記排出エアに移行することを特徴とする、請求項1に記載の燃料電池システム。
  3. 少なくとも2つの前記装置があり、前記供給エアの流れる方向に向かって、第1の装置が熱交換器(12)として形成されており、該熱交換器の中では、熱が前記供給エアから前記排出エアに移行し、前記供給エアの流れる方向に向かって、最後の装置が前記カソード領域(3)前に加湿器(13)として形成されており、該加湿器の中では、水蒸気が前記排出エアから前記供給エアに移行することを特徴とする、請求項1又は2に記載の燃料電池システム。
  4. 少なくとも1つの前記装置が熱交換器(22)として形成されており、該熱交換器の中では、熱が前記供給エアから前記排出エアに移行し、水蒸気が前記排出エアから前記供給エアに移行することを特徴とする、請求項1に記載の燃料電池システム。
  5. 前記加湿器(13)又は前記交換装置(22)の周りに、制御可能に閉鎖できるフロー断面積を備えるバイパスライン(44)が配置されていることを特徴とする、請求項3又は4に記載の燃料電池システム。
  6. 供給エア側に前記触媒作用のある材料を備える前記第1のユニット(18)が、前記供給エアの流れる方向に向かって、少なくとも1つの第1の前記装置(12、22)の中に組み込まれていることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の燃料電池システム。
  7. 排出エア側に前記触媒作用のある材料を備える前記第2のユニット(19)が、前記排出エアの流れる方向に向かって、少なくとも1つの最後の前記装置(12、22)の中に組み込まれていることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の燃料電池システム。
  8. 前記第2のユニット(19)の前記触媒作用のある材料の部分に、前記排出エア側から前記供給エア側への前記熱の移行が難しくされる手段が設けられていることを特徴とする、請求項7に記載の燃料電池システム。
  9. 前記触媒作用のある材料を備える前記第2のユニット(19)に、燃料、特に水素が供給可能であることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の燃料電池システム。
  10. 前記触媒作用のある材料が、層の形で前記ユニット(18、19)の中に取り付けられているか、もしくは前記ユニットが装備されている少なくとも1つの前記装置(12、22)の中に取り付けられていることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の燃料電池システム。
  11. 少なくとも1つの前記装置(12、13、22)が、少なくとも部分的にハニカム構造を有していることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載の燃料電池システム。
  12. 前記交換装置(22)が、実質的に向流の形で流れを通しており、前記第1のユニット(18)の前記触媒作用のある材料は、前記供給エアと前記排出エアとが前記交換装置(22)内へ流れ込み、前記排出エアが前記交換装置(22)から流れ出す部分の供給エア側に配置されていることを特徴とする、請求項4〜11のいずれか一項に記載の燃料電池システム。
  13. 前記第2のユニット(19)の前記触媒作用のある材料が、前記排出エアが前記交換装置(22)から流れ出し、前記供給エアと前記排出エアとが前記交換装置(22)内へ流れ込む部分の排出エア側に配置されていることを特徴とする、請求項12に記載の燃料電池システム。
  14. 少なくとも1つの第1の前記装置(12、22)の上流に配置されているコンプレッサ(6)によって前記供給エアが供給され、前記コンプレッサ(6)は、少なくとも1つの最後の前記装置(12、22)の下流で前記排出エアが通過するタービン(16)によって、少なくとも補助的に駆動可能であることを特徴とする、請求項1〜13のいずれか一項に記載の燃料電池システム。
  15. 前記コンプレッサ(6)が電気機械(17)によって駆動可能であり、前記タービン(16)で余剰出力がある場合、前記タービン(16)が、電力を生成するジェネレータとしての前記電気機械(17)を駆動することを特徴とする、請求項14に記載の燃料電池システム。
  16. 移動手段において、該移動手段の駆動及び/又は電気的な補助負荷のための電力を生成するための、請求項1〜15のいずれか一項に記載の装置の使用。
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