JP2012506935A - 優れた帯電防止性を有する被覆された物品を提供する導電性高分子をベースとした硬化性被覆組成物 - Google Patents

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Abstract

本発明は、硬化することによって、透明な帯電防止性を有する皮膜を与える硬化性組成物に関する。上記硬化性組成物は少なくとも一種の導電性高分子と、少なくとも一種のバインダーと、少なくとも一種の溶媒と、少なくとも一種の式R1−O−[(CH2−CHR’)−O]n−R2で表される化合物(ここで、R1とR2はそれぞれ独立にアルキル基であり、R’は水素原子またはメチル基であり、nは2〜225までの整数である。)を含む。上記バインダーがエポキシシラン、好ましくはエポキシアルコキシシランである場合、上記皮膜は優れた耐摩耗性を示す。さらに本発明は、上記硬化性組成物を基材上に配置し、硬化することによって、基材の少なくとも一部が透明な帯電防止皮膜で被覆された基材、を含む光学物品に関する。得られた光学物品は帯電防止性、透過率約91〜92%という高い光学的透明性、低いヘイズ性、改善された耐摩耗性を示す。
【選択図】なし

Description

本発明は、透明な帯電防止性を有する、また必要に応じて耐摩耗性および耐傷性を有する皮膜を調製するための硬化性組成物に関する。また、上記組成物で被覆された、帯電防止性と必要に応じて耐摩耗性および耐傷性を示す、物品、特に眼鏡用の光学および眼科レンズに関する。さらに、上記物品を調製する工程に関する。これらの発明は、帯電防止性と耐摩耗性を高めるための新規の添加剤の使用に基づくものである。
絶縁性物質をベースとした光学物品は、乾燥した状態で布やポリエステルなどの合成繊維で擦って綺麗にすると静電気を帯電し易いことが一般に知られている(摩擦電気)。上記光学物品の表面に存在する電荷は静電場を生み出す。この静電場は、その表面に電荷が残る限り、その表面の近く(数センチ)に存在する非常に軽い物質、通常埃のような小さいサイズの粒子を吸着することを可能とする。
粒子の吸引を減らし、また抑制するために、静電場の強度を減らす必要がある。すなわち、物品の表面に存在する静電荷の数を減らす必要がある。これは、電荷に対して高い運動性を誘導する物質の層を光学物品に導入するなど、電荷に高い運動性を付与することによって達成することができる。最も高い運動性を誘導する材料は導電性材料である。このように、高い導電性を有する材料は、より早く電荷を消散させる。
帯電防止層と呼ばれる導電性層を少なくとも一つ含む機能性皮膜の積層を、光学物品の表面に組み込むことで、光学物品が帯電防止性を有することが当該技術分野において知られている。積層中にこのような層が存在すると、たとえ帯電防止皮膜が帯電防止性を有しない二つの皮膜や帯電防止性を有しない二つの基質の間に挟まれていたとしても、物品に帯電防止性が付与される。
「帯電防止性」とは、感知され得る静電荷を保持しない性質および/または生じさせない性質を意味する。通常、物品の表面の一つの面を適当な布で擦った後、埃や小さな粒子を引き付けたり、付着させたりしないとき、その物品は許容され得る帯電防止性を有すると認められる。
布による摩擦その他電荷発生工程(コロナによる電荷付与等)でガラスに静電荷を生じさせた場合、その静電荷をガラスが排出する能力は、その電荷を消散させるのに必要な時間(電荷減衰時間)を測定することによって定量することができる。それによると、帯電性ガラスの放電時間は数十秒のオーダー、場合によっては実に数分であるのに対して、帯電防止性のガラスの放電時間は100〜200ミリ秒である。摩擦された帯電性ガラスは、放電するまで周囲の埃を吸引し得る。
高い光学的透過性を有する、すなわち可視光の透過率が少なくとも90%である、導電性の無機または有機層を調製するための材料が当該技術分野において知られているが、その数は限られている。光学的に透明な帯電防止皮膜として知られるものの中には、真空蒸着による金属または金属酸化物のフィルム、例えば、インジウムでドープされたスズ酸化物(ITO)、アンチモンでドープされたスズ酸化物(ATO)、バナジウム五酸化物のような任意でドープされた(半)導電性金属酸化物に基づいたフィルムや、スピンコートや自己組織化による導電性高分子フィルムが含まれる。
ITOは、光学的に透明な導電性の薄膜を与える、工業上標準的な帯電防止性化学物質である。しかし、ITOがプラスチックスに応用される場合、ITOの性能には弱点がある。これらの皮膜は脆く、曲げた場合または他の応力が加えられた場合、容易に破壊される。加えて、ITO層は気体雰囲気制御下で真空蒸着により配置する必要がある。
導電性高分子は、ITO皮膜の代替物として最も研究されているものである。それらは、通常、液体の被覆組成物から形成される。しかし、ITOの光学的性能や電気的性能にまだ匹敵し得るものではなく、また、特定の応用に関して環境安定性が問題となる場合がある。
ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)−ポリ(スチレンスルホン酸)(PEDT/PSSと省略される)は、その優れた熱安定性と耐加水分解性により、最も一般的な導電性高分子の一つである。PEDT/PSSフィルムは、水分散液から合成することができる。しかし、標準的なPEDT/PSSフィルムの導電性は、多くの用途に対して通常不十分である。
水溶性導電性高分子の導電性を高める幾つかの方法は、水溶性組成物に特定の溶媒や添加剤を混合し、その後フィルムを形成する方法である。ポリチオフェンをベースとしたフィルムの導電性は、フィルムの形成に用いられる被覆組成物に、ソルビトールのようなポリオールやジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチルピロリジンのような高誘電性溶媒を添加することによって改良することができることが示されている。導電性の向上は、添加剤の化学構造に強く依存する。
最近、非特許文献1において、光電子装置の電極として用いられる高い導電性を有する透明なPEDT/PSSフィルムが開示された。著者らは、エチレングリコール、メソエリスリトール(1,2,3,4−テトラヒドロキシブタン)、2−ニトロエタノールのような二以上の極性基を有する化合物をPEDT/PSS水溶系に添加することによって、PEDT/PSSフィルムの導電性が400倍に増大することを見出した。メタノール、エタノール、ヘプタノールのようなモノアルコールを添加剤として用いても、導電性の向上は見られなかった。確認された導電性向上については、添加剤がフィルム中のPEDT鎖のコンフォメーション変化を誘発し、その結果、導電性が向上するように鎖内と鎖間における電荷キャリアの運動性が増大させられる、というメカニズムが提案されている。発見された添加剤は導電性高分子鎖に水素結合を形成することが可能であるため、添加剤とポリマー鎖の間の相互作用がコンフォメーション変化の原動力であると、著者らは提案している。
特許文献1は、20倍の導電性向上を示すポリチオフェン系の導電性高分子をベースとした透明な帯電防止皮膜を開示している。この皮膜は、市販の水溶性組成物の溶媒交換処理によって調製された液状高分子分散液から得られる。上記処理は、Baytron(登録商標)製など市販の水溶性ポリチオフェン組成物中の水の少なくとも一部(質量で30%超)を、NMP、DMSO、ジメチルアセトアミド、エチレングリコールやグリセロールのようなジオールやトリオール、アセトニトリル、ジクロロメタン、ジエチルエーテル、ジメトキシエタンのような低級アルコキシエタン、DMF、メチルシアノアセテート、ニトロベンゼン等から選択される少なくとも一種の他の溶媒、好ましくは、NMPまたはDMAcで置換するものである。
特許文献2は、すでに形成されたPEDT/PSSの透明な薄いフィルムの導電性を増大するための別の処理を開示している。フィルムの導電性は、エチレングリコール、ホルムアミド、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール、DMSO、ピリジン、NMP、DMAc、イソプロパノール、メタノール等の極性溶媒を何種類か、また、ポリオール(ソルビトール、アラビトール)のような添加剤を何種類か含む溶液に曝すことによって増大させることができる。導電性向上を達成するために、溶媒がフィルム中やフィルム表面に残存している必要がないことが示されている。フィルムを溶液に直接接触させた後、全ての、または実質的に全ての溶媒を、すすぎ、加熱、真空処理、その他の方法によって除去することができる。
上記の方法は、可視領域におけるフィルムの透明性に影響を与えず、また、被覆組成物に前もって溶媒や添加剤を加える方法よりも良好な電導性向上を示す場合がある。
米国特許出願公開第2003/006401号明細書 米国特許出願公開第2007/085061号明細書
Yang et al., Adv. Funct. Mater. 2005, 15, 203−208
しかし、さらに機械的特性が改善された、そして、さらに高い透明性と低いヘイズ値を有する新規な高分子系帯電防止組成物の提供が望まれている。また、導電性高分子を使用するとしばしば光学的透過性が減少するため、導電性高分子をベースとした帯電防止組成物の特定の用途、特に眼科用レンズへの用途を妨げている。
本発明の目的は、可視領域における光学的透明性を損なうことなく、光学物品に帯電防止性を付与することが可能な、新規な硬化性被覆組成物を提供することである。
本発明のもう一つの目的は、導電性高分子の含有量が少ないにも関わらず、一般的には硬化皮膜(ドライコーティング)の質量に対する導電性高分子の質量が1wt%未満、好ましくは0.7wt%未満、より好ましくは0.6wt%未満にも関わらず、光学物品に帯電防止性を付与することが可能な硬化皮膜を提供することである。
本発明のさらなる目的は、帯電防止性を有し、それと同時に低いヘイズと、優れた耐傷性および/または耐摩耗性を有する導電性皮膜を提供することである。
本発明者らは、皮膜の前駆体である被覆組成物に特定の有機化合物を加えることで、導電性高分子ベースの皮膜の導電性と、必要に応じて耐摩耗性を改善することができることを見出した。
本発明は、
a) 少なくとも一種の導電性高分子と、
b) 少なくとも一種のバインダーと、
c) 少なくとも一種の溶媒と、
d) 少なくとも一種の以下の式(A)で表される化合物と、を含む、硬化したときに透明な帯電防止皮膜を与える硬化性組成物に関する。
1−O−[(CH2−CHR’)−O]n−R2 (A)
(ここで、R1とR2はそれぞれ独立にアルキル基であり、R’は水素原子またはメチル基であり、nは2〜225までの整数である。)
本発明の一つの実施態様は、硬化することによって、耐摩耗性および帯電防止性を有する透明な皮膜を与える硬化性組成物であり、以下の式(I)で表されるエポキシシランのバインダーまたはその加水分解物を少なくとも一種含む。
n’mSi(X)4-n’-m (I)
(ここで、Rは同一または異なる基であり、炭素原子を介してケイ素原子に結合した一価の有機基であり、Yは同一または異なる基であり、炭素原子を介してケイ素原子に結合した一価の有機基であり、少なくとも一種のエポキシ官能基を含み、Xは同一または異なる基であり、加水分解性基または水素原子であり、mとn’は整数であり、mは1または2であり、n’+mは1または2である。)
また、本発明は、上記硬化性組成物を基材上に配置し、硬化することによって、少なくとも一部が透明な帯電防止皮膜で被覆された基材、を含む光学物品に関する。
さらに、本発明は、ウェット法により上記透明な帯電防止光学物品を調製する方法に関する。
本発明の帯電防止皮膜は種々の積層体に用いることが可能であり、他の機能性皮膜、特に誘電性材料からなる反射防止皮膜が、帯電防止皮膜の上に配置されていたとしても、光学物品に帯電防止性が付与される。
本発明のその他の目的、特徴、利点については、以下の詳細な説明に示す。しかし、詳細な説明と具体的な実施例は本発明の具体的な実施形態を示すが、それは単なる例示にすぎない。なぜなら、当業者にとって、この詳細な説明の記述をもとに、本発明の要旨と範囲の中で種々変更および改良をすることは自明だからである。
本発明の上記およびその他の目的、特徴、利点については、当業者であれば、後述の詳細な説明を読み、添付図面と併せて考察することで、容易に明らかになる。
図1は、種々有機化合物を導電性高分子ベースの硬化性組成物に添加することにより、該組成物を硬化することで得られる皮膜の帯電防止性および摩耗防止性に与える効果を示したものである。
「含有する(comprise)」(および、「含有する(comprises)」「含有している(comprising)」のような文法的に変形したもの)、「有する(have)」(および、「有する(has)」「有している(having)」のような文法的に変形したもの)「含む(contain)」(および、「含む(contains)」「含んでいる(containing)」のような文法的に変形したもの)「含む(include)」(および、「含む(includes)」「含んでいる(including)」のような文法的に変形したもの)という言葉は、非制限的連結動詞である。これらは記載された特徴、整数、工程、成分またはそれらの集合の存在を規定するのに用いられるが、他の特徴、整数、工程、成分またはそれらの集合の存在や追加を排除するものではない。結果として、1以上の工程または要素を「含有する(comprises)」、「有する(has)」「含む(contains)」または「含む(includes)」方法や方法なかの一工程は、それら1以上の工程や要素を持っているが、それら1以上の工程や要素のみを持っていることに限定されない。
他の指定がない限り、本願で用いられる、材料、範囲、反応条件等の量に関する全ての数値や表現は、いかなる場合も「約」の語で修飾されるものと理解されるべきである。
光学物品が1以上の表面皮膜を有する場合、「光学物品に皮膜や層を配置する」という表現は、光学物品の最も外側の皮膜、すなわちもっとも空気に近い皮膜に皮膜や層を形成することを意味する。
レンズの面の「上」にある皮膜は、(a)レンズの面を覆っていてもよいし、(b)レンズの面に接する必要はなく、すなわちその皮膜とレンズの面との間に1以上の皮膜が入っていてもよいし、(c)レンズの面を完全に覆う必要はない。
本発明によって調製した光学物品は、透明な光学物品であり、好ましくはレンズまたはレンズ単体である。光学物品は、本発明による帯電防止皮膜で凸面側(前側)が被覆されていても、凹面側(後側)が被覆されていても、両面が被覆されていてもよい。
ここで、「レンズ」という文言は、有機または無機のガラスレンズを意味し、有機または無機のガラスレンズは、種々性質を有する1以上の皮膜で被覆されていてもよいレンズ基材を含む。
レンズ基材は、無機ガラスを材料としたものでも、有機ガラスを材料としたものでもよく、好ましくは有機ガラスを材料としたものである。有機ガラスは、ポリカーボネートおよび熱可塑性ポリウレタンのような熱可塑性材料、ジエチレングリコールビス(アリルカーボネート)ポリマーやコポリマー(特にPPG IndustriesのCR−39(登録商標))、熱硬化性ポリウレタン、ポリチオウレタン、ポリエポキシド、ポリエピスルフィド、ビスフェノール−A由来の(メタ)アクリルポリマーやコポリマーを含む基材のようなポリ(メタ)アクリレートやコポリマーをベースとした基材、ポリチオ(メタ)アクリレート、それらのコポリマー、それらの混合物、のような熱硬化性(架橋性)材料、のいずれであってもよい。ポリカーボネート(PC)やジエチレングリコールビス(アリルカーボネート)ポリマーがレンズ基材として好ましい材料であり、特にポリカーボネートが好ましい。
本発明で用いられる基材を含む光学物品は、帯電防止皮膜を有する担体であってもよい。後で担体から例えば光学レンズの基材に移すこともできる。上記担体は必要に応じて1以上の機能性皮膜を有していてもよい。当然、レンズ基材上の皮膜積層の所望の順番とは逆の順番で担体の表面に皮膜を塗布する。
透明な帯電防止皮膜が塗布された物品の表面は、必要に応じて、高周波放電プラズマ処理、グロー放電プラズマ処理、コロナ処理、電子ビーム処理、イオンビーム処理、酸または塩基処理などの密着性を向上させるための前処理を行ってもよい。
本発明による帯電防止皮膜は、むきだしの基材上に形成してもよいし、基材が一種以上の表面皮膜で被覆されている場合は、基材の最も外側にある層上に形成してもよい。上記一種以上の表面皮膜は、限定されることなく、耐衝撃性皮膜(耐衝撃用プライマー)、耐摩耗性および/または耐傷性皮膜、偏光皮膜、光発色皮膜、染色皮膜であってもよい。
本発明で用いられる耐衝撃性皮膜は、最終光学物品の耐衝撃性を改善するのに通常用いられる皮膜であればどのようなものでもよい。この皮膜は、一般的に、最終光学物品の基材の耐摩耗性および/または耐傷性皮膜の密着性を高める。当然、耐衝撃性プライマーの皮膜は、耐衝撃性プライマーの皮膜を有さない同じ光学物品と比較して、最終光学物品の耐衝撃性を改善する皮膜である。
典型的な耐衝撃性プライマー皮膜はメタ(アクリル)系皮膜とポリウレタン系皮膜であり、特に、ポリ(メタ)アクリル系ラテックス、ポリウレタン系ラテックス、ポリエステル系ラテックスのようなラテックス組成物でできた皮膜が挙げられる。
本発明で用いられる耐摩耗性および耐傷性皮膜は、耐摩耗性および/または耐傷性皮膜を有さない同様の最終光学物品に対して耐摩耗性および/または耐傷性を改善するのに通常用いられるものであればどのようなものでもよい。
好ましい耐摩耗性および/または耐傷性皮膜は、(メタ)アクリル系皮膜やシリコン含有皮膜である。後者がより好ましく、例えば、本願の引用文献である仏国特許発明第2702486号明細書に開示されている。
基材に塗布される新規な硬化性被覆組成物は、硬化することで、帯電防止性と必要に応じて耐摩耗性および/または耐傷性を有する機能的な透明皮膜を与える。本願では、「帯電防止組成物」と称することがある。
帯電防止被覆組成物は、溶液または分散液である。本願では、これらの二つの言葉は混同して用いられる。これらの言葉は、巨視的スケールでは(視覚的には)およそ単一である混合物を意味し、特定の溶解状態や上記成分の粒子サイズに関連するものではない。
上記硬化性組成物は少なくとも一種の導電性高分子、少なくとも一種のバインダー、少なくとも一種の溶媒、少なくとも一種の式(A)で表される化合物を含む。
後述するように、ほとんどの高分子が溶液または分散液として利用することが可能である。
本願では、「導電性高分子」という言葉は、導電性分子そのもの(溶媒を含まない)を意味する。
導電性高分子の中でも薄く透明な層になるものが好ましい。透明な有機系導電性高分子としては、米国特許第5,716,550号明細書や第5,093,439号明細書で開示されているようなポリアニリン、米国特許第5,665,498号明細書や第5,674,654号明細書で開示されているようなポリピロール、米国特許第5,575,898号明細書、第5,403,467号明細書、第5,300,575号明細書で開示されるようなポリチオフェン、特許文献2で開示されるようなポリ(チエノチオフェン)、ポリエチレン−イミン、ポリセレノフェン、ポリ(アリルアミン)などのアリルアミン系化合物、ポリアジン、ポリビニルフェニレン、ポリアセチレン、ポリ(フェニレンスルフィド)、それらの共重合体、それらの誘導体、それらの混合物が挙げられる。これらは混合物として用いてもよい。それ以外の導電性高分子の例は、本願の引用文献である''Conjugated Polymeric Materials: Opportunities in Electronics, Optoelectronics, and Molecular Engineering'', J.L.BredasおよびB.Silbey, Eds., Kluwer, Dordrecht, 1991で見ることができる。
これらの導電性高分子は、通常ポリカチオンの状態(ポリアニリンカチオン、ポリピロールカチオン、ポリチオフェンカチオン、ポリ(アリルアミン)カチオン等)で用いられ、一般に一種以上のポリアニオンと組み合わせられる。ポリイオン化合物は主鎖に電荷を有する化合物であってもよいし、イオン化が可能な側鎖基を有する化合物であってもよい。
共役性または非共役性のポリアニオンとは、一般に繰り返し単位内に、イオン化されると負の電荷を保持し得るイオン化可能な基を有する全ての種類のポリマーを表わす。ポリアニオンは、高分子のカルボン酸またはスルホン酸アニオン(ポリ酸)およびその混合物から選択することができるが、それに限定されない。例えば、ポリスチレンスルホン酸(PSS)、ポリアニリンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリマレイン酸エステル、ポリ(チオフェン−3−アセテート)、パーフルオロスルホン酸ポリマーアニオン(例えばNafion(登録商標))のようなフルオロポリマー酸アニオン、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸のような酸性モノマー1種以上と酸性または酸性ではない別のモノマー1種以上とを共重合することによって得られる共重合体のアニオンが挙げられる。上記酸性ではないモノマーとしては、スチレンやアクリル酸エステルが挙げられる。ポリアニオンの他の例は、本願の引用文献である''Coulombic interactions in Macromolecular Systems'' ACS Symposium Series No.302, A. EisenbergおよびF.Bailey Eds., 1986で確認することができる。ポリスチレンスルホン酸がポリアニオンとして好ましい。
ポリアニオン前駆体のポリ酸の数平均分子量は、通常、1000〜2×106g/molの範囲にあり、好ましくは2000〜500000の範囲にある。
ポリ酸は公知の方法で調製することが可能であり、また、市販のもの、必要に応じて金属塩を利用することができる。
導電性高分子は種々の官能基、特に親水性基、好ましくはイオン性基またはイオン化が可能な基で置換することができる。そのような基としては、例えば、COOH基、SO3H基、NH2アンモニウム基、リン酸基、スルホン酸基、イミン基、ヒドラジノ基、OH基、SH基またはこれらの塩が挙げられる。これらの官能基が存在することで、水溶性の帯電防止被覆組成物の調製が容易になる。というのは、これらの官能基が導電性高分子と水との相溶性を向上させることで、組成物中の導電性高分子の溶解性が向上するからである。これにより組成物の配置の質が改善される場合がある。
好ましい導電性高分子は、ポリピロール誘導体、特に3,4−ジアルコキシ基で置換されたポリピロール誘導体、ポリチオフェン誘導体、特に米国特許出願公開第2003/006401号明細書で開示されるポリジオキシチオフェンのような3,4−ジアルコキシ基で置換されたポリチオフェンであり、(例えばポリ(3,4−アルキレンジオキシチオフェン)、より好ましくはポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)、ポリ(3−アルキルチオフェン)、ポリ(3,4−ジアルキルチオフェン)、ポリ(チエノ[3,4−b]チオフェン)およびそれらの混合物である。それらはポリピロール−PSSやポリチオフェン−PSSなどポリスチレンスルホン酸型で用いることが好ましい。
好ましい導電性高分子の具体例としては、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)−ポリ(スチレンスルホン酸)およびポリ(3,4−エチレンジオキシピロール)−ポリ(スチレンスルホン酸)が挙げられる。
導電性高分子は市販のものを利用することもできるし、公知の方法で調製してもよい。例えば、ポリピロールポリスチレンスルホン酸は、ポリスチレンスルホン酸と酸化剤として過硫酸アンモニウムの存在下、水性媒体中でピロールを酸化重合することにより合成することができる。3,4−エチレンジオキシチオフェンモノマーをポリマーに変換する方法についてはBayer Corporationが開示している。
導電性高分子としては、光学物品の表面に組成物として塗布できるように、水、アルコールまたは水/アルコール混合物に溶解または分散するものが好ましい。
導電性高分子は、通常、水性溶媒、有機溶媒またはこれらの溶媒の混合物、好ましくは水、より好ましくは脱イオン水に、1種以上の導電性高分子を分散させた分散液(または溶液)の形態で帯電防止被覆組成物に導入される。
導電性高分子分散液である市販の帯電防止被覆組成物の例としては、Bayerにより開発され、H. C. Starck Baytron(登録商標)から販売されているポリチオフェン系のBaytron(登録商標) P、Baytron(登録商標) PH 500、Baytron P HC V 4が挙げられる。これらは複合高分子ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)−ポリスチレンスルホン酸の水分散液であり、PEDT/PSSと略され、導電性高分子−PSSを質量で1.2〜1.3%含む。上記組成物は、安価に生産することができる帯電防止フィルムになる。また、非常に良好な温度耐性を有し、多くの材料系と相溶する。
本発明の被覆組成物から得られるフィルムの帯電防止性を改善する添加剤について述べる。
上記添加剤は式(A)の化合物である。
1−O−[CH2−CHR’−O]n−R2 (A)
(ここで、R1とR2はそれぞれ独立にアルキル基であり、R’は水素原子またはメチル基であり、nは2〜225までの整数である。)
式(A)の化合物は、エチレングリコールやプロピレングリコールの(α,ω)−ジアルキルオリゴマーやポリマーである。式(A)の化合物が液体であるか固体であるかは、n、R’、R1、R2に依存する。
1とR2は独立に炭素数1〜20のアルキル基を表し、好ましくは炭素数1〜10であり、より好ましくは炭素数1〜5である。R1(またはR2)がメチル基、エチル基、n−プロピル基、ブチル基であるのが、最も好ましい。通常、R1とR2は同じ基を表す。
式(A)の化合物としては、例えばポリ(エチレングリコール)ジアルキルエーテル(R’=H)やポリ(プロピレングリコール)ジアルキルエーテル(R’=メチル基)が挙げられ、好ましくはポリ(エチレングリコール)ジメチルエーテル、ポリ(エチレングリコール)ジエチルエーテル、ポリ(プロピレングリコール)ジメチルエーテルまたはポリ(プロピレングリコール)ジエチルエーテルである。式(A)の化合物として特に好ましいのはR’=Hである化合物であり、なかでもポリ(エチレングリコール)ジメチルエーテルである。本願において、「ポリ(エチレングリコール)ジアルキルエーテル」という言葉は、エチレングリコールのオリゴマーまたはポリマーの末端を二つのアルキルで封止したものを意味する。
nは110以下が好ましく、より好ましくは50以下であり、さらに好ましくは20以下である。式(A)の化合物の好ましい例は、nが2〜10までの化合物である。
整数nの数値的範囲が示すように、式(A)の化合物は低分子量の化合物であり、好ましくは10,000g/mol以下であり、より好ましくは5000g/mol以下であり、さらに好ましくは2000g/mol以下であり、よりさらに好ましくは400g/mol以下である。本発明の帯電防止被覆組成物は、式(A)の化合物の混合物を含む場合、上記混合物の数平均分子量が同様の条件を満たすことが好ましい。分子量が高すぎると、例えば10,000g/molを超えると、硬化後の皮膜の耐摩耗性が低下する可能性がある。
1=R2=メチル基またはエチル基である化合物(A)の具体的な例としては、ジエチレングリコールジメチルエーテル(n=2,M=134g/mol)、ジエチレングリコールジエチルエーテル(n=2,M=162g/mol)、トリエチレングリコールジメチルエーテル(n=3,M=178g/mol)、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(n=4,M=222g/mol)、ペンタエチレングリコールジメチルエーテル(n=5,M=266g/mol)が挙げられる。分子量がおよそ400〜2,000のポリエチレングリコールジアルキルエーテルも有用である。
このような化合物は公知の方法に従って容易に合成することができる。また、Fluka(登録商標)やSigma−Aldrich(登録商標)から、純粋化合物や、所定の平均分子量を有する化合物の混合物が、市販されている。例えば、ポリ(エチレングリコール)ジメチルエーテルは、150、250、400、500、1,000、2,000などの平均分子量を持つ式CH3O(CH2CH2O)nCH3で表される化合物の混合物として市販されている。
式(A)の化合物は低濃度で用いられ、被覆組成物の質量に対する式(A)の化合物の質量の割合は、0.5〜20%であり、好ましくは0.5〜15%であり、より好ましくは1〜12%であり、さらに好ましくは1〜10%であり、最も好ましくは1〜5%である。
上で引用した先行技術では、得られた皮膜の導電性を向上させるために、モノアルコール(2−ニトロ−エタノール)や、ジオール(エチレングリコール)、トリオール(グリセロール)のようなポリオールや、メソエリスリトールやソルビトールのようなさらに多価のアルコールの使用を推奨しているが、これとは逆に、本発明では、その帯電防止性を向上させるために、水酸基を有しない式(A)の化合物を使用する。実施例から分かるように、水酸基が存在することで意外にも帯電防止性への弊害が見られる。
帯電防止被覆組成物が含有するポリオール(1分子中に二つ以上の水酸基を有する化合物と定義される)、特にジオールの割合は5%未満であることが好ましく、2%未満であることがより好ましく、1%未満であることがさらに好ましい。帯電防止被覆組成物がポリオール、特にジオールを全く含有していないことが理想である。
帯電防止被覆組成物は少なくとも一種のバインダーを含有する。バインダーはフィルムを形成する材料であればどのようなものであってもよい。「バインダー」は、帯電防止皮膜と上層および/または下層との接着性を改善することが可能な化合物、および/または、帯電防止皮膜の質を改善することが可能な化合物、と定義される。バインダーは、その性質に応じて、最終光学物品の耐摩耗性および/耐傷性を強化するものであってもよい。
バインダーは導電性高分子と相溶するものでなければならない。すなわち、帯電防止性に弊害をもたらすようなものであってはならない。また、バインダーは、導電性高分子が沈殿することがなく、または導電性高分子が凝集して光学的欠陥となる大きな粒子を多かれ少なかれ生じることがなく、安定した溶液を形成するものでなければならない。
通常、バインダーの選択は、被覆組成物に用いられる溶媒系によって決定される。というのは、バインダーはその溶媒系に溶解または分散可能なものでなければならないからである。
バインダーは高分子材料であることが好ましく、通常、有機物である。バインダーは、熱可塑性材料や熱硬化性材料から構成されものであってもよく、必要に応じて、重縮合、重付加、加水分解によって架橋可能なものであってもよい。種々バインダーの混合物を用いてもよい。
バインダーは水や水性アルコール組成物のような水性組成物に選択的に溶解または分散可能なものである。水溶性または水分散性のバインダーとしては、スチレン、塩化ビニリデン、塩化ビニル、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート、(メタ)アクリルアミドの単独重合体または共重合体、ポリエステル単独重合体または共重合体、ポリ(ウレタン−アクリレート)、ポリ(エステル−ウレタン)、ポリエーテル、ポリ酢酸ビニル、ポリエポキシド、ポリブタジエン、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、メラミン、ポリウレタン、ポリビニルアルコール、その共重合体、およびその混合物が挙げられる。ポリ(メタ)アクリレートのバインダーとしては、ポリ(メチルメタクリレート)が挙げられる。
バインダーは水溶性高分子であってもよい。また、ラテックスとして用いても、ラテックスの混合物からなるラテックスとして用いてもよい。
よく知られているように、ラテックスは水性媒体中で少なくとも一つの高分子の安定分散体である。好ましいラテックスとしては、ポリエステル部位を含んでいてもよいポリウレタンラテックス、ポリ(メチル)アクリレートラテックス、ポリエステルラテックス、および、これらの混合物である。ラテックスは、スルホン酸基またはカルボン酸基のような親水性の機能性基を含んでいてもよい。また、ラテックスは、コア−シェルタイプであってもよい。
ポリウレタン−ポリエステルのラテックスは、ZENECA RESINSからNeorez(登録商標)の商品名で市販されている(例えば、Neorez(登録商標) R−962、Neorez(登録商標) R−972、Neorez(登録商標) R−986、Neorez(登録商標) R−9603)。また、WITCO Corporationの子会社であるBAXENDEN CHEMICALSからWitcobond(登録商標)の商品名で市販されている(例えば、Witcobond(登録商標)232、Witcobond(登録商標) 234、Witcobond(登録商標) 240、Witcobond(登録商標) 242)。
帯電防止被覆組成物に用いることができるもう一つのバインダーの分類としては、官能基を有するシラン、シロキサンまたはケイ酸塩(Si−OH化合物のアルカリ金属塩)をベースとしたバインダーがある。通常、これらは一つ以上の機能性有機基で置換され、シリカオルガノゾルを形成する。これらは有機または無機ガラス基材への接着を促進するバインダーとして機能し得る。また、これらのバインダーは、ポリスチレンスルホン酸塩の形態で用いられる導電性高分子に対する架橋剤として機能し得る。
ケイ素含有バインダーとしては、アミノアルコキシシランなどのアミン基を有するシランやシロキサン、ヒドロキシシラン、アルコキシシラン、好ましくはメトキシまたはエトキシシラン等(具体的には、エポキシアルコキシシラン、ウレイドアルキルアルコキシシラン、ジアルキルジアルコキシシラン(例えば、ジメチルジエトキシシラン)、ビニルシラン、アリルシラン、(メタ)アクリルシラン、カルボキシルシラン、シラン基を有するポリビニルアルコール、テトラエトキシシラン、およびその混合物等)が挙げられる。
加水分解を受けた後、上記有機官能性バインダーは、シラノール基を形成することで互いに貫通するネットワークを生成し、生成したネットワークは上層および/または下層との結合の形成を可能にする。
式(I)で表される化合物やその加水分解物を一種以上含むバインダーが好ましい。ここで、Rは同一または異なる基であり、炭素原子を介してケイ素原子に結合した一価の有機基であり、Yは同一または異なる基であり、炭素原子を介してケイ素原子に結合した一価の有機基であり、少なくとも一種のエポキシ官能基を含み、Xは同一または異なる基であり、加水分解性基または水素原子であり、mとn’は整数であり、mは1または2であり、n’+mは1または2である。
X基は、互いに独立して、また制限されることなく、水素原子、アルコキシ基−O−R1(ここでR1は好ましくは直鎖または分岐したアルキル基またはアルコキシアルキル基を表し、好ましくは炭素数1〜4のアルキル基である。)、アシルオキシ基−O−C(O)R3(ここでR3は好ましくはアルキル基を表し、好ましくは炭素数1〜6のアルキル基、さらに好ましくはメチル基またはエチル基である。)、塩素原子や臭素原子のようなハロゲン基、必要に応じて1または2のアルキル基またはシラン基のような官能基で置換されたアミノ基(例えばNHSiMe3基)、イソプロペンオキシ基のようなアルキレンオキシ基、トリアルキルシロキシ基(例えばトリメチルシロキシ基)を表す。
X基はアルコキシ基であることが好ましく、より好ましくはメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基またはブトキシ基であり、さらに好ましくはメトキシ基またはエトキシ基である。この場合、式Iの化合物はアルコキシシランである。
整数n’とmは化合物Iの三つのグループを定義する。一つ目は化学式RYSi(X)2で表される化合物、二つ目は化学式Y2Si(X)2で表される化合物、三つ目は化学式YSi(X)3で表される化合物である。これらの化合物の中で、化学式YSi(X)3で表されるエポキシシランが好ましい。
Si−C結合を通してケイ素原子に結合する一価の基であるR基は有機基である。これらの基は、特に限定されないが、飽和または不飽和の炭化水素基であってもよく、好ましくは炭素数1〜10の基であり、より好ましくは炭素数1〜4の基である。例としては、アルキル基(好ましくはメチル基やエチル基などの炭素数1〜4のアルキル基)、アミノアルキル基、アルケニル基(ビニル基など)、炭素数6〜10のアリール基(例えば、必要に応じて置換したフェニル基、特に1以上の炭素数1〜4のアルキル基で置換したフェニル基)、ベンジル基、(メタ)アクリロキシアルキル基、上記炭化水素基をフッ素化または全フッ素化した基(例えば、フルオロアルキル基、パーフルオロアルキル基)、または(ポリ)フルオロまたはパーフルオロアルコキシ[(ポリ)アルキルオキシ]アルキル基などが挙げられる。
R基はアルキル基であることが最も好ましく、特に炭素数1〜4のアルキル基、理想的にはメチル基が好ましい。
Si−C結合を通してケイ素原子に結合する一価の基であるY基は有機基であり、一つ以上のエポキシ官能基を有し、好ましくは一つのエポキシ基を有する。エポキシ官能基は、一つの酸素原子が二つの隣接する炭素原子に直接結合する原子団、または、一つの酸素原子が炭素含有鎖若しくは環状炭素含有系に含まれる二つの隣接しない炭素原子に直接結合する原子団を意味する。エポキシ官能基のなかでは、オキシラン基、すなわち、三員環エーテル基が好ましい。
式(I)のエポキシシラン化合物は高度の架橋マトリックスを与える。好ましいエポキシシランは、ケイ素原子とエポキシ官能基との間に一定レベルの柔軟性のある有機結合を有する。
好ましいY基は式IIIやIVで表される。
ここで、R2はアルキル基、好ましくはメチル基または水素原子であり、より好ましくは水素原子である。aとcは1〜6の整数であり、bは0、1または2である。
式IIIで表される基のなかで好ましいのはγ−グリシドキシプロピル基(R2=H、a=3、b=0)であり、式IVで表される好ましい(3,4−エポキシシクロヘキシル)アルキル基はβ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基(c=1)である。γ−グリシドキシプロピル基(R2=H,a=3,b=1)を用いることもできる。
式Iで表されるエポキシシランのなかでは、エポキシアルコキシシランが好ましく、Y基を一つとアルコキシ基であるX基を三つ有しているエポキシアルコキシシランが最も好ましい。特に好ましいエポキシトリアルコキシシランは式VとVIで表される。
式VおよびVI中、R1は1〜6の炭素原子を有するアルキル基、好ましくはメチル基またはエチル基を表わし、a、bおよびcは上で規定されたとおりである。
このようなエポキシシランの例としては、これに限定されるものではないが、グリシドキシメチルトリメトキシシラン、グリシドキシメチルトリエトキシシラン、グリシドキシメチルトリプロポキシシラン、α−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、α−グリシドキシエチルトリエトキシシラン、β−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、β−グリシドキシエチルトリエトキシシラン、β−グリシドキシエチルトリプロポキシシラン、α−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、α−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、α−グリシドキシプロピルトリプロポキシシラン、β−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−グリシドキシプロピルトリプロポキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリプロポキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシランが挙げられる。その他の有用なエポキシアルコキシシランは、本願の引用文献である米国特許第4,294,950号明細書、米国特許第4,211,823号明細書、米国特許第5,015,523号明細書、欧州特許第0614957号明細書、国際公開第94/10230号パンフレットに記載されている。これらのシラン化合物のなかでも、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GLYMO)が好ましい。
一つのY基と二つのX基を有する式Iで表されるエポキシアルコキシシランとしては、γ−グリシドキシプロピル−メチル−ジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルビス(トリメチルシロキシ)メチルシラン、γ−グリシドキシプロピル−メチル−ジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピル−メチル−ジイソプロペノキシシラン、およびγ−グリシドキシエトキシプロピル−メチル−ジメトキシシランなどのエポキシジアルコキシシランが好ましいが、これに限定されるものではない。エポキシジアルコキシシランが使われる場合、上記エポキシトリアルコキシシランと組み合わせ、エポキシトリアルコキシシランよりも少量用いるのが好ましい。
驚くべきことに、式(A)の化合物はエポキシシラン系の帯電防止皮膜(好ましくはエポキシアルコキシシラン、より好ましくはエポキシジアルコキシシランまたはエポキシトリアルコキシシラン系皮膜)の耐摩耗性を向上させることを見出した。言い換えると、バインダーとして式(I)の化合物を少なくとも一種含む本発明の組成物で調製した帯電防止皮膜は、式(A)の化合物を全く含まない組成物から得られる皮膜と比較して、高い耐摩耗性を示す。そのため、このような皮膜は、透明な帯電防止ハードコートとして用いることができる。
本発明の一つの実施形態では、帯電防止組成物のバインダーは、さらに式IIの化合物またはその加水分解物を一種以上含む。
nSi(Z)4-n (II)
(式II中、R基は、互いに同一でも異なっていてもよく、一価のアルキル基を表し、Z基は互いに同一でも異なっていてもよく、加水分解性基または水素原子を表し、nは0、1または2のいずれかの整数であり、好ましくは0である。ただし、nが0の場合、Z基の全てが水素原子ということはなく、好ましくは全てが水素原子ではない。
式IIの化合物またはそれらの加水分解物は、本発明の硬化性組成物から得られる皮膜の架橋性を改善するために用いることもできる。これによって、より頑丈になり、また耐摩耗性が向上する。
式IIのシランは、ケイ素原子に直接結合したZ基を三つから四つ、ケイ素原子に結合した有機R基を一つまたは二つ有する。Z基はそれぞれ加水分解によりOH基になる。式IIの化合物において最初にSiOHが現れるが、この化合物は加水分解物と考えられる。加水分解物にはシロキサン塩も含まれる。
Z基は、例えば、X基についての記述の部分で述べた加水分解性基から互いに独立に選択される加水分解性基であってもよい。Z基は、同一または異なる加水分解性基であることが好ましい。
最も好ましいR基は、炭素数1〜4のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、好ましくはメチル基である。
式IIの化合物のうち最も好ましいものは、式Si(Z)4で表される化合物である。このような化合物の例としては、テトラエトキシシランSi(OC254 (TEOS)、テトラメトキシシランSi(OCH34 (TMOS)、テトラ(n−プロポキシ)シラン、テトラ(i−プロポキシ)シラン、テトラ(n−ブトキシ)シラン、テトラ(sec−ブトキシ)シランまたはテトラ(t−ブトキシ)シラン、のようなテトラアルコキシシランが挙げられ、なかでもTEOSが好ましい。
式IIの化合物は化学式RSi(Z)3の化合物、例えばメチルトリエトキシシラン(MTEOS)から選択することもできる。
硬化性帯電防止組成物中のシラン類は一部または全てが加水分解されていてもよく、全てが加水分解されていることが好ましい。加水分解物は仏国特許発明第2702486号明細書や米国特許第4,211,823号明細書に開示されているような公知の方法で調製することができる。縮合反応よりも加水分解反応を促進するために、塩酸や酢酸のような加水分解触媒を用いることができる。
上記バインダーは本発明で用いることができるバインダーの例示であり、これに限定されるものではない。当業者であれば、他の分類の化合物であったとしても、本発明の帯電防止被覆組成物のバインダーとして用いることができる化合物を容易に見分けることができる。
バインダーと導電性高分子を含有する帯電防止被覆組成物については、市販されているものがあり、本発明で用いることができる。そのような組成物としては、例えば、Ormecon Chemie GmbH から販売されているD 1012 W(ポリアニリンの水分散液)やH. C. Starckから販売されているBaytron(登録商標) P分散液をベースとした組成物(CPUD−2 (ポリウレタンバインダー)、CPP 105D (GLYMOバインダー)、CPP 103D (脂肪族ポリエステル−ポリウレタンバインダー)、CPP 116.6D、CPP 134.18D (ポリウレタン + GLYMOバインダー))等が挙げられる。好ましい被覆組成物は組成物CPP 105D(乾燥抽出物の割合は約1.5質量%)である。これを用いることで、有機または無機基材に対して良好な接着性を有する帯電防止皮膜を得ることができる。
もう一つの好ましい被覆組成物は、Baytron(登録商標) P分散液をベースとした組成物であって、さらにバインダーの前駆体として、ポリウレタンラテックス、最も好ましくはWitcobond(登録商標) 240または234を含むものである。該被覆組成物は、通常、Baytron(登録商標) P:Witcobond(登録商標) 240または234が質量比で0.9:1から2.5:1である。
通常、式IとIIの化合物を含み、フィラーを含まないバインダーが、帯電防止被覆組成物に含まれる。帯電防止組成物全質量に対するバインダーの質量の割合は1〜20%であり、好ましくは2〜15%である。
帯電防止組成物が式IIの化合物を全く含まない実施形態もある。帯電防止組成物中にフィラーが存在しない場合、帯電防止組成物が式IIの化合物を含まないことが好ましい。
帯電防止被覆組成物はバインダーを含むため、一種以上の架橋剤(好ましくは水中に溶解または分散する架橋剤)が存在することにより架橋または硬化し得る。これらの架橋剤は一般に知られたものであり、バインダー中のカルボキシル基や水酸基等の官能基と反応する。これらの架橋剤は、多官能アジリジン、メトキシアルキル化したメラミン樹脂やウレア樹脂等から選択することができ、例えば、メトキシアルキル化したメラミン/ホルムアルデヒド樹脂やウレア/ホルムアルデヒド樹脂、エポキシ樹脂、カルボジイミド、ポリイソシアネート、トリアジン、ブロックポリイソシアネート等が挙げられる。なかでもアジリジンが好ましく、三官能性アジリジンが特に好ましい。
帯電防止組成物は、硬化が促進されるように、必要に応じて1種以上の触媒量の硬化触媒を含む。硬化触媒としては、例えば、紫外光や熱に曝すことでフリーラジカルが発生する光開始剤等が挙げられ、具体的には、有機過酸化物、アゾ化合物、キノン、ニトロソ化合物、ハロゲン化アシル、ヒドラゾン、メルカプト化合物、ピリリウム化合物、イミダゾール、クロロトリアジン、ベンゾイン、ベンゾインアルキルエーテル、ジケトン、フェノンまたはそれらの混合物等が挙げられる。
帯電防止組成物は、アセチルアセトンアルミニウムAl(AcAc)3若しくはその加水分解物、または亜鉛、チタン、ジルコニウム、スズ若しくはマグネシウムなどの金属のカルボン酸塩などの硬化触媒を含んでいてもよい。飽和または不飽和の多官能性酸または酸無水物、特に、マレイン酸、イタコン酸、トリメリット酸のような縮合触媒を用いてもよい。硬化触媒および/または縮合触媒について数多くの例がChemistry and Technology of the Epoxy Resins'’, B. Ellis (Ed.) Chapman Hall, New York, 1993と'’Epoxy Resins Chemistry and Technology'’ 2eme edition, C. A. May (Ed.), Marcel Dekker, New York, 1988に記載されている。
一般に、上記触媒は、本発明に従い、硬化性帯電防止組成物の全質量に対する質量が、0.01〜10%の範囲、好ましくは0.1〜5%の範囲で用いられる。
硬化後の皮膜の堅さおよび/または屈折率を増大させるために、帯電防止組成物が、フィラー、通常はナノ粒子(またはナノ結晶)を含む実施形態もある。ナノ粒子は有機物であっても無機物であってもよい。有機物と無機物の混合物を用いることもできる。無機のナノ粒子が好ましく、金属や半金属の酸化物、窒化物やフッ化物のナノ粒子またはそれらの混合物がより好ましい。ナノ粒子(フィラー)は非導電性であることが好ましい。
「ナノ粒子」という言葉は、直径(または最も長い直径)が1μm未満、好ましくは150nm未満、より好ましくは100nm未満の粒子を意味する。本発明において、フィラーやナノ粒子の直径は2〜100nmであることが好ましく、2〜50nmであることがより好ましく、5〜50nmであることがさらに好ましい。
適当な無機ナノ粒子としては、例えば、酸化アルミニウムAl23、シリカSiO2、酸化ジルコニウムZrO2、酸化チタンTiO2、酸化アンチモンSb2O、酸化タンタルTa25、酸化亜鉛、酸化スズSnO2、酸化インジウム、酸化セリウム、Si34、MgF2またはそれらの混合物が挙げられる。
混合酸化物の粒子や複合粒子を用いることも可能である。例としては、コアシェル構造を有する粒子が挙げられる。種々のナノ粒子を用いることでヘテロ構造のナノ粒子層が形成される。
ナノ粒子は酸化アルミニウム、酸化スズ、酸化ジルコニウムまたはシリカSiO2の粒子であることが好ましく、シリカSiO2のナノ粒子であることがより好ましい。無機フィラーはコロイド状で用いられることが好ましい。すなわち、水、アルコール、ケトン、エステルまたはそれらの混合物、好ましくはアルコール、などの分散溶媒中に分散された微粒子の状態で用いられることが好ましい。
フィラーが存在する場合、帯電防止組成物の全質量に対するフィラーの質量は、通常0.5〜10%であり、好ましくは1〜8%である。尚、ナノ粒子のようなフィラーを帯電防止組成物が全く含まない実施形態もある。
帯電防止被覆組成物は1種以上の溶媒を含有し、該溶媒は水、アルコールまたはその混合物のような極性溶媒であることが好ましく、より好ましくは水と水混和性アルコール(例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、n−アミルアルコール、イソアミルアルコール、sec−アミルアルコール、tert−アミルアルコール、1−エチル−1−プロパノール、2−メチル−1−ブタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、n−ヘキサノール、シクロヘキサノール、エチルセルソルブ(モノエトキシエチレングリコール)またはエチレングリコール)との混合物である。
導電性高分子の溶解性を改善するために、また、バインダーと組成物との相溶性を向上させるために、もう1種別の親水性有機溶媒を適量添加することもできる。この目的を達成するために、有機溶媒としては、NMP、アセトン、テトラヒドロフラン、DMSO、DMAc、トリエチルアミンまたはDMFなどを用いることができるが、これに限定されるものではない。ただし、帯電防止被覆組成物は、水および/または炭素数1〜4のアルコールのような環境に優しい溶媒のみを含むことが好ましい。
溶媒や溶媒の混合物の質量は、被覆組成物の質量に対して50〜99%であり、好ましくは50〜90%であり、より好ましくは60〜90%である。式(A)の化合物は、これが液体である場合などは溶媒と見られる場合もあるが、本発明においては、式(A)の化合物を溶媒とは考えない。
帯電防止被覆組成物は、被覆溶液のぬれ性や皮膜の光学的性質を改善するために、1種以上の非イオン性またはイオン性の界面活性剤、すなわちアニオン性、カチオン性または両性の界面活性剤を含んでいてもよい。特に、好ましい種類の界面活性剤としては、フッ素系界面活性剤(好ましくは、アニオン性フッ素系界面活性剤)が挙げられる。
フッ素系界面活性剤が知られており、E. Kissa著の「Fluorinated Surfactants」(Surfactants Science Series、Vol. 50)(Marcel Dekker, New York 1994)に概略が記載されている。フッ素系界面活性剤の例としては、パーフルオロアルカン酸やその塩、特にパーフルオロオクタン酸やその塩がある。具体例としては、欧州特許第1059342号明細書、欧州特許第712882号明細書、欧州特許第752432号明細書、欧州特許第816397号明細書、米国特許第6,025,307号明細書、米国特許第6,103,843号明細書、米国特許第6,126,849号明細書で開示されるような、パーフルオロオクタン酸アンモニウム、フッ素化されたポリエーテルまたはパーフルオロポリエーテル界面活性剤などが挙げられる。さらに、フッ素化された界面活性剤については、米国特許第5,229,480号明細書、米国特許第5,763,552号明細書、米国特許第5,688,884号明細書、米国特許第5,700,859号明細書、米国特許第5,804,650号明細書、米国特許第5,895,799号明細書、国際公開第00/22002号パンフレット、国際公開第00/71590号パンフレットに開示されている。ヘキサフルオロプロピレンオキサイド由来のフッ素化ポリエーテルについては、米国特許出願公開第2005/096244号明細書に記載されている。別の種類のフッ素系界面活性剤の例としては、例えばポリアルキレンオキサイドで修飾されたヘプタメチルトリシロキサンアリルオキシポリエチレングリコールの界面活性剤などの、フッ化炭素で修飾されたポリシロキサンの界面活性剤がある。
界面活性剤や界面活性剤の混合物の質量は、被覆組成物の質量に対して0.001%〜5%である。
帯電防止被覆組成物は、重合性組成物に通常用いられる種々の添加剤を通常の量含んでいてもよい。これらの添加剤には酸化防止剤、UV光吸収剤、光安定剤、耐黄剤、接着促進剤、染料、光発色剤、顔料、レオロジー修飾剤、滑剤、架橋剤、光開始香料、脱臭剤およびpH調節剤(特に、ポリピロールやポリアニリンのような帯電防止剤の場合)のような安定化剤が含まれる。
本発明による帯電防止被覆組成物(必須化合物(帯電防止剤、バインダー等)と任意化合物を含む)の理論乾燥抽出質量は、組成物の全質量に対して、通常、50%未満であり、好ましくは0.2〜30%であり、より好ましくは0.2〜20%である。
「組成物中のある成分の理論乾燥抽出質量」は、組成物中のその成分の固形物の理論質量を意味する。組成物の理論乾燥抽出質量は、各成分の理論乾燥抽出質量の合計で定義される。本願において、式IまたはIIの化合物の理論乾燥抽出質量は、Rn'mSi(O)(4-n'-m)/2またはRnSi(O)(4-n)/2単位の計算質量である。ここで、R、Y、n、n’またはmは上で定義したとおりである。
被覆組成物中の導電性高分子の質量は特に限定されないが、組成物の全質量に対して0.04〜15%であることが好ましく、より好ましくは0.05〜5%であり、さらに好ましくは0.05〜0.5%であり、よりさらに好ましくは0.05〜0.35%である。15〜20%を超えると、帯電防止被覆組成物の粘性は通常高過ぎであり、その帯電防止皮膜の透過性は85%を下回ることがある。一方、0.05%を下回ると、組成物は希釈され過ぎであり、その皮膜は帯電防止性を示さないことがある。
用いるバインダーの量は、組成物の全質量に対する固形バインダー成分の全質量(バインダーの乾燥抽出質量)が2〜15質量%であることが好ましく、3〜12質量%であることがより好ましい。
被覆組成物中の固形バインダーの乾燥抽出質量に対する導電性高分子の質量の比は、好ましくは0.4〜10%であり、より好ましくは0.4〜5%であり、さらに好ましくは0.4〜3%であり、最も好ましくは0.4〜2%である。式(A)の新規化合物を添加することで、使用する導電性高分子を少量とすることが可能となり、これにより高い帯電防止性を得ることができる。
帯電防止被覆組成物により十分な導電性が得られるため、追加で導電性成分を加える必要がない。
本発明による帯電防止組成物は、帯電防止組成物の全質量に対する質量が1%未満であるカーボンナノチューブその他の導電性フィラーを含む形態が好ましい。その他の導電性フィラーとしては、例えば、ITO(インジウムドープ酸化スズ)、ATO(アンチモンドープ酸化スズ)、アンチモン酸亜鉛(ZnSb26)、アンチモン酸インジウム(InSbO4)またはSrTiO3などが挙げられる。帯電防止組成物の全質量に対するカーボンナノチューブその他導電性フィラーの質量は、好ましくは0.5%未満であり、最も好ましくは0%である。本発明において、SiO2、Al23、ZrO2、SnO2およびそれらの混合物などの酸化物は導電性酸化物(フィラー)とは考えない。好ましくは、帯電防止組成物はカーボンナノチューブや導電性フィラーを全く含まない。
本発明の帯電防止皮膜は、上記帯電防止被覆液体組成物から始まり、適当な方法に従った液相配置やラミネートにより、光学物品の表面に形成される。該組成物は、スピンコーティング、ディップコーティング、スプレーコーティング、ブラッシュコーティング、ローラーコーティングによって塗布することができるが、これに限定されるものではない。スピンコーティング、ディップコーティングが好ましい。
帯電防止被覆組成物を光学物品の表面に塗布した後、導電性の透明なフィルムを得るために、必要に応じて、適当な方法により組成物を乾燥または硬化させてもよい。適当な方法とは、例えば、空気による乾燥、オーブン中での乾燥またはドライヤーによる乾燥が挙げられる。通常、50〜130℃で行う。高温および/または長時間の乾燥/硬化工程により、下層または物品上の帯電防止皮膜の耐摩耗性が改善する場合がある。乾燥/硬化工程には溶媒の蒸発とバインダーの固化が含まれる。架橋性バインダーの場合、配置された組成物は、バインダーの重合と硬化を開始するために、適当なエネルギー源に曝される。
もし、配置したばかりの帯電防止組成物層に別の皮膜を配置しなければならない場合は、その次の皮膜、例えばプライマー層を配置する前に上記組成物を熱硬化やUV硬化させてはならない。帯電防止組成物層の硬化(または乾燥)と共に、上の皮膜の硬化を同時に行うこともできる。
上記で説明したように、1種以上の導電性高分子と1種以上の硬化したバインダーを含む帯電防止皮膜が得られれば、例えば耐衝撃性プライマー皮膜および/または耐摩耗性および/または耐傷性皮膜のような追加の皮膜を上記帯電防止皮膜の上に形成してもよい。
光学物品の表面上には、本発明による帯電防止皮膜を数層にわたって連続して配置してもよい。この場合、全ての帯電防止積層に対して、1回の乾燥工程を行うことが好ましい。
最終光学物品における帯電防止皮膜の厚みは、好ましくは5〜5000nmであり、より好ましくは5〜3000nmであり、さらに好ましくは50〜2000nmである。
本発明による組成物は、添加剤を全く含まない組成物から得られる同じ厚みの皮膜と比較して、より良好な帯電防止性を有する皮膜を与える。このことは、従来の帯電防止皮膜と比較して、厚みは薄く、帯電防止能は同等以上の帯電防止皮膜を調製することを可能とし、これによって皮膜の光透過率を向上させることができる。また、従来の帯電防止皮膜よりも厚い帯電防止皮膜を調製することで、光学的な透明性を維持したまま高いレベルの帯電防止能を有する帯電防止皮膜を調製することを可能とする。
ほとんどの導電性高分子は可視領域において光を吸収するが、本発明の帯電防止皮膜では導電性高分子の量が少ない。その結果、被覆された物品の光透過性を大きく損なうことなく、帯電防止皮膜として数μm程度の厚みを用いることが可能である。しかし、帯電防止皮膜の厚みが厚すぎると(5〜10μm超)、光学物品の可視領域における相対的光透過率は大きく下がる可能性がある。例えば、PEDT/PSSポリマーは、可視光領域の高い波長(赤外領域の近く)を吸収する。このポリマーからなるフィルムが厚すぎると、その結果青みがかった色になる。逆に、帯電防止皮膜の厚みが薄すぎると、帯電防止性を示さない。
帯電防止皮膜の上に反射防止皮膜および/または汚れ防止トップコートのような他の皮膜を塗布することが可能である。偏光皮膜、光発色皮膜、染色皮膜または接着層(例えば、接着ポリウレタン層)のような他の皮膜を帯電防止皮膜の上に塗布することも可能である。
本発明の被覆組成物は眼科用レンズ製造において帯電防止性レンズを調製するのに用いることができる。また、写真フィルム、電子光学、食品包装、画像形成材料の分野における一般的な帯電防止の目的にも用いることができる。なお、電磁気窓、画像装置用の光透過導電体、電磁気放射シールドなど、用途は特に限定されない。
本発明には多くの利点があり、良好な接着性を有するほとんどの基材、特に樹脂性の基材に応用することができる。また、皮膜の優れた接着性を維持したまま、高い透過性、低いヘイズ、高い導電性、優れた帯電防止性を有する光学物品の製造に応用することができる。
光学物品の一つまたは二つの主要面を上記帯電防止皮膜で被覆した場合、本発明により、電荷減衰時間が500m秒以下、好ましくは200m秒以下、より好ましくは150m秒以下、さらに好ましくは100m秒以下の光学物品を得ることができる。後述の実施例では皮膜の凸面側のみ示す。
最終光学物品は、可視領域の光を(ほとんど)吸収しないことが好ましい。このことは、本願において、一つの面を本発明の帯電防止皮膜で被覆した場合に、帯電防止皮膜による可視領域の光の吸収が好ましくは1%以下であり、より好ましくは1%より小さく、および/または、帯電防止皮膜の可視スペクトルにおける相対的光透過率Tvが、好ましくは90%よりも高く、より好ましくは91%よりも高く、さらに好ましくは92%よりも高いことを意味する。両方の特性を同時に満たすことが好ましく、皮膜の厚みと導電性高分子の量を注意深く調整することによって達成することができる。本願において「透明な」光学物品は90%よりも高いTvを有する光学物品であり、好ましくは91%よりも高く、さらに好ましくは92%よりも高い光学物品である。Tvは規格NF EN 1836で定義されたものであり、380〜780nmの波長領域に相当する。
別の実施形態では、光学物品に薄く色が付けられ、または染色され、可視領域の光を吸収する場合がある。
本発明により調製された最終光学物品はヘイズ値が小さいことが好ましい。ヘイズとは、入射光の軸から2.5°以上散乱した透過光を測定したものである。ヘイズ値が小さいほど、曇りの度合いは小さくなる。本発明の光学物品のヘイズ値は好ましくは0.8%未満であり、より好ましくは0.4%未満であり、さらに好ましくは0.25%未満である。
また、本発明は、帯電防止性を有し、必要に応じて耐摩耗性および/または耐傷性を有する透明な光学物品を調製する方法に関する。ここで上記方法は、一つ以上の主要面を有する基材を含む光学物品を提供すること、および基材の一つ以上の主要面の少なくとも一部に上記硬化性組成物の塗布すること、および該組成物を硬化させること、を含む。
本発明の光学物品は、低い温度(100℃以下)で、環境に優しい溶媒(アルコールまたは水/アルコール混合溶媒)を用いて、容易に処理することができる。本発明の調製方法は柔軟性があり、基材上の他の機能性皮膜に組み込むことができる。
本発明は、さらに、上記組成物を硬化することによって得られる皮膜の帯電防止性を改善することを目的とした、硬化性組成物における式(A)の化合物の使用に関する。
本発明について以下の実施例を参考にさらに詳細に説明する。これらの実施例は本発明の単なる例示であり、本発明の範囲と要旨を限定して解釈すべきではない。
<1.試験方法>
以下の試験手順で、本発明に従って調製した光学物品を評価した。各系について評価用として三つのサンプルを調製した。報告するデータは三つのデータの平均値である。
a)電荷減衰時間
本願において、予め9000Vのコロナ放電に曝した光学物品の電荷減衰時間をJohn Chubb Instrumentation 製のJCI 155v5電荷減衰試験装置を用いて、温度25.4℃、相対湿度50%にて測定した。
装置はJCI 176電荷測定サンプル支持体、JCI 191湿度制御試験チャンバー、JCI 192乾燥空気供給装置を用いて調整した。また、JCI 155の電圧感度および減衰時間測定性能を英国規格で規定された方法に校正した。校正した電圧測定、抵抗の値、コンデンサの値は国家規格にトレースすることができるものである。
b)乾燥接着試験(クロスハッチ試験)
被覆した皮膜の乾燥接着性は、ASTM D3359−93に従い、クロスハッチ接着試験を用いて評価した。かみそりで皮膜に1mmずつ離れた五本の切り込みを入れる。次に切り込みと直行するように1mmずつ離れた五本の切れ込みを入れる。結果、25個の正方形からなるクロスハッチパターンが出来上がる。切れ込みを入れる間に発生したゴミを完全に除去するためにクロスハッチパターンに空気を吹き付けた後、クロスハッチパターンにセロハンテープ(3M SCOTCH(登録商標) n 600)を貼り、しっかりと押さえ付け、その後、皮膜表面から垂直方向にすばやく引き剥がした。さらに二回、新しいテープを貼り付けて引き剥がす操作を繰り返した。接着性は次のとおり評価した(0が接着性に最も優れ、1〜4が中程度であり、5が接着性に最も乏しい)。
c)耐摩耗性の評価(「ISTMバイエル試験」「バイエルアルミナ」)
バイエル摩耗試験は、カーブのあるレンズ表面の耐摩耗性を評価する標準的な試験である。バイエル値の測定は、砂をアルミナに置き換えた以外、規格ASTM F735−81に従って行った(砂振動法を用いた透明な樹脂や皮膜の耐摩耗性の標準的な試験方法)。
この試験では、被覆されたレンズと被覆されていないレンズ(同等の曲率、直径、厚み、ジオプターを有するリファレンスとなるレンズ)を振動する摩耗ボックスに入れ、2分間で300サイクルの摩耗(Specialty Ceramic Grain(元Norton Materials)から供給された酸化アルミニウムZF 152412を約500g用いた)を行った。
リファレンスと被覆されたサンプルの両方について、試験前後のヘイズHを、ASTM D1003−00に従い、ヘイズガードプラスメーターを用いて測定した。結果は、被覆されたレンズに対するリファレンスレンズの割合(バイエル値=Hstandard/Hsample)を計算して表した。バイエル値は皮膜の性能の測定値であり、値が高いほど、より耐摩耗性が高い。
d)耐傷性:ハンドスチールウール試験(HSW)
HSW試験はレンズの凸面についてのみ行った。レンズに反射防止皮膜が配置される場合は、試験に際して、24時間の待ち時間を守った。
スチールウールを用いてレンズを手動で摩耗させた。その際、スチールウールを人差し指で一定の圧力をかけた状態で保ち、スチールウールの繊維方向に対して垂直な方向に前後(4〜5cmの距離)5回こすった。スチールウールにかけた圧力は秤で測定することができる。粘着テープでレンズを秤の皿に固定し、レンズに対して人差し指で通常の力をかけて押す。この力は、行きは約5kgで、戻りは約2.5kgであった。レンズは以下の表に従って検査し、評価した。記録が高いほど、よりレンズが摩耗したことになる。
e)ヘイズ値、Tv、厚み
最終光学物品のヘイズ値は、本願の引用文献にその全体が記載されているASTM D1003−00の方法に従い、BYK−ガードナーのヘイズガードプラスヘイズ計測器(色差計)を利用して光透過で測定した。本願に記載する全てのヘイズ値はこの規格によるものである。機器は最初にメーカーの取扱説明書に従って校正した。次に、予め校正した計測器の透過光ビーム上に置き、異なる三か所のサンプル位置でヘイズ値を記録し、平均した。Tvは同じ装置を用いて測定した。
フィルムの厚みは、J. A. Woollam Co. Inc製の75W Xenon光源とM−44(商標)、EC−270およびLPS−400を備えたエリプソメーター(厚み<1μm)、またはMetricon Corporation製のMetricon Model 2010 Prism Coupler apparatus(厚み>1μm)で評価した。
<2.実験の詳細>
a)概論
被覆溶液はGLYMO、0.1N塩酸、SiO2ナノ粒子メタノール分散液(粒子サイズ15nm、固形分量(または乾燥抽出量)33〜35%)を12時間撹拌して混合し、その後、2−ブタノール(例9〜12以外)、Al(AcAc)3、フッ素系界面活性剤(FC−4430)、Baytron(登録商標) PH500水性溶液(導電性高分子1.2wt%のBaytron PH 500溶液)と、ジエチレングリコールジメチルエーテル、種々分子量のポリ(エチレングリコール)ジメチルエーテル、比較の添加剤(比較例C2〜C9)、添加剤なし(比較例C1、C10、C13)のいずれか、を分散させることで調製した。以下の表1を参照。
SiO2ナノ粒子水系分散液(A2034、ナノ粒子33〜35wt%、粒子径15nm以下)はEKa Chemicalsより購入した。FC−4430界面活性剤は3Mより購入した。比較例9で用いたポリエチレングリコール(PEG)(Aldrich製)の平均分子量Mnは14,000である。
b)被覆した光学物品の調製
実施例で用いた光学物品はORMA(登録商標)基材(CR−39(登録商標)ジエチレングリコールビス(アリルカーボネート)モノマーの重合により得られる)を含む円形のレンズ(度なしまたは−2.00。直径68nm。)であった。
最初、基材の凸面にコロナ処理を行い、その後、帯電防止組成物を500/1000rpmでスピンコートした。帯電防止組成物は75℃で15分間予備硬化させ、その後、100℃で3時間硬化させた。最終的な皮膜の厚みは1.7±0.2mmであった。
c)皮膜組成物の詳細
実施例で用いた皮膜組成物を表2〜4に示す。図中の数字は質量%である。例2〜12では、それぞれの皮膜組成物についてBaytron(登録商標) PH500の量を8.5質量%に減らした(例1では9.2質量%)。また、式(A)の化合物の量を0.5質量%〜10質量%の間で変化させた。比較の添加剤であるDMSOおよびジエチレングリコールについてはいくつかの濃度で調べた(2、5および10質量%)。
d)皮膜の性能
調製した帯電防止性光学物品の性能試験データを表5に示す。
例1、C1〜C12、図1/表5から分かるように、1,2−ジメトキシエタン(C11、C12)を除き、用いた添加剤はいずれも皮膜の帯電防止性を改善した。具体的には、添加剤なしの同じ皮膜の電荷減衰時間が136msであるのに対し、添加剤を用いたものは電荷減衰時間が20〜60msになった。C11およびC12の電荷減衰時間は、リファレンスとなるC10の組成物から得られる皮膜よりも大きくなった。
ジエチレングリコールモノメチルエーテル(比較例8)の場合を除き、添加剤を入れても、帯電防止皮膜は可視領域において透明である。比較例8は、耐摩耗性は良好であるが、ヘイズが高く、透明性が低い。比較例C2(添加物:DMSO)におけるヘイズおよび透過率の結果は、期待を裏切る結果であった。
本発明の皮膜で被覆した光学物品は、添加剤なしの光学物品と比較して、優れた耐摩耗性、耐傷性、良好な帯電防止性を同時に示し、また、下層皮膜への優れた接着性を維持したまま(クロスハッチ試験:0)、透過率約91〜92%という高い光学的透明性、低いヘイズ性を同時に示す唯一のものである。DMSO、エチレングリコール、PEGは、比較例1(添加剤なし)の皮膜と比較していずれも低い耐摩耗性を示し、低い耐傷性を示す場合もある。(例C6、C7およびC9)

Claims (15)

  1. 以下のa、b、c、dを含む、硬化したときに透明な帯電防止皮膜を与える硬化性組成物。
    a) 少なくとも一種の導電性高分子
    b) 少なくとも一種のバインダー
    c) 少なくとも一種の溶媒
    d) 少なくとも一種の式(A)で表される化合物
    1−O−[(CH2−CHR’)−O]n−R2 (A)
    (ここで、R1とR2はそれぞれ独立にアルキル基であり、R’は水素原子またはメチル基であり、nは2〜225までの整数である。)
  2. 前記少なくとも一種のバインダーが、式(I)で表される化合物、またはその加水分解物である、請求項1に記載の組成物。
    n’mSi(X)4-n’-m (I)
    (ここで、R基は同一または異なる基であり、炭素原子を介してケイ素原子に結合した一価の有機基であり、Y基は同一または異なる基であり、炭素原子を介してケイ素原子に結合した一価の有機基であり、少なくとも一つのエポキシ官能基を含み、X基は同一または異なる基であり、加水分解性基または水素原子であり、mとn’は整数であり、mは1または2であり、n’+mは1または2である。)
  3. Y基が式IIIおよびIVで表される基より選択される基である、請求項2に記載の組成物。
    (ここで、R2はアルキル基であり、好ましくはメチル基または水素原子であり、より好ましくは水素原子である。また、aとcは1〜6の整数であり、bは0、1または2である。)
  4. 式(I)の化合物が式VまたはVIで表されるエポキシアルコキシシランより選択される化合物である、請求項2に記載の組成物。
    (ここで、R1は炭素数1〜6のアルキル基であり、aとcは1〜6の整数であり、bは0、1または2である。)
  5. 前記少なくとも一種の式(A)で表される化合物の質量が、被覆組成物の質量に対して、0.5〜20%であり、好ましくは0.5〜15%であり、より好ましくは1〜10%である、請求項1〜4のいずれかに記載の組成物。
  6. 前記少なくとも一種の式(A)で表される化合物の分子量が10,000g/mol以下であり、好ましくは5,000g/mol以下であり、より好ましくは2,000g/mol以下であり、さらに好ましくは400g/mol以下である、請求項1〜5のいずれかに記載の組成物。
  7. 前記少なくとも一種の導電性高分子が、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリチエノチオフェン、ポリエチレンイミン、ポリセレノフェン、ポリアセチレンおよびポリアリルアミンからなる群より選択される化合物であり、好ましくはポリチオフェンであり、より好ましくはポリチオフェンポリスチレンスルホン酸である、請求項1〜6のいずれかに記載の組成物。
  8. さらにフィラーを含有し、好ましくはフィラーとして少なくとも一種の金属または半金属の酸化物のナノ粒子を含有する、請求項1〜7のいずれかに記載の組成物。
  9. 前記少なくとも一種の式(A)で表される化合物が、ポリ(エチレングリコール)ジメチルエーテルまたはポリ(エチレングリコール)ジエチルエーテルであり、好ましくはジエチレングリコールジメチルエーテルである、請求項1〜8のいずれかに記載の組成物。
  10. 請求項1〜9のいずれかの硬化性組成物を基材上に配置し、硬化することによって、少なくとも一部が透明な帯電防止皮膜で被覆された基材、を含む光学物品。
  11. 可視スペクトルにおける相対的光透過係数Tvが90%超、好ましくは91%超、より好ましくは92%超である、請求項10に記載の光学物品。
  12. レンズまたはレンズブランク、好ましくは眼科用レンズまたは眼科用レンズブランクである、請求項10または11に記載の光学物品。
  13. 電荷減衰時間が500ミリ秒以下、好ましくは200ミリ秒以下、より好ましくは100ミリ秒以下である、請求項10〜12のいずれかに記載の光学物品。
  14. 前記帯電防止皮膜の厚みが5〜5000nm、好ましくは5〜3000nm、より好ましくは50〜2000nmである、請求項10〜13のいずれかに記載の光学物品。
  15. 一つ以上の主要面を有する基材を含む光学物品を提供し、前記基材の一つ以上の主要面の少なくとも一部に請求項1〜9のいずれかの記載の硬化性組成物を塗布し、前記硬化性組成物を硬化することを含む、透明な帯電防止性を有する光学物品を製造する方法。
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